(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流注入阻止層は、前記第1電極層と前記半導体積層体との接触面積の18%〜80%で前記第1電極層に接触する請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
前記第2電極層は、前記第1電極層に、前記第1電極層と前記半導体積層体の接触面積の30%〜82%で接触する請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願の発明者は、上述したような複数個の直列接続での半導体レーザ素子が不通となる現象に関して鋭意研究を行ったところ、不通に至るまでに、段階的な現象が発生していることを突き止めた。
【0011】
まず、半導体レーザ素子を複数個直列接続して、これらの半導体レーザ素子に通電すると、長時間経過後に、いずれかの半導体レーザ素子のレーザ発振が停止し、不灯の状態となる。このような不灯の状態であっても、それ以外の直列接続された複数個の半導体レーザ素子は、依然としてレーザ発振し、点灯状態を維持する。この際の不灯の半導体レーザ素子は、pn接合部が劣化しており、微小電流域でリーク電流が発生する。
さらに、不灯状態となった半導体レーザ素子に通電を続けると、リーク箇所に局所的な電流集中が発生し、pn接合部を含む半導体積層体の破壊へと進行する。
続いて、これらの半導体レーザ素子に通電をさらに続けると、不灯状態の半導体レーザ素子において、pn接合部を含む半導体積層体の物理的な破壊が進行し、やがて、この半導体レーザ素子が不通状態となる。これに起因して、直列接続された全ての半導体レーザ素子の通電が停止し、光源として機能しなくなる。
【0012】
これに対して、このような直列接続された全ての半導体レーザ素子の不通状態を回避するためには、各半導体レーザ素子において、pn接合部を含む半導体積層体が破壊されにくい又は破壊されない領域を確保し、できる限りそのような領域を増大させることが有効であることを見出した。そして、半導体レーザ素子が不灯の状態となっても、それ以外の直列接続された半導体レーザ素子が点灯状態を維持する際に、不灯の半導体レーザ素子において劣化しやすく破壊しやすい部位が、半導体積層体における光導波路の中央部及びその両側に相当する部位(活性層及びその近傍又は表面などの、光密度が高い領域及び/又は電流密度が高い領域)であることを確認し、その部位に電流を直接注入しないことにより、効果的に、pn接合部を含む半導体積層体の劣化を抑制し、物理的な破壊を抑制することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0014】
本実施形態の半導体レーザ素子は、主として、表面にリッジが形成された半導体積層体と、リッジ上に配置された第1電極層と、第1電極層上に接触して配置された電流注入阻止層と、電流注入阻止層上に配置された第2電極層とを備える。また、半導体レーザ素子は、第3電極層が配置されている。第3電極層は、例えば、リッジが配置された面とは反対側の半導体積層体の面に配置されていてもよいし、半導体積層体の一部を除去して、第1電極層と同じ面側に配置されていてもよい。例えば、第1電極層及び第2電極層がp電極であり、第3電極層がn電極である。
【0015】
(半導体積層体)
半導体積層体は、通常、第1導電型半導体層、活性層及び第2導電型半導体層がこの順に積層されて形成されるものが好ましい。これらの半導体層の種類は特に限定されるものではなく、例えば、III−V族化合物半導体等、種々の半導体が挙げられる。具体的には、In
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系の半導体材料が挙げられ、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等を用いることができる。各層の組成、膜厚及び層構造等は、当該分野で公知のものを利用することができる。
【0016】
特に、半導体積層体は、第1導電型半導体層(例えば、n型層)及び/又は第2導電型半導体層(例えば、p型層)に光ガイド層を有していることが好ましく、さらにこれらの光ガイド層が活性層を挟んだ構造であるSCH(Separate Confinement Heterostructure)とすることが好ましい。第1導電型半導体層の光ガイド層と第2導電型半導体層の光ガイド層とは、互いに組成及び/又は膜厚が異なる構造であってもよい。
【0017】
活性層は、多重量子井戸構造又は単一量子井戸構造のいずれでもよい。井戸層は、少なくともInを含有している一般式In
xAl
yGa
1-x-yN(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)を有することが好ましい。例えば、300nm〜650nm程度の波長域での発光が可能である。
【0018】
半導体積層体の形成方法は、特に限定されず、MOVPE(有機金属気相成長法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)など、窒化物半導体等の半導体積層体を構成する半導体の成長方法として知られているいずれの方法を用いてもよい。特に、MOCVDは、減圧又は大気圧の条件で、結晶性良く成長させることができるので好ましい。
【0019】
半導体積層体は、通常、基板上に形成される。ここで用いる基板の材料としては、サファイア、炭化珪素、シリコン、ZnSe、ZnO、GaAs、ダイヤモンド、窒化物半導体(GaN、AlN等)等のいずれでもよい。
【0020】
基板の厚みは、例えば、50μmから1mm程度が挙げられる。
基板は、例えば、第1主面及び/又は第2主面に0.03〜10°程度のオフ角を有する窒化物半導体基板であることがより好ましい。基板は、その表面に、格子状、ストライプ状又は島状の凹凸を有するものであってもよい。基板は、転位密度及び/又は極性がほぼ一様に分布しているものを用いることができ、面内で転位密度がストライプ状に周期的に分布するもの及び/又は極性が異なる領域が分布するもの等を用いることもできる。
【0021】
また、基板は、その一表面において、異なる結晶成長面が分布していてもよい。例えば、(0001)面、(000−1)面、(10−10)面、(11−20)面、(10−14)面、(10−15)面、(11−24)面等の2以上の結晶成長面が分布していてもよい。基板としてGaNを用いる場合は、典型的には(0001)面を結晶成長面として使用する。
なお、基板上には、半導体レーザ素子として機能する半導体積層体を形成する前に、バッファ層、中間層(例えば、Al
xGa
1-xN(0≦x≦1)等)等が形成されていてもよい。
【0022】
半導体積層体は、その内部に光導波路領域を有している。光導波路領域は、レーザ光の出射面と反射面とともに、共振器を構成する。そのために、半導体積層体は、平面視、四角形、好ましくは長方形状に形成されている。
【0023】
(リッジ)
半導体積層体の表面、例えば、第2導電型半導体層の表面には、リッジが形成されている。リッジは、その下方であって、かつ活性層(任意に、光ガイド層も含む)に光導波路領域を画定する機能を有する。そのために、リッジは、ストライプ状に、半導体レーザ素子の共振器方向に延長した形状で配置されている。以下、共振器方向を長手方向ということがある。
【0024】
リッジの幅は1〜100μm程度が挙げられる。多重横モードの半導体レーザ素子の場合は、10〜100μm程度が好ましく、15〜80μmがより好ましく、20〜70μmがさらに好ましい。
一般に、多重横モードの半導体レーザ素子は光導波領域の幅が広い(いわゆる、ワイドストライプ)ため、電流密度の低下によりCODをより抑制することができる。また、ワイドストライプのレーザ素子は、電極との接触面積が大きくなることによって、電圧が低下し、共振器長方向の電圧差が小さくなるため、電流集中が起こりにくく、光出力急速低下を低減させることができる。そのため、多重横モードの半導体レーザ素子とする場合、CODだけでなく、光出力急速低下も抑制される。
【0025】
リッジの高さは、第2導電型半導体層を構成する層の膜厚、材料等によって適宜調整することができ、例えば、0.1〜2μmが挙げられる。リッジは、半導体レーザ素子の共振器の延長方向の長さが100〜2000μm程度になるように設定することが好ましい。リッジは、共振器の延長方向においてすべて同じ幅でなくてもよい。リッジは、その側面が垂直であっても、60〜90°程度の角度を有するテーパー状であってもよい。言い換えると、リッジ上面の縁間距離が、リッジ基底部(つまり、リッジ底面)の縁間距離よりも小さくてもよい。
【0026】
リッジは、共振器面に対して垂直に配置されるように形成することが好ましい。これにより、共振器面を、好適な光出射面及び光反射面とすることができる。
【0027】
リッジは、当該分野で公知の方法、例えば、半導体積層体上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンを用いてエッチングする方法により形成することができる。
【0028】
(第1電極層)
第1電極層は、リッジ上に配置され、リッジを構成する半導体積層体と十分に低い接触抵抗値で、典型的にはオーミック接触している。第1電極層は、リッジの延長方向、つまり、長手方向に延長した形状である。第1電極層は、リッジ上に配置されていれば、リッジの側面を被覆していてもよいが、リッジの両縁間にのみ配置されていることが好ましい。言い換えると、第1電極層の外縁は、一部がリッジ側面又はリッジ以外の領域に配置されていてもよいが、全部がリッジ上に配置されていることが好ましい。このような配置により、キャリアをリッジ下方に制限することができ、光をリッジ下方に閉じ込めることが可能となる。
【0029】
第1電極層は、半導体レーザ素子の出射面及び反射面にまで及んでいなくてもよい。つまり、第1電極層は、平面視、出射面及び反射面から離間していてもよい。その離間距離は、出射面側及び反射面側において同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1電極層の出射面側の離間距離は、反射面側の離間距離と等しいことが好ましい。また、第1電極層の出射面側及び反射面側における縁は、半導体レーザ素子の出射面又は反射面に対して平行であってもよいし、出射面又は反射面に向かって一部が突出した形状であってもよい。
【0030】
第1電極層は、例えば、Au、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti、Cu、Ag、Zn、Sn、In、Al、Ir、Rh、Ru、ITO等又はこれらの合金の単層膜又は積層膜によって形成することができる。具体的には、半導体層側からNi/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Au/Pd、Rh/Pt/Au、Ni/Pt/Au等のように積層された積層膜が挙げられる。膜厚は、当該分野で用いられる膜の膜厚のいずれでもよい。例えば、第1電極層の膜厚は、5nm〜2μmが好ましく、50〜500nmがより好ましく、100〜300nmがさらに好ましい。
【0031】
(電流注入阻止層)
電流注入阻止層は、少なくとも、第1電極層の一部を被覆する。
一実施形態では、電流注入阻止層は、第1電極層の上面の一部を被覆する。他の実施形態では、電流注入阻止層は、少なくとも、第1電極層の側面(例えば、長手方向に延長する側面)から上面の一部を被覆する。
電流注入阻止層は、さらに、第1電極層の長手方向に延長する側面から、リッジ側面を被覆し、リッジの両側の半導体積層体の表面を被覆することが好ましい。このように設けることで、リッジの両側を埋め込む埋込膜として、半導体積層体と後で形成する第2電極層を絶縁することができる。この場合、電流注入阻止層は、半導体積層体の表面において、後述する第2電極層が直接接しないように、配置されている。電流注入阻止層とは別の膜として埋込膜として機能する絶縁膜を設けることもできるが、電流注入阻止層を埋込膜として機能するようにリッジ外にまで配置することが好ましい。これにより、工程数を減らすことができる。また、電流注入阻止層の形成面積が大きくなり、剥離を防止することができる。
【0032】
言い換えると、電流注入阻止層は、リッジを含む半導体積層体の表面の略全面を被覆し、かつリッジ上において、第1電極層の一部を露出する開口を有する形状とすることができる。この開口が、後述する第2電極層との接触部位となり、電流注入領域となる。
【0033】
電流注入阻止層は、リッジ上において、第1電極層の外周を所定の幅で取り囲み、かつそれ以外の部位の第1電極層を露出するように配置されていることが好ましい。ここでの外周は、一部でも全部でもよい。言い換えると、外周は、長手方向の両縁の一部のみ又は全部の近傍であってもよいし、長手方向の両縁と短手方向の両縁との近傍のみであってもよい。所定の幅とは特に限定されるものではなく、0.1〜5μm程度が挙げられ、0.5〜3μm程度が好ましい。幅は、外周の全部において異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。電流注入阻止層が後述する突出部を有する場合は、突出部を除く部分においてこのような数値範囲であることが好ましい。
【0034】
一実施形態では、電流注入阻止層は、第1電極層と半導体積層体の接触面積(後述する実施形態1等では第1電極層の平面積と同じ)の18%〜80%で第1電極に接触することが好ましい。言い換えると、リッジ上に配置されている第1電極層の平面積の18%〜80%の上に、電流注入阻止層が配置されていることが好ましく、18%〜60%がより好ましく、18〜50%がさらに好ましい。第1電極層の平面積とは、平面視(第1電極層の上面側からみたとき)における第1電極層の面積を指す。第1電極層が絶縁性の埋込膜等を介してリッジ外まで延びている場合は、第1電極層と半導体積層体との接触面積を基準として、それに対して上述の割合で電流注入阻止層が第1電極層上に配置されていることが好ましい。
【0035】
他の実施形態では、電流注入阻止層は、第1電極層との接触面積の大きさにかかわらず、後述するように、平面視において、第1電極層の両縁からリッジの中央領域に向かって延びる突出部及び/又はリッジの中央領域上に配置される島部を有していることが好ましい。第1電極層の両縁とは、第1電極層の両側で長手方向に延長する外縁である。つまり、リッジの側面に沿った外縁である。中央領域は、両縁及び側面よりも内側の領域を指す。
【0036】
電流注入阻止層の第1電極層を被覆する形状は、特に限定されないが、上述したようなpn接合部を含む半導体積層体のうちの破壊されやすい領域(以下、被破壊領域ということがある)の上方に存在する第1電極層への電流注入を阻止するために、被破壊領域の上方を被覆する形状とすることが好ましい。ここで、被破壊領域は、光密度が高い領域、電流密度が高い領域等であると考えられるため、光導波路の中央領域、リッジ基底部の両端近傍の領域等が挙げられる。従って、これらの領域への電流注入を阻止し得る領域、つまり、これらの領域の上方に配置される第1電極層の部位を、電流注入阻止層で被覆することにより、これらの領域への電流の注入を低減させることができる。その結果、被破壊領域での光密度及び/又は電流密度を低減させることができ、不通状態を防止することが可能となる。
【0037】
電流注入阻止層の形状としては、平面視、例えば、
(a)第1電極層の長手方向に延長する側面を被覆し、第1電極層の長手方向に延長する両縁近傍を被覆する形状、
(b)第1電極層の長手方向に延長する両縁から、リッジの中央領域に向かって延びる形状(以下、突出部ということがある)、
(c)リッジの中央領域上に配置される形状(以下、島部ということがある)等が挙げられる。
電流注入阻止層は、これらの形状の1つのみの形状を有していてもよいし、2以上の形状を組み合わせて有していてもよい。
【0038】
ここで、(a)における両縁近傍とは、リッジの幅、半導体レーザ素子に印加する電流及び/又は電圧の大きさ等にもよるが、例えば、第1電極層の縁から、第1電極層の幅の2〜30%程度の幅が挙げられ、5〜20%程度の幅が好ましい。両縁にそれぞれ同じ幅で設ける場合は、第1電極層上における電流注入阻止層の占有面積はその倍になる。両縁近傍を被覆する形状は、第1電極層の長手方向の全長にわたって連続した形状であってもよいし、分断した形状であってもよい。従って、第1電極層の長手方向の一部のみ被覆する形状であってもよい。
【0039】
(b)におけるリッジの中央領域に向かって延びるとは、例えば、第1電極層の縁から、第1電極層の幅の5〜50%程度の幅が挙げられ、8〜50%程度の幅が好ましい。両縁からそれぞれ同じ幅で延びる場合は、第1電極層上における電流注入阻止層の占有面積はその倍になる。突出部は、(a)の両縁近傍にほぼ一定の幅で設けられた部分よりもリッジの中央領域に向かって延びる形状で設けられる。突出部は、リッジの中央領域で、両縁から延びる突出部が連結して、長手方向の一縁から他縁におよぶものであってもよい。突出部は、第1電極層の長手方向の全長にわたって連続した形状であってもよいし、分断した形状であってもよい。従って、第1電極層の長手方向の一部のみ被覆する形状であってもよい。突出部の長さ(第1電極層の長手方向に沿った長さ)は、例えば、両側から1つずつ延びている場合、一方の側における突出部の長さが第1電極層の長さの70〜95%程度の長さであることが好ましく、複数ずつ延びている場合は、一方の側における合計長さが、第1電極層の長さの30〜70%程度の長さであることが好ましい。第1電極層が電極突出部を有する場合は、第1電極層の側面から延びる突出部は設けない方が好ましく、第1電極層の両縁から延びる突出部のみを設けることが好ましい。
【0040】
(c)におけるリッジの中央領域上に配置されるとは、電流注入阻止層の第1電極層の側面を被覆する部分から、離間して、いわゆる島状に配置される部分を有することを意味する。この島部の幅は、例えば、第1電極層の幅の5〜90%程度の幅が挙げられ、40〜80%程度の幅が好ましい。島部は、単数でもよいし、複数でもよい。複数である場合は、第1電極層の長手方向に沿って直線状に配置することができる。第1電極層の長手方向の全長にわたって連続した形状であってもよいし、分断した形状であってもよい。従って、第1電極層の長手方向の一部のみ被覆する形状であってもよい。島部の長さ(第1電極層の長手方向に沿った長さ)は、単数の場合、第1電極層の長さの70〜95%程度の長さが好ましく、複数の場合、合計長さが、第1電極層の長さの30〜70%程度の長さが好ましい。
突出部及び/又は島部を複数設ける場合、第1電極層の長手方向にほぼ均等に分散して設けることが好ましい。後述する実施形態1等のように第1電極層が電極突出部を有する場合、電極突出部に最も近い部分のみ配置間隔を変えてもよい。突出部及び/又は島部は、10以上設けてよく、50以上設けてもよい。
【0041】
電流注入阻止層の具体的な形状としては、例えば、
(i)電流注入阻止層の突出部が、長手方向に分断して複数配置されている形状、
(ii)電流注入阻止層の島部が、平面視、リッジの中央領域において長手方向に延長して配置されている形状
(iii)電流注入阻止層の突出部が、長手方向に分断して複数配置され、かつ、島部は、リッジの中央領域及び第1電極層の一縁における突出部間において、長手方向に分断して複数配置されている形状、
(iv)電流注入阻止層の突出部が、平面視、第1電極層の一縁から他縁まで延び、長手方向に分断して複数配置されている形状等が挙げられる。
【0042】
電流注入阻止層は、絶縁材料によって形成されることが好ましい。また、電流注入阻止層は、光をリッジ内に閉じ込めやすくするために、半導体積層体よりも低い屈折率を有する材料によって形成されることが好ましい。電流注入阻止層は、例えば、Si、Zr、Al、Taの酸化物、窒化物又は酸窒化物を含む単層又は多層によって形成することができる。その厚みは、特に限定されず、半導体積層体への電流注入を低減又は阻止し得る厚みであればよく、例えば、0.01〜1μm程度が挙げられる。
【0043】
電流注入阻止層は、当該分野で公知の方法により、所望部位に成膜し、所望の形状にパターニングして形成することができる。
【0044】
(第2電極層)
第2電極層は、いわゆるパッド電極として、最終的に外部と接続されるものであり、第1電極層上に、電流注入阻止層を介して配置されている。そして、第2電極層は電流注入阻止層の開口において第1電極層と接触している。つまり、第1電極層と第2電極層との間には部分的に電流注入阻止層が存在している。第2電極層は、第1電極層と、第1電極層と半導体積層体の接触面積(後述する実施形態1等では第1電極層の平面積と同じ)の20〜82%の面積で、より好ましくは40〜82%の面積で、特に50〜82%の面積で、直接接触して配置されていることが好ましい。このような配置によって、上述したように、第1電極層への部分的な接触によって、第2電極層を介して電流を注入する場合に、第1電極層への電流注入密度を電流注入阻止層が存在する部分において緩和することができる。その結果、上述した被破壊領域に相当する半導体積層体中の光密度、電流密度を低減することができ、これらの物理的な破壊を緩和し、不通状態を回避することができる。一方、電流注入阻止層の下に第1電極層が存在することによって、電流注入領域を制限することに起因する電力変換効率の極端な低下を抑制することができる。
【0045】
第2電極層は、第1電極層上にのみ配置されていてもよいし、第1電極層上から、リッジの両側に配置された半導体積層体上において電流注入阻止層又は他の絶縁膜を介して配置されていてもよい。また、第2電極層は、平面視において、出射面及び反射面から離間していてもよい。その離間距離は、出射面側及び反射面側において同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第2電極層の出射面側及び反射面側の縁は、第1電極層の出射面側及び反射面側の縁よりも内側(出射面及び反射面から遠い側)に配置されていてもよいが、外側(出射面及び反射面に近い側)に配置していることが好ましい。第2電極層の出射面側及び反射面側における縁は、半導体レーザ素子の出射面又は反射面に向かって突出した形状であってもよいが、出射面又は反射面に対して平行であることが好ましい。
【0046】
第2電極層は、例えば、第1電極層を構成する材料と同様の材料を選択して形成することができる。例えば、Ni、Ti、Au、Pt、Pd、W、Rh等の金属からなる積層膜とすることが好ましい。具体的には、半導体積層体側からW/Pd/Au、Ni/Ti/Au、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Au/Pt/Auの順に形成した膜が挙げられる。第2電極層の最表面はAuを含むことが好ましい。パッド電極としての第2電極層の膜厚は特に限定されないが、最終層のAuの膜厚は100nm程度以上とすることが好ましい。第2電極層の全体の膜厚は、例えば、0.3〜3μmがより好ましく、0.5〜2μmがさらに好ましい。
【0047】
(第3電極層)
第3電極層は、半導体レーザ素子において、リッジが配置された面とは反対側の半導体積層体の面に配置されていてもよいし、半導体積層体の一部を除去して、第1電極と同じ面側に配置されていてもよい。基板として導電性の材料を用いる場合は、基板の下面(半導体積層体が設けられた面とは反対側の面)に第3電極層を設けることができる。
第3電極層は、第1電極層又は第2電極層と同様の材料から選択して形成することができる。
【0048】
(製造方法)
上述した半導体レーザ素子は、当該分野で公知の方法を利用することにより、形成することができる。また、任意に、さらなる保護膜及び/又は絶縁膜、電極層等を形成してもよい。
なお、半導体レーザ素子は、例えば、M面(1−100)、A面(11−20)、C面(0001)又はR面(1−102)からなる群から選ばれる面によって、共振器面が形成されていることが好ましい。六方晶系の窒化物半導体レーザ素子の場合は、典型的にはM面を共振器面として利用する。
【0049】
(実施形態1)
この実施形態1の半導体レーザ素子10は、
図1及び
図3に示すように、基板11上に、半導体積層体12が積層されており、半導体積層体12の表面にはリッジ13が形成されて、構成されている。
図3は、リッジ13上に第1電極層14のみが形成された状態、つまり、
図1(a)から電流注入阻止層15及び第2電極層16を除いた状態の概略平面図である。この上に電流注入阻止層15と第2電極層16を形成することで、
図1(a)に示す半導体レーザ素子10となる。
半導体レーザ素子10は、平面視形状が、1200μm×150μmの長方形であり、M面で劈開することにより得られた面を共振器面としている。
このように、実施形態1において寸法及び材料の具体例を挙げて説明するが、一例であって、本発明はこれに限定されない。以降の実施形態においても同様である。
【0050】
基板11は、n型GaNからなる。
半導体積層体12は、基板11上に、
SiドープGaN層(膜厚10nm)、
SiドープAl
0.02Ga
0.98N層(膜厚1.6μm)、
SiドープGaN層(膜厚10nm)、
SiドープIn
0.05Ga
0.95N層(膜厚0.15μm)、
SiドープGaN層(膜厚10nm)、
SiドープAl
0.07Ga
0.93N(膜厚0.9μm)よりなる下部クラッド層、
SiドープGaN(膜厚0.3μm)よりなる下部ガイド層、
MQWの活性層、
MgドープAl
0.12Ga
0.88N層(膜厚1.5nm)、
MgドープAl
0.16Ga
0.84N層(膜厚8.5nm)、
アンドープAl
0.04Ga
0.96N(膜厚0.15μm)とMgドープAl
0.04Ga
0.96N(膜厚0.15μm)よりなる上部ガイド層、
MgドープGaN(膜厚15nm)よりなる上部コンタクト層がこの順で積層されて構成されている。
【0051】
MQW活性層は、障壁層と井戸層を含み、基板11側から順に、
アンドープIn
0.03Ga
0.97N層(膜厚250nm)と、
SiドープGaN層(膜厚10nm)と、
アンドープIn
0.15Ga
0.85N層(膜厚3nm)と
アンドープGaN(膜厚3nm)と、
アンドープIn
0.15Ga
0.85N層(膜厚3nm)と、
アンドープIn
0.05Ga
0.95NからGaNに変化する組成傾斜層(膜厚250nm)とを備える。
【0052】
リッジ13は、50μmの幅を有してストライプ状に形成されている。深さは、上部ガイド層が露出する深さとした。リッジ13は、例えば、フォトリソグラフィ及びRIEエッチング法により形成することができる。
半導体レーザ素子10の側面は、半導体積層体12(例えば、n型半導体層)に至る段差が設けられている(
図1(c)参照)。ただし、基板11に至る段差を設けてもよいし、段差を設けなくてもよい。
【0053】
図2に示すように、リッジ13上には、ITOからなる第1電極層14(p電極)が、リッジ13の幅hよりも若干小さい電極幅g(例えば、47μm)、200nmの膜厚で形成されている。第1電極層14は、長手方向に延長して形成されている。第1電極層14は、出射面側及び反射面側の端部の中央に出射面及び反射面に向かって延びる電極突出部14aを有し、それぞれ、出射面及び反射面から離間して配置されている。電極突出部14aの幅fは25μmであり、長さiは30μmであり、第1電極層の全長は、1166μmである。
【0054】
第1電極層14の上には、SiO
2からなる電流注入阻止層15が配置されている。電流注入阻止層15は、厚みが200nmである。言い換えると、電流注入阻止層15は、リッジ13を含む半導体積層体12の略全表面に形成されており、第1電極層14上において開口を有し、その開口内を電流注入領域18とする。
【0055】
電流注入阻止層15は、第1電極層14の側面から、第1電極層14の縁部近傍の上面(第1電極層14の縁部からの距離eは1.5μm、リッジ13の縁部からの距離dは3μm)を被覆し、さらに、半導体積層体12における全上面と、リッジ13の側面とを、連続して被覆している。電流注入阻止層15の外縁は、半導体積層体12の外縁と一致している。
電流注入阻止層15は、平面視において、第1電極層の長手方向に延長する両縁からリッジ13の中央領域に向かって延びる突出部15aを有している。突出部は、長手方向に分断して複数配置されている。突出部15aは、第1電極層14の縁部近傍を被覆する電流注入阻止層15の上面の端部から、突出幅c(6μm)で突出している。従って、突出部15aにおいて電流注入阻止層15は、リッジ13及び第1電極層14を、リッジ13の縁部から9μmの幅で被覆している。
【0056】
電流注入阻止層15の突出部15aは、互いに10μm程度の間隔aをあけて、10μm程度の長さbを有している。ただし、長手方向の最端部においては、間隔a'は8μmであり、長さb'は8.5μmである。
このような電流注入阻止層15は、第1電極層14の平面積の19.1%で第1電極層14に接触している。
【0057】
電流注入阻止層15の上には、第2電極層16が配置されている。第2電極層16は、半導体積層体12上面、リッジ13側面及びリッジ13上面を被覆するように形成されており、第1電極層14の一部に接触している。従って、電流注入領域18において第1電極層14と第2電極層16が接触しており、これによって、第2電極層16から、第1電極層14を経て、半導体積層体12に電流を注入することができる。
第2電極層16は、例えば、半導体積層体12側から、Ni(膜厚8nm)/Pd(膜厚200nm)/Au(膜厚400nm)/Pt(膜厚200nm)/Au(膜厚700nm)の積層膜によって形成されている。第2電極層16は、リッジ13上では、半導体積層体12の短辺側の端部(共振器面)の近傍まで配置されており、半導体積層体12の長辺側の縁部のやや内側に第2電極層16の縁部が配置されている。また、半導体レーザ素子10の四隅において、その縁部が内側に凹んだ形状で配置されている。
【0058】
基板11は、厚みが80μm程度である。基板11の裏面には、基板11側から、Ti(膜厚6nm)/Pt(膜厚200nm)/Au(膜厚300nm)からなる第3電極層17が形成されている。
【0059】
なお、半導体レーザ素子10は、出射側ミラーとして、共振器の出射面にAl
2O
3が膜厚137nmで形成されており、反射面ミラーとして、共振器の反射面にAl
2O
3(膜厚137nm)/Ta
2O
5(膜厚52nm)が形成され、その上に、SiO
2(膜厚76nm)/Ta
2O
5(膜厚52nm)が計6ペア形成され、さらにその上にSiO
2(膜厚153nm)が形成されている。
【0060】
このような半導体レーザ素子10は、通常、接続部材(AuSn共晶等)を用いて支持部材にフェイスダウン実装される。支持部材は、SiCからなる基台と、その上に形成されたTi/Pt/Au/Pt(Tiが基台側)からなる導電層とを有する。
【0061】
この実施形態の半導体レーザ素子は、上述したように、特有の形状の電流注入領域18によって、半導体積層体に電流を注入するため、例えば、長時間の通電によって劣化しやすいpn接合部等における劣化を低減させて、微小電流域でのリーク電流の発生を効果的に抑制することができる。これによって、さらに半導体レーザ素子に通電を続けた場合においても、リーク箇所に発生する局所的な電流集中を緩和させ、pn接合部を含む半導体積層体の破壊を抑制することができる。その結果、pn接合部を含む半導体積層体の物理的な破壊を防止又は回避し、半導体レーザ素子の不通を回避することができる。特に、複数個の半導体レーザ素子が直列接続された場合には、個々の半導体レーザ素子の不通状態を回避することができるため、全ての半導体レーザ素子の不通を免れる。
また、上述した不通状態を回避するための構造は、半導体レーザ素子の発振に悪影響を与えることなく、十分な電力を供給することができ、後述の評価において示すように、電力変換効率の低下の抑制を実現することができる。
【0062】
(実施形態2)
この実施形態2の半導体レーザ素子は、基板11上に、半導体積層体12が積層されており、半導体積層体12の表面には、
図4に示すように、リッジ13が形成されて、構成されている。リッジ13上には、電極突出部24aを有する第1電極層24が形成されている。
【0063】
第1電極層24の上には、電流注入阻止層25が配置されている。
電流注入阻止層25は、第1電極層24の側面から、第1電極層24の縁部近傍の上面を被覆し、さらに、半導体積層体12における全上面と、リッジ13の側面とを、連続して被覆している。電流注入阻止層25の外縁は、実施形態1の半導体レーザ素子10と同様に、半導体積層体12の外縁と一致している。
電流注入阻止層25は、平面視において、さらに、リッジ13の中央領域上に配置される島部25bを有する。
【0064】
図4に示すように、電流注入阻止層25の島部25bは、幅jが10μmであり、長手方向の長さは、1087μmである。
電流注入阻止層25は、第1電極層24の長手方向に延長する縁部近傍の上面を被覆する両端部から、それぞれ17μmの距離jjで離間している。
このような電流注入阻止層25は、第1電極層24の平面積の27.1%で第1電極層24に接触している。
【0065】
上述した電流注入阻止層25の形状以外は、実質的に実施形態1の半導体レーザ素子10と同様の構成を有する。
【0066】
(実施形態3)
この実施形態3の半導体レーザ素子は、
図5に示すように、リッジ13上に、電極突出部34aを有する第1電極層34が形成されている。また、第1電極層34の上に、電流注入阻止層35が配置されている。
電流注入阻止層35は、第1電極層34の側面から、第1電極層34の縁部近傍の上面を被覆し、さらに、半導体積層体12における全上面と、リッジ13の側面とを、連続して被覆している。電流注入阻止層35の外縁は、実施形態1の半導体レーザ素子10と同様に、半導体積層体12の外縁と一致している。
電流注入阻止層35は、平面視において、さらに、リッジ13の中央領域上に配置される島部35bを有する。
【0067】
図5に示すように、電流注入阻止層35の島部35bは、幅kが18μmであり、長手方向の長さは、1087μmである。
電流注入阻止層35は、第1電極層34の長手方向に延長する縁部近傍の上面を被覆する両端部から、それぞれ13μmの距離kkで離間している。
このような電流注入阻止層35は、第1電極層34の平面積の47.4%で第1電極層34に接触している。
【0068】
上述した電流注入阻止層35の形状以外は、実質的に実施形態1の半導体レーザ素子10と同様の構成を有する。
【0069】
(実施形態4)
この実施形態4の半導体レーザ素子は、
図6に示すように、リッジ13上に、電極突出部44aを有する第1電極層44が形成されている。また、第1電極層44の上に、電流注入阻止層45が配置されている。
電流注入阻止層45は、第1電極層44の長手方向に延長する側面から、第1電極層44の縁部近傍の上面を被覆し、さらに、半導体積層体12における全上面と、リッジ13の側面とを、連続して被覆している。
電流注入阻止層45は、平面視において、第1電極層44の長手方向に延長する両縁からリッジ13の中央領域に向かって延びる突出部45aを有している。突出部45aは、長手方向に分断して複数配置されている。
【0070】
さらに、電流注入阻止層45は、平面視において、リッジ13の中央領域に島部45bを有し、島部45bは、長手方向に分断して複数配置されている。
島部45bは、長手方向には、突出部45a間に配置され、短手方向には、電流注入阻止層の中央部分に配置されている。このように、島部45bと突出部45aの両方を設ける場合は、突出部45aの間に島部45bを配置することができる。
島部45bの間隔lは10μmであり、島部45bの長さnは10μmであり、島部45bの幅mは20μmである。
このような電流注入阻止層45は、第1電極層44の平面積の39.3%で第1電極層44に接触している。
【0071】
上述した電流注入阻止層45の形状以外は、実質的に実施形態1の半導体レーザ素子10と同様の構成を有する。
【0072】
(実施形態5)
この実施形態5の半導体レーザ素子は、基板11上に、半導体積層体12が積層されており、半導体積層体12の表面には、
図7に示すように、リッジ53が形成されて、構成されている。リッジ53上には、第1電極層54が形成されている。
リッジ53は、35μmの幅を有してストライプ状に形成されている。
【0073】
リッジ53上には、第1電極層54(p電極)が、リッジ53よりも若干狭い幅で形成されている。第1電極層54は、長手方向に突出する電極突出部54aを有している。この電極突出部54aの長さは30μmであり、幅は、15μmである。
【0074】
第1電極層54の上には、電流注入阻止層55が配置されている。
電流注入阻止層55は、第1電極層54の側面から、第1電極層54の縁部近傍の上面を被覆し、さらに、半導体積層体12における全上面と、リッジ53の側面とを、連続して被覆している。
電流注入阻止層55は、平面視において、第1電極層54の長手方向に延長する一縁から他縁まで延びて連結された形状の突出部55aを有する。突出部55aは、長手方向に分断して複数配置されている。
第1電極層54の長手方向に延長する一縁から他縁までの間において、突出部55aの幅は29μmである。ここでの電流注入領域の幅u'は17μmである。突出部55a同士の長手方向の間隔tは16μmであり、その長さsは16μmである。ただし、最も電極突出部54aに近い部分の間隔rは15.5μmである。
第1電極層54の電極突出部54aに対応する部位においては、突出部55aの間隔pは15μmであり、その長さqは15μmであり、電流注入領域58の幅uは12μmである。最も端部側の突出部55aは、電極突出部54aの内部領域との接続部に配置されている。
このような電流注入阻止層55は、第1電極層54の平面積の72.7%で第1電極層54に接触している。
【0075】
上述した構成以外は、実質的に実施形態1の半導体レーザ素子10と同様の構成を有する。
【0076】
(実施形態6)
この実施形態の半導体レーザ素子は、
図8に示すように、電流注入阻止層65は、第1電極層64の側面から、第1電極層64の上面の一部を被覆し、さらに、半導体積層体12における全上面と、リッジ53の側面とを、連続して被覆している。
電流注入阻止層65は、平面視において、第1電極層64の長手方向に延長する一縁から他縁まで延びて連結された形状の突出部65aを有する。突出部65aは、長手方向に分断して複数配置されている。
第1電極層64の長手方向に延長する一縁から他縁までの間において、突出部65aの幅は29μmである。ここでの電流注入領域68の幅v'は29μmである。
第1電極層64の電極突出部64aに対応する部位においては、電流注入領域68の幅vは12μmである。
このような電流注入阻止層65は、第1電極層64の平面積の54.1%で第1電極層64に接触している。
【0077】
上述した構成以外は、実質的に実施形態1、5の半導体レーザ素子と同様の構成を有する。
【0078】
(評価)
実施形態1〜6の半導体レーザ素子の性能を評価するために、まず、比較例として、
図9A及び
図9Bに示す比較例1及び比較例2の半導体レーザ素子を準備した。
比較例1の半導体レーザ素子は、
図9Aに示すように、リッジ13(幅50μm)上の第1電極層14の上において、電流注入阻止層における突出部を設けず、その長手方向がまっすぐな、幅44μmの電流注入領域8aとした以外、実施形態1の半導体レーザ素子10と同様の構成を有する。電極突出部における電流注入領域8aの幅は22μmである。電流注入領域8aは、第1電極層14の平面積の6.8%を占めている。
比較例2の半導体レーザ素子は、
図9Bに示すように、リッジ13a(幅35μm)上の第1電極層14の上において、電流注入阻止層における突出部を設けず、その長手方向がまっすぐな、幅29μmの電流注入領域8aとした以外、実施形態5の半導体レーザ素子10と同様の構成を有する。電極突出部における電流注入領域8aの幅は12μmである。電流注入領域8aは、第1電極層14の平面積の9.4%を占めている。
【0079】
各半導体レーザ素子に対して、CW駆動(連続駆動)で3.0Aの電流を流した場合の電力変換効率を、
図10(b)、(e)、(h)、(k)、
図11(b)、(e)に示す。これらの図は、1つのウェハから得られた複数の半導体レーザ素子の電力変換効率を求め、その正規確率分布を表わしたグラフである。これらの図では、横軸を累積確率として各データをプロットした。灰色の丸を比較例1及び2の半導体レーザ素子の結果とし、黒色の三角形を実施形態1〜6の半導体レーザ素子の結果とした。
図10(a)、(d)、(g)、(j)、
図11(a)、(d)は、実施形態1〜6の電流注入領域を模式的に示したものであり、それぞれ、
図10(b)、(e)、(h)、(k) 、
図11(b)、(e)に対応する。
【0080】
図10(b)、(e)、(h)、(k) 、
図11(b)、(e)において、累積確率50%のときの値、つまり中央値を比較すると、実施形態1〜4の半導体レーザ素子の、比較例1の半導体レーザ素子に対する電力変換効率の低下率はそれぞれ、0.2%、0.2%、0.8%、0.4%であった。いずれも低下率は1%以下に収まっていることが確認された。特に、適所で第1電極層上に電流注入阻止層が配置された実施形態1、2、4の半導体レーザ素子は、電流注入阻止層が配置されていない場合とほぼ同等の電力変換効率が確保されていることが確認された。
【0081】
これらの図において、中央値を比較すると、実施形態5、6の半導体レーザ素子の、比較例2の半導体レーザ素子に対する電力変換効率の低下率はそれぞれ、1.7%、0.5%であった。実施形態1、2、4よりはやや低下率が大きいが、いずれも電流注入阻止層55、65を設けたことによる電力変換効率の低下が抑制されていることが確認された。
図10(b)と
図10(e)、(h)、(k)では比較例1の値がやや異なるが、これは
図10(b)の比較例1と実施形態1を作製したロットと、
図10(e)、(h)、(k)の比較例1と実施例2〜4を作製したロットがそれぞれ異なるためである。いずれの比較例1も材料及び寸法は同じである。
【0082】
各半導体レーザ素子が不点灯になるまで電圧を印加し続け、不点灯後も継続して電圧を印加した結果を不点灯からの経過時間ごとに、
図10(c)、(f)、(i)、(l)、
図11(c)、(f)に示す。不点灯時が0時間であり、縦軸は0時間の電圧値で各時間における電圧値を割って規格化した値である。破線を比較例1の半導体レーザ素子の結果とし、実線を実施形態1〜6の半導体レーザ素子の結果とした。
図10(a)、(d)、(g)、(j)、
図11(a)、(d)は、実施形態1〜6の電流注入領域を模式的に示したものであり、それぞれ、
図10(c)、(f)、(i)、(l) 、
図11(c)、(f)に対応する。なお、これらのグラフでは、比較例1の半導体レーザ素子とのみ比較した。
【0083】
図10(c)、(f)、(i)、(l)、
図11(c)、(f)に示すとおり、比較例1の半導体レーザ素子は、180時間経過頃にまず1個が電圧値ゼロとなり、750時間経過までに4個すべてが電圧値ゼロとなった。ここでの電圧値ゼロという状態は、安定した電圧特性が維持できなくなり通電が止まってしまった状態を示す。このような半導体レーザ素子に引き続き電圧を印加し続ければ物理的な破壊が生じ、電流が流れない不通状態となる。一方、実施形態1〜6の半導体レーザ素子も同様に複数個について電圧を継続して印加したところ、800時間を超えても電圧ゼロとならず、電圧を印加し続けることができた。実施形態1〜4の半導体レーザ素子は1000時間まで、実施形態5、6の半導体レーザ素子は900時間まで電圧を印加し続けたが、いずれも電圧ゼロにはならなかった。
これらの結果から、比較例1の半導体レーザ素子とは異なり、本実施形態のいずれの半導体レーザ素子も、800時間以上にわたって、電圧値ゼロとはならず、レーザ素子自体に持続して電圧が印加されていることが確認された。つまり、本実施形態の半導体レーザ素子は800時間を超えても不通状態にならないことが確認された。