特許第6679215号(P6679215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679215
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】形状測定機、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   G01B5/20 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-71935(P2015-71935)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191631(P2016-191631A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年11月20日
【審判番号】不服2019-2072(P2019-2072/J1)
【審判請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】小松 慎吾
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 梶田 真也
【審判官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−308476(JP,A)
【文献】 特開2012−225743(JP,A)
【文献】 特開2010−217182(JP,A)
【文献】 特開2003−99107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を載置するベースと、
前記ベースに設けられた支柱と、
前記支柱に設けられZ軸に移動自在のZ軸駆動機構と、前記Z軸駆動機構に設けられたX軸駆動機構とを含む駆動機構と、
アームと前記アームの先端側に設けられた触針とを有する測定子と、
前記X軸駆動機構に取り付けられた変位検出器であって、前記アームを上下方向に搖動自在に支持する支点と、前記アームの変位を測定する変位読み取り部とを有する変位検出器と、
前記変位検出器、及び前記駆動機構を制御する制御装置と、
を備える形状測定機であって、
前記触針の先端位置を移動させる触針位置調整機構を、備え、
前記制御装置は、前記測定子の測定データであって且つ前記被測定物の表面形状に関する測定データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記測定データに基づいて、前記触針を次の測定開始位置に移動させる移動経路を算出し、算出された前記移動経路の情報に基づいて、前記測定子の触針を次の測定開始位置に移動させるように前記触針位置調整機構を制御する触針移動制御部と、
を備える形状測定機。
【請求項2】
前記触針位置調整機構が前記変位検出器に設けられたアーム位置調整機構である請求項1に記載の形状測定機。
【請求項3】
前記触針位置調整機構が、前記アームの後端部に設けられた測定力調整機構である請求項1に記載の形状測定機。
【請求項4】
前記触針位置調整機構が前記Z軸駆動機構である請求項1に記載の形状測定機。
【請求項5】
前記触針位置調整機構が、前記アームの位置調整を行う前記変位検出器に設けられアーム位置調整機構、前記Z軸駆動機構、及び前記触針の測定力を調整する前記アームに後端部に設けられた測定力調整機構の少なくとも二つを含む請求項1に記載の形状測定機。
【請求項6】
前記触針は、前記アームの搖動方向に延設された上向き触針及び下向き触針で構成される請求項1から5の何れか一項に記載の形状測定機。
【請求項7】
アームと前記アームの先端側に設けられた触針とを有する測定子と、前記アームを上下方向に搖動自在に支持する支点と、前記アームの変位を測定する変位読み取り部とを有する変位検出器と、を備える形状測定機の制御方法であって、
前記触針を被測定物の測定開始位置に位置合わせするステップと、
前記触針を前記被測定物に沿って水平方向に移動させ、前記アームの変位量、及び前記変位検出器の水平方向の移動量を測定データとして取得し、記憶するステップと、
前記被測定物の表面形状に関する前記測定データに基づいて、前記触針を次の測定開始位置に移動させる移動経路を算出するステップと、
前記算出された移動経路の情報に基づいて、前記測定子の触針を次の測定開始位置に移動させるステップと、
を含む形状測定機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定機、及びその制御方法に係り、被測定物と触針との衝突を回避することができる形状測定機、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物(ワーク)の表面に沿って、触針を持つ測定子と変位検出器とを移動させて、触針の上下の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の演算処理装置(計算機)に読み取ることで、ワークの表面粗さや輪郭等の表面形状等を測定する形状測定機が知られている(特許文献1)。
【0003】
一般的に、形状測定機で測定を行う場合は、作業者が、目視で測定子の触針を、ワークの測定位置に位置合わせている。次に、ワークの形状に沿って触針を自動で相対移動させて、ワークの表面を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−107144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、ワークの形状が複雑化し、ワークに段差が含まれる場合が多い。段差を含むワークを、触針を移動させて複数回測定する場合、ワークの段差と触針とが衝突する懸念がある。
【0006】
形状測定機において、上向き触針と下向き触針とを有する測定子を用いて、円筒のワークの内部の上面と下面とを測定することも行われている。例えば、上向き触針を使用して上面を測定した場合、測定を終了すると測定子を水平方向に移動している。水平状態を維持したまま測定子を移動させて、下向き触針を測定開始位置に位置合わせさせている。この際、水平状態を維持したまま測定子を移動させているので、例えば、ワークの内面と、上向き触針又は下向き触針とが衝突する懸念がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、触針と被測定物との衝突を回避することができる形状測定機、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、形状測定機は、被測定物を載置するベースと、前記ベースに設けられた支柱と、前記支柱に設けられZ軸に移動自在のZ軸駆動機構と、前記Z軸駆動機構に設けられたX軸駆動機構とを含む駆動機構と、アームと前記アームの先端側に設けられた触針とを有する測定子と、前記X軸駆動機構に取り付けられた変位検出器であって、前記アームを上下方向に搖動自在に支持する支点と、前記アームの変位を測定する変位読み取り部とを有する変位検出器と、前記変位検出器、及び前記駆動機構を制御する制御装置と、を備える形状測定機であって、前記触針の先端位置を移動させる触針位置調整機構を、備え、前記制御装置は、前記測定子の測定データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記測定データに基づいて前記触針位置調整機構を制御する触針移動制御部と、を備える。
【0009】
好ましくは、前記触針位置調整機構が前記変位検出器に設けられアーム位置調整機構である。
【0010】
好ましくは、前記触針位置調整機構が、前記アームに後端部に設けられた測定力調整機構である。
【0011】
好ましくは、前記触針位置調整機構が前記Z軸駆動機構である。
【0012】
好ましくは、前記触針位置調整機構が、前記アームの位置調整を行う前記変位検出器に設けられアーム位置調整機構、前記Z軸駆動機構、及び前記触針の測定力を調整する前記アームに後端部に設けられた測定力調整機構の少なくとも2つを含む。
【0013】
好ましくは、前記触針は、前記アームの搖動方向に延設された上向き触針及び下向き触針で構成される。
【0014】
本発明の別の態様によると、形状測定機の制御方法は、アームと前記アームの先端側に設けられた触針とを有する測定子と、前記アームを上下方向に搖動自在に支持する支点と、前記アームの変位を測定する変位読み取り部とを有する変位検出器と、を備える形状測定機の制御方法であって、前記触針を被測定物の測定開始位置に位置合わせするステップと、前記触針を前記被測定物に沿って水平方向に移動させ、前記アームの変位量、及び前記変位検出器の水平方向の移動量を測定データとして取得し、記憶するステップと、前記測定データに基づいて、前記触針を次の測定開始位置に移動させる移動経路を算出するステップと、前記算出された移動経路の情報に基づいて、前記測定子の触針を次の測定開始位置に移動させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、触針と被測定物との衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】形状測定機の外観図である。
図2】測定子、変位検出器、及びX軸駆動機構の概略構成図である。
図3】形状測定機の構成を示すブロック図である。
図4】形状測定機の制御方法を示すフローチャートである。
図5】段差を有するワークを測定する場合の測定子の動作を説明する説明図である。
図6】本実施形態に係る、段差を有するワークを測定する場合の測定子の動作を説明する説明図である。
図7】円筒ワークを測定する場合の測定子の動作を説明する説明図である。
図8】本実施形態に係る、円筒ワークを測定する場合の測定子の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0018】
図1は、本発明が適用された形状測定機の外観図である。形状測定機10は、被測定物((ワーク、(不図示))を載置するベース12と、ベース12に設けられた支柱14と、測定子22と、測定子22の変位を検出する変位検出器28と、測定子22及び変位検出器28を被測定物に対して相対移動させる駆動機構16とを備えている。
【0019】
図1に示すように、駆動機構16は支柱14の設けられたZ軸駆動機構18と、Z軸駆動機構18に設けられたX軸駆動機構20とを含んでいる。ここで、Z軸とはベース12の水平面に対して鉛直方向を意味する。
【0020】
Z軸駆動機構18は、例えば、支柱14にベース12に垂直に設けられたレールと、レールの上をスライド可能なスライダと、レールに沿って設けられたボールネジと、ボールネジを回転させるモーターと、スライダの移動量を検出するZ軸スケールと、で構成される。モーターを回転運動することによりボールネジにより直線運動に変換され、スライダに取り付けられたX軸駆動機構20をZ軸方向に移動自在とすることができる。X軸駆動機構20と後述する変位検出器28のZ軸方向(鉛直方向)の移動量をZ軸スケールで測定することができる。
【0021】
測定子22は、触針アーム24と、触針アーム24の先端側に設けられた触針26とを含んでいる。測定子22の触針アーム24は、変位検出器28から突出するアームホルダー30に着脱自在に取り付けられている。したがって、複数の測定子22を準備し、被測定物に応じて測定子22を取り換えることができる。
【0022】
形状測定機10は、制御装置40と、制御装置40に接続された入力装置42と、制御装置40に接続された表示装置44とを備えている。作業者は、コマンド、設定条件等の入力データを、入力装置42から制御装置40に伝達する。また、制御装置40は、被測定物の測定結果等を表示装置44に出力データとして表示する。
【0023】
形状測定機10は、例えば、ジョイスティックのような操作部46を備えている。作業者が操作部46を操作することにより、測定子22、及び変位検出器28を手動で移動させることができる。
【0024】
図2は、測定子22、変位検出器28、及びX軸駆動機構20の概略構成図である。測定子22は、触針アーム24と、触針アーム24の先端側に設けられ、形状測定するための加工が施された触針26とを有している。触針アーム24の先端側とは、触針アーム24において変位検出器28とは反対側を意味し、触針アーム24の先端を含む部分を意味する。
【0025】
本実施形態では、触針26が触針アーム24の搖動方向に延設された下向き触針で構成されているが、これに限定されない。したがって、触針26を触針アーム24の搖動方向に延設された上向き触針で構成することもでき、また触針アーム24の搖動方向に延設された上向き触針及び下向き触針(T字型触針ともいう)で構成することもできる。
【0026】
変位検出器28は、駆動部連結部50と、駆動部連結部50に設けられた支点52と、支点52に搖動自在に支持された棒状の搖動アーム54と、搖動アーム54の変位を読み取る変位読み取り部56と、を有している。
【0027】
本実施形態では、触針アーム24と搖動アーム54とがアームホルダー30を介して、着脱自在に連結されている。したがって、搖動アーム54と触針アーム24とが、一本のアーム32として機能している。
【0028】
触針アーム24と搖動アーム54との連結により、支点52がアーム32を上下方向に搖動自在に支持することができ、また変位読み取り部56がアーム32の変位を測定することができる。
【0029】
変位読み取り部56は、アームホルダー30と支点52との間に設けられている。上述したように触針アーム24と搖動アーム54とはアームホルダー30を介して連結されているので、変位読み取り部56により搖動アーム54の変位を読み取ることで触針アーム24の上下方向の変位を測定することができる。
【0030】
変位読み取り部56として、リニアスケール、円弧スケール、LVDT(Linear variable differential transformer:差動変圧器)等を用いることができる。
【0031】
実施形態では、変位読み取り部56をアームホルダー30と支点52との間に設けているが、変位読み取り部56を支点52に対してアームホルダー30と反対側に設けることもできる。
【0032】
搖動アーム54の後端部、すなわち、アーム32の後端部には、触針26の測定力を調整するため測定力調整機構58が設けられている。測定力調整機構58として、例えば位置調整可能にアーム32の後端部に設けられたバランスウエイトを挙げることができる。バランスウエイトの位置をアーム32に対して先端側、又は後端側に位置調整することで、触針26に付与される測定力を調整することができる。ここで、測定力とは、測定中に触針26がワークを押圧する押圧力を意味する。
【0033】
この測定力調整機構58により、触針26の先端位置を調整することができる。測定力調整機構58により測定力を小さくした場合、触針26の先端位置を上方に移動させることができ、測定力調整機構58により測定力を大きくした場合、触針26の先端位置を下方に移動させることができる。なお、測定力調整機構58は位置調整を自動で行うことができる。
【0034】
例えば、測定力調整機構58がバランスウエイトである場合、以下の構成とすることで、バランスウエイトを自動で位置調整できる。例えば、アーム32と平行となる位置にレールを設ける。このレールに沿って移動可能なスライダを設け、スライダとバランスウエイトを連結する。スライダをレールに沿って移動させることで、バランスウエイトをアーム32の軸方向に沿って自動で移動させることが可能となる。
【0035】
一般的に、測定力調整機構58は、触針26の微小な測定力を調整するために使用され、触針26の先端位置を調整する目的では使用されていない。
【0036】
変位検出器28には、アーム32の位置を調整するためのアーム位置調整機構60が設けられている。アーム位置調整機構60は、アーム32を上下方向に移動させることができ、その結果、アーム32は支点52を中心として上下方向に搖動する。
【0037】
アーム位置調整機構60は、一般的に、アーム32を水平方向に移動する場合、アーム32を上方向に移動する場合、アーム32を下方向に移動する場合のように、予め定められた位置にアーム32を移動させる。
【0038】
本実施形態において、アーム位置調整機構60は、アーム32予め定められた位置に移動させる場合を含め、アーム32を任意の位置に調整することができるよう構成されている。
【0039】
アーム位置調整機構60として側面視でコ字型の板とモーターとの組み合わせを挙げることができる。アーム32をコ字型の板に貫通させる。この状態でモーターを駆動することで、コ字型の板を上下させる。コ字型の板の上下動に伴って、アーム32を上下に搖動させることができる。モーターに印加する電流の大きさを変えることにより、アーム32を上下に任意の位置に搖動(又は移動)させることができる。
【0040】
変位検出器28は、駆動部連結部50と、支点52と、変位読み取り部56、測定力調整機構58と、アーム位置調整機構60と、を囲むハウジング62を備えている。
【0041】
駆動部連結部50は、変位検出器28とX軸駆動機構20とを連結するための部材であり、変位検出器28とX軸駆動機構20とは駆動部連結部50を介して相互に連結される。
【0042】
X軸駆動機構20は、X軸方向に延びるレール70と、レール70上をスライド可能なスライダ72と、レール70に沿って設けられたボールネジ74と、ボールネジ74を回転させるモーター76と、スライダ72の移動量を検出するX軸スケール78と、で構成される。モーター76を回転運動することによりボールネジ74により直線運動に変換され、スライダ72に取り付けられた変位検出器28をX軸方向に移動自在とすることができる。変位検出器28のX軸方向(水平方向)の移動量をX軸スケール78で測定することができる。
【0043】
図3は、形状測定機10の構成を示すブロック図である。
【0044】
制御装置40に、制御部100、処理部102、記憶部104、測定力調整部106、アーム位置調整部108、駆動機構制御部110、及び触針移動制御部112を備えている。
【0045】
制御部100は、形状測定機10の動作全体を管理する。制御装置40には、入力装置42、表示装置44、及び操作部46が接続されている。入力装置42、及び操作部46から入力信号が制御部100に送信され、制御部100は、その入力信号に従って各種プログラムを実行し、また、制御部100は制御信号、各種データ、各種プログラムの入出力を実行する。
【0046】
制御装置40には、変位検出器28、X軸スケール78、及びZ軸スケール80が接続されている。制御装置40の処理部102は、変位検出器28、X軸スケール78、及びZ軸スケール80から測定データを受信する。変位検出器28からアーム32の変位量が測定され、X軸スケール78から変位検出器28のX軸方向(水平方向)の移動量が測定され、Z軸スケール80から変位検出器28のZ軸方向(鉛直方向)の移動量が測定され、処理部102に出力される。
【0047】
処理部102は、制御部100の制御信号に従って、測定データから測定子22の軌跡情報を算出し、ワークの輪郭形状や粗さを求める。処理部102は算出結果を、制御部100に出力する。測定結果が、制御部100から表示装置44に出力される。
【0048】
制御装置40の記憶部104に、各種プログラム、測定データ、測定子22の軌跡情報、ワークの輪郭形状や粗さが記憶される。制御部100は記憶部104に対してデータの入出力を実行する。
【0049】
制御装置40には、測定力調整機構58、及びアーム位置調整機構60が接続されている。制御装置40の測定力調整部106は、制御部100からの制御信号に従って、測定力調整機構58を制御し、触針26の測定力を調整する。また、制御装置40のアーム位置調整部108は、制御部100からの制御信号に従って、アーム位置調整機構60を制御し、アーム32の位置を予め定められた位置に移動させる。
【0050】
制御装置40には、Z軸駆動機構18、及びX軸駆動機構20を含む駆動機構16が接続されている。制御装置40の駆動機構制御部110は、制御部100からの制御信号に従って、Z軸駆動機構18、及びX軸駆動機構20を含む駆動機構16を制御し、測定子22、及び変位検出器28の位置を制御する。
【0051】
触針移動制御部112は、記憶部104に記憶されている測定データに基づいて、測定終了位置から次の測定開始位置までの触針26の移動経路を算出する。移動経路を算出する際、触針移動制御部112は、触針26とワークとの衝突を回避し、かつ移動距離が短くなる移動経路を算出する。触針移動制御部112は移動経路情報を制御部100に出力する。
【0052】
本実施形態では、ワークを測定した際の、測定子からの測定データが記憶部104に記憶される。測定を終えた測定子22を次の測定開始位置に移動する際に、測定データに基づいて触針移動制御部112は移動経路を算出している。移動経路情報に基づいて測定子22を自動で移動させているので、測定子22をワークと衝突させることなく、また、効率的に次の測定開始位置に移動させることができる。
【0053】
制御部100は、触針移動制御部112からの移動経路情報に基づいて、触針位置調整機構を制御し、触針26の先端位置を調整する。すなわち、触針位置調整機構が制御部100を介して触針移動制御部112により制御される。
【0054】
本実施形態では、Z軸駆動機構18、測定力調整機構58、及びアーム位置調整機構60の少なくとも一つの機構により触針位置調整機構が構成されている。触針位置調整機構として、Z軸駆動機構18、測定力調整機構58、及び任意の位置に位置調整可能なアーム位置調整機構60を組み合わせて使用することができる。
【0055】
図4は、本実施形態の含む形状測定機の制御方法のフローチャートを示している。形状測定機の制御方法では、測定子、変位検出器、駆動機構を持つ形状測定機のベースにワークを載置し、測定子をワークの測定開始位置に位置合わせする(ステップS10)。
【0056】
次に、測定データを取得し、記憶する(ステップS12)。ステップS12では、測定子をワークの表面に沿って、水平方向に移動させながら、変位検出器の水平方向の移動量と、触針の上下方向の変位量を測定データとして取得し、測定データを記憶する。
【0057】
次に測定データから移動経路を算出する(ステップS14)。ステップS14では、測定データに基づいて、触針を次の測定開始位置に移動させる移動経路を算出する。
【0058】
最後に、移動経路の情報に基づいて、測定子を移動させる(ステップS16)。ステップS16では、算出された移動経路の情報に基づいて、測定子を次の測定開始位置に移動させる。
【0059】
本実施形態の形状測定機の制御方法では、ワークの測定データに基づいて、測定子の移動経路を算出しているので、触針とワークとの衝突を開始し、かつ効率的に測定子を移動させることができる。
【0060】
次に、段差を有するワークを下向き触針26を有する測定子22で測定する場合について図5、及び図6に基づいて説明する。
【0061】
図5は、下向き触針26により、段差を有するワークWを繰り返し測定する場合について、従来の測定子22の動作を示している。最初に、作業者が目視で、測定子22の触針26の先端位置を、ワークWの測定開始位置SPに位置合わせする。その後、測定子22の触針26をワークWの形状に沿って、測定終了位置EPまで自動で移動させる。測定子22を、測定開始位置SPから、測定終了位置EPまで移動させる間に、ワークWの表面形状に関する測定データが取得される。なお、ワークWの表面上の太線は、測定場所を仮想的に示している。
【0062】
測定子22が測定終了位置EPに到達すると、作業者は、目視で測定子22を次の測定開始位置まで移動させる。その際、触針26がワークWと衝突しないように、測定子22をワークWから大きく距離を開けて移動させていた。
【0063】
図5の方法では、触針26とワークWとの衝突を回避するため、安全距離Lを大きくしていた。
【0064】
図6は、下向き触針26により、段差を有するワークWを繰り返し測定する場合の、本実施形態による測定子22の動作を示している。
【0065】
図6(A)は、段差を有するワークWの測定を終えた状態、つまり測定子22が測定終了位置EPに位置している。測定子22を、測定開始位置SPから、測定終了位置EPまで移動させる間に、ワークWの表面形状に関する測定データが取得される。
【0066】
図6(B)は、測定子22を次の測定開始位置SPに移動させるための、触針26の移動経路の一つの態様を示している。この態様では、ワークWの測定データから一定距離離し、かつワークWに衝突しない移動経路で触針26を自動で移動させている。触針26はワークの上向き表面から距離L1だけ離れ、かつワークWの側面から距離L2だけ離れて移動する。したがって、触針26はワークWの形状に沿って移動することになる。この触針の移動により、触針26とワークWとの衝突を回避することができる。
【0067】
図6(C)は、測定子22を次の測定開始位置SPに移動させるための、触針26の移動経路の他の態様を示している。この態様では、触針26は、測定データの一番高い点から一定の距離L3だけ離れた位置に、距離L4だけ鉛直方向に移動させて、次いで水平方向に直線的に自動で移動させている。この触針の移動により、触針26とワークWとの衝突を回避することができる。
【0068】
特に、測定データを利用しているので、触針26とワークWとの衝突を回避しながら、触針26が鉛直方向に移動する距離L4を短くすることができる。
【0069】
図6では、下向き触針26を有する測定子22について説明したが、上向き触針を有する測定子についても適用することができる。上向き触針の場合、図6(C)の態様に関して、測定終了後、測定子の触針を測定データの一番低い点から一定距離だけ離れた位置に移動させればよい。
【0070】
次に、折れ曲がった円筒のワークWの内部の上面S1と下面S2とを、上向き触針26Aと下向き触針26Bとを有する測定子22で測定する場合につて、図7、及び図8に基づいて説明する。
【0071】
図7(A)に示すように、最初に、作業者が目視で、測定子22の上向き触針26Aの先端位置を、ワークWの内部の上面S1の測定開始位置SP1に位置合わせする。その後、測定子22の上向き触針26AをワークWの上面S1の形状に沿って、測定終了位置EP1まで自動で移動させる。測定子22を、測定開始位置SP1から、測定終了位置EP1まで移動させる間に、ワークWの内部の上面S1の表面形状に関する測定データが取得される。なお、ワークWの内部の上面S1上の太線は、測定場所を仮想的に示している。
【0072】
ワークWの内部の上面S1の測定を終えると、上面S1の測定終了位置EP1から下面S2の測定開始位置SP2に、測定子22の下向き触針26Bを移動させる。
【0073】
図7(B)に示すように、従来の測定子22の動作では、上面S1の測定を終えると、測定終了位置EP1において、測定子22のアーム32を水平方向に移動させていた。アーム32を水平状態にして測定子22を下面S2の測定開始位置SP2に移動させた場合、円筒のワークWの折れ曲がり部で、ワークWの下面S2と測定子22の下向き触針26Bとが衝突する場合があった。
【0074】
図8は、折れ曲がった円筒のワークWの内部の上面S1と下面S2とを、上向き触針26Aと下向き触針26Bとを有する測定子22で測定する場合の、本実施形態による測定子22の動作を示している。
【0075】
図8(A)は、図7(A)と同様に、円筒のワークWの内部の上面S1の測定を終えた状態を示している。
【0076】
図8(B)は、測定子22を、測定終了位置EP1から次の測定開始位置SP2に移動せるための、上向き触針26A、及び下向き触針26Bの移動経路の一つの態様を示している。この態様では、ワークWの測定データから上面S1から一定距離L5離れた移動経路で上向き触針26A、及び下向き触針26Bを自動で移動させている。上向き触針26A、及び下向き触針26Bは、ワークWの上面S1の形状に沿って移動することとなる。この移動により、上向き触針26A、及び下向き触針26BとワークWの内部の上面S1又は下面S2との衝突を回避することができる。
【0077】
次に、本実施形態では、Z軸駆動機構18、測定力調整機構58、及びアーム位置調整機構60の少なくとも一つの機構により触針位置調整機構を構成している。触針位置調整機構を、Z軸駆動機構18、測定力調整機構58、及びアーム位置調整機構60の少なくとも二つを含んで構成することができる。各機構、及ぶその組み合わせについて図1図2、及び図3に基づいて説明する。
【0078】
Z軸駆動機構18を利用して触針の先端位置を調整する場合、形状測定機10は既にZ軸駆動機構18を備えているので、新たな機構を追加する必要はない。
【0079】
触針位置調整機構としてZ軸駆動機構18を利用した場合、変位検出器28の全体を上下に動かすので、触針26の先端を安定させて移動させることができる。
【0080】
また、Z軸駆動機構18を利用した場合、触針26の移動が、Z軸方向に沿う上下方向のみの移動となるため制御が容易となる。
【0081】
触針位置調整機構として測定力調整機構58を利用した場合、触針26の先端を速く移動させることができる。したがって、駆動機構16により変位検出器28を速く移動させた場合でも、変位検出器28の移動に追従させて触針26の先端を位置制御させることができる。
【0082】
触針位置調整機構としてアーム位置調整機構60を利用した場合、アーム32の位置を微調整することができるので、触針26の先端をワークの近くを移動させることができる。
【0083】
触針位置調整機構としてZ軸駆動機構18とアーム位置調整機構60とを組み合わせて利用した場合、アーム位置調整機構60によりアーム32を固定することができるので、触針26の先端のふらつきを抑えてZ軸駆動機構18を高速で上下動させることができる。この組み合わせによれば、Z軸駆動機構18のみを利用した場合の効果も阻害されることはない。
【0084】
触針位置調整機構として測定力調整機構58とアーム位置調整機構60とを組み合わせて利用した場合、目標位置手前までは測定力調整機構58により触針26の先端を高速に移動させ、目標までの触針26の先端の微調整をアーム位置調整機構60リトラクト機構で制御することで、変位検出器28を高速移動しながら触針26の先端位置を制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
10…形状測定機、12…ベース、14…支柱、16…駆動機構、18…Z軸駆動機構、20…X軸駆動機構、22…測定子、24…触針アーム、26…触針、26A…上向き触針、26B…下向き触針、28…変位検出器、30…アームホルダー、32…アーム、40…制御装置、42…入力装置、44…表示装置、46…操作部、50…駆動部連結部、52…支点、54…搖動アーム、56…変位読み取り部、58…測定力調整機構、60…アーム位置調整機構、62…ハウジング、70…レール、72…スライダ、74…ボールネジ、76…モーター、78…X軸スケール、80…Z軸スケール、100…制御部、102…処理部、104…記憶部、106…測定力調整部、108…アーム位置調整部、110…駆動機構制御部、112…触針移動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8