(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化セリウム研磨ステップの後に、シリカを含むシリカ研磨剤で前記ガラスを研磨するシリカ研磨ステップをさらに含み、前記シリカ研磨ステップの後に、前記研磨剤で前記ガラスを研磨する、請求項6に記載のガラスの研磨方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0012】
本実施形態に係る研磨剤Aは、ガラス10の研磨に用いられる研磨剤である。研磨剤Aは、水とアモルファスカーボンとを含む。ここでの水は、純水であることが好ましい。アモルファスカーボンとは、結晶構造を有さない非晶質なカーボンであり、グラファイト構造のような平面的な結晶構造やダイヤモンドの様な結晶構造を有さないカーボンである。アモルファスカーボンは、無定形炭素と呼ばれることもある。アモルファスカーボンは、例えば、オイルファーネス法で製造されてよい。オイルファーネス法では、例えば1300度以上の高温雰囲気中に原料油を噴霧して熱分解させた後、急冷することで、アモルファスカーボンを製造する。ただし、アモルファスカーボンの製造方法はこれに限られず任意であってよい。
【0013】
アモルファスカーボンは、X線回折法により同定できる。例えば、分析対象物としてのカーボンのX線回折分析結果におけるピーク波形が、既知のグラファイト構造におけるピーク波形や、既知のダイヤモンド構造におけるピーク波形と異なる場合に、アモルファスカーボンであると判断できる。なお、グラファイト構造におけるピーク波形としては、ICSD No.53780、No.53781のデータを用いてよく、ダイヤモンド構造におけるピーク波形としては、ICSD No.53779のデータを用いてよい。
また、本願においてアモルファスは結晶構造を持たないので1次構造、2次元的な結晶構造の広がりをもつグラファイトは2次構造、3次元的な結晶構造の広がりをもつものを3次構造と表現することもある。
【0014】
研磨剤Aに含まれる砥粒としてのアモルファスカーボンは、平均一次粒径が、20nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。なお、一次粒径とは、1つの粒子の粒径を指し、平均一次粒径とは、一次粒径の平均値を指す。また、ここでの20nm〜500nmとは、20nm以上500nm以下であることを指し、以降でも同様である。平均一次粒径を20nm以上とすることで、ガラス10の表面粗さを小さくすることができ、平均一次粒径を500nm以下とすることで、ガラス10の表面の傷の形成を抑制できる。平均一次粒径を150nm以下とすることで、ガラス10の表面の傷の形成をさらに好適に抑制できる。
【0015】
なお、本実施形態におけるアモルファスカーボンの平均一次粒径の測定方法は任意であるが、例えば、BET法で測定された比表面積(m
2/g)と、カーボンの密度(例えば7.215g・cm
3)とから、粒子が球形でかつ砥粒の中に細孔がないものと仮定してBET径を求め、そのBET径から平均一次粒径を算出してもよい。
【0016】
本実施形態においては、研磨剤Aに含まれる疎水性のアモルファスカーボンに、親水化処理が施されてもよい。一般的に、アモルファスカーボンは疎水性を示し、水への分散性が悪い。親水性のアモルファスカーボンは純水に対する分散性が良好であるため、表面に親水化処理を施していない疎水性のアモルファスカーボンに比べて、より低濃度でも好適に使用することができるため好ましい。親水化処理の方法は限定されないが、例えばプラズマ処理やUV処理や界面活性剤などによる表面修飾の様な、公知の手法によりアモルファスカーボンの表面に親水基を形成することできる。すなわち、表面に親水基を含み水との親和性の高いアモルファスカーボンが、親水性のアモルファスカーボンであるといえる。親水基としては、ヒドロキシル基が一般的であるが、その他、カルボキシル基、アミノ基、エチレンオキサイドなども挙げられる。
【0017】
本実施形態においては、研磨剤Aにおけるアモルファスカーボンと水との合計含有量が、研磨剤Aの全体に対して、質量比で、90%以上であることが好ましく、言い換えれば、90%〜100%であることが好ましい。また、本実施形態においては、研磨剤Aにおけるアモルファスカーボンの含有量が、研磨剤Aの全体に対して、質量比で、0.0001%〜20%であることが好ましく、0.0005%〜1%であることがより好ましい。アモルファスカーボンと水との合計含有量が90%以上であることで、ガラス10を適切に研磨できる。また、アモルファスカーボンの含有量が0.0001%以上であることでガラス10を適切に研磨でき、20%以下であることでガラス10の表面の傷の形成を抑制できる。また、アモルファスカーボンの含有量が0.0005%以上であることでガラス10をより適切に研磨でき、1%以下であることでガラス10の表面の傷の形成をより好適に抑制できる。
【0018】
[その他の成分]
また、研磨剤Aは、アモルファスカーボン及び水に加えて、その他の成分として、酸、アルカリ等のPH調整材及び分散剤等の公知の添加剤を、研磨剤Aの全体に対して、質量比で10%まで含んでもよい。分散剤としては、末端にカルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシ基などを含むポリマー、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、等が挙げられる。研磨剤Aに分散剤を添加することで、例えば疎水性のアモルファスカーボンを、水中で適切に分散させて、ガラス10の研磨面を均一にできる。例えば、研磨剤Aにおける分散剤の含有量は、研磨剤Aの全体に対して、質量比で、0.001%〜10%であることが好ましい。分散剤の含有量が0.001%以上であることで、アモルファスカーボンを水中で適切に分散させることができ、分散剤の含有量が10%以下であることで、分散剤の余分な消費を抑制できる。
【0019】
本実施形態においては、以上のような研磨剤Aを用いてガラス10を研磨して、ガラス10を製造する。研磨剤Aは、どのような組成のガラスであっても研磨可能である。研磨剤Aによって研磨するガラス10としては、例えば、ソーダライムガラス、ほうけい酸ガラス、結晶化ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。ガラス10は、本実施形態では、板状のガラス板であり、平板状であってもよいし、湾曲していてもよい。ただし、ガラス10の形状は任意であってよい。
【0020】
以下、本実施形態に係るガラス10の製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係るガラスの製造方法を説明する模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る製造方法においては、最初に、研磨前のガラス10を準備する(ステップS10)。例えば、溶融キャスト法など任意の方法で製造したガラスを所定の大きさに切りだして、切り出したガラスを薄肉化(ラッピング)することで、研磨前のガラス10を準備する。薄肉化の方法としては、例えば切り出したガラスを砥石で乾式研磨することなどが挙げられる。ただし、研磨前のガラス10の準備方法は、以上の説明に限られず任意である。
【0021】
研磨前のガラス10を準備したら、研磨前のガラス10に対して、酸化セリウム研磨ステップを実行する(ステップS12)。酸化セリウム研磨ステップにおいては、研磨剤として酸化セリウム研磨剤A1を用いて、ガラス10を研磨する。酸化セリウム研磨剤A1は、砥粒としての酸化セリウムと、水とを含む研磨剤である。酸化セリウム研磨ステップにおいては、表面に研磨パッドDaを備える研磨装置Dを用いてガラス10を研磨する。酸化セリウム研磨ステップにおいては、ガラス10の表面に液状の酸化セリウム研磨剤A1を供給しつつ、研磨パッドDaをガラス10の表面に押圧させた状態で研磨パッドDaを回転させることで、ガラス10の表面を研磨する。酸化セリウム研磨剤A1を用いてガラス10の表面を研磨することで、研磨されたガラス10の表面の表面粗さRa(算術平均粗さ)を、例えば、0.2nm〜0.6nmの範囲内とする。なお、酸化セリウム研磨ステップにおいては、ガラス10の一方の表面10aと、表面10aと反対側の表面10bとの、少なくとも一方を研磨する。また、酸化セリウム研磨ステップの実行後に、後述のステップS16と同様の方法でガラス10を洗浄してもよい。また、酸化セリウム研磨ステップにおいては、
図1で示した構造の研磨装置Dを用いてガラス10を研磨することに限られず、酸化セリウム研磨剤A1を用いるものであれば、任意の方法でガラス10を研磨してよい。
【0022】
酸化セリウム研磨剤A1を用いてガラス10を研磨したら、酸化セリウム研磨剤A1を用いて研磨したガラス10に対して、シリカ研磨ステップを実行する(ステップS14)。シリカ研磨ステップにおいては、研磨剤としてシリカ研磨剤A2を用いて、ガラス10を研磨する。シリカ研磨剤A2は、砥粒としてのシリカと、水とを含む研磨剤である。シリカとしては、コロイダルシリカを用いてよい。シリカ研磨ステップにおいては、研磨装置Dを用いてガラス10を研磨する。シリカ研磨ステップにおいては、ガラス10の表面に液状のシリカ研磨剤A2を供給しつつ、研磨パッドDaをガラス10の表面に押圧させた状態で研磨パッドDaを回転させることで、ガラス10の表面を研磨する。シリカ研磨剤A2を用いてガラス10の表面を研磨することで、研磨されたガラス10の表面の表面粗さRaを、例えば、0.1nm〜0.3nmの範囲内とする。なお、シリカ研磨ステップにおいては、ガラス10の一方の表面10aと表面10bとの、少なくとも一方を研磨する。また、シリカ研磨ステップにおいては、研磨装置Dを用いてガラス10を研磨することに限られず、シリカ研磨剤A2を用いるものであれば、任意の方法でガラス10を研磨してよい。
【0023】
シリカ研磨剤A2を用いてガラス10を研磨したら、ガラス10を洗浄する(ステップS16)。ステップS16においては、シリカ研磨剤A2を用いて研磨したガラス10を洗浄容器E内に入れて、洗浄する。例えば洗浄容器Eは、内部に水等の液体が満たされており、液体を曝気装置で曝気する。ガラス10は、洗浄容器E内の液体に浸漬されて、曝気装置で曝気されることで、洗浄される。ただし、ガラス10の洗浄方法はこれに限られず任意であってよい。また、ガラス10の洗浄は必須ではない。
【0024】
ガラス10を洗浄したら、洗浄後のガラス10に対して、研磨ステップを実行する(ステップS18)。研磨ステップにおいては、研磨剤Aを用いて、ガラス10を研磨するが、事前に研磨ステップと同じ条件でダミー研磨ステップを設けてもよい。研磨ステップにおいては、研磨装置D1を用いてガラス10を研磨する。研磨装置D1は、例えば円柱状の研磨パッドD1aを備えており、研磨パッドD1aの側面をガラス10の表面に押し当てて、研磨パッドD1aを、ガラス10の表面に沿った方向にガラス10に対して相対移動させることで、ガラス10の表面を研磨する。研磨ステップにおいては、ガラス10の表面に液状の研磨剤Aを供給しつつ、研磨パッドD1aをガラス10の表面に押圧させた状態で相対移動させることで、ガラス10の表面を研磨する。研磨剤Aを用いてガラス10の表面を研磨することで、研磨されたガラス10の表面の表面粗さRaを、例えば、0.03nm〜0.05nmの範囲内とする。なお、研磨ステップにおいては、ガラス10の一方の表面10aと表面10bとの、少なくとも一方を研磨する。なお、研磨ステップにおいては、円柱状の研磨パッドD1aを用いてガラスを研磨することに限られず、例えば、研磨装置Dを用いて研磨してもよい。すなわち、研磨ステップにおいては、研磨剤Aを用いるものであれば、任意の方法でガラス10を研磨してよい。
【0025】
研磨ステップにおいては、ガラス10の表面への研磨剤Aの単位時間当たりの供給量を、1mL/min〜30mL/minとすることが好ましい。研磨剤Aの供給量を1mL/min以上とすることで研磨パッドD1aに十分な量の砥粒が供給され、表面平滑性が良好となり、30mL/min以下とすることで砥粒の余分な消費を抑制できる。また、研磨ステップにおいては、研磨パッドをガラス10の表面へ押圧する圧力である押圧力を、40g/cm
2〜200g/cm
2とすることが好ましい。押圧力を40g/cm
2以上とすることで、ガラス10を適切に研磨でき、200g/cm
2以下とすることで、ガラス10の表面の傷の形成を抑制できる。なお、研磨ステップにおける研磨パッドの押圧力は、酸化セリウム研磨ステップ及びシリカ研磨ステップにおける研磨パッドの押圧力より、小さく設定されてよい。また、研磨ステップにおいては、研磨パッドによる研磨時間を、1分以上10分以下とすることが好ましい。研磨時間を1分以上とすることで、ガラス10を適切に研磨でき、10分以下とすることで、ガラス10の表面の傷の形成を抑制できる。なお、研磨ステップにおける研磨時間は、酸化セリウム研磨ステップ及びシリカ研磨ステップにおける研磨時間より、短く設定されてよい。
【0026】
研磨剤Aを用いてガラス10を研磨したら、ガラス10を洗浄する(ステップS20)。ステップS20においては、研磨剤Aを用いてガラス10を洗浄容器E内に入れて、ステップS16と同様の方法で、ガラス10を洗浄する。ただし、ステップS20におけるガラス10の洗浄方法も任意であり、ステップS20は必須の工程ではない。
【0027】
以上のように、本実施形態においては、ガラス10を酸化セリウム研磨剤A1で研磨し、酸化セリウム研磨剤A1で研磨した後のガラス10を、シリカ研磨剤A2で研磨し、シリカ研磨剤A2で研磨した後のガラス10を、研磨剤Aで研磨する。このようにガラス10を研磨することで、表面粗さが小さく平滑性の高いガラス10を製造できる。ただし、ガラス10の研磨工程はこれに限られず、例えば、シリカ研磨剤A2での研磨(ステップS14)を実行しなくてもよい。この場合、ガラス10を酸化セリウム研磨剤A1で研磨し、酸化セリウム研磨剤A1で研磨した後のガラス10を、研磨剤Aで研磨する。また、酸化セリウム研磨剤A1での研磨も必須でなく、本実施形態では、少なくともガラス10を研磨剤Aで研磨すればよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る研磨剤Aは、アモルファスカーボンと水とを含有し、アモルファスカーボンと水との合計量が、質量比で、研磨剤Aの全体の90%以上である。研磨剤Aとしてアモルファスカーボンを用いることで、ガラス10の表面粗さを小さくして、ガラス10の平滑性を向上できる。
【0029】
また、研磨剤Aは、アモルファスカーボンの平均一次粒径が、20nm〜500nmの範囲内にあることが好ましい。平均一次粒径を20nm以上とすることで、ガラス10の表面粗さを小さくすることができ、平均一次粒径を500nm以下とすることで、ガラス10の表面の傷の形成を抑制できる。このように、アモルファスカーボンを研磨剤として用いることで、粒径を小さくしてガラス10の傷の形成を抑えつつ、ガラス10の表面粗さを小さくして、ガラス10の平滑性を向上できる。
【0030】
また、研磨剤Aは、アモルファスカーボンの含有量が、研磨剤Aの全体に対し、質量比で0.0001%〜20%の範囲内にあることが好ましい。アモルファスカーボンの含有量が0.5%以上であることでガラス10を適切に研磨でき、20%以下であることでガラス10の表面の傷の形成を適切に抑制できる。
【0031】
また、研磨剤Aは、分散剤をさらに含有することが好ましい。研磨剤Aに分散剤を添加することで、アモルファスカーボンを、水中で適切に分散させて、ガラス10の研磨面を均一にできる。
【0032】
また、研磨剤Aのアモルファスカーボンが親水性であることが好ましい。アモルファスカーボンを親水性とすることで、低濃度でも好適に使用することができる。
【0033】
また、研磨剤Aは、ガラス研磨に用いられる。研磨剤Aを用いてガラス10を研磨することで、ガラス10の平滑性を向上できる。
【0034】
また、本実施形態に係るガラス10の研磨方法は、研磨剤Aを用いてガラス10を研磨する。研磨剤Aを用いてガラス10を研磨することで、ガラス10の平滑性を向上できる。
【0035】
また、本実施形態に係るガラス10の研磨方法は、酸化セリウム研磨ステップと、酸化セリウムステップの後に実行される研磨ステップとを含む。酸化セリウム研磨ステップでは、酸化セリウムを含む酸化セリウム研磨剤A1でガラス10を研磨する。研磨ステップでは、酸化セリウム研磨ステップの後に、研磨剤Aでガラス10を研磨する。本研磨方法では、酸化セリウム研磨剤A1でガラス10を研磨した後に研磨剤Aでガラスを研磨することで、ガラス10の表面粗さRaを小さくして、ガラス10の平滑性を向上できる。
【0036】
また、本実施形態に係るガラス10の研磨方法は、酸化セリウム研磨ステップの後に、シリカを含むシリカ研磨剤A2でガラス10を研磨するシリカ研磨ステップをさらに含む。研磨ステップにおいては、シリカ研磨ステップの後に、研磨剤Aでガラス10を研磨する。本研磨方法では、酸化セリウム研磨剤A1及びシリカ研磨剤A2で研磨したガラス10を研磨剤Aで研磨することで、ガラス10の表面粗さRaを小さくして、ガラス10の平滑性をより好適に向上できる。
【0037】
また、本実施形態に係るガラス10の製造方法は、本実施形態に係るガラス10の研磨方法を用いて、ガラス10を製造する。本製造方法は、研磨剤Aでガラス10を研磨してガラス10を製造することで、ガラス10の平滑性を向上できる。特に、研磨剤Aを用いて研磨したガラス10は、平滑性が高いため、導光板などの光学素子として好適に用いることができる。
【0038】
(実施例)
次に、実施例について説明する。なお、発明の効果を奏する限りにおいて実施態様を変更しても構わない。実施例及び比較例においては、異なる研磨剤を準備して、それぞれの研磨剤を用いてガラスを研磨して、研磨した後のガラスの表面粗さRaを測定し、表面粗さRaの測定結果に基づき研磨剤を評価した。以下、より詳細に説明する。
【0039】
[評価用ガラス]
実施例及び比較例においては、第1辺の長さが50mmで、第1辺に交差する第2辺の長さが50mmで、厚みが1.0mmのガラスを準備した。ガラスとしては、無アルカリホウケイ酸ガラス、より詳しくはAGC株式会社製のAN100と、アルミノシリケートガラス、より詳しくはAGC株式会社製のRollandα’とを、準備した。実施例5において、Rollandα’を用いた。
【0040】
[酸化セリウム研磨後ガラス]
実施例及び比較例においては、準備したガラスを、次に示す条件で、酸化セリウム研磨剤A1を用いて研磨した。すなわち、研磨装置としてスピードファム株式会社製FAM12BSを用い、酸化セリウム研磨剤A1として、水を95重量%、昭和電工製酸化セリウム砥粒を5重量%含むものを用いた。また、研磨パッドとしては、FILWEL社製スエードパッドAG8を用い、定盤の回転数を40rpmとし、研磨パッドの押圧力を144g/cm
2とし、研磨時間を30分とし、酸化セリウム研磨剤A1の供給量を、5ml/minとした。このような条件で酸化セリウム研磨剤A1を用いて研磨したガラスを、以下適宜、酸化セリウム研磨後ガラスと記載する。酸化セリウム研磨後ガラスの表面粗さRaは、0.55nmであった。
【0041】
[シリカ研磨後ガラス]
また、実施例及び比較例においては、準備したガラスを、次に示す条件で、シリカ研磨剤A2を用いて研磨した。すなわち、研磨装置としてスピードファム株式会社製FAM12BSを用い、シリカ研磨剤A2として、水を93重量%、フジミインコーポレーテッド社製コロイダルシリカ砥粒を7重量%含むものを用いた。また、研磨パッドとしては、FILWEL社製スエードパッドNP787を用い、定盤の回転数を40rpmとし、研磨パッドの押圧力を100g/cm
2とし、研磨時間を20分とし、シリカ研磨剤A2の供給量を、5ml/minとした。このような条件でシリカ研磨剤A2を用いて研磨したガラスを、以下適宜、シリカ研磨後ガラスと記載する。シリカ研磨後ガラスの表面粗さRaは、0.15nmであった。
【0042】
[研磨条件]
そして、酸化セリウム研磨後ガラス及びシリカ研磨後ガラスを、以下の表1に示す実施例及び比較例に示した組成の研磨剤を用いて研磨した。
具体的には、研磨剤全体に対するアモルファスカーボン等の砥粒の含有量、すなわち砥粒の濃度を、質量比で、1%又は0.01%とした。砥粒の濃度を1%とする場合には、表1、2に示す砥粒を1gと水99gとを混合して、砥粒が水に均一に分散するまで攪拌して、それぞれの研磨剤とした。砥粒の濃度を0.01%とする場合には、表1、2に示す砥粒を0.01gと水99.99gとを混合して、砥粒が水に均一に分散するまで攪拌して、それぞれの研磨剤とした。この研磨剤を用いて、酸化セリウム研磨後ガラス及びシリカ研磨後ガラスを、次の条件で研磨した。すなわち、研磨装置としてスピードファム株式会社製FAM12BSを用い、研磨パッドとしては、FILWEL社製スエードパッドNP787を用い、定盤の回転数を40rpmとし、研磨パッドの押圧力を44g/cm
2とし、研磨時間を1分とし、研磨剤の供給量を、5ml/minとした。
実施例1の砥粒としてのアモルファスカーボンは、旭カーボン株式会社製の旭#35を用い、実施例2の砥粒としてのアモルファスカーボンは、旭カーボン株式会社製の旭#60HNを用い、実施例3及び実施例6の砥粒としてのアモルファスカーボンは、東海カーボン株式会社製のトーカイカーボン#7550Fを用い、実施例4、5及び実施例7の砥粒としてのアモルファスカーボンは、東海カーボン株式会社製のAqua Black−001を用いた。
実施例1から3及び実施例6のアモルファスカーボンは、疎水性であり、実施例4、5、及び実施例7のアモルファスカーボンは、親水性である。
また、比較例1の砥粒としてのシリカは、アモルファス状のものであり、日本アエロジル株式会社製のAEROSIL 200を用いた。比較例2の砥粒としてのチタニアは、ルチル、アナターゼ構造のものであり、日本アエロジル株式会社製のAEROSIL TiO2 P25を用いた。比較例3の砥粒としてのアルミナは、α/γ構造のものであり、日本アエロジル株式会社製のAEROXIDE Alu Cを用いた。比較例4の砥粒としての樹脂は、アモルファス状のものであり、株式会社日本触媒製のエポスターMA1004を用いた。比較例5の砥粒としての樹脂は、アモルファス状ものであり、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製のTOSPEARL130を用いた。
比較例6の砥粒としてのカーボンは、グラファイト構造であり、株式会社日本カーボン社製のJCPBを用いた。比較例7の砥粒としてのカーボンは、グラファイト構造であり、株式会社日本カーボン社製のJCPBを粉砕処理したものを用いた。具体的には、JCPBを5gと純水100gとを容器にとり、直径0.5mmのビーズミル300g(約80mL)を加えた。これを卓上ボールミルで200rpmの条件で80分間粉砕処理を行った。ボールと粉末をろ過器で分離し、粉砕したカーボンを得た。
比較例8の砥粒としてのカーボンは、ダイヤモンド構造であり、エア・ブラウン社製のμDiamond Andanteを用いた。
また、実施例6及び実施例7の砥粒の濃度を、0.01%とし、それ以外の実施例及び比較例の砥粒の濃度を、1%とした。
【0045】
[評価条件]
このようにして各研磨剤を用いて研磨した酸化セリウム研磨後ガラス及びシリカ研磨後ガラスについて、表面粗さRa(算術表面粗さ)を、Asylum Research社のCypherS AFMで測定した。
酸化セリウム研磨後ガラスについては、
表面粗さRaが0.20nm以下となる場合を二重丸とし、
表面粗さRaが0.20nmより大きく0.30nm以下となる場合を丸とし、
表面粗さRaが0.30nmより大きく0.40nm以下となる場合を三角とし、
表面粗さRaが0.40nmより大きくなる場合をバツとした。
また、シリカ研磨後ガラスについては、
表面粗さRaが0.05nm以下となる場合を二重丸とし、
表面粗さRaが0.05nmより大きく0.07nmより小さくなる場合を丸とし、
表面粗さRaが0.07nm以上0.10nmより小さくなる場合を三角とし、
表面粗さRaが0.10nm以上となる場合をバツとした。
いずれにおいても、二重丸及び丸を、合格として評価した。
【0046】
表1に示すように、実施例においては、酸化セリウム研磨後ガラス及びシリカ研磨後ガラスの両方の評価結果が、合格となっていることが分かる。
一方、比較例においては、酸化セリウム研磨後ガラス及びシリカ研磨後ガラスの少なくとも一方の評価結果が、不合格となっていることが分かる。すなわち、アモルファスカーボンを研磨剤として用いることで、ガラスの表面粗さを小さくして、ガラスの平滑化を向上できることが分かる。また、実施例5に示すように、アモルファスカーボンを研磨剤として用いた場合に、ガラスの種類を変えても、ガラスの平滑化を向上できることが分かる。また、表2において、実施例3と実施例6との比較と、実施例4と実施例7との比較に示すように、親水性のアモルファスカーボンの砥粒は、疎水性のアモルファスカーボンの砥粒よりも、砥粒を低濃度とした場合にも、表面粗さRaをより良好に保持できることが分かる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。