【実施例1】
【0042】
図11に本発明の一実施例に係るピアスニードルの形状の斜視図及び側面図を、
図12に
図11に示すピアスニードル先端の拡大図を示す。
図11に示すように、ピアスニードル105は、切り込みを開けるピアス部105bと、切り込みを押し広げる拡張部105cを一体化した形状のピアスニードルである。先端のピアス部105bは
図4及び
図5と同様に三角錐形状であり、一体化する拡張部105cは試薬プローブ7aを模した円柱形状になっている。切り込みを開けるピアス部105bと切り込みを拡張する拡張部105cが一体化することで、ピアス部105bの中心軸と拡張部105cの中心軸を一致させることができる。
図12に示すように、拡張部105cの直径はピアス部105bの外接円の直径より小さくなっている。試薬プローブ7aの挿入荷重を低減するためには、拡張部105cの直径は、試薬プローブ7aの直径と同じであればよいが、直径より大きくすることが望ましい。
【0043】
図12は、ピアス部10bの先端を正三角錐にした例であり3つの刃が示されている。夫々の刃は中心から正三角錐の底面の頂点に向かって形成されている。つまり、夫々の刃は120°置きに配置されている。この3枚の刃により試薬ボトルの蓋10aに切れ込みをいれることができる。刃は4枚以上であってもよい。なお、力の均一化の関係から、刃はピアス部105bの先端側から見たときに正多角形の頂点に配置することが望ましい。ピアス部105bの先端を正四角錐とした場合には、夫々の刃は中心から正四角錐の底面の頂点に向かって形成される。つまり、夫々の刃は90°置きに配置される。
【0044】
図13に拡張部105cの直径をピアス部105bの外接円の直径より大きくした場合に、ピアスニードル105を試薬ボトルの蓋10aに挿入した場合の断面図を示す。
図13では、ピアス部105bの外接円の直径をφ1.5mm、拡張部105cの直径をφ1.6mmとした。
図13に示すように、拡張部105cの直径がピアス部105bの外接円の直径より大きいと、ピアスニードル105による切り込み範囲より高い位置で試薬ボトルの蓋10aと接触する。この接触位置には切り込みはないため挿入時の負荷が大きくなる。拡張部105cの接触位置にはピアス部105bと拡張部105cの断面形状の違いから段差ができており、段差の角部分が切り込みのエッジや試薬ボトルの蓋10aの内側に強く擦れるのでバリができる可能性が高くなる。段差の角部分を面取りあるはテーパ形状にしても、ピアスニードル105による切り込みの大きさを超えて拡張することになるためピアスニードル105の挿入荷重は大きく増大する。試薬プローブ7aの挿入時の負荷低減には、拡張部105cの直径を大きくした方が良いが、ピアスニードル105による切り込みより更に大きくすると切り込みの開口面積も大きくなるため、本試薬ボトル10の本来の目的である、外気の流入を減少させて試薬の劣化を防ぐ目的に反することになる。そのため、拡張部105cの直径はピアス部105bの外接円の直径より小さく、試薬プローブ7aの直径と同じ又は直径より大きい方が良い。3枚の刃が通過した間の試薬ボトルの蓋10aの部材を試薬プローブ7aとほぼ同じ太さで押し広げることができるためである。ピアス部105bの中心軸と拡張部105cの中心軸が一致しており、拡張部105cの直径をピアス部105bの外接円の直径に近づけることで、3箇所存在する切り込みの端点を均等に開くことができ、試薬プローブ7aの初回挿入時の最大挿入荷重を低減できる。また、3辺の切り込みを均一に開ききることで、試薬プローブ7aとの摩擦抵抗を減らすことができ、摺動によるバリの発生を低減することが期待できる。
【0045】
なお、拡張部105cの直径をピアス部105bの外接円の直径と同じにした場合、中心軸が一致することによる効果は得られる。また、薄く繋がった部分を均一に開くという効果も得られる。しかしながら、この場合には、ピアス部105bで形成される切れ込みの最外部と拡張部105cの位置が同じため、切れ込みの端部部分を引き裂く方向に力が働く。例えば、3箇所の端部夫々にこの引き裂く力が働くが、このうち一番弱い箇所に力が集中するため1箇所の端部が僅かに裂ける可能性がある。このような裂け目が生じると切れ込みの均一性が崩れ、摺動によるバリができる可能性が高くなる。このため、拡張部105cの直径は、ピアス部105bの外接円の直径と同じよりも、小さいことが望ましい。
【0046】
図14に
図11のピアスニードル105を用いての試薬ボトルの蓋10aへの切り込みを開けるフローの例を示す。
図14の例では、試薬ボトル10を1個の場合で、試薬ボトル1個に2つの試薬が入っているため試薬ボトルの蓋10aは2個になる。
【0047】
まず、Step1として、試薬ボトル10を装置内の所定の位置に設置する。Step2で試薬ボトル10が設置されたことを装置が認識すると、蓋開栓機構40の試薬ボトル開栓位置(ピアスニードル挿入位置)に試薬ボトル10を移動させる。Step3で試薬ボトル蓋開栓機構104とピアスニードル105が下降開始する。Step4でピアスニードル105のピアス部105bが試薬ボトルの蓋10aに切り込みを開ける。試薬ボトル蓋開栓機構104は停止せずにそのまま下降し、Step5で拡張部105cを切り込みに挿入し、拡張部105cで切り込みを押し広げる。Step6で試薬ボトル蓋開栓機構104が、所定量下降して停止する。下降量は予めパラメータとして装置内に保存されている。Step7で試薬ボトル蓋開栓機構104は上昇し、ピアスニードル105を蓋から引き抜き、所定の位置で停止する。試薬ボトルの蓋10aに挿入されたピアスニードル105は、ニードル先端が試薬に接触している可能性があるため、Step8で洗浄水で洗浄および乾燥を実施する。洗浄・乾燥の手順は省略する。次に、試薬ボトルの蓋10aを2つとも切り込みを開けたなら、Step9で試薬ボトル10を試薬ボトル搬送機構41で装置内の試薬ディスク9に搬送し、試薬ディスク9に格納する。そうでないならStep2に移動し切り込みを開ける。試薬ディスク9内に格納された試薬ボトル10の位置はコントローラ21に記憶され、分析の依頼が発生したら、Step10で試薬ディスク9を回転させて試薬吸引位置に試薬ボトル10を移動させる。Step11で円筒形状の試薬プローブ7aを試薬ボトルの蓋10aの切り込みから挿入し、試薬プローブ7a内に試薬を吸引し反応容器2に吐出する。これらの装置の動作はコントローラ21によって制御される。
【0048】
このように、試薬ボトル蓋開栓機構104とピアスニードル105が下降終了まで下降し続けることで、連続して拡張部105cが切り込みに挿入される。拡張部105cは試薬プローブ7aを模しており、試薬プローブ7aが挿入される時と同様に切り込みを押し広げ、
図8の様に薄く繋がっている部分を切り開く。これにより、切り込みの各端点部分で均一な切り込みが実現でき、試薬プローブ7aの初回挿入時の最大挿入荷重を低減することができる。また、ピアス部105bによって切り込みを開けて拡張部105cで切り込みを押し広げる動作を、ピアスニードル105が下降する1回の動作で可能となるため機構の追加は不要となる。また、ピアス部105bの長さと拡張部105cの長さを、所定の下降量で試薬ボトルの蓋10aに挿入される長さ以上にすれば、従来と同じ下降量で動作することができるため、動作時間を延長する必要は無い。また、ダミーノズルの径がピアスニードル105の外接円より小さければ、試薬プローブ(試薬ノズル)7aの1000回挿抜後の切り込みの開口面積に大きな差が無いことを実験にて確認した。
【0049】
図11の例では拡張部105cの直径は1段(円筒)でピアス部105bに繋がれているが、拡張部105cの直径を2段階にして、絞り部を設けた例を
図15に、
図16にピアスニードル105の先端の拡大図を示す。
図17に
図11のピアスニードル105と
図15のピアスニードル105を試薬ボトルの蓋10aに挿入した際の縦断面図を示す。
図11と
図15のピアスニードル105の位置は同じであり、ピアス部105bの形状も同様である。
図17で絞り部分は破線で示す。
【0050】
図16に示すように、拡張部105cのピアス部105b側には、拡張部105cの本体の直径よりも小さい直径の円筒が備わっており、これらの円筒形を繋ぐように徐々に直径がピアス部105bに向かって小さくなる形状で接続されている。つまり、この接続部分は、円垂形の一部の形状で構成されている。円柱状の拡張部105cよりも直径の小さい絞り部は、拡張部105cまで挿入することに伴い、コントローラ21によって、試薬ボトル10の内部に押し込まれる。
【0051】
また、
図17に示すように、試薬ボトルの蓋10aの内部のテーパ部分は2段階になっている。つまり、テーパ角が2種類ある。
図11の例で、拡張部105cの直径はピアス部105bの外接円の直径に近いほうが、最大挿入荷重の低下やバリ低減の効果が期待できるが、
図11のピアス部105bと拡張部105cの段差の角部分が、
図17のテーパ1とテーパ2の切り替わりの部分に引っかかる可能性がある。
図18に絞り部による絞りなしのピアスニードル105を挿入する様子の図を示す。
図18では試薬ボトルの蓋10aのみ断面図とし、ピアスニードル105は断面図ではない。テーパ2の内側にはピアス部105bによる切込みがあり、テーパ1とテーパ2の切り替わりの部分にピアスニードル105の角部分(段差部分)が引っかかったまま下降する可能性がある。この場合、テーパ2の内側の切込みの角部分がピアスニードル105の角部分によって削れてバリとなり試薬ボトル10内に混入する可能性がある。それを防ぐため、ピアスニードル105の拡張部105cに絞りを設ける。この絞り部の直径はテーパ1とテーパ2の切り替わりの部分の直径より小さくすることで、テーパの切り替わり部分でピアスニードル105が引っかからずに下降することができる。また、ピアスニードル105の角部分が試薬ボトルの蓋10aの内側に接触する面積も小さくなるので、試薬ボトルの蓋10aのピアスニードル105の角部分によって削れてバリとなるリスクを低減できる。
【0052】
以上のことから、ピアス部105bと拡張部105cを一体化し、拡張部105cの直径は切り込みの大きさであるピアス部105bの断面形状(三角形)の外接円の径より小さく、試薬プローブ7aの直径と同じ又は直径より大きくする。試薬プローブ7aの初回挿入時の負荷を低減するためには、拡張部105cの直径は試薬プローブ7aの直径より大きくすることでより効果が期待できる。また、拡張部105cに絞り部を設ける。拡張部105cの直径を試薬ボトルの蓋10aの内部のテーパ切り替わり部分の直径より小さくすることで、ピアス部105bによる切込みの3箇所の端点を均一に押し開くことができる。これにより、試薬プローブ7aの初期挿入時の最大挿入荷重を低減し、また、試薬プローブ7aの繰り返し摺動によるバリの発生を低減する効果が期待できる。
【0053】
拡張部105cの直径はピアス部105bの水平断面三角形状の外接円の直径より大きくなるとピアス部105bで開けた切込みの端点の、薄く繋がった部分を超えて更に広げることになるため、ピアスニードル105の挿入に大きな力が必要になる。また、切り込みによる開口部が大きくなりすぎると、外気の流入が増加する可能性があるため、拡張部105cの直径はピアス部105bの断面形状の外接円の直径よりわずかに小さい程度が望ましい。
【0054】
例えば、ピアス部105bの三角形の外接円がφ1.5mm、試薬プローブ7aの直径(外径)がφ1.15mmとした場合、拡張部105cの直径は1.15≦拡張部105cの直径<1.5の範囲となり、拡張部105cの直径はφ1.45mm程度となる。拡張部105cの直径をφ1.15mm(試薬プローブ7aと同等)とφ1.45mm(ピアス部105bの外接円よりやや小さい)の2種類で切り込みの開き具合を実験で比較した。その結果、φ1.15mmでは開き具合が3辺で不均一なのに対し、φ1.45mmでは3辺が均一に開けていることを確認した。また、拡張部105cの直径をφ1.15mm、φ1.45mm、φ1.60mm(ピアス部105bの外接円よりやや大きい)で、試薬プローブ7aを試薬ボトルの蓋10aの切り込みに1000回挿抜した後の開口部の面積を実験で比較した。その結果、φ1.15mmとφ1.45mmの開口部の面積は同程度であり、φ1.60mmの開口部はやや大きくなることを確認した。
【0055】
なお、直径の大小関係について言い換えると、円柱状の拡張部105cの直径は、ピアス部105bの複数の刃の外接円の最大直径よりも小さく、試薬プローブ7aが試薬を吸引するまでに試薬ボトル10に挿入される範囲の試薬プローブ7aの最大直径と同じ又は最大直径よりも大きいことが望ましい。さらに、円柱状の拡張部105cの直径は、上記試薬プローブ7aが試薬を吸引するまでに試薬ボトル10に挿入される範囲の上記試薬プローブ7aの最大直径よりも大きいことが望ましい。
【0056】
上記実施例では三角錐のピアス部105bに円柱のダミーノズルが一体化したものであるが、先端のピアス部105bは四角錐などの多角形形状も可とする。つまり、ピアス部105bは多角錐の形状を有し、多角錐の辺が複数の刃が配置される位置に対応している。なお、力の分散の観点から正多角錐の辺に刃を配置するのが望ましい。多角形形状の場合でも、ピアス部105bの断面形状の外接円直径と拡張部105cの直径の関係は同様である。
【0057】
また、
図19に示すようなピアス部105bの断面が星型の多角錘形状になっている物や
図20に示す板状の刃が組み合わさった様な形状も考えられる。
図19の例では断面が刃の星型になっているが、4枚刃以上でも良い。
図20の例においても刃が4枚であるが、3枚刃であって良いし5枚刃以上でも良い。これらのピアス部105bは、多角錐というよりも、ピアス部105bの先端側から見たときに中心から外側へ向かって延在する刃が設けられた例である。なお、多角錐は、ピアス部105bの先端側から見たときに中心から外側へ向かって延在する刃が設けられた例の一つである。
【0058】
図19の例ではピアス部105bの断面形状が星型になっており、試薬ボトルの蓋10aの3辺の切り込みを開ける刃がより鋭角になっている。刃が鋭角になっている分、切り込みの切断面をきれいな状態で開ける効果が期待できる。切断面が荒くバリができるなどしてゴミが試薬ボトル10内に落ちると、試薬プローブ7aによる分注時に、試薬プローブ7a内に吸引して、試薬プローブ7aが目詰まりしたり、反応容器2内に吐出して測定の妨げになったりする可能性がある。
【0059】
図20の例では、板状の刃になっており、
図15や
図19の刃より先端が太くできるため、
図15や
図19の例より刃先の強度が向上できる。
【0060】
図15,19,20の例ではピアスニードル105の進行方向に対して、ピアス部105bがあり、その後ろに拡張部105cがある形状をしており、ピアス部105bと拡張部105cが連続して挿入される。
図21は、複数の刃と円錐とが組み合わされた構造を有し、ピアス部105bは先端側から見たときに中心から外側へ向かって延在する複数の刃が円錐の側面に備えられた構造である。
図21の例では1つの断面にピアス部105bの刃と拡張部105cが存在しており、ピアス部105bと拡張部105cが連続ではなく同時に挿入されることになる。そのため、切り込みを拡張部105cで押し広げながらピアス部105bで切り込みを開けていくため、ピアス部105bの刃にかかる負荷を低減でき、ピアス部105bの刃の切れ味を
図15,19,21に比べて長く維持することが期待できる。また、拡張部105cの先端はピアス部105bの先端と同じ位置に集束しているが、この集束する位置はピアス部105bの先端の集束位置より前方もしくは後方でも良い。この例の場合には拡張部105cは実質的にピアス部105bの終端が兼ね備えているためピアス部105b以降の拡張部105cの形状は比較的自由度が高い。そのため、この範囲の拡張部105cは試薬プローブ7aの直径よりも小さい直径も許容される可能性がある。しかし、確実な切り込みの押し広げが実現できるよう、この範囲においても試薬プローブ7aの直径よりも大きい直径であることが望ましい。
【0061】
また、これまでの拡張部105cは試薬プローブ7aの形状を模しているため円柱であるが、拡張部105cの断面も三角あるいは四角等の多角柱形状でも良い。拡張部105cが多角柱形状の場合には、これまで説明した円柱の直径を、多角の外接円の直径に置き換えて考えればよい。具体的には、多角柱の外接円の直径は、ピアス部105bの上記複数の刃の外接円の最大直径よりも小さく、試薬プローブ7aが試薬を吸引するまでに試薬ボトル10に挿入される範囲の最大直径と同じ又は最大直径よりも大きいことが望ましい。なお、外接円とは、ピアス部105bの水平断面における外接円であることは言うまでもない。
【0062】
また、
図19〜21の例では切れ味を維持するために、ニードル先端を非常に小さなRで丸めている。