特許第6679905号(P6679905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6679905乳化・分散剤の製造方法、及び水乳化・水分散組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679905
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】乳化・分散剤の製造方法、及び水乳化・水分散組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/42 20060101AFI20200406BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20200406BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20200406BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B01F17/42
   B01F17/52
   C08G18/09
   C08G18/28 015
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-241030(P2015-241030)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-104810(P2017-104810A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜多 求
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 優
(72)【発明者】
【氏名】岩本 繁樹
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−195385(JP,A)
【文献】 特開2004−315598(JP,A)
【文献】 特開2003−055427(JP,A)
【文献】 特開2009−007409(JP,A)
【文献】 特開2003−160630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/
C09D
C08G 18/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程から得られる、乳化剤、又は分散剤の製造方法。
第一工程:有機ジイソシアネート(a)と、下記(式1)で示されるノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)をアロファネート触媒の存在下で反応させる工程。
−O−(−R−O−)n−H ・・・(式1)
(但し、Rはアルキル基を示し、Rはエチレン基を30モル%以上含有するアルキレン基を示す。nは1以上の整数を示す。)
第二工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止させる工程。
第三工程:遊離の有機ジイソシアネート(a)を蒸留により除去する工程。
第四工程:第三工程から得られたアロファネート変性イソシアネートと、疎水性基含有モノアルコール(c)をアロファネート触媒の存在下で反応させる工程。
第五工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止させる工程。
【請求項2】
前記の有機ジイソシアネート(a)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法。
【請求項3】
前記の遊離の有機ジイソシアネート(a)が0.5質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法。
【請求項4】
前記の疎水性基含有モノアルコール(c)が、炭素数1〜20のアルキルモノアルコールであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法。
【請求項5】
前記のノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)/疎水性基含有モノアルコール(c)のモル比が(b)/(c)=10/90〜90/10であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法。
【請求項6】
前記のノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)の使用量が、前記の(a)、(b)、及び(c)の合計量中において10〜60質量%であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法。
【請求項7】
有機ポリイソシアネートを水に乳化、又は分散させてなることを特徴とする水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤の製造方法であって、請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法により得られた乳化剤、又は分散剤を用いることを特徴とする水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤の製造方法。
【請求項8】
水酸基含有化合物又は水酸基非含有化合物を水に乳化、又は分散させてなることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法であって、請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法により得られた乳化剤、又は分散剤を用いることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法。
【請求項9】
有機ポリイソシアネートと、水酸基含有化合物又は水酸基非含有化合物を含む組成物を、水に乳化、又は分散させてなることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法であって、請求項1乃至のいずれか1項に記載の乳化剤、又は分散剤の製造方法により得られた乳化剤、又は分散剤を用いることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤の製造方法により得られた水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤と、水酸基含有化合物又は水酸基非含有化合物とを含むことを特徴とする水乳化又は水分散硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロファネート変性イソシアネートからなる乳化性及びその安定性に優れた乳化・分散剤、これを用いた水乳化イソシアネート硬化剤及び水乳化硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤や塗料等として使用される水性の(硬化性)組成物には、ポリイソシアネート成分として、水性のポリイソシアネートや、疎水性ポリイソシアネートをイソシアネート基含有ノニオン性化合物により水に乳化、分散して使用することが知られている。具体的には例えば、疎水性ポリイソシアネートをノニオン性基及びイソシアネート基含有ビニル系重合体で水分散したポリイソシアネート組成物、並びに水性硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。こうしたビニル系重合体を作製した場合、製造工程で有機溶剤を使用するため環境負荷が生じるという問題点がある。また、有機ジイソシアネートに疎水性基含有モノアルコールとノニオン性親水基含有一官能アルコールを同時にウレタン化反応、次いでアロファネート化反応させる乳化・分散剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらに記載の乳化・分散剤は、臭気とポットライフが短いといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−194045号公報
【特許文献2】特開2004−195385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水系の接着剤や塗料等の分野においては、有機溶剤系の接着剤や塗料等と比較して塗膜物性を落とすことなく、効率的で作業しやすいように、乳化、分散が容易かつ長期に渡って安定であることが望まれている。本発明の目的は、有機溶剤を使用せず、また遊離の有機ジイソシアネートを蒸留により除去し、更に改善されたポットライフを有する、有機ポリイソシアネートおよび、これに用いる高分子化合物からなる主剤を乳化・分散させる、乳化・分散剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、見出されたものである。すなわち本発明は以下の(1)〜(11)に示す実施形態を含むものである。
【0006】
(1)以下の工程から得られる、乳化・分散剤の製造方法。
第一工程:有機ジイソシアネート(a)と、ノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)をアロファネート触媒の存在下で反応させる工程。
第二工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止させる工程。
第三工程:遊離の有機ジイソシアネート(a)を蒸留により除去する工程。
第四工程:第三工程から得られたアロファネート変性イソシアネートと、疎水性基含有モノアルコール(c)をアロファネート触媒の存在下で反応させる工程。
第五工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止させる工程。
【0007】
(2)前記の有機ジイソシアネート(a)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、上記(1)に記載の乳化・分散剤の製造方法。
【0008】
(3)前記の遊離の有機ジイソシアネート(a)が0.5質量%以下であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の乳化・分散剤の製造方法。
【0009】
(4)前記のノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)が、下記(式1)で示されることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法。
−O−(−R−O−)n−H ・・・(式1)
(但し、Rはアルキル基を示し、Rはエチレン基を30モル%以上含有するアルキレン基を示す。nは1以上の整数を示す。)
【0010】
(5)前記の疎水性基含有モノアルコール(c)が、炭素数1〜20のアルキルモノアルコールであることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法。
【0011】
(6)前記のノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)/疎水性基含有モノアルコール(c)のモル比が(b)/(c)=10/90〜90/10であることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法。
【0012】
(7)前記のノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)の使用量が、前記の(a)、(b)、及び(c)の合計量中において10〜60質量%であることを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法。
【0013】
(8)有機ポリイソシアネートを水に乳化、又は分散させてなることを特徴とする水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤の製造方法であって、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法により得られた乳化・分散剤を用いることを特徴とする水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤の製造方法。
【0014】
(9)水酸基含有化合物又は水酸基非含有化合物を水に乳化、又は分散させてなることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法であって、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法により得られた乳化・分散剤を用いることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法。
【0015】
(10)有機ポリイソシアネートと、水酸基含有化合物又は水酸基非含有化合物を含む組成物を、水に乳化、又は分散させてなることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法であって、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の乳化・分散剤の製造方法により得られた乳化・分散剤を用いることを特徴とする水乳化、又は水分散体の製造方法。
【0016】
(11)上記(8)に記載の水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤の製造方法により得られた水乳化、又は水分散イソシアネート硬化剤と、水酸基含有化合物又は水酸基非含有化合物とを含むことを特徴とする水乳化又は水分散硬化性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、主剤や硬化剤を乳化、分散させる能力、及びポットライフに優れた乳化・分散剤、並びにこれを用いた水乳化ポリイソシアネート硬化剤及び水乳化硬化性組成物を提供することが可能となった。そのため、本発明の水乳化ポリイソシアネート硬化剤及び水乳化硬化性組成物は、塗料、接着剤、各種結合剤、印刷インキ、記録磁気媒体、コーティング剤、シーリング剤、エラストマー、封止剤、合成皮革、各種フォーム、土木関係の発泡充填剤等、広い範囲に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0019】
本発明に用いられる有機ジイソシアネート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらはいずれも単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、得られる乳化・分散剤の耐候性等を考慮すると、脂肪族ジイソシアネートと脂環族ジイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0020】
ノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)としては、例えばポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルモノアルコール等が挙げられる。これらはいずれも単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらのうちポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。なお「乳化能」とは、乳化・分散剤自身のみならず、被乳化物も一緒に乳化させる能力のことである。
【0021】
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルの製造のための開始剤としては、メタノール、n−ブタノール等が挙げられる。これらのうち、低級アルコールを用いると親水性がより高いものとなるため好ましい。また、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルモノアルコールの製造に用いられる脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。これらのうち、低級脂肪酸を用いると親水性がより高いものとなるため好ましい。
【0022】
ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルモノアルコール等に存在するポリエーテル鎖は、一般的には3〜90個、好ましくは5〜30個、特に好ましくは8〜10個のアルキレンオキシドユニットであるが、全アルキレンオキシドユニット中にエチレンオキシドユニットを少なくとも70%以上含むものが好ましく、全てエチレンオキシドユニットであることが最も好ましい。
【0023】
本発明に用いられる疎水性基含有モノアルコール(c)としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、ノナデカノール、オレイルアルコール、これらの異性体等の脂肪族モノアルコール類、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環族モノアルコール類、ベンジルアルコール等の芳香脂肪族モノアルコール類、また、α−オキシプロピオン酸、オキシコハク酸、ε−オキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等のオキシカルボン酸と前述のモノアルコール類とから得られるエステルモノアルコール類等が挙げられる。これらはいずれも単独であるいは2種以上混合して使用することができる。本発明においては、原料としての取り扱い易さ、得られる乳化・分散剤自身の乳化性、乳化能や粘度等を考慮すると、炭素数1〜20のアルキルモノアルコールが好ましく、炭素数1〜13のアルキルモノアルコールがさらに好ましい。
【0024】
本発明に用いられるアロファネート化触媒としては、カルボン酸のジルコニウム塩を好適に例示することができる。このカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ[4.4.0]デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上記したカルボン酸の混合物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類等が挙げられる。これらはいずれも単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。本発明において特に好ましいアロファネート化触媒は、炭素数10以下のモノカルボン酸ジルコニウム塩である。このアロファネート化触媒を使用することにより、助触媒等を使用しなくても、実質的に着色のない乳化・分散剤を比較的容易に得ることができる。
【0025】
次に、本発明における乳化・分散剤の具体的な製造手順について説明する。
【0026】
本発明は以下の工程からなる。
第一工程:有機ジイソシアネート(a)と、ノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)をアロファネート触媒の存在下で反応させる工程。
第二工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止させる工程。
第三工程:遊離の有機ジイソシアネート(a)を蒸留により除去する工程。
第四工程:第三工程から得られたアロファネート変性イソシアネートと、疎水性基含有モノアルコール(c)をアロファネート触媒の存在下で反応させる工程。
第五工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止させる工程。
【0027】
第一工程は、ウレタン化反応とアロファネート化反応からなる。具体的な手順は、有機ジイソシアネート(a)と、ノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)を、イソシアネート基を、水酸基に対して過剰となる量を仕込んで、20〜100℃でウレタン化反応させた後、70〜150℃にてアロファネート化触媒の存在下でウレタン基が実質的に存在しなくなるまでアロファネート化反応させる、という手順である。
【0028】
ここで「イソシアネート基を水酸基に対して過剰となる量」とは、原料仕込みの際、イソシアネート基を水酸基に対して過剰となるという意味であり、イソシアネート基と水酸基のモル比がイソシアネート基/水酸基=8以上が好ましく、10〜50が特に好ましい。
【0029】
ウレタン化反応の反応温度は20〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。なお、ウレタン化反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。
【0030】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無や種類、反応温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1〜5時間である。
【0031】
ウレタン化反応が終了したら、アロファネート化反応を行う。アロファネート化反応は、前述のアロファネート化触媒を添加し、反応温度を70〜150℃、好ましくは80〜130℃にして行う。反応温度が低すぎる場合は、アロファネート基があまり生成せず、得られる乳化・分散剤の乳化能力が低下することがある。このような乳化・分散剤を有機ポリイソシアネート硬化剤に用いると、乳化が不十分となりやすい。反応温度が高すぎる場合は、得られる乳化・分散剤を不必要に加熱することになり、着色する原因になることがある。
【0032】
なお、本発明においては、ウレタン化反応とアロファネート化反応を同時に行うこともできる。この場合は、有機ジイソシアネート(a)と、ノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)を、イソシアネート基を水酸基に対して過剰となる量を仕込んで、70〜150℃にてアロファネート化触媒の存在下でウレタン化反応及びアロファネート化反応を同時に行う。
【0033】
アロファネート化触媒の使用量はその種類により異なるが、上記(a)と(b)の総和量に対して、0.0005〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%がより好ましい。触媒使用量が0.0005質量%未満の場合は、反応に長時間を要し、熱履歴による着色が起こる場合がある。一方触媒使用量が1質量%を超える場合は、反応制御が難しくなり、副反応である二量化反応(ウレトジオン化反応)や三量化反応(イソシアヌレート化反応)が起こる場合があり、また得られた乳化・分散剤を用いた場合、塗料のポットライフが短くなる等の問題が生じることがある。
【0034】
反応時間は、触媒の種類や添加量、反応温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1〜5時間である。
【0035】
なお、このとき必要に応じて有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、n−ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系有機溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系有機溶剤、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶剤等が挙げられる。前記有機溶剤は1種又は2種以上を併用することができる。
【0036】
第二工程は、アロファネート化反応後、触媒毒を添加してアロファネート化反応を停止させる工程である。触媒毒の添加時期は、アロファネート化反応後であれば特に制限はないが、第三工程における、遊離の有機ジイソシアネート(a)を除去する方法に薄膜蒸留を行う場合は、アロファネート反応後かつ薄膜蒸留前に触媒毒の添加を行うのが好ましい。これは、薄膜蒸留時の熱により、副反応が起こるのを防止するためである。
【0037】
この触媒毒としては、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸及びこれらのエステル類、アシルハライド等公知の物が挙げられる。
【0038】
第三工程は、遊離の有機ジイソシアネート(a)を除去する工程である。遊離の有機ジイソシアネートを除去する方法としては、蒸留、再沈、抽出等公知の方法が挙げられ、蒸留法、特に薄膜蒸留法を使用すると、溶剤等を用いる必要がないので好ましい。また、好ましい薄膜蒸留の条件としては、圧力:0.1kPa以下、温度:100〜200℃であり、特に好ましい条件は圧力:0.05kPa以下、温度:120〜180℃である。
【0039】
第四工程は、ウレタン化反応とアロファネート化反応の工程である。具体的な手順は、第三工程で得られたアロファネート変性ポリイソシアネートと、疎水性基含有モノアルコール(c)を、アロファネート変性ポリイソシアネートのイソシアネート基を水酸基に対して過剰となる量を仕込んで、20〜100℃でウレタン化反応させた後、70〜150℃にてアロファネート化触媒の存在下でウレタン基が実質的に存在しなくなるまでアロファネート化反応させる、という手順である。
【0040】
第五工程は、アロファネート化反応後、触媒毒を添加してアロファネート化反応を停止させる工程である。触媒毒の添加時期は、アロファネート化反応後であれば特に制限はない。
【0041】
このようにして得られるアロファネート変性ポリイソシアネート(乳化・分散剤)のノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)の含有量は10〜60質量%であり、好ましくは20〜50質量%である。ノニオン性親水基含有一官能アルコール(b)含有量がこの範囲を超えると、乳化、分散性が不十分となる。
【0042】
本発明の乳化・分散剤の使用において、分散させる被乳化物の有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートのウレタン変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
【0043】
本発明の乳化・分散剤の使用において、前述の有機ポリイソシアネートを水に乳化、分散する乳化・分散剤の配合量は、有機ポリイソシアネート100質量部に対して10〜1000質量部が好ましく、20〜500質量部が更に好ましく、50〜300質量部であることが最も好ましい。
【0044】
本発明の水乳化・分散硬化性組成物に使用される主剤としての高分子化合物は、常温液体で水に溶解性或いは親和性を有しない物が挙げられる。もしくは、水に対して溶解性或いはある程度の親和性を有する水溶性樹脂及び/又は水系エマルジョンを使用することも可能である。これらの高分子化合物は分子内にイソシアネート基と反応する活性水素を含有するものが好ましく、特に2個以上の活性水素を含有するものが好ましい。高分子化合物は、イソシアネート基と反応しうる活性水素を含有していない場合又は少ししか含有していない場合でも、最終的には水乳化・分散ポリイソシアネート硬化剤が水と反応してポリウレア化合物となり、硬くて強靭な塗膜となる。また、イソシアネート基が被着材表面に存在する活性水素(基)と反応するため、密着性も向上する。しかし、常温においてイソシアネート基と反応しうる活性水素を含有する高分子化合物を使用した場合は、高分子化合物中の活性水素と水乳化・分散ポリイソシアネート硬化剤中のイソシアネート基が反応し、架橋構造を形成するため、耐候性、耐溶剤性などが更に向上することになる。
【0045】
具体的には、例えば飽和或いは不飽和ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、飽和或いは不飽和の脂肪酸変性アルキッドポリオール、アミノアルキッドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、含フッ素ポリオール、更には飽和或いは不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂などが挙げられる。
【0046】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、水溶性エチレン−酢酸ビニル共重合体、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性リグニン誘導体、水溶性フッ素樹脂、水溶性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0047】
水系エマルジョンとしては、いわゆるラテックス、エマルジョンと表現されるもの全てを包含し、例えば、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリルブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレートブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックス等のゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリブタジエンラテックス、或いはこれらのラテックスをカルボキシル変性したもの、また、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、シリコーンアクリルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョンなどが挙げられる。
【0048】
これらのうち、光沢、耐候性等の塗膜性能や接着強度の点で、アクリルポリオール、アクリル樹脂、水溶性アクリル樹脂、アクリルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョンが特に好ましい。
【0049】
これら主剤としての高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは1000〜100万であり、さらに好ましくは10000〜10万である。
【0050】
本発明の乳化・分散剤の使用において、有機ポリイソシアネートと主剤としての高分子化合物を水に乳化、分散する乳化・分散剤の配合量は、有機ポリイソシアネート100質量部に対して10〜1000質量部が好ましく、20〜500質量部が更に好ましく、50〜300質量部であることが最も好ましい。
【0051】
本発明の水乳化・分散硬化性組成物において、高分子化合物として分子中に活性水素を含有するものを使用する場合、水乳化・分散イソシアネート硬化剤中のイソシアネート基と主剤としての活性水素含有高分子化合物中の活性水素基とのモル比は、9:1〜1:9が好ましく、更に好ましくは6:4〜4:6の範囲である。
【0052】
本発明の水乳化・分散硬化性組成物において、水と乳化・分散剤と有機ポリイソシアネートと高分子化合物との配合方法は、そのまま全原料を配合し乳化、分散させる、また、まず乳化・分散剤により有機ポリイソシアネートを水に乳化、分散させ、この中に主剤としての高分子化合物を配合して乳化、分散させる、また、まず主剤としての高分子化合物を乳化・分散剤により水に乳化、分散させ、この中に有機ポリイソシアネートを配合して乳化、分散させる等の方法が挙げられる。好ましい方法は、まず、乳化・分散剤により有機ポリイソシアネートを水に乳化、分散させ、次いでこの中に高分子化合物を配合して乳化、分散させる方法である。
【0053】
水と乳化・分散剤及び有機ポリイソシアネート(硬化剤)との配合比率は、水100質量部に対して、乳化・分散剤と有機ポリイソシアネート(硬化剤)との合計量は好ましくは0.1〜500質量部、更に好ましくは1〜100質量部、最も好ましくは3〜50質量部である。また、水と、乳化・分散剤、有機ポリイソシアネート(硬化剤)及び高分子化合物(主剤)との配合比率は、水100質量部に対して、乳化・分散剤と有機ポリイソシアネート(硬化剤)と高分子化合物(主剤)との合計量は好ましくは0.1〜500質量部、更に好ましくは1〜100質量部、最も好ましくは3〜50質量部である。この水乳化・分散イソシアネート硬化剤又は水乳化・分散硬化性組成物は、乳化、分散後も安定に存在している。イソシアネート基が主剤の他に適用する基材表面に存在する活性水素(基)とも反応するため、非常に密着性の良い塗料或いは接着剤などとなる。また、乳化、分散後かなりの時間が経過し、イソシアネート基が消滅した後も、粒径が0.05〜5μm程度のエマルジョン状態として安定に存在し、それを常温乾燥或いは加熱乾燥して得られる塗膜は、硬くて強靭なものとなるため、フィルム又はシートの形態或いは各種基材のコーティング剤等として使用することが可能である。なお、基材との密着性が重視される場合は、イソシアネート基が存在している状態で使用することが好ましい。
【0054】
本発明における乳化・分散剤、水乳化・分散イソシアネート硬化剤、水乳化・分散硬化性組成物には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤や、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤といった添加剤を適宜配合することができる。
【0055】
さらに、本発明の水乳化・分散硬化性組成物は従来より行なわれている通常の塗装方法によって塗装することができ、塗装にはエアレススプレー機、エアスプレー機、静電塗装機、浸漬、ロールコーター、ナイフコーター、ハケ等を用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、合成実施例、応用実施例等により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。なお、製造実施例、製造比較例等において「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
[アロファネート乳化・分散剤の製造]
<製造実施例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを830g、メトキシポリエチレングリコール(分子量約400)を170g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行って、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートを薄膜蒸留にて除去し、イソシアネート含量が10.7%のアロファネート変性イソシアネートを得た(NCO−1)。攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、NCO−1を728g、イソプロパノールを272g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行った。こうして、イソシアネート含量3.3%、25℃における粘度8700mPa・s、GPC測定にて分析したところ、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが0.1%の乳化・分散剤EA−1を得た。ポットライフは23時間であった。
【0058】
<製造実施例2>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを800g、メトキシポリエチレングリコール(分子量約400)、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行って、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートを薄膜蒸留にて除去し、イソシアネート含量が10.6%のアロファネート変性イソシアネートを得た(NCO−2)。攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、NCO−2を730g、2−エチルヘキサノールを270g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行った。こうして、イソシアネート含量3.0%、25℃における粘度6500mPa・s、GPC測定にて分析したところ、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが0.1%の乳化・分散剤EA−2を得た。ポットライフは23時間であった。
【0059】
<製造比較例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを510g、イソプロパノールを95g、メトキシポリエチレングリコール(分子量約400)を395g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行った。こうして、イソシアネート含量3.3%、25℃における粘度10000mPa・s、GPC測定にて分析したところ、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが1%の乳化・分散剤EA−3を得た。ポットライフは12時間であった。
【0060】
<製造比較例2>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを500g、イソプロパノールを100g、メトキシポリエチレングリコール(分子量約400)を400g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行った。こうして、イソシアネート含量2.4%、25℃における粘度160000mPa・s、GPC測定にて分析したところ、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが0.1%の乳化・分散剤EA−4を得た。臭気は確認されなかったが、高粘度のため水に乳化・分散はしなかった。
【0061】
製造実施例1、2、製造比較例1、2における各分析値の測定方法は以下の通り。
【0062】
[イソシアネート含量]
JIS K1603に準じて測定。
【0063】
[官能基の分析]
FT−IR(サーモフィッシャー製AVATAR−360)、13C−NMR(日本電子製JNM−ECX400)の各官能基のピーク強度でその存否を判断。
【0064】
[遊離のヘキサメチレンジイソシアネート含量]
GPC(東ソー製HLC−8120)のヘキサメチレンジイソシアネートのピークの面積比から算出。
【0065】
[ポットライフの評価]
製造実施例1、2、製造比較例1、2で得られた各乳化・分散剤EA−1〜4を5gとヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(東ソー株式会社製コロネートHXLV、イソシアネート含量=23.3%)を5gと水を90g使用してホモミキサーを用いて2000rpmで30秒間高速撹拌し、イソシアネート基が消失するまでの時間を測定した。
【0066】
[乳化・分散評価および臭気の確認]
製造実施例1、2、製造比較例1で得られた各乳化・分散剤EA−1〜3を4gとヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(東ソー製コロネートHXLV、イソシアネート含量=23.3%)を6gと水を90g使用して、ホモミキサーを用いて2000rpmで30秒間高速攪拌し、乳化、分散させ、ヘキサメチレンジイソシアネートの臭気の有無を調べた。
【0067】
乳化試験において、製造例EA−1、EA−2を用いたものについては臭気は無かったが、製造比較例EA−3のものは臭気が確認された。これはEA−3の製造過程において、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートを蒸留・除去しなかったためと思われる。製造比較例EA−4では臭気はなかったが、高粘度のため水に乳化・分散しなかった。