(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2において、前記第2計算部は、前記イニシャルコスト、前記第2累積ユーティリティコスト、及び前記第2水処理システムのメンテナンス費を加算して前記第2トータルコストを計算することを特徴とする提案支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水処理システムの提案を的確、容易、かつ迅速に行うことができる提案支援装置、提案支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水処理システムの提案支援装置は、水処理システムの給水水質情報を入力する入力部と、複数の水処理システムについてユニット構成及び性能の情報を記憶する記憶部と、前記給水水質情報と、第1水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第1水処理システムの第1回収率又は第1濃縮倍率を計算し、前記給水水質情報と、第2水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第2水処理システムの第2回収率又は第2濃縮倍率を計算する第1計算部と、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて前記第1水処理システムを導入する際の第1トータルコストを計算し、前記第2回収率又は第2濃縮倍率を用いて該第1水処理システムとは異なる態様で前記第2水処理システムを導入する際の第2トータルコストを計算する第2計算部と、前記第1トータルコストと前記第2トータルコストとを比較する比較部と、前記比較部による比較結果を表示する表示部と、を備えるものである。
【0006】
本発明の一態様では、前記第2計算部は、前記第1水処理システムを所定期間使用するための契約金額を計算し、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて前記第1水処理システムの該所定期間の第1累積ユーティリティコストを計算し、該契約金額と該第1累積ユーティリティコストとを加算して第1トータルコストを計算し、前記第2水処理システムの購入に伴うイニシャルコストを計算し、前記第2回収率又は前記第2濃縮倍率を用いて前記第2水処理システムの該所定期間の第2累積ユーティリティコストを計算し、該イニシャルコストと該第2累積ユーティリティコストとを加算して第2トータルコストを計算する。
【0007】
本発明の一態様では、前記第2計算部は、前記イニシャルコスト、前記第2累積ユーティリティコスト、及び前記第2水処理システムのメンテナンス費を加算して前記第2トータルコストを計算する。
【0008】
本発明の水処理システムの提案支援装置は、水処理システムの給水水質情報を入力する入力部と、複数の水処理システムについてユニット構成及び性能の情報を記憶する記憶部と、前記給水水質情報と、第1水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第1水処理システムの第1回収率又は第1濃縮倍率を計算し、前記給水水質情報と、第2水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第2水処理システムの第2回収率又は第2濃縮倍率を計算する第1計算部と、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて前記第1水処理システムを導入する際の第1ユーティリティコストを計算し、前記第2回収率又は第2濃縮倍率を用いて該第1水処理システムとは異なる態様で前記第2水処理システムを導入する際の第2ユーティリティコストを計算する第2計算部と、前記第1ユーティリティコストと前記第2ユーティリティコストとを比較する比較部と、前記比較部による比較結果を表示する表示部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様では、前記ユーティリティコストは、所定期間の累積ユーティリティコストである。
【0010】
本発明の一態様では、前記ユーティリティコストは複数の項目で構成され、前記比較部は、前記複数の項目の一部及び/又は全項目にかかるユーティリティコストの合計を比較する。
【0011】
本発明の一態様では、前記表示部は、前記コストの少なくとも1つを単年又は累積で比較表示する。
【0012】
本発明の一態様では、前記入力部は顧客からの要求処理水量を入力し、前記第2計算部は、各水処理システムの処理水量と、前記要求処理水量とから、各水処理システムの必要台数を計算し、必要台数分の累積ユーティリティコストを計算する。
【0013】
本発明の一態様では、前記累積ユーティリティコストは、給水費、排水費、電気費、蒸気費、及び労務費の少なくともいずれかを項目として含む。
【0014】
本発明の一態様では、前記給水水質情報は、給水のpH、Ca硬度、Mアルカリ度、導電率、シリカ濃度、及び水温を含む。
【0015】
本発明の一態様では、前記給水水質情報は季節毎の水温を含み、前記第1計算部は、季節毎の前記第1回収率及び/又は第1濃縮倍率と、季節毎の前記第2回収率及び/又は第2濃縮倍率とを計算する。
【0016】
本発明の水処理システムの提案支援方法は、表示部及び複数の水処理システムについてユニット構成及び性能の情報を記憶する記憶部を有する提案支援装置を用いて水処理システムの提案支援を行う方法であって、水処理システムの給水水質情報を入力する工程と、前記給水水質情報と、前記記憶部に記憶されている第1水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第1水処理システムの第1回収率又は第1濃縮倍率を計算する工程と、前記給水水質情報と、前記記憶部に記憶されている第2水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第2水処理システムの第2回収率又は第2濃縮倍率を計算する工程と、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムを導入する際の第1トータルコストを計算する工程と、前記第2回収率又は第2濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムとは異なる態様で前記第2水処理システムを導入する際の第2トータルコストを計算する工程と、前記第1トータルコストと前記第2トータルコストとを比較し、比較結果を前記表示部に表示する工程と、を備えるものである。
【0017】
本発明の水処理システムの提案支援方法は、表示部及び複数の水処理システムについてユニット構成及び性能の情報を記憶する記憶部を有する提案支援装置を用いて水処理システムの提案支援を行う方法であって、水処理システムの給水水質情報を入力する工程と、前記給水水質情報と、前記記憶部に記憶されている第1水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第1水処理システムの第1回収率又は第1濃縮倍率を計算する工程と、前記給水水質情報と、前記記憶部に記憶されている第2水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第2水処理システムの第2回収率又は第2濃縮倍率を計算する工程と、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムを導入する際の第1ユーティリティコストを計算する工程と、前記第2回収率又は第2濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムとは異なる態様で前記第2水処理システムを導入する際の第2ユーティリティコストを計算する工程と、前記第1ユーティリティコストと前記第2ユーティリティコストとを比較し、比較結果を前記表示部に表示する工程と、を備えるものである。
【0018】
本発明のプログラムは、水処理システムの給水水質情報を入力する工程と、前記給水水質情報と、第1水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第1水処理システムの第1回収率又は第1濃縮倍率を計算する工程と、前記給水水質情報と、第2水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第2水処理システムの第2回収率又は第2濃縮倍率を計算する工程と、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムを導入する際の第1トータルコストを計算する工程と、前記第2回収率又は第2濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムとは異なる態様で前記第2水処理システムを導入する際の第2トータルコストを計算する工程と、前記第1トータルコストと前記第2トータルコストとを比較し、比較結果を表示部に表示する工程と、をコンピュータに実行させるものである。
【0019】
本発明のプログラムは、水処理システムの給水水質情報を入力する工程と、前記給水水質情報と、第1水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第1水処理システムの第1回収率又は第1濃縮倍率を計算する工程と、前記給水水質情報と、第2水処理システムのユニット構成及び性能の情報とに基づいて、該第2水処理システムの第2回収率又は第2濃縮倍率を計算する工程と、前記第1回収率又は第1濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムを導入する際の第1ユーティリティコストを計算する工程と、前記第2回収率又は第2濃縮倍率を用いて、前記第1水処理システムとは異なる態様で前記第2水処理システムを導入する際の第2ユーティリティコストを計算する工程と、前記第1ユーティリティコストと前記第2ユーティリティコストとを比較し、比較結果を前記表示部に表示する工程と、をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水処理システムの提案を的確、容易、かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜5を参照して実施の形態について説明する。
図1は水処理システムの提案支援装置のハードウェア構成図である。提案支援装置10は、CPU11、メインメモリ12、補助記憶部13、表示部14及び入力部15を備え、例えばスマートフォン、タブレット機器、ノートパソコン等を用いることができる。
【0023】
この提案支援装置10は、提案対象の水処理システム(第1水処理システム)を一定期間客先に設置し、顧客が求める水質・水量の処理水を提供することに要するコストを計算して提示すると共に、比較対象として、構成の異なる水処理システム(第2水処理システム)を顧客が購入して設置した場合のコストを計算し、両者のコストを比較して提示するものである。第2水処理システムは第1水処理システムと同一の構成のものであってもよい。
【0024】
表示部14は、例えば液晶ディスプレイであり、コスト計算結果等の各種情報をユーザに提示する。入力部15は、ユーザから、比較対象の水処理システムの選択指示を受け付けたり、水処理システム設置場所における供給水の水質等の入力を受け付けたりする。提案支援装置10がノートパソコンである場合、入力部15はキーボードやマウスである。提案支援装置10がスマートフォンやタブレット機器である場合、タッチパネルが表示部14及び入力部15となる。
【0025】
補助記憶部13は、例えば、フラッシュメモリタイプやハードディスクタイプの記憶媒体であり、水処理システム情報及び提案支援プログラムを格納する。水処理システム情報は、複数の水処理システムについてのユニット構成や性能に関する情報である。
【0026】
CPU11が、メインメモリ12にロードされた提案支援プログラムを実行することで、
図2に示すように、比較対象の水処理システムを選択する選択部21、水処理システムのマテリアルバランスを計算するマテリアルバランス計算部22(以下「マテバラ計算部22」と略記する)、水処理における様々なコストを計算するコスト計算部23、提案する第1水処理システムを一定期間設置して使用した場合のトータルコストと、比較対象の第2水処理システムを購入して設置し、一定期間使用した場合のトータルコストとを比較する比較部24、及び計算結果や比較結果を含む画面を作成して表示部14に表示させる表示処理部25が実現される。
【0027】
図3は、本実施形態による提案支援方法を説明するフローチャートである。選択部21、マテバラ計算部22(第1計算部)、コスト計算部23(第2計算部)、比較部24及び表示処理部25の処理を
図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0028】
まず、提案支援装置10に、顧客に提案する水処理システム(第1水処理システム)を設定する(ステップS1)。提案する水処理システムは、予め決められたものでもよいし、水処理システム情報に含まれる複数の水処理システムの中から選択してもよい。例えば、水処理システムの複数の候補が表示部14に表示され、ユーザは入力部15を用いて、提案する水処理システムを選択する。
【0029】
提案する水処理システムは、必須の構成設備とオプションの付帯設備とから構成される。例えば、
図4に示すような構成の純水製造装置であり、以降、当該純水製造装置を第1水処理システムとして説明する。
図4に示す純水製造装置は、給水槽41、活性炭濾過装置42、保安フィルタ43、ポンプ44、逆浸透膜装置(RO)45、46、脱炭酸膜装置47、真空ポンプ48及び電気脱イオン装置49を備える。純水製造装置のうち、活性炭濾過装置42、保安フィルタ43、ポンプ44、逆浸透膜装置(RO)45、46、脱炭酸膜装置47、真空ポンプ48及び電気脱イオン装置49は、ユニット化して1つのコンテナに収容し、運搬可能となっている。給水槽41はユニット外に設けられる。活性炭濾過装置42は、オプションの付帯設備とし、顧客の要望に応じて設置/非設置を選択できるようにしてもよい。また、コンテナへの収納もオプションとして取り扱ってもよい。
【0030】
給水槽41内の給水(原水)は、活性炭濾過装置42で塩素が除去された後、保安フィルタ43及びポンプ44を経由し、逆浸透膜装置45、46において塩類(イオン類)や微粒子、生菌が除去される。続いて、脱炭酸膜装置47において水中の遊離炭酸ガスを除去した後、電気脱イオン装置49において微量の塩類(イオン類)等を除去することで、高純度の処理水(純水)を製造することができる。
【0031】
1段目の逆浸透膜装置45の濃縮水は排出される。2段目の逆浸透膜装置46の濃縮水及び電気脱イオン装置49からの濃縮水は、給水槽41へ返送される。
【0032】
次に、水処理システム情報に含まれる複数の水処理システムの中から、ステップS1で設定した水処理システムと同一用途の水処理システム(第2水処理システム)を比較対象として選択する(ステップS2)。ここで選択される水処理システムは、ステップS1で選択した水処理システムと構成が異なっていてもよいし、同じでもよい。この第2水処理システムは、顧客が購入する(買い取る)ことを想定したものである。選択部21は、入力部15を介して、ユーザから比較対象の水処理システムの選択を受け付ける。
【0033】
ユーザが、客先に赴き、提案する水処理システムを設置する場所の給水をサンプリングし、水質の分析を行う(ステップS3)。分析項目は、例えばpH、Ca硬度、Mアルカリ度、導電率、シリカ濃度等である。また、各季節の水温を調べる。提案支援装置10には、各分析項目についてデフォルト値が設定されており、分析を行わずに、デフォルト値を使用して後述の各種計算を行うことができる。また、顧客から提示された数値を使用してもよい。
【0034】
次に、ユーザは、提案支援装置10の入力部15を介して、給水水質の分析結果、各季節の水温、及び顧客が要求する処理水条件を入力する(ステップS4)。処理水条件は、装置の適用用途(業種、用水、排水等)、装置の種類によっても異なるが、例えば純水製造装置で製造される純水の水量、シリカ濃度、比抵抗等である。また、ユーザは、コスト計算の際に必要となる情報、例えば給水単価、排水単価、電気単価、各季節の稼働時間、販売する装置のメンテナンス頻度等も入力する。
【0035】
マテバラ計算部22が、ステップS4で入力された情報を用いて、提案システムと比較対象システムのそれぞれについて、各季節における、システム全体の回収率、濃縮倍率、装置各所の水量、水質等を含むマテリアルバランスを計算する(ステップS5)。
【0036】
まず、マテバラ計算部22は、水処理システムの運転方法、すなわちシステム全体の回収率を計算する。マテバラ計算部22は、CaCO
3量に基づく最大許容回収率と、シリカ量に基づく回収率とを求め、いずれか低い方を回収率として決定する。また、その他の水質項目や保証水質を考慮して回収率を決定してもよいし、先の回収率を補正してもよい。
【0037】
CaCO
3量に基づく最大許容回収率は、入力された供給水のCa硬度、Mアルカリ度、導電率、水温、pHを用いて算出される濃縮水pHが、供給水pHよりも小さくなるような回収率範囲で最大の値である。なお、分散剤等を用いる場合には、濃縮水pHが供給水pHよりも小さくなる必要はなく、その場合の許容範囲は適宜設定される。
【0038】
シリカ量に基づく回収率は、以下の式から求められる。供給水シリカ濃度は、ステップS4で入力された値である。
シリカ量に基づく回収率=1−(供給水シリカ濃度)/(濃縮水シリカ許容濃度)
【0039】
濃縮水シリカ許容濃度は、水温によって異なる。水温と濃縮水シリカ許容濃度との対応関係を規定したテーブルが補助記憶部13に記憶されており、マテバラ計算部22は、このテーブルを参照し、ステップS4で入力された水温から濃縮水シリカ許容濃度を求める。
【0040】
CaCO
3量に基づく最大許容回収率及びシリカ量に基づく回収率は、供給水の水温によって異なる。そのため、マテバラ計算部22は、季節毎の、CaCO
3量に基づく最大許容回収率と、シリカ量に基づく回収率とを求め、回収率を決定する。従って、マテバラ計算部22は、季節毎の回収率Rcを計算する。
【0041】
マテバラ計算部22は、回収率Rcの計算後、装置各所の水量を計算する。例えば、電気脱イオン装置49の回収率及び処理水量Qdは予め決められた値であり、これらの値を用いて、2段目の逆浸透膜装置46の処理水量Qp2及び電気脱イオン装置49の濃縮水量Qcを計算する。
【0042】
逆浸透膜装置46のブライン水量Qb2は予め決められた値であり、ブライン水量Qb2と、計算した処理水量Qp2とを足し合わせることで、1段目の逆浸透膜装置45の生産水量Qp1が求まる。逆浸透膜装置45のブライン水量Qb1及び原水給水量Qf0は、電気脱イオン装置49の処理水量Qdと、回収率Rcとから求めることができる。
【0043】
逆浸透膜装置45への給水量Qf1は、ブライン水量Qb1と生産水量Qp1とを足し合わせることで求まる。このように、マテバラ計算部22は、装置各所の水量を順に計算する。回収率Rcが季節毎に異なるため、装置各所の水量は季節毎に計算される。
【0044】
マテバラ計算部22は、装置各所の水量計算後、装置各所の水質を計算する。例えば、マテバラ計算部22は、逆浸透膜装置45、46の処理水のシリカ濃度、電気脱イオン装置49の処理水のシリカ濃度を計算する。
【0045】
シリカ濃度の計算にあたり、マテバラ計算部22は、逆浸透膜装置45の給水量Qf1と生産水量Qp1とから、逆浸透膜装置45の回収率Rc1を計算する。同様に、マテバラ計算部22は、逆浸透膜装置45の生産水量Qp1と逆浸透膜装置46の処理水量Qp2とから、逆浸透膜装置46の回収率Rc2を計算する。
【0046】
マテバラ計算部22は、以下のRO処理水水質の計算式を用いて、逆浸透膜装置45、46の処理水のシリカ濃度を求める。
【0048】
逆浸透膜装置45の処理水のシリカ濃度は、上記式の「原水水質」に供給水のシリカ濃度、「回収率」に算出した回収率Rc1、「除去率」に事前の試験結果に基づいて定められている値を代入することで、計算することができる。
【0049】
逆浸透膜装置46の処理水のシリカ濃度は、上記式の「原水水質」に計算された逆浸透膜装置45の処理水のシリカ濃度、「回収率」に算出した回収率Rc2、「除去率」に事前の試験結果に基づいて定められている値を代入することで、計算することができる。
【0050】
電気脱イオン装置49の処理水のシリカ濃度は、逆浸透膜装置46の処理水のシリカ濃度と、電気脱イオン装置49の回収率とから計算できる。また、マテバラ計算部22は、電気脱イオン装置49の処理水のシリカ濃度と比抵抗を計算する。
【0051】
マテバラ計算部22は、電気脱イオン装置49の処理水のシリカ濃度や比抵抗の計算値(予測値)が、顧客が要求する処理水条件を満たすか否か判定してもよい。
【0052】
マテバラ計算部22は、比較対象の水処理システムについても、同様に、各季節における、システム全体の回収率、装置各所の水量、水質等を計算する。以上のマテリアルバランスの計算は、
図4に示した純水製造装置を例に記載したものである。提案システムが異なると、必要な計算項目は変更されるが、季節変動を考慮する以外は、基本的にシステムに則した既知の手法を採用することで、マテリアルバランスを計算することができる。
【0053】
マテリアルバランスの計算後、コスト計算部23が、ステップS4で入力された情報と、ステップS5でマテバラ計算部22により計算された各季節の給水量Qf0、排水量(逆浸透膜装置45のブライン水量)Qb1とを用いて、各種コストを計算する(ステップS6)。
【0054】
以下、春夏秋冬それぞれの給水量をQf0(春)、Qf0(夏)、Qf0(秋)、Qf0(冬)とする。また、春夏秋冬それぞれの排水量をQb1(春)、Qb1(夏)、Qb1(秋)、Qb1(冬)とする。また、春夏秋冬それぞれの稼働時間を稼働時間(春)、稼働時間(夏)、稼働時間(秋)、稼働時間(冬)とする。さらに、春夏秋冬それぞれの消費電力をQp2(春)、Qp2(夏)、Qp2(秋)、Qp2(冬)とする。
【0055】
コスト計算部23は、以下の式から年間の給水費を計算する。
給水費={Qf0(春)×稼働時間(春)+Qf0(夏)×稼働時間(夏)+Qf0(秋)×稼働時間(秋)+Qf0(冬)×稼働時間(冬)}×給水単価
【0056】
また、コスト計算部23は、以下の式から年間の排水費を計算する。
排水費={Qb1(春)×稼働時間(春)+Qb1(夏)×稼働時間(夏)+Qb1(秋)×稼働時間(秋)+Qb1(冬)×稼働時間(冬)}×排水単価
【0057】
また、コスト計算部23は、以下の式から年間の電気費を計算する。
電気費={Qp2(春)×稼働時間(春)+Qp2(夏)×稼働時間(夏)+Qp2(秋)×稼働時間(秋)+Qp2(冬)×稼働時間(冬)}×電気単価
【0058】
水処理システムに蒸気を用いる機器が含まれている場合、コスト計算部23は、各季節の水温を考慮して年間の蒸気費を計算する。また、毎日の点検が必要な水処理システムの場合、コスト計算部23は、年間の労務費(=点検時間×労務単価×365日)を計算する。なお、労務費については、後述するように管理費としての項目とすることもできる。
【0059】
コスト計算部23は、オプションの有無を考慮して、購入に伴う装置1台あたりのイニシャルコストを計算する。また、コスト計算部23は、装置1台あたりの処理水量Qdと、顧客が要求する処理水量とから、装置の必要台数を計算する。コスト計算部23は、必要台数分のイニシャルコストを計算する。
【0060】
コスト計算部23は、装置1台当たりのメンテナンス費、メンテナンス頻度、及び装置の必要台数から、年間のメンテナンス費を計算する。メンテナンス頻度は、例えば、手動設定する消耗品の交換頻度や、給水水質から自動設定されるRO膜の洗浄頻度である。
【0061】
コスト計算部23は、遠隔監視によるデータ収集等を含む労務費やメンテナンス費、客先での契約設置期間、事前に設定されているキャッシュフロー等から、純水製造装置(第1水処理システム)を契約した期間だけ設置して使用するための契約金額を計算する。また、コスト計算部23は、給水費、排水費、電気費、蒸気費等の項目の第1水処理システムのユーティリティコストについて、1年毎の金額(単年コスト)及び累積のコスト(累積コスト)を計算する。さらに、コスト計算部23は、契約金額と累積コストとを加算して、第1水処理システムを契約期間だけ設置して使用する場合のトータルコストを計算する。
【0062】
コスト計算部23は、比較対象の第2水処理システムについて、給水費、排水費、電気費、蒸気費、労務費等のユーティリティコストの単年の金額(単年コスト)及び累積額(累積コスト)を計算する。コスト計算部23は、イニシャルコスト、メンテナンス費、及び累積コストを加算して、第2水処理システムを購入して、第1水処理システムの契約設置期間と同じ期間使用する場合のトータルコストを計算する。ここで、労務費は、管理費としてユーティリティコストとは異なるものとしてもよい。この場合、管理費を含めたものが第2水処理システムのトータルコストとなる。
【0063】
コスト計算後、比較部24が、提案対象の水処理システムを契約期間だけ設置した場合のトータルコストと、比較対象の水処理システムを購入して設置した場合のトータルコストとを比較する(ステップS7)。さらに、比較部24は、1年毎のユーティリティコストや、累積ユーティリティコストを比較してもよい。ここで比較されるユーティリティコストは、個別の項目毎に比較することもできるし、各項目の合計で比較することもできる。
【0064】
続いて、表示処理部25が、コスト比較結果に基づいてコスト比較画面を作成し、表示部14に表示する(ステップS8)。
図5に、コスト比較画面の一例を示す。コスト比較画面は、提案対象の第1水処理システムを設置した場合のトータルコスト、単年ユーティリティコスト及び累積ユーティリティコストと、比較対象の第2水処理システムを買い取って設置した場合のトータルコスト、単年ユーティリティコスト及び累積ユーティリティコストと、両者を比較した場合のコスト差とを表示する。
図5は、10年契約の場合の例を示している。ここで、ユーティリティコストの内訳(各項目)を表示して比較したり、全体のユーティリティコストの合計を比較表示したりしてもよい。
【0065】
また、コスト比較画面には、分析した原水(給水)の水質、給水単価や排水単価等のコスト計算で用いられる条件、マテバラ計算部22で計算(予測)された処理水の水質も表示される。トータルコストを単年で比較表示してもよいし、累積で比較表示してもよい。
【0066】
このように、提案支援装置10は、客先の給水の水質が入力されると、適切な運転方法(水処理システム全体の回収率)を割り出し、給水量や排水量を計算する。また、提案支援装置10は、入力された電気単価、給水単価等の情報と、計算した給水量、排水量等とを用いて、ユーティリティコストを計算する。提案支援装置10は、季節毎に変わる水温を考慮して回収率を求め、ユーティリティコストを計算するため、顧客が要求する水質、水量の処理水を製造するために要するコストを精度良く見積もることができる。
【0067】
さらに、提案支援装置10は、提案対象の水処理システムを契約期間だけ設置する場合のトータルコストだけでなく、比較対象の水処理システムを購入して同じ期間使用する場合のトータルコストを計算し、コスト比較画面を作成して、表示部14に表示する。
【0068】
ユーザは提案支援装置10に、給水の水質や給水単価、電気単価等を入力するだけで、
図5に示すようなコスト比較画面を得ることができる。このコスト比較画面を顧客に提示することで、水処理システムの提案を、ビジュアル的に、的確、容易、かつ迅速に行うことができる。顧客は、コスト比較画面から、提案された水処理システムを一定期間設置した場合のトータルコストと、別の(又は同一の)水処理システムを購入して設置した場合のトータルコストとの差を容易に把握することができる。
【0069】
顧客との契約の成立後、ユーザは提案した水処理システムを客先に設置し、契約した期間(例えば10年間)、顧客が求める水質、水量の処理水を提供する。契約期間が満了すると、客先から水処理システムを回収する。
【0070】
上記実施形態では、季節毎(春夏秋冬)の水温を入力し、各季節の回収率、給水量等を計算する例について説明したが、期間の区分は季節によるものに限定されず、客先の給水の水温変化に応じて複数の期間に区分すればよい。各期間の日数は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0071】
また、複数の季節で単価や処理条件を同じとすることができる場合は、複数の季節を1つにまとめてもよい。例えば、春と秋を一纏めにし、春+秋、夏、冬の3つの季節条件としてもよい。冬のみ蒸気費用がかかるとして、春、夏及び秋を同じ季節条件としてまとめてもよい。
【0072】
上記実施形態では、第1水処理システムを契約期間だけ設置して使用し、契約期間満了後は第1水処理システムが回収される(顧客は水処理システムの所有権を持たない)場合のトータルコストと、第2水処理システムを購入して前記契約期間と同一期間使用する(顧客が水処理システムの所有権を持つ)場合のトータルコストとを比較する、すなわち導入態様(装置の所有権の所在が異なるビジネス態様:例えば、所定期間の水供給サービス、リース、装置販売等)の異なる水処理システムのトータルコストを比較する例について説明したが、第1水処理システムと同様に、第2水処理システムを契約期間だけ設置して使用し、契約期間満了後は回収する場合のトータルコストを比較対象としてもよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。