(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
オレフィン化合物と過酸化水素を反応させてエポキシ化合物を製造する方法において、アルカリ性条件下(例えば水酸化ナトリウム)でニトリル化合物(例えばアセトニトリル)を存在させることがある。このとき過酸化水素とアルカリ性物質とニトリル化合物から酸化活性種が生成し、オレフィン化合物からエポキシ化合物が生成する。
【0013】
過酸化水素は一般的にアルカリ性条件下で、微量(例えば数十ppb)の重金属が存在すると自己分解を起こし、酸素ガスが発生する。
この自己分解は酸性条件下では発生しないため、酸性条件下での反応では問題にならなかった。
【0014】
これらの重金属はアルカリ水溶液(例えばNaOH水溶液)に微量含まれていると考えられる。そして、反応が進行するにつれて、反応系内に重金属が蓄積され、全反応時間の後半に過酸化水素の分解が促進され、酸素ガスの発生が増大し、プロセス面から問題があった。
【0015】
そこで、本発明者らは、この様な重金属が過酸化水素を分解することによる酸素ガスの発生を低減するために、自己分解の原因と考えられる重金属をキレートするような添加剤が、過酸化水素の分解を抑制し、酸素ガスの発生を低減すると考え、そして、有機リン化合物の添加が有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
本発明はオレフィン化合物と過酸化水素を反応させてエポキシ化合物を製造する方法において、該反応が有機リン化合物の存在下、7.5を超え12.0未満の範囲のpHに維持された反応媒体中で行われるエポキシ化合物の製造方法である。
【0017】
原料であるオレフィン化合物としては、例えば、1,3,5−トリス−(アルケニル)−イソシアヌレートである。そして、1,3,5−トリス−(アルケニル)−イソシアヌレートにおけるアルケニル基としては、例えば、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、又は7−オクテニル基を用いることができ、好ましくは3−ブテニル基、4−ペンテニル基、又は5−ヘキセニル基を用いることができる。
【0018】
そして、生成物のエポキシ化合物としては、例えば、1,3,5−トリス−(エポキシアルキル)−イソシアヌレートである。そして、1,3,5−トリス−(エポキシアルキル)−イソシアヌレートにおけるエポキシアルキル基としては、例えば、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、5,6−エポキシヘキシル基、6,7−エポキシヘプチル基、又は7,8−エポキシオクチル基とすることができ、好ましくは3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、又は5,6−エポキシヘキシル基とすることができる。
上記オレフィン化合物は例えば式(1)で示される。
【0019】
【化1】
式(1)中、R
1乃至R
9はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n1乃至n3はそれぞれ独立に1乃至6の整数である。好ましくはR
1乃至R
9はそれぞれ独立に水素原子であり、n1乃至n3はそれぞれ独立に2乃至6、又は2乃至4の整数である。
【0020】
エポキシ化合物は例えば式(2)で示される。
【化2】
式(2)中、R
1乃至R
9はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n1乃至n3はそれぞれ独立に1乃至6の整数である。好ましくはR
1乃至R
9はそれぞれ独立に水素原子であり、n1乃至n3はそれぞれ独立に2乃至6、又は2乃至4の整数である。
【0021】
オレフィン化合物からエポキシ化合物を得る時に用いられる過酸化水素の使用量は、オレフィン化合物中の二重結合の1当量に対して、0.5乃至50当量、又は0.5乃至30当量、又は1乃至10当量である。過酸化水素は例えば35質量%の過酸化水素水として反応系内に添加する。
【0022】
過酸化水素の添加は一度に添加することも可能だが、所定の添加量を少量で連続的に添加することができる。ここでの過酸化水素水の添加は滴下法で行われ、全反応時間に亘り少量ずつ連続的に添加することができる。
【0023】
オレフィン化合物からエポキシ化合物を製造する時に用いられるニトリル化合物としては、例えば脂肪族ニトリル化合物、芳香族ニトリルが挙げられる。芳香族ニトリルとしては、例えばベンゾニトリル等が挙げられ、また脂肪族ニトリルとしては、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。特に脂肪族ニトリルが好ましく、アセトニトリルが好ましく用いられる。ニトリル化合物の使用量は、オレフィン化合物中の二重結合の1当量に対して、0.5乃至50当量、又は1乃至30当量、又は3乃至10当量である。
【0024】
本発明において、オレフィン化合物からエポキシ化合物を製造する時に用いられるアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸塩系化合物として炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ性物質の添加量はオレフィン化合物中の二重結合の1当量に対して、0.01乃至10当量、又は0.01乃至2当量である。
【0025】
本発明に用いられる有機リン化合物としては、過酸化水素の安定化剤として機能するものであり、例えばアルキルホスホン酸又はその塩が挙げられる。
アルキルホスホン酸のアルキル基は、ヒドロキシ基やアミノ基によって置換された構造を有することができる。また、二量体化したジ(アルキルホスホン酸)又はその塩や、三量体化したトリ(アルキルホスホン酸)又はその塩を用いることができる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0026】
上記アルキルホスホン酸としては、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、メチレンジホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
【0027】
本発明では反応媒体のpHが7.5を超え12.0未満の範囲に維持される。好ましくはpHが8.0乃至10.5の範囲に維持される。
このようなpHに維持するために、上記有機リン化合物を含むアルカリ性水溶液を、所定量、全反応時間に亘り連続的に添加する方法が挙げられる。なお、アルカリ性水溶液とは、上記アルカリ性物質の水溶液である。これらの有機リン化合物を含むアルカリ性水溶液の添加は、過酸化水素の添加に沿って添加することが好ましく、例えば全反応時間にわたって添加することもできるし、過酸化水素を添加する時間に合わせて添加することもできる。
【0028】
濃度0.1乃至60質量%、又は0.1乃至30質量%、又は1乃至10質量%のアルカリ性水溶液(例えばNaOH水溶液)中に、上記有機リン化合物を1乃至10000ppm、又は10乃至1000ppm、又は50乃至600ppm程度の濃度で含有した混合液を反応系内に添加することができる。
【0029】
上記有機リン化合物とアルカリ性水溶液の添加は、有機リン化合物を含むアルカリ性水溶液として添加することができるが、有機リン化合物とアルカリ性水溶液を上記割合で別々に添加することもできる。
【0030】
上記有機リン化合物の添加量は、1,3,5−トリス−(アルケニル)−イソシアヌレートに対して、例えば0.0001乃至10質量%、又は0.0001乃至1.0質量%の割合である。
【0031】
オレフィン化合物からエポキシ化合物を得る時の反応に用いられる溶媒は、アルコール系溶剤が用いられる。このアルコール系溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−アミルアルコール、シクロヘキサノール等の直鎖、分岐、環状のアルコールが用いられる。特にメタノールは好ましく用いることができる。また、このアルコール系溶剤にトルエン等の非アルコール系溶剤を混合することもできる。
【0032】
オレフィン化合物からエポキシ化合物を得る反応は、5乃至60℃(典型的には、20℃の室温)の反応温度で、5乃至50時間の反応時間で行うことができる。
【0033】
反応後の溶液は必要により無機塩をろ過し、水を加えた後、溶剤やニトリル化合物を減圧蒸留で取り除き、水層にクロロホルム等を加え抽出し得られた有機層に、1乃至5質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液、酸性水溶液(例えば、0.1乃至2Nのリン酸水溶液)と純水を交互に加えて洗浄することができる。そして乾燥を行って生成物を得ることができる。
【0034】
オレフィン化合物における二重結合からエポキシ基への転換率は60%以上、例えば75%以上、又は90%以上である。
【0035】
上記オレフィン化合物から得られるエポキシ化合物は例えば以下に例示される。
【化3】
【化4】
【0036】
本発明で得られるエポキシ化合物は、例えばトリアジントリオン環に置換したエポキシ基との間の側鎖を長くすることによって、性状的には分子間水素結合の減少によるトリアジンスタッキング障害が発生し液状化が達成される。これらのエポキシ化合物では、エポキシ基の硬化反応の完結性を向上させることによって、該エポキシ化合物の硬化物のガラス転移温度の安定化が計られ、それによって加熱環境においても架橋密度が安定であり強靱性を維持できる。またエポキシ基の硬化反応が硬化初期に完結しているため、硬化物の曲げ強度、弾性率が安定する。そして未反応エポキシ基が加水分解して生成するヒドロキシ基や未反応酸無水物(硬化剤)が加水分解して生成するカルボン酸による吸水を低減できるので、吸水率変化が少ない硬化物が得られる。
これらの効果は、上記の長鎖アルキレン基を介したエポキシ環は自由度が大きく、反応性が高いため、エポキシ基がすべて反応に関与して靱性の高い硬化物に変化したためと考えられる。
【0037】
これらの長鎖アルキレン基を有する液状エポキシ化合物を光酸発生剤又は熱酸発生剤を用いて、光硬化又は熱硬化させることもできる。
【0038】
本発明で得られる液状エポキシ化合物を用いた光硬化材料は速硬性、透明性、硬化収縮が小さい等の特徴を持ち、電子部品、光学部品、精密機構部品の被覆や接着に用いることができる。例えば携帯電話機やカメラのレンズ、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)などの光学素子、液晶パネル、バイオチップ、カメラのレンズやプリズムなどの部品、パソコンなどのハードディスクの磁気部品、CD、DVDプレヤーのピックアップ(ディスクから反射してくる光情報を取り込む部分)、スピーカーのコーンとコイル、モーターの磁石、回路基板、電子部品、自動車などのエンジン内部の部品等の接着に用いることができる。
【0039】
また、本発明で得られるエポキシ化合物は、自動車ボディー、ランプや電化製品、建材、プラスチックなどの表面保護のためのハードコート材向けとしては、例えば自動車、バイクのボディー、ヘッドライトのレンズやミラー、メガネのプラスチックレンズ、携帯電話機、ゲーム機、光学フィルム、IDカード等への適用ができる。
【0040】
さらに、本発明で得られるエポキシ化合物は、アルミニウム等の金属、プラスチックなどに印刷するインキ材料向けとして、例えばクレジットカード、会員証などのカード類、電化製品やOA機器のスイッチ、キーボードへの印刷用インキ、CD、DVD等へのインクジェットプリンター用インキへの適用が挙げられる。
【0041】
また、本発明で得られるエポキシ化合物は、3次元CADと組み合わせて樹脂を硬化し複雑な立体物をつくる技術や、工業製品のモデル製作等の光造形への適用、光ファイバーのコーティング、接着、光導波路、厚膜レジスト(MEMS用)などへの適用が挙げられる。
【0042】
本発明に用いられるオレフィン化合物は、シアヌル酸又はシアヌル酸塩と炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールとを溶剤中で反応させて得ることができる。この反応にはアルカリ性物質を用いることができる。不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールは、炭素原子数4乃至6とすることができる。
【0043】
上記反応に用いられるアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン等が挙げられる。これらアルカリ性物質はシアヌル酸又はシアヌル酸塩の1モルに対して、1乃至10モルの割合で用いることができる。
【0044】
この反応に用いられる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0045】
上記シアヌル酸塩としては、例えばシアヌル酸から誘導されるシアヌル酸三ナトリウム、シアヌル酸三カリウム等が挙げられる。
【0046】
上記反応においてシアヌル酸又はシアヌル酸塩と、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールとは、シアヌル酸又はシアヌル酸塩の1モルに対して、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールを例えば0.3乃至9モルの割合、又は0.3乃至27モルの割合で反応させることができる。更に、大過剰の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールを用いることも可能である。
【0047】
しかし、比較的高価な不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールをむだなく反応に関与させて選択的にトリス体を得るために、不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールを当量比から外れた範囲に主点をおいて反応させることができる。
即ち、上記反応においてシアヌル酸又はシアヌル酸塩と、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールとは、シアヌル酸又はシアヌル酸塩の1モルに対して、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールを0.3乃至5モルの割合で反応させることができる。
【0048】
例えば、シアヌル酸が1モルと、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールが1乃至5モル、又は2乃至5モルの割合で反応することができる。そして、シアヌル酸塩が1モルと、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールが0.3乃至1モル、又は0.3乃至2モルの割合で反応することができる。
従って、シアヌル酸塩を用いることにより、当量比以下の、比較的高価な不飽和アルコールで選択的にトリス体を製造することができる。
【0049】
これは以下のように考えられる。シアヌル酸及びシアヌル酸塩は溶剤への溶解性が低い。特に、シアヌル酸塩はシアヌル酸よりも溶剤への溶解性が低い。例えば1モルのシアヌル酸塩(1分子中に3つのN−Na基が存在)と1モルの不飽和アルコール又はヒドロキシキ基を保護した該不飽和アルコールの反応を考えると、反応過程で先ずシアヌル酸の1分子中の一つのN−Na基が上記不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールと反応し、シアヌル酸に一つのアルケニル基が置換した中間体が生成する。これにより、その分子(中間体)は溶剤への溶解性が向上すると考えられる。溶剤への溶解性が向上した中間体は他のシアヌル酸塩(未置換体)に比べて反応性が向上し、二つ目のアルケニル基の置換、三つ目のアルケニル基の置換が起こり、トリオレフィンイソシアヌレートが合成されると考えられる。このような傾向はシアヌル酸でも起こるが、より溶解性の低いシアヌル酸塩の方が顕著に進むと考えられる。
【0050】
また、これらの反応では添加剤として臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のハロゲン化金属を用いることができる。ハロゲン化金属はイソシアヌル酸の1モルに対して、0.01乃至1モルの割合で使用することができる。特にイソシアヌル酸と不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールとの反応においては上記添加剤の添加は好ましい。
【0051】
これらの反応は20乃至100℃の温度で、1乃至20時間行うことができる。
【0052】
上記トリオレフィン化合物を合成するための不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールは、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はそれらのアルコールのヒドロキシ基を保護基で保護した不飽和アルコールが挙げられる。上記炭素原子数3乃至9とは、保護基を除く不飽和炭化水素基の炭素原子数を示す。
【0053】
上記保護基としては、例えばp−トルエンスルホニル基、o−ニトロベンゼンスルホニル基、及びメタンスルホニル基が挙げられる。p−トルエンスルホニル基、及びメタンスルホニル基が好ましく、特にメタンスルホニル基を用いることが得られるオレフィン化合物の収率が高く好ましい。
【0054】
これらの不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールは以下に例示される直鎖又は分岐不飽和アルコールである。下記式中でX
1は水素原子、p−トルエンスルホニル基、o−ニトロベンゼンスルホニル基、又はメタンスルホニル基を示す。
【化5】
【0055】
上記ヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールは、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコールと、p−トルエンスルホニルハライド、o−ニトロベンゼンスルホニルハライド、又はメタンスルホニルハライドとをアルカリ性物質の存在下に溶剤中で反応させることにより得られる。このハライドにはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化物質が用いられる。
【0056】
上記反応に用いられるアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0057】
この反応に用いられる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、トルエン等が挙げられる。
【0058】
シアヌル酸又はシアヌル酸塩と、炭素原子数3乃至9の不飽和アルコール又はヒドロキシ基を保護した該不飽和アルコールとの反応は以下に示される。下記式中でX
1は水素原子、p−トルエンスルホニル基、o−ニトロベンゼンスルホニル基、又はメタンスルホニル基を示し、X
2は水素原子、ナトリウム、又はカリウムを示す。
【化6】
【化7】
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例において、試料の分析に用いた装置は以下の通りである。
[HPLC(高速液体クロマトグラフィー)]
装置:Agilent Technologies社製、1200Series
[GC(ガスクロマトグラフィー)]
装置:Agilent Technologies社製、7890A
【0061】
<実施例1>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を濃度170ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は37mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は83%であることが確認された。
【0062】
<実施例2>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)を濃度340ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は30mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は84%であることが確認された。
【0063】
<実施例3>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)を濃度340ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は31mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は84%であることが確認された。
【0064】
<実施例4>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、メチレンジホスホン酸を濃度340ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は110mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は84%であることが確認された。
【0065】
<実施例5>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸4ナトリウム塩を濃度340ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は17mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は84%であることが確認された。
【0066】
<実施例6>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、アミノメチルホスホン酸を濃度340ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は78mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は85%であることが確認された。
【0067】
<実施例7>
1,3,5−トリス−(3−ブテニル)−イソシアヌレート(15.7g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(47g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を濃度170ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は86mLであった。
得られた溶液を精製、単離したところ、1,3,5−トリス−(3,4−エポキシブチル)−イソシアヌレートの収率は60%であることが確認された。
【0068】
<実施例8>
1,3,5−トリス−(5−ヘキセニル)−イソシアヌレート(20.3g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(61g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間にわたり、複数回に分けて添加した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を濃度170ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間かけて滴下した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は24mLであった。
得られた溶液を精製、単離したところ、1,3,5−トリス−(5,6−エポキシヘキシル)−イソシアヌレートの収率は93%であることが確認された。
【0069】
<比較例1>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、8質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は148mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は84%であることが確認された。
【0070】
<比較例2>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を濃度170ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応媒体がpH=6.5乃至7.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は3%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は5mLであった。
【0071】
<比較例3>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を濃度170ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応媒体がpH=2.0乃至3.0に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は0%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は0mLであった。
【0072】
<比較例4>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸を濃度170ppmで含有した8質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応媒体がpH=12.0乃至13.0に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は0%であった。また滴下した35質量%の過酸化水素水溶液はすべて分解し、大量の酸素ガスが発生した。
【0073】
<比較例5>
1,3,5−トリス−(4−ペンテニル)−イソシアヌレート(18.0g、54.0mmol)、アセトニトリル(22.1g、540mmol)、メタノール(54g)、60質量%の1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸水溶液(16.3mg)を混合し、温度を20℃とした後に、35質量%の過酸化水素水溶液(37.1mL、432mmol)を20時間かけて滴下した。35質量%の過酸化水素水溶液の滴下開始と同時に、8質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応媒体がpH=8.5乃至10.5に維持するように30時間にわたり、複数回に分けて添加した。30時間反応後、反応媒体をGCで分析したところ、オレフィン化合物における二重結合のエポキシ基への転化率は99%であった。また反応中に発生した酸素ガス量は355mLであった。
得られた溶液をHPLCで分析したところ、1,3,5−トリス−(4,5−エポキシペンチル)−イソシアヌレートの収率は84%であることが確認された。