(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみ形成時の圧子の押込み深さを計測することにより、試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記圧子に試験力を負荷し、前記圧子を試料の表面に押し込む試験力負荷部と、
先端部に前記圧子を備える圧子軸と、
前記試験力負荷部と前記圧子軸とを連結し、前記試料の表面からの前記圧子に対する作用力に応じて、前記圧子軸が前記試験力負荷部に対して相対的に上方に移動するように構成された連結機構と、
前記圧子軸の変位量を検出する変位量検出部と、
前記変位量検出部が前記圧子軸の変位量を検出する際の基準面を有し、前記圧子が前記試料の表面に接触していない状態において前記基準面が前記圧子の先端よりも上方となるように配置された基準部と、
前記試験力負荷部により前記圧子が前記試料に押し込まれる際に前記変位量検出部により検出された前記圧子軸の変位量に基づいて前記試料の硬さを算出する硬さ算出部と、
前記試料を載置可能に構成され、水平方向に移動可能な試料ステージと、
前記試料ステージの水平方向の移動に伴い、前記変位量検出部により検出された前記圧子軸の変位量に基づいて、前記試料の表面の座標を取得する座標取得部と、
を備えることを特徴とする硬さ試験機。
前記座標取得部により取得された座標に基づいて、前記試料の表面の平面度を算出する平面度算出部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬さ試験機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記
図7に示すロックウェル硬さ試験機200の構成では、圧子軸6と試験力発生ばね4との連結部205が固定されているため、圧子軸6の先端部に備えられた圧子61が試料Sの表面に接触した時点から試験力が発生する。即ち、ロックウェル硬さ試験機200の構成では、
図8に示すように、圧子61が試料Sの表面に接触した時点から試験力が負荷されて試料Sに押し込まれるため、試料S表面の変位を計測することができないという課題がある。
また、ロックウェル硬さ試験機200の構成では、試料S表面の変位を計測することができないため、試料S表面の座標を取得することができない。従って、ロックウェル硬さ試験機200の構成では、試験位置への同定をカメラなどの撮像手段を用いて又は作業者の目視により行う必要があるため、作業者にとって手間が掛かるうえ、測定精度を十分に確保することができないという課題がある。
【0006】
本発明は、測定精度を十分に確保しつつ、作業者の操作性を向上させることが可能な硬さ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみ形成時の圧子の押込み深さを計測することにより、試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
前記圧子に試験力を負荷し、前記圧子を試料の表面に押し込む試験力負荷部と、
先端部に前記圧子を備える圧子軸と、
前記試験力負荷部と前記圧子軸とを連結し、前記試料の表面からの前記圧子に対する作用力に応じて、前記圧子軸が前記試験力負荷部に対して相対的に上方に移動するように構成された連結機構と、
前記圧子軸の変位量を検出する変位量検出部と、
前記変位量検出部が前記圧子軸の変位量を検出する際の基準面を有し、前記圧子が前記試料の表面に接触していない状態において前記基準面が前記圧子の先端よりも上方となるように配置された基準部と、
前記試験力負荷部により前記圧子が前記試料に押し込まれる際に前記変位量検出部により検出された前記圧子軸の変位量に基づいて前記試料の硬さを算出する硬さ算出部と、
前記試料を載置可能に構成され、水平方向に移動可能な試料ステージと、
前記試料ステージの水平方向の移動に伴い、前記変位量検出部により検出された前記圧子軸の変位量に基づいて、前記試料の表面の座標を取得する座標取得部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記連結機構は、
前記圧子軸の上面に設けられ、前記圧子軸よりも径が小さく形成された連結軸と、
前記試験力負荷部の下面側に設けられ、下面から上端部に向けて前記連結軸を挿通可能な挿通穴が形成された圧子軸支持部材と、
前記挿通穴の上端部に設けられ、前記連結軸の前記圧子軸支持部材に対する上方への相対的な移動を規制するストッパと、
前記挿通穴の上端部及び前記連結軸の上面に固定され、前記連結軸を下方に付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記連結機構は、
前記圧子軸の上面に設けられ、前記圧子軸よりも径が小さく形成された連結軸と、
前記試験力負荷部の下面側に設けられ、下面から上端部に向けて前記連結軸を挿通可能な挿通穴が形成された圧子軸支持部材と、
前記挿通穴の上端部に設けられ、前記連結軸の前記圧子軸支持部材に対する上方への相対的な移動を規制するストッパと、
前記連結軸の上端側に備えられたスライド部材の上下動をガイドするレール部材と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬さ試験機において、
前記座標取得部により取得された座標に基づいて、前記試料の表面の平面度を算出する平面度算出部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定精度を十分に確保しつつ、作業者の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、
図1におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X−Y面を水平面とする。
【0014】
[1.構成の説明]
本実施形態に係る硬さ試験機1は、
図1及び
図2に示すように、荷重アーム2と、荷重アーム2に作用力を付与して荷重アーム2を作動(上下動)させるアーム作動部3と、荷重アーム2の下面側に備えられた試験力発生ばね4と、連結機構5を介して試験力発生ばね4と連結され、先端部に圧子61を備える圧子軸6と、圧子軸6の変位量(圧子61の侵入量)を検出する際の基準面を有する基準部7と、圧子軸6(圧子61)と対向配置され、試料Sが載置される試料台8と、制御部100と、操作部110と、表示部120と、を備えて構成されている。なお、硬さ試験機1では、
図2に示す制御部100により、各部の動作制御が行われる。
【0015】
荷重アーム2は、基部21と、基部21の側面から突出するアーム部22と、基部21の下面側で基部21よりも幅広に形成された底部23と、底部23の下面側一端部に備えられ、荷重アーム2と基準部7とを連結する略L字型のリンク部材24と、を備えて構成されている。
【0016】
アーム部22は、固定治具34によりアーム作動部3のコラム軸33に上下動可能に固定されている。アーム部22(荷重アーム2)は、コラム軸33の回転駆動により、固定治具34と連動して上下に移動する。即ち、荷重アーム2(アーム部22)は、アーム作動部3の動作に伴い、上下動を行う。
【0017】
また、アーム部22の先端部には、アーム部22(荷重アーム2)が作動(上下動)した際の変位量を検出するアーム変位検出部221が備えられている。
アーム変位検出部221は、例えば、アーム部22の先端部と対向する位置に備えられたスケール222の目盛を光学的に読み取るリニアエンコーダである。アーム変位検出部221は、圧子61を試料Sに押し込む際のアーム部22の変位量を検出し、検出した変位量に基づくアーム部変位信号を制御部100に出力する。
【0018】
アーム作動部3は、モータ31と、コラム軸33と、モータ31のモータ軸(図示省略)とコラム軸33とに掛け渡されるタイミングベルト32と、を備えて構成されている。なお、アーム作動部3は、コラム軸33が固定治具34によりアーム部22に固定されることにより荷重アーム2に接続されている。
【0019】
モータ31は、制御部100から入力された駆動制御信号に基づいて駆動する。モータ31のモータ軸は、モータ31の駆動により回転する。モータ軸の駆動力は、タイミングベルト32を介してコラム軸33に伝達され、コラム軸33を回転させる。固定治具34は、コラム軸33の回転駆動により上下に移動する。
このように、アーム作動部3は、モータ31の駆動に基づいて固定治具34を上下動させ、固定治具34と接続している荷重アーム2のアーム部22にその駆動(駆動力)を伝達させて、荷重アーム2を上下動させる。
【0020】
また、荷重アーム2の底部23の下面側中央部には、試験力を発生させる試験力発生ばね4が備えられている。試験力発生ばね4の側面には、所定の間隔の目盛が刻まれたスケール41が備えられている。また、試験力発生ばね4の下面側には、試験力発生ばね4と圧子軸6とを連結する連結機構5が備えられている。
【0021】
試験力発生ばね4は、荷重アーム2の下方への移動に伴い、連結機構5及び圧子軸6を下方へと押圧し移動させる。そして、試験力発生ばね4は、荷重アーム2の駆動、動作を圧子軸6に伝達する。
【0022】
また、荷重アーム2の底部23の下面側他端部には、荷重アーム2が作動(上下動)した際の試験力発生ばね4の変形量を検出するばね変位検出部42が備えられている。
ばね変位検出部42は、例えば、試験力発生ばね4の側面に備えられたスケール41の目盛を光学的に読み取るリニアエンコーダである。ばね変位検出部42は、圧子軸6等を介して圧子61を試料Sに押し込む際の試験力発生ばね4の変形量(変位量)を検出し、検出した変形量に基づくばね変位信号を制御部100に出力する。なお、この変形量は、圧子61が試料Sを押し込む押圧力(試験力)又は試料Sに加わる荷重に対応するようになっている。
【0023】
連結機構5は、
図3に示すように、圧子軸6の上面に設けられ、圧子軸6よりも径が小さく形成された連結軸51と、試験力発生ばね4の下面側に設けられ、下面から上端部に向けて連結軸51を挿通可能な挿通穴521が形成された圧子軸支持部材52と、挿通穴521の上端部に設けられ、連結軸51の圧子軸支持部材52に対する上方への相対的な移動を規制するストッパ53と、挿通穴521の上端部及び連結軸51の上面に固定され、連結軸51を下方に付勢する付勢部材54と、を備えて構成されている。
連結機構5が上記の構成を備えることにより、圧子61が試料Sの表面に接触した場合であっても、試料Sの表面からの圧子61に対する作用力に応じて、圧子軸6が試験力発生ばね4に対して相対的に上方に移動するように構成されているので、連結軸51の上端部がストッパ53の下端部に接触するまでの間(図中H1の区間)、圧子61の先端(試料Sの表面)に試験力が負荷されない(即ち、くぼみが形成されない)ようになっている。一方で、連結軸51の上端部がストッパ53の下端部に接触した場合、試験力発生ばね4により圧子61の先端に試験力が負荷される。即ち、試験力発生ばね4は、本発明の試験力負荷部として機能する。
【0024】
圧子軸6は、アーム作動部3の動作により、下方に設けられた試料台8上に載置された試料Sに向けて移動し、先端部に備えた圧子61を試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。圧子61が試料Sを所定の試験力で押圧することにより、試料Sの表面にくぼみが形成される。また、圧子軸6の表面には、所定の間隔の目盛が刻まれたスケール62が一体形成されている。
圧子61は、例えば、ロックウェル用の先端角120°のダイヤモンド円錐圧子又は球圧子(例えば直径が1/16インチ、1/8インチ、1/4インチ、1/2インチのもの)を使用する。
【0025】
また、試験力発生ばね4の下方には、荷重アーム2の底部23に備えられたリンク部材24と連結され、圧子軸変位検出部63が圧子軸6の変位量を検出する際の基準面を有する基準部7を保持する基準部保持部材71が備えられている。
基準部保持部材71の上端側には、リンク部材24に沿って上下動可能に構成されたスライド部材25が備えられている。このスライド部材25とリンク部材24とにより、リンク部材24上をスライド部材25がスライドすることで直線運動をガイドする、所謂LMガイド(登録商標)が構成される。なお、LMガイド(リンク部材24及びスライド部材25)の具体的な構造は、従来公知の技術(例えば、特開平8−313217等)を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
また、リンク部材24の下端部には、スライド部材25の下方への移動を規制する規制部241が形成されている。
上記の構成により、基準部保持部材71(基準部7)は、リンク部材24に沿って上下動することができるようになっている。
【0026】
基準部7は、基準部保持部材71の下面側に取り付けられており、圧子軸6の先端部に備えられた圧子61の先端部の上下方向の位置基準となる部材である。基準部7は、圧子軸6(圧子61)を挿通可能な中空形状に形成されている。基準部7の下面は、圧子軸6に垂直な面(水平面)となるように形成されている。この基準部7の下面が試料Sの表面に当接した状態で押込み試験を行うことで、当該基準部7の下面(試料Sの表面)を基準面として圧子軸変位検出部63により圧子軸6の変位量を検出することができる。
また、基準部7は、圧子61が試料Sの表面に接触していない状態において基準面が圧子61の先端よりも上方となるように配置されている。
【0027】
また、基準部7の上面側には、圧子軸6の変位量を検出する圧子軸変位検出部63が備えられている。
圧子軸変位検出部63は、例えば、圧子軸6の表面に一体形成されたスケール62の目盛を光学的に読み取るリニアエンコーダである。圧子61が試料Sに押し込まれる際の圧子軸6の変位量(即ち、試料Sに押し込まれた圧子61の侵入量(押込み深さ))を検出し、検出した変位量に基づく圧子軸変位信号を制御部100に出力する。
即ち、圧子軸変位検出部63は、本発明の変位量検出部として機能する。
【0028】
試料台8は、試料Sが載置される試料ステージ81と、試料ステージ81の下面に設けられたステージ昇降部82と、を備えて構成されている。
試料ステージ81は、例えば、水平面上を移動可能なXYステージであり、制御部100が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、上面に載置された試料Sを圧子61の移動方向(Z方向)に垂直な方向(X、Y方向)に移動させる。
ステージ昇降部82は、試料ステージ81の下面側に設けられ、制御部100が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料ステージ81(試料S)を上下方向に移動させる。
【0029】
制御部100は、
図2に示すように、CPU101と、RAM102と、記憶部103と、を備えて構成され、記憶部103に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
CPU101は、記憶部103に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM102に展開して実行することにより、硬さ試験機1全体の制御を行う。
RAM102は、CPU101により実行された処理プログラム等を、RAM102内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
記憶部103は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部103は、CPU101が硬さ試験機1全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。
【0030】
例えば、CPU101は、ばね変位検出部42から入力されたばね変位信号と予め設定された設定ばね変位データとの比較を行う。そして、CPU101は、所定の試験力(荷重)で圧子61を試料Sに作用させるように荷重アーム2を移動させるべく、アーム作動部3(モータ31)の駆動を制御する駆動制御信号をモータ31に出力する。
【0031】
また、CPU101は、圧子軸変位検出部63から入力された圧子軸変位信号に基づいて、試料Sの硬さを算出する。即ち、CPU101は、本発明の硬さ算出部として、圧子軸変位検出部63により検出された圧子軸6の変位量(即ち、試料Sに圧子61が押し込まれた侵入量(くぼみの深さ))から試料Sの硬さを測定する、ロックウェル硬さ試験に基づいて試料Sの硬さを算出する。
【0032】
操作部110は、キーボード、マウス等のポインティングデバイスなどを備え、硬さ試験を行う際の作業者(オペレータ)による入力操作を受け付ける。そして、操作部110は、作業者による所定の入力操作を受け付けると、その入力操作に応じた所定の操作信号を生成して、制御部100へと出力する。
【0033】
表示部120は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されている。表示部120は、操作部110において入力された硬さ試験の設定条件及び硬さ試験の結果等を表示する。
【0034】
[2.動作の説明]
次に、本実施形態に係る硬さ試験機1の動作について、説明する。
まず、作業者は、試料台8の試料ステージ81上に試料Sを載置する(
図4参照)。なお、
図4に示す例では、試料Sとして、球形状の試料を例示している。
次に、作業者は、操作部110を操作して、硬さ試験の各種設定条件(例えば、試料Sの材質、圧子61により試料Sに負荷される試験力(N)、試料Sの硬さ測定位置(試験位置)等)を入力する。
次に、作業者は、操作部110を操作して、硬さ試験開始の指示操作(例えば、表示部120に表示された硬さ試験開始アイコンをマウス等でクリックする操作)を行う。
次に、制御部100のCPU101は、アーム作動部3のモータ31を制御して、荷重アーム2を下方に移動させ、圧子軸6の先端部に備えられた圧子61を試料Sに接触させる。本実施形態では、硬さ試験機1は連結機構5を備えているので、試料Sの表面のZ方向の高さに応じて、圧子61の高さは上下動する。
次に、CPU101は、試料ステージ81をX、Y方向に移動させることで、圧子61により試料Sの表面を倣わせるとともに、圧子軸変位検出部63により検出された圧子軸6のZ方向の変位量を取得する(
図5参照)。これにより、試料Sの表面のZ方向の変位を検出することができるので、試料Sの表面のX、Y、Z方向の座標を取得することができる。即ち、CPU101は、本発明の座標取得部として機能する。また、CPU101は、試料Sの表面の座標を取得することができるので、当該座標に基づいて試料Sの表面の平面度を算出することもできる。即ち、CPU101は、本発明の平面度算出部として機能する。
次に、CPU101は、予め作業者により入力された試験位置(球形状の試料Sの場合は頂点位置)と、取得した試料S表面の座標と、に基づいて、試験位置の同定処理を行う。そして、CPU101は、圧子61により所定の試験力を負荷して試験位置にくぼみを形成させ、当該くぼみ形成時の圧子61の押込み深さを計測することにより、試料の硬さを測定する。
【0035】
なお、上記例では、圧子61により試料Sの表面を倣わせることで、試料Sの表面の座標を取得するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、圧子61により試料Sの表面を倣わせる代わりに、圧子61によりタッチセンサ的に試料Sの表面の座標を取得するようにしてもよい。
具体的には、例えば、球形状の試料Sの場合、CPU101は、試料ステージ81をX、Y方向に移動させつつ、荷重アーム2を下方に移動させることで、試料Sの任意の4点に圧子61を接触させる。次いで、CPU101は、上記の4点の各々において、試料ステージ81の移動量からX、Y方向の座標を取得するとともに、アーム変位検出部221により検出されたアーム部22のZ方向の変位量(即ち、圧子軸6のZ方向の変位量)から試料Sの表面のZ方向の座標を取得する。これにより、上記の4点の座標を取得することができる。この場合、アーム変位検出部221が、本発明の変位量検出部として機能する。そして、CPU101は、上記の4点の座標に基づいて、試料Sの頂点位置を算出し、当該頂点位置に同定する処理を行って、硬さ試験を実施する。なお、試料Sの形状が円筒形状である場合には、試料S表面の任意の3点の座標を取得することで、試料Sの頂点位置を算出することが可能である。
【0036】
また、球形状の所定の試料Sの頂点位置を基準位置(座標の原点)と定めることで、球形状の所定の試料Sを基準球として用いるようにしてもよい。即ち、硬さ試験を実施する際、試験対象の試料Sを載置する前に基準球を載置し、基準球の頂点位置に同定する処理を行った後、基準球の代わりに試験対象の試料Sを載置することで、基準球の頂点位置を基準位置とする硬さ試験を実施することができる。
【0037】
[3.効果]
以上のように、本実施形態に係る硬さ試験機1は、圧子61に試験力を負荷し、圧子61を試料Sの表面に押し込む試験力負荷部(試験力発生ばね4)と、先端部に圧子61を備える圧子軸6と、試験力負荷部と圧子軸6とを連結し、試料Sの表面からの圧子61に対する作用力に応じて、圧子軸6が試験力負荷部に対して相対的に上方に移動するように構成された連結機構5と、圧子軸6の変位量を検出する変位量検出部(圧子軸変位検出部63)と、変位量検出部が圧子軸6の変位量を検出する際の基準面を有し、圧子61が試料Sの表面に接触していない状態において基準面が圧子61の先端よりも上方となるように配置された基準部7と、試験力負荷部により圧子61が試料Sに押し込まれる際に変位量検出部により検出された圧子軸6の変位量に基づいて試料Sの硬さを算出する硬さ算出部(CPU101)と、試料Sを載置可能に構成され、水平方向に移動可能な試料ステージ81と、試料ステージ81の水平方向の移動に伴い、変位量検出部により検出された圧子軸6の変位量に基づいて、試料Sの表面の座標を取得する座標取得部(CPU101)と、を備える。
従って、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、圧子61が試料Sの表面に接触した場合であっても試験力が負荷されないので、試料S表面の変位を計測することができる。従って、試料S表面の座標を取得することができるので、撮像手段や目視に頼ることなく自動的に試験位置への同定処理を行うことができる。よって、硬さ試験における測定精度を十分に確保することができるとともに、作業者の負担を軽減して作業者の操作性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、連結機構5は、圧子軸6の上面に設けられ、圧子軸6よりも径が小さく形成された連結軸51と、試験力負荷部の下面側に設けられ、下面から上端部に向けて連結軸51を挿通可能な挿通穴521が形成された圧子軸支持部材52と、挿通穴521の上端部に設けられ、連結軸51の圧子軸支持部材52に対する上方への相対的な移動を規制するストッパ53と、挿通穴521の上端部及び連結軸51の上面に固定され、連結軸51を下方に付勢する付勢部材54と、を備える。
従って、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、簡易な構成で圧子軸6と試験力負荷部との相対的な位置関係を調整することができるので、コストの増大や装置の大型化を抑制しつつ、試料S表面の変位を計測することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、座標取得部により取得された座標に基づいて、試料Sの表面の平面度を算出する平面度算出部(CPU101)を備える。
従って、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、試料S表面の平面度を考慮した硬さ試験を行うことができるので、より精度の高い試験結果を得ることができる。
【0040】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0041】
[4.変形例]
図6に、連結機構5の変形例(連結機構5A)を示す。なお、説明の簡略化のため、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
連結機構5Aは、圧子軸6の上面に設けられ、圧子軸6よりも径が小さく形成された連結軸51Aと、試験力発生ばね4の下面側に設けられ、下面から上端部に向けて連結軸51Aを挿通可能な挿通穴521Aが形成された圧子軸支持部材52Aと、挿通穴521Aの上端部に設けられ、連結軸51Aの圧子軸支持部材52Aに対する上方への相対的な移動を規制するストッパ53Aと、連結軸51Aの上端側に備えられたスライド部材511Aの上下動をガイドするレール部材54Aと、を備えて構成されている。なお、スライド部材511Aとレール部材54Aとにより、レール部材54A上をスライド部材511Aがスライドすることで直線運動をガイドする、所謂LMガイドが構成される。
また、挿通穴521Aは、圧子軸支持部材52Aの下面側において、連結軸51Aのみを挿通可能な大きさに形成されており、スライド部材511Aの下方への移動を規制する構成となっている。上記の構成により、連結軸51A(圧子軸6)は、レール部材54Aに沿って上下動することができるようになっている。
【0043】
連結機構5Aが上記の構成を備えることにより、圧子61が試料Sの表面に接触した場合であっても、連結軸51Aの上端部がストッパ53Aの下端部に接触するまでの間(図中H2の区間)、圧子61の先端(試料Sの表面)に試験力が負荷されない(即ち、くぼみが形成されない)ようになっている。
【0044】
以上のように、変形例に係る硬さ試験機1によれば、連結機構5Aは、圧子軸6の上面に設けられ、圧子軸6よりも径が小さく形成された連結軸51Aと、試験力負荷部の下面側に設けられ、下面から上端部に向けて連結軸51Aを挿通可能な挿通穴521Aが形成された圧子軸支持部材52Aと、挿通穴521Aの上端部に設けられ、連結軸51Aの圧子軸支持部材52Aに対する上方への相対的な移動を規制するストッパ53Aと、連結軸51Aの上端側に備えられたスライド部材511Aの上下動をガイドするレール部材54Aと、を備える。
従って、変形例に係る硬さ試験機1によれば、簡易な構成で圧子軸6と試験力負荷部との相対的な位置関係を調整することができるので、コストの増大や装置の大型化を抑制しつつ、試料S表面の変位を計測することができる。
【0045】
その他、硬さ試験機を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。