特許第6682449号(P6682449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インテル・コーポレーションの特許一覧

特許6682449デスミア処理方法および多層プリント配線板の製造方法
<>
  • 特許6682449-デスミア処理方法および多層プリント配線板の製造方法 図000003
  • 特許6682449-デスミア処理方法および多層プリント配線板の製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682449
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】デスミア処理方法および多層プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/42 20060101AFI20200406BHJP
   H05K 3/26 20060101ALI20200406BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20200406BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H05K3/42 610A
   H05K3/26 B
   H05K1/03 610L
   H05K1/03 610K
   H05K1/03 610R
   H05K3/46 B
   H05K3/46 N
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-561248(P2016-561248)
(86)(22)【出願日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】JP2015005867
(87)【国際公開番号】WO2016084374
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-241922(P2014-241922)
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003943
【氏名又は名称】インテル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 隆志
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−338679(JP,A)
【文献】 特開2011−256300(JP,A)
【文献】 特開2001−251054(JP,A)
【文献】 特開2005−81163(JP,A)
【文献】 特開2000−188474(JP,A)
【文献】 特開2003−273499(JP,A)
【文献】 特開2005−327978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B3/12
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を形成した基板からスミアを除去するデスミア処理方法であって、
前記スミアの一部のみを溶解または分解する第1のデスミア処理工程と、
前記第1のデスミア処理工程の後に前記基板を超音波処理して前記スミアの残部を除去する第2のデスミア処理工程と、
を含み、
前記第2のデスミア処理工程では、前記超音波処理中に、超音波の周波数を変動させることと、超音波の発振源と前記基板とを2以上の方向に相対的に移動させることとの少なくとも一方を実施する、デスミア処理方法。
【請求項2】
前記超音波処理中に照射する前記超音波の周波数が15kHz以上200kHz以下の範囲内である、請求項1に記載のデスミア処理方法。
【請求項3】
前記発振源と前記基板とを相対的に移動させる距離Dが、下記の関係式:
{音速/(超音波の周波数×2)}/4≦D≦150×{音速/(超音波の周波数×2)} ・・・(1)
を満たす、請求項1または2に記載のデスミア処理方法。
【請求項4】
前記第1のデスミア処理工程では、デスミア液、プラズマおよび光からなる群から選択される少なくとも一つを用いて前記スミアを溶解または分解する、請求項1〜3の何れか一項に記載のデスミア処理方法。
【請求項5】
前記第1のデスミア処理工程では、前記デスミア液を用いて前記スミアを溶解または分解し、
前記デスミア液が過マンガン酸塩を含む、請求項4に記載のデスミア処理方法。
【請求項6】
前記基板は、前記穴が形成された電気絶縁層を有し、
前記電気絶縁層は、周波数5GHzにおける誘電正接が0.005以下の硬化物よりなる、請求項1〜5の何れか一項に記載のデスミア処理方法。
【請求項7】
前記基板は、前記穴が形成された電気絶縁層を有し、
前記電気絶縁層は、エポキシ樹脂と活性エステル化合物とを含む硬化性樹脂組成物を用いて形成されている、請求項1〜6の何れか一項に記載のデスミア処理方法。
【請求項8】
前記硬化性樹脂組成物がポリフェニレンエーテル化合物を更に含む、請求項7に記載のデスミア処理方法。
【請求項9】
前記基板は、前記穴が形成された電気絶縁層を有し、
前記電気絶縁層は、無機充填剤を50質量%以上含む層を有する、請求項1〜8の何れか一項に記載のデスミア処理方法。
【請求項10】
前記基板は、前記穴が形成された電気絶縁層および支持体を有し、
前記支持体は、前記電気絶縁層の表面に設けられて前記基板の表面を構成する、請求項1〜9の何れか一項に記載のデスミア処理方法。
【請求項11】
前記支持体が紫外線吸収性を有する、請求項10に記載のデスミア処理方法。
【請求項12】
ビアを有する多層プリント配線板の製造方法であって、
交互に積層された電気絶縁層および導体層を有する基板にビア用の穴を形成する工程と、
前記穴を形成する際に発生したスミアを、請求項1〜11の何れか一項に記載のデスミア処理方法を用いて除去する工程と、
を含む、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項13】
前記電気絶縁層は、支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成した後、得られた支持体付き硬化性樹脂組成物層を前記硬化性樹脂組成物層が被積層体側に位置するように前記被積層体上に積層し、積層した前記硬化性樹脂組成物層を硬化させることにより形成される、請求項12に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスミア処理方法および多層プリント配線板の製造方法に関し、特には、基板から基板材料の残渣(スミア)を除去するデスミア処理方法、および、当該デスミア処理方法を用いた多層プリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等の製造に用いられるプリント配線板として、基材上に電気絶縁層と導体層(配線層)とが交互に積層された多層プリント配線板が用いられている。そして、通常、多層プリント配線板には、積層方向に互いに離隔した導体層同士を電気的に接続する各種ビア(例えば、ブラインドビア、ベリードビア、スルーホールビア等)が形成されている。
【0003】
ここで、ビアを有する多層プリント配線板は、例えば、電気絶縁層とその電気絶縁層の表面に形成された導体層とを有する内層基板に対し、電気絶縁層の積層と、レーザー加工やドリル加工等によるビア用の穴の形成と、穴の形成によって発生した樹脂残渣などのスミアの除去(デスミア)と、穴を形成した電気絶縁層の表面への導体層の形成および穴内への導体の形成による導体層間の接続(ビアの形成)と、を繰り返し行なうことにより形成される。
【0004】
そして、多層プリント配線板の製造において穴を形成した基板からスミアを除去する際に用いるデスミア処理方法としては、過マンガン酸カリウム溶液などのデスミア液、紫外線またはプラズマなどを用いてスミアを溶解または分解させる方法が用いられている。また、近年では、デスミア液や紫外線などを用いた処理を行った後に更に超音波処理を行うことによりスミアの除去効率を高めることを可能にしたデスミア処理方法も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−327978号公報
【特許文献2】国際公開第2014/104154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、近年、電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、多層プリント配線板には更なる高性能化が要求されているところ、上記従来のデスミア処理方法には、デスミア性を更に高め、スミアを十分に除去するという点において改善の余地があった。特に、誘電正接の低い材料に由来するスミアは除去し難いところ、デスミア性の改善は、誘電正接の低い材料よりなる電気絶縁層を使用して電気信号の伝送損失を抑制し得る高性能な多層プリント配線板を製造する際に特に求められていた。
【0007】
そこで、デスミア性の向上を目的として本発明者が鋭意検討を行ったところ、従来のデスミア処理方法において超音波処理の時間を単に延ばしただけではデスミア性を十分に高めることはできないが、デスミア液、紫外線またはプラズマなどを用いたデスミア処理の時間を長くすれば、デスミア性を高めることができることが明らかとなった。
【0008】
しかし、本発明者が研究を重ねたところ、デスミア液、紫外線またはプラズマなどを用いてスミアを溶解または分解させるデスミア処理を長時間実施した場合には、デスミア処理を施した基板の表面が荒れてしまうという問題が新たに生じることが明らかとなった。そして、表面が荒れた基板上に導体層を形成して作製した多層プリント配線板では、導体損失が大きくなり、電気信号の伝送損失を十分に抑制することができなかった(即ち、多層プリント配線板の高性能化を達成することができなかった)。
【0009】
そこで、本発明は、基板の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去することができるデスミア処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、スミアを十分に除去しつつ高性能な多層プリント配線板を製造することが可能な多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、スミアを溶解または分解させる処理の後に所定の条件下で超音波処理を実施することにより、基板の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のデスミア処理方法は、穴を形成した基板からスミアを除去するデスミア処理方法であって、前記スミアの一部を溶解または分解する第1のデスミア処理工程と、前記第1のデスミア処理工程の後に前記基板を超音波処理する第2のデスミア処理工程とを含み、前記第2のデスミア処理工程では、前記超音波処理中に、超音波の周波数を変動させることと、超音波の発振源と前記基板とを2以上の方向に相対的に移動させることとの少なくとも一方を実施することを特徴とする。このように、第1のデスミア処理工程においてスミアの一部のみを除去すれば、デスミア処理された基板の表面が荒れるのを抑制することができる。また、第1のデスミア処理工程の後に所定の条件下で超音波処理を実施する第2のデスミア処理工程を実施すれば、スミアを十分に除去し、デスミア性を高めることができる。
【0012】
ここで、本発明のデスミア処理方法は、前記超音波処理中に照射する前記超音波の周波数が15kHz以上200kHz以下の範囲内であることが好ましい。超音波の周波数が15kHz以上200kHz以下の範囲内であれば、デスミア性を更に高めることができるからである。
【0013】
また、本発明のデスミア処理方法は、前記発振源と前記基板とを相対的に移動させる距離Dが、関係式:{音速/(超音波の周波数×2)}/4≦D≦150×{音速/(超音波の周波数×2)}を満たすことが好ましい。上記関係式を満たすように発振源と基板とを相対移動させれば、発振源と基板とを容易に相対移動させつつデスミア性を更に高めることができるからである。
なお、本発明において、「音速」とは、超音波が基板に照射される条件下での音速を指し、例えば水中で超音波を基板に照射する場合には、水中における音速を指す。また、本発明において超音波の発振源と基板とを2以上の方向に相対的に移動させる場合には、1以上の方向において発振源と基板とを相対的に移動させる距離が上記関係式を満たせばよい。
【0014】
更に、本発明のデスミア処理方法は、前記第1のデスミア処理工程では、デスミア液、プラズマおよび光からなる群から選択される少なくとも一つを用いて前記スミアを溶解または分解することが好ましい。デスミア液、プラズマおよび光からなる群から選択される少なくとも一つを用いれば、スミアを容易かつ効率的に除去することができるからである。
ここで、前記第1のデスミア処理工程では、過マンガン酸塩を含むデスミア液を用いて前記スミアを溶解または分解することがより好ましい。過マンガン酸塩を含むデスミア液を使用すれば、スミアを低コストで効率的に除去することができるからである。
【0015】
また、本発明のデスミア処理方法は、前記基板が、前記穴が形成された電気絶縁層を有し、前記電気絶縁層は、周波数5GHzにおける誘電正接が0.005以下の硬化物よりなることが好ましい。周波数5GHzにおける誘電正接が0.005以下の硬化物を用いて電気絶縁層を形成すれば、電気信号の伝送損失を抑制し得る高性能な多層プリント配線板を製造することが可能だからである。なお、誘電正接の低い材料に由来するスミアは通常は除去し難いが、本発明のデスミア処理方法を用いれば、電気絶縁層に穴を形成した際に生じる、誘電正接が0.005以下の硬化物に由来するスミアであっても十分に除去することができる。
なお、本発明において、「周波数5GHzにおける誘電正接」は、空洞共振器摂動法を用いて測定することができる。
【0016】
ここで、本発明のデスミア処理方法を用いて処理される基板は、穴が形成された電気絶縁層が、エポキシ樹脂と活性エステル化合物とを含む硬化性樹脂組成物を用いて形成されていることが好ましい。そして、電気絶縁層の形成に用いられる前記硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル化合物を更に含むことがより好ましい。
更に、前記電気絶縁層は、無機充填剤を50質量%以上含む層を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明のデスミア処理方法は、前記基板が、前記穴が形成された電気絶縁層および支持体を有し、前記支持体は、前記電気絶縁層の表面に設けられて前記基板の表面を構成することが好ましい。基板が支持体を有する場合、第1のデスミア処理工程においてスミアを除去する際に電気絶縁層の表面が荒れるのを更に抑制することができるからである。
ここで、前記支持体は紫外線吸収性を有することが更に好ましい。支持体が紫外線吸収性を有する場合、エキシマレーザー、UVレーザー、UV−YAGレーザー等を用いた穴の形成が容易になるからである。
なお、本発明において、「紫外線吸収性を有する」とは、紫外可視吸光光度計により測定した波長355nmにおける光透過率が20%以下であることを指す。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、ビアを有する多層プリント配線板の製造方法であって、交互に積層された電気絶縁層および導体層を有する基板にビア用の穴を形成する工程と、前記穴を形成する際に発生したスミアを、上述したデスミア処理方法の何れかを用いて除去する工程とを含むことを特徴とする。このように、上述したデスミア処理方法を用いてスミアを除去すれば、基板の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去することができる。従って、高性能な多層プリント配線板を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去することが可能なデスミア処理方法を提供することができる。
また、本発明によれば、スミアを十分に除去しつつ高性能な多層プリント配線板を製造することが可能な多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第2のデスミア処理工程において超音波処理中に超音波の周波数を変動させる際の処理時間と超音波の周波数との関係を示す図であり、(a)は周波数を段階的に変動させた場合を示し、(b)は周波数を連続的に変動させた場合を示す。
図2】第2のデスミア処理工程において超音波処理中に基板を移動させる方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のデスミア処理方法は、例えば交互に積層された電気絶縁層および導体層を有する積層体よりなる基板に穴を形成した際に生じるスミアを除去する際に用いることができる。そして、本発明のデスミア処理方法は、本発明の多層プリント配線板の製造方法に従ってビアを有する多層プリント配線板を製造する際に好適に用いることができる。
【0022】
(多層プリント配線板の製造方法)
本発明の多層プリント配線板の製造方法では、例えば、基材上に電気絶縁層と導体層とが交互に積層されており、且つ、積層方向に互いに離隔した導体層同士を電気的に接続するビアを有する多層プリント配線板を製造する。
【0023】
ここで、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、基材上に電気絶縁層と導体層とを順次積層してなる内層基板に対し、電気絶縁層の形成と、電気絶縁層上への導体層の形成とを繰り返し実施して所望の層数の電気絶縁層および導体層が交互に積層された多層プリント配線板を製造する。また、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア用の穴を形成する工程と、穴を形成する際に発生したスミアを除去する工程と、穴内に導体を形成する工程とよりなるビア形成工程を少なくとも1回は実施して、多層プリント配線板にブラインドビア、ベリードビア、スルーホールビアなどのビアを設ける。そして、本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア形成工程においてスミアを除去する際に後に詳細に説明する本発明のデスミア処理方法を用いることを特徴とする。
【0024】
<基材>
電気絶縁層および導体層を積層する基材としては、特に限定されることなく、多層プリント配線板の製造において用いられている既知の基材を使用することができる。具体的には、基材としては、例えば、電気絶縁性基板、プリント配線板、プリント回路板などが挙げられる。なお、電気絶縁性基板は、例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ化合物、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ガラス等の電気絶縁材料を含有する樹脂組成物を硬化させて形成することができる。
【0025】
<電気絶縁層の形成>
電気絶縁層としては、例えば、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物よりなる層(絶縁樹脂層)が挙げられる。具体的には、電気絶縁層としては、硬化性樹脂組成物を用いて形成した単層または多層の硬化性樹脂組成物層を硬化させて得られる単層構造または多層構造の絶縁樹脂層が挙げられる。
【0026】
なお、電気信号の伝送損失を抑制し得る高性能な多層プリント配線板を製造する観点からは、電気絶縁層は周波数5GHzにおける誘電正接が0.005以下の硬化物を用いて形成することが好ましい。ここで、硬化物の誘電正接は、例えば硬化性樹脂組成物の組成を変更することにより調整することができ、例えば硬化性樹脂組成物に含まれている樹脂などが有する極性基の数を減らせば硬化物の誘電正接を低くすることができる。
【0027】
そして、内層基板や内層基板上に電気絶縁層および導体層を交互に積層してなる積層体などの被積層体上に電気絶縁層を形成する方法としては、特に限定されることなく、例えば、支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成した後、得られた支持体付き硬化性樹脂組成物層を硬化性樹脂組成物層が被積層体側に位置するように被積層体上に積層し、積層した硬化性樹脂組成物層を加熱等の手段を用いて硬化させる方法を用いることができる。なお、支持体は、支持体付き硬化性樹脂組成物層を被積層体上に積層した後であれば任意のタイミングで剥離することができるが、形成した電気絶縁層にビア用の穴を形成する場合には、ビア用の穴を形成した後、スミアの除去方法に応じて適当なタイミングで剥離することが好ましい。具体的には、後述する第1のデスミア処理工程においてプラズマまたは光を用いる場合には、支持体は第1のデスミア処理工程後の任意のタイミングで剥離することが好ましく、第1のデスミア処理工程においてデスミア液を用いる場合には、支持体は第1のデスミア処理工程前に剥離することが好ましい。第1のデスミア処理工程においてプラズマまたは光を用いる場合、ビア用の穴の形成およびスミアの除去を行った後に剥離すれば、スミアを除去する際のデスミア処理によって電気絶縁層の表面が荒れるのを十分に抑制することができるからである。即ち、デスミア処理時に支持体を電気絶縁層の保護膜として機能させることができるからである。
【0028】
ここで、支持体としては、特に限定されることなく、フィルム状または板状等の部材を用いることができる。具体的には、支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子化合物からなるフィルムまたは板や、ガラス基材等が挙げられる。これらの中でも、支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
なお、支持体の剥離操作を容易なものとする観点からは、支持体は離型層の形成などの離型処理が表面に施されていることが好ましい。また、支持体を剥離する前にビア用の穴を形成する場合であって穴の形成にレーザー加工を用いる場合には、支持体は紫外線吸収性を有していることが好ましい。支持体が紫外線吸収性を有していれば、エキシマレーザー、UVレーザー、UV−YAGレーザーなどを用いたレーザー加工が容易になるからである。更に、支持体が紫外線吸収性を有していれば、穴の形成後に紫外線を利用してデスミア処理を実施する場合等に、支持体で紫外線を吸収し、電気絶縁層の表面が荒れるのを十分に抑制することもできるからである。
【0029】
また、硬化性樹脂組成物層を形成するための硬化性樹脂組成物としては、特に限定されることなく、多層プリント配線板の製造において用いられている既知の熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。具体的には、硬化性樹脂組成物としては、硬化性樹脂と、硬化剤とを含有し、任意に充填剤やポリフェニレンエーテル化合物を更に含有する硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0030】
そして、硬化性樹脂としては、硬化剤と組み合わせることで熱硬化性を示し、かつ、電気絶縁性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、ポリイミドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂や極性基を有する脂環式オレフィン重合体が好ましい。これらの樹脂は、それぞれ単独で、または、2種以上を組合せて用いられる。
なお、エポキシ樹脂としては、ビフェニル構造および/または縮合多環構造を有する多価エポキシ化合物を含むものが好ましく、ビフェニル構造および/または縮合多環構造を有する多価エポキシ化合物と、3価以上の多価グリシジル基含有エポキシ化合物(但し、ビフェニル構造および/または縮合多環構造を有する多価エポキシ化合物に該当するものを除く)と、トリアジン構造含有フェノール樹脂との混合物がより好ましい。
また、極性基を有する脂環式オレフィン重合体としては、シクロアルカン構造を有し、且つ、極性基としてアルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基およびリン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有する重合体が好ましい。
【0031】
なお、支持体上に形成した多層の硬化性樹脂組成物層を硬化させて多層構造の絶縁樹脂層よりなる電気絶縁層を形成する場合には、極性基を有する脂環式オレフィン重合体を硬化性樹脂として含む硬化性樹脂組成物を用いて形成した硬化性樹脂組成物層を支持体側に配置し、エポキシ樹脂を硬化性樹脂として含む硬化性樹脂組成物を用いて形成した硬化性樹脂組成物層を支持体とは反対側(被積層体側)に配置することが好ましい。極性基を有する脂環式オレフィン重合体を硬化性樹脂として含む硬化性樹脂組成物を用いて形成した硬化性樹脂組成物層を支持体側に配置して電気絶縁層を形成すれば、電気絶縁層上に形成される導体層との密着性を高めることができるからである。
【0032】
また、硬化剤としては、加熱により硬化性樹脂と反応して硬化性樹脂組成物を硬化させることが可能な既知の化合物を使用することができる。具体的には、硬化性樹脂が例えばエポキシ樹脂の場合には、硬化剤としては、特に限定されることなく、活性エステル化合物、好ましくは分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する活性エステル化合物を用いることができる。また、硬化性樹脂が例えば極性基を有する脂環式オレフィン重合体の場合には、硬化剤としては、特に限定されることなく、極性基を有する脂環式オレフィン重合体の極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を用いることができる。
なお、活性エステル化合物としては、カルボン酸化合物および/またはチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物および/またはチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物およびチオール化合物からなる群から選択される1種または2種以上とを反応させたものから得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られ、かつ、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する芳香族化合物が更に好ましい。
また、極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物としては、例えば、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物と、過酸化物とを併用することで硬化剤として用いてもよい。
【0033】
更に、充填剤としては、電気絶縁層の線膨張率を低減可能な公知の無機充填剤および有機充填剤のいずれも用いることができるが、無機充填剤を用いることが好ましい。無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレーなどを挙げることができる。なお、用いる充填剤は、シランカップリング剤等で予め表面処理されたものであってもよい。また、硬化性樹脂組成物中の充填剤の含有量は、固形分換算で50質量%以上であることが好ましい。なお、多層の硬化性樹脂組成物層を硬化させて多層構造の絶縁樹脂層よりなる電気絶縁層を形成する場合には、多層の硬化性樹脂組成物層のうち少なくとも一層が充填剤を固形分換算で50質量%以上含む硬化性樹脂組成物を用いて形成されていることが好ましい。
【0034】
また、硬化性樹脂組成物には、上述した成分に加えて、ポリフェニレンエーテル化合物を更に配合してもよい。ポリフェニレンエーテル化合物を配合すれば、硬化性樹脂組成物を用いて形成した電気絶縁層の耐熱性を高めると共に誘電正接を低減することができる。更に、硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の配合剤を含有させてもよい。
【0035】
そして、支持体上に、硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂組成物層を形成する方法としては、特に限定されないが、所望により有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を、支持体に塗布、散布または流延し、次いで乾燥する方法が好ましい。
なお、硬化性樹脂組成物層では、硬化性樹脂組成物が未硬化であってもよいし、半硬化の状態であってもよい。ここで、未硬化とは、硬化性樹脂組成物の調製に用いた硬化性樹脂を溶解可能な溶剤に硬化性樹脂組成物層を浸けたときに、実質的に硬化性樹脂の全部が溶解する状態をいう。また、半硬化とは、さらに加熱すれば硬化しうる程度に途中まで硬化された状態であり、好ましくは、硬化性樹脂組成物の調製に用いた硬化性樹脂を溶解可能な溶剤に硬化性樹脂の一部(具体的には7質量%以上の量であり、かつ、一部が残存するような量)が溶解する状態であるか、または、溶剤中に硬化性樹脂組成物層を24時間浸漬した後の体積が、浸漬前の体積の200%以上になる状態をいう。
【0036】
<導体層の形成>
導体層としては、例えば、銅や金などの導電体により形成された配線を含む層が挙げられる。なお、導体層は、各種の回路を含んでいてもよく、また、配線や回路の構成、厚み等は特に限定されない。
【0037】
そして、電気絶縁層上への導体層の形成は、めっき法などの既知の方法を用いて行うことができる。具体的には、導体層は、必要に応じて電気絶縁層上の支持体を剥離した後、例えばフルアディティブ法やセミアディティブ法などを用いて電気絶縁層上に形成することができる。
なお、導体層が積層される被積層体にビア用の穴が形成されている場合には、導体層の形成と同時にビア用の穴内への導体の形成を行い、ビアを介して導体層同士を電気的に接続することが好ましい。また、導体層の形成は、導体層と電気絶縁層との密着性を向上させるための既知の表面処理を電気絶縁層に施した後に実施してもよい。
【0038】
<ビア形成工程>
本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア形成工程のうち、ビア用の穴を形成する工程と、スミアを除去する工程とは、例えば上述した電気絶縁層の形成と導体層の形成との間に実施することができる。具体的には、ビア用の穴を形成する工程およびスミアを除去する工程は、内層基板に対して合計n回(但し、nは1以上の整数)の電気絶縁層の形成と、合計n−1回の導体層の形成とを交互に繰り返して得られる基板に対して実施することができる。また、ビア形成工程のうち穴内に導体を形成する工程は、上述したようにn回目の導体層の形成と同時に実施することができる。
【0039】
[ビア用の穴の形成]
ここで、ビア用の穴の形成は、レーザー加工、ドリル加工、プラズマエッチングなどの既知の手法を用いて実施することができる。これらの中でも、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、UVレーザー、UV−YAGレーザーなどのレーザーを用いたレーザー加工が好ましい。レーザー加工を使用すれば、電気絶縁層の特性を低下させずに微細な穴を形成することができるからである。
【0040】
なお、前述したように、ビア用の穴の形成は、電気絶縁層から支持体を剥離する前に(即ち、穴が形成される電気絶縁層上に支持体が位置する状態で)実施してもよい。特に、レーザー加工により穴を形成する場合には、支持体を剥離する前にビア用の穴を形成することで、小径で、且つ、開口率(底径/開孔径)が高い穴を形成することができる。
【0041】
また、形成する穴の深さは、所望の導体層同士を接続可能な深さとすることができる。更に、形成する穴の大きさも、任意の大きさとすることができる。
【0042】
[スミアの除去]
本発明の多層プリント配線板の製造方法の一例では、ビア用の穴を形成した際に発生したスミアを以下に詳細に説明する本発明のデスミア処理方法を用いて除去する。なお、前述したように、スミアの除去は、電気絶縁層から支持体を剥離する前に(即ち、穴が形成された電気絶縁層上に支持体が位置する状態で)実施してもよい。
【0043】
(デスミア処理方法)
本発明のデスミア処理方法では、例えば上述したようにしてビア用の穴を形成した基板に対し、スミアの一部を溶解または分解する第1のデスミア処理工程と、第1のデスミア処理工程の後に基板を超音波処理する第2のデスミア処理工程とを実施してスミアを除去する。また、本発明のデスミア処理方法では、第2のデスミア処理工程の超音波処理中に、超音波の周波数を変動させることと、超音波の発振源と基板とを2以上の方向に相対的に移動させることとの少なくとも一方を実施する。そして、本発明のデスミア処理方法では、第1のデスミア処理工程および第2のデスミア処理工程を実施してスミアを除去することにより、穴が形成された基板の表面(電気絶縁層の表面)の荒れを抑制しつつ、スミアを十分に除去する。
【0044】
なお、第1のデスミア処理工程および第2のデスミア処理工程を実施することで電気絶縁層の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去することができる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。即ち、第1のデスミア処理工程においてスミアの一部のみを除去すれば、スミアの全部を溶解または分解する場合と比較し、デスミア処理された基板の表面が荒れるのを抑制することができる。また、通常の超音波処理のみではスミアの残部を除去しきれないが、超音波の周波数の変動および/または超音波の発振源と基板との2以上の方向への相対移動を実施すれば、単一の超音波処理条件で基板を超音波処理する場合と比較して基板全体を効果的に超音波処理し、スミアの残部を十分に除去することができる。
【0045】
<第1のデスミア処理工程>
ここで、第1のデスミア処理工程では、スミアの溶解または分解により基板からスミアを除去することが可能な既知の処理方法を用いてスミアの一部を除去する。具体的には、第1のデスミア処理工程では、基板を過マンガン酸塩などの酸化性化合物の溶液(デスミア液)に接触させる方法、基板にプラズマを照射する方法および基板に紫外線などの光を照射する方法よりなる群から選択される少なくとも一つの方法を用いて基板からスミアの一部を除去することができる。中でも、スミアを低コストで効率的に除去する観点からは、基板をデスミア液に接触させる方法を用いることが好ましく、過マンガン酸塩を含むデスミア液に基板を接触させる方法を用いることがより好ましい。
【0046】
なお、基板とデスミア液との接触は、特に限定されることなく、デスミア液中への基板の浸漬や、基板へのデスミア液の塗布および基板に形成された穴内へのデスミア液の充填などの既知の手法を用いて行うことができる。そして、デスミア液中に基板を浸漬する場合には、スミアをより効率的に除去する観点から、基板を揺動させつつ浸漬させることが好ましい。なお、デスミア液を用いる場合には、デスミア液との接触の前後に基板に対して膨潤処理や中和還元処理などの既知の処理を施してもよい。
また、基板へのプラズマの照射は、特に限定されることなく、真空プラズマ装置や、常圧プラズマ装置などを用いて行うことができる。そして、プラズマとしては、酸素プラズマなどの反応性のガスを用いたプラズマや、アルゴンプラズマ、ヘリウムプラズマなどの不活性ガスを用いたプラズマや、これらの混合ガスのプラズマなど、公知のプラズマを用いることができる。なお、第1のデスミア処理により基板の表面が荒れるのを抑制する観点からは、基板に対するプラズマの照射は、例えば電気絶縁層から支持体を剥離する前に行うことが好ましい。
更に、基板への光を照射は、特に限定されることなく、紫外線照射装置などを用いて行うことができる。そして、第1のデスミア処理により基板の表面が荒れるのを抑制する観点からは、基板に対する紫外線の照射は、例えば電気絶縁層から支持体を剥離する前に行うことが好ましい。
【0047】
<第2のデスミア処理工程>
また、第1のデスミア処理工程の後に実施する第2のデスミア処理工程では、例えば超音波処理槽内に貯留した水などの洗浄液中に基板を浸漬した状態で基板に超音波を照射し、第1のデスミア処理工程で除去されなかったスミアの残部を除去する。具体的には、第2のデスミア処理工程では、洗浄液中に浸漬した基板に対して超音波を照射しつつ、照射する超音波の周波数の変動および/または超音波の発振源と基板との2以上の方向への相対移動を実施して、スミアの残部を十分に除去する。なお、第1のデスミア処理工程においてデスミア液を使用した場合には、基板に付着したデスミア液は、第2のデスミア処理工程の前に水洗浄などの既知の方法で除去してもよいし、第2のデスミア処理工程において洗浄液に基板を浸漬した際に除去してもよい。
【0048】
ここで、第2のデスミア処理工程において超音波処理中に照射する超音波の周波数は、15kHz以上200kHz以下の範囲内であることが好ましく、20kHz以上100kHz以下の範囲内であることがより好ましい。超音波の周波数を上記範囲内とすれば、スミアを効果的に除去し、デスミア性を高めることができるからである。
また、第2のデスミア処理工程において基板を超音波処理する時間は、15秒以上とすることが好ましく、30秒以上とすることがより好ましく、30分以下とすることが好ましい。超音波処理時間を15秒以上とすれば、スミアを効果的に除去し、デスミア性を高めることができるからである。また、超音波処理時間を30分以下とすれば、第1のデスミア処理工程と第2のデスミア処理工程とを連続的に実施して、デスミア処理を効率的に進めることができるからである。
【0049】
なお、本発明のデスミア処理方法では、第1のデスミア処理工程においてスミアの一部を除去した後に第2のデスミア処理工程を実施し、且つ、第2のデスミア処理工程において超音波の周波数の変動および/または超音波の発振源と基板との2以上の方向への相対移動を実施するので、第2のデスミア処理工程では複数の基板を同時に超音波処理した場合であっても、スミアを十分に除去することができる。
【0050】
[超音波の周波数の変動]
ここで、第2のデスミア処理工程において、超音波の周波数の変動は、例えば図1(a)に示すように段階的に(ステップ状に)周波数を変更することにより行ってもよいし、図1(b)に示すように連続的に周波数を変更することにより行ってもよい。
なお、図1(a)では、超音波処理の開始後、時間tで周波数をfからfに増加させ、更に時間tで周波数をfからfへと増加させているが、周波数は、段階的に減少させてもよいし、増加と減少とを繰り返してもよい。また、周波数を変更する回数も任意の回数とすることができる。
また、図1(b)では超音波の周波数を周波数fと周波数fとの間で正弦波状に変化させているが、周波数は、直線状やジグザグ状などの任意の形状で変化させることができる。
【0051】
そして、デスミア性を更に高める観点からは、第2のデスミア処理工程において超音波の周波数を変動させる幅は、2kHz以上80kHz以下であることが好ましい。
【0052】
[発振源と基板との2以上の方向への相対移動]
また、第2のデスミア処理工程において、超音波の発振源と基板との2以上の方向への相対移動は、発振源と基板との少なくとも一方を動かすことにより行うことができる。なお、操作の容易性の観点からは、発振源の位置を固定し、ロボットアームや衝撃揺動機構を備えた装置などを用いて基板を移動させることで発振源と基板とを相対的に移動させることが好ましい。
【0053】
そして、発振源と基板とを相対移動させる方向は、2方向以上であれば任意の方向とすることができる。具体的には、例えば図2に示すように、発振源と基板との相対移動は、超音波発振源2を下部に有する超音波処理槽1内において、超音波処理槽1の底面および基板3の短辺に平行な方向X(図2では左右方向)、超音波処理槽1の底面および基板3の厚さ方向に平行な方向(図1では紙面に直交する方向)、超音波処理槽1の底面に直交する方向Y(図2では上下方向)、方向Xおよび方向Yに対して傾斜した方向Z、或いは、これらの方向の組み合わせなどの任意の方向に向けて行うことができる。
【0054】
なお、操作の容易性の観点からは、相対移動は、180°異なる方向に基板を複数回(2往復以上)移動させる(即ち、基板を揺動する)ことにより行うことが好ましく、デスミア性を高める観点からは発振源に対して近接および離隔する方向(図2では上下方向)に基板を揺動することにより行うことがより好ましい。
【0055】
また、デスミア性を高める観点からは、発振源と基板とを相対移動させる距離Dは、下記の関係式(1):
{音速/(超音波の周波数×2)}/4≦D≦150×{音速/(超音波の周波数×2)} ・・・(1)
を満たすことが好ましく、下記の関係式(2):
{音速/(超音波の周波数×2)}/3≦D≦100×{音速/(超音波の周波数×2)} ・・・(2)
を満たすことがより好ましい。距離Dを{音速/(超音波の周波数×2)}の1/4倍以上とすれば、基板全体をより効果的に超音波処理し、デスミア性を更に高めることができるからである。また、距離Dを{音速/(超音波の周波数×2)}の150倍超とすると、操作が煩雑になると共に超音波処理槽を大型化する必要があるからである。
【0056】
そして、上述した本発明のデスミア処理方法を用いてスミアを除去した基板は、必要に応じて既知の洗浄方法および乾燥方法を利用して洗浄および乾燥した後に、前述したように多層プリント配線板の製造に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、硬化物の誘電正接、並びに、基板のデスミア性および表面荒れは、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0058】
<誘電正接>
電気絶縁層の形成に用いた硬化性樹脂組成物のフィルム状硬化物から幅2.0mm、長さ80mm、厚さ40μmの小片を切り出し、空洞共振器摂動法誘電率測定装置を用いて5GHzにおける誘電正接を測定した。
<デスミア性>
ビア用の穴の形成後、スミアの除去を行った基板の表裏それぞれについて、中心および上下左右の5箇所(表裏合計で10箇所)に位置する穴を電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し、穴内の樹脂残渣の有無について以下の基準で評価した。
A:観察した全ての穴の穴底周辺および穴底中心のいずれにも樹脂残渣無し
B:観察した穴のうち、1〜3箇所の穴の穴底周辺および/または穴底中心には樹脂残渣が存在するが、残りの穴には樹脂残渣無し
C:観察した穴の内、4〜7箇所の穴の穴底周辺および/または穴底中心には樹脂残渣が存在するが、残りの穴には樹脂残渣無し
D:8箇所以上の穴の穴底周辺および/または穴底中心に樹脂残渣が存在
<表面荒れ>
ビア用の穴の形成後、スミアの除去を行った基板について、電気絶縁層が露出した部分の表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を、表面形状測定装置(ビーコインスツルメンツ社製、WYKO NT1100)を用いて5箇所測定した(各測定範囲:91μm×120μm)。そして、測定の結果得られた表面粗さの最大値を以下の基準で評価した。表面粗さの最大値が小さいほど、基板の表面が荒れていないことを示す。
A:算術平均粗さRaが100nm未満
B:算術平均粗さRaが100nm以上200nm未満
C:算術平均粗さRaが200nm以上
【0059】
(実施例1)
<脂環式オレフィン重合体の合成>
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005モル部を窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目で得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンを45モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物を20モル部、アニソールを250モル部およびC1063を0.01モル部追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
その後、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063を0.03モル部追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌して水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体の溶液を得た。脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量は60000、数平均分子量は30000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は20モル%であった。脂環式オレフィン重合体の溶液の固形分濃度は22%であった。
<第1熱硬化性樹脂組成物の調製>
ビフェニル構造を有する多価エポキシ化合物としてのビフェニルジメチレン骨格ノボラック型エポキシ樹脂(商品名「NC−3000L」、日本化薬社製、エポキシ当量269)15部、活性エステル化合物(商品名「エピクロン HPC−8000−65T」、不揮発分65%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223)20部(活性エステル化合物換算で13部)、無機充填剤としてのシリカ(商品名「SC2500−SXJ」、アドマテックス社製)87部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)0.2部、および、アニソール24部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。さらにこれに、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾールをエタノールに20%溶解した溶液2部(2−フェニルイミダゾール換算で0.4部)を混合し、遊星式攪拌機で10分間攪拌して第1熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。なお、ワニス中、充填剤の含有量は、固形分換算で75%であった。
<第2熱硬化性樹脂組成物の調製>
上記脂環式オレフィン重合体の溶液454部(脂環式オレフィン重合体換算で100部)、硬化剤としてのジシクロペンタジエン骨格を有する多価エポキシ化合物(商品名「エピクロン HP7200L」、DIC社製、「エピクロン」は登録商標)36部、無機充填剤としてのシリカ(商品名「アドマファイン SO−C1」、アドマテックス社製、平均粒子径0.25μm、「アドマファイン」は登録商標)24.5部、老化防止剤としてのトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)1部、紫外線吸収剤としての2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール0.5部、および、硬化促進剤としての1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部を、アニソールに混合して、固形分濃度が16%になるように混合することで、第2熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。なお、ワニス中、充填剤の含有量は、固形分換算で15%であった。
<支持体付き硬化性樹脂組成物層の作製>
上記にて得られた第2熱硬化性樹脂組成物のワニスを、表面に離型層を備えるポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体、厚さ38μm)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で5分間乾燥させて、未硬化の第2熱硬化性樹脂組成物からなる、厚み3μmの第2樹脂層(被めっき層)を支持体上に形成した。
次に、第2樹脂層上に、第1熱硬化性樹脂組成物のワニスを、ドクターブレードとオートフィルムアプリケーターを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で5分間乾燥させて、総厚みが40μmである第2樹脂層および第1樹脂層(接着層)が形成された支持体付き硬化性樹脂組成物層を得た。当該支持体付き硬化性樹脂組成物層は、支持体と、第2熱硬化性樹脂組成物からなる第2樹脂層および第1熱硬化性樹脂組成物からなる第1樹脂層よりなる硬化性樹脂組成物層を有している。
<内層基板の調製>
ガラスフィラーおよびハロゲン不含エポキシ化合物を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に厚みが18μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、450mm角(縦450mm、横450mm)の両面銅張り基板の表面に、配線幅および配線間距離が50μm、厚みが18μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して内層基板を得た。
<基板およびフィルム状硬化物の調製>
内層基板の両面に、上記にて得られた支持体付き硬化性樹脂組成物層を430mm角に切断したものを、支持体が付いた状態で、硬化性樹脂組成物層側の面が内側となるようにして貼り合わせた。その後、耐熱性ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、200Paに減圧して、温度110℃、圧力0.1MPaで60秒間加熱圧着し、内層基板上に支持体付き硬化性樹脂組成物層を積層した。次いで、室温で30分間静置した後、空気中において180℃で30分間加熱することにより、硬化性樹脂組成物層を硬化させ、内層基板上に硬化樹脂層(電気絶縁層)を形成してなる基板を得た。
また、厚さ10μmの銅箔に、支持体が付いた状態で、硬化性樹脂組成物層が内側(銅箔側)になるようにして支持体付き硬化性樹脂組成物層を積層した。そして、支持体付き硬化性樹脂組成物層と銅箔との未硬化積層体について、耐熱性ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用い、0.8hPaに減圧して、温度110℃、圧力0.1MPaで60秒間加熱圧着した。次に、室温で30分間静置した後、空気中において温度180℃で30分間加熱し、更に支持体を剥離して温度190℃で90分間加熱することにより、硬化性樹脂組成物層を硬化させた。その後、銅箔付き硬化樹脂層を切り出し、銅箔を1mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液にて溶解し、フィルム状の硬化物を得た。得られたフィルム状硬化物を用いて、上記方法に従い、硬化物の誘電正接を評価したところ、誘電正接は0.004であった。
<ビア用の穴の形成>
内層基板の両面に形成した硬化樹脂層(電気絶縁層)に対し、COレーザー加工機を用いて、支持体が付いた状態のまま、マスク径2.5mm、出力1.1W、バースト2ショットの条件にて、支持体側からCOレーザーを照射した。そして、電気絶縁層に、開口径70μmの穴を形成した。
<第1のデスミア処理>
上記穴を形成した基板を、基板から支持体を剥離した後、膨潤液(「スウェリングディップセキュリガントP」(アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)の濃度が500mL/L、水酸化ナトリウムの濃度が3g/Lとなるように調製した60℃の水溶液)に10分間揺動浸漬して膨潤処理を施した後、水洗した。
次に、過マンガン酸ナトリウムの水溶液(商品名「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)640mL/Lに、水酸化ナトリウムを濃度40g/Lになるように添加してデスミア液を調製した。そして、基板を80℃のデスミア液に20分間揺動浸漬してスミア(樹脂残渣)の一部を除去し、更に水洗した。
続いて、硫酸ヒドロキシルアミン水溶液(「リダクションセキュリガントP500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)の濃度が100mL/L、硫酸の濃度が35mL/Lとなるように調製した40℃の水溶液に、基板を5分間浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
<第2のデスミア処理>
下部に超音波発振器(出力:600W)を有する超音波処理槽を準備した。そして、第1のデスミア処理を行った基板を純水で満たされた超音波処理槽に浸漬し、周波数28kHzの超音波を印加した状態で、基板を超音波処理槽の底面に対して垂直方向に揺動(縦揺動)させた。具体的には、8cmの距離(音速/(超音波の周波数×2)の3倍の距離)を0.15分/サイクルの周期で上下方向に揺動させながら、基板を15分間超音波処理し、スミアを更に除去した。
そして、超音波処理後の基板について、デスミア性および表面荒れを評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
第2のデスミア処理時に基板を超音波処理槽の底面に対して水平方向に揺動(距離:10cm、周期:0.15分/サイクル、超音波処理時間:15分)させた以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
第2のデスミア処理時に基板を超音波処理槽の底面に対して垂直方向に往復移動(距離:8cm、周期:0.15分/サイクル)させた後に水平方向に往復移動(距離:10cm、周期:0.15分/サイクル)させる操作を繰り返した(即ち、垂直方向の揺動と水平方向の揺動とを交互に繰り返した)以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
第2のデスミア処理時に、超音波処理槽に浸漬した基板を揺動させることなく(即ち、基板の位置を固定したまま)、照射する超音波の周波数を段階的に変動させた以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。なお、周波数の変動は、28kHz(10秒間)、50kHz(10秒間)、100kHz(10秒間)を1サイクルとして、15分間超音波処理が終了するまで続けた。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例5)
第2のデスミア処理時に、超音波処理槽に浸漬した基板を揺動させることなく(即ち、基板の位置を固定したまま)、照射する超音波の周波数を27kHz〜29kHzの間で連続的に変動させた以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例6)
第1のデスミア処理時に、デスミア液を使用することなく、支持体剥離前の基板の穴内にプラズマを照射してスミアの一部を除去した以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。なお、プラズマの照射は、プラズマ発生装置(製品名「NM−FP1A」、パナソニックファクトリーソリューションズ社製)を用いて、Oガス雰囲気下、処理時間20分、出力500W、ガス圧20Pa、室温の条件下で支持体側から行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例7)
第1のデスミア処理時に、デスミア液を使用することなく、支持体剥離前の基板の穴内に紫外線を照射してスミアの一部を除去した以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。なお、紫外線の照射は、キセノンエキシマランプを備えた紫外線照射装置を用いて、紫外線照度40W/cm、光源と基板との距離3mm、処理時間60分、室温の条件下で支持体側から行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例8)
第1熱硬化性樹脂組成物のワニスに替えて下記のようにして調製した第3熱硬化樹脂組成物のワニスを使用した以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。なお、第3熱硬化樹脂組成物を用いて調製した硬化物の誘電正接は、0.003であった。
<第3熱硬化性樹脂組成物の調製>
ビフェニル構造を有する多価エポキシ化合物としてのビフェニルジメチレン骨格ノボラック型エポキシ樹脂(商品名「NC−3000L」、日本化薬社製、エポキシ当量269)15部、ポリフェニレンエーテル化合物としての両末端スチリル基変性ポリフェニレンエーテル化合物(商品名「OPE−2St1200」、三菱瓦斯化学社製、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物、数平均分子量(Mn)=1200、60%トルエン溶液)20部(ポリフェニレンエーテル化合物換算で12部)、活性エステル化合物(商品名「エピクロン HPC−8000−65T」、不揮発分65%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223)23部(活性エステル化合物換算で15部)、無機充填剤としてのシリカ(商品名「SC2500−SXJ」、アドマテックス社製)130部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)3114」、BASF社製)0.1部、および、アニソール25部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。さらにこれに、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾールをエタノールに20%溶解した溶液2部(2−フェニルイミダゾール換算で0.4部)、および、硬化剤としてのジクミルパーオキサイド(商品名「パーカドックスBC−FF」、化薬アクゾ社製)をトルエンに50%溶解した溶液0.24部(ジクミルパーオキサイド換算で0.12部)を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して第3熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。なお、ワニス中、充填剤の含有量は、固形分換算で75%であった。
【0067】
(実施例9)
第2のデスミア処理時に、照射する超音波の周波数を430kHzとした以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
第2のデスミア処理時に超音波処理槽に浸漬した基板を揺動させなかった以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理および第2のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例2)
第2のデスミア処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(比較例3)
第1のデスミア処理時に基板をデスミア液に60分間揺動浸漬し、第2のデスミア処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、基板およびフィルム状硬化物の調製、ビア用の穴の形成、第1のデスミア処理を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1より、第2のデスミア処理工程において、超音波の周波数の変動と、超音波の発振源と基板との2以上の方向への相対移動との少なくとも一方を実施した実施例1〜9では、基板の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去できることが分かる。一方、第2のデスミア処理工程において超音波の周波数の変動および超音波の発振源と基板との2以上の方向への相対移動の何れも実施しなかった比較例1〜2では、スミアを十分に除去することができないことが分かる。更に、第1のデスミア処理を長時間行った比較例3では、スミアをある程度は除去することができるものの、基板の表面が荒れてしまうことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、基板の表面の荒れを抑制しつつスミアを十分に除去することが可能なデスミア処理方法を提供することができる。
また、本発明によれば、スミアを十分に除去しつつ高性能な多層プリント配線板を製造することが可能な多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 超音波処理槽
2 超音波発振源
3 基板
図1
図2