特許第6681437号(P6681437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681437
(24)【登録日】2020年3月25日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20200406BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20200406BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20200406BHJP
   C23C 18/42 20060101ALI20200406BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20200406BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/00 C
   H01B1/00 L
   C23C18/31 A
   C23C18/42
   B22F1/00 L
   B22F1/02 A
   B22F1/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-119745(P2018-119745)
(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公開番号】特開2019-16592(P2019-16592A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-130031(P2017-130031)
(32)【優先日】2017年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平田 愛子
(72)【発明者】
【氏名】野上 徳昭
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−090239(JP,A)
【文献】 特開2016−119255(JP,A)
【文献】 特開2012−253031(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/129487(WO,A1)
【文献】 特開2011−086397(JP,A)
【文献】 特開平11−092739(JP,A)
【文献】 特開2006−124607(JP,A)
【文献】 特開2011−140714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−1/24
B22F 1/00
B22F 1/02
C23C 18/31
C23C 18/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、銀粉と、エポキシ樹脂がナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と、溶剤と、硬化剤と、分散剤とを合計で100質量%含むことを特徴とする、導電性ペースト。
【請求項2】
銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、銀粉と、エポキシ樹脂がナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と、溶剤と、硬化剤と、分散剤と、ジカルボン酸とを合計で100質量%含むことを特徴とする、導電性ペースト。
【請求項3】
前記ジカルボン酸が前記銀粉に被着していることを特徴とする、請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が、示性式がHOOC−(CH−COOH(n=1〜8)のジカルボン酸であることを特徴とする、請求項2または3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記示性式中のnが4〜7であることを特徴とする、請求項4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記ジカルボン酸の量が、前記銀層と前記銀粉の銀に対して0.01〜0.25質量%であることを特徴とする、請求項2乃至5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記ジカルボン酸の量が、前記導電性ペーストに対して0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項2乃至5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記溶剤が、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、エチルカルビトール、および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)の1種以上であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項9】
前記硬化剤が、イミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項10】
前記銀被覆銅粉の平均粒径が1〜20μmであり、前記銀粉の平均粒径が0.1〜3μmであることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項11】
前記導電性ペースト中の前記銀被覆銅粉の量が40〜94質量%、前記銀粉の量が4〜58質量%であり、前記銀被覆銅粉と前記銀粉の総量が75〜98質量であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項12】
前記銀被覆銅粉に対する前記銀層の量が5質量%以上であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項13】
前記ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が導電性ペーストに対して1〜20質量%であることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項14】
前記ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が導電性ペーストに対して3〜10質量%であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項15】
前記導電性ペーストをスクリーン印刷機スキージ圧0.18MPaでアルミナ基板上に幅500μmで長さ37.5mmのライン状に印刷した後、大気循環式乾燥機により150℃で10分間加熱した後に200℃で30分間加熱して乾燥させるとともに硬化させて、導電膜を形成し、この導電膜について、マイクロスコープを使用して線幅を測定し、表面粗さ計を使用して平均厚さを測定するとともに、デジタルマルチメーターを使用して、ライン状の導電膜の両端に端子を当てて導電膜の抵抗を測定し、体積抵抗率(初期の体積抵抗率)を算出するとともに、導電膜上に380℃のはんだごてを導電膜に当てて10mm/秒の速度で移動させ、この加熱後の導電膜の抵抗を測定し、体積抵抗率(加熱後の体積抵抗率)を算出したときに、初期の体積抵抗率に対する加熱後の体積抵抗率の変化率が99〜110%であることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれかに記載の導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストに関し、特に、導電性の金属粉末として銀被覆銅粉と銀粉を使用する導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷法などにより電子部品の電極や配線を形成するために、銀粉や銅粉などの導電性の金属粉末に溶剤、樹脂、分散剤などを配合して作製した導電性ペーストが使用されている。
【0003】
しかし、銀粉は、体積抵抗率が極めて小さく、良好な導電性物質であるが、貴金属の粉末であるため、コストが高くなる。一方、銅粉は、体積抵抗率が低く、良好な導電性物質であるが、酸化され易いため、銀粉に比べて保存安定性(信頼性)に劣っている。
【0004】
これらの問題を解消するために、導電性ペーストに使用する金属粉末として、銅粉の表面を銀で被覆した銀被覆銅粉が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。また、銀粉と銀被覆銅粉を導電性ペーストに使用する金属粉末として使用することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
近年、太陽電池のバスバー電極などの導電膜を形成するための導電性ペーストとして、銀粉を用いた導電性ペーストに代えて、銀粉よりも安価な銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを使用することが試みられており、銀粉と銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを使用することも検討されている。
【0006】
一般的な結晶シリコン型太陽電池では、銀粉を用いた焼成型の導電性ペーストを大気雰囲気下において800℃程度の高温で焼成することにより電極を形成しているが、銅粉や銀被覆銅粉を用いた導電性ペーストを使用すると、大気雰囲気下においてこのような高温で焼成する際に、銅粉や銀被覆銅粉が酸化してしまうため、不活性雰囲気下で焼成するなどの特殊な技術が必要となり、コストが高くなる。
【0007】
一方、HIT(単結晶系ハイブリッド型)太陽電池などでは、一般に銀粉を用いた樹脂硬化型の導電性ペーストを大気雰囲気下において200℃程度に加熱して硬化させることにより電極を形成しており、大気雰囲気下においてこのような低い温度で加熱しても、銅粉や銀被覆銅粉は酸化に耐え得るため、銀被覆銅粉を用いた樹脂硬化型の導電性ペーストや、銀粉と銀被覆銅粉を用いた樹脂硬化型の導電性ペーストを使用することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−174311号公報(段落番号0003)
【特許文献2】特開2010−077495号公報(段落番号0006)
【特許文献3】特開平11−92739号公報(段落番号0008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記のような銀粉と銀被覆銅粉を使用してビスフェノールA型エポキシ樹脂などの樹脂を混練して得られた従来の樹脂型の導電性ペーストより形成したバスバー電極をはんだ付けによりタブ線と接続すると、はんだ付けの温度(380℃程度)で導電性ペーストの樹脂が分解して、バスバー電極の抵抗が高くなって、太陽電池の変換効率が低下する場合があることがわかった。
【0010】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、銀粉と銀被覆銅粉を用いた樹脂型の導電性ペーストにより形成した導電膜を380℃程度のはんだ付けの温度に加熱しても、導電膜の体積抵抗率の上昇を防止することができる、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、銀粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含む導電性ペーストにより導電膜を作製すれば、導電膜を380℃程度のはんだ付けの温度に加熱しても、導電膜の体積抵抗率の上昇を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明による導電性ペーストは、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、銀粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする。
【0013】
この導電性ペーストは、ジカルボン酸を含むのが好ましい。このジカルボン酸は、銀粉に被着しているのが好ましい。また、ジカルボン酸は、示性式がHOOC−(CH−COOH(n=1〜8)のジカルボン酸であるのが好ましく、この示性式中のnが4〜7であるのがさらに好ましい。また、導電性ペースト中のジカルボン酸の量は、銀層と銀粉の銀に対して0.01〜0.25質量%であるのが好ましく、導電性ペーストに対して0.1質量%以下であるのが好ましい。
【0014】
また、導電性ペーストは、溶剤を含むのが好ましく、硬化剤を含むのが好ましい。また、銀被覆銅粉の平均粒径は1〜20μmであるのが好ましく、銀粉の平均粒径は0.1〜3μmであるのが好ましい。導電性ペースト中の銀被覆銅粉の量が40〜94質量%、銀粉の量が4〜58質量%であるのが好ましく、銀被覆銅粉と銀粉の総量が75〜98質量であるのが好ましい。さらに、銀被覆銅粉に対する銀層の量が5質量%以上であるのが好ましい。
【0015】
なお、本明細書中において、「平均粒径」とは、レーザー回折式粒度分布装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)をいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、銀粉と銀被覆銅粉を用いた樹脂型の導電性ペーストにより形成した導電膜を380℃程度のはんだ付けの温度に加熱しても、導電膜の体積抵抗率の上昇を防止することができる、導電性ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による導電性ペーストの実施の形態は、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、銀粉と、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とを含んでいる。
【0018】
この導電性ペーストに含まれるナフタレン骨格を有する樹脂として、化1に示すようなナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)を使用することができる。このナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量は、導電性ペーストに対して1〜20質量%であるのが好ましく、3〜10質量%であるのがさらに好ましい。このナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の含有量が少な過ぎると、銀被覆銅粉の表面を熱による酸化から保護する働きが不十分になる。一方、多過ぎると、導電性ペーストにより太陽電池のバスバー電極形状に印刷する際の印刷性や、バスバー電極をタブ線にはんだ付けする際のはんだの接着強度が悪化するとともに、導電性ペーストにより作製した太陽電池のバスバー電極の抵抗が上昇する。なお、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるか否かは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)またはC13−NMRによって同定することができる。
【0019】
【化1】
【0020】
上記の導電性ペーストは、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などのジカルボン酸を含むのが好ましい。このジカルボン酸は、銀粉に被着しているのが好ましい。また、ジカルボン酸は、示性式がHOOC−(CH−COOH(n=1〜8)のジカルボン酸であるのが好ましく、アジピン酸、アゼライン酸などの示性式中のnが4〜7のジカルボン酸であるのがさらに好ましい。また、導電性ペースト中のジカルボン酸の量は、銀層と銀粉の銀に対して好ましくは0.25質量%以下(さらに好ましくは0.01〜0.25質量%)であり、導電性ペーストに対して好ましくは0.1質量%以下である。なお、導電性ペースト中のジカルボン酸の定性および定量は、例えば、ジカルボン酸を塩酸で溶出し、このジカルボン酸が溶出された塩酸溶液にメタノール(またはエステル化する薬剤)を添加してジカルボン酸をメチル化(またはエステル化)し、このメチル化(またはエステル化)したジカルボン酸を有機溶媒に抽出して、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)によって行うことができる。
【0021】
導電性ペーストは、溶剤を含むのが好ましく、この溶剤は、導電性ペーストの使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、エチルカルビトール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)などから、1種以上の溶媒を選択して使用することができる。この溶剤の含有量は、導電性ペーストに対して0〜20質量%であるのが好ましく、0〜10質量%であるのがさらに好ましい。
【0022】
導電性ペーストは、硬化剤を含むのが好ましく、この硬化剤としてイミダゾールおよび三フッ化ホウ素アミン系硬化剤の少なくとも一方を使用するのが好ましい。この硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂に対して0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜6質量%であるのがさらに好ましい。
【0023】
また、導電性ペーストは、界面活性剤、分散剤、レオロジー調整剤、シランカップリング剤、イオン捕集材などの他の成分を含んでもよい。
【0024】
導電性ペーストでは、銅粉の表面が銀層で被覆された銀被覆銅粉と、銀粉を導体として使用する。銀層により被覆された銅粉(銀被覆銅粉)の形状は、略球状でも、フレーク状でもよい。銀被覆銅粉の平均粒径は、1〜20μmであるのが好ましく、銀粉の平均粒径は0.1〜3μmであるのが好ましい。導電性ペースト中の銀被覆銅粉の量が40〜94質量%、銀粉の量が4〜58質量%であるのが好ましく、銀被覆銅粉と銀粉の総量が75〜98質量であるのが好ましい。
【0025】
銀被覆銅粉の銀層は、銀または銀化合物からなる層であるのが好ましく、90質量%以上の銀からなる層であるのがさらに好ましい。銀被覆銅粉に対する銀の量は、5質量%以上であるのが好ましく、7〜50質量%であるのがさらに好ましく、8〜40質量%であるのがさらに好ましく、9〜20質量%であるのが最も好ましい。銀の量が5質量%未満では、銀被覆銅粉の導電性に悪影響を及ぼすので好ましくない。一方、50質量%を超えると、銀の使用量の増加によってコストが高くなるので好ましくない。
【0026】
銀被覆銅粉を製造するために使用する銅粉は、湿式還元法、電解法、気相法などにより製造してもよいが、銅を溶解温度以上で溶解し、タンディッシュ下部から落下させながら高圧ガスまたは高圧水を衝突させて急冷凝固させることにより微粉末とする、(ガスアトマイズ法、水アトマイズ法などの)所謂アトマイズ法により製造するのが好ましい。特に、高圧水を吹き付ける、所謂水アトマイズ法により製造すると、粒子径が小さい銅粉を得ることができるので、銅粉を導電性ペーストに使用した際に粒子間の接触点の増加による導電性の向上を図ることができる。
【0027】
銅粉を銀層で被覆する方法として、銅と銀の置換反応を利用した置換法や、還元剤を用いる還元法により、銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法を使用することができ、例えば、溶媒中に銅粉と銀または銀化合物を含む溶液を攪拌しながら銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法や、溶媒中に銅粉および有機物を含む溶液と溶媒中に銀または銀化合物および有機物を含む溶液とを混合して攪拌しながら銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法などを使用することができる。
【0028】
この溶媒としては、水、有機溶媒またはこれらを混合した溶媒を使用することができる。水と有機溶媒を混合した溶媒を使用する場合には、室温(20〜30℃)において液体になる有機溶媒を使用する必要があるが、水と有機溶媒の混合比率は、使用する有機溶媒により適宜調整することができる。また、溶媒として使用する水は、不純物が混入するおそれがなければ、蒸留水、イオン交換水、工業用水などを使用することができる。
【0029】
銀層の原料として、銀イオンを溶液中に存在させる必要があるため、水や多くの有機溶媒に対して高い溶解度を有する硝酸銀を使用するのが好ましい。また、銅粉を銀層で被覆する反応(銀被覆反応)をできるだけ均一に行うために、固体の硝酸銀ではなく、硝酸銀を溶媒(水、有機溶媒またはこれらを混合した溶媒)に溶解した硝酸銀溶液を使用するのが好ましい。なお、使用する硝酸銀溶液の量、硝酸銀溶液中の硝酸銀の濃度および有機溶媒の量は、目的とする銀層の量に応じて決定することができる。
【0030】
銀層をより均一に形成するために、溶液中にキレート化剤を添加してもよい。キレート化剤としては、銀イオンと金属銅との置換反応により副生成する銅イオンなどが再析出しないように、銅イオンなどに対して錯安定度定数が高いキレート化剤を使用するのが好ましい。特に、銀被覆銅粉のコアとなる銅粉は主構成要素として銅を含んでいるので、銅との錯安定度定数に留意してキレート化剤を選択するのが好ましい。具体的には、キレート化剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジ酢酸、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミンおよびこれらの塩からなる群から選ばれたキレート化剤を使用することができる。
【0031】
銀被覆反応を安定かつ安全に行うために、溶液中にpH緩衝剤を添加してもよい。このpH緩衝剤として、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水、炭酸水素ナトリウムなどを使用することができる。
【0032】
銀被覆反応の際には、銀塩を添加する前に溶液中に銅粉を入れて攪拌し、銅粉が溶液中に十分に分散している状態で、銀塩を含む溶液を添加するのが好ましい。この銀被覆反応の際の反応温度は、反応液が凝固または蒸発する温度でなければよいが、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃の範囲で設定する。また、反応時間は、銀または銀化合物の量や反応温度によって異なるが、1分〜5時間の範囲で設定することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明による導電性ペーストの実施例について詳細に説明する。
【0034】
[実施例1]
アトマイズ法により製造された市販の銅粉(日本アトマイズ加工株式会社製のアトマイズ銅粉SF−Cu 5μm)を用意し、この(銀被覆前の)銅粉の粒度分布を求めたところ、銅粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)は2.26μm、累積50%粒子径(D50)は5.20μm、累積90%粒子径(D90)は9.32μmであった。なお、銅粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300)により測定して、体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)を求めた。
【0035】
また、炭酸アンモニウム2.6kgを純水450kgに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA−4Na(43%)319kgと炭酸アンモニウム76kgを純水284kgに溶解した溶液に、銀16.904kgを含む硝酸銀水溶液92kgを加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
【0036】
次に、窒素雰囲気下において、上記の銅粉100kgを溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。この銅粉が分散した溶液に溶液2を加えて30分間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥して、銀により被覆された銅粉(銀被覆銅粉)を得た。なお、水洗は、ろ過により得られた固形分に純水をかけて、水洗後の液の電位が0.5mS/m以下になるまで行った。
【0037】
このようにして得られた銀被覆銅粉5.0gを、比重1.38の硝酸水溶液を体積比1:1になるように純水で薄めた硝酸水溶液40mLに溶かし、ヒーターで煮沸して銀被覆銅粉を完全に溶解した後、この水溶液に、比重1.18の塩酸水溶液を体積比1:1になるように純水で薄めた塩酸水溶液に少量ずつ添加して塩化銀を析出させ、沈殿が生じなくなるまで塩酸水溶液の添加を続けて、得られた塩化銀から重量法によりAgの含有量を求めたところ、銀被覆銅粉中のAg含有量は10.14質量%であった。
【0038】
また、この銀被覆銅粉0.1gをイソプロピルアルコール40mLに加えて、超音波ホモジナイザー(チップ先端直径20mm)により2分間分散させた後、銀被覆銅粉の粒度分布をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製のマイクロトラックMT−3300 EXII)により測定した。その結果、銀被覆銅粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)は2.5μm、累積50%粒子径(D50)は5.2μm、累積90%粒子径(D90)は10.1μmであった。
【0039】
また、この銀被覆銅粉のBET比表面積をBET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用してBET1点法により測定した。その結果、銀被覆銅粉のBET比表面積は0.31m/gであった。
【0040】
また、得られた銀被覆銅粉79.0重量部と、平均一次粒子径1μmの銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のAg−2−1C)8.8重量部と、化1に示すナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のHP4710)6.5重量部と、溶剤としてブチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製)5.3重量部と、硬化剤としてイミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)0.3重量部と、分散剤としてオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.1重量部とを、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー社製のあわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製のEXAKT80S)により混練することにより、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを得た。
【0041】
次に、スクリーン印刷機(マイクロテック株式会社製のMT−320T)によりスキージ圧0.18MPaでアルミナ基板上に導電性ペーストを幅500μmで長さ37.5mmのライン状に印刷した後、大気循環式乾燥機により150℃で10分間加熱した後に200℃で30分間加熱して乾燥させるとともに硬化させて、導電膜を形成した。このようにして形成した導電膜について、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHK−5000)を使用して線幅を測定し、表面粗さ計(株式会社小坂研究所製のSE−30D)を使用して平均厚さを測定するとともに、デジタルマルチメーター(アドバンテスト株式会社製のデジタルマルチメーターR6551)を使用して、ライン状の導電膜の両端に端子を当てて導電膜の抵抗を測定し、体積抵抗率(初期の体積抵抗率)を算出したところ、85μΩ・cmであった。また、導電膜上にはんだ付けの際の熱と同程度の熱が加わるように380℃のはんだごてを導電膜に当てて10mm/秒の速度で移動させ、この加熱後の導電膜の抵抗を測定し、体積抵抗率(加熱後の体積抵抗率)を算出したところ、91μΩ・cmであり、初期の体積抵抗率に対する加熱後の体積抵抗率の変化率は107%であった。
【0042】
[実施例2]
実施例1と同様の銀粉50gを電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製のセレクトグラインドMJ−518)に入れて10秒間解砕した後、アジピン酸をエタノールに溶解して得られた10質量%のアジピン酸エタノール溶液0.35gを加えて20秒間解砕して、アジピン酸が被着した銀粉を作製した。このアジピン酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.006質量%(銀に対して0.07質量%)のアジピン酸が含まれるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0043】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は79μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は86μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は108%であった。
【0044】
[実施例3]
混合(予備混練)前に0.006質量%のアジピン酸(銀に対して0.07質量%のアジピン酸)を添加した以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0045】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は81μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は87μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は108%であった。
【0046】
[実施例4]
アジピン酸に代えてアゼライン酸を使用して得られた10質量%のアゼライン酸エタノール溶液0.35gを加えた以外は、実施例2と同様の方法により、アゼライン酸が被着した銀粉を作製した。このアゼライン酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.006質量%(銀に対して0.07質量%)のアゼライン酸が含まれるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0047】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は71μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は79μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は110%であった。
【0048】
[実施例5]
アジピン酸に代えてフタル酸を使用して得られた10質量%のフタル酸エタノール溶液0.35gを加えた以外は、実施例2と同様の方法により、フタル酸が被着した銀粉を作製した。このフタル酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.006質量%(銀に対して0.07質量%)のフタル酸が含まれるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0049】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は95μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は98μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は103%であった。
【0050】
[実施例6]
アジピン酸に代えて無水フタル酸を使用して得られた10質量%の無水フタル酸エタノール溶液0.35gを加えた以外は、実施例2と同様の方法により、無水フタル酸が被着した銀粉を作製した。この無水フタル酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.006質量%(銀に対して0.07質量%)の無水フタル酸が含まれるようにした以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0051】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は87μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は92μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は106%であった。
【0052】
[実施例7]
銀被覆銅粉および銀粉の量をそれぞれ43.9重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0053】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は56μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は55μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は99%であった。
【0054】
[実施例8]
アジピン酸エタノール溶液の量を0.21gとした以外は、実施例2と同様の方法により、アジピン酸が被着した銀粉を作製した。このアジピン酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.018質量%(銀に対して0.04質量%)のアジピン酸が含まれるようにした以外は、実施例7と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0055】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は36μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は36μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は100%であった。
【0056】
[実施例9]
アジピン酸エタノール溶液の量を0.35gとした以外は、実施例2と同様の方法により、アジピン酸が被着した銀粉を作製した。このアジピン酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.031質量%(銀に対して0.07質量%)のアジピン酸が含まれるようにした以外は、実施例7と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0057】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は37μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は38μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は103%であった。
【0058】
[実施例10]
アジピン酸エタノール溶液の量を0.49gとした以外は、実施例2と同様の方法により、アジピン酸が被着した銀粉を作製した。このアジピン酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.043質量%(銀に対して0.10質量%)のアジピン酸が含まれるようにした以外は、実施例7と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0059】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は41μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は42μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は103%であった。
【0060】
[実施例11]
アジピン酸エタノール溶液の量を0.63gとした以外は、実施例2と同様の方法により、アジピン酸が被着した銀粉を作製した。このアジピン酸が被着した銀粉を使用して、導電性ペースト中に0.055質量%(銀に対して0.13質量%)のアジピン酸が含まれるようにした以外は、実施例7と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0061】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は43μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は45μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は105%であった。
【0062】
[比較例1]
導電性ペースト1中のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、銀被覆銅粉の量を79.9重量部とし、銀粉の量を8.9重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で88.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0063】
【化2】
【0064】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は68μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は142μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は210%であった。
【0065】
[比較例2]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化2に示すビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のEP4901E)を使用し、銀被覆銅粉の量を79.9重量部とし、銀粉の量を8.9重量部とした以外は、実施例2と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で88.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0066】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は49μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は103μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は211%であった。
【0067】
[比較例3]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化3に示すビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製のJER828)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0068】
【化3】
【0069】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は235μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は510μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は217%であった。
【0070】
[比較例4]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化4に示すビフェニル骨格のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のNC−3000−H)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0071】
【化4】
【0072】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は185μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は866μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は468%であった。
【0073】
[比較例5]
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂に代えて、化5に示すシクロペンタジエン骨格のエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製のXD−1000)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、(銀被覆銅粉と銀粉を合計で87.8質量%含む)導電性ペーストを作製した。
【0074】
【化5】
【0075】
このようにして得られた導電性ペーストを使用して、実施例1と同様の方法により、導電膜を形成し、初期と加熱後の体積抵抗率を算出し、加熱による体積抵抗率の変化率を求めたところ、初期の体積抵抗率は183μΩ・cm、加熱後の体積抵抗率は275μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は150%であった。
【0076】
これらの実施例および比較例の結果を表1〜表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1〜表2からわかるように、実施例1〜11の導電性ペーストを導電膜の形成に使用すると、比較例1〜5の導電性ペーストを用いた場合と比べて、導電膜をはんだ付けの温度に加熱しても、導電膜の体積抵抗率の上昇を防止することができる。
また、実施例2〜4のようにアジピン酸やアゼライン酸などの示性式がHOOC−(CH−COOH(n=1〜8)のジカルボン酸を含む導電性ペーストを導電膜の形成に使用すると、実施例1のようにジカルボン酸を含まない導電性ペーストを用いた場合や、実施例5〜6のようにフタル酸や無水フタル酸などの示性式がHOOC−(CH−COOH(n=1〜8)ではないジカルボン酸を含む導電性ペーストを用いた場合と比べて、導電膜の加熱後の体積抵抗率を低くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明による導電性ペーストは、回路基板の導体パターン、太陽電池などの基板の電極や回路などの電子部品の作製に利用することができる。例えば、太陽電池のバスバー電極の作製に利用したり、屋根板式セル(Shingled−cell)などとして使用される2つの太陽電池セルを接合する接着剤(接合電極)として利用することができる。