(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683353
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】内視鏡装置および内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/313 20060101AFI20200406BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20200406BHJP
A61B 1/015 20060101ALI20200406BHJP
A61B 1/04 20060101ALI20200406BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
A61B1/313
A61B1/00 R
A61B1/00 711
A61B1/015 514
A61B1/04 511
A61B1/06 511
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-528877(P2018-528877)
(86)(22)【出願日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】JP2017026351
(87)【国際公開番号】WO2018016605
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-144323(P2016-144323)
(32)【優先日】2016年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
【審査官】
磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0010710(US,A1)
【文献】
特開2004−267583(JP,A)
【文献】
特開2006−280537(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/016157(WO,A2)
【文献】
特開昭54−110683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察光学系及び照明光学系を備えた光学視管を有する硬性腹腔鏡装置であって、
前記光学視管には、前記照明光学系に照明光を提供する光源と気腹のためのガスを供給するガスボンベを収容する収容部が、前記光学視管、前記光源および前記ガスボンベを剛性を有する一体として保持可能に設けられていることを特徴とする、
硬性腹腔鏡装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記光学視管を使用者が保持する際に把持するための把持部であることを特徴とする、
請求項1に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項3】
前記収容部は、前記ガスボンベの弁を開閉する弁操作部を備えていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項4】
前記収容部は、前記光源の電源および/または前記ガスボンベを着脱可能なように形成されていることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項5】
前記収容部は、前記光学視管に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項6】
前記光学視管には、前記観察光学系を用いて結像された画像を電気信号に変換する変換装置を一体として結合可能であることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか1項に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項7】
前記変換装置によって電気信号に変換された前記画像を表示可能な表示装置をさらに一体として結合可能であることを特徴とする、
請求項6に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項8】
前記収容部の滅菌処理が可能であることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1項に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項9】
前記収容部は、使い捨て可能に形成されたことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の硬性腹腔鏡装置。
【請求項10】
前記ガスボンベの胴体部表面の少なくとも一部を覆うように、断熱部が設けられていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の硬性腹腔鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡外科手術のための内視鏡装置およびそれを用いた内視鏡システムに関し、より具体的には気腹による視野確保が必要な外科手術についての新規な硬性腹腔鏡装置及び硬性腹腔鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は内視鏡を用いて腹腔内を観察する際の一般的なシステムを表している。腹腔内を観察するには硬性の内視鏡を用いて、体内の映像をディスプレイ装置973に表示して確認するのが現在の一般的な手法である。この際、体内において視界及び術野を確保する必要があるが、腹腔内に炭酸ガスを送気して腹腔内を膨らませる、気腹という手段を用いる術式が広く採用されている。
【0003】
具体的には、
図5に示すように、まず患者の体表面に小径の穴を設けてそこから体内にトロッカー961を挿入し、当該トロッカー961を介して光学視管911を体腔内に挿入する。光学視管911には観察光学系と照明光学系が備えられており、当該観察光学系により被観察対象の画像を取得し、ビデオプロセッサ972を通してディスプレイ装置973に表示する。
【0004】
トロッカー961には、弁を有する気腹用のガスポート962が設けられており、気腹装置952により流量を制御されたガスが、当該ガスポート962を通して腹腔内に供給される。
【0005】
このため、腹腔鏡手術を行う際には、光学視管911や手術内容に応じた鉗子などの手術器具の他に、ビデオプロセッサ972、ディスプレイ装置973、光学視管の照明光学系に光を供給する光源装置941、ガスを腹腔内に送気するためのガスボンベ951及びガスの流量を制御する気腹装置952といった、様々な装置が必要となる。これらの装置類は手術室内において一括して配置され、システムとして一体的に機能していることが一般的である。
【0006】
なお、近年は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の考え方が浸透しつつある。このUHCとは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味しており、より多くの人が経済的な困難を伴わずに、保健医療サービスを受けられることを目指すものである。そして、このUHCの考え方は、内視鏡外科手術の分野においても促進されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−113256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の装置類は専用のタワー型ラックに設置されることが一般的であるが、なお多くの設置スペースが必要となっている。また、それぞれの装置は高度な医療を行う手術室での使用が前提となっており、持ち運びを念頭において装置全体の小型化、簡素化を図られたものではない。むしろ、過度に高機能を目指すことにより、システムの巨大化、高コスト化、使用の困難化を招いていた。
【0009】
一方、大規模災害の現場など、必ずしも高度な医療を行い得る環境が整っていない状況下においても、内視鏡を用いて腹腔内の診察や比較的簡単な処置などを行うことへのニーズが存在している。しかしながら、前述のような高度で大掛かりなシステムは高価でもあり、上記のような状況下では使用が困難である。また、上記のような状況下においては、必ずしも高性能なシステムが求められているわけではなく、UHCの観点からしても、むしろ簡素で使用し易く、低コストな内視鏡システムが求められる場合があった。
【0010】
本発明は、上記のような状況に鑑みて、従来よりも小型軽量、簡素または低コストで、使用する際に高度な技術や慣れを必要としない内視鏡システムを構築するための内視鏡装置、及びこれを用いた内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明にかかる内視鏡装置は、観察光学系及び照明光学系を備えた光学視管を有する硬性腹腔鏡装置であって、前記光学視管には、前記照明光学系に照明光を提供する光源と気腹のためのガスを供給するガスボンベを収容する収容部が、前記光学視管、前記光源および前記ガスボンベを剛性を有する一体として保持可能に設けられていることを特徴とするものとした。
【0012】
上記硬性腹腔鏡装置のように、光源装置とガスボンベを小型のものとして光学視管と剛性を有する一体として保持可能にすることで、これらを設置するスペースを省略することが可能になる。より具体的には、例えば、光源装置と光学視管が一体となっているため、光源装置からの光を光学視管に導くライトガイドケーブルを省略することができる。特に、本発明においては、内視鏡のなかでも硬性腹腔鏡にこのような構成を適用したので、装置全体をより剛性の高いコンパクトな一体構成とすることができ、術者による片手での操作をも可能にしている。
【0013】
また、上記のような構成によって、使用するガスボンベの弁装置の開閉を術者の手元においてマニュアル操作により行うことが容易になり、従来気腹ガスの流量を自動制御するために用いていた気腹装置を省略することも可能になる。なお、ガスボンベの弁装置の開閉操作は必ずしも光学視管保持者自身が行う必要はなく、弁装置も、ガスボンベ本体に設けられていてもよいし、ボンベとは別体として設けられてもよい。
【0014】
また、前記硬性腹腔鏡装置における前記収容部は、前記光学視管を使用者が保持する際に把持するための把持部を兼ねていてもよい。
【0015】
光学視管を用いて被観察対象の画像を適切に取得するには、光学視管を適切な位置・角度に調整し、その状態を維持する必要がある。そこで、前記収容部を光学視管の把持部として構成することで、収容部のスペースを有効利用しつつ、安定的に内視鏡を保持することが可能となる。なお、ここで把持部とは、例えば光学視管を拳銃の銃身と見立てた場合に、拳銃の銃把(グリップ)のような形状を有していてもよいし、その他の形状を有していてもよい。把持部が拳銃の銃把(グリップ)のような形状を有している場合には、光学視管を含む硬性腹腔鏡装置全体を(操作性が追及された道具としての)拳銃のような感覚で操作することが可能で、より好適な使用感覚と操作性を得ることが可能である。
【0016】
さらに、前記収容部は、前記ガスボンベの弁を開閉する弁操作部を備えていてもよい。
【0017】
このような構成とすることで、例えばガスボンベ本体に触れることができないような態様でガスボンベを収容する場合でも弁装置の開閉操作が可能になり、ガスボンベを収容する態様の自由度を高めることができる。
【0018】
さらに、前記収容部は、前記光源の電源および/または前記ガスボンベを着脱可能なように形成されていてもよい。このようにすることで、電力を使い切った際には電源のみを、また、ガスを使い切った際にはガスボンベのみを交換することが可能になり、装置全体を交換することに比べ、非常に経済的である。
【0019】
さらに、前記収容部は、前記光学視管に対して着脱可能に設けられていてもよい。
【0020】
このような構成とすることで、収容部ごと電源およびガスボンベを交換することが可能になり、術中の清潔性の確保の負担を軽減することができる。
【0021】
また、前記内視鏡装置における前記光学視管は、前記観察光学系を用いて結像された画像を電気信号に変換する変換装置を一体として結合可能であるようにしてもよい。
【0022】
このようにしておくことで、前記電気信号を画像表示装置に伝送して観察対象の画像を該画像表示装置に表示させることができ、従来と同様に複数人で同時に術野の状況を観察することもできる。
【0023】
さらに、前記光学視管は、前記変換装置によって電気信号に変換された前記画像を表示可能な表示装置をさらに一体として結合可能であるようにしてもよい。
【0024】
前記画像表示装置を別体として備えた場合には、そのためのスペース、配線等が必要になるが、表示装置を光学視管に一体として結合可能にすることで、内視鏡システム全体をより簡素な構成とすることができる。また、このような構成であれば、光学視管を直接覗き込む場合と比較して、無理のない姿勢で観察対象を視認することが可能となる。
【0025】
なお、前記画像表示装置は本発明に必須の構成では無く、例えば前記光学視管にアイピースを取り付け、光学視管を直接覗き込んで体腔内の様子を観察するようにしてもよい。
【0026】
このようにすれば、ビデオプロセッサ及びディスプレイ装置を省略することも可能であるため、腹腔鏡手術用の装置を設置するスペースを大幅に削減することができ、より簡素で低コストな硬性腹腔鏡システムを提供することができる。
【0027】
また、本発明に係る硬性腹腔鏡装置は、前記収容部の滅菌処理が可能であるように形成されていてもよい。
【0028】
前記内視鏡装置は医療機器として製造後梱包前に滅菌処理されることや、医療現場において再利用のために滅菌処理されることが考えられる。この際に、前記収容部が滅菌処理可能になっていれば、内視鏡としての清潔性確保のための負担を軽減することができる。より具体的には、前記収容部を、耐熱性および/または耐薬品性に優れた素材により形成してもよく、高い気密性、水密性、耐圧性を備えた構造にしてもよい。
【0029】
また、前記硬性腹腔鏡装置においては、前記収容部は、使い捨て可能に形成されてもよい。ここで、使い捨てとは使用の度に廃棄するもののみをいうのではなく、数回から数十回の再利用を予定したセミディスポーザブルであるものも含む。
【0030】
また、前記硬性腹腔鏡装置には前記ガスボンベの胴体部表面の少なくとも一部を覆うように、断熱部を形成してあってもよい。ガスを使い切ってガスボンベを交換する際など、気化熱により冷却された状態のボンベ表面に直接触れた場合には凍傷を負うおそれがある。また、冷却されたガスボンベが周辺部材に悪影響を及ぼすおそれもある。断熱部を設けておくことでこれらのリスクを低減することができる。なお、断熱部はボンベ表面に直接設けられていてもよいし、前記収容部のボンベ収容部分に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、より簡素または低コストな硬性腹腔鏡システム及びそのための硬性腹腔鏡装置を提供することができる。また、硬性腹腔鏡システム及び硬性腹腔鏡装置全体の一体性または剛性をより高くすることができ、システム及び装置のより多くの機能を、片手で使用可能な形態に集約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る第1の実施例である硬性腹腔鏡装置の使用例を表す図である。
【
図2】本発明に係る第1の実施例である硬性腹腔鏡装置を側面から見た断面図である。
【
図3】本発明に係る第2の実施例における硬性腹腔鏡システムの全体を表す図である。
【
図4】本発明に係る第2の実施例における収容部を表す図である。
【
図5】腹腔鏡に係る従来のシステムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。以下の実施例に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0034】
なお、本明細書において「基端」および「近位端」は使用者に近い側の端を、「先端」および「遠位端」はそれとは反対側の端を指すものとする。
【0035】
<実施例1>
まず、本発明の第1の実施例について説明する。
図1は本発明に係る第1の実施例である内視鏡装置の使用例を表す図であり、硬性腹腔鏡装置111とともに、ガスポート157を備えたトロッカー161、送気チューブ156が記載されている。これら硬性腹腔鏡装置111、トロッカー161、送気チューブ156によって、患者の体内を観察するための硬性腹腔鏡システム11が構成される。なお、
図2は
図1の硬性腹腔鏡装置111を側面から見た断面図である。
【0036】
図1及び、
図2が示すように、硬性腹腔鏡装置111は、照明光学系であるライトガイドケーブル122(例えば光ファイバケーブル)および、観察光学系である対物レンズ123、及び画像伝送用のリレーレンズ125a〜dを内蔵する光学視管121、光学視管の基端部に接続(例えばネジ結合)されたアイピース171、光源装置部132およびガス供給部133からなる収容部131、によって構成される。なお、光学視管121の長さは、特に制限されないが、腹壁に小切開を加えて挿入し、腹腔および腹腔内臓器を観察できる長さであればよく、軟性の消化器内視鏡におけるほどの長さは必要ない。
【0037】
上記アイピース171は接眼レンズ172を備えており、使用者はアイピースを覗き込むことによって、光学視管先端部の対物レンズ123から取り込まれ、リレーレンズ125a〜dによって伝送された像を認識する。
【0038】
なお、本実施例ではアイピース171を介して硬性腹腔鏡先端部の像を覗き見るようになっているが、光学視管121にカメラ及びビデオプロセッサを接続し、光学視管が捉える画像を別体のディスプレイ装置に表示させるようにしてもよい。
【0039】
次に、収容部の131の詳細について説明する。収容部131は、硬性腹腔鏡装置111の把持部を兼ねて銃把のような形状となっており、底部が開閉可能な蓋部材135によって構成されている。蓋部材135は光源装置部132の下端部に回動自在に軸支されており、閉じた状態では、ツメ135aが溝131aに係合されることにより係止される。
【0040】
なお、本実施例においては、収容部131は光学視管121と一体の構造となっているが、収容部131が例えば雄雌の係止部材により着脱可能な構造となっていてもよい。本実施例においては、収容部131と光学視管121とが着脱可能か否かに拘らず、両者の結合状態においては、収容部131と光学視管121とは強固に固定されており、装置全体としての剛性が維持される。収容部131と光学視管121との結合方法としては、上記の他、ねじ止め、接着、溶接などの方法が採用されてもよい。また、収容部131と光学視管121のいずれか一方に雄ねじが固定され、他方には雌ねじが形成され、一方を他方にねじ込むような結合方法が採用されてもよい。
【0041】
収容部131の内部は、ライトガイドケーブル122に光を供給する光源装置部132と、送気チューブ156にガスを供給する気腹ガス供給部133に分かれており、さらに、光源装置部132には電池収容部142が、気腹ガス供給部133にはガスボンベ収容部159が設けられている。
【0042】
そして、
図2が示すように蓋部材135を開いた状態にすると、収容部131の底部から、電池およびガスボンベを、それぞれ電池収容部142およびガスボンベ収容部159に着脱することが可能になる。
【0043】
なお、本実施例においては、光源装置部132について電池のみを着脱可能としたが、電池だけでなく光源141も同時に着脱可能な構成であってもよい。
【0044】
光源141(例えばLED)は、光源スイッチ143をONにすることで電池を電源として発光し、光源141から発せられた光はライトガイドケーブル122を通じて光学視管121の先端部から照射される。
【0045】
なお、使用する電池の規格は特に限定されず、一次電池であるか二次電池であるかも問わない。また、本実施例では、光源スイッチ143を設けて点灯と消灯を切り替え可能にしたが、これを設けずに電池をセットすれば点灯し続ける構成であってよい。
【0046】
続けて、気腹ガス供給部133の詳細と本実施例における気腹手段について説明する。本実施例において使用されるガスボンベ151は、本体内に比較的小容量(例えば25g)の炭酸ガスが充填されており、弁装置152が内蔵されている小型(例えば、高さ10cm、直径3cm)のボンベである。そして、ガスボンベ151の本体上部には、前記弁装置152と連動するステム153が設けられている。
【0047】
なお、ガスボンベ151は、充填されたガスを使い切ってしまった場合には、術中でも交換可能であるため、ガスボンベの容量及びサイズは、ガスボンベ収容部159に収容可能なものであれば、特に上記のものに限定されない。
【0048】
なお、ガスボンベ151の表面には、例えば発泡ゴムでガスボンベ151の胴体部の少なくとも一部を覆うようにして断熱部が設けられていてもよい。また、ガスボンベ151表面ではなく、ガスボンベ収容部159の内側に断熱部が形成されていてもよい。このようにしておくと、気化熱により冷却されたボンベ表面に直接触れることを防止し、冷却されたガスボンベが周辺部材に悪影響を及ぼすリスクを低減することができる。
【0049】
気腹ガス供給部133の上部には、トリガーレバー式の弁操作部134が設けられている。弁操作部134は、ガスボンベ151のステム153に嵌合するステム嵌合部136と、そこからノズル138までつながるガス流路137を備えている。そして、ガスボンベ151は、ステム153を弁操作部134のステム嵌合部136に嵌め込むようにして、ガスボンベ収容部159に収容される。
【0050】
この状態において、引き金を引くように弁操作部134を操作すると、ステム嵌合部136が押下され、ガスボンベ151の弁装置152が開いてガスが弁操作部134のノズル138から放出される。ノズルから放出されたガスは、送気チューブ156を通ってトロッカー161のガスポート157に達し、そこから患者の腹腔内に送気される。
【0051】
なお、本実施例においては、従来の腹腔鏡システムにおける気腹装置のように、圧力を自動調整するダウンレギュレータは省略されており、弁操作部134をマニュアルで操作することによるガス圧調整が前提となっている。これは、腹腔内を直接観察しながらマニュアルでガス圧調整を行うことで充分に適切な気腹を行うことができるという知見に基づくものである。本実施例においては、腹腔鏡システム11が片手で操作可能となるように、内視鏡装置111は剛性を伴う一体構成としているので、一人の術者により他の作業と気腹作業とを両立させることができ、マニュアルのガス圧調整による気腹作業をより容易に実現可能としている。
【0052】
なお、光学視管121および収容部131は滅菌可能であるようにしてもよい。具体的には、オートクレーブによる高圧蒸気滅菌が可能なように、金属(例えばステンレス)や耐熱性に優れた樹脂(例えばポリプロピレン)を素材として用い、高い気密性、水密性を有する構造にしてもよい。また、化学滅菌が可能なように、耐薬品性に優れた樹脂(例えばフッ素樹脂)を素材として用いてもよい。
【0053】
また、硬性腹腔鏡装置111は使い捨てのものとしてもよい。その場合には、ガスボンベや電源が交換可能な構造でなくてもよく、例えば収容部131を蓋部材135により開閉可能な構造にする必要もない。また、素材に安価な樹脂(例えばポリエチレン)を用いてもよく、必ずしも高い気密性、防水性を確保する必要もない。このため、硬性腹腔鏡装置111を非常に低コストで提供することができる。上記においては、硬性腹腔鏡装置111全体を使い捨て可能としても構わないし、例えば、収容部131など一部の構成を使い捨て可能にとしても構わない。収容部131を使い捨て可能とする場合には、例えば収容部131の一部が開口し、内部のガスボンベや電源の一部が露出しているような構成とし、収容部131の構造をより簡略化することで、使い捨てし易い構成としてもよい。
【0054】
以上のように、上記の本実施例においては、消化器内視鏡と比較して高い剛性を有し比較的短い光学視管121と、収容部131とを強固に組み合わせることにより、術者が片手で照明機能、観察機能、気腹機能を発揮させることが可能となっている。また、本実施例に係る硬性腹腔鏡システム11は、外部電源を必要としないので、電源ラインにより使用範囲が制限されたり、使用時に電源ラインに引っ張られる等の負荷がなく、使用自由度が格段に高くなっている。また、小型軽量、低コスト、電源フリーなので、災害現場、新興国でも使用し易い。
【0055】
なお、単に軟性の消化器内視鏡に収納部131を設けた場合には、内視鏡の作動のためのダイヤル等を収納部131とは別途設ける必要があり、また、一般に消化器内視鏡は硬性腹腔鏡より大幅に長く軟弱であるため、片手での使用は不可能である。よって、本実施例における硬性腹腔鏡装置111及び硬性腹腔鏡システム11は、単に軟性の消化器内視鏡に収納部131を設けた場合に比較して大きなメリットを有する。
【0056】
また、本実施例における硬性腹腔鏡装置111及び硬性腹腔鏡システム11は、ビデオプロセッサ、モニターとして、スマートホン、タブレットを使用可能とすることで、装置のコンパクト性、使い易さを損なわずに機能向上を図ることが可能となっている。
【0057】
<実施例2>
以下、本発明の第2の実施例について説明する。
図3は本実施例に係る硬性腹腔鏡装置211を用いた硬性腹腔鏡システム21を表す図であり、硬性腹腔鏡装置211、気腹針257、送気チューブ256が記載されている。
図3が示すように、硬性腹腔鏡装置211は、光学視管221、収容部231、収容部231に保持されたガスボンベ251、光学視管221の基端部側に接続された液晶モニタ付きハンディビデオカメラ271を備えている。そして、図示しないが、光学視管221には実施例1と同様に、照明光学系のライトガイドケーブル及び観察光学系のレンズが内蔵されている。
【0058】
ここで、ハンディビデオカメラ271は、画像表示機能と録画機能のみを備えた簡易なものであってもよいが、市販品のビデオカメラのように、ズーム機能や明度補正機能などが備えられていてもよい。
【0059】
なお、ハンディビデオカメラ271は、必ずしも本発明に必須の構成ではなく、硬性腹腔鏡装置211は撮影装置(カメラ)のみを一体として備えており、該撮影装置で撮影した画像を別体の画像表示装置(モニタ)に表示して、複数人で同時に当該画像を観察し得るようにしてもよい。また、撮影装置で撮影した画像を別体の記録装置に記録し得るようにしてもよい。
【0060】
さらに、上記ハンディビデオカメラ271に変えて、携帯電話、タブレット端末などの携帯情報端末を接続し、当該携帯情報端末のカメラ機能を用いて画像を観察し、当該携帯情報端末の記録媒体を用いて画像を記録し得るようにしても良い。なお、当該携帯情報端末、上記ハンディビデオカメラ271、および上記撮影装置は、本願の特許請求の範囲における「変換装置」に相当する。
【0061】
続けて、
図4を参照して収容部231について説明する。
図4に示すように、収容部231は、光源装置収容部232と、そこから延びる四つの円弧状の部材233a〜dによって形成されるガスボンベ保持部によって構成され、前記233a〜dによってガスボンベ251を着脱自在に保持し得るようになっている。
【0062】
そして、光源装置収容部232には、光学視管221と接続するための収容部側接続部235が設けられており、光学視管221に設けられた本体側接続部223と着脱可能に接続される。接続のための手段は特に限定されないが、例えば収容部側接続部235を雄ネジ、本体側接続部223を雌ネジとして、ネジにより係合されるものであってもよい。
【0063】
本体側接続部223には、光学視管221に内蔵されたライトガイドケーブル(不図示)の一端が位置しており、光源(不図示)から発せられた光は該ライトガイドケーブルを通じて、光学視管先端部に照射される。
【0064】
次に、本実施例の気腹手段について説明する。本実施例において使用されるガスボンベ251は、本体内に比較的小容量の炭酸ガスが充填されており、弁が内蔵されている小型のボンベである。ここで、ガスボンベ251の胴体部には、断熱部252が設けられている。断熱部252は発泡ゴムでガスボンベ251の胴体部を覆うようにして形成されており、使用者が気化熱によって冷却されたガスボンベ251に触れて凍傷を負うような危険を防止することができる。
【0065】
そして、ガスボンベ251の本体上部には、ボンベ内の弁装置と連動し、ノズル255を備えるプッシュボタン254が設けられている。該プッシュボタン254を押下すると、本体内に内蔵された弁装置が開き、ボンベ内部に充填されていた炭酸ガスが、ノズル255から送気チューブ256、気腹針257を通じて患者の腹腔内に送気される。
【0066】
本発明は、上記の実施例の構成に限定されない。光源装置と、気腹装置とを収納した収納部が光学視管と一体的に構成された硬性腹腔鏡装置であれば、他の構成も本発明に含む趣旨である。
【0067】
また、本発明における硬性腹腔鏡システムは、必ずしも人間の腹腔鏡手術を対象としたものに限定する趣旨ではない。すなわち、本発明における硬性腹腔鏡システムによれば、腹腔鏡システムを持った状態でも術者による素早い動きが可能となるので、動きが予測困難な動物の治療への応用も可能である。よって、イヌ、ネコ等のペットや家畜の腹腔鏡手術を対象としても構わない。
【符号の説明】
【0068】
111、211・・・・硬性腹腔鏡装置
121、221・・・光学視管
131、231・・・収容部
134・・・弁操作部
141・・・光源
151、251・・・ガスボンベ
156、256・・・送気チューブ
157・・・トロッカーのガスポート
161、261・・・トロッカー
171・・・アイピース
257・・・気腹針
271・・・ハンディビデオカメラ