特許第6681784号(P6681784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681784バッキング部材及びその製造方法と超音波探触子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681784
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】バッキング部材及びその製造方法と超音波探触子
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20200406BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20200406BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H04R17/00 330J
   A61B8/14
   H04R31/00 330
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-101641(P2016-101641)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-208772(P2017-208772A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】反町 東夫
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−065797(JP,A)
【文献】 特開2004−112326(JP,A)
【文献】 特開平07−131895(JP,A)
【文献】 特開2008−028462(JP,A)
【文献】 特開2006−122105(JP,A)
【文献】 特開2001−292496(JP,A)
【文献】 特開2015−228932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
A61B 8/14
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを含有する樹脂層と、
前記樹脂層の中に埋設され、前記樹脂層の上面から下面まで貫通する複数のリードと
を有し、
前記リードは、配線部と、前記配線部の両端に繋がる端子部とを備え、
前記配線部の幅及び厚みは、前記配線部の両端に繋がる端子部の少なくとも一方の幅及び厚みよりも小さく、
隣接する前記リードの配線部同士の間隔は、前記フィラーの平均粒径よりも広く、
幅方向で隣接する前記リードの間に前記フィラーが配置されており、
前記配線部は、前記端子部の断面内の厚み方向の下部に繋がっており、前記配線部の厚み方向の下面と前記端子部の厚み方向の下面とが面一になっており、
前記複数のリードの前記配線部及び前記端子部の各下面が同一方向を向いて配置されていることを特徴とするバッキング部材。
【請求項2】
前記リードの両側の端子部の各側面が前記樹脂層に埋設され、前記リードの両側の端子部の各先端面が前記樹脂層の上面及び下面から露出していることを特徴とする請求項1に記載のバッキング部材。
【請求項3】
前記リードは金属板がパターン化されて形成され、前記リードの配線部の断面形状は四角状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッキング部材。
【請求項4】
隣接する前記リードの端子部同士の間隔は、前記フィラーの平均粒径よりも狭いことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のバッキング部材。
【請求項5】
フィラーを含有する樹脂層と、
前記樹脂層の中に埋設され、前記樹脂層の上面から下面まで貫通する複数のリードと
を有し、
前記リードは、配線部と、前記配線部の両端に繋がる端子部とを備え、
前記配線部の幅及び厚みは、前記配線部の両端に繋がる端子部の少なくとも一方の幅及び厚みよりも小さく、隣接する前記リードの配線部同士の間隔は、前記フィラーの平均粒径よりも広く、幅方向で隣接する前記リードの間に前記フィラーが配置されており、前記配線部は、前記端子部の断面内の厚み方向の下部に繋がっており、前記配線部の厚み方向の下面と前記端子部の厚み方向の下面とが面一になっており、前記複数のリードの前記配線部及び前記端子部の各下面が同一方向を向いて配置されているバッキング部材と、
前記バッキング部材の上に配置され、前記複数のリードの端子部に接続された圧電素子と、
前記圧電素子の上に配置された音響整合層と
を有する超音波探触子。
【請求項6】
金属板を用意する工程と、
前記金属板をパターン化することにより、配線部と、前記配線部の両端に繋がる端子部とを備え、前記配線部の幅及び厚みが前記配線部の両端に繋がる端子部の少なくとも一方の幅及び厚みよりも小さい複数のリードが形成されたリードフレームを得る工程と、
複数の前記リードフレームをスペーサを介して積層して積層体を得る工程と、
前記積層体の前記複数のリードが積層された領域にフィラーを含有する樹脂を注入して、前記複数のリードを樹脂層の中に埋設する工程と、
前記複数のリードが積層された領域が得られるように前記積層体を切断して、前記樹脂層の側面から前記リードの端子部の先端面が露出する部材を得る工程と
を有し、
前記リードフレームを得る工程において、
前記複数のリードは外枠に繋がって形成され、
前記金属板の一方の面に、前記外枠及び前記複数のリードの端子部のみに対応するパターンで第1レジスト層を形成し、
前記金属板の他方の面に、前記外枠及び前記複数のリードの全体に対応するパターンで第2レジスト層を形成し、
前記金属板の一方の面及び他方の面から前記第1レジスト層及び第2レジスト層をマスクにして前記金属板をウェットエッチングすることにより、前記リードを得る工程であって、前記配線部が前記端子部の断面内の厚み方向の下部に繋がり、前記配線部の厚み方向の下面と前記端子部の厚み方向の下面とが面一になって、前記複数のリードの前記配線部及び前記端子部の各下面が同一方向を向いて配置され、
前記第1レジスト層及び第2レジスト層を除去する工程を含み、
前記複数のリードを前記樹脂層の中に埋設する工程において、隣接する前記リードの配線部同士の間隔が前記フィラーの平均粒径よりも広く設定され、幅方向で隣接する前記リードの間に前記フィラーが配置されることを特徴とするバッキング部材の製造方法。
【請求項7】
前記積層体を得る工程において、
前記スペーサは弾性体から形成され、
前記積層体を加圧して前記スペーサを圧縮することにより、前記積層された複数のリードの間隔を調整することを特徴とする請求項に記載のバッキング部材の製造方法。
【請求項8】
前記スペーサは、弾性樹脂から形成されることを特徴とする請求項又はに記載のバッキング部材の製造方法。
【請求項9】
前記積層体を得る工程において、
前記積層体は、下側支持板と上側支持板との間に配置され、
前記下側支持板と前記上側支持板との間に高さ調整ストッパを配置し、
前記上側支持板を前記高さ調整ストッパに当接させて、前記積層体の厚みを調整することを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のバッキング部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキング部材及びその製造方法とそのバッキング部材を備えた超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を使って被写体内を映像化することにより診断を行う超音波診断装置がある。超音波診断装置には、超音波の送受信を行う部分である超音波探触子が備えられている。
【0003】
超音波探触子では、圧電素子によって超音波が送信され、圧電素子の下には後方への超音波の伝搬を吸収するためのバッキング部材が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−282074号公報
【特許文献2】特開2004−40250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後述する予備的事項の欄で説明するように、超音波探触子のバッキング部材を製造するには、リードフレームなどを複数で整列させて、それらの間にフィラーを含有する樹脂を注入する方法がある。
【0006】
しかし、そのような方法では、リードの配置ピッチを300μm程度以下で精度よく整列させることは困難である。また、リードの配置ピッチが狭小化すると、フィラーを含有する樹脂を形成する際に、フィラーを信頼性よく分散させることが困難になる。
【0007】
リードの配置ピッチが狭小化しても、リード間にフィラーを含有する樹脂を信頼性よく形成できる新規な構造のバッキング部材及びその製造方法と超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点によれば、フィラーを含有する樹脂層と、前記樹脂層の中に埋設され、前記樹脂層の上面から下面まで貫通する複数のリードとを有し、前記リードは、配線部と、前記配線部の両端に繋がる端子部とを備え、前記配線部の幅及び厚みは、前記配線部の両端に繋がる端子部の少なくとも一方の幅及び厚みよりも小さく、隣接する前記リードの配線部同士の間隔は、前記フィラーの平均粒径よりも広く、幅方向で隣接する前記リードの間に前記フィラーが配置されており、前記配線部は、前記端子部の断面内の厚み方向の下部に繋がっており、前記配線部の厚み方向の下面と前記端子部の厚み方向の下面とが面一になっており、前記複数のリードの前記配線部及び前記端子部の各下面が同一方向を向いて配置されているバッキング部材が提供される。
【0009】
また、その開示の他の観点によれば、金属板を用意する工程と、前記金属板をパターン化することにより、配線部と、前記配線部の両端に繋がる端子部とを備え、前記配線部の幅及び厚みが前記配線部の両端に繋がる端子部の少なくとも一方の幅及び厚みよりも小さい複数のリードが形成されたリードフレームを得る工程と、複数の前記リードフレームをスペーサを介して積層して積層体を得る工程と、前記積層体の前記複数のリードが積層された領域にフィラーを含有する樹脂を注入して、前記複数のリードを樹脂層の中に埋設する工程と、前記複数のリードが積層された領域が得られるように前記積層体を切断して、前記樹脂層の側面から前記リードの端子部の先端面が露出する部材を得る工程とを有し、前記リードフレームを得る工程において、前記複数のリードは外枠に繋がって形成され、前記金属板の一方の面に、前記外枠及び前記複数のリードの端子部のみに対応するパターンで第1レジスト層を形成し、前記金属板の他方の面に、前記外枠及び前記複数のリードの全体に対応するパターンで第2レジスト層を形成し、前記金属板の一方の面及び他方の面から前記第1レジスト層及び第2レジスト層をマスクにして前記金属板をウェットエッチングすることにより、前記リードを得る工程であって、前記配線部が前記端子部の断面内の厚み方向の下部に繋がり、前記配線部の厚み方向の下面と前記端子部の厚み方向の下面とが面一になって、前記複数のリードの前記配線部及び前記端子部の各下面が同一方向を向いて配置され、前記第1レジスト層及び第2レジスト層を除去する工程を含み、前記複数のリードを前記樹脂層の中に埋設する工程において、隣接する前記リードの配線部同士の間隔が前記フィラーの平均粒径よりも広く設定され、幅方向で隣接する前記リードの間に前記フィラーが配置されるバッキング部材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以下の開示によれば、バッキング部材では、フィラーを含有する樹脂層に複数のリードが貫通して埋設されている。リードは、配線部と、配線部の両端に繋がる端子部とを備え、配線部の幅及び厚みは端子部の幅及び厚みよりも小さく設定されている。
【0011】
リードの端子部の幅及び厚みを十分に確保した状態で、配線部の幅及び厚みを小さくしている。これにより、リードの配線部の間隔を幅方向及び奥行き方向で共に広く設定することができる。
【0012】
隣接するリードの配線部同士の間隔が樹脂層内のフィラーの平均粒径よりも広く設定されるため、複数のリードの間隔にフィラーを信頼性よく分散させることができる。また、リードの配線部の断面積が小さくなった分だけ樹脂の占有体積を大きくできるため、高周波を十分に吸収できる高性能なバッキング部材を構築することができる。
【0013】
また、リードの端子部の断面積は十分な大きさを有するため、圧電素子及び配線基板と信頼性よく電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)及び(b)は予備的事項に係る超音波探触子を示す断面図及び平面図である。
図2図2は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す平面図(その1)である。
図3図3は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す平面図及び断面図(その2)である。
図4図4は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す平面図及び断面図(その3)である。
図5図5は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す平面図及び断面図(その4)である。
図6図6図5のリードの端子部及び配線部を示す斜視図である。
図7図7は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す平面図(その5)である。
図8図8は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す斜視図(その6)である。
図9図9は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す斜視図(その7)である。
図10図10は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す断面図(その8)である。
図11図11は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す断面図(その9)である。
図12図12は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す斜視図(その10)である。
図13図13は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す斜視図(その11)である。
図14図14は実施形態のバッキング部材の製造方法を示す斜視図(その12)である。
図15図15は実施形態のバッキング部材を示す斜視図である。
図16図16(a)及び(b)は図15のバッキング部材内のリードの様子を示す部分断面図である。
図17図17は実施形態の超音波探触子を示す斜視図である。
図18図18図17の超音波探触子の接続の様子を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の説明の前に、基礎となる予備的事項について説明する。予備的事項の記載は、発明者の個人的な検討内容であり、公知技術ではない新規な技術内容を含む。
【0017】
図1(a)及び(b)は予備的事項に係る超音波探触子を示す断面図及び平面図である。図1(a)は図1(b)の平面図のI−Iの沿った断面に相当する。
【0018】
図1(a)及び(b)に示すように、予備的事項に係る超音波探触子は、超音波を発生する圧電素子100を備えている。圧電素子100の下には、後方への超音波の伝搬を吸収するバッキング部材200が配置されている。
【0019】
また、圧電素子100の上には、超音波を被写体内に効率よく入射させるための音響整合層300が配置されている。
【0020】
圧電素子100は多数に分割されて2次元的に配置されている。また、バッキング部材200は、バッキング材となる樹脂層220とその中に埋設されたリード240とを備えている。
【0021】
そして、圧電素子100の下面にリード240の上端が電気的に接続され、リード240を介して各圧電素子100に電圧が供給される。
【0022】
このようなリード240を備えたバッキング部材200を製造するには、リードフレーム又は配線パターンを備えたフレキシブルプリント板を複数で整列させて、それらの間に樹脂を注入する方法がある。
【0023】
あるいは、リードフレーム又はフレキシブルプリント板をバッキング材となる樹脂板を挟んで積層し、接着する方法がある。
【0024】
バッキング部材200内のリード240は超音波を吸収する機能はないため、リード240の体積をできるだけ小さくして、バッキング材である樹脂層220の体積を大きくする必要がある。
【0025】
リードフレームを使用する場合は、リードフレームの板厚を薄くすると、剛性がなくなり、精度よく整列させることができないため、リードの断面積を小さくすることは困難である。
【0026】
また、フレキシブルプリント板を使用する場合は、配線パターンが薄すぎるため圧電素子と電気的に接続することが困難になる。このため、バッキング部材200を得た後に、配線パターンの先端に所要の面積を有する電極をめっきなどで形成する必要があり、コスト高を招く。
【0027】
また、圧電素子100の小型化及び配置の高密度化に伴って、リードの配置ピッチは300μm程度以下に設定することが要求される。
【0028】
しかし、上記したバッキング部材200の製造方法では、リードの配置ピッチを300μm程度以下で精度よく配置させることは困難である。
【0029】
また、バッキング部材200では、バッキング材として、フィラーを含有する樹脂が使用される。リードの配置ピッチが狭小化すると、フィラーの平均粒径よりもリードの間隔が狭くなるため、フィラーを信頼性よく分散させることが困難になる。
【0030】
後述する実施形態のバッキング部材及び超音波探触子では、前述した課題を解消することができる。
【0031】
(実施形態)
図2図14は実施形態のバッキング部材の製造方法を説明するための図、図15は実施形態のバッキング部材を示す図である。以下、バッキング部材の製造方法を説明しながら、バッキング部材及び超音波探触子の構造について説明する。
【0032】
実施形態のバッキング部材の製造方法では、まず、図2に示すように、金属板10を用意する。金属板10は、例えば、リードフレームに使用される銅合金板から形成され、その厚みは150μm程度である。図2では、2本のリードが配置される領域の金属板10が部分的に描かれている。
【0033】
金属板10には、複数のリードが形成され、リードの両端側の端子部が配置される領域Aと、リードの中央部の配線部が配置される領域Bが画定されている。
【0034】
次いで、図3に示すように、金属板10に複数のリードを形成するために、金属板10の上面に第1レジスト層12aを形成し、金属板10の下面に第2レジスト層12bを形成する。第1レジスト層12a及び第2レジスト層12bは、フォトリソグラフィ技術に基づいて露光及び現像を行うことによりパターン化されて形成される。
【0035】
後述するように、金属板10に形成される各リードは、中央部に配置される配線部の幅及び厚みが両端側に配置される端子部の幅及び厚みよりも小さくなるように設定される。また、各リードの端子部は金属板10から得られる外枠に繋がった状態で形成される。
【0036】
図3の平面図及び断面図(1)に示すように、金属板10の上面に形成される第1レジスト層12aは、外枠及びそれに繋がるリードの両端側の端子部のみに対応するパターンで形成される。図3の平面図及び断面図(2)のように、金属板10の上面では、各リードの配線部が配置される領域Bには、第1レジスト層12aが形成されず、一括して開口された状態となる。
【0037】
一方、図3の断面図(1)及び(2)に示すように、金属板10の下面に形成される第2レジスト層12bは、外枠及びそれに繋がるリードの全体に対応するパターンで形成される。
【0038】
なお、図3の例とは逆に、金属板10の下面に第1レジスト層12aを形成し、金属板10の上面に第2レジスト層12bを形成してもよい。金属板10の一方の面に第1レジスト層12aを形成し、金属板10の他方の面に第2レジスト層12bを形成すればよい。
【0039】
続いて、図4に示すように、金属板10の上面及び下面から第1レジスト層12a及び第2レジスト層12bをマスクにして、金属板10をウェットエッチングする。ウェットトエッチングとしては、スプレーエッチングが採用される。また、ウェットエッチングのエッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液又は過硫酸アンモニウム水溶液などが使用される。
【0040】
金属板10の上面及び下面にエッチング液がスプレーされ、金属板10の上面及び下面から厚み方向に同時にハーフエッチングされて、金属板10が貫通加工される。
【0041】
このとき、図4の断面図(1)に示すように、リードの両側の端子部が配置される領域Aでは、上面側の第1レジスト層12a及び下面側の第2レジスト層12bをマスクにして、金属板10が上面及び下面からエッチングされて貫通加工される。
【0042】
金属板10の上面からのエッチンング面と下面からのエッチング面が連通して、金属板10が貫通加工される。これにより、金属板10の領域Aに外枠14に繋がるリードの端子部22が形成される。
【0043】
端子部22は、上面及び下面に第1レジスト層12a及び第2レジスト層12bが配置された状態で形成される。このため、端子部22の厚みは金属板10と同じ厚みとなる。
【0044】
一方、図4の断面図(2)に示すように、リードの配線部が配置される領域Bでは、金属板10の上面から厚み方向の途中まで一括してエッチングされる。
【0045】
これと同時に、金属板10の下面では、第2レジスト層12bをマスクにして金属板10が下面からエッチングされて、リードの配線部24が形成される。金属板10の上面からのエッチンング面と下面からのエッチング面が連通して貫通加工される。
【0046】
このとき、金属板10の領域Bでは金属板10の上面から一括してエッチングされるため、配線部24は上部が膜減りした状態で形成され、端子部22よりも厚みが薄く設定される。配線部24は両側の端子部22に繋がって形成される。
【0047】
このようにして、端子部22と配線部24とを備えたリード20が形成される。スプレーエッチングでのスプレー圧力などを調整することにより、金属板10の上面側及び下面側でエッチングレートを調整することができる。
【0048】
図5の断面図(1)及び(2)の例では、リード20の配線部24の厚みを端子部22の厚みの半分より薄くするため、金属板10の上面側でのエッチングレートを高く設定している。
【0049】
図5には、図4の構造体から第1レジスト層12a及び第2レジスト層12bを除去した状態が示されている。図6は、図5のリード20の端子部22及び配線部24を部分的に示す斜視図である。
【0050】
以上の方法により、図5に示すように、外枠14に複数のリード20が繋がったリードフレーム5が得られる。リード20は、中央部に配置された配線部24と、配線部24の両端に繋がる端子部22とを備えて形成される。リード20の両側の端子部22は外枠14に繋がって形成される。
【0051】
図5及び図6に示すように、リード20の配線部24の幅W1は端子部22の幅W2よりも小さく設定されている。また、リード20の配線部24の厚みT1は端子部22の厚みT2よりも小さく設定されている
このようにして、リード20の配線部24の断面積は端子部22の断面積よりも小さく設定される。
【0052】
図5の断面図(2)に示すように、リード20の配線部24の断面形状は台形に類似する四角状で形成さる。また、図5の断面図(1)に示すように、リード20の端子部22の断面形状は、両側面の中央に突起が配置された六角状に形成される。
【0053】
前述したように、金属板10の両面側から1回のウェットエッチングで金属板10を貫通加工してリード20を形成する手法を採用している。
【0054】
このため、図6に示すように、配線部24は端子部22の断面内の厚み方向の下部に繋がり、配線部24の厚み方向の下面と端子部22の厚み方向の下面とが面一になる。このように、配線部24は端子部22の断面内の中心から一端側(下側)にずれた位置に配置される。
【0055】
例えば、配線部24の幅W1は60μm、配線部24の厚みT1は60μmに設定される。この場合、端子部22の幅W2は150μm〜200μm、端子部22の厚みT2は150μm〜200μmに設定される。
【0056】
このようなリード20の構造を採用することにより、後述するように、リードの配置ピッチを狭くしても、リード20の配線部24の間隔を広く確保できるため、フィラーを含有する樹脂を信頼性よく形成することができる。
【0057】
図7には、前述した方法で多数のリード20を形成した一枚のリードフレーム5の全体の様子が示されている。図7のリードフレーム5の例では、4つの製品領域Rにリード20が縦方向に並んで配置されている。各製品領域Rにおいて、リード20の両側の端子部22が外枠14に連結されて支持されている。
【0058】
また、リードフレーム5の四隅には、ガイドピンを挿入して位置決めするためのガイド穴5xが形成されている。
【0059】
次に、図7のリードフレームを使用して、バッキング部材を構築する方法について説明する。図8に示すように、まず、図7のリードフレーム5を複数枚で用意する。図8では、3枚のリードフレーム5が描かれている。
【0060】
さらに、下側支持板30及び上側支持板32を用意する。上側支持板32には樹脂を注入するための開口部32aが形成されている。上側支持板32の開口部32aは前述した図7のリードフレーム5の製品領域Rに対応して配置されている。
【0061】
また、上側支持板32の四隅には、前述した図7のリードフレーム5のガイド穴5aに対応するガイド穴32xが形成されている。
【0062】
下側支持板30は、注入された樹脂をせき止めるため開口部は形成されておらず、一枚の板状になっている。また、下側支持板30は、注入された樹脂が容易に剥離できるように表面にフッ素樹脂加工が施されている。あるいは、下側支持板30の上にフッ素樹脂シート又はポリエチレンシートなどを配置してもよい。
【0063】
下側支持板30の四隅には、前述した図7のリードフレーム5のガイド穴5aに対応するガイド穴30xが形成されている。
【0064】
さらに、複数枚のスペーサ40を用意する。スペーサ40には樹脂を注入するための開口部40aがそれぞれ形成されている。スペーサ40の各開口部40aは前述した図7のリードフレーム5の製品領域Rに対応して配置されている。
【0065】
スペーサ40は、積層されたリードフレーム5のリード20の積層方向の配置ピッチを決めるために配置される。スペーサ40は弾性体から形成され、好適には、樹脂スポンジ又は弾性ゴムなどの弾性樹脂が使用される。スペーサ40を圧縮させて所望の厚みに設定することにより、リード20の積層方向の配置ピッチを調整することができる。
【0066】
スペーサ40の四隅には、前述したリードフレーム5のガイド穴5aに対応するガイド穴40xが形成されている。
【0067】
そして、下側支持板30と上側支持板32との間にスペーサ40を介してリードフレーム5を積層する。
【0068】
図8の例を詳しく説明すると、下側支持板30と下側のリードフレーム5との間にスペーサ40が配置される。また、下側のリードフレーム5と中間のリードフレーム5との間にスペーサ40が配置される。
【0069】
また、中間のリードフレーム5と上側のリードフレーム5との間にスペーサ40が配置される。さらに、上側のリードフレーム5と上側支持板32との間にスペーサ40が配置される。
【0070】
そして、上側支持板32のガイド穴32xからスペーサ40の各ガイド穴40x及びリードフレーム5の各ガイド穴5xを通して下側支持板30のガイド穴30xまでガイドピン(不図示)を挿通させる。
【0071】
これにより、上側支持板32の開口部32a及びスペーサ40の各開口部40aと、リードフレーム5の製品領域R(図7)との位置合わせが行われる。
【0072】
このようにして、下側支持板30と上側支持板32との間に、複数のリードフレーム5がスペーサ40を介して積層された積層体6が配置される。
【0073】
実際には、20枚〜40枚程度のリードフレーム5がスペーサ40を介して積層される。
【0074】
さらに、図9に示すように、下側支持板30と上側支持板32とで挟まれた積層体6を圧縮して、弾性体からなるスペーサ40を所望の厚みにした状態で固定する。
【0075】
例えば、図9の構造体がステージ(不図示)の上に配置され、加圧部材(不図示)によって上側支持板32を下側に加圧する。あるいは、図9の構造体を加圧部材で挟んで上下側から加圧してもよい。
【0076】
これにより、積層されたリードフレーム5のリード20の積層方向の間隔は圧縮されたスペーサ40の厚みで決定される。
【0077】
下側支持板30と上側支持板32とで挟まれた積層体6を所望の厚みにする方法としては、高さ調整ストッパを使用する方法がある。
【0078】
図10に示すように、下側支持板30と上側支持板32とで挟まれる積層体6に貫通穴7を形成しておく。また、前述した図7のリードフレーム5を積層する際に、貫通穴7の内に高さ調整ストッパ34を配置する。
【0079】
そして、図11に示すように、上側支持板32を下側に加圧して、上側支持板32を高さ調整ストッパ34の上端に当接させる。高さ調整ストッパ34の高さを調整することにより、下側支持板30と上側支持板32とで挟まれた積層体6の厚みを所望の厚みに調整することができる。
【0080】
これにより、積層体6のスペーサ40の厚みが調整されるため、積層されたリードフレーム5のリード20の積層方向の配置ピッチを調整することができる。
【0081】
このようにして、リード20の水平方向及び垂直方向の配置ピッチを共に300μm程度以下に精度よく設定することが可能になる。
【0082】
このように、複数のリード20が形成されたリードフレーム5をスペーサ40を介して積層することにより、水平方向及び垂直方向にリード20を小さい配置ピッチで精度よく配置することができる。また、リードフレーム5には複数の製品領域Rを形成できるため、複数のバッキング部材を同時に製造することができ、低コスト化を図ることができる。
【0083】
次いで、図12に示すように、上側支持板32の開口部32aからリードフレーム5のリード20が積層された製品領域Rの中空部分にフィラー52を含有する樹脂50aを注入する。樹脂50aとしては、エポキシ樹脂が好適に使用される。
【0084】
樹脂50aの注入は真空中で行われ、樹脂50aを注入する際に発生する泡が真空脱泡される。その後に、150℃の温度で、2時間、加熱処理を行って樹脂50aを硬化させて樹脂層50を得る。これにより、複数の製品領域Rに水平方向及び垂直方向に並んで配置された多数のリード20が樹脂層50に中に埋設された状態になる。
【0085】
このとき、下側支持板30と上側支持板32との間に挟まれた積層体6への加圧力を開放しても、積層されたリード20が樹脂層50で固定された状態となり、圧縮された時点の積層体6の厚みが維持される。
【0086】
ここで、樹脂層50に含有されたフィラー52について言及する。フィラー52を含有する樹脂層50が超音波の散乱吸収の機能を発揮するためには、フィラー52として、樹脂層50の音響インピーダンスと大きく異なる音響インピーダンスを有する材料が使用される。
【0087】
このため、フィラー52として、タングステン又はアルミナなどの音響インピーダンスが大きな材料、あるいは、中空ガラス球のような音響インピーダンスが小さな材料が使用される。
【0088】
また、エポキシ樹脂などの母材の音速は、2000m/秒程度である。また、超音波の周波数は2MHz〜20MHzであり、人体の奥部を診断する用途には吸収の少ない低い周波数が使用される。
【0089】
超音波の周波数が5MHzの場合は、波長は400μm程度になる。フィラーの粒径が波長に近づくと反射が大きくなり、診断の際にノイズとなる。逆に、フィラーの粒径が小さすぎる場合は超音波の散乱が十分になされない。このため、フィラーの粒径は超音波の波長の1/5〜1/10程度の大きさに設定されることが望ましい。
【0090】
従って、超音波の周波数が5MHzの場合は、フィラーの平均粒径は40μm〜80μmに設定されることが好ましい。
【0091】
本実施形態と違って、リードの幅及び厚みを全体にわたって同じ構造にすると、リードの水平方向と垂直方向の配置ピッチが200μmで、リードの幅及び厚みが150μmの場合は、リードの間隔は50μmとなる。
【0092】
このため、平均粒径が40μm〜80μmのフィラーはそのほとんどがリードの間隔に分散されないため、バッキング部材として機能しなくなる。
【0093】
しかし、本実施形態では、前述したように、リード20の配線部24の幅及び厚みを端子部22の幅及び厚みより小さくしている。
【0094】
このため、リード20の水平方向と垂直方向の配置ピッチが200μmで、リード20の配線部24の幅及び厚みを60μmにする場合は、リード20の配線部24の間隔は140μmとなる。このように、隣接するリード20の配線部24同士の間隔がフィラー52の平均粒径よりも広く設定される。
【0095】
これにより、リード20の配線部24の水平方向及び垂直方向の隙間にフィラー52を均一よく注入することができるようになる。このため、超音波を十分に吸収できる高性能なバッキング部材を構築することができる。
【0096】
しかも、リード20の端子部22の断面積を150μm×150μm程度で大きく形成できるため、圧電素子及び配線基板と信頼性よく電気的に接続することができる。
【0097】
以上のように、図12の工程で、積層されたリードフレーム5の製品領域Rにフィラー52を含有する樹脂50aを注入する際に、リード20の配線部24の水平方向及び垂直方向の隙間にフィラー52が均一に分散される。
【0098】
なお、超音波の周波数が比較的高い場合は、上記したフィラーの粒径よりも小さい平均粒径のフィラーを使用することができるため、上記した例よりもリードの配線部の間隔を狭くすることが可能である。
【0099】
しかし、フィラーを製造する際に粒径が大きくばらつくため、平均粒径の2倍程度のものがかなりの分量で含まれていることを考慮する必要がある。
【0100】
近年では、圧電素子の小型化及び配置の高密度化が進み、これに伴って、リードの配置ピッチも狭くなる傾向がある。
【0101】
しかし、上記したように、超音波の反射によるノイズを防止するために樹脂層に含有されるフィラーの粒径は超音波の波長に依存するため、リードの配線ピッチが狭くなっても、フィラーの粒径を小さくすることができない。
【0102】
このような観点から、本実施形態のように、配線部24の断面積が端子部22の断面積よりも小さい構造のリード20を採用することにより、リード20の間隔を大きく確保することができる。これにより、圧電素子の配置ピッチの狭小化に対応できるようになる。
【0103】
さらに、リード20の配置ピッチを狭くしても、配線部24の幅及び厚みを小さくしているため、リード20同士が接触しづらくなると共に、リード20間の浮遊容量が小さくなり、クロストークが少なくなる。
【0104】
次いで、図13に示すように、下側支持板30及び上側支持板32を積層体6から取り外す。このとき、下側支持板30の上面はフッ素樹脂加工が施されているため、下側支持板30を樹脂層50から容易に剥離することができる。
【0105】
さらに、図13の破線で示されているように、複数のリード20が積層された製品領域Rが得られるように、最上のスペーサ40から最下のスペーサ40まで積層体6を厚み方向に切断する。
【0106】
これにより、図14に示すように、積層体6から各リードフレーム5の外枠14に対応する領域が除去され、積層体6の複数の製品領域Rが個々の積層部材1aに分割される。積層部材1aでは、リード20の両側の端子部22の各先端面が樹脂層50の両側面から露出した状態となる。
【0107】
図14のように、図13の積層体6を切断した直後の積層部材1aでは、各リード20の延在方向が水平方向を向いて配置されている。
【0108】
その後に、図14の部分拡大断面図に示すように、樹脂層50から露出するリード20の両端側の端子部22の先端面に、無電解めっきによりコンタクト層21を形成する。コンタクト層21としては、下から順に、ニッケル(Ni)層21a/パラジウム(Pd)層21b/金(Au)層21cが形成される。
【0109】
例えば、ニッケル層20aの厚みは3μm〜6μmであり、パラジウム層20bの厚みは0.1μmであり、金層20cの厚みは0.05μmである。
【0110】
これにより、図15に示すように、個々のバッキング部材1が得られる。図15の斜視図では、バッキング部材1のリード20の延在方向を垂直方向に向けて配置している。
【0111】
図15に示すように、実施形態のバッキング部材1は、樹脂層50と、樹脂層50の中に埋設された複数のリード20とを備えている。図15の例では、樹脂層50は直方体で形成されているが、円柱などの各種の立体形状で形成してもよい。
【0112】
樹脂層50内にはフィラー52が含有されている。例えば、樹脂層50はエポキシ樹脂などから形成され、フィラー52はタングステン、アルミナ又は中空ガラス球などから形成される。
【0113】
各リード20は、樹脂層50の上面から下面まで貫通して配置されている。リード20は、中央部に配置された配線部24と、配線部24の両端に繋がる端子部22とを備えている。
【0114】
図16(a)は図15のリード20を正面方向D1からみた部分拡大断面図、図16(b)は図15のリード20を横方向D2からみた部分拡大断面図である。
【0115】
図16(a)に示すように、リード20の配線部24の幅W1は端子部22の幅W2より小さく設定されている。また、図16(b)に示すように、リード20の配線部24の厚みT1は端子部22の厚みT2より小さく設定されている。
【0116】
このようにして、リード20の配線部24の断面積が端子部22の断面積よりも小さく設定されている。
【0117】
前述した図5で説明したように、リード20の配線部24の断面形状は四角状で形成されている。また、端子部22の断面形状は両側面の中央部に突起が配置された六角状に形成される。
【0118】
図15に示すように、リード20の上側の端子部22の側面の全体が樹脂層50に埋め込まれている。リード20の上側の端子部22の先端面が樹脂層50の上面から露出している。そして、リード20の上側の端子部22の先端面と樹脂層50の上面とが面一になっている。
【0119】
また同様に、リード20の下側の端子部22の側面の全体が樹脂層50に埋め込まれている。リード20の下側の端子部22の先端面が樹脂層50の下面から露出している。そして、リード20の下側の端子部22の先端面と樹脂層50の下面とが面一になっている。
【0120】
また、前述した図6で説明したように、リード20の配線部24は、端子部22の断面内の厚み方向の下部に繋がっている。さらに、前述した図6図16(b)を加えて参照すると、配線部24の厚み方向の下面S1と端子部22の厚み方向の下面S2とが面一になっている。
【0121】
このような連結構造で、配線部24の幅及び厚みが端子部22の幅及び厚みよりも小さくなっている。
【0122】
本実施形態のバッキング部材1では、樹脂層50にフィラー52を含有させることにより、超音波の散乱吸収を図ることができる。リード20の配線部24の断面積が小さくなった分だけ樹脂層50の占有体積を大きくできるため、バッキング部材1の機能を向上させることができる。
【0123】
また、前述した図12の工程で説明したように、リードフレーム5のリード20が積層された製品領域Rにフィラー52を含む樹脂50aを注入する際に、リード20間の水平方向及び垂直方向の間隔が十分に確保されている。これより、多数のリード20の間隔にフィラー52を安定して分散させることができる。
【0124】
このように、リード20の配線部24の幅方向WX及び奥行き方向DXの各間隔がフィラー52の平均粒径よりも広く設定されている。
【0125】
これにより、バッキング部材1の概ね全体にわたってフィラーを分散させることができるため、十分な超音波の散乱吸収の機能を得ることができる。
【0126】
また、リード20の端子部22の断面積は十分な大きさを有するため、圧電素子及び配線基板と信頼性よく電気的に接続することができる。
【0127】
また、図15のバッキング部材1では、前述した図16(b)で示したように、複数のリード20が各々の配線部24及び端子部22の厚み方向の下面S1,S2が同一方向を向いて積層されている。
【0128】
このようなリード20の積層構造とすることにより、複数のリード20の間の領域に最も均一にフィラー52を分散させることができる。
【0129】
あるいは、上記したリード20の積層構造以外の構造を採用してもよい。例えば、図15のリード20の奥行き方向DXで、複数のリード20が、各々の配線部24及び端子部22の厚み方向の下面S1,S2(図16(b))が対向するように積層されてもよい。
【0130】
この態様では、前述した図8の工程でリードフレーム5を積層する際に、リードフレーム5間でリード20の配線部24及び端子部22の厚み方向の下面S1,S2が対向するように積層すればよい。
【0131】
このように、本実施形態のリード20を採用することにより、リード20の積層構造によらず、隣接するリード20の間にフィラー52を配置できるため、従来技術と比較して超音波の散乱吸収の性能を向上させることができる。
【0132】
なお、図15の例では、バッキング部材1の上面と下面とは平行な水平面となっている。この他に、コンベックス型の超音波探触子を製造する場合は、圧電素子が配置される一方の面(上面)を凸状曲面にしてもよい。
【0133】
この場合は、各リード20の端子部22の先端面と樹脂層50の一方の面とが同じ凸状曲面になるように研削加工される。
【0134】
また、図15の例では、各リード20の幅方向WXの配列は、ストレート形状で平行に配置されているが、幅方向WXで各リード20を扇状に形成して配置ピッチを変換するようにしてもよい。前述した図7のリードフレーム5を形成する際に、各リード20を扇状に形成すればよく、扇状以外にも各種のリードパターンを容易に形成することができる。
【0135】
また同様に、図15の例では、各リード20の奥行き方向DXの配列は、ストレート形状で平行に配置されているが、奥行き方向DXで配置ピッチを変換するようにしてもよい
この場合は、前述した図9の積層体6を加圧する際に、下側支持板30及び上側支持板32の側面形状が一端側と他端側で厚みが異なるテーパー状にすることにより、奥行き方向DXの一端側と他端側でリード20の配置ピッチを変えることができる。
【0136】
また、図15の例では、リード20の配線部24の幅及び厚みが両側の端子部22の両者の幅及び厚みよりも小さくなるように設定している。この他に、バッキング部材の各種の接続の態様に合わせて、リード20の配線部24の幅及び厚みが両側の端子部22のうちの少なくとも一方の幅及び厚みよりも小さく設定されていればよい。
【0137】
例えば、リード20の配線部24の幅及び厚みを上側の端子部22の幅及び厚みより小さく設定し、下側の端子部22の幅及び厚みは配線部24と同じに設定してもよい。
【0138】
次に、本実施形態のバッキング部材1を使用する超音波探触子について説明する。
【0139】
図17に示すように、実施形態の超音波探触子2は、上記した図15のバッキング部材1と、その上に配置された圧電素子60と、圧電素子60の上に配置された音響整合層62と有する。また、音響整合層62の上に不図示の音響レンズが搭載される。
【0140】
圧電素子60は多数に分割されて2次元的に配置されている。圧電素子60は超音波振動子であり、圧電素子60によって超音波の送受信が行われる。
【0141】
圧電素子60の上に配置された音響整合層62は、圧電素子60から効率よく被写体内に超音波を入射させるために形成される。音響整合層62は、分割された各圧電素子60に対応するように多数に分割されて2次元的に配置されている。
【0142】
また、圧電素子60の下に配置されたバッキング部材1は、後方への超音波の伝搬を吸収し、余分な振動を抑制して超音波のパルス幅を短くして画像の距離分解能を向上させる機能がある。
【0143】
さらに、超音波探触子2の下に配線基板70が配置されている。配線基板70にドライバが搭載されていてもよいし、あるいは、配線基板70は単なる中継基板であってもよい。
【0144】
図17図18の断面図を加えて参照すると、前述したバッキング部材1の各リード20の上側の端子部22の先端面が圧電素子60の下面に電気的に接続される。また、各リード20の下側の端子部22の先端面が配線基板70の接続電極72に電気的に接続される。
【0145】
配線基板70からバッキング部材1のリード20を介して圧電素子60に電圧が供給され、圧電素子60から被写体に超音波が送信される。
【0146】
前述したように、本実施形態のバッキング部材1は、圧電素子60から後方に伝搬する超音波を十分に吸収することができるため、ノイズの少ない超音波探触子を実現することができる。
【0147】
また、バッキング部材1のリード20の端子部22は十分な接続面積を有するため、圧電素子60及び配線基板70の接続電極72に信頼性よく電気的に接続することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…バッキング部材、1a…積層部材、2…超音波探触子、5…リードフレーム、7…貫通穴、5x,30x,32x,40x…ガイド穴、6…積層体、10…金属板、12a…第1レジスト層、12b…第2レジスト層、14…外枠、20…リード、22…端子部、24…配線部、30…下側支持板、32…上側支持板、32a,40a…開口部、34…高さ調整ストッパ、40…スペーサ、50…樹脂層、52…フィラー、60…圧電素子、62…音響整合層、70…配線基板、72…接続電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18