特許第6681796号(P6681796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681796シリル化剤溶液、表面処理方法、及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681796
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】シリル化剤溶液、表面処理方法、及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200406BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H01L21/304 647A
   H01L21/30 563
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-122762(P2016-122762)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-228612(P2017-228612A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】森 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 明
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−138178(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化剤及び溶剤、並びに、含窒素芳香族5員環を含みケイ素原子を含まない化合物及び含窒素芳香族5員環骨格を含む縮合多環を含みケイ素原子を含まない化合物から成る群より選択される一以上の化合物を含有するシリル化剤溶液であって、
前記溶剤は、引火点が50℃以上であり、直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステル、炭化水素系溶剤及びグリコールアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである、シリル化剤溶液。
【請求項2】
前記溶剤は、脂肪族カルボン酸アルキルエステルである、請求項1記載のシリル化剤溶液。
【請求項3】
前記溶剤の引火点(P0[℃])から、該溶剤のヘキサメチルジシラザン2質量%溶液とした場合における該溶液の引火点(P1[℃])を差し引いた値(〔P0〕−〔P1〕)[℃]が30℃以下である、請求項1又は2記載のシリル化剤溶液。
【請求項4】
前記溶剤の引火点(P0[℃])から、該溶剤のトリメチルシリルジメチルアミン2質量%溶液とした場合における該溶液の引火点(P2[℃])を差し引いた値(〔P0〕−〔P2〕)[℃]が60℃以下である、請求項1〜3の何れか1項記載のシリル化剤溶液。
【請求項5】
前記溶剤は、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アジピン酸ジメチル、n−オクタン酸メチル、デカン酸メチル、酢酸n−オクチル、n−テトラデカン及びジエチレングリコールジエチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1〜4の何れか1項記載のシリル化剤溶液。
【請求項6】
前記シリル化剤は、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される、請求項1〜5の何れか1項記載のシリル化剤溶液。
【化1】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は有機基を表す。R、R及びRの炭素数の合計は1以上である。Rは、水素原子、又は飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基を表す。Rは、水素原子、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基、又は非芳香族複素環基を表す。R及びRは、互いに結合して窒素原子を有する非芳香族複素環を形成してもよい。)
【化2】
(式中、R、R及びRは、上記一般式(3)と同様である。Rは、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、又はジメチルシリル基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。R、R及びRの炭素原子数の合計は1以上である。)
【請求項7】
前記シリル化剤溶液の引火点が、前記シリル化剤の引火点より45℃以上高い、請求項1〜6の何れか1項記載のシリル化剤溶液。
【請求項8】
基板表面に請求項1〜7の何れか1項記載のシリル化剤溶液を曝露させ、前記基板表面を疎水化することを含む、表面処理方法。
【請求項9】
基板を含む半導体デバイスの製造方法であって、
前記基板の表面に請求項8記載の表面処理方法による疎水化を行うことを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化剤溶液、表面処理方法及び半導体デバイスの製造方法に関し、特に、種々の基板等の被処理体の表面処理に好適なシリル化剤溶液、表面処理方法及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の基板について、基板表面と、基板表面に接触させる材料との親和性等の性質を調整する目的等で、様々な改質剤による基板表面の改質が行われている。このような基板表面の改質では、取り扱いが容易であることや、改質効果が高いことから、改質の目的に応じて、種々の化学構造のシリル化剤が使用されている。
【0003】
また、近年、半導体デバイスの高集積化、微細化の傾向が高まり、パターンの微細化・高アスペクト比化が進んでいる。しかしながらその一方で、いわゆるパターン倒れの問題が生じるようになっている。
このパターン倒れは、パターン形成後の純水等によるリンス処理において、リンス液が乾燥する際、そのリンス液の表面張力により発生することが分かっている。
従って、パターンの表面を疎水化し、リンス液の接触角を高めることができれば、リンス後の乾燥過程でパターン間に働く力を低減することができ、パターン倒れを防止することができる。
そこで、シリル化剤溶液(シリル化剤と溶剤との混合物)を暴露させ、基板表面を撥水化ないし疎水化する表面処理が行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来、シリル化剤溶液としては、トリメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリル化剤とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等との混合液が使用されている。
しかしながら、シリル化剤が非常に引火しやすいため(TMSDMAの引火点−19℃、HMDSの引火点8℃)、シリル化剤を含有する溶液としても引火点が低くなり、引火の危険性が高く、取扱いに制約がかかる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撥水化ないし疎水化能を損なうことなく、引火性が低減されたシリル化剤溶液、該シリル化剤溶液を用いた表面処理方法及び半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、シリル化剤を含有する溶液の高引火点化に関し、溶剤種を検討した結果、溶剤の引火点に対し、引火点がかなり低いシリル化剤を混合してシリル化剤溶液とすると該溶液の引火点が低下する度合が溶剤の種類により、意外にも差があることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下の通りである。
【0008】
本発明の第1の態様は、
シリル化剤及び溶剤を含有するシリル化剤溶液であって、
上記溶剤が、引火点が50℃以上である、直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステル、炭化水素系溶剤及びグリコールアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである、シリル化剤溶液である。
【0009】
本発明の第2の態様は、
基板表面に第1の態様のシリル化剤溶液を曝露させ、上記基板表面を疎水化することを含む、表面処理方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、
基板を含む半導体デバイスの製造方法であって、
上記基板の表面に第2の態様の表面処理方法による疎水化を行うことを含む、製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の態様に係るシリル化剤溶液は、撥水化ないし疎水化能を損なうことなく、引火性が低い。
本発明によれば、引火性が低減されたシリル化剤溶液を用いた表面処理方法及び半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
<シリル化剤溶液>
第1の態様に係るシリル化剤溶液は、シリル化剤及び溶剤を含有するシリル化剤溶液であって、
上記溶剤が、引火点が50℃以上であり、直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステル、炭化水素系溶剤及びグリコールアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0014】
[溶剤]
上記溶剤が、引火点が50℃以上であり、直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステル、炭化水素系溶剤及びグリコールアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであることにより、引火性が低く、塗布等の暴露により被処理体の撥水化ないし疎水化に好適である。
上記直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステルは鎖中に酸素原子(エーテル結合)を含んでいてもよい。
上記溶剤は、シリル化剤と反応する官能基(例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基など)を持たない溶剤が好ましい。
【0015】
得られるシリル化剤溶液の高引火点化に優れる観点から、上記溶剤の引火点としては50℃以上であり、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。
上記溶剤の引火点の上限値としては高い方が好ましく、特に制限はないが、180℃以下とすることができ、150℃以下であってもよく、120℃以下であってもよく、100℃以下であってもよい。
上記溶剤としては、得られるシリル化剤溶液の高引火点化に優れる観点から、上記溶剤の引火点(P0[℃])から、該溶剤のヘキサメチルジシラザン(HMDS)2質量%溶液とした場合における該溶液の引火点(P1[℃])を差し引いた値(〔P0〕−〔P1〕)[℃]が30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることが更に好ましい。
また、上記溶剤としては、得られるシリル化剤溶液の高引火点化に優れる観点から、上記溶剤の引火点(P0[℃])から、該溶剤のトリメチルシリルジメチルアミン(TMSDMA)2質量%溶液とした場合における該溶液の引火点(P2[℃])を差し引いた値(〔P0〕−〔P2〕)[℃]が60℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが更に好ましい。
また、上記溶剤の炭素原子数としては特に制限はないが、5〜20であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、7〜20であることが更に好ましく、8〜15であることが特に好ましく、8〜14であることが最も好ましい。
【0016】
引火点が50℃以上である直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステルである上記溶剤としては、鎖中に酸素原子(エーテル結合)を含んでいることが好ましく、エステルのアルコール由来部分(アルコキシ部分)に酸素原子を含んでいることがより好ましい。
引火点が50℃以上である直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステルである上記溶剤としては、引火点が50℃以上の酢酸アルキルエステル、引火点が50℃以上のプロピオン酸アルキルエステル、引火点が50℃以上の酪酸アルキルエステル、引火点が50℃以上の吉草酸アルキルエステル、引火点が50℃以上のヘキサン酸アルキルエステル、引火点が50℃以上のヘプタン酸アルキルエステル、引火点が50℃以上のオクタン酸アルキルエステル、引火点が50℃以上のノナン酸アルキルエステル、引火点が50℃以上のデカン酸アルキルエステル、引火点が50℃以上の2以上のエステル結合(−C(=O)−O−)を有する多価カルボン酸エステル等が挙げられる。
上記酢酸アルキルエステルとしては、炭素原子数7〜20(より好ましくは炭素原子数8〜15)の鎖中に酸素原子を含んでいてもよい酢酸エステルが好ましい。鎖中に酸素原子を含む酢酸エステルとしては、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等が挙げられる。
酢酸アルキルエステルとしては、酢酸n−ヘプチル、酢酸n−オクチル、酢酸n−オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ウンデシニル等が挙げられる。
【0017】
上記プロピオン酸エステルとしては、炭素原子数6〜20(より好ましくは炭素原子数7〜15)の鎖中に酸素原子を含むプロピオン酸エステルであることが好ましく、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネートプロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。
上記酪酸アルキルエステルとしては、炭素原子数6〜20(より好ましくは炭素原子数7〜15)の酪酸アルキルエステルが好ましく、酪酸エチル、酪酸n−ブチル等が挙げられる。
上記吉草酸アルキルエステルとしては、炭素原子数8〜20(より好ましくは炭素原子数9〜15)の吉草酸アルキルエステルが好ましく、吉草酸プロピル等が挙げられる。
上記ヘキサン酸アルキルエステルとしては、炭素原子数8〜20(より好ましくは炭素原子数9〜15)のヘキサン酸アルキルエステルが好ましく、ヘキサン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0018】
上記ヘプタン酸アルキルエステルとしては、炭素原子数8〜20(より好ましくは炭素原子数9〜15)のヘプタン酸アルキルエステルが好ましく、ヘプタン酸エチル等が挙げられる。
上記オクタン酸アルキルエステルとしては、炭素原子数9〜20(より好ましくは炭素原子数10〜15)のオクタン酸アルキルエステルが好ましく、n−オクタン酸メチル、n−オクタン酸エチル等が挙げられる。
上記ノナン酸アルキルエステルとしては、炭素原子数10〜20(より好ましくは炭素原子数11〜15)のノナン酸アルキルエステルが好ましく、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル等が挙げられる。
上記デカン酸アルキルエステルとしては、炭素原子数11〜20(より好ましくは炭素原子数12〜15)のデカン酸アルキルエステルが好ましく、デカン酸メチル、デカン酸エチル、デカン酸プロピル、デカン酸ブチル等が挙げられる。
【0019】
上記2以上のエステル結合を有する多価カルボン酸エステルとしては、炭素原子数7〜20(より好ましくは炭素原子数8〜15)の多価カルボン酸エステルが好ましく、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル等のアジピン酸エステル;セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル;エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート;等が挙げられる。
【0020】
引火点が50℃以上である炭化水素系溶剤である上記溶剤としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素系溶剤であることが好ましく、n−テトラデカン、n−ドデカン、n−ウンデカン、n−トリデカン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン等の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素類が挙げられる。
【0021】
引火点が50℃以上であるグリコールアルキルエーテルである上記溶剤としては、炭素原子数5〜20(より好ましくは炭素原子数6〜15)の直鎖状又は分岐鎖状のグリコールアルキルエーテルが好ましく、
エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のモノアルキレングリコールジアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の他のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;等が挙げられる。
【0022】
上記溶剤は、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アジピン酸ジメチル、n−オクタン酸メチル、デカン酸メチル、酢酸n−オクチル、n−テトラデカン及びジエチレングリコールジエチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記溶剤は、鎖中に酸素原子を含んでいてもよい直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族カルボン酸アルキルエステルであることが好ましく、鎖中に酸素原子を含んでいてもよい分岐鎖状の脂肪族カルボン酸アルキルエステルであることがより好ましく、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、アジピン酸ジメチル、n−オクタン酸メチル、デカン酸メチル、酢酸n−オクチル及びn−テトラデカンからなる群より選択される少なくとも1つであることが特に好ましい。
溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
[シリル化剤]
シリル化剤の種類は、被処理体の表面の性質を疎水化することができるものであれば、特に限定されず、従来から、種々の材料の撥水化ないし疎水化に使用されているシリル化剤から適宜選択して使用される。本明細書において、「疎水化」とは、撥水化を含む概念である。以下、本発明において用いることができるシリル化剤について説明する。
【0024】
被処理体の表面の疎水化に使用されるシリル化剤は、被処理体の表面に対する、所望する疎水化効果が得られるものであれば特に限定されず、従来から、種々の材料の疎水化剤として使用されているシリル化剤から適宜選択して使用することができる。
【0025】
シリル化剤溶液に含まれるシリル化剤は、例えば、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物であってよい。
(RSi(H)4−a−b (1)
(式中、Rは、それぞれ互いに独立して、一部又は全ての水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1〜18の1価の炭化水素基を含む1価の有機基を表し、Xは、それぞれ互いに独立して、ケイ素原子と結合する原子が窒素である1価の官能基を表し、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数であり、aとbの合計は1〜3である。)
【0026】
好適なシリル化剤としては、以下の一般式(3)〜(10)で表されるシリル化剤や、環状シラザン化合物が挙げられる。以下、一般式(3)〜(10)で表されるシリル化剤と、環状シラザン化合物とについて順に説明する。
【0027】
(一般式(3)で表されるシリル化剤)
【化1】
【0028】
一般式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は有機基を表す。R、R及びRの炭素数の合計は1以上である。Rは、水素原子、又は飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基を表す。Rは、水素原子、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基、又は非芳香族複素環基を表す。R及びRは、互いに結合して窒素原子を有する非芳香族複素環を形成してもよい。
【0029】
、R及びRがハロゲン原子である場合、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が好ましい。
【0030】
、R及びRが有機基である場合に、有機基は、炭素原子の他に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。有機基が含んでいてもよいヘテロ原子の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、N、O、及びSが好ましい。R、R及びRが有機基である場合に、有機基に含まれる、炭素原子の数と、ヘテロ原子の数との合計は、R、R及びRの炭素数の合計が1以上である限り特に限定されない。R、R及びRが有機基である場合に、有機基に含まれる、炭素原子の数と、ヘテロ原子の数との合計は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜3が特に好ましい。R、R及びRが有機基である場合に、有機基としては、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、アラルキル基、及び芳香族炭化水素基が好ましい。飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−ブテニル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基等が挙げられる。これらの鎖状炭化水素基の中では、メチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、及びアリル基がより好ましく、メチル基、エチル基、及びビニル基が特に好ましい。アラルキル基の好適な例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、α−ナフチルメチル基、及びβ−ナフチルメチル基が挙げられる。芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、α−ナフチル基、及びβ−ナフチル基が挙げられる。
【0031】
が飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である場合に、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基の炭素数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rが飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である場合に、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜3が特に好ましい。Rが飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である場合の、好適な例は、R、R及びRについて、好適な基として挙げられる飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基と同様である。
【0032】
が飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である場合に、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基は、Rと同様である。Rが飽和又は不飽和の環状炭化水素基である場合に、飽和又は不飽和の環状炭化水素基の炭素数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rが飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基である場合に、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基の炭素数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましく、5又は6が特に好ましい。Rが飽和又は環状炭化水素基である場合の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及びシクロオクチル基が挙げられる。Rが非芳香族複素環基である場合に、非芳香族複素環基に含まれるヘテロ原子は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rが非芳香族複素環基である場合に、非芳香族複素環基に含まれる好適なヘテロ原子としては、N、O、及びSが挙げられる。Rが非芳香族複素環基である場合に、非芳香族複素環基に含まれる、炭素原子の数と、ヘテロ原子の数との合計は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rが非芳香族複素環基である場合に、非芳香族複素環基に含まれる、炭素原子の数と、ヘテロ原子の数との合計は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましく、5又は6が特に好ましい。Rが非芳香族複素環基である場合の、好適な例としては、ピロリジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、モルホリン−1−イル基、及びチオモルホリン−1−イル基が挙げられる。
【0033】
及びRが互いに結合して形成される非芳香族複素環基に含まれる原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。R及びRが互いに結合して形成される非芳香族複素環基は、3員環から10員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。R及びRが互いに結合して形成される非芳香族複素環基に含まれる、炭素原子の他のヘテロ原子の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。R及びRが互いに結合して形成される非芳香族複素環基に含まれる、好適なヘテロ原子としては、N、O、及びSが挙げられる。R及びRが互いに結合して形成される非芳香族複素環の好適な例としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、及びチオモルホリンが挙げられる。
【0034】
一般式(3)で表されるシリル化剤の具体例としては、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルシラン、N,N−ジメチルアミノモノメチルシラン、N,N−ジエチルアミノトリメチルシラン、t−ブチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、トリメチルシリルアセタミド、N,N−ジメチルアミノジメチルビニルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルプロピルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルオクチルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルフェニルエチルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチルフェニルシラン、N,N−ジメチルアミノジメチル−t−ブチルシラン、N,N−ジメチルアミノトリエチルシラン、及びトリメチルシラナミン等が挙げられる。
【0035】
(一般式(4)で表されるシリル化剤)
【化2】
【0036】
一般式(4)中、R、R及びRは、上記一般式(3)と同様である。Rは、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、又はジメチルシリル基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。R、R及びRの炭素数の合計は1以上である。
【0037】
、R、及びRが有機基である場合、有機基は、R、R及びRが有機基である場合の有機基と同様である。
【0038】
一般式(4)で表されるシリル化剤の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン、N−メチルヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルジシラザン、1,3−ジ−n−オクチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3,−テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルシリル)アミン、トリス(トリメチルシリル)アミン、1−エチル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、1−ビニル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、1−プロピル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、1−フェニルエチル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、1−tert−ブチル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、1−フェニル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、及び1,1,1−トリメチル−3,3,3−トリエチルジシラザン等が挙げられる。
【0039】
(一般式(5)で表されるシリル化剤)
【化3】
【0040】
一般式(5)中、R、R及びRは、上記一般式(3)と同様である。Yは、O、CHR11、CHOR11、CR1111、又はNR12を表す。R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、アルコキシ基、フェニル基、フェニルエチル基、又はアセチル基を表す。R12は、水素原子、アルキル基、又はトリアルキルシリル基を表す。
【0041】
10及びR11が、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基であるか、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基である場合、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基と、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基とは、一般式(3)におけるRが、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基であるか、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基である場合と同様である。
【0042】
10及びR11が、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシキ、又はアルコキシ基である場合、これらの基に含まれるアルキル基の炭素数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。これらの基に含まれるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜3が特に好ましい。これらの基に含まれるアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、エチル基、及びn−プロピル基がより好ましく、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
【0043】
12が、アルキル基又はトリアルキルシリル基である場合、アルキル基又はトリアルキルシリル基に含まれるアルキル基の炭素数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルキル基又はトリアルキルシリル基に含まれるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜3が特に好ましい。アルキル基又はトリアルキルシリル基に含まれるアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、エチル基、及びn−プロピル基がより好ましく、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
【0044】
一般式(5)で表されるシリル化剤の具体例としては、トリメチルシリルアセテート、ジメチルシリルアセテート、モノメチルシリルアセテート、トリメチルシリルプロピオネート、トリメチルシリルブチレート、及びトリメチルシリル−2−ブテノエート等が挙げられる。
【0045】
(一般式(6)で表されるシリル化剤)
【化4】
【0046】
一般式(6)中、R、R及びRは、上記一般式(3)と同様である。Rは、上記一般式(4)と同様である。R13は、水素原子、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、トリフルオロメチル基、又はトリアルキルシリルアミノ基を表す。
【0047】
13が、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である場合、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基は、一般式(3)におけるRが、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である場合と同様である。
【0048】
13がトリアルキルシリルアミノ基である場合に、トリアルキルシリルアミノ基に含まれるアルキル基は、一般式(5)におけるR10及びR11が、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシキ、又はアルコキシ基である場合に、これらの基に含まれるアルキル基と同様である。
【0049】
一般式(6)で表されるシリル化剤の具体例としては、N,N’−ビス(トリメチルシリル)尿素、N−トリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、及びN,N−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド等が挙げられる。
【0050】
(一般式(7)で表されるシリル化剤)
【化5】
【0051】
一般式(7)中、R14はトリアルキルシリル基を表す。R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。
【0052】
14がトリアルキルシリル基である場合に、トリアルキルシリル基に含まれるアルキル基は、一般式(5)におけるR10及びR11が、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、又はアルコキシ基である場合に、これらの基に含まれるアルキル基と同様である。
【0053】
15及びR16が有機基である場合に、有機基は、一般式(3)におけるR、R及びRが有機基である場合の有機基と同様である。
【0054】
一般式(7)で表されるシリル化剤の具体例としては、2−トリメチルシロキシペンタン−2−エン−4−オン等が挙げられる。
【0055】
(一般式(8)で表されるシリル化剤)
【化6】
【0056】
一般式(8)中、R、R及びRは、上記一般式(3)と同様である。R17は、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基、又は非芳香族複素環基を表す。R18は、−SiRを表す。pは、0又は1である。
【0057】
pが0である場合、R17としての飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基、飽和又は不飽和の非芳香族環状炭化水素基、又は非芳香族複素環基は、一般式(3)におけるRと同様である。pが1である場合、R17としての有機基は、一般式(3)におけるR、R及びRが有機基である場合の有機基から、1つの水素原子が除かれた2価基である。
【0058】
一般式(8)で表されるシリル化剤の具体例としては、1,2−ビス(ジメチルクロロシリル)エタン、及びt−ブチルジメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0059】
(一般式(9)で表されるシリル化剤)
19Si[N(CH4−q・・・(9)
【0060】
一般式(9)中、R19は、それぞれ独立に、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜18の鎖状炭化水素基である。qは1又は2である。
【0061】
一般式(9)において、R19の炭素数は、2〜18が好ましく、8〜18がより好ましい。
【0062】
19がフッ素原子で置換されていない、鎖状飽和炭化水素基である場合の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基等が挙げられる。
【0063】
19がフッ素原子で置換されていない、鎖状不飽和炭化水素基である場合の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、1−エチルビニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、4−ペンテニル基、1,3−ペンタジエニル基、2,4−ペンタジエニル基、3−メチル−1−ブテニル基、5−ヘキセニル基、2,4−ヘキサジエニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基、8−ノネニル基、9−デセニル基、10−ウンデセニル基、11−ドデセニル基、12−トリデセニル基、13−テトラデセニル基、14−ペンタデセニル基、15−ヘキサデセニル基、16−ヘプタデセニル基、17−オクタデセニル基、エチニル基、プロパルギル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、6−ヘプチニル基、7−オクチニル基、8−ノニニル基、9−デシニル基、10−ウンデシニル基、11−ドデシニル基、12−トリデシニル基、13−テトラデシニル基、14−ペンタデシニル基、15−ヘキサデシニル基、16−ヘプタデシニル基、及び17−オクタデシニル基等が挙げられる。
【0064】
19がフッ素原子で置換されている、鎖状炭化水素基である場合、フッ素原子の置換数、及び置換位置は、特に限定されない。鎖状炭化水素基におけるフッ素原子の置換数は、鎖状炭化水素基が有する水素原子の数の50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0065】
19としては、優れた疎水化の効果を得やすいことから、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜18の直鎖炭化水素基が好ましい。また、R19としては、シリル化剤の保存安定性の点で、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜18の直鎖飽和炭化水素基(炭素数1〜18のアルキル基)がより好ましい。
【0066】
一般式(9)においてqは、1又は2であり、1が好ましい。
【0067】
(一般式(10)で表されるシリル化剤)
20[N(CH3−rSi−R22−SiR21[N(CH3−s・・・(10)
【0068】
一般式(10)中、R20及びR21はそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。R22は炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖アルキレン基である。r及びsはそれぞれ独立に0〜2の整数である。
【0069】
20及びR21は、それぞれ、同一であってもよく異なっていてもよい。R20及びR21としては、水素原子、又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖アルキル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0070】
20及びR21が、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。
【0071】
一般式(10)で表される化合物は、R22として炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を含む。R22である直鎖又は分岐鎖アルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、2〜8がより好ましい。なお、直鎖アルキレン基とは、メチレン基、又はα,ω−直鎖アルキレン基であり、分岐鎖アルキレン基は、メチレン基、及びα,ω−直鎖アルキレン基以外のアルキレン基である。R22は、直鎖アルキレン基であるのが好ましい。
【0072】
22が、炭素数1〜16の直鎖又は分岐鎖アルキレン基である場合の例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、2−エチルヘキサン−1,6−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、及びヘキサデカン−1,16−ジイル基等が挙げられる。
【0073】
一般式(10)で表される化合物において、s及びrはそれぞれ独立に0〜2の整数である。式(10)で表される化合物について、合成及び入手が容易であることから、s及びrは1又は2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
【0074】
(環状シラザン化合物)
シリル化剤としては、環状シラザン化合物も好ましい。以下、環状シラザン化合物について説明する。
【0075】
環状シラザン化合物としては、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン、2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサン等の環状ジシラザン化合物;2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシラザン等の環状トリシラザン化合物;2,2,4,4,6,6,8,8−オクタメチルシクロテトラシラザン等の環状テトラシラザン化合物;等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、環状ジシラザン化合物が好ましく、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタン及び2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサンがより好ましい。環状ジシラザン化合物としては、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロペンタンのような5員環構造のものや、2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラ−1−アザシクロヘキサンのような6員環構造のものがあるが、5員環構造であることがより好ましい。
シリル化剤としては、上記一般式(3)又は下記一般式(4)で表されるシリル化剤であることが好ましい。
以上説明したシリル化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
シリル化剤溶液に含まれるシリル化剤の含有量(複数種のシリル化剤を含有させる場合にはその合計量)としては0.1質量%以上であることが実用上好ましく、0.1〜30質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が特に好ましく、1〜15質量%が最も好ましい。
【0078】
[その他の成分]
シリル化剤溶液は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上述したシリル化剤及び溶剤以外のその他の成分を含有するものであってもよい。
その他の成分としては特に限定されないが、例えば、ケイ素原子を含まない含窒素複素環化合物(単に、含窒素複素環化合物、複素環化合物とも記す。)等が挙げられる。
含窒素複素環化合物は、シリル化剤によるシリル化反応が含窒素複素環化合物の触媒作用によって促進され、被処理体の表面を高度に疎水化することができる。
複素環化合物は、ケイ素原子を含まず、且つ環構造中に窒素原子を含む化合物であれば特に限定されない。複素環化合物は、環中に、酸素原子、硫黄原子等の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
複素環化合物は、芳香性を有する含窒素複素環を含む化合物であることが好ましい。複素環化合物が、芳香性を有する含窒素複素環を含むことにより、表面処理剤で処理された被処理体の表面の疎水性を大きくすることができる。
【0079】
複素環化合物は、2以上の複数の環が単結合、又は2価以上の多価の連結基により結合した化合物でもよい。この場合、連結基により結合される2以上の複数の環は、少なくとも一つの含窒素複素環を含んでいればよい。
多価の連結基の中では、環同士の立体障害が小さい点から2価の連結基が好ましい。2価の連結基の具体例としては、炭素原子数1〜6のアルキレン基、−CO−、−CS−、−O−、−S−、−NH−、−N=N−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−S−、−CS−O−、−CS−S−、−CO−NH−CO−、−NH−CO−NH−、−SO−、及び−SO−等が挙げられる。
2以上の複数の環が多価の連結基により結合した化合物に含まれる環の数は、均一な表面処理剤を調製しやすい点から、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2が最も好ましい。なお、例えばナフタレン環のような縮合環については、環の数を2とする。
【0080】
複素環化合物は、2以上の複数の環が縮合した含窒素複素環化合物であってもよい。この場合、縮合環を構成する環のうちの少なくとも一つの環が含窒素複素環であればよい。
2以上の複数の環が縮合した含窒素複素環化合物に含まれる環の数は、均一なシリル化剤溶液を調製しやすい点から、4以下が好ましく、3以下が好ましく、2が最も好ましい。
【0081】
シリル化剤溶液を用いる表面処理の効果が良好である点から、複素環化合物は、含窒素5員環、又は含窒素5員環骨格を含む縮合多環を含むのが好ましい。
【0082】
複素環化合物の好適な例としては、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、インドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ピロリジン、及びピペリジンが挙げられる。
これらの中では、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、インドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、及びベンゾチアジアゾールが好ましく、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、及びピラゾールがより好ましい。
置換基を有する上記の複素環化合物も好ましく用いられる。
【0083】
複素環化合物が有してもよい置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を含むモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を含むジアルキルアミノ基、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0084】
置換基としてのアルキル基の炭素原子数は、1〜6であり、1〜4が好ましく、1又は2がより好ましい。炭素原子数1〜6のアルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基等が挙げられる。
これらの中では、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0085】
置換基としてのアルコキシ基の炭素原子数は、1〜6であり、1〜4が好ましく、1又は2がより好ましい。炭素原子数1〜6のアルコキシ基の具体例は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、及びn−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
これらの中では、メトキシ基及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0086】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子が好ましく、塩素原子、及び臭素原子がより好ましい。
【0087】
炭素原子数1〜6のアルキル基を含むモノアルキルアミノ基、及び炭素原子数1〜6のアルキル基を含むジアルキルアミノ基に含まれるアルキル基の具体例は、上記の置換基としてのアルキル基の具体例と同様である。
炭素原子数1〜6のアルキル基を含むモノアルキルアミノ基としては、エチルアミノ基、及びメチルアミノ基が好ましく、メチルアミノ基がより好ましい。
炭素原子数1〜6のアルキル基を含むジアルキルアミノ基としては、ジエチルアミノ基、及びジメチルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基がより好ましい。
【0088】
複素環化合物の特に好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
【化7】
【0089】
シリル化剤溶液中の複素環化合物の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。表面処理剤中の複素環化合物の添加量は、上記シリル化剤1モルに対して、0.1〜20モルが好ましく、0.2〜10モルがより好ましく、0.5〜5モルが最も好ましい。
複素環化合物の添加量が上記の範囲内であると、シリル化反応が促進され、被処理体の表面の疎水性を向上させやすい。
【0090】
上記シリル化剤溶液の引火点としては、上記シリル化剤の引火点(シリル化剤を複数含有させる場合には、上記複数のシリル化剤の引火点の平均値)より45℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましく、55℃以上高いことが更に好ましい。
例えば、HMDS2質量%溶液とした場合の上記シリル化剤溶液の引火点としては、50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましい。
また、TMSDMA2質量%溶液とした場合の上記シリル化剤溶液の引火点としては、25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが更に好ましい。
上記シリル化剤溶液の引火点の上限値としては高い方が好ましく、特に制限はないが、180℃以下とすることができ、150℃以下であってもよく、120℃以下であってもよく、100℃以下であってもよい。
【0091】
第1の態様に係るシリル化剤溶液は、被処理体の表面をシリル化する際に好適に使用される。被処理体の種類は特に限定されない。被処理体としては、「基板」が好ましい。
ここで、シリル化処理の対象となる「基板」としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が例示され、「基板の表面」とは、基板自体の表面のほか、基板上に設けられた無機パターン及び樹脂パターンの表面、並びにパターン化されていない無機層及び有機層の表面が例示される。
【0092】
基板上に設けられた無機パターンとしては、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成されたパターンが例示される。無機層としては、基板自体の他、基板を構成する元素の酸化膜、基板の表面に形成した窒化珪素、窒化チタン、タングステン等の無機物の膜や層等が例示される。このような膜や層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作製過程において形成される無機物の膜や層等が例示される。
【0093】
基板上に設けられた樹脂パターンとしては、フォトレジスト法により基板上に形成された樹脂パターンが例示される。このような樹脂パターンは、例えば、基板上にフォトレジストの膜である有機層を形成し、この有機層に対してフォトマスクを通して露光し、現像することによって形成される。有機層としては、基板自体の表面の他、基板の表面に設けられた積層膜の表面等に設けられたものが例示される。このような有機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作成過程において、エッチングマスクを形成するために設けられた有機物の膜が例示される。
【0094】
<表面処理方法>
第2の態様に係るシリル化剤溶液を基板表面に暴露させ、該基板表面を疎水化する表面処理方法もまた、本発明の1つである。この表面処理方法において、シリル化剤溶液は、上述の基板表面処理液として用いることができる。
【0095】
基板の材質は、特に限定されず、種々の無機基板及び有機基板から選択され、用いるシリル化剤の種類によって決定することができる。基板表面は、特に限定されないが、例えば、従来公知の方法等により、表面改質処理を施したものであってもよい。
【0096】
シリル化剤溶液を基板表面に暴露させる方法としては、従来公知の方法を特に制限なく使用することができる。例えば、シリル化剤溶液を気化させて蒸気とし、その蒸気を基板表面に接触させる方法、シリル化剤溶液を、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法等により基板表面に接触させる方法等が挙げられる。
上記の方法の中では、基板表面を均一に処理しやすいことから、シリル化剤溶液を基板表面に接触させる方法が好ましい。
【0097】
基板表面にシリル化剤溶液を暴露させた後、シリル化剤溶液に含有されていた溶剤等が基板表面に残存する場合には、かかる残存物を除去することが好ましい。残存物を除去する方法は特に限定されず、例えば、基板表面に、窒素や、乾燥空気等の気体を吹き付ける方法や、除去される溶剤の沸点に応じて、基板を適当な温度に加熱する方法等が挙げられる。
【0098】
第2の態様に係る表面処理方法において、シリル化剤と基板表面の水酸基が反応して脱水縮合が生じることにより、基板表面にケイ素化合物を含有する皮膜(薄膜)を形成することができ、該皮膜により基板表面を疎水化することができると考えられる。
第2の態様に係る表面処理方法により、基板表面を疎水化することができるので、例えば、表面に微細なパターンが形成された基板について、その表面を疎水化することによりパターン倒れを抑制することができる。
【0099】
<基板を含む半導体デバイスの製造方法>
第3の態様に係る基板を含む半導体デバイスの製造方法は、上記基板の表面に第2の態様の表面処理方法による疎水化を行うことを含む製造方法である。
上記疎水化処理により微細パターンが形成された半導体基板を製造し、該半導体基板を半導体製造プロセスにより加工することにより高集積化された半導体デバイスを製造することができる。
上記半導体デバイスは、各種電気電子機器に、好適に、搭載することができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
〔実施例1〜12、及び比較例1〜5〕
実施例及び比較例において、シリル化剤としてHMDS及びTMSDMAを用いた。
【0102】
実施例及び比較例において、溶剤として、以下のS1〜S11及びCS1〜CS3を用いた。
S1:3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート
S2:アジピン酸ジメチル
S3:デカン酸メチル
S4:n−オクタン酸メチル
S5:酢酸n−オクチル
S6:ドデカン
S7:テトラデカン
S8:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
S9:ジエチレングリコールジエチルエーテル
S10:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
S11:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
CS1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CS2:γ−ブチロラクトン
CS3:ジメチルスルホキシド
【0103】
実施例1〜9及び比較例1〜3において、表1に記載の種類の溶剤のHMDS2質量%溶液及びTMSDMA2質量%溶液をそれぞれ調製した。
また、表2に記載の溶剤と、HMDSと、イミダゾールとを均一に混合して、実施例10〜12及び比較例4及び5のHMDS2質量%及びイミダゾール1質量%溶液を調製した。
表1及び2に記載の引火点は、1気圧下において、液温80℃以下ではタグ密閉式で測定し、液温80℃超ではクリーブランド開放式で測定することにより得た。
なお、HMDSの引火点は8℃であり、TMSDMAの引火点は−19℃である。
【0104】
【表1】
【表2】
【0105】
表1に示した結果から明らかなように、比較例1〜3の溶液は、「HMDS2質量%溶液とした場合に引火点50℃以上」及び「TMSDMA2質量%溶液とした場合に引火点25℃以上」を両立することができないことがわかる。
一方、実施例1〜9の溶液は、「HMDS2質量%溶液とした場合に引火点50℃以上」及び「TMSDMA2質量%溶液とした場合に引火点25℃以上」のいずれをも達成することができることがわかる。
特に、引火点が50℃以上であり、直鎖状又は分岐鎖状のカルボン酸エステル系溶剤又は炭化水素系溶剤を使用した実施例1〜7の溶液は、含有される溶剤の引火点に対する溶液の引火点降下の度合が小さい傾向にあり引火性低減に優れることがわかる。
また、表2に示した結果から明らかなように、比較例4及び5の溶液は、「HMDS2質量%及びイミダゾール1質量%溶液とした場合に引火点50℃以上」を達成することができないことがわかる。
一方、実施例10〜12の溶液は、「HMDS2質量%及びイミダゾール1質量%溶液とした場合に引火点50℃以上」を達成することができることがわかる。