特許第6680401号(P6680401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6680401湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、それを用いた物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680401
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、それを用いた物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20200406BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20200406BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20200406BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20200406BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20200406BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20200406BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20200406BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20200406BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20200406BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C08G18/30 070
   C08G18/10
   C08G18/20
   C08G18/08 038
   C08G18/40 018
   C08G18/40 063
   C08L75/04
   C08K5/34
   C08K5/42
   C09J175/04
   C09J11/06
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-511511(P2019-511511)
(86)(22)【出願日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】JP2018043137
(87)【国際公開番号】WO2019123968
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-243867(P2017-243867)
(32)【優先日】2017年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 公恵
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
(72)【発明者】
【氏名】二宮 淳
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−137468(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/153907(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/061790(WO,A1)
【文献】 特開2017−101109(JP,A)
【文献】 特開2009−286883(JP,A)
【文献】 特開平04−120117(JP,A)
【文献】 特開平05−117619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08L 75/00−75/16
C08K 5/00−5/59
C09J 11/00−11/08
C09J 175/00−175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ウレタンプレポリマー(i)が、ポリエーテルポリオール(a−1)、結晶性ポリエステルポリオール(a−2)、非晶性ポリエステルポリオール(a−3)、及び、アクリルポリオール(a−4)を含有するポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物であり、
前記結晶性ポリエステルポリオール(a−2)の使用量が、前記ポリエーテルポリオール(a−1)100質量部に対して、20〜150質量部の範囲であり、
前記非晶性ポリエステルポリオール(a−3)の使用量が、前記ポリエーテルポリオール(a−1)100質量部に対して、20〜150質量部の範囲であり、
前記アクリルポリオール(a−4)の使用量が、前記ポリエーテルポリオール(a−1)100質量部に対して、20〜400質量部の範囲であり、
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が、更に下記一般式(1)で示される硬化触媒(ii)を、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.2〜1質量部の範囲で含有し、
硫黄原子を含む有機酸(iii)を、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部の範囲で含有し、
前記有機酸(iii)が、メタンスルホン酸、及び/又は、エタンスルホン酸であり、
前記硬化触媒(ii)と有機酸(iii)との質量比[(ii)/(iii)]が、92〜99.5/0.5の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、n及びmはそれぞれ独立して1〜6の整数を示す。)

【請求項2】
前記硬化触媒(ii)が、ジモルホリノジエチルエーテル、及び/又は、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテルである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも2つの部材を請求項1又は2記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物で貼り合わせたことを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物および物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、無溶剤であることから環境対応型接着剤として、繊維ボンディング・建材ラミネーションを中心に様々な研究が今日までなされており、産業界でも広く利用されている。
【0003】
また、近年においては、光学部品の貼り合せにおいて、光学部品の軽量化や薄膜化のニーズの高まりを受け、これまで主流であったアクリル系粘着剤から、ホットメルト接着剤を代用する検討がなされている。
【0004】
前記接着剤としては、例えば、(a)流動開始温度が55℃以上110℃以下のポリウレタン樹脂100重量部に対し、(b)Tgが0℃以上110℃以下、分子量10000〜25000の飽和ポリエステル樹脂5〜150重量部、(c)軟化点が60℃以上140℃以下、分子量700〜3000のエポキシ樹脂10〜150重量部及び(d)カップリング剤で表面処理した無機充填剤10〜200重量部を配合したことを特徴とする耐湿熱性ホットメルト接着剤組成物を用いた接着剤が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
前記接着剤は実用上使用可能レベルの耐湿熱性を有するものである。しかしながら、該接着剤を用いて貼り合せた積層体が水に浸漬してしまった際には、比較的短時間で水が積層体内部に侵入することがあり、防水性能が不十分であるとの問題点があった。
また、近年は生産効率を向上するため、養生時間を短縮可能な材料が強く求められている中で、前記耐湿熱性ホットメルト接着剤組成物は、低温時においても接着できるというメリットを有するものの、速硬化を望む場面では実際上使用できないものであった。また、触媒等を添加することにより、速硬化性を向上する手法も考えられるが、経時での粘度上昇等も懸念されるため、その両立を実現することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−27030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、保存安定性、初期接着強度、防水性、及び、耐落下衝撃性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が、更に下記一般式(1)で示される硬化触媒(ii)を、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.2〜1質量部の範囲で含有し、硫黄原子を含む有機酸(iii)を、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部の範囲で含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、それを用いて得られた物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、経時での粘度上昇を緩和し得る優れた保存安定性を有するものである。また、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた、初期接着強度、及び最終接着強度を発現でき、前記ポリウレタンホットメルト樹脂組成物により貼り合された物品は、防水性、及び、耐落下衝撃性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特に光学用部材の貼り合せに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)と、特定量の硬化触媒(ii)と、特定量の有機酸(iii)を含有するものである。
【0011】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)は、例えば、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応物を用いることができる。
【0012】
前記ポリオール(A)としては、例えば、ポリエーテルポリオール(A−1)、結晶性ポリエステルポリオール(A−2)、非晶性ポリエステルポリオール(A−3)、アクリルポリオール(A−4)、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記ポリオール(A)としては、前記した中でも、より一層優れた防水性、接着強度、及び、耐落下衝撃性が得られる点から、ポリエーテルポリオール(A−1)、結晶性ポリエステルポリオール(A−2)、非晶性ポリエステルポリオール(A−3)、アクリルポリオール(A−4)を用いることが好ましい。
【0014】
前記ポリエーテルポリオール(A−1)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を用いることができる。
【0015】
前記ポリエーテルポリオール(A−1)の数平均分子量としては、より一層優れた接着初期強度が得られ、適度なオープンタイム(使用可使時間)が得られる点から、500〜10,000の範囲が好ましく、700〜5,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(A−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0016】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)としては、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0017】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、より一層優れた防水性および接着強度が得られる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及び、デカンジオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0018】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量としては、より一層優れた防水性および接着性が得られる点から、500〜10,000の範囲が好ましく、1,000〜4,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0020】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)のガラス転移温度(Tg)としては、40〜130℃の範囲が好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)のガラス転移温度は、JIS K 7121−1987に準拠し、DSCにより測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)を入れ、(Tg+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0021】
前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)を用いる場合の使用量としては、より一層優れた柔軟性、接着性、及び、オープンタイムが得られる点から、前記エーテルポリオール(A−1)100質量部に対して、20〜150質量部の範囲が好ましく、30〜100質量部の範囲がより好ましい。
【0022】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−3)としては、例えば、下記水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0023】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン;ビスフェノールA、ビスフェノールF、そのアルキレンオキサイド付加物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐水性、接着強度、及び、柔軟性が得られる点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。また、前記アルキレンオキサイドの付加モル数としては、2〜10モルが好ましく、4〜8モルがより好ましい。
【0024】
前記多塩基酸としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−3)の数平均分子量としては、より一層優れた防水性、接着性、および柔軟性が得られる点から、500〜10,000の範囲が好ましく、1,000〜4,000の範囲がより好ましく、1,000〜3,000の範囲が更に好ましい。なお、前記非晶性ポリエステルポリオール(A−3)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0026】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−3)のガラス転移温度としては、より一層優れた防水性、接着性および柔軟性が得られる点から、−70〜−10℃の範囲が好ましい。なお、前記非晶性ポリエステルポリオール(A−3)のガラス転移温度は、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)のガラス転移温度(Tg)の測定方法と同様である。
【0027】
前記非晶性ポリエステルポリオール(A−3)を用いる場合の使用量としては、より一層優れた防水性、柔軟性、および接着強度が得られる点から、前記エーテルポリオール(A−1)100質量部に対して、20〜150質量部の範囲が好ましく、25〜130質量部の範囲がより好ましく、55〜100質量部の範囲が更に好ましい。
【0028】
前記アクリルポリオール(A−4)としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を必須として含有する(メタ)アクリル化合物の重合物を用いることができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物とアクリル化合物の一方又は両方を示し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方を示
【0029】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する(メタ)アクリル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シジクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル化合物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−[1,3]−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた防水性、接着性、及び、オープンタイムが得られる点から、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0031】
前記アクリルポリオール(A−4)の数平均分子量としては、より一層優れた防水性、接着性、およびオープンタイムが得られる点から、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜30,000がより好ましい。なお、前記アクリルポリオール(A−4)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0032】
前記アクリルポリオール(A−4)のガラス転移温度としては、より一層優れた防水性、接着強度、およびオープンタイムが得られる点から、30〜120℃の範囲が好ましく、50〜80℃の範囲がより好ましい。なお、前記アクリルポリオール(A−4)のガラス転移温度は、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)のガラス転移温度(Tg)の測定方法と同様である。
【0033】
前記アクリルポリオール(A−4)を用いる場合の使用量としては、より一層優れた防水性、オープンタイム、および接着強度が得られる点から、前記エーテルポリオール(A−1)100質量部に対して、20〜400質量部の範囲が好ましく、25〜200質量部の範囲がより好ましく、35〜150質量部の範囲が更に好ましい。
【0034】
前記ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた反応性および接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0035】
また、前記ポリイソシアネート(B)の使用量としては、より一層優れた接着強度が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)の原料中5〜60質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0036】
前記ウレタンプレポリマー(i)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される筐体や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0037】
前記ウレタンプレポリマー(i)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(B)の入った反応容器に、前記ポリオール(A)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0038】
前記ウレタンプレポリマー(i)を製造する際には、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])が、より一層優れた防水性、接着性、および柔軟性が得られる点から、1.1〜5の範囲が好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0039】
前記ウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた防水性、接着性、および柔軟性が得られる点から、1.5〜8%の範囲が好ましく、1.7〜5%の範囲がより好ましく、1.8〜3の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(i)のNCO%は、JISK1603−1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0040】
前記ウレタンプレポリマー(i)の粘度としては、より一層優れた防水性および接着強度が得られる点から、125℃における溶融粘度が1,000〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、2,000〜10,000mPa・sの範囲がより好ましい。なお、前記125℃における溶融粘度は、コーンプレート粘度計(ICI製)で測定した値を示す。
【0041】
前記ウレタンプレポリマー(i)の軟化点としては、より一層優れた防水性、および接着強度が得られる点から、30〜120℃の範囲内であることが好ましい。なお、前記軟化点とは、ウレタプレポリマーの温度を段階的に上昇させた場合に、熱流動し始め凝集力を失う温度をいう。また、前記ウレタンプレポリマー(i)の軟化点は、JIS K 5902に準拠した環球法により求められた値を示す。
【0042】
前記硬化触媒(ii)は、優れた防水性、耐落下衝撃性、および初期接着強度を得る上で、下記一般式(1)で示されるものを用いることが必須である。
【0043】
【化1】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、n及びmはそれぞれ独立して1〜6の整数を示す。)
【0044】
前記硬化触媒(ii)としては、より一層優れた初期接着強度が得られる点から、下記一般式(2)で示されるジモルホリノジエチルエーテル、及び/又は、下記一般式(3)で示されるビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテルを用いることが好ましい。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
また、前記硬化触媒(ii)の使用量としては、優れた初期接着強度を得る上で、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.2〜1質量部の範囲であることが必須である。前記硬化触媒(ii)の使用量が、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.2質量部を下回る場合には、特に所望の初期接着強度を得ることができず、1質量部を超える場合には、ゲル化したり、経時での粘度上昇率が高くなり、保存安定性が極めて不良となる。前記硬化触媒(ii)の使用量としては、より一層優れた保存安定性、最終接着強度および耐落下衝撃性が得られる点から、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.25〜0.85質量部の範囲が好ましく、0.3〜0.7質量部の範囲がより好ましい。
【0048】
前記硫黄原子を含む有機酸(iii)は、優れた保存安定性を得る上で必須の成分である。前記有機酸(iii)としては、例えば、スルホン酸化合物、スルフィン酸化合物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記スルホン酸化合有物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンジスルホン酸、2−ヒドロキシ−1−エタンスルホン酸、スルホ酢酸、2−アミノ−1−エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記スルフィン酸化合物としては、例えば、メタンスルフィン酸、エタンスルフィン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記有機酸(iii)としては、前記したものの中でも、より一層優れた保存安定性が得られる点から、スルホン酸化合物を用いることが好ましく、メタンスルホン酸、及び/又は、エタンスルホン酸がより好ましく、メタンスルホン酸が更に好ましい。
【0052】
また、前記有機酸(iii)の使用量としては、優れた保存安定性を得る上で、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部の範囲であることが必須である。前記有機酸(iii)の使用量が、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.0001質量部を下回る場合には、所望の保存安定性が得られず、0.5質量部を超える場合には、接着強度、耐落下衝撃性、および防水性を損ねてしまう問題がある。前記有機酸(iii)の使用量としては、より一層優れた保存安定性が得られる点から、前記ウレタンプレポリマー(i)100質量部に対して、0.0005〜0.1質量部の範囲が好ましく、0.001〜0.08質量部の範囲がより好ましい。
【0053】
前記硬化触媒(ii)と有機酸(iii)との質量比[(ii)/(iii)]としては、保存安定性、初期接着強度、防水性、及び、耐落下衝撃性の両立をより一層高めることができる点から、70/30〜99.5/0.5の範囲が好ましく、92/8〜99/1の範囲がより好ましい。
【0054】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(i)、前記硬化触媒(ii)、及び、前記有機酸(iii)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0055】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、経時での粘度上昇を緩和し得る優れた保存安定性を有するものである。また、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた、初期接着強度、及び最終接着強度を発現でき、前記ポリウレタンホットメルト樹脂組成物により貼り合された物品は、防水性、及び、耐落下衝撃性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、繊維ボンディング・建材ラミネーション用途のみならず、光学用部材の貼り合せに特に好適に用いることができる。
【0057】
前記光学部材の貼り合せに用いられる態様としては、例えば、携帯電話、パソコン、ゲーム機、テレビ、カーナビ、カメラスピーカー等のシール剤が挙げられる。
【0058】
前記貼り合せを行う場合には、例えば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を50〜130℃の温度範囲で加熱溶融し、該組成物を一方の部材の上に塗布し、次いで該組成物の上にもう一方の部材を貼り合せて物品を得る方法が挙げられる。
【0059】
前記部材としては、例えば、ガラス、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等から得られるものを用いることができる。また、前記部材は、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等が施されていてもよい。
【0060】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T−タイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0061】
また、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、低粘度性、および塗布後の優れた保型性を有することから、ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の方式により塗布することもできる。これらの塗布方式によれば、前記部材上の塗布したい箇所に前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗布することができるので、打ち抜き加工等のロスを生じることがないため好ましい。また、こられの塗布方式によれば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を、点状、線状、三角状、四角状、丸状、曲線等の様々な形状を前記部材上に連続的又は断続的に形成することができる。
【0062】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層(接着層)の厚さとしては、使用される用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、10μm〜5mmの範囲が挙げられる。
【0063】
前記貼り合せ後の熟成条件としては、例えば、温度20〜80℃、相対湿度50〜90%RH、0.5〜3日間の間で適宜決定することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0065】
[合成例1]
<アクリルポリオール−1の合成>
温度計、攪拌機及び冷却管を備えた反応容器に、メチルエチルケトン300質量部を入れ、容器内温度を80℃にした後、メタクリル酸340質量部、メタクリル酸ブチル340質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10質量部、アゾビスイソブチロニトリル8.5質量部をメチルエチルケトン160質量部に溶解したものを添加、混合し、16時間反応させることによって、アクリルポリオール−1(不揮発分:52質量%、粘度;20,000mPa・s(23℃))を得た。
【0066】
[合成例2]
<ウレタンプレポリマー(i−1)の合成>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;1,000)15質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PPG2000」と略す。)15質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸とを反応させたもの、数平均分子量;3,500)20質量部、非晶性ポリエステルポリオール(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド6モル付加物と、セバシン酸、イソフタル酸を反応させたもの、数平均分子量;2,000)7.5質量部、非晶性ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びアジピン酸を反応させたもの、数平均分子量;2,000)7.5質量部、アクリルポリオール−1の溶剤を乾燥して固形化したものを20質量部仕込み、減圧下100℃でポリオール混合物中の水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15.5質量部を加え、100℃まで昇温して、NCO基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i−1)を得た。
【0067】
[数平均分子量の測定方法]
前記合成例において、ポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0068】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0069】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0070】
[実施例1]
合成例2で得られたウレタンプレポリマー(i−1)100質量部、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル0.4質量部、メタンスルホン酸0.03質量部を混合して湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0071】
[実施例2〜6、比較例1〜4]
用いる硬化触媒(ii)および有機酸(iii)の種類及び/又は量を表1〜2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0072】
[保存安定性の評価方法]
(初期粘度の測定方法)
実施例および比較例にて湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た直後に、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃に溶融し、1mlをサンプリングし、コーンプレート粘度計(40Pコーン、ローター回転数;50rpm)にて粘度を測定した。
(継経時粘度の測定方法)
実施例および比較例にて得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を50℃の条件下で4週間放置した後、同様にして粘度を測定した。
(評価)
経時粘度の値を初期粘度の値で除した数が1.3未満であれば「○」、1.3以上であれば「×」と評価した。
【0073】
[物品の作製方法]
実施例および比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃に溶融し、110℃に予め加熱された内径0.4mmのディスペンサーニードル(武蔵エンジニアリング株式会社製「ML−5000Xii)を用いて吐出圧力:0.3MPa、速度:50mm/秒にて、中央に1cm径の穴の開いたPC板(5cm×9cm)上に1インチの円形で0.2mm厚となるように塗布して、その上からアクリル板(5cm×5cm)を貼り合わせた後、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽中に放置することで物品を作製した。
【0074】
[初期接着強度の測定方法]
前記[物品の作製方法]にて、恒温恒湿槽中に放置してから30分経過後の物品を取り出し、物品のプッシュ強度をオートグラフ(株式会社島津製作所AUTOGRAPH「AGS−X」を使用して、クロスヘッドスピード:10mm/分の条件で測定し、初期接着強度(N/cm)を測定した。なお、初期接着強度が70N/cm以上であれば、優れた初期接着強度を有すると判断した。
【0075】
[最終接着強度の測定方法]
前記[物品の作製方法]にて、恒温恒湿槽中に放置してから48時間経過後の物品を取り出し、同様異にテンシロンを使用して最終接着強度(N/cm)を測定した。
【0076】
[耐落下衝撃性の評価方法]
前記[最終接着強度の測定方法]で接着強度測定後の物品を、デュポン式落下衝撃試験機にてアクリル板から撃芯を介して、荷重:100g、高さ:10cmで衝撃を3回与え、PC板の剥がれの発生がなければ更に10cm高さを高くする条件でそれぞれ耐落下衝撃性試験を続けた。それぞれ目視観察により剥がれの有無を確認し、剥がれが生じた高さ(cm)を評価した。なお、30cm以上であれば耐落下衝撃性に優れると判断した。
【0077】
[防水性の評価方法]
実施例および比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃に溶融し、110℃に予め加熱された内径0.4mmのディスペンサーニードル(武蔵エンジニアリング株式会社製「ML−5000Xii)を用いて吐出圧力:0.3MPa、速度:50mm/秒にて、中央に穴の開いていないPC板(5cm×9cm)上に1インチの円形で0.2mm厚となるように塗布して、その上からアクリル板(5cm×5cm)を貼り合わせた後、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽中に48時間放置することで評価用物品を作製した。
この評価用物品を、水浸漬(23℃、0.5時間)させた後、物品内部への水侵入の有無の評価を、JIS IPX−7に準拠して行い、水の侵入が確認されなかったものは防水性に優れるため「○」、水の侵入が確認されたものは「×」と評価した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物である実施例1〜6のものは、保存安定性、初期接着強度、防水性、及び、耐落下衝撃性に優れることが分かった。
【0081】
一方、比較例1は、硬化触媒(ii)の使用量が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、初期接着強度および防水性が不良であった。
【0082】
比較例2は、硬化触媒(ii)の使用量が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、ゲル化した。
【0083】
比較例3は、有機酸(iii)の使用量が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、保存安定性、耐落下衝撃性および防水性が不良であった。
【0084】
比較例4は、有機酸(iii)の使用量が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、初期粘度、初期接着強度、耐落下衝撃性および防水性が不良であった。