【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために
手段1では、被験者に評価対象レンズを装用させ、大脳の視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の少なくとも一方の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象を前記評価対象レンズを通して目視させ、前記評価対象レンズによる視覚刺激対象の目視時の大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の誘発活動(以下、大脳視覚野等の誘発活動)を測定し、前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段2では、前記評価対象レンズは、レンズ特性の異なるものを複数用意しておき、各評価対象レンズ毎に前記視覚刺激対象目視時の前記大脳視覚野等の誘発活動を測定し、大脳の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段3では、前記誘発活動は視覚誘発磁界を測定し、その値に基づいて評価することをその要旨とする。
また
手段4では、前記誘発活動は視覚誘発電位を測定し、その値に基づいて評価することをその要旨とする。
また
手段5では、前記視覚刺激対象は塗りつぶしの無い線分の組み合わせによって構成されていることをその要旨とする。
また
手段6では、前記視覚刺激対象は有彩色の組み合わせによって構成されていることをその要旨とする。
また
手段7では、前記視覚刺激とは空間周波数であって、この空間周波数によって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段8では、前記視覚刺激とは高輝度光によるまぶしさであって、このまぶしさによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段9では、前記視覚刺激とはコントラストであって、このコントラストによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段10では、前記視覚刺激対象の有彩色の組み合わせはコントラストを評価したい風景、画像または映像などから選択された色から構成されることをその要旨とする。
【0006】
また
手段11では、前記大脳視覚野等の誘発活動の評価は、前記大脳視覚野の特定部位又は網膜視覚細胞の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象呈示時から誘発活動が出現するまでの時間を評価指標とすることをその要旨とする。
また
手段12では、前記大脳視覚野等の誘発活動の評価は、前記大脳視覚野の特定部位の活動又は網膜視覚細胞の特定部位を誘発するための視覚刺激対象を呈示したことによる誘発活動の大きさを評価指標とすることをその要旨とする。
また
手段13では、前記誘発活動が出現するまでの時間が早い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また
手段14では、前記誘発活動の大きさが大きい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また
手段15では、前記視覚刺激がまぶしさである場合においては、前記網膜視覚細胞における前記誘発活動が出現するまでの時間は遅い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また
手段16では、前記網膜視覚細胞における前記誘発活動の大きさが小さい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また
手段17では、前記大脳の誘発活動から紡錘状回の誘発活動を分離し、分離後の紡錘状回の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段18では、前記大脳視覚野の特定部位は、2次視覚野または3次視覚野であることをその要旨とする。
また
手段19では、前記大脳の誘発活動から2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を分離し、分離後の2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段20では、前記大脳の誘発活動から1次視覚野の誘発活動と2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を分離し、分離後の1次視覚野の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また
手段21では、視覚誘発電位を用いる場合において、1次視覚野を視覚刺激することにより誘発されるP100成分の直後であって、P100成分とはピーク極値が逆となる3次視覚野由来の誘発電位を評価に用いることをその要旨とする。
また
手段22では、前記網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動は、前記大脳視覚野等の誘発活動から分離して算出することをその要旨とする。
また
手段23では、前記視覚刺激対象の輝度又はコントラストは、評価対象の眼鏡レンズの光学性能の差または形状の差または分光波形の差により設定し、評価対象の眼鏡レンズの光学性能の差または形状の差または分光波形の差が小さい場合には、前記視覚刺激の輝度またはコントラストを小さく設定することをその要旨とする。
また
手段24では、前記視覚刺激対象は視覚下半域に配置されることをその要旨とする。
また
手段25では、前記視覚刺激対象はレンズの中心から離れた周辺部のみを通って眼に入射するように呈示することをその要旨とする。
また
手段26では、前記評価対象の眼鏡レンズはレンズの周辺部の形状を少しずつ変化させた非球面レンズであることをその要旨とする。
また
手段27では、前記評価対象の眼鏡レンズはレンズ形状を少しずつ変化させた累進屈折力レンズであることをその要旨とする。
また
手段28では、前記評価対象の眼鏡レンズは、光の吸収または反射等により、レンズの分光透過率を変化させたレンズであることをその要旨とする。
また
手段29では
手段1〜28のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法を用いることをその要旨とする。
【0007】
上記のような構成においては、まず被験者に評価対象レンズを装用させ、視覚刺激対象をそのレンズを通して目視させ、その結果得られる大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の誘発活動(以下、大脳視覚野等の誘発活動)を測定し、大脳視覚野等を評価する。
ある単一の評価対象のレンズについて測定した誘発活動を評価してもよく、レンズ特性の異なる評価対象レンズを複数用意しておき、これらのレンズについて測定した誘発活動を評価してもよい。評価は必ずしも最良の結果のものを選択するというわけではない。ここではあくまで、評価することでレンズ選択が客観的に可能な情報を得ることができるという点がポイントである。
評価は大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方であり、いずれかのみ、あるいは両方を評価してもよい。ここで、網膜視覚細胞の特定部位とは、外界からの光(視覚刺激)が電気信号に変換され、大脳視覚野に向けて電気信号として伝送される部位であり、網膜色素上皮細胞、錐体細胞、捍体細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞、視神経などである。網膜視覚細胞の活動として計測機器で記録できる特定の活動部位は、明順応や暗順応などの眼の順応状態によっても変化し、また、どのような計測機器でどのように活動を記録するかによっても変化するため、特に限定されるものではなく、網膜付近で視覚刺激により微弱な電流の変化もしくは微弱な磁界(磁束密度)の変化を発生させる部位という概念である。
また前記視覚刺激は大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくても一方の活動を誘発するためのものであるとする。前記視覚刺激対象を評価のターゲットとする大脳視覚野等の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象とすることで、大脳視覚野等の特定部位の誘発活動を効率的に測定することが出来るためである。
このような構成とすることで、ユーザーに好適なレンズであるかどうかや、複数のレンズから好適なものを選択したり、レンズについて客観的に評価することができる。
【0008】
具体的には、誘発活動は視覚誘発磁界を測定し、その値に基づいて評価することが可能である。また、誘発活動は視覚誘発電位を測定し、その値に基づいて評価することが可能である。脳の誘発活動は脳の特定部位に微弱な電流の変化を発生させるためこの微弱な電流の変化を磁界(磁束密度)又は電位(電圧)の変化として経時的に測定することで視覚刺激を与えた際の大脳視覚野等の誘発活動の変化具合がわかることとなる。そして、大脳視覚野等の特定部位の誘発活動の測定結果に基づいて評価対象レンズについてレンズを評価することができる。
また、大脳視覚野等の誘発活動の評価は、大脳視覚野等の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激呈示時から誘発活動が出現するまでの時間を評価指標とすることができる。更に、この場合に誘発活動が出現するまでの時間が早い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することができる。一般に視覚刺激に対して脳が反応するため視覚刺激を受けてからその変化が生じるまでの時間(潜時)が早いレンズほどユーザーが刺激を認識しやすい状態であり、効率的に脳や網膜等で視覚情報が処理されていると考えられるため、これをもって当該ユーザーに適していると評価するものである。ただし、「まぶしさ」のようにユーザーが刺激を知覚しにくい状態の方が好ましい視覚刺激である場合、網膜視覚細胞の特定部位における誘発活動が生じるまでの時間(潜時)は遅い方が好ましいレンズ条件であると評価することが出来る。これは、網膜視覚細胞が早く活動するほど網膜は強い光を受けている状態であると考えられるため、潜時が遅い方がまぶしさを感じていないと評価するものである。
また、大脳視覚野等の誘発活動の評価は、大脳視覚野等の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激を呈示したことによる誘発活動の大きさ(振幅)を評価指標とすることができる。更にこの場合に誘発活動の大きさが大きい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することができる。これは視覚刺激に対して脳や網膜等が反応し、その変化が大きいほどユーザーが視覚情報を知覚しやすい状態であると考えられるため、これをもって当該ユーザーに適していると評価するものである。ただし、「まぶしさ」のようにユーザーが刺激を知覚しにくい状態の方が好ましい視覚刺激である場合、網膜視覚細胞の特定部位における誘発活動の大きさ(振幅)は小さい方が好ましいレンズ条件であると評価することが出来る。これは、網膜視覚細胞が大きく活動するほど網膜は強い光を受けている状態であると考えられるため、振幅が小さい方がまぶしさを感じていないと評価するものである。
このように潜時速度と誘発活動の大きさ(振幅)のいずれかの値あるいは両方の値によってレンズを評価し、より好適なレンズを選択することが可能である。
ここに、電位変化は視覚誘発電位(VEP)を脳波計によって計測することが一般的である。また、磁界(磁束密度)変化は視覚誘発磁界(VEF)を脳磁計によって計測することが一般的である。
【0009】
視覚刺激を与えるための対象は塗りつぶしのない線分の組み合わせから構成することが可能である。視覚野には輪郭や線で構成される線分を検出する細胞があるため、このような刺激を目視させることで特定の脳部位に脳活動を誘発できるためである。
視覚刺激を与えるための対象は有彩色の組み合わせで構成することが可能である。日常生活において見るもの(レンズを通して見られるもの)は色彩豊かな有彩色で構成されているため、視覚刺激対象を有彩色とすることで日常生活により近い視覚刺激についての大脳視覚野等の特定部位の誘発活動を評価できるためである。
また、視覚刺激は空間周波数であって、この空間周波数によって誘発される大脳視覚野等の誘発活動を評価することが可能である。大脳の1次視覚野には2〜4cpd(cycle per degree)程度の高い空間周波数を認識する細胞があることが知られている。眼鏡レンズの屈折誤差などによりレンズを通して被験者に知覚される空間周波数が変わるため、空間周波数を視覚刺激として大脳視覚野等の誘発活動を評価することにより眼鏡レンズを評価することが出来る。そのため、視覚刺激対象は2〜4cpdの空間周波数を含んで構成される事が好ましい。
また、視覚刺激を高輝度光によるまぶしさとする場合には、このまぶしさによって誘発される大脳視覚野等の誘発活動を評価することが可能である。このとき高輝度光とは呈示する視覚刺激対象の輝度が1000cd/m
2以上であると網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の波形がきれいに測定できるため好ましい。
また、視覚刺激を与えるための対象を隣り合う領域の輝度や色の差異によって得られるコントラストとする場合には、このコントラストによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することが可能である。コントラストは隣り合う領域の輝度や色の差異で表されるため、塗りつぶしのない線分は空間周波数や線分としての視覚刺激対象としてだけでなく、コントラストとしても視覚刺激の対象となる場合がある。また、ある輝度状態のある図形について、輝度が増した場合には視覚刺激として図形のコントラストとともにまぶしさも兼ねる場合がある。コントラストによって視覚を刺激する際に使用される前記視覚刺激対象を有彩色の組み合わせとする場合においては、コントラストを評価したい風景、画像または映像などから評価したいコントラストの色を選択することが好ましい。これにより、日常生活でレンズを通して見られる色彩についてのコントラストを評価できるためである。
網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動は、前記大脳視覚野等の誘発活動から、大脳視覚野の誘発活動と網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動とを分離することが好ましい。誘発活動の算出は、網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動を、1つ以上の電流源位置(活動源位置)と電流(活動)の強さと電流の方向を仮定して推定解析するダイポール推定などを用いることが好ましい。
【0010】
上記において大脳視覚野の誘発活動の評価は大脳視覚野の特定部位の特に2次視覚野又は3次視覚野の脳活動に基づくことがより好ましい。その理由は次の通りである。
脳の視覚刺激による情報は次のように伝達される。まず眼から入った光は網膜に到達し、電気刺激に変換され視神経を経由して後頭葉にある1次視覚野に到達する。1次視覚野に到達した視覚情報は腹側経路と背側経路に分かれ、腹側経路では、1次視覚野に到達した情報は2次視覚野、3次視覚野と脳内で順に処理されながらより高次の脳部位へと伝えられていく。背側経路では1次視覚野に到達した情報は6次視覚野で処理されながら頭頂に伝えられていく。
従来から、1次視覚野由来の脳反応としてP100成分を誘導するパターンリバーサル刺激が眼科等で臨床的に使用されている。パターンリバーサル刺激は、大脳の視覚領のニューロンは網膜の均一な照射による刺激には鈍感で、輪郭やコントラストを有する図形による視覚刺激に対して高い感受性を持っているということを利用して開発された刺激で、視覚情報の処理段階の中で比較的早い成分を誘発することから、個人による潜時の差や屈折状態による差を受けにくいと言う特徴を持つ。具体的には反転する市松模様を看者に繰り返し注視させ、1次視覚野由来のP100成分を誘導するものである。P100成分とは視覚刺激を受けてからその刺激に応じた変化までが概ね100ミリ秒後であることから、名づけられた示準的な反応である。
しかし、パターンリバーサル刺激によるP100成分はα波の出やすい人では判別しにくい場合があるし、人により出にくい場合もある。また、P100成分の後の活動(すなわち腹側経路では2次視覚野や3次視覚野の脳活動、背側経路では6次視覚野の脳活動)と重なって判別が難しくなることもある。更に「眼鏡レンズを含む視覚路」の評価、つまり上記複数の評価対象レンズを装用した場合の評価においてレンズによる屈折状態による差も比較的受けにくい成分であることから本発明においては必ずしも適したものとはいえない。そのため、2次視覚野、3次視覚野の誘発活動に由来する電位変化又は磁束密度変化(以下の、実施例ではN130成分など)を使用することがレンズの評価においては好ましいといえる。
所定の視覚刺激を与えることによって出現する電位変化はP100成分の直後であって、P100成分とはピーク極値が逆となる3次視覚野の誘発活動に由来するものであることが好ましい。これは具体的には例えば実施例における3次視覚野の誘発活動由来のN130成分である。このような脳反応はP100成分とは異なり微妙なレンズの差を反映してよく測定結果が変動するため異なる評価対象レンズを装用した際のレンズの屈折状態の差をよく反映した脳反応を示すからである。
尚、これら成分の表記において数字が意味するものは視覚刺激を受けてからの脳反応までの時間(ミリ秒)を示すものであるが、この出現タイミングは視覚刺激対象の輝度やコントラストによっても変動するため標準的な条件において「そのあたりの時間帯で出現する」ことを示すに過ぎず、その標準的な条件から視覚刺激対象の条件に伴って出現タイミングが変動する場合には、変動前の出現タイミングをその成分を判別するための名称とするものである。このような命名は、例えば、P100の他、認知判断に関連するP300などがある。
また、このように大脳視覚野の誘発活動の評価は2次視覚野又は3次視覚野の誘発活動に基づくことがより好ましいため、視覚野全体の脳波情報から2次視覚野又は3次視覚野の脳波情報を分離し、分離後の2次視覚野又は3次視覚野の脳波情報に対する電位変化又は磁束密度変化を測定するようにすることが、1次視覚野由来の脳反応の影響を受けずに好ましい。
また、大脳視覚野の誘発活動を1次視覚野と2次視覚野又は3次視覚野の誘発活動を分離して評価する場合においては、分離後の1次視覚野の誘発活動の大きさについて評価することが2次視覚野または3次視覚野由来の脳反応の影響を受けずに好ましい。更に、大脳視覚野等の誘発活動から6次視覚野の誘発活動を分離できる場合においては、6次視覚野の活動も分離して1次視覚野の誘発活動の大きさについて評価することが好ましい。
また、前記視覚刺激がまぶしさである場合、前記大脳の誘発活動から紡錘状回の誘発活動を分離し、分離後の紡錘状回の誘発活動を評価することが好ましい。紡錘状回とはフュージフォームジャイラスとも呼ばれる高次の視覚野であるが、形態の認知、顔の認知、色の認知などに関連することが知られ、レンズによるまぶしさと相関のある脳反応が得られるためである。特に150ms〜170msの誘発活動は他の誘発活動と分離し易いため好ましい。
【0011】
視覚刺激を与えるために目視する対象は視覚下半域に配置されることが好ましい。視覚上半域、あるいは視覚全域に配置するよりも、強い誘発活動として計測可能であるためである。
また、視覚刺激を与えるために目視する対象の輝度やコントラストを低くすることで視覚誘発活動でレンズの装用差を判別し易くできるため、測定目標に応じて調整することが好ましい。輝度の調整は刺激の線分の太さや濃さの調整、コントラストは測定環境の明るさの調整や刺激の線分と線分以外部位の輝度の差の調整などによって可能である。また、視覚刺激を与えるために目視する対象を有彩色で構成する場合には、コントラストは刺激の線分の色と線分以外の色の組み合わせなどによって調整することが可能である。
評価対象の眼鏡レンズは例えばレンズの周辺部の形状を少しずつ変化させた非球面レンズが挙げられる。中心から周縁にかけてレンズ度数を少しずつ変化させてもよい。
非球面レンズは単焦点レンズに限られない。レンズ形状を少しずつ変化させた累進屈折力レンズでもよい。特に、視覚刺激対象を視覚下半域に配置する場合においては、累進屈折力レンズの面形状や光学的な変化はレンズ上部よりもレンズ下部で大きいため好適である。また、光の吸収または反射等によりレンズの分光透過率(分光分布)を変化させたレンズを選択することも可能である。分光透過率とは、光の各波長においてどれだけの割合の光がレンズを透過しているかというレンズを透過する光の波長分布を示すものであり、分光透過率を変化させることによりレンズを通して見た場合のコントラストやまぶしさを変化させることが出来る。
また、大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法を用いて眼鏡レンズの設計を行うことが好ましい。眼鏡レンズの設計とは、累進屈折力レンズや非球面レンズのように眼鏡レンズのレンズ形状を制御することによりレンズ各点における屈折力などを制御してレンズの設計情報を決定すること、及び眼鏡レンズ上または内部の光の吸収や反射を制御するなどすることによりレンズの分光透過率(分光分布)を制御することによりレンズの設計情報を決定することなどである。例えば、大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価を複数の評価対象レンズについて行い、評価対象レンズのレンズ設計情報と、その対応する大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価値を得ることができる。その複数の対応するレンズ設計情報と評価値から、レンズ設計情報の変動による評価値の変動を解析することで最適なレンズ設計情報を算出することが出来る。また、予めレンズ設計情報と評価値の検量線を作成しておき、測定した評価値をその検量線に対応させることで測定した評価値からレンズ設計情報を算出することが好ましい。