(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678058
(24)【登録日】2020年3月18日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】パン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 6/00 20060101AFI20200330BHJP
A21D 8/02 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
A21D6/00
A21D8/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-71557(P2016-71557)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-176106(P2017-176106A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜治
(72)【発明者】
【氏名】野呂 卓史
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−095470(JP,A)
【文献】
特開2010−035507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 6/00
A21D 8/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]、及び前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏してパン生地を得る混捏工程[II]を含み、前記混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を10分〜2時間静置することを特徴とするパン類の製造方法。
【請求項2】
前生地に用いる穀粉類が、製パンに用いる穀粉類全量に対して、10〜100質量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載のパン類の製造方法。
【請求項3】
前生地の製造時の圧力が−0.01MPa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のパン類の製造方法。
【請求項4】
前生地にはイーストを配合しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパン類の製造方法。
【請求項5】
混捏工程[I]において、減圧下で混捏する前に、予め常圧下で混捏することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパン類の製造方法。
【請求項6】
混捏工程[II]以降、ストレート法に準じた製パン方法によりパン類を製造することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパン類の製造方法。
【請求項7】
製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]、及び前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏してパン生地を得る混捏工程[II]を含み、混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を10分〜2時間静置することを特徴とする、ストレート法に準じた製パン方法で製造するパン類の老化を防止する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前生地(中麺)を使用し、ストレート法に準じた製法でありながら、パン生地の機械耐性に優れ、製造したパン類の老化が遅く、かつソフトなパン類の製造方法に関する。詳細には、製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造し、この製造した前生地を5分〜3時間静置した後、イーストを含むその他残余の製パン原料を静置後の前生地に添加し、常圧下で混捏してパン生地を製造することにより、ストレート法に準じた製法でありながら、ストレート法と比較して、老化遅延効果や生地の機械耐性が優れているパン類の製造方法、及びこのストレート法に準じた製パン方法で製造したパン類の老化を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製パン技術におけるストレート法は、全材料を一度にミキシングして生地を作る製法であり、比較的簡単な製法である。ストレート法の利点としては、風味が良い、発酵時間が短く、故に製パンに要する時間が短く、作業スペースが少なくて済むという点である。一方、パンのボリュームが出にくい、老化が早く、パンがパサついたり、硬くなりやすいという欠点がある。また、リテールベーカリー等、比較的小規模な製造であれば問題にはならないが、工場等の比較的規模の大きい製造の場合、パン生地の機械耐性が低いため、作業性に劣るという問題がある。
【0003】
一方、製パン技術における中種法は、使用する小麦粉の一部をイースト、水、時には一部の副材料も加えて中種を作り、2時間以上発酵をとった後、残りの材料を加えて本捏ねをし、生地を作る製法である。中種法で得られるパン製品は、ボリュームがあり、ソフトな食感となり、老化が遅く、パンがパサつかず、硬くなりにくいといった利点がある。一方、中種法のための設備と作業スペースが必要であること、製パンに要する時間が長いことが挙げられる。しかし、中種法では、特有の生地の伸展性の影響もあり、出来上がりの製品が安定するため、大手の製パン工場で採用されている。
【0004】
そこで、製パンに要する時間はストレート法と同程度であり、得られるパン製品の風味がよく、しかも中種法の特徴であるボリュームがあり、ソフトな食感となり、老化が遅く、良好な食感が長続きするパン類が得られる製パン方法が求められている。
【0005】
ところで、製パン法においてパン生地を減圧下や加圧下で混捏したり、パン生地を脱気する技術として、原料に水を加えて減圧下で混捏するか、原料に水を加えて常圧下で混捏した後に得られた生地を減圧下で放置する、ねかし工程が不要、ボリュームがある生地が得られるパイ生地の製造法(特許文献1)、中種法において、中種発酵の半分時間以降に脱気処理する、ボリュームが大きく、フィッシュアイが防止されるパン類が得られる冷蔵パン生地・冷凍パン生地の製造方法(特許文献2)、発酵したパン生地を低真空状態で再混捏し、次いで窒素ガス存在下、加圧状態、大気圧状態で再混捏する、優れた外観、風味・食味のパン類が得られる冷凍パン生地の製造方法(特許文献3)、穀粉原料の一部若しくは全部を、減圧下で混捏するか、あるいは常圧下で混捏した後に加圧押出し処理し、次いで残余の原料を添加して常圧下で混捏して生地を得る、優れたボリューム、内相、食感の発酵食品が得られるイースト発酵食品用生地の製造方法(特許文献4)等が知られている。
【0006】
その他、小麦粉本来の風味や旨味を有しており、しかもソフトであるにもかかわらずしっとりとしたモチモチ感のある食感を有するパン類を製造する方法として、小麦粉と水とを、常温ではなく加熱しながら混捏して中麺を製造する工程を含む方法が知られている(特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−76271号公報
【特許文献2】特開平9−121753号公報
【特許文献3】特開2000−287607号公報
【特許文献4】特開2001−95470号公報
【特許文献5】特開2000−245332号公報
【特許文献6】特開2002−34436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、前生地(中麺)を用いたストレート製法に準じる製法でありながら、ストレート法と比較して、パン生地の機械耐性が優れ、且つ得られるパン類の老化が遅く、しかもしっとりとしたパン類が得られるパン類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、製パンに要する時間が短く、作業スペースが少なくて済むというストレート法の利点と、ボリュームがあり、ソフトな食感となり、老化が遅く、良好な食感が長続きするパン類が得られるという中種法の利点を合わせもつパン類を開発すべく鋭意検討し、まず通常、用いられることが少ない中麺法に注目した。小麦粉と水を混ぜて前生地を作る中麺法によると、小麦粉に水が浸漬することにより、粉に水が浸透してグルテンが軟化し、生地の伸展性がよく、滑らかな生地とすることができたが、必ずしも良質のパン類が得られなかった。そこで、種々の試行錯誤の末に、前生地(中麺)調製における混捏を減圧下で実施し、この減圧下で混捏した前生地をねかせた後、この前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏したパン生地を用いて製パンしたところ、ストレート法に準じた製法でありながら、ストレート法と比較して、老化遅延効果や生地の機械耐性に優れ、しっとりとしたパン製品の製造が可能となることを見いだした。また、前生地調製における減圧下で混捏する前に、予め常圧下で混捏しておくことにより、本発明の効果がより一層優れたものになることも見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]、及び前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏してパン生地を得る混捏工程[II]を含み、前記混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を5分〜3時間静置することを特徴とするパン類の製造方法。
(2)前生地に用いる穀粉類が、製パンに用いる穀粉類全量に対して、10〜100質量%の範囲であることを特徴とする前記(1)記載のパン類の製造方法。
(3)前生地の製造時の圧力が−0.01MPa以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のパン類の製造方法。
(4)混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を10分〜2時間静置することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のパン類の製造方法。
(5)前生地にはイーストを配合しないことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のパン類の製造方法。
(6)混捏工程[I]において、減圧下で混捏する前に、予め常圧下で混捏することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のパン類の製造方法。
(7)混捏工程[II]以降、ストレート法に準じた製パン方法によりパン類を製造することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のパン類の製造方法。
(8)製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]、及び前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏してパン生地を得る混捏工程[II]を含み、混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を5分〜3時間静置することを特徴とする、ストレート法に準じた製パン方法で製造するパン類の老化を防止する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前生地(中麺)を使用し、ストレート法に準じた製法でありながら、パン生地の機械耐性や、製造したパン類の老化が遅く、しかもしっとりとしたソフトなパン類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のパン類の製造方法としては、製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]、及び前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏してパン生地を得る混捏工程[II]を含み、前記混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を5分〜3時間静置する方法であれば特に制限されず、また、本発明のパン類の老化を防止する方法としては、製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類の全量又は一部に加水した後、減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]、及び前生地にイーストを含むその他残余の製パン原料を添加し、常圧下で混捏してパン生地を得る混捏工程[II]を含み、混捏工程[I]及び混捏工程[II]の間に、前生地を5分〜3時間(好ましくは10分〜2時間)静置する方法であれば特に制限されず、上記パン類としては、あんパン、クリームパン等の菓子パン、食パン、ロールパン、フランスパン、クロワッサンやデニッシュ等を例示することができるが、中でも中種法で製造されることが多いパン類、特に食パン、ロールパン、菓子パン等を好適に例示することができる。
【0013】
上記製パンに用いる小麦粉を主体とする穀粉類としては、小麦粉の他にライ麦粉、ライ小麦粉、米粉、大麦粉、エン麦粉、トウモロコシ粉、ヒエ粉、アワ粉、モロコシ粉、キビ粉等及びこれらのα化穀粉を挙げることができ、これらを1種以上用いることができる。これら穀粉類の中でも小麦粉がより好ましく、さらに強力粉や準強力粉、デュラム小麦粉を主体としたものが特に好ましい。前生地に用いる小麦粉等の穀粉類は、製パンに用いる穀粉類全量に対して、10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%あることがより好ましく、30〜80質量%であることが特に好ましい。例えば、前生地に使用する小麦粉の割合が10質量%未満であると、本発明の効果が十分に奏されないことがあり、その結果パン生地の機械耐性(作業性)が劣ることがあり、また、得られるパン類に十分な老化耐性が得られないことがある。全量、すなわち前生地に使用する小麦粉の割合が100質量%でもよいが、減圧下で混捏する量が多くなり、生産性・効率が低下するおそれがあるため、30〜80質量%が特に好ましい。
【0014】
上記混捏工程[I]における前生地の調製時の圧力(ゲージ圧)としては、−0.01MPa以下であればよく、−0.05〜−0.1MPaが好ましい。減圧の程度が低い圧力0MPa未満で−0.01MPaを超える場合は、パン生地の機械耐性(作業性)が劣ることがあり、また、得られるパン類に十分な老化耐性が得られないことがある。
【0015】
上記混捏工程[I]における前生地の調製時の減圧下での混捏時間としては、上記の圧力条件で1分以上であればよく、3〜10分が好ましい。減圧下での混捏時間が1分未満であると使用原材料の混合が不十分であることがあり、10分を超えると前生地の凝集が大きくなりすぎ、いずれの場合も作業性が劣る生地となるおそれがある。
【0016】
本発明に用いられるイーストは、パン類の製造に一般に用いられているものであれば、生イースト、乾燥イーストのいずれでもよい。穀粉類に対するイーストの配合量は、パン類の種類、イーストの炭酸ガス発生量等によっても異なるが、一般に1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましい。なお、上記混捏工程[I]における前生地の調製時にはイーストを配合しない方が好ましい。前生地にイーストを添加してもよいが、減圧下での混捏(減圧ミキシング)によりイーストがダメージを受けるため、それを補う量のイーストを混捏工程[II]で添加する必要がある。
【0017】
本発明においては、穀粉類、イースト以外に、パン類の製造に一般に用いられるその他の原料、例えばグルテン等の小麦由来蛋白質;コーンスターチ、馬鈴薯澱粉等の澱粉類;卵類;アンモニウム塩、カルシウム塩等のイーストフード、L−アスコルビン酸等の酸化・還元剤、各種酵素製剤;ベーキングパウダー;砂糖、液糖、澱粉糖等の糖類;食塩;バター、マーガリン、ショートニング、ラード等の油脂類;牛乳、脱脂粉乳、練乳等の乳製品;香料;着色料;水等を配合することができる。
【0018】
本発明においては、混捏工程[I]と混捏工程[II]との間に、前生地を5分〜3時間静置することが必要であり、かかる静置工程を設けない場合や、静置時間が5分未満の場合は、生地の寝かしが十分でなく、製造したパン類の老化が早く、しかもしっとり感に乏しいパン類となり、他方静置時間が3時間を超える場合は、生地の寝かしの効果は変わらないが、製パン時間の短縮といった点で好ましくない。静置時間を10分〜2時間、好ましくは30分〜1時間とすることにより、生地の寝かしの効果により、製造したパン類の老化が遅く、しかもしっとりとしたソフトなパン類が得られる。
【0019】
上記混捏工程[I]において、減圧下で混捏する前に、予め常圧下で混捏することが好ましい。かかる常圧下での混捏時間としては、1〜10分間が好ましく、2〜5分間がより好ましい。例えば、予め常圧下での混捏時間が、1分未満であると原材料が十分に混合されないまま減圧下で混捏されるため減圧下での混捏の効果が十分に得られないことがあり、また10分間以上混捏すると、パン生地がある程度出来上がった状態で減圧下での混捏が行われることになり、混捏工程[I]の減圧下での混捏による効果が低下してしまう可能性がある。
【0020】
上記混捏工程[I]や混捏工程[II]において用いられる混捏機としては、パン類の製造に一般に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば縦型ミキサー、横型ミキサー、アートフェックスミキサー、スラントミキサー、ツィーディミキサー、スパイラルミキサー、ステファンミキサー等を挙げることができる。また、ミキサーのスピード、時間、温度等のその他の混捏条件は、パン類の種類に応じて適宜選択することができる。
【0021】
本発明のパン類の製造方法は、混捏工程[I]や混捏工程[II]、その間の静置工程を含む点に特徴を有し、混捏工程[II]以降はストレート法に準じた製パン方法を採用することができる。すなわち、混捏工程[II]で得られたパン生地から、フロアタイム、生地の分割、ベンチタイム、成型、ホイロ、焼成等の各工程を備える常法によりパン類を製造することができる。また、フロアタイム、生地の分割、ベンチタイム、成型、ホイロ、焼成の条件については、製造するパン類の種類等により適宜変更すればよい。
【実施例】
【0022】
次に実施例や比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例等において用いた小麦粉は、日清製粉(株)製のパン用小麦粉(強力粉)であり、生イーストおよびイーストフードはオリエンタル酵母工業(株)製である。
【0023】
[実施例1]
減圧下で混捏して前生地を製造する混捏工程[I]として、小麦粉70質量部に、イーストフード0.1質量部及び水40質量部を加え、常圧で3分、次いでゲージ圧−0.1MPaの減圧下で5分混捏した(捏上温度:20℃)。10分間静置し、前生地を得た。混捏工程[II]として、この前生地に小麦粉30質量部、食塩1.8質量部、砂糖12質量部、脱脂粉乳3質量部、全卵12質量部及び水10質量部を加え、常圧下で低速3分混捏し、生イースト3.5質量部を加えて、低速1分、中速4分で混捏した。さらにショートニング15質量部を加えて低速2分、中速4分、高速3分間混捏した(捏上温度:27℃)。得られたパン生地をフロアータイム60分間とった後、分割(45g)、ベンチタイム15分間の後、ロールパンに成形し、ホイロ50分間(38℃、湿度85%)をとった。得られたパン生地を30分間焼成(上火210℃/下火190℃)し、ロールパンを得た。
【0024】
[比較例1]
ストレート法によりロールパンを製造した。小麦粉100質量部に、イースト3.5質量部、食塩1.8質量部、砂糖12質量部、脱脂粉乳3質量部及び水50質量部を加え、常圧下で低速4分、中速5分で混捏した。これにショートニング15質量部を加え、さらに低速2分、中速4分、高速4分で混捏(捏上温度:27℃)し、パン生地を調製した。以下、実施例1と同様にしてロールパンを得た。
【0025】
実施例1及び比較例1におけるパン生地の機械耐性/作業性については、3名の作業員による以下〔1〕に示す評価基準で評価した。また、実施例1及び比較例1で得られたロールパンの風味・食味、食感については、5名のパネラーによる以下〔2〕〜〔4〕に示す評価基準で評価した。
【0026】
〔1〕パン生地の機械耐性/作業性
◎:伸展性が良好で、作業性は良好
○:伸展性がやや良好で、作業性はやや良好
△:伸展性がやや劣り、作業性はやや劣る
×:伸展性が劣り、作業性は劣る
【0027】
〔2〕パンの風味・食味〔ストレート法の利点〕
◎:風味が良好で、食味は良好
○:風味がやや良好で、食味はやや良好
△:風味がやや劣り、食味はやや劣る
×:風味が劣り、食味は劣る
【0028】
〔3〕食感(ソフトさ、しっとり感等)
◎:ソフトさが良好で、しっとり感は良好
○:ソフトさがやや良好で、しっとり感はやや良好
△:ソフトさがやや劣り、しっとり感はやや劣る
×:ソフトさが劣り、しっとり感は劣る
【0029】
〔4〕3日後の食感(老化耐性)
◎:ソフト感は良好
○:ソフト感はやや良好
△:ソフト感はやや劣る
×:ソフト感は劣る
【0030】
実施例1と比較例1の評価結果を[表1]に示す。[表1]から、本発明品は、パン生地の機械耐性/作業性や、老化耐性に優れていることがわかる。
【0031】
【表1】
【0032】
[実施例2]
前生地の量比を20%、30%、70%、80%及び100%とする他は実施例1と同様に行い、5種類のロールパンを得た。前生地の量比が異なる5種類のロールパンの評価結果を[表2]に示す。[表2]から、前生地の量比が30〜80%のロールパンは20%や100%のロールパンに比べて、パン生地の機械耐性/作業性や、老化耐性に若干優れていることがわかる。
【0033】
【表2】
【0034】
[実施例3]
前生地を製造する混捏工程[I]における減圧の程度(ゲージ圧)を、常圧、−0.01MPa、−0.05MPa及び−0.1MPaとする他は実施例1と同様に行い、4種類のロールパンを得た。混捏工程[I]における減圧の程度が異なる4種類のロールパンの評価結果を[表3]に示す。[表3]から、減圧の程度が−0.05〜−0.1MPaのロールパンは常圧のロールパンに比べて、パン生地の機械耐性/作業性や、食感・老化耐性に優れていることがわかる。また、−0.01MPaのロールパンは常圧のロールパンに比べて、パン生地の機械耐性/作業性や、食感・老化耐性に若干優れていることがわかる。
【0035】
【表3】
【0036】
[実施例4]
前生地を製造する混捏工程[I]における減圧下での混捏時間を0分(比較例1)、3分、5分(実施例1)、10分とする他は実施例1と同様に行い、4種類のロールパンを得た。混捏工程[I]における減圧の程度が異なる4種類のロールパンの評価結果を[表4]に示す。[表4]から、減圧下での混捏時間が3〜10分のロールパンは、常圧のロールパンに比べて、パン生地の機械耐性/作業性や、食感・老化耐性に優れていることがわかる。
【0037】
【表4】
【0038】
[実施例5]
混捏工程[I]と混捏工程[II]との間の静置時間を0分、5分、10分、1時間、2時間とする他は実施例1と同様に行い、5種類のロールパンを得た。静置時間の異なる5種類のロールパンの評価結果を[表5]に示す。[表5]から、前生地を10分〜2時間静置するロールパンにおいてはパン生地の機械耐性/作業性に優れていることがわかる。
【0039】
【表5】
【0040】
[実施例6]
前生地を製造する混捏工程[I]において、減圧下での混捏前の常圧下での混捏時間を0分、2分、5分、10分とする他は実施例1と同様に行い、4種類のロールパンを得た。混捏工程[I]における常圧下での混捏時間が異なる4種類のロールパンの評価結果を[表6]に示す。[表6]から、減圧ミキシング前に常圧ミキシングをしない場合及び過剰に常圧ミキシングした場合に比べて、減圧ミキシング前に常圧ミキシングを2〜5分した方が、パン生地の機械耐性/作業性、食感及び老化耐性に優れていることがわかった。
【0041】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、パン類等の食品分野で有用である。