【文献】
GAO et al.,Ag−FMediated Fluorinative Homocoupling of gem−Difuoroalkenes, ORGANIC LETTERS, 2013年12月 2日,V16,P102−105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Aが、パーフルオロメタンジイル基、パーフルオロエタン−1,2−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−2,2−ジイル基、パーフルオロブタン−1,4−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,5−ジイル基又はパーフルオロヘキサン−1,6−ジイル基である請求項1〜3のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[トリアリールアミン誘導体]
本発明のトリアリールアミン誘導体は、式(1)で表される。
【化6】
【0012】
式(1)中、Ar
1〜Ar
4は、互いに独立して、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基又は9−フェナントリル基を表す。
【0013】
また、Xは、式(2)で表される2価の基を表す。
【化7】
【0014】
式(2)中、Aは、炭素数1〜6のフルオロアルカンジイル基を表す。前記フルオロアルカンジイル基は、アルカンジイル基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものであれば特に限定されない。
【0015】
前記フルオロアルカンジイル基の具体例としては、モノフルオロメタンジイル基、パーフルオロメタンジイル基、2,2,2−トリフルオロエタン−1,1−ジイル基、パーフルオロエタン−1,1−ジイル基、パーフルオロエタン−1,2−ジイル基、3−フルオロプロパン−1,2−ジイル基、3,3,3−トリフルオロプロパン−1,1−ジイル基、1,1−ジフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,1−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,2−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−2,2−ジイル基、2−メチル−2−フルオロプロパン−1,3−ジイル基、3,4,4−トリフルオロブタン−1,2−ジイル基、4,4,4−トリフルオロブタン−1,3−ジイル基、2,2,3,3−テトラフルオロブタン−1,4−ジイル基、パーフルオロブタン−1,1−ジイル基、パーフルオロブタン−1,2−ジイル基、パーフルオロブタン−1,3−ジイル基、パーフルオロブタン−1,4−ジイル基、1−フルオロペンタン−1,1−ジイル基、4,5,5−トリフルオロペンタン−1,5−ジイル基、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン−1,5−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,1−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,2−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,3−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,4−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,5−ジイル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン−1,6−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,1−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,2−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,3−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,4−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,5−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0016】
これらのうち、パーフルオロメタンジイル基、パーフルオロエタン−1,2−ジイル基、パーフルオロプロパン−1,3−ジイル基、パーフルオロプロパン−2,2−ジイル基、パーフルオロブタン−1,4−ジイル基、パーフルオロペンタン−1,5−ジイル基、パーフルオロヘキサン−1,6−ジイル基等が特に好ましい。
【0017】
とりわけ、原料化合物の入手容易性、トリアリールアミン誘導体の有機溶媒への溶解性、トリアリールアミン誘導体の電荷輸送性向上能等のバランスを考慮すると、Aは、パーフルオロプロパン−2,2−ジイル基が最適である。
【0018】
更に具体的に言えば、Xは、式(X1)〜(X6)で表される基のいずれかである。
【化8】
(式中、Aは前記と同じ。)
【0019】
これらのうち、原料化合物の入手が容易であることから、式(X1)、(X2)又は(X3)で表される基がより好ましい。
【0020】
とりわけ、原料化合物の入手容易性、トリアリールアミン誘導体の有機溶媒への溶解性、トリアリールアミン誘導体の電荷輸送性向上能等のバランスを考慮すると、Xは、式(X1)で表される基が最適である。
【0021】
以下、本発明のトリアリールアミン誘導体の具体例を挙げるが、これらに限定されない。なお、表中、「Ph」はフェニル基を、「1−NAP」は1−ナフチル基を、「2−NAP」は2−ナフチル基を、「1−ANT」は1−アントリル基を、「2−ANT」は2−アントリル基を、「1−PHE」は1−フェナントリル基を、「2−PHE」は2−フェナントリル基を、「3−PHE」は3−フェナントリル基を、「4−PHE」は4−フェナントリル基を、「9−PHE」は9−フェナントリル基を、それぞれ示す。また、表中、「Ar
1〜Ar
4」、「X」、「A」それぞれの例は、ある行に例示される化合物における式(1)の各置換基の種類を示す。すなわち、例えば、下記表中、(1−1)の化合物は、以下のとおりである。
【化9】
【0040】
[トリアリールアミン誘導体の合成方法]
本発明のトリアリールアミン誘導体は、下記スキームAで表されるように、式(3)で表されるアミン化合物と式(4)〜(7)で表されるハロゲン化化合物とを、触媒存在下で反応させることによって合成することができる。
【0041】
【化10】
(式中、Ar
1〜Ar
4、A及びXは前記と同じ。Halはハロゲン原子又は擬ハロゲン基を表す。)
【0042】
また、本発明のトリアリールアミン誘導体は、下記スキームBで表されるように、式(3')で表されるハロゲン化化合物と式(4')及び(5')で表されるアミン化合物とを、触媒存在下で反応させることによっても合成することができる。
【0043】
【化11】
(式中、Ar
1〜Ar
4、A、X及びHalは前記と同じ。)
【0044】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等のフルオロアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0045】
アミン化合物とハロゲン化化合物との仕込み比は、全アミン化合物の全NH基の物質量に対し、全ハロゲン化化合物の全「Hal」基を当量以上とすればよいが、1〜1.2当量程度が好適である。
【0046】
前記反応に用いられる触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(Pd(PPh
3)
2Cl
2)、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)
2)、トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd
2(dba)
3)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(P-t-Bu
3)
2)等のパラジウム触媒等が挙げられる。これらの触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒は公知の適切な配位子とともに使用してもよい。
【0047】
触媒の使用量は、ハロゲン化化合物1molに対して、0.2mol程度とすることができるが、0.15mol程度が好適である。
また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する金属錯体に対し0.1〜5当量とすることができるが、1〜2当量が好適である。
【0048】
前記各反応は溶媒中で行ってもよい。溶媒を使用する場合、その種類は反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。具体例としては、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ラクタム及びラクトン類(N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等)、尿素類(N,N−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)等が挙げられ、これらの溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0049】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜200℃程度が好ましく、20〜150℃がより好ましい。
反応終了後は、常法にしたがって後処理をし、目的とするトリアリールアミン誘導体を得ることができる。
【0050】
[電荷輸送性ワニス]
本発明の電荷輸送性ワニスは、前記トリアリールアミン誘導体、電荷輸送性物質及び有機溶媒を含む。
【0051】
[電荷輸送性物質]
電荷輸送性物質としては、従来有機ELの分野等で用いられるものを用いることができる。その具体例としては、オリゴアニリン誘導体、N,N'−ジアリールベンジジン誘導体、N,N,N',N'−テトラアリールベンジジン誘導体等のアリールアミン誘導体(アニリン誘導体)、オリゴチオフェン誘導体、チエノチオフェン誘導体、チエノベンゾチオフェン誘導体等のチオフェン誘導体等の各種電荷輸送性化合物が挙げられる。中でも、アニリン誘導体、チオフェン誘導体が好ましく、アニリン誘導体がより好ましい。
【0052】
本発明において、電荷輸送性化合物の分子量は、平坦性の高い薄膜を与える均一なワニスを調製する観点から、好ましくは200〜9,500程度であるが、より電荷輸送性に優れる薄膜を得る観点から、その下限値は、より好ましくは300、より一層好ましくは400であり、平坦性の高い薄膜をより再現性よく与える均一なワニスを調製する観点から、その上限値は、より好ましくは8,000、より一層好ましくは7,000、さらに好ましくは6,000、さらに一層このましくは5,000以下である。なお、薄膜化した場合に電荷輸送性物質が分離することを防ぐ観点から、電荷輸送性化合物は分子量分布のない(分散度が1である)ことが好ましい(すなわち、単一の分子量であることが好ましい)。
【0053】
アニリン誘導体としては、特開第2002−151272号公報記載のオリゴアニリン誘導体、国際公開第2004/105446号記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008−032617号記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032616号記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2013/042623号記載のアリールジアミン化合物等が挙げられる。
【0054】
また、下記式(8)で表されるアニリン誘導体も好適に使用できる。
【化12】
【0055】
式(8)中、X
1は、−NY
1−、−O−、−S−、−(CR
7R
8)
L−又は単結合を表すが、m又はnが0であるときは、−NY
1−を表す。
【0056】
Y
1は、互いに独立して、水素原子、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、又はZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0057】
炭素数1〜20のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基が挙げられる。
【0058】
炭素数2〜20のアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0059】
炭素数2〜20のアルキニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0060】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0061】
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基等が挙げられる。
【0062】
R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基、又は−NHY
2、−NY
3Y
4、−C(O)Y
5、−OY
6、−SY
7、−SO
3Y
8、−C(O)OY
9、−OC(O)Y
10、−C(O)NHY
11若しくは−C(O)NY
12Y
13基を表す。
【0063】
Y
2〜Y
13は、互いに独立して、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、又はZ
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0064】
Z
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、又はZ
3で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
Z
2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、又はZ
3で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基を表す。
Z
3は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、又はカルボン酸基を表す。
【0065】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
その他、R
7〜R
8及びY
2〜Y
13のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0066】
これらの中でも、R
7及びR
8としては、水素原子又はZ
1で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子又はZ
1で置換されていてもよいメチル基がより好ましく、共に水素原子が最適である。
【0067】
Lは、−(CR
7R
8)−で表される基の数を表し、1〜20の整数であるが、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜2がより一層好ましく、1が最適である。なお、Lが2以上である場合、複数のR
7は、互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
8も、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
とりわけ、X
1としては、−NY
1−又は単結合が好ましい。また、Y
1としては、水素原子又はZ
1で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子又はZ
1で置換されていてもよいメチル基がより好ましく、水素原子が最適である。
【0069】
R
1〜R
6は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、Z
1で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基若しくは炭素数2〜20のアルキニル基、Z
2で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭素数2〜20のヘテロアリール基、又は−NHY
2、−NY
3Y
4、−C(O)Y
5、−OY
6、−SY
7、−SO
3Y
8、−C(O)OY
9、−OC(O)Y
10、−C(O)NHY
11若しくは−C(O)NY
12Y
13を表す(Y
2〜Y
13は、前記と同じ意味を表す。)。これらハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0070】
特に、式(8)において、R
1〜R
4としては、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はZ
2で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、全て水素原子が最適である。
【0071】
また、R
5及びR
6としては、水素原子、ハロゲン原子、Z
1で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、Z
2で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、又はZ
2で置換されていてもよいジフェニルアミノ基(Y
3及びY
4がZ
2で置換されていてもよいフェニル基である−NY
3Y
4基)が好ましく、水素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基がより好ましく、同時に水素原子又はジフェニルアミノ基がより一層好ましい。
【0072】
そして、これらの中でも、R
1〜R
4が水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、R
5及びR
6が水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、X
1が−NY
1−又は単結合、かつ、Y
1が水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましく、R
1〜R
4が水素原子、R
5及びR
6が同時に水素原子又はジフェニルアミノ基、X
1が−NH−又は単結合の組み合わせがより好ましい。
【0073】
式(8)において、m及びnは、互いに独立して、0以上の整数を表し、1≦m+n≦20を満たすが、得られる薄膜の電荷輸送性とアニリン誘導体の溶解性とのバランスを考慮すると、2≦m+n≦8を満たすことが好ましく、2≦m+n≦6を満たすことがより好ましく、2≦m+n≦4を満たすことがより一層好ましい。
【0074】
特に、Y
1〜Y
13及びR
1〜R
8において、Z
1は、ハロゲン原子、又はZ
3で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、ハロゲン原子、又はZ
3で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
Z
2は、ハロゲン原子、又はZ
3で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、又はZ
3で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
Z
3は、ハロゲン原子が好ましく、フッ素がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
【0075】
Y
1〜Y
13及びR
1〜R
8では、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。また、アリール基及びヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0076】
前記式(8)で表されるアニリン誘導体の分子量は、通常300〜5,000であるが、溶解性を高める観点から、好ましくは4,000以下であり、より好ましくは3,000以下であり、より一層好ましくは2,000以下である。
【0077】
なお、前記アニリン誘導体の合成法としては、特に限定されないが、Bulletin of Chemical Society of Japan, 67, pp. 1749-1752 (1994)、Synthetic Metals, 84, pp. 119-120 (1997)、Thin Solid Films, 520(24), pp. 7157-7163 (2012)、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2008/129947号等に記載の方法が挙げられる。
【0078】
式(8)で表されるアニリン誘導体の具体例として、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。下記式中、DPAはジフェニルアミノ基を表し、Phはフェニル基を表し、TPAはp−(ジフェニルアミノ)フェニル基を表し、Npは1−ナフチル基を表す。
【0081】
本発明のワニス中の本発明のトリアリールアミン誘導体の含有量は、電荷輸送性物質やドーパントの種類や量、所望の電荷輸送性等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、質量比で、電荷輸送性物質及びドーパントの総質量に対して、通常0.1〜50質量%程度であるが、好ましくは0.5〜40質量%程度、より好ましくは0.8〜30質量%程度、より一層好ましくは1〜20質量%程度である。
【0082】
[有機溶媒]
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性物質及びドーパントを良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。
【0083】
このような高溶解性溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する全溶媒中5〜100質量%とすることができる。
【0084】
なお、電荷輸送性物質及びドーパントは、いずれも前記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることがより好ましい。
【0085】
また、本発明においては、ワニスに、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種含有させることができる。このような溶媒を加えることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、用いる塗布方法に応じたワニス調製が可能となる。
【0086】
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%が好ましい。
【0088】
更に、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する全溶媒中1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
【0089】
このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、n−ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0090】
本発明のワニスの粘度は、作製する薄膜の厚みや固形分濃度等に応じて適宜設定されるものではあるが、通常、25℃で1〜50mPa・sである。また、本発明の組成物の固形分濃度は、組成物の粘度及び表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜20.0質量%程度であり、組成物の塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5〜10.0質量%程度、より好ましくは1.0〜5.0質量%程度である。なお、ここでいう固形分とは、本発明の組成物に含まれる電荷輸送性物質及びドーパントを意味する。
【0091】
[ドーパント]
本発明の電荷輸送性ワニスは、得られる薄膜の用途に応じ、その電荷輸送能の向上等を目的としてドーパントを含んでもよい。ドーパントは、ワニスに使用する少なくとも1種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、無機系ドーパント、有機系ドーパントのいずれも使用できる。
【0092】
ドーパントを使用する場合、その配合量は、ドーパントの種類に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、電荷輸送性物質1に対し、質量比で、0.5〜10.0程度、より好ましくは3.0〜9.0程度である。
【0093】
無機系ドーパントとしては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl
3)、四塩化チタン(IV)(TiCl
4)、三臭化ホウ素(BBr
3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF
3・OEt
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、塩化銅(II)(CuCl
2)、五塩化アンチモン(V)(SbCl
5)、五フッ化アンチモン(V)(SbF
5)、五フッ化ヒ素(V)(AsF
5)、五フッ化リン(PF
5)、トリス(4−ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等の金属ハロゲン化物;Cl
2、Br
2、I
2、ICl、ICl
3、IBr、IF
4等のハロゲン;リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等のヘテロポリ酸等が挙げられる。
【0094】
有機系ドーパントとしては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p−スチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7−ジブチル−2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3−ドデシル−2−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4−ヘキシル−1−ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2−オクチル−1−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7−へキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−ヘキシル−2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7−ジノニル−4−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7−ジノニル−4,5−ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号に記載されているアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号に記載されているアリールスルホン酸化合物、ポリスチレンスルホン酸等のアリールスルホン化合物等が挙げられる。これら無機系及び有機系のドーパントは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0095】
これらの中でも、本発明のトリアリールアミン誘導体の正孔輸送向上性は、ドーパントとしてヘテロポリ酸を用いた場合に特に顕著に発揮される。
【0096】
[電荷輸送性ワニスの調製法]
電荷輸送性ワニスの調製法としては、特に限定されないが、例えば、本発明のトリアリールアミン誘導体、電荷輸送性物質等を高溶解性溶媒に溶解させ、そこへ高粘度有機溶媒を加える手法や、高溶解性溶媒と高粘度有機溶媒を混合し、そこへ本発明のトリアリールアミン誘導体、電荷輸送性物質等を溶解させる手法が挙げられる。
【0097】
本発明においては、電荷輸送性ワニスは、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、本発明のトリアリールアミン誘導体、電荷輸送性物質等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロオーダーのフィルダー等を用いて濾過することが望ましい。
【0098】
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成することで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
【0099】
ワニスの塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられるが、これらに限定されない。塗布方法に応じて、ワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
【0100】
また、本発明のワニスを用いる場合、焼成雰囲気も特に限定されるものではなく、大気雰囲気だけでなく窒素等の不活性ガスや真空中でも、均一な成膜面及び高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができる。
【0101】
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度等を勘案して、100〜260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140〜250℃程度が好ましく、145〜240℃程度がより好ましい。
【0102】
なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等適当な機器を用いて行えばよい。
【0103】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で正孔注入層として用いる場合、5〜200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0104】
本発明の電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、正孔注入層として好適に用いることができるが、正孔注入輸送層等の電荷輸送性機能層としても使用可能である。
【0105】
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、前述の本発明の電荷輸送性薄膜を有するものである。
【0106】
有機EL素子の代表的な構成としては、下記(a)〜(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
【0107】
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入層及び正孔注入輸送層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、それぞれ正孔輸送層及び発光層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
【0108】
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
【0109】
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0110】
本発明の電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層として好適に用いることができ、正孔注入層としてより好適に用いることができる。
【0111】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄をあらかじめ行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし、陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0113】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
【0114】
前述の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。この正孔注入層の上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法又は塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
【0115】
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0116】
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N'−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−2,2'−ジメチルベンジジン、2,2',7,7'−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、2,2',7,7'−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N'−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン、2,2'−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2'−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2',7,7'−テトラ(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−9,9−スピロビフルオレン、N,N,N',N'−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3'−ジメチルベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレニル)−N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−ベンジジン、N,N,N',N'−テトラ(ナフタレニル)−ベンジジン、N,N'−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ジフェニルベンジジン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ジフェニル−N
1,N
4−ジ(m−トリル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N
2,N
2,N
6,N
6−テトラフェニルナフタレン−2,6−ジアミン、トリス(4−(キノリン−8−イル)フェニル)アミン、2,2'−ビス(3−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4',4''−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4',4''−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5''−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2':5',2''−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類等の正孔輸送性低分子材料等が挙げられる。
【0118】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq
3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2,2'−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,3,5−トリス(ピレン−1−イル)ベンゼン、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン、2,2'−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、6,13−ジ(ビフェニル−4−イル)ペンタセン、3,9−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、3,10−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、トリス[4−(ピレニル)−フェニル]アミン、10,10'−ジ(ビフェニル−4−イル)−9,9'−ビアントラセン、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−[1,1':4',1'':4'',1'''−クォーターフェニル]−4,4'''−ジアミン、4,4'−ジ[10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1−(7−(9,9'−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、4,4',4''−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2'−ジメチルビフェニル、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン、2,2',7,7'−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ(p−トリル)フルオレン、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)−フェニル]フルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−メチルフェニルメタン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン、4,4''−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル、4,4'−ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール、2,6−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン、9,9−ジメチル−N,N−ジフェニル−7−(4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、9,9'−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)、3−(2,7−ビス(ジフェニルホスホリル)−9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール、4,4,8,8,12,12−ヘキサ(p−トリル)−4H−8H−12H−12C−アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)−1,10−フェナントロリン、2,2'−ビス(4−(カルバゾール−9−イル)フェニル)ビフェニル、2,8−ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2−メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6−ビス(カルバゾール−9−イル)−9−(2−エチル−ヘキシル)−9H−カルバゾール、3−(ジフェニルホスホリル)−9−(4−(ジフェニルホスホリル)フェニル)−9H−カルバゾール、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニルカルバゾール等が挙げられる。これらの材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
【0119】
発光性ドーパントとしては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N'−ジメチル−キナクリドン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)
3)、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)
2(acac))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)
3)、9,10−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]アントラセン、9,10−ビス[フェニル(m−トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N
10,N
10,N
10,N
10−テトラ(p−トリル)−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N
10,N
10,N
10,N
10−テトラフェニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、N
10,N
10−ジフェニル−N
10,N
10−ジナフタレニル−9,9'−ビアントラセン−10,10'−ジアミン、4,4'−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1'−ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、1,4−ビス[2−(3−N−エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4'−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス[3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)]イリジウム(III)、4,4'−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N'−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N'−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、2,7−ビス{2−[フェニル(m−トリル)アミノ]−9,9−ジメチル−フルオレン−7−イル}−9,9−ジメチル−フルオレン、N−(4−((E)−2−(6((E)−4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン−2−イル)ビニル)フェニル)−N−フェニルベンゼンアミン、fac−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2)、mer−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C
2)、2,7−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−スピロビフルオレン、6−メチル−2−(4−(9−(4−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)アントラセン−10−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4−ジ[4−(N,N−ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4−ビス(4−(9H−カルバゾール−9−イル)スチリル)ベンゼン、(E)−6−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)−N,N−ジフェニルナフタレン−2−アミン、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾール)((2,4−ジフルオロベンジル)ジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1−(2,4−ジフルオロベンジル)−3−メチルベンズイミダゾリウム)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(4',6'−ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−2−(2'−ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4',6'−ジフルオロフェニルピリジナト)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)−6−メシチル−N−(6−メシチルキノリン−2(1H)−イリデン)キノリン−2−アミン−BF
2、(E)−2−(2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4'−ジ−t−ブチル−(2,2')−ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8−ジ−t−ブチル−5,11−ビス(4−t−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジン)−ピラゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジフェニルメチルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、ビス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2−フェニル−4−メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2−(3−メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジン)(3−(ピリジン−2−イル)−2H−クロメン−2−オネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4−フェニルチエノ[3,2−c]ピリジナト−N,C
2)アセチルアセトネート、(E)−2−(2−t−ブチル−6−(2−(2,6,6−トリメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピローロ[3,2,1−ij]キノリン−8−イル)ビニル)−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(1−イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス[(4−n−ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4−n−ヘキシルフェニル)キソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
【0120】
電子輸送層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリノレート−リチウム、2,2',2''−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニル)5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、6,6'−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2'−ビピリジン、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,7−ビス[2−(2,2'−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェニル−ジピレニルホスフィンオキサイド、3,3',5,5'−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、1,3,5−トリス[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン、4,4'−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン、3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン等が挙げられる。
【0121】
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al
2O
3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、三酸化モリブデン(MoO
3)、アルミニウム、リチウムアセチルアセトネート(Li(acac))、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
【0122】
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0123】
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法のその他の例は、以下のとおりである。
【0124】
前述した有機EL素子作製方法において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行うかわりに、正孔輸送層、発光層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有する有機EL素子を作製することができる。具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して前記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送層、発光層を順次形成し、更に陰極電極を蒸着して有機EL素子とする。
【0125】
使用する陰極及び陽極材料としては、前述のものと同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
【0126】
正孔輸送層及び発光層の形成方法としては、正孔輸送性高分子材料若しくは発光性高分子材料、又はこれらにドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、それぞれ正孔注入層又は正孔輸送層の上に塗布した後、焼成することで成膜する方法が挙げられる。
【0127】
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1'−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1'−ペンテン−5'−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N'−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4'−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
【0128】
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0129】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等が挙げられる。溶解又は均一分散法としては、攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
【0130】
塗布方法としては、特に限定されず、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
【0131】
焼成方法としては、不活性ガス下又は真空中、オーブン又はホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【0132】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入輸送層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
【0133】
陽極基板上に正孔注入輸送層を形成し、この正孔注入輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層及び電子注入層の形成方法及び具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0134】
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層及び電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0135】
なお、電極及び前記各層の間の任意の間に、必要に応じてホールブロック層、電子ブロック層等を設けてもよい。例えば、電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
【0136】
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料を選択する。
【0137】
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出される。そのため、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
【0138】
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等とともに封止してもよい。
【実施例】
【0139】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)
1H−NMR測定:日本電子(株)製、JNM-ECP300 FT NMR SYSTEM
(2)基板洗浄:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(3)ワニスの塗布:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(4)膜厚測定:(株)小坂研究所製、微細形状測定機サーフコーダET-4000
(5)EL素子の作製:長州産業(株)製、多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(6)EL素子の輝度等の測定:(有)テック・ワールド製、I-V-L測定システム
【0140】
[1]化合物の合成
[実施例1]トリアリールアミン誘導体Aの合成
下記反応式に従い、式(1−31)で表されるトリアリールアミン誘導体Aを合成した。
【化15】
【0141】
フラスコ内に、4,4'−(パーフルオロプロパン−2,2−ジイル)ジアニリン15.0g、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム0.52g及びt−ブトキシナトリウム19.0gを入れて窒素置換をした後、そこへトルエン260mL、ブロモベンゼン21.0mL及び別途予め調製したトリ−t−ブチルホスフィンのトルエン溶液2.60mL(濃度0.143g/mL)を加え、50℃で2時間攪拌した。
攪拌終了後、反応混合物を室温まで放冷し、放冷した混合物をろ過した。そして、ろ液と飽和食塩水とを用いて分液処理した。
次いで、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥した有機層に活性炭を加え室温で30分間攪拌した。そして、活性炭をろ過で除去した後にろ液を濃縮し、得られた濃縮液を、攪拌した状態に保ったメタノール1.3Lに滴下し、1時間そのまま攪拌した。
その後、得られたスラリー溶液をろ過し、ろ物を減圧下で乾燥して目的とするトリアリールアミン誘導体Aを得た(収量27.0g)。
1H−NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3): δ 7.27-7.30 (m,7H), 7.20-7.22 (m,5H), 7.03-7.13 (m,12H), 6.97 (d, J=9.2Hz, 4H).
【0142】
[2]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例2−1]
電荷輸送性物質である式(f)で表されるオリゴアニリン誘導体0.106g及びドーパントであるリンタングステン酸0.636gを、窒素雰囲気下で1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン8gに溶解させた。得られた溶液に、シクロヘキサノール12g及びプロピレングリコール4gを加えて攪拌し、そこへトリアリールアミン誘導体A0.074gを加えて更に攪拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。なお、式(f)で表されるオリゴアニリン誘導体は、国際公開第2013/084664号記載の方法に従って合成した。
【化16】
【0143】
[比較例1]
トリアリールアミン誘導体Aを加えなかった以外は、実施例2−1と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した。
【0144】
[3]二層素子の製造及び特性評価
[実施例3−1]
実施例2−1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、50℃で5分間乾燥し、更に、大気雰囲気下、230℃で15分間焼成し、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。ITO基板としては、インジウム錫酸化物(ITO)が表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10
-5Pa)を用いてα−NPD、及びアルミニウムの薄膜を順次積層し、二層素子を得た。この際、蒸着レートは、α−NPD、及びアルミニウムともに0.2nm/秒の条件で行い、膜厚は、それぞれ30nm及び100nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、二層素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点−85℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製、HD-071010W-40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm
2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0145】
[比較例2]
実施例2−1で得られたワニスのかわりに、比較例1で得られたワニスを用いた以外は、実施例3−1と同様の方法で二層素子を製造した。
【0146】
これらの素子について、駆動電圧3Vにおける電流密度を測定した。結果を表19に示す。
【0147】
【表19】
【0148】
表19に示したように、本発明のトリアリールアミン誘導体を電荷輸送性ワニスに加えることで、正孔輸送層への正孔輸送性を向上できることがわかった。
【0149】
[4]有機EL素子の製造及び特性評価
[実施例4−1]
実施例2−1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、50℃で5分間乾燥し、更に、大気雰囲気下、230℃で15分間焼成し、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。ITO基板としては、インジウム錫酸化物(ITO)が表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO
2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10
-5Pa)を用いてα−NPD、Alq
3、フッ化リチウム、及びアルミニウムの薄膜を順次積層し、有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、α−NPD、Alq
3及びアルミニウムについてはともに0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ30nm、40nm、0.5nm及び1,000nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、実施例3−1と同様に封止を行った。
【0150】
[比較例3]
実施例2−1で得られたワニスのかわりに、比較例1で得られたワニスを用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を製造した。
【0151】
作製した素子について、駆動電圧5Vにおける電流密度、輝度及び電流効率を測定した。結果を表20に示す。なお、各素子の発光面サイズの面積は、2mm×2mmである。
【0152】
【表20】
【0153】
表20に示したように、本発明のトリアリールアミン誘導体を含む電荷輸送性ワニスから得られる薄膜を正孔注入層として用いることで、輝度特性に優れる有機EL素子を得ることができた。