(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明のガラス物品の形態は、板厚が2.8〜5.5mmのガラス板と、
前記ガラス板の一方の主面上に設けられた被膜を備えたガラス物品であって、
前記被膜は赤外線吸収剤を含有し、
波長1000nmにおける平均透過率が18〜30%、かつ波長1500nmにおける平
均透過率が25〜40%であるガラス物品である。
【0011】
本実施形態のガラス物品は、ガラス板上に赤外線吸収性能を有する被膜が設けられたも
のである。ガラス板は、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、およびアルミ
ノシリケートガラス等からなり、強化されていても構わない。強化手段は問わず、物理強
化であっても化学強化であっても良い。ガラス板の厚さは2.8〜5.5mmであること
が好ましく、3.0〜5.0mmであることがより好ましい。
ガラス板の厚さが2.8mmより薄いと、ガラス板上に被膜を設けたときに、赤外線カメ
ラの高感度を維持することは可能であるが、十分な赤外線吸収性能を得ることが難しくな
る可能性ある。また、ガラス板の厚さが5.5mmより厚いと、ガラス板上に被膜を設け
たときに、赤外線カメラの高感度を維持することは可能であるが、十分な可視光線透過率
を得るのが難しくなる可能性がある。
【0012】
ガラス板上に形成される被膜は、液状組成物をガラス基板に塗布後、硬化させる方法、
シート状のものをガラス基板に貼りつける等の方法により形成される。被膜には、各種特
性が要求され、各種機能性添加剤が添加されていることが多い。
【0013】
本発明の被膜には、赤外線吸収能が要求されるため、赤外線吸収剤が被膜に含有されて
いる。液状組成物をガラス基板に塗布後、硬化させて被膜を形成する場合、均質な膜を得
るために、赤外線吸収剤は液状組成物中に均一に溶解または分散した状態で存在すること
が必要とされる。
【0014】
従来のガラス物品よりも、1500nmの赤外線透過率をあげてしまうと、ガラス物品
としての赤外域の透過率が上がる。赤外線カメラを高感度とするためには、1500nm
の赤外線透過率を高めることは必要不可欠である。そこで、赤外線カメラの感度にほぼ影
響を及ぼすことのない1000nmの赤外線透過率をさげることで、ガラス物品としての
赤外域の透過率が従来のガラス物品と比較して上がることを抑え、かつ赤外線カメラが高
感度で機能することとしている。
【0015】
本実施形態の赤外線吸収ガラス物品の波長1000nmにおける透過率は、18〜30
%であることが好ましい。波長1000nmにおける透過率が18〜30%であると、十
分な赤外線吸収能がえられ、車内の温度が上がりすぎるのを防ぐことができる。波長10
00nmにおける透過率が18%未満であると、十分な赤外線吸収能が得られるが、可視
光線透過率(Tv)[%]も相対的に低下させるため、高い視認性を維持することが難し
くなる可能性がある。また、波長1000nmにおける透過率が30%より高いと、十分
な赤外線吸収能が得られない可能性がある。
さらに、本発明に用いる被膜付きガラス板の波長1500nmにおける透過率は、25〜
40%であることが好ましい。波長1500nmにおける透過率が25〜40%であると
、赤外線カメラが用いられる場合に、高感度を保持するために十分な赤外線透過が得られ
、正確な位置情報を得ることとができる。波長1500nmにおける透過率が25%未満
であると、赤外線カメラが用いられる場合に、高感度を保持することが難しくなる可能性
がある。また、波長1500nmにおける透過率が40%より高いと、十分な赤外線吸収
能が得られない可能性がある。
【0016】
被膜に含有されている赤外線吸収剤は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモ
ンドープ酸化錫(ATO)、および複合タングステン酸化物から選択される。1種類のみ
を用いてよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。本発明において、赤外線吸収剤は
、微粒子の形状で用いられる。
【0017】
赤外線吸収剤を含む被膜における赤外線吸収剤の含有量は、被膜中の0.1〜30質量
%が好ましく、0.2〜20質量%がより好ましく、0.3〜10質量%がさらに好まし
い。赤外線吸収剤の含有量が被膜中の0.1〜30質量%であると、十分な赤外線吸収能
を有する。
【0018】
被膜に紫外線吸収能が要求される場合、紫外線吸収剤が被膜に含有されている。液状組
成物をガラス基板に塗布後、硬化させて被膜を形成する場合、均質な膜を得るために、紫
外線吸収剤は液状組成物中に均一に溶解または分散した状態で存在することが必要とされ
る。
【0019】
本実施形態のガラス物品のガラス板の可視光線透過率(Tv)[%]は、72[%]以
上である。可視光線透過率(Tv)[%]を72[%]以上とすることにより、赤外線吸
収性能を保持しつつ特定波長の赤外線透過率の高い被膜を付けた場合であっても、高い視
認性を維持することが可能となる。
【0020】
本発明に用いる被膜付きガラス板の波長380nmにおける透過率は、好ましくは2.
0%以下であり、より好ましくは1.8%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下。
波長380nmにおける透過率が2.0%以下であると、高い紫外線吸収能が得られる。
【0021】
本発明の被膜の膜厚は、1〜10μm、より好ましくは、2〜8μm、より好ましくは
、3〜7μmである。上記被膜の膜厚が1μm未満であると、赤外線吸収の効果が不十分
となることがあり、被膜の膜厚が10μmを越えるとクラックが発生することがある。
【0022】
(赤外線吸収ガラス物品の製造方法)
本発明の実施形態に係る赤外線吸収ガラス物品の製造方法は、ガラス板上に、赤外線吸
収剤を含む液状組成物を塗布する工程と、赤外線吸収剤を含む液状組成物が塗布された透
明基体を加熱処理する工程とを備える。製造方法は必要に応じてその他の工程を有してい
ても構わない。加熱処理により、赤外線吸収剤を含む液状組成物が硬化し、赤外線吸収能
を有する被膜が形成される。
【0023】
赤外線吸収剤を含む組成物の塗布方法はスピンコート、ディップコート、スプレーコー
ト、フローコート、ダイコート等の一般的な塗布方法を用いることができる。フローコー
トは曲面形状を有すガラス板の場合に特に好適に用いることができる。
【0024】
続いて、赤外線吸収剤を含む液状組成物が塗布されたガラス板を加熱することで、赤外
線吸収能を有する被膜を形成する。加熱には電気炉やガス炉や赤外加熱炉等を使用するこ
とができる。加熱処理の温度や時間は、適宜調整することができ、例えば、70〜300
℃の範囲である。また、加熱時間は例えば1〜180分である。
【0025】
ガラス板上に形成される被膜は、熱可塑性樹脂からなる膜、硬化性樹脂の硬化物からな
る膜、ゾルーゲル法による酸化ケイ素膜等があげられる。
【0026】
(赤外線吸収剤を含む液状組成物)
本発明の実施形態に係る被膜を形成するための赤外線吸収剤を含む液状組成物について
以下に説明する。本発明に用いる液状組成物は、少なくとも1種のマトリックス成分と、
1種の赤外線吸収剤とを含む。
【0027】
本発明に用いる液状組成物には、酸触媒、紫外線吸収剤、分散剤、キレート剤、液状媒
体、消泡剤、レべリング剤、密着性付与剤、染料、顔料、フィラー等の添加剤が含まれて
いてもよい。
【0028】
[マトリックス成分]
本発明に用いる液状組成物のマトリックス成分は、被膜形成のための主成分である。マ
トリックス成分としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、酸化ケイ素マトリックス成分があ
げられる。
【0029】
酸化ケイ素マトリクス成分は、加水分解性シラン化合物のみで構成されてもよいが、加
水分解性シラン化合物以外にさらに、可撓性成分や、酸化ケイ素微粒子を含有してもよい
。
【0030】
本発明においては、加水分解性シラン化合物が加水分解(共)縮合することで、被膜が
得られる。そのため、液状組成物に水や酸触媒等が添加されていることが必要とされる。
【0031】
加水分解性シラン化合物は、好ましくは、4官能性加水分解性シラン化合物のみで構成
されるか、4官能性加水分解性シラン化合物と、2官能性加水分解性シラン化合物および
/または3官能性加水分解性シラン化合物で構成される。より好ましくは、4官能性加水
分解性シラン化合物のみで構成される。
【0032】
4官能性加水分解性シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラ
ン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブ
トキシシラン等が挙げられる。本発明において好ましくは、テトラエトキシシラン、テト
ラメトキシシラン等が用いられる。これらは1種が単独で用いられても、2種以上が併用
されてもよい。
【0033】
3官能性加水分解性シラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエト
キシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメト
キシシラン等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられても、2種以上が併用されて
もよい。
【0034】
2官能性加水分解性シラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエト
キシシラン等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられても、2種以上が併用されて
もよい。
【0035】
可撓性成分は、被膜におけるクラック発生の抑制に寄与できる。特に、酸化ケイ素マト
リクス成分が4官能性加水分解性シラン化合物のみで構成される場合、被膜は可撓性が充
分でないことがある。液状組成物が4官能性加水分解性シラン化合物とともに可撓性成分
を含有すれば、機械的強度と耐クラック性の双方に優れた被膜を容易に作製することがで
きる。
【0036】
本発明においては、上記可撓性成分のうちでも、エポキシ樹脂、特にポリエポキシド類
、PEG、グリセリン等が、被膜に、機械的強度も保持しながら充分な可撓性を付与でき
る点から好ましい。また、上記エポキシ樹脂、特にポリエポキシド類、PEG、グリセリ
ン等は、長期間に亘る光照射による、クラックの発生を防止する機能に加えて、被膜の無
色透明性を確保しながら、赤外線吸収や紫外線吸収等の各種機能の低下を抑制する機能も
有するものである。なお、本発明においては、これらのなかでもポリエポキシド類が特に
好ましい。
【0037】
赤外線吸収剤を含む液状組成物におけるマトリックス成分の含有量は、組成物中の60
〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、80〜90質量%がさらに
好ましい。なお、マトリックス成分の含有量は固形分換算含有量である。本発明において
、成分の固形分換算含有量とは、水等の揮発性成分を除いた残渣の質量をいう。
【0039】
に記載の通り、加水分解性シラン化合物が加水分解(共)縮合するために
、液状組成物に酸触媒が添加される。
【0040】
酸触媒としては、硝酸、塩酸等の無機酸類や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸
、フタル酸等のカルボン酸類、メタスルホン酸等のスルホン酸があげられる。より好まし
くは、カルボン酸類があげられる。
【0041】
[紫外線吸収剤]
液状組成物には、紫外線吸収能を付与するために、紫外線吸収剤が含まれていてもよい
。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、具体的には、2,4−ジヒド
ロキシベンゾフェノン、2,2’,3(または4、5、6のいずれか)−トリヒドロキシ
ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒ
ドロキシ−2’,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキ
シベンゾフェノン等が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、2,2’,4,4’−
テトラヒドロキシベンゾフェノンが用いられる。
【0042】
液状組成物における紫外線吸収剤の含有量は、液状組成物中の0.01〜15質量%が
好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。紫外線
吸収剤の含有量が液状組成物中の0.01〜15質量%であると、十分な紫外線吸収能を
有する。
【0043】
[分散剤]
分散剤は、赤外線吸収剤を構成する各微粒子を、液状組成物中に分散安定性をもって分
散させる目的で用いられる成分である。また、分散剤は、液状組成物中に共に存存する赤
外線吸収剤を構成する微粒子と紫外線吸収剤とのキレート結合を抑制する作用を有する。
なお、本発明の液状組成物において、該キレート結合を抑制する効果は分散剤単独使用で
は十分とはいえず、後述のキレート剤との併用により十分なものとなり得る。
【0044】
ここで、本明細書において分散剤は、少なくとも分子中に、赤外線吸収剤を構成する微
粒子の表面と吸着する部位と、該微粒子に吸着した後は吸着した部位から分散媒(液状媒
体の一部となる)中に伸びてそれ自体が有する電荷の反発や立体的な障害により該微粒子
を液状組成物中に安定して分散させる部位を有することで、赤外線吸収剤の微粒子の分散
安定性を増大させる機能を有する化合物を総称するものである。分散剤と後述のキレート
剤とは、キレート剤が赤外線吸収剤の微粒子に吸着するものの分散安定性を増大させる機
能を有しない点で相違する。
【0045】
分散剤としては、固体微粒子用の分散剤として市販されているものを用いることができ
る。具体的には、酸価やアミン価を有する分散剤として、スチレン系分散剤であるビック
ケミー・ジャパン社製の商品名でDISPERBYK−190(分子量:2200、酸価
:10mgKOH/g、固形分40質量%の水溶液)、DISPERBYK−180(分
子量:2000、酸価:95mgKOH/g、アミン価95mgKOH/g、固形分10
0質量%)DISPERBYK−185(分子量:1500、アミン価18mgKOH/
g、固形分100質量%)、等が挙げられる。
【0046】
赤外線吸収剤を含む液状組成物における分散剤の含有量は、組成物中の0.01〜10
質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
分散剤の含有量が組成物中の0.01〜10質量%であると、固体微粒子を組成物中に十
分に分散することができる。
【0047】
[キレート剤]
キレート剤は、上記分散剤とともに赤外線吸収剤の微粒子に作用して、赤外線吸収剤の
微粒子に紫外線吸収剤がキレート結合するのを抑制する作用を有する。
【0048】
なお、本明細書においてキレート剤とは、1分子で赤外線吸収剤の微粒子の表面の複数
箇所に配位結合できる化合物であって、分子構造に起因した微粒子への吸着後の立体障害
が小さく、赤外線吸収剤の微粒子の分散安定性を増大させる機能を有しない化合物を総称
するものである。
【0049】
本発明において、分散剤は、赤外線吸収剤の微粒子の表面に吸着する部分と分散媒(液
状媒体の一部となる)中に伸びて分散安定性を確保する部分とを有するものであって、液
状組成物中における赤外線吸収剤の微粒子の分散安定性が確保される適量が含有される。
通常、このような分散剤の適量は、必ずしも赤外線吸収剤の微粒子の表面を十分に覆い、
かつ、紫外線吸収剤のキレート結合を抑制できる十分な量ではない。そこで、本発明にお
いては、液状組成物にキレート剤を含有させることで、分散剤と合わせて赤外線吸収剤の
微粒子の表面を十分に覆い、紫外線吸収剤の赤外線吸収剤の微粒子へのキレート結合を十
分に抑制できるものとした。
【0050】
本発明においてはキレート剤として市販品を用いることができる。市販品としては、例
えば、ポリマレイン酸として、ノンポールPMA−50W(商品名、日油社製、分子量:
1,200、固形分40〜48質量%の水溶液)等が、ポリアクリル酸としてアクアリッ
クHL(商品名、日本触媒製、分子量:10,000、固形分45.5質量%の水溶液)
等が挙げられる。
【0051】
本発明に用いるキレート剤は、上記赤外線吸収剤と錯体を形成しうるキレート剤であっ
て、該形成された錯体が可視光波長の光に対して実質的に吸収を示さないものであって、
かつその分子量は1,000〜100,000である。分子量は、1,500〜100,
000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましい。キレート剤の分子量が
上記範囲にあれば、分散剤とともに赤外線吸収剤微粒子の表面に吸着、配位して、赤外線
吸収剤の微粒子に紫外線吸収剤がキレート結合するのを十分に抑制できる。
【0052】
ここで、「実質的に吸収を示さない」とは、例えば、赤外線吸収剤100質量部に対し
て、キレート剤を50質量部加えた液状組成物を、赤外線吸収剤が基板上に0.7g/m
2の量で堆積するように基板上に成膜し、得られる被膜付き基板に対してJIS K71
05(1981年)YI(Yellow Index)の値と、基板のみに対して測定し
たYIとの差が2.0以下となることを意味する。
【0053】
[液状媒体]
本発明の液状組成物中の全固形分を溶解、分散するために液状媒体が用いられる。
【0054】
本発明に用いる液状媒体としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸
エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−
プロパノール等のアルコール類、酢酸等のカルボン酸類、アセトニトリル等のニトリル類
、水等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、以下に説明する例
4〜11が実施例であり、例
1〜3、12〜15が比較例である。
【0056】
<赤外線吸収剤分散液の調製例>
赤外線吸収剤としてのITO超微粒子(三菱マテリアル社製、平均一次粒子径20nm
、平均分散粒子径55nm)の11.9g、DISPERBYK−190(ビックケミー
・ジャパン社製、酸価10mgKOH/g、分子量2,200の分散剤の40質量%水溶
液)の3.0g、ソルミックスAP−1(日本アルコール販売社製、エタノール:2−プ
ロパノール:メタノール=85.5:13.4:1.1(質量比))の混合溶媒の24.
2gをボールミルを用いて48時間分散処理し、その後さらにソルミックスAP−1を添
加してITO固形分濃度が20質量%となるように希釈し、赤外線吸収剤分散液を得た。
【0057】
<紫外線吸収剤溶液の調製例>
2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン(BASF社製)49.2g、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製)123.2g、塩化ベン
ジルトリエチルアンモニウム(純正化学社製)0.8g、酢酸ブチル(純正化学社製)1
00gを仕込み撹拌しながら60℃に昇温し、溶解させ、120℃まで加熱し4時間反応
させることにより、固形分濃度63質量%の紫外線吸収剤溶液を得た。
【0058】
(例1)
赤外線吸収剤分散液の4.5g、ソルミックスAP‐1の45.3g、純水の18.1
g、テトラエトキシシランの11.0g、SR‐SEP(阪本薬品工業社製)の1.1g
、ノンポールPMA‐50W(日油社製)の0.3g、90%酢酸の11.5g、ポリエ
ーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社)の0.1g、紫
外線吸収剤溶液の12.6gを仕込み、50℃で2時間撹拌して、液状組成物1を得た。
【0059】
その後、基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライム
ガラスからなるガラス基板(板厚: 5mm、Tv: 74.3%,T380: 48.
7%,T1000: 19.5%,T1500: 36.1%)を用い、そのガラス基板
の表面に、液状組成物1をスピンコートによって塗布した。次いで200℃の電気炉で2
5分間保持し、赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0060】
(例2)
例1において、赤外線吸収剤分散液の添加量を2.5gに変更した以外は例1と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0061】
(例3)
例1において、赤外線吸収剤分散液の添加量を0.5gに変更した以外は例1と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0062】
(例4)
赤外線吸収剤分散液の6.0g、ソルミックスAP‐1の45.3g、純水の18.1
g、テトラエトキシシランの11.0g、SR‐SEP(阪本薬品工業社製)の1.1g
、ノンポールPMA‐50W(日油社製)の0.3g、90%酢酸の11.5g、ポリエ
ーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社)の0.1g、紫
外線吸収剤溶液の12.6gを仕込み、50℃で2時間撹拌して、液状組成物4を得た。
【0063】
その後、基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライム
ガラスからなるガラス基板(板厚: 4mm、Tv: 74.8%,T380: 32.
7%,T1000: 27.3%,T1500: 45.3%)を用い、そのガラス基板
の表面に、液状組成物4をスピンコートによって塗布した。次いで200℃の電気炉で2
5分間保持し、赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0064】
(例5)
例4において、赤外線吸収剤分散液の添加量を4.5gに変更した以外は例4と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0065】
(例6)
例4において、赤外線吸収剤分散液の添加量を3.0gに変更した以外は例4と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0066】
(例7)
例4において、赤外線吸収剤分散液の添加量を2.0gに変更した以外は例4と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0067】
(例8)
赤外線吸収剤分散液の6.5g、ソルミックスAP‐1の45.3g、純水の18.1
g、テトラエトキシシランの11.0g、SR‐SEP(阪本薬品工業社製)の1.1g
、ノンポールPMA‐50W(日油社製)の0.3g、90%酢酸の11.5g、ポリエ
ーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社)の0.1g、紫
外線吸収剤溶液の12.6gを仕込み、50℃で2時間撹拌して、液状組成物8を得た。
【0068】
その後、基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライム
ガラスからなるガラス基板(板厚: 3.2mm、Tv: 74.9%,T380: 3
3.2%,T1000: 28.5%,T1500: 46.2%)を用い、そのガラス
基板の表面に、液状組成物8をスピンコートによって塗布した。次いで200℃の電気炉
で25分間保持し、赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0069】
(例9)
例8において、赤外線吸収剤分散液の添加量を5.0gに変更した以外は例8と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0070】
(例10)
例8において、赤外線吸収剤分散液の添加量を3.5gに変更した以外は例8と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0071】
(例11)
例8において、赤外線吸収剤分散液の添加量を2.0gに変更した以外は例8と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0072】
(例12)
例4において、赤外線吸収剤分散液の添加量を7.0gに変更した以外は例4と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0073】
(例13)
例4において、赤外線吸収剤分散液の添加量を0.5gに変更した以外は例4と同様に
して赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0074】
(例14)
赤外線吸収剤分散液の7.0g、ソルミックスAP‐1の45.3g、純水の18.1
g、テトラエトキシシランの11.0g、SR‐SEP(阪本薬品工業社製)の1.1g
、ノンポールPMA‐50W(日油社製)の0.3g、90%酢酸の11.5g、ポリエ
ーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社)の0.1g、紫
外線吸収剤溶液の12.6gを仕込み、50℃で2時間撹拌して、液状組成物14を得た
。
【0075】
その後、基体として、酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なソーダライム
ガラスからなるガラス基板(板厚: 2.8mm、Tv: 76.1%,T380: 3
5.8%,T1000: 31.1%,T1500: 48.9%)を用い、そのガラス
基板の表面に、液状組成物14をスピンコートによって塗布した。次いで200℃の電気
炉で25分間保持し、赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0076】
(例15)
例14において、赤外線吸収剤分散液の添加量を2.5gに変更した以外は例14と同
様にして赤外線吸収層を有するガラス物品を得た。
【0077】
[膜厚]
赤外線吸収層を有するガラス物品の断面像を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S43
00)で撮影し、赤外線吸収層の膜厚を測定した。
【0078】
[透過率測定]
ガラス板、および被膜付きガラス板の分光特性を分光光度計(日立製作所製:U−41
00)を用いて測定し、ISO−9050(1990年)に従って、ガラス板の可視光線
透過率(Tv[%])、被膜付きガラス板の波長380nm、1000nm、1500n
mでの透過率、T380[%]、T1000[%]、T1500[%]をそれぞれ算出し
た。
【0079】
表1は、例1〜15のガラス板の厚さ、透過率の測定結果等を示したものである。
【0081】
例1〜11は波長1000nmにおける平均透過率が18〜30%、かつ波長1500
nmにおける平均透過率が25〜40%であり、赤外線カメラの感度を向上しつつ、車内
が暑くなるのを防ぐことができた。例12では、波長1500nmにおける平均透過率が
、22.5%であったため、赤外線カメラの感度が十分ではなく、例13では、波長15
00nmにおける平均透過率が、43.6%であったため、車内が暑くなるのを十分に防
ぐことができなく、例14では、波長1000nmにおける平均透過率が、30.6%で
あったため、車内が暑くなるのを十分に防ぐことができなく、例15では、波長1000
nmにおける平均透過率が、30.9%であり、波長1500nmにおける平均透過率が
、40.1%であったため、車内が暑くなるのを十分に防ぐことができなかった。