【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術 /維持管理ロボット・災害対応ロボットの開発/ 二輪型マルチコプタを用いたジオタグ付近接画像を取得可能な橋梁点検支援ロボットシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陸上走行可能な車輪付の飛行体は、トンネル、ビル、高架橋等の構造物の検査に有用である。
しかし、高所を検査する際、飛行体が地上から飛行して点検箇所に接近して検査するため、検査前の接近に要する飛行または走行により、飛行体に搭載しているバッテリーのエネルギーの多くが消費され、検査時間が短くなると共に、頻繁に新たなバッテリーへの交換が必要となる。さらに、検査中断時には、一旦着陸させるか、その場で飛行させる必要があるため、作業効率が悪いなどの問題点がある。
また、高架橋など高所を検査する際、検査前の接近と検査後の回収の飛行または走行に多くのエネルギーを消費し点検時間が短くなってしまうことに加えて、高所の検査個所が狭いことが多いので高度な操縦技術が必要である。
また、強風や暴走により高所から墜落した場合、飛行体が損傷するばかりでなく、地上の作業者等に当たる可能性があり危険である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決する飛行体を提供することであり、以下の通りである。
発明1は、飛行体本体(21)と、車輪(11)と、車軸(13)と、変形可能なリンク(31、32、33、34、35、37、41、43)と、を備え、飛行体本体(21)は、推進力を発生する推進部(21−1)を有し、車輪(11)は、推進部(21−1)を囲み、リンク(31、32、33、34、35、37、41、43)は、一端において、飛行体本体(21)または車軸(11)に取り付けられ、他端において、構造物または移動可能な物に取り付け可能であり、かつ、推進部(21−1)への接触が阻害されるよう構成されていることを特徴とする飛行体(1)である。
発明2は、リンクは、ロープ(31、32)とパイプ(35、37)を有し、ロープ(31、32)は、一端が、車軸(13)の、車輪(11)を基準として推進部(21−1)とは反対側に、取り付けられ、他端が、構造物または移動可能な物に取り付け可能であり、前記一端と他端の間が、パイプ(35、37)の空洞を通り、パイプ(35、37)は、リンクが車輪(11)および推進部(21−1)に接触することを阻害する発明1に記載の飛行体である。
発明3は、ロープ(31、32)は、給電用のケーブルであることを特徴とする発明2に記載の飛行体である。
発明4は、リンクは、棒(41)とジョイント(43)を有し、棒(41)は、一端が、飛行体本体(21)に固定され、他端が、ジョイント(43)に回転自在に接合され、ジョイント(43)が移動可能な物に取り付けられたことを特徴とする発明1に記載の飛行体(1)である。
発明5は、移動可能な物は、竿(51)であることを特徴とする発明1ないし4のいずれか1つに記載の飛行体(1)である。
発明6は、竿(51)は伸縮自在であることを特徴とする発明4に記載の飛行体(1)である。
【発明の効果】
【0007】
発明1により、飛行体を高架橋の検査やビルの壁面検査などで使用する場合、不使用時には推進部を停止させ、構造物または移動可能な物に、変形可能なリンクを用いて吊り下げておけば、次に使用するとき、検査地点まで、短時間でアプローチでき、効率的かつ長時間の検査が可能になる。すなわち、検査前後の飛行または走行が大幅に短縮でき、検査時間が長く確保できる。また、頻繁に新たなバッテリーへの交換作業も大幅に削減できる。さらに、検査中断時には、検査個所の近くに吊り下げておくことがきるので、作業効率を改善できる。
また、強風や暴走により高所から墜落した場合、飛行体を吊り下げておくことができるので、飛行体の損傷を防ぐばかりでなく、地上の作業者等に当たる可能性がなくなり安全である。
発明2により、変形可能なリンクは、ロープとパイプで構成される。よって高所を検査する際、検査個所の近くに飛行体をロープにより固定して行える。
この際、ロープで吊るしただけでは、車輪や飛行体本体の推進部に、ロープが絡まる危険があるため、ロープ一端を、車輪の外側の車軸に固定し、ロープを常に車輪の外側にあるようにすると共に、車輪の外側のロープ部にはパイプの空洞を通しているので、車輪に絡んでしまうことがないと共に、飛行体の推進部に干渉することもない。
発明3により、ロープの代わりに給電ケーブルを使えば、バッテリー容量(寿命)を気にすることなく、連続して検査が行えるので、作業効率が格段に向上する。
発明4により、棒の一端を、推進部に干渉しないように飛行体本体に固定し、他端を移動可能な物にジョイントを介して回転自在に接合した車輪付き飛行体である。高所を検査する際、検査個所の近くに飛行体を移動可能な物により移動できる。よって、検査前後の飛行または走行が大幅に短縮でき、検査時間が長く確保できる。また、頻繁に新たなバッテリーへの交換作業も大幅に削減できる。また、強風や暴走により高所から墜落した場合、飛行体を吊り下げておくことができるので、飛行体の損傷を防ぐばかりでなく、地上の作業者等に当たる可能性がなくなり安全である。さらに、飛行体が狭い空間などに入り込んで推進部21−1の推進力だけでは脱出できなくても、棒に連結した移動可能な物を移動させることで容易に脱出できる。
発明5により、移動可能な物は、竿であるので、人間の手によって操作が可能になる。竿の操作力は、飛行体の推進力で、棒に回転自在に連結した竿の先端が引き上げられるので小さくなる。また、竿の操作により、飛行体を高架橋の橋梁の頂部と梁の底面(天井)に設置されている支持部などの構造物奥まで容易に移動することができる。また、飛行体が狭い空間などに入り込んで推進部21−1の推進力だけでは脱出できなくても、竿を操作することで容易に脱出できる。
発明6により、竿は伸縮自在である。よって、竿51は、先端部に装着した飛行体の推進により長く伸ばすことがきるので、検査作業が軽減できる。また、長くて嵩張る竿を短く収納できるので、持ち運びや保管が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、飛行体1の第1実施形態の構成を示す矢視図である。
飛行体本体21は、4つの推進部21−1、1つの制御部21−2、4本のフレーム21−3等からなる。図示しないが、バッテリーや計測機器等も飛行体本体21に搭載されている。推進部21−1の各々は、当該推進部に対応する1本のフレーム21−3を介して制御部21−2に固定される。
4つの推進部21−1の各々は、回転して推進力を発生するプロペラおよび当該プロペラを回転させるモータを有する。
車輪11は、リム11−1、スポーク11−2からなる。車輪11は、車軸13の両端に車軸13に対して回転自在に取り付けられ、飛行体本体21の推進部21−1が発生する推進力により陸上を走行できる。車軸13は、制御部21−1に固定され、車輪11の回転軸となる。リム11−1とスポーク11−2は、飛行体1の飛行体本体21の横方向を立体的にカバーして保護している。
車輪11は、
図18(a)に示す球状の一体型の車輪111、
図18(b)に示す2個の半球型の車輪211、および円輪状の一体型または2個の円筒型でも良い。すなわち車輪は、半球型、多輪型、円筒型、球型でよく、これらの形状の車輪により推進部21−1の全体が保護されている飛行体1でも良い。
【0011】
車軸13の車輪11の取付け部の外側の両端には、2本のロープ31、32がそれぞれ車軸13に対して回転自在にロープ固定部17で固定されている。ロープ31、32は、それぞれパイプ35の空洞内を通されている。パイプ35は、パイプブラケット33により、パイプブラケット33とロープ固定部17との間に保持されている。パイプ35により、ロープ31、32は、車輪11に巻き込まれることが防止されている。つまり、パイプ35は、パイプ35が無い場合に比べ、ロープ31、32が車輪11および推進部21−1に接触することを阻害している。
パイプ35の空洞から出たロープ31、32は、ロープブラケット34によりも飛行体本体21から離れる側で、縒り合わせられて一本のロープ状態にされる。このロープ31、32からなる1本の、ロープブラケット34側とは反対側の端部は、構造物などに固定される。
【0012】
図2に、第1実施形態の作用を模式図で示す。
図2(a)は非飛行時、
図2(b)は飛行時を示す。
縒り合わせられたロープ31と32の端部は、高架橋の梁部イに固定されている。
図2(a)の非飛行時においては、飛行体1は、ロープ31、32により、梁部イからつり下げられている。従って、パイプ35は飛行体1の上側(より具体的には車軸13よりも上方)にある。
図2(b)の飛行時においては、飛行体1は、推進部21−1の推進力Fにより上昇する。この際、パイプ35は、飛行体1の下側(より具体的には車軸13よりも下方)へ回転して移動する。ロープ31、32はパイプにより保護され車輪11に巻き込まれない。パイプ35の長手方向の長さは車輪11の半径より大きく設定される。また、飛行体1が飛行または走行可能な範囲はロープ31、32の長さより拘束される。但し、ロープ31、32は、当該飛行または走行可能な範囲における飛行体1の挙動を拘束することは無い。
推進部21−1を停止させると、飛行体は落下するがロープ31、32により吊り下げられる。この際、ロープ31、32は、車軸13の周りに回転自在なため、パイプ35も自重で下側へ移動する。よって、パイプ35は、常に飛行体1の車輪11の外側にある。
パイプ35は、軽量の細い中空の円筒棒が良い。また直線である必要はなく、曲がった形状でも良い。これは、パイプ35に相当する部位のロープ31、32に形状を与える方法(硬化性の樹脂で固めることや固定形状をもつもので被覆するなど)で製作しても良い。また、パイプ35は、ロープ31、32よりも曲げ剛性が高い。
【0013】
図3に、第1実施形態の構造を示す。
図3(a)は飛行体とロープ取付け部を示す。車軸13に、車輪11を回転自在に、車輪固定部15で固定する。パイプ35の空洞から出たロープ32の先端を、2本に分け、その先端を接合してループ状にして孔を成形する。車軸13を孔に通しロープ固定部17を取り付ける。ロープ32のループ部は、車輪固定部15とロープ固定部17の間に回転自在に保持される。よって、パイプ35も車軸13に回転自在に保持される。ロープ31も同様である。
図3(b)はパイプ35からロープの取り出し部を示す。パイプ35の空洞から出たロープ32の部位にパイプブラケット33を、パイプ35が移動しないように取り付ける。これにより、パイプ35は、車軸13とパイプブラケット33の間に保持される。パイプ35の長さは、車軸13とパイプブラケット33の間のロープ32の長さより少し短く、ロープ32のループ部の車軸13周りの回転を拘束しない。ロープ31も同様である。
図3(c)は、ロープ31と32の連結部を示す。ロープ31と32を合わせてロープブラケット34固定する。固定した残りのロープ31と32は、1本になるように縒り合わせられている。縒り合わせられたロープ31と32の端部は、構造物などに固定される。
【0014】
図4に、飛行体とロープ取付け部の他の実施例を示す。
車軸13に直径方向に孔を開け、ロープ32の先端のループ部を通して固定する。この際、車輪11は、車軸13に、車輪固定部15(図示せず)により回転自在に固定されている。
図3(a)に示すロープ固定部17は不要である。ロープ31も同様である。
【0015】
図5に、第1実施形態の実際の使用例を示す
図5(a)は、非飛行時を示す。高架橋の梁の上部に設けられた手すり等の梁部イに、1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部を固定する。飛行体1はロープ31、32により梁部イから吊り下げられている。パイプ35は飛行体1の上部にある。
ロープ31、32により、1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部を、検査個所の近傍の梁部イに取り付けることにより、飛行体1を、推進力を使わずに検査個所に近づけることができる。検査の中断時には、推進部をオフにして、エネルギーを使わずに安全に吊るしておける。非飛行時でも水平を保つので、飛行再開時に、容易に飛行体1を制御できる。
図5(b)は飛行時を示す。高架橋の梁の上部に設けられた手すり等の梁部イに、1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部を固定する。飛行体1はロープ31、32により梁部イから吊り下げられている。パイプ35は飛行体1の下部にある。
推進部21−1を作動させ推進力で、飛行体1を構造物の梁イの天井までに上昇させ車輪11接触させる。飛行体1は、車輪11が天井に接触しているので、接触摩擦力が作用して安定して移動の操作ができる。ここでは、高架橋の橋脚ロと梁イを接合している支持部ハを観察する。支持部ハは、複雑な構造物奥に設置されているが、1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部を、検査個所である支持部ハの近傍の梁部イに取り付けることにより、検査前の接近と検査後の回収の飛行または走行のためのエネルギー消費が少なくできる。よって、検査時間が多く確保できるようになる。
また、強風時や暴走時でも、飛行体1はロープ31、32の長さの範囲内にとどまり、高所から墜落することが防止できる。よって墜落による飛行体の損傷が防止でき、地上の作業者等に当たる危険も防止できる。
また、ロープ31、32の長さの調整により、飛行体1の位置や移動速度などを制御できる。
【0017】
表1は、第1実施形態の試作機の仕様を示す。
飛行体1は、外径寸法が、幅700mm、奥行660mm、高さ660mmで、総重量が2kgである。ロープ31、32は、軽量であると共に飛行体1の総重量と飛行体1の推進力を考慮した機械的強度、および紐、糸、チェーン等の柔軟性が必要である。よって、ロープ31、32は、素材としてケプラ糸(スーパーアラミド繊維)を採用し、直径0.69mmで長さ12500mmを用いた。
また、パイプ35は、軽量であることが必要なので、カーボンパイプを用いて、外径4mm、内径2mm、長さ1000mmを用いた。
なお、本実施形態では、ロープ31、32、パイプ35、パイプブラケット33、ロープブラケット34が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
【0018】
(第2実施形態)
図6に、第2実施形態の実際の使用例を示す。本実施形態の飛行体1は、第1実施形態の飛行体1から、ロープ32およびロープ32を囲むパイプ35を取り除いたものである。
図6は(a)非飛行時を示す。高架橋の梁の上部に設けられた手すり等の梁部イに、1本に縒り合わせられたロープ31端部を固定する。飛行体1はロープ31により梁部イから吊り下げられている。パイプ35は飛行体1の上部にある。
ロープ31の端部を、検査個所の近傍の梁部イに取り付けることにより、第1実施形態と同様の作用効果がある。
図6(b)は飛行時を示す。高架橋の梁の上部に設けられた手すり等の梁部イに、1本に縒り合わせられたロープ31の端部を固定する。飛行体1はロープ31により梁部イから吊り下げられている。
ロープ31の端部を、検査個所の近傍の梁部イに取り付けることにより、第1実施形態と同様の作用効果がある。但し、推進部21−1を作動させた起動時において飛行体1の飛行姿勢を水平(具体的には、車軸13が水平な状態)に制御する必要がある。
なお、本実施形態では、ロープ31、パイプ35、パイプブラケット33が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
【0019】
第1実施形態および第2実施形態において、ロープ31、32は、飛行体1の外部の電源から推進部21−1、制御部21−2、および飛行体1に搭載された計測機器61への給電用のケーブルで代用することができる。これはバッテリー寿命を気にしないで検査作業ができるので、長時間の検査を行う場合に有用である。
【0020】
(第3実施形態)
図7に、第3実施形態の作用を模式図で示す。
図7(a)は非飛行時を示す。第3実施形態は、第1実施形態の1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部を固定する個所を、構造物の梁イから、移動可能なものにする。ここでは、竿51の先端部に固定する。竿51は伸縮が可能で、使用しない時は短く収納でき、所謂釣り竿と同様の機能を持つ。
竿51の先端部に、1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部が固定されているので、飛行体1はロープ31、32により竿51の先端部から吊り下げられている。パイプ35は飛行体1の上部(より具体的には車軸13よりも上方)にある。竿51は飛行体1の自重により撓んだ状態になる。
図7(b)は飛行時を示す。推進部21−1を作動させ推進力で、飛行体1を上昇させると、竿51は上側に撓った状態になる。
【0021】
図8に、第3実施形態の実際の飛行時の使用例を示す。
竿51の下部は人間が手で保持する。これは釣り竿と同じである。高架橋の橋脚ロに車輪11を接触回転させて飛行体1を梁イまで上昇させる。ここから検査する支持部ハに向けて、竿51の先端部を移動させることで、飛行体1を水平方向に移動させて検査することができる。人間が支持部ハに向けて竿51の先端部を移動させる間、推進部21−1は、鉛直上方への推進力のみを発生させるだけでよいので、推進力の制御が簡単である。このようにすると、車輪11が梁イの底部(人間からみると天井)と接触して転がりながら、飛行体1が移動する。
【0023】
表2は、第3実施形態の試作機の仕様を示す。
飛行体1は、外径寸法が、幅360mm、奥行320mm、高さ:200mmであり、総重量は、0.46kgである。第1実施形態の試作機より小型軽量である。これは、竿の先端に装着することと、検査する高架橋の支持部ハが、橋脚ロの頂部と梁の下部(天井)の間に設置され、上下の高さが小さいので、車輪11の直径を200mmとしたからである。
ロープ31、32およびパイプ35の使用は第1実施形態と同じである。竿51は、カーボン製の渓流竿(風迎釣具製)を使用した。竿の材質は、カーボン繊維であり、全長11900mm(収納寸法900mm)、重量0.755kgである。竿51の長さは、10m以上の場合、特に効果が顕著である。
なお、本実施形態では、ロープ31、32、パイプ35、パイプブラケット33、ロープブラケット34が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
【0024】
(第4実施形態)
図9に、第4実施形態の作用を模式図で示す。
図9(a)は非飛行時を示す。第4実施形態は、第3実施形態に対して、パイプ35の空洞から出たロープ31、32を、更に連結パイプ37の中を通し、連結パイプの中央部に設けた孔から取り出し、竿51の先端に固定している。
竿51の先端部に、1本に縒り合わせられたロープ31と32の端部が固定されているので、飛行体1はロープ31、32により竿51の先端部から吊り下げられている。パイプ35は飛行体1の上部にあり、その上部に連結パイプ37がある。竿51は飛行体1の自重により撓んだ状態になる。
図9(b)は飛行時の使用例を示す。推進部21−1を作動させ推進力で、飛行体1を上昇させると、竿51は上側に撓った状態になる。竿51の下部は人間が手で保持する。これは釣り竿と同じである。高架橋の橋脚ロに車輪11を接触回転させて飛行体1を梁イまで上昇させる。ここから検査する支持部ハに向けて、竿51の先端部を水平に移動させることで検査することができる。この際、第3実施形態に対して、パイプ35と連結パイプ37が剛性を有するので、竿51の操作が飛行体1に伝わり易くなり、飛行体1の水平移動の操作が容易になる。
なお、本実施形態では、ロープ31、32、パイプ35、パイプブラケット33、37、ロープブラケット34が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
【0025】
第4実施形態の他の実施例として推進部21−1を1個にした飛行体1を、
図10、11、12に示す。
図10は斜視図、
図11は平面図を、
図12は側面図を示す。
竿51の先端に取り付けたロープ31をコの字型のパイプ39の中央部に接続されている。パイプ39の両端は、車軸13の両側の端部に回転自在に接続されている。車軸13の両端部のパイプ39の接続部の内側には、一対の車輪11がそれぞれ軸受け14を介して回転自在に取り付けられている。更に車軸13には、一対の車輪11の内側に、飛行体本体が取り付けられている。
飛行体本体21の推進部21−1は1個である。よって、プロペラ21−4、プロペラモータ21−5も1個であり、飛行体1の中央部に配置されている(
図11)。飛行体1の姿勢制御は、プロペラ21−4が4個の場合、各プロペラの回転数を制御することで実施できるが、プロペラ1個の場合はできない。よって、2個の姿勢制御モータである第1モータ22、第2モータ26を用いる。
第1モータ22は、推進部21−1を車輪11の回転方向に回転させる。第1モータ22は、第1モータ回転軸23を回転させ、第1モータ回転軸23は、推進部21−1に固定されている。第1モータ回転軸23の中心線は、車軸13の中心線と同一線上に配される。第1モータ22は、第1モータ保持具24に固定されている。第1モータ保持具24は、多角形または楕円形のリング状になっており、中央の空隙部には、推進部21−1が配されている。
第2モータ26は、推進部21−1を車輪11の中心線と直交する線を中心として回転させる。第2モータ26は、第2モータ回転軸27を回転させ、第2モータ回転軸27は、第1モータ保持具24に固定されている。第2モータ回転軸27の中心線は、車軸13および第1モータ回転軸23の中心線と直交するように配される。第2モータ26は、第2モータ保持具28に固定されている。第2モータ保持具28は、多角形または楕円形のリング状になっており、中央の空隙部には、推進部21−1、第1モータ22、および第1モータ保持具24等が配されている。第2モータ保持具28は、一対の車輪11の内側に配され、各々の車軸13と固定されている。
飛行体1が地上(または天井)を走行する場合、第1モータ22を作動させて推進部21−1を車輪方向に回転させることにより、推進部21−1により発生する揚力を、進行方向と地上(または天井)を押しつける方向の2方向に分けて、車輪11を地上(または天井)に押しつけながら回転させて地上を(または天井)走行して安定して移動させることができる。
図15に、第5実施形態の実際の高架橋での使用例を模式図で示す。飛行体1による高架橋の支持部ハの検査を、次の3段階に分けて説明する。
段階1:飛行体1は、非飛行時であり待機している。
段階2:飛行体1は橋脚ロ上を、姿勢制御の第1モータ22および御第2モータ26を制御して安定して走行移動させている。推進部21−1の推進力で、棒41は引き上がられ、飛行体1は高架橋(構造物)の橋脚を車輪11で安定して走行して上昇する。その際、竿51は、飛行体1の推進力により、竿51の先端が引き上げられるので、竿51は伸びると共に、竿51を操作する力も小さくなり、竿51の持ち運びや操作も容易になる。
段階3:飛行体1は、橋脚ロの上部と梁の底面(天井面)の間に入り込み、支持部ハの検査を行っている。推進部21−1の推進力と姿勢制御の第1モータ22および第2モータ26を制御させることにより、竿51が更に伸び長くなり、飛行体1は、梁イの天井までに上昇し、飛行体1は天井に沿って安定して移動し、構造物奥にある支持部ハを観察し検査できる。その際も竿51の操作力は飛行体1により軽くなり、持ち運びや操作が容易になる。ここで、飛行体1がバッテリー寿命により停止した場合、竿51を引っ張る等の操作をすることにより、飛行体1を地上に回収できる。
また、飛行体1が地上に垂直な壁を地上と平行(水平)に走行する場合、第1モータ22を作動させて推進部21−1を車輪方向に回転させることにより、車輪11を壁に押しつけながら回転させて壁を走行させるが、飛行体1の自重により落下しながら移動することになる。そこで、第2モータ26により、車軸13と直交する軸の周りに回転させ、推進部21−1により発生する揚力を、さらに壁の上方の3方向に分ける。飛行体1は、壁を水平方向に走行することができる。
竿51の先端部に、ロープ31の端部が固定されコの字型のパイプ39の中央部に固定され、パイプ39の両端は、飛行体1の車軸13の両側の端部に回転自在に接続されている。よって、飛行体1はロープ31、パイプ39により竿51の先端部から吊り下げられている。
図12は、推進部21−1が作動して飛行体1が空中に浮いた状態を示している。推進部21−1を1個にすることにより、飛行体1を小型軽量化できるので、高架橋の橋脚ロに車輪11を接触回転させて飛行体1を梁イまで上昇させる。ここから検査する支持部ハに向けて、竿51の先端部を水平に移動させることで検査することができる。この際、第3実施形態に対して、パイプ39が剛性を有するので、竿51の操作が飛行体1に伝わり易くなり、飛行体1の水平移動の操作が容易になる。
なお、本実施形態では、ロープ31、パイプ39が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
また、ロープ31は、
図14のジョイント43を用いても同様の効果がある。
【0027】
表3は、第4実施形態の他の実施例として推進部を1個にした飛行体1の試作機の仕様を示す。
飛行体1は、外径寸法が、幅300mm、奥行280mm、高さ:280mmであり、総重量は、1.6kgである。第1実施形態の試作機より小型軽量である。これは、竿の先端に装着することと、検査する高架橋の支持部ハが、橋脚ロの頂部と梁の下部(天井)の間に設置され、上下の高さが小さいので、車輪11の直径を280mmとしたからである。
ロープ31およびパイプ39の仕様は第1実施形態と同じである。竿51は、カーボン製の渓流竿(風迎釣具製)を使用した。竿の材質は、カーボン繊維であり、全長11900mm(収納寸法900mm)、重量0.755kgである。竿51の長さは、10m以上の場合、特に効果が顕著である。3
また、姿勢制御第1モータ22(車輪方向)、姿勢制御第2モータ26(車軸と直交方向)の仕様も示す。
【0028】
(第5実施形態)
図13に、第5実施形態の作用を模式図で示す。
図13は(a)飛行時を示す。第5実施形態は、棒41の一端を、飛行体本体21の下部(他:フレーム21−3、
図1参照)に固定し、棒41の他の端を、竿51の先端部につけたジョイント43に回転自在に接合させている。
推進部21−1を作動させ推進力で、飛行体1を上昇させると、竿51は上側に撓った状態になる。竿51の下部は人間が手で保持する。これは釣り竿と同じである。高架橋の橋脚ロに車輪11を接触回転させて飛行体1を梁イまで上昇させる。ここから検査する支持部ハに向けて、竿51の先端部を水平に移動させることで検査することができる。この際、第3実施形態に対して、竿51の操作が飛行体1に伝わり易くなり、飛行体1の水平移動の操作が容易になる。棒41の長さは、車輪11の半径より大きくして、竿51が車輪に干渉しないようにしている。このように棒41は、飛行体本体21に固定される剛体棒として構成されていることで、棒41、ジョイント43、竿51が、推進部21−1に接触することを阻害している。
本実施形態では、竿51の先端から棒41の飛行体本体21側の端部までの距離は、常に一定である。
非飛行時は、飛行体1の自重により落下するが、棒41はジョイント43で回転し、竿51が下側に撓って、飛行体1が吊り下げられる。
図13(b)は飛行時において、カメラ等の計測機器61を搭載した様子を示す。車輪11の間から撮影等の検査を行う。これは他の実施形態でも同様である。
【0029】
図14に、ジョイントの構成を模式図で示す。ジョイント43は、球体とこれに回転自在に嵌合する球状の内面を持つ受け部から構成され、3次元的に回転できる。
図14では、棒41に球体、竿51の先端に受け部を設けたが逆でも良い。
図14(a)は棒と竿が一直線に接続している。
図14(b)は、(a)に対して竿51が回転している。また、
図14(c)は、(a)に対して、棒41が回転を示す。
【0030】
図15に、第5実施形態の実際の高架橋での使用例を模式図で示す。
飛行体1による高架橋の支持部ハの検査を、次の3段階に分けて説明する。
段階1:飛行体1は、非飛行時であり待機している。
飛行体1の自重で、棒41はジョイント43の下側にあり、竿51は下側に撓んでいる。竿51は、収納時に対して少し伸びた長さである。
段階2:飛行体1は橋脚ロ上を走行して安定して移動している。推進部21−1の推進力で、棒41は引き上がられ、飛行体1は高架橋(構造物)の橋脚を車輪11で安定して走行して上昇する。その際、竿51は、飛行体1の推進力により、竿51の先端が引き上げられるので、竿51は伸びると共に、竿51を操作する力も小さくなり、竿51の持ち運びや操作も容易になる。
段階3:飛行体1は、橋脚ロの上部と梁の底面(天井面)の間に入り込み、支持部ハの検査を行っている。推進部21−1の推進力で、竿51が更に伸び長くなり、飛行体1は、梁イの天井までに上昇すると、飛行体1は天井に沿って安定して移動し、構造物奥にある支持部ハを観察し検査できる。その際も竿51の操作力は飛行体1により軽くなり、持ち運びや操作が容易になる。ここで、飛行体1がバッテリー寿命により停止した場合、竿51を引っ張る等の操作をすることにより、飛行体1を地上に回収できる。
なお、本実施形態では、棒41およびジョイント43が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
【0031】
(第6実施形態)
図16は、第6実施形態の作用を模式図で示す。
第6実施形態は、第5実施形態に対して、棒41の長さが短い。
図16(a)は飛行時を示す。
図16(b)は使用時を示す。飛行体1の車輪11の間隔が大きく、竿51の操作時に、車輪11と竿51が干渉するおそれの無い場合、竿の操作により飛行体1の操作が容易である。
なお、本実施形態では、棒41およびジョイント43が、全体として、変形可能なリンクに相当する。
【0032】
第3実施形態から第6実施形態において、給電用のケーブルを竿51に沿って配することで、外部の電源から、飛行体1の推進部21−1、制御部21−2、および飛行体1に搭載された計測機器61へ電力を供給することができる。これはバッテリー容量(寿命)を気にしないで検査作業ができるので、長時間の検査を行う場合に有用である。なお、竿51の収納時に対応して、給電用のケーブルを、釣りに用いる釣り糸のように、リールを用いて収納することができる。
【0033】
この例では、リム11−1が形成する円の中心を通る弦と、リム11−1との2個所の交差部に車輪嵌合部11−3を設けている。車輪嵌合部11−3は、リム11−1の内側と接触して回転するコロを有する。異なる車輪の2個の車輪嵌合部11−3は、車軸13(2本)で支持されている。2本の車軸13の中央部にはロール軸受19−2を設け、ロール軸19−1の両端をロール軸受19−2に回転自在に嵌合させている。これにより推進部21−1を、
図17(b)に示す進行方向と沿った回転(すなわち、車軸13に平行な軸を回転軸とする回転)と、
図17(c)に示す進行方向に直角方向に沿った回転(すなわち、ロール軸19−1を回転軸とする回転)という、2方向の回転が実現できる。従って、推進力を3次元に分配できるので、垂直の壁を水平方向に走行することができる。また、推進力を2次元に分配するだけで良い場合、ロール軸受19−2を廃して、ロール軸19−1を車軸13に固定すれば良い。
この飛行体1の車軸13のリム11−1の外側にロープを回転自在に接合したり、フレーム21−3に棒41を固定すれば本発明の全ての実施形態を実現できる。
【0034】
以上、6つの実施形態から、以下の発明と作用効果がある。
発明1は、飛行体本体21と、車輪11と、車軸13と、変形可能なリンク31、32、33、34、35、37、41、43と、を備え、飛行体本体21は、推進力を発生する推進部21−1を有し、車輪11は、推進部21−1を囲み、リンク31、32、33、34、35、37、41、43は、一端において、飛行体本体1または車軸13に取り付けられ、他端において、構造物または移動可能な物に取り付け可能であり、かつ、推進部21−1への接触が阻害されるよう構成されていることを特徴とする飛行体1である。
発明1により、飛行体1を高架橋の検査やビルの壁面検査などで使用する場合、不使用時には推進部21−1を停止させ、構造物または移動可能な物に、変形可能なリンク31、32、33、34、35、37、41、43を用いて吊り下げておけば、次に使用するとき、検査地点まで、短時間でアプローチでき、効率的かつ長時間の検査が可能になる。すなわち、検査前後の飛行または走行が大幅に短縮でき、検査時間が長く確保できる。また、頻繁に新たなバッテリーへの交換作業も大幅に削減できる。さらに、検査中断時には、検査個所の近くに吊り下げておくことがきるので、作業効率を改善できる。
また、強風や暴走により高所から墜落した場合、飛行体1を吊り下げておくことができるので、飛行体1の損傷を防ぐばかりでなく、地上の作業者等に当たる可能性がなくなり安全である。
発明2は、リンクは、ロープ31、32とパイプ35、37を有し、ロープ31、32は、一端が、車軸13の、車輪11を基準として推進部21−1とは反対側に、取り付けられ、他端が、構造物または移動可能な物に取り付け可能であり、前記一端と他端の間が、パイプ35、37の空洞を通り、パイプ35、37は、リンクが車輪11および推進部21−1に接触することを阻害する発明1に記載の飛行体1である。
発明2により、変形可能なリンクは、ロープ31、32とパイプ35、37で構成される。よって高所を検査する際、検査個所の近くに飛行体をロープ31、32により固定して行える。
この際、ロープ31、32で吊るしただけでは、車輪11や飛行体本体1の推進部21−1に、ロープ31、32が絡まる危険があるため、ロープ31、32一端を、車輪11の外側の車軸13に固定し、ロープを常に車輪11の外側にあるようにすると共に、車輪11の外側のロープ部にはパイプ35の空洞を通しているので、車輪11に絡んでしまうことがないと共に、飛行体1の推進部21−1に干渉することもない。
発明3は、ロープ31、32は、給電用のケーブルであることを特徴とする発明2に記載の飛行体である。
発明3により、ロープ31、32の代わりに給電ケーブルを使えば、バッテリー寿命を気にすることなく、連続して検査が行えるもで、作業効率が格段に向上する。
発明4は、リンクは、棒41とジョイント43を有し、棒41は、一端が、飛行体本体1に固定され、他端が、ジョイント43に回転自在に接合され、ジョイント43が移動可能な物に取り付けられたことを特徴とする発明1に記載の飛行体1である。
発明4により、棒41の一端を、推進部21−1に干渉しないように飛行体本体21に固定し、他端を移動可能な物にジョイント43を介して回転自在に接合した車輪11付き飛行体1である。高所を検査する際、検査個所の近くに飛行体1を移動可能な物により移動できる。よって、検査前後の飛行または走行が大幅に短縮でき、検査時間が長く確保できる。また、頻繁に新たなバッテリーへの交換作業も大幅に削減できる。また、強風や暴走により高所から墜落した場合、飛行体1を吊り下げておくことができるので、飛行体1の損傷を防ぐばかりでなく、地上の作業者等に当たる可能性がなくなり安全である。さらに、飛行体1が狭い空間などに入り込んで推進部21−1の推進力だけでは脱出できなくても、棒に連結した移動可能な物を移動させることで容易に脱出できる。
発明5は、移動可能な物は、竿51であることを特徴とする発明1ないし4のいずれか1つに記載の飛行体1である。
発明5により、移動可能な物は竿51であるので、人間の手によって操作が可能になる。竿51の操作力は、飛行体1の推進部21−1の推進力で、棒41に回転自在に連結した竿51の先端が引き上げられているので小さくなる。また、竿51の操作により、飛行体1を高架橋の橋梁の頂部と梁の底面(天井)に設置されている支持部などの構造物奥まで容易に移動することができる。また、飛行体1が狭い空間などに入り込んで推進部21−1の推進力だけでは脱出できなくても、竿51を操作することで容易に脱出できる。
発明6は、竿51は伸縮自在であることを特徴とする発明4に記載の飛行体1である。
発明6により、竿51は伸縮自在である。よって、竿51は、先端部に装着した飛行体1の推進により長く伸ばすことができるので、検査作業が軽減できる。また、長くて嵩張る竿51を短く収納できるので、持ち運びや保管が容易になる。