【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバ技術の研究開発 課題イ 光ファイバ接続技術」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより囲まれた構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。近年、光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。こうした光ファイバ通信システムの伝送容量増大を実現するために、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0003】
また、光ファイバ通信システムの伝送容量を増大させるためには、LP
01モード(基本モード)の光に情報を重畳させると共に、LP
11モードの光にも情報を重畳させて情報通信を行うフューモード通信も知られている。そして、このようなフューモードの通信においても、マルチコアファイバに対する光の入出力を行う光デバイスが求められている。さらに、光デバイスの構成を複雑化することなく上記ニーズを達成したいという要請がある。
【0004】
そこで本発明者らは、構成を複雑化することなくフューモード通信においてマルチコアファイバに対して光を入出力することができる光デバイスを提供することを目的として、下記特許文献1に係る特許出願を行った。下記特許文献1に記載されている光デバイスは、キャピラリに形成される複数の空孔のそれぞれに単芯の光ファイバを一体化させると共に延伸することで作製されており、当該光ファイバが一方側から他方側に向かって縮径されている。また、それぞれの光ファイバは、コアが内側コアと内側コアを包囲する外側コアとから成る二重の構造とされており、内側コアの屈折率が外側コアの屈折率よりも高くされ、クラッドの屈折率は外側コアよりも低い屈折率とされる。さらに、この光デバイスは、縮径前の内側コアの半径をr
1とし、縮径前の外側コアの半径をr
2とし、縮径前の内側コアの断面積と内側コアのクラッドに対する比屈折率差との積からなる屈折率体積をV
1とし、縮径前の外側コアの断面積と外側コアのクラッドに対する比屈折率差との積からなる屈折率体積をV
2とする場合に
0.5377×r
2−7.7≦V
2/V
1≦0.5377×r
2−5.7
3≦r
2/r
1≦5
を満たす。
【0005】
上記光デバイスでは、Cバンド帯及びLバンド帯におけるLP
01モードの光及びLP
11モードの光がそれぞれのコア内を伝搬する。このとき光ファイバが上記の二つの式を満たすことで、当該光デバイスがマルチコアファイバに接続される場合における光の接続損失を小さくすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の光デバイスは、2LPモード(LP
01モード,LP
11モード)の光をフューモードマルチコアファイバに対して入出力することができる。しかし、近年、フューモードマルチコアファイバは、2LPモードに加えてより高次モードの光を伝搬させることが求められることもある。
【0008】
そこで、本発明は、4LPモード(LP
01モード、LP
11モード、LP
21モード及びLP
02モード)の光をフューモードマルチコアファイバに対して入出力することができる光デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の光デバイスは、内側コア、及び、前記内側コアの屈折率よりも低い屈折率を有し前記内側コアの外周面を包囲する外側コアから成る複数のコアと、前記コアの外周面を包囲し前記外側コアの屈折率より低い屈折率とされるクラッドと、を備え、以下を特徴とする。
【0010】
この光デバイスでは、前記コアの長手方向の一方側から他方側に向かって、それぞれの前記コアが縮径されると共に互いに隣り合う前記コアの間隔が小さくなるテーパ部が形成されている。
【0011】
縮径前の前記内側コアの半径をr
1とし、縮径前の前記外側コアの半径をr
2とし、縮径前の前記内側コアの断面積と前記内側コアの前記クラッドに対する比屈折率差との積からなる屈折率体積をV
1とし、縮径前の前記外側コアの断面積と前記外側コアの前記クラッドに対する比屈折率差との積からなる屈折率体積をV
2とする場合に
0.3851r
2−2.1504≦V
2/V
1≦0.3338r
2+0.2047
3≦r
2/r
1≦5
を満たす。
【0012】
本発明者らは、以上を特徴とする光デバイスが上記の二つの式を満すことで、Cバンド帯及びLバンド帯のLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード及びLP
02モードの光をそれぞれのコアに伝搬させることができることを見出した。また、上記光デバイスは、フューモードマルチコアファイバに接続される場合に、上記それぞれのモードの光の接続損失が小さい。こうして上記光デバイスは、4LPモードを用いるフューモード通信において、フューモードマルチコアファイバに対して光を入出力することができる。
【0013】
また、上記光デバイスは、
0.1113r
22−5.2748r
2+68.37≦V
2/V
1
を満たすことが好ましい。
【0014】
本発明者らは、上記光デバイスが当該式を満すことで、非軸対称モード(LP
11モード,LP
21モード)の光の接続損失の大きさが軸対称モード(LP
01モード,LP
02モード)の光の接続損失の大きさ以下とされることを見出した。光ファイバ同士の接続点における位置ずれに起因する光の損失について考えると、非軸対称モードの光はファイバ同士のずれる方向によって損失の大きさが異なる。ここで、非軸対称モードの光の接続損失を小さくすることによって、系全体における接続損失の大きさのばらつきを低減させることができる。よって、上記のように非軸対称モードの光の接続損失の大きさが軸対称モードの光の接続損失の大きさ以下とされることによって、一つの光デバイス全体における接続損失の大きさのばらつきを小さくすることができる。
【0015】
また、軸対称モードの光の方が非軸対称モードの光よりもコアの中心寄りに分布するため、希土類元素が添加された光アンプにおいて、軸対称モードの光は非軸対称モードの光よりも希土類元素が添加された部分との重なりが大きくなる。よって、軸対称モードの光の方が非軸対称モードの光よりも増幅されやすい。ここで、上記のように非軸対称モードの光の接続損失の大きさが軸対称モードの光の接続損失の大きさ以下とされることによって、光アンプにおいて軸対称モードの光の強度と非軸対称モードの光の強度との差が緩和されやすくなる。よって、上記光デバイスは、光アンプが備えられるシステムに好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、4LPモードの光をフューモードマルチコアファイバに対して入出力することができる光デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る光デバイスの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における光デバイスを示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光デバイス1は、複数の中継ファイバ10と、キャピラリ20とを主な構成として備える。なお、本例では中継ファイバ10の数が7本とされる。
【0020】
中継ファイバ10は、キャピラリ20の一方から他方までキャピラリ20内に挿入されており、中継ファイバ10とキャピラリ20とが一体とされている。中継ファイバ10の一方側はキャピラリ20の一方側の端部から露出しており、中継ファイバ10の他方側の端部はキャピラリ20の他方側の端部と面一とされている。従って、キャピラリ20をキャピラリ20の他方側から見る場合に中継ファイバ10の他方側の端部が見える。
【0021】
キャピラリ20は、断面の形状が円形とされ、長手方向に沿って大径部21とテーパ部22と小径部23とが形成されている。テーパ部22は、キャピラリ20の一方側から他方側にかけて縮径されている。このような形状は次の様に形成される。まず、挿入される中継ファイバ10の数と同数の貫通孔が形成され、太さが一定のキャピラリを準備して、中継ファイバ10がそれぞれの貫通孔に個別に挿入される。その後、加熱によりキャピラリと中継ファイバ10とが一体とされて、キャピラリと中継ファイバ10との一体物が溶融延伸される。この延伸によりテーパ部22と小径部23とが形成される。従って、キャピラリ20のテーパ部22内では、上記一方側から他方側にかけて、それぞれの中継ファイバ10もキャピラリ20の縮径に伴い縮径すると共に、互いに隣り合う中継ファイバ10の間隔が小さくなる。また、小径部23内では、それぞれの中継ファイバ10は大径部21における中継ファイバ10と比べて小径化しており、互いに隣り合う中継ファイバ10の間隔は大径部21における中継ファイバ10の間隔と比べて小さくされている。
【0022】
図2は、光デバイス1のキャピラリ20を含む位置における長さ方向に垂直な断面の様子を示す図である。具体的には、
図2(A)は当該断面における光デバイス1の構造を示し、
図2(B)は当該断面におけるV−V線での屈折率分布を示す。なお、本例の場合、キャピラリ20の外径と中継ファイバ10の外径との比は、キャピラリ20の長手方向に垂直な断面であれば、大径部21、テーパ部22及び小径部23の何れの部位であっても同じである。従って、
図2がキャピラリ20の何れの部位における断面図かは特定する必要がない。
【0023】
上記のように本実施形態の中継ファイバ10の数は7本とされ、1本の中継ファイバ10がキャピラリ20の中心に配置され、当該中心に配置された中継ファイバ10の周囲に他の6本の中継ファイバ10が配置される。この状態で、それぞれの中継ファイバ10の中心を結ぶ線が三角格子状とされ、それぞれの互いに隣り合う中継ファイバ10の中心間距離は等しくされる。
【0024】
図1、
図2(A)に示すように、それぞれの中継ファイバ10は、コア13とコア13の外周面を隙間なく包囲するクラッド15とを有する単芯の光ファイバであり、コア13は、内側コア11と外側コア12とから成る。また、上記のようにそれぞれの中継ファイバ10はテーパ部22において大径部21側から小径部23側に向かって縮径されている。このため、中継ファイバ10のコア13を構成する内側コア11、外側コア12及びクラッド15は、それぞれの径の比率が維持されたまま大径部21側から小径部23側に向かって縮径されている。なお、
図2(A)に示すように、以後の説明において、縮径前である大径部21における内側コア11の半径をr
1とし外側コアの半径をr
2とし、縮径後である小径部23における内側コア11の半径をr
1’とし外側コアの半径をr
2’とする。
【0025】
図2(B)に示すように、内側コア11の屈折率は、外側コア12の屈折率よりも高くされる。また、クラッド15の屈折率は、外側コア12の屈折率よりも低くされる。また、本実施形態では、キャピラリ20の屈折率は、クラッド15の屈折率と同等とされる。なお、
図2(B)に示すように、以後の説明において、内側コア11のクラッド15に対する比屈折率差をΔ
1とし、外側コア12のクラッド15に対する比屈折率差をΔ
2とする。
【0026】
また、大径部21における内側コア11の断面積と内側コア11のクラッド15に対する比屈折率差Δ
1との積からなる屈折率体積をV
1とし、大径部21における外側コア12の断面積と外側コア12のクラッド15に対する比屈折率差Δ
2との積からなる屈折率体積をV
2とする場合に、それぞれのコア13は、下記式(1)を満たす。
0.3851r
2−2.1504≦V
2/V
1≦0.3338r
2+0.2047
・・・(1)
【0027】
ところで、光デバイス1は、大径部21側において中継ファイバ10に一般的な光ファイバが光学的に接続され、小径部23側には
図1に示すようにマルチコアファイバ5が光学的に接続される。ここで、一般的な光ファイバのクラッドの外径は125μmであり、マルチコアファイバ5のコア間距離は30μm以上50μm以下程度が一般的である。そのため、大径部21では中継ファイバ10の外径が一般的な光ファイバの外径と同等とされ、小径部23ではコア間距離が一般的なマルチコアファイバのコア間距離と同等とされることが好ましい。また、縮径前におけるキャピラリ20の貫通孔間の壁厚は、強度を確保しながら小型化する観点から10μm以上25μm以下であることが好ましい。そうすると、縮径後である小径部23のキャピラリ20の外径を1とする場合の縮径前である大径部21のキャピラリ20の外径、すなわち大径部21と小径部23との延伸比は、(125+(10〜25))/(30〜50)=3〜5より、3以上5以下とされることが好ましい。この延伸比はコア13の延伸比とおおよそ同じになる。そこで、大径部21において光が伝搬する内側コア11と、小径部23において光が伝搬する外側コア12との径を揃えるためには、下記式(2)が満たされる。
3≦r
2/r
1≦5 ・・・(2)
【0028】
なお、内側コア11の径と外側コア12の径との比は、光デバイス1の長手方向のどの部位であっても同じであるため上記式(2)は、下記式(3)と同義である。
3≦r
2’/r
1’≦5 ・・・(3)
【0029】
また、光デバイス1は、下記式(4)を満たす。
0.1113r
22−5.2748r
2+68.37≦V
2/V
1 ・・・(4)
【0030】
光デバイス1は、上記式(1)及び式(2)の二つの式を満すことで、それぞれのコア13がCバンド帯及びLバンド帯においてLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード及びLP
02モードの光を伝搬することができる。また、光デバイス1は、上記式(4)を満たすことで、非軸対称モード(LP
11モード,LP
21モード)の光の接続損失の大きさが軸対称モード(LP
01モード,LP
02モード)の光の接続損失の大きさ以下とされる。以下にこれらについて詳しく説明する。
【0031】
本発明者らは、有限要素法による計算機シミュレーションを行った。本シミュレーションでは、大径部21側において中継ファイバ10に接続されるシングルコアファイバのコア、及び、小径部23側において中継ファイバ10に接続されるフューモードマルチコアファイバ5のコア53の両方において、LP
01,LP
11,LP
21及びLP
02の4LPモードの光が伝搬されると共にこれらより高次モードの光がカットオフされる。また、これらのコアは、屈折率が径方向に概ね一定である、所謂ステップインデックス型である。
【0032】
さらに、大径部21側において中継ファイバ10に接続されるシングルコアファイバのコアの半径a=6μm、クラッドに対するコアの比屈折率差Δ=0.98%とした。一方、大径部21においては、外側コア12が内側コア11に対するクラッドとして機能し、それぞれのモードの光は、内側コア11を伝搬する。そのため、内側コアと外側コア間の比屈折率差Δ
12=Δ
1−Δ
2=0.98%、内側コア半径r
1=6μmとすることで、大径部21側において中継ファイバ10の内側コア11と中継ファイバ10に接続されるシングルコアファイバのコアとを一致させやすくなるため、大径部21側における接続損失を十分に低減できる。
【0033】
上記条件でr
2及びΔ
2を変化させるときの、LP
01、LP
11、LP
21、及びLP
02の各モードの光の接続損失、LP
31モードの光の曲げ損失、LP
21モードの光の曲げ損失を
図3から
図6に示す。なお、この時のr
2とr
2’との比率t(延伸比)は4.2である。
【0034】
図3から
図6において、縦軸は外側コア12のクラッド15に対する比屈折率差Δ
2であり、横軸は小径部23における外側コア12の半径である。また、
図3の破線はLP
01モードの光の接続損失を示しており、
図4の破線はLP
11モードの光の接続損失を示しており、
図5の破線はLP
21モードの光の接続損失を示しており、
図6の破線はLP
02モードの光の接続損失を示している。各破線の傍の数値は接続損失の大きさ[dB]を示している。
【0035】
また、
図3から
図6の各図において、「Cutoff−LP
31」は、波長1.53μmでのLP
31モードの光の曲げ損失が半径140mmで1.0dB/m以上となる線である。この線以下の領域であれば、波長が1.53μm以上の波長帯域(Cバンド、Lバンド)において、実質的にLP
21モードよりも高次のモードの光の伝搬を抑制することができる。なお、本例の場合、波長1.53μmにおいてLP
03モードの光は「Cutoff−LP31」の線よりも上側に位置する。従って、LP
03モードの光よりもLP
31モードの光が励起するため、本例ではLP
03モードの光を示す線を記載していない。
【0036】
また、
図3から
図6の各図において、「LowBL−LP
21」は、波長1.625μmのLP
21モードの光の曲げ損失が半径30mmで0.5dB/100turnsとなる線である。なお、LP
21モードの光のカットオフ波長とLP
02モードの光のカットオフ波長はほぼ等しいため、LP
21モードの光が伝搬されるのであればLP
02モードの光も伝搬される。従って、「LowBL−LP
21」の線以上の領域であれば、波長が1.625μm以下の波長帯域(Cバンド、Lバンド)において、LP
01、LP
11、LP
02及びLP
21の各モードの光を低損失で伝搬することができる。
【0037】
つまり、
図3から
図6の各図において、「Cutoff−LP
31」の線以下、「LowBL−LP
21」の線以上の領域であれば、Cバンド帯及びLバンド帯において、LP
01、LP
11、LP
02及びLP
21の4LPモードの光を伝搬し、これらのモードよりも高次のモードの光の伝搬を抑制するフューモード通信が可能となる。
【0038】
次に、軸対称モードの光の接続損失と非軸対称モードの光の接続損失との差分を計算した。その結果を
図7に示す。
図7において、縦軸は外側コア12のクラッド15に対する比屈折率差Δ
2であり、横軸は小径部23における外側コア12の半径である。また、
図7に示す「Cutoff−LP
31」の線及び「LowBL−LP
21」の線は
図3から
図6と同じであり、「LP
02−LP
21」はLP
21モードの光の接続損失とLP
02モードの光の接続損失との差がゼロになる線であり、「LP
01−LP
21」はLP
21モードの光の接続損失とLP
01モードの光の接続損失との差がゼロになる線であり、「LP
01−LP
11」はLP
11モードの光の接続損失とLP
01モードの光の接続損失との差がゼロになる線である。軸対称モード(LP
01モード,LP
02モード)の光の接続損失と非軸対称モード(LP
11モード,LP
21モード)の光の接続損失との差がゼロになる線以上の領域では、非軸対称モードの光の接続損失の大きさが軸対称モードの光の接続損失の大きさ以下とされる。ここで、「LP
01−LP
21」の線及び「LP
01−LP
11」の線が「LP
02−LP
21」の線よりも下の領域にあることから、「LP
02−LP
21」の線以上の領域であれば、非軸対称モード(LP
11モード,LP
21モード)の光の接続損失の大きさが軸対称モード(LP
01モード,LP
02モード)の光の接続損失の大きさ以下とされることがかわる。
【0039】
次に、
図7に示す「Cutoff−LP
31」の線、「LowBL−LP
21」の線及び「LP
02−LP
21」の線を上述した屈折率体積に着目して整理すると
図8が得られる。
図8に示す「Cutoff−LP
31」の線は、
図7に示す「Cutoff−LP
31」の線から得られるデータを近似する直線であり、
図8に示す「LowBL−LP
21」の線は、
図7に示す「LowBL−LP
21」の線から得られるデータを近似する直線であり、
図8に示す「LP
02−LP
21」の線は、
図7に示す「LP
02−LP
21」の線から得られるデータを近似する曲線である。
【0040】
図8に示す「Cutoff−LP
31」の線は下記式(5)で表され、
図8に示す「LowBL−LP
21」の線は下記式(6)で表され、
図8に示す「LP
02−LP
21」の線は下記式(7)で表される。
V
2/V
1=0.3338r
2+0.2047 ・・・(5)
V
2/V
1=0.3851r
2−2.1504 ・・・(6)
V
2/V
1=0.1113r
22−5.2748r
2+68.37 ・・・(7)
【0041】
ここで、上述したように、「Cutoff−LP
31」の線以下、「LowBL−LP
21」の線以上の領域であれば、Cバンド帯及びLバンド帯において、LP
01、LP
11、LP
02及びLP
21の4LPモードの光を伝搬し、これらのモードよりも高次のモードの光の伝搬を抑制するフューモード通信が可能となる。従って、式(1)を満たすことによって、Cバンド帯及びLバンド帯において、LP
01、LP
11、LP
02及びLP
21の4LPモードの光を伝搬し、これらのモードよりも高次のモードの光の伝搬を抑制するフューモード通信が可能となる。
0.3851r
2−2.1504≦V
2/V
1≦0.3338r
2+0.2047
・・・(1)
【0042】
以上説明したように本実施形態の光デバイス1において、それぞれの中継ファイバ10は、Cバンド帯域及びLバンド帯域において、実質的にLP
01モードの光、LP
11モードの光、LP
21モードの光、及び、LP
02モードの光を伝搬し、それより高次のモードの光の伝搬が抑制されたフューモード光ファイバとされる。また、中継ファイバ10は、マルチコアファイバ5に接続される場合における上記それぞれのモードの光の接続損失が小さい。こうして本実施形態の光デバイス1によれば、4LPモードを用いるフューモード通信においてマルチコアファイバに対して光を入出力することができる。
【0043】
また、上述したように、「LP
02−LP
21」の線以上の領域であれば、非軸対称モード(LP
11モード,LP
21モード)の光の接続損失の大きさが軸対称モード(LP
01モード,LP
02モード)の光の接続損失の大きさ以下とされる。従って、式(4)を満たすことによって、非軸対称モード(LP
11モード,LP
21モード)の光の接続損失の大きさが軸対称モード(LP
01モード,LP
02モード)の光の接続損失の大きさ以下とされる。
0.1113r
22−5.2748r
2+68.37≦V
2/V
1 ・・・(4)
【0044】
光ファイバ同士の接続点における位置ずれに起因する光の損失について考えると、非軸対称モードの光はファイバ同士のずれる方向によって損失の大きさが異なる。ここで、非軸対称モードの光の接続損失を小さくすることによって、系全体での接続損失の大きさのばらつきを低減させることができる。よって、上記のように非軸対称モードの光の接続損失の大きさが軸対称モードの光の接続損失の大きさ以下とされることによって、一つの光デバイス全体での接続損失の大きさのばらつきを小さくすることができる。
【0045】
また、軸対称モードの光の方が非軸対称モードの光よりもコアの中心寄りに分布するため、希土類元素が添加された光アンプにおいて、軸対称モードの光は非軸対称モードの光よりも希土類元素が添加された部分との重なりが大きくなる。よって、軸対称モードの光の方が非軸対称モードの光よりも増幅されやすい。ここで、上記のように非軸対称モードの光の接続損失の大きさが軸対称モードの光の接続損失の大きさ以下とされることによって、光アンプにおいて軸対称モードの光の強度と非軸対称モードの光の強度との差が緩和されやすくなる。よって、光デバイス1は、光アンプが備えられるシステムに好適である。
【0046】
このような光デバイス1のそれぞれのコア13に光が伝搬する様子について、
図9を参照しつつ説明する。
図9は、それぞれの中継ファイバ10のコア13をLP
01モードの光及びLP
11モードの光が伝搬する様子を示す図である。具体的には
図9(A)は大径部21側と小径部23側のコア13の様子を示し、
図9(B)は、大径部21側と小径部23側におけるLP
01モードの光及びLP
11モードの光の電界の様子を示している。
【0047】
図9に示すように中継ファイバ10が縮径されていない大径部21においては、外側コア12が内側コア11に対するクラッドとして機能し、それぞれのモードの光は、内側コア11を伝搬する。
【0048】
内側コア11を伝搬する光が大径部21側から小径部23側に進むと、テーパ部22において、コア13が縮径する。このため、内側コア11を伝搬するそれぞれのモードの光は、内側コア11から外側コア12への光の染み出しが大きくなる。従って、小径部23側においては、それぞれの光が外側コア12まで広がって、内側コア11と外側コア12とを合わせたコア13全体を伝搬する。ただし、LP
01モードの光及びLP
11モードの光がテーパ部22の同じ場所において外側コア12まで広がるわけではなく、少なくとも小径部23に達するまでにそれぞれのモードの光が外側コア12まで広がって、内側コア11と外側コア12とを合わせたコア13を伝搬するのである。
【0049】
なお、図が煩雑になるのを防ぐため、
図9にはLP
01モードの光及びLP
11モードの光のみを例示したが、LP
21モードの光及びLP
02モードの光もLP
01モードの光及びLP
11モードの光と同様である。すなわち、LP
21モードの光及びLP
02モードの光も、大径部21側では内側コア11を伝搬し、小径部23に達するまでに外側コア12まで広がって内側コア11と外側コア12とを合わせたコア13を伝搬する。
【0050】
逆に小径部23から大径部21に向かって、光がコア13を伝搬する場合、小径部23においては、LP
01モードの光、LP
11モードの光、LP
21モードの光、及び、LP
02モードの光は、内側コア11と外側コア12とを合わせたコア13全体を伝搬する。テーパ部22では、小径部23側から大径部21側に向かって徐々にコア13の径が広がるため、テーパ部22において、それぞれのモードの光は内側コア11を伝搬するようになる。このため、大径部21では、外側コア12がクラッドとして機能して、それぞれのモードの光は内側コア11を伝搬する。
【0051】
この光デバイス1は、
図1に示すように、小径部23がマルチコアファイバ5に接続されて使用される。マルチコアファイバ5は、複数のコア53とそれぞれのコア53の外周面を隙間なく包囲するクラッド55とを備える。それぞれのコア53の屈折率はクラッド55の屈折率よりも高くされる。また、光デバイス1の中継ファイバ10の数とマルチコアファイバ5のコア53の数とは同じとされ、小径部23におけるそれぞれの中継ファイバ10のコア13の相対的位置はマルチコアファイバ5におけるそれぞれのコア53の相対的位置と同じとされる。そして、光デバイス1の小径部23におけるそれぞれのコア13とマルチコアファイバ5の一方側の端部におけるそれぞれのコア53とが対向した状態で、光デバイス1とマルチコアファイバ5とが接続されて使用される。従って、光デバイス1のそれぞれのコア13を大径部21側から小径部23側に向かって上記のように伝搬する光は、マルチコアファイバ5のそれぞれのコア53に入射して当該コア53を伝搬する。逆にマルチコアファイバ5のそれぞれのコア53を光デバイス1に向かって伝搬する光は、光デバイス1のそれぞれのコア13に入射して当該コア13を小径部23から大径部21に向かって上記のように伝搬する。つまり、光デバイス1は、マルチコアファイバ5に対する光の入出力デバイスとして用いられる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0053】
図10は、本発明の第2実施形態に係る光デバイスを示す図であり、
図11は、
図10の光デバイス2の長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。
図10及び
図11に示すように本実施形態の光デバイス2は、コア13の外周面が第1実施形態のキャピラリ20と同様のガラス体でなるクラッド25で隙間なく包囲されており、コア13がクラッド25内にのみ位置している点において、第1実施形態の光デバイスと異なる。すなわち、本実施形態の光デバイス2は、第1実施形態の光デバイス1において、中継ファイバ10のキャピラリ20から露出している部分を除去して、それぞれのクラッド15を除去して、クラッド15が除去されることで生じる空間をキャピラリ20で埋めたものと同等である。
【0054】
このような光デバイス2は、断面の構造が
図11のようにされ、大径部21と同じ太さのマルチコアファイバを作製し、作製したマルチコアファイバを溶融延伸してテーパ部22及び小径部23を形成すれば良い。
【0055】
なお、本実施形態の光デバイス2においても、上記式(1)から式(4)を満たす。
【0056】
このようなマルチコアファイバを用いた光デバイス2であっても、第1実施形態の光デバイス1と同様にしてフューモード通信においてマルチコアファイバ5に対して光を入出力することができる。
【0057】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
例えば、第1実施形態における中継ファイバ10の数や第2実施形態におけるコア13の数は適宜変更可能である。
【0059】
また第1実施形態において、クラッド15の屈折率とキャピラリ20の屈折率とが互いに等しくされたが、クラッド15の屈折率とキャピラリ20の屈折率とが互いに異なるようにされても良い。
【0060】
また第1実施形態及び第2実施形態において、式(4)の条件を満たすことは必須ではない。