特許第6683370号(P6683370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683370カリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極、カリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタ及びカリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683370
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】カリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極、カリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタ及びカリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20200413BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20200413BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20200413BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20200413BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20200413BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20200413BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20200413BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20200413BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20200413BHJP
【FI】
   H01M4/133
   H01M4/587
   H01M4/62 Z
   H01M4/66 A
   H01M10/054
   H01G11/06
   H01G11/32
   H01G11/38
   H01G11/68
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-554012(P2016-554012)
(86)(22)【出願日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2015075128
(87)【国際公開番号】WO2016059907
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210867(P2014-210867)
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】駒場 慎一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 圭
(72)【発明者】
【氏名】ダビ ムアッド
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 辰弥
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−064932(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/173891(WO,A1)
【文献】 特開2011−023710(JP,A)
【文献】 特開2006−216511(JP,A)
【文献】 特開2013−229319(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013756(WO,A1)
【文献】 特開2008−159634(JP,A)
【文献】 特開2012−129490(JP,A)
【文献】 特開2006−216510(JP,A)
【文献】 特開2009−016245(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/119157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
H01M 4/133
H01G 11/06
H01G 11/32
H01G 11/38
H01G 11/68
H01M 4/587
H01M 4/62
H01M 4/66
H01M 10/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタに用いられるカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極であって、
カリウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料と、ポリカルボン酸及び/又はその塩を含む結着剤と、アルミニウムを含む負極集電体とを含有するカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極(ただし、カルボキシメチルセルロース又はその塩を結着剤としたカリウムイオンキャパシタ用負極を除く)
【請求項2】
前記炭素材料は、黒鉛を含有する、請求項1記載のカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸及び/又はその塩は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2記載のカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極。
【請求項4】
正極と、請求項1〜3のいずれか1項記載の負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタ。
【請求項5】
正極と、負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタにおける負極用の結着剤として用いられるカリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤であって、
ポリカルボン酸及び/又はその塩を含む、カリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤(ただし、カリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤としてのカルボキシメチルセルロース又はその塩を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極、及び、少なくとも当該負極を備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタ、並びに、カリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高エネルギー密度の二次電池として、非水電解質を使用し、例えばリチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うようにした非水電解質二次電池が多く利用されている。
【0003】
このような非水電解質二次電池において、一般に正極としてニッケル酸リチウム(LiNiO)、コバルト酸リチウム(LiCoO)等の層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が用いられ、負極としてリチウムの吸蔵及び放出が可能な炭素材料、リチウム金属、リチウム合金等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、リチウムイオンを吸蔵可能な炭素材料にリチウムイオンを添加した負極を用いたリチウムイオンキャパシタも開発されている。
【0004】
しかしながら、リチウムは、資源量が比較的限定されており、高価である。また、資源が南米に偏在しており、日本では全量を海外からの輸入に依存している。そこで、電池の低コスト化及び安定的な供給のために、リチウムイオン二次電池に代わるナトリウムイオン二次電池についても現在開発が進められているが、用い得る炭素材料がハードカーボンに限定されてしまう(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
最近では、リチウムイオン及びナトリウムイオンの代わりにカリウムイオンを利用した非水電解質二次電池の研究が始められている。カリウムは、海水にも地殻にも豊富に含まれ、安定した資源となり、低コスト化を図ることもできる。カリウムイオン二次電池としては、負極活物質として黒鉛、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)をそれぞれ用い、重量比が95:5となるように混合したスラリーを銅箔に塗布してなる集電体を負極とすることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
カリウムについては、アルミニウム又は銅と常温で合金化しないことが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。また、計算化学的にグラファイト中でカリウムの拡散速度が速いことが示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−151549号公報
【特許文献2】特開2013−229319号公報
【特許文献3】特開2006−216511号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ペルトン,A.D.(Pelton,A.D.)、「Cu−K(銅−カリウム)システム」(The Cu−K (Copper−Potassium) system.)、Bulletin of Alloy Phase Diagrams 1986, 7 (3), 231−231.
【非特許文献2】デュ,Y.(Du,Y.)、外3名、「Al−K系の熱力学的モデリング」(Thermodynamic modeling of the Al−K system.)、Journal of Mining and Metallurgy, Section B: Metallurgy 2009, 45 (1), 89−93.
【非特許文献3】ワン,Z.(Wang,Z.)、外3名、「vdW−DFT計算による第1ステージ黒鉛層間化合物におけるアルカリ金属の拡散」(Diffusion of alkali metals in the first stage graphite intercalation compounds by vdW−DFT calculations.)、RSC Advances 2015, 5 (21), 15985−15992.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、再現性のあるカリウムイオン二次電池の構成等について報告されていない。それどころか、カリウムイオンの黒鉛への挿入について、リチウムイオン電池における黒鉛負極と同様に電気化学的な可逆的脱挿入反応を実現したという報告もない。KCなる組成のK挿入黒鉛層間化合物の合成に関する報告はあるものの、その方法は化学反応によるものであって、二次電池で利用する電気化学反応による成功例は知られていない。
【0010】
本発明は、従来は実質的に報告されていなかったカリウムイオン二次電池及びカリウムイオンキャパシタを初めて提供するものである。しかも、本発明は、充放電を繰り返しても充放電容量が劣化しにくく(サイクル耐久性)、二次電池としての寿命が長いカリウムイオン二次電池及びかかる優れた特性を有する二次電池を実現するカリウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、カリウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料と、ポリカルボン酸及び/又はその塩を含む結着剤とを含有する負極を用いることにより、該負極を備えるカリウムイオン二次電池及びカリウムイオンキャパシタにおいて、サイクル耐久性に優れ、また、二次電池及びカリウムイオンキャパシタとして長寿命化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、具体的には、下記のとおりである。
【0012】
(1) 正極と、負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタに用いられるカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極であって、カリウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料と、ポリカルボン酸及び/又はその塩を含む結着剤と、アルミニウムを含む負極集電体とを含有するカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極(ただし、カルボキシメチルセルロース又はその塩を結着剤としたカリウムイオンキャパシタ用負極を除く)
(2) 上記炭素材料は、黒鉛を含有する、(1)記載のカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極。
(3) 上記ポリカルボン酸及び/又はその塩は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、(1)又は(2)記載のカリウムイオン二次電池用負極又はカリウムイオンキャパシタ用負極。
(4) 正極と、(1)〜(3)のいずれか1項記載の負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタ。
(5) 正極と、負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えるカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタにおける負極用の結着剤として用いられるカリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤であって、ポリカルボン酸及び/又はその塩を含む、カリウムイオン二次電池負極用又はカリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤(ただし、カリウムイオンキャパシタ負極用の結着剤としてのカルボキシメチルセルロース又はその塩を除く)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サイクル耐久性に優れ、二次電池としての寿命が長いカリウムイオン二次電池及び当該二次電池を可能にする負極を提供することができる。本発明は、また、非常に高い可逆容量を得ることもできる。この負極は、カリウムイオンキャパシタにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の対極活物質となるカリウム金属の析出に用いるH型セルの構成を示す模式図である。
図2】実施例1の測定用カリウムイオン二次電池の1サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図3】実施例1の測定用カリウムイオン二次電池の2〜17サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図4】実施例1の測定用カリウムイオン二次電池のサイクル数と可逆容量との関係を示すグラフである。
図5】実施例2の測定用カリウムイオン二次電池の1サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図6】実施例2の測定用カリウムイオン二次電池の2〜10サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図7】実施例2の測定用カリウムイオン二次電池のサイクル数と可逆容量との関係を示すグラフである。
図8】比較例1の比較測定用カリウムイオン二次電池の1サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図9】比較例1の比較測定用カリウムイオン二次電池の2〜7サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図10】比較例1の比較測定用カリウムイオン二次電池のサイクル数と可逆容量との関係を示すグラフである。
図11】実施例1の作用極のX線回折パターンである。
図12】実施例3及び4並びに比較例2及び3のカリウム電気化学セルのサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
図13】実施例5及び6の測定用カリウムイオン二次電池の1サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図14】実施例6の測定用カリウムイオン二次電池の1〜40サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図15】実施例7の測定用カリウムイオン二次電池の1〜8サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図16】比較例4の比較測定用カリウムイオン二次電池の1〜20サイクル目の充放電特性を示すグラフである。
図17】実施例6及び7並びに比較例4の各測定用カリウムイオン二次電池のサイクル数と可逆容量との関係を示すグラフである。
図18】実施例6及び7並びに比較例4の各測定用カリウムイオン二次電池のサイクル数とクーロン効率との関係を示すグラフである。
図19図18の拡大グラフである。
図20】実施例6の測定用カリウムイオン二次電池のサイクル数と放電容量との関係を示すグラフである。
図21】実施例6の測定用カリウムイオン二次電池の高速充電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
[カリウムイオン二次電池用負極]
本発明のカリウムイオン二次電池用負極(以下、「負極」と略称することがある。)は、カリウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料と、ポリカルボン酸及び/又はその塩を含む結着剤とを含有する。
このような負極とすることにより、該負極を備えるカリウムイオン二次電池において、充放電を繰り返しても充放電容量が劣化しにくく(本明細書において、かかる特性を「サイクル耐久性」ということがある。)、二次電池としての寿命を長くすることができるのみならず、非常に高い可逆容量を得ることができる。
【0017】
本発明の負極において、カリウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料(以下、「負極炭素」ということがある。)は、活物質となる。負極炭素としては、カリウムを吸蔵及び放出することが可能であれば特に限定されず、例えば、黒鉛(グラファイト);低結晶性カーボンの一例であるソフトカーボン、フラーレン、カーボンナノ材料全般、ポリアセン;カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等);ハードカーボン等を含有するものが挙げられ、黒鉛を含有するものが好ましい。本発明において、負極炭素として例示した上記各種は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
黒鉛を用いると、得られるカリウムイオン二次電池において、非常に高い可逆容量が得られるので1回の充電で長持ちさせることができ、また、電圧を高めることができ、更に、高いエネルギー密度を得ることも期待できる。
ここで、黒鉛とは黒鉛系炭素材料のことをいう。黒鉛系炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等が挙げられる。天然黒鉛としては、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等が使用可能である。人造黒鉛としては、例えば、塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛等が使用可能である。これらの中でも、充填密度が高い等の理由で、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛が好ましい。また、2種以上の黒鉛が併用されてもよい。
黒鉛の平均粒子径は、上限値として30μmが好ましく、15μmがより好ましく、10μmが更に好ましく、下限値として0.5μmが好ましく、1μmがより好ましく、2μmが更に好ましい。黒鉛の平均粒子径は、電子顕微鏡観察の方法により測定する値である。
黒鉛としては、また、面間隔d(002)が3.354〜3.370Åであり、結晶子サイズLcが150Å以上であるもの等が挙げられる。
本発明によれば、ナトリウムイオン二次電池においてはナトリウムと反応しないので用いることができなかった黒鉛を、好適に用いることができる。
【0019】
なお、「ハードカーボン」とは、3000℃で焼成しても、黒鉛に移行せず、ランダムな構造を維持する難黒鉛化性炭素のことである。これに対する「ソフトカーボン」とは、3000℃で焼成した場合、黒鉛に移行する易黒鉛化性炭素のことである。これらは、低結晶性カーボンと分類されることもある。
【0020】
負極活物質としては、負極炭素とともに、更に、他の負極活物質を含有するものであってもよい。他の負極活物質としては、例えば、Ge、Sn、Pb、In、Zn、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等のカリウムと合金化する元素の単体や金属間化合物、これらの元素を含む酸化物(一酸化ケイ素(SiO)、SiO(0<x<2)、二酸化スズ(SnO)、SnO(0<x<2)、SnSiO等)及び炭化物(炭化ケイ素(SiC)等)等が挙げられ、また、例えば、各種二酸化チタンやカリウム−チタン複合酸化物(チタン酸カリウム:KTi、KTi12)等のカリウム−遷移金属複合酸化物も挙げられる。これらの他の負極活物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明において、負極活物質としては、負極炭素のみを用い、他の負極活物質を含有しないことによっても、本発明の目的を達成することができる。本発明における負極炭素として、黒鉛のみを用いるものであってよい。
【0022】
本発明のカリウムイオン二次電池用負極において、結着剤は、ポリカルボン酸及び/又はその塩(以下、「ポリカルボン酸等」と総称することがある。)を含む。ポリカルボン酸等は、水素結合部位を多く有しており、水分を結着剤の内部に留めることができるため、水分による電解液の分解が抑制され、また、負極表面における分解物の堆積量を低減させることができるため、容量低下を抑制し、優れたサイクル耐久性を実現することができる。
【0023】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「ポリカルボン酸」とは、ポリマー構成単位(即ち、モノマーから構成される単位。以下、同様。)の平均10%以上にカルボキシ基が直接又は間接的に結合したポリマーを意味する。「ポリカルボン酸塩」とは、ポリマー構成単位の平均10%以上にカルボキシ基が直接又は間接的に結合され、更に、少なくとも一部のカルボキシ基が塩基と塩を形成したポリマーを意味する。また、後述する「ポリカルボン酸アルカリ金属塩」とは、ポリマー構成単位の平均10%以上にカルボキシ基が直接又は間接的に結合され、更に、少なくとも一部のカルボキシ基がアルカリ金属と塩を形成したポリマーを意味する。
【0024】
ポリカルボン酸塩における塩基としては、特に限定されず、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属;アンモニウム(NH)等の塩基性化合物等が挙げられ、ナトリウム、カリウムが好ましい。ポリカルボン酸塩としては、ポリカルボン酸アルカリ金属塩が好ましい。
【0025】
また、ポリカルボン酸等におけるポリマーの主鎖(場合によっては更に側鎖)は、置換又は非置換肪族炭化水素基(例えばメチレン基)や置換又は非置換脂環式炭化水素基(例えばβ−グルコース)、置換又は非置換芳香族炭化水素基(例えばフェニレン基)等を構成単位とするものを適用することができる。ポリカルボン酸及びポリカルボン酸塩は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。共重合体の場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリカルボン酸としては、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
本明細書及び本特許請求の範囲において、「ポリ(メタ)アクリル酸」とは、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸を含む概念であり、モノマーとしてアクリル酸及びメタクリル酸を混合して重合したコポリマーであってもよい。
【0027】
本発明の負極における結着剤としては、ポリカルボン酸及びポリカルボン酸塩の少なくとも一方を含むものであれば特に限定されず、ポリカルボン酸の1種又は2種以上を併用してもよいし、ポリカルボン酸塩の1種又は2種以上を併用してもよいし、ポリカルボン酸1種以上とポリカルボン酸塩1種以上とを併用してもよい。また、本発明の負極における結着剤としては、ポリカルボン酸等のみを含むことによっても本発明の目的を達成することができるので、ポリカルボン酸等のみであってよい。
【0028】
ポリカルボン酸等としては、ポリカルボン酸アルカリ金属塩が好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩がより好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム塩が更に好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム塩が更により好ましい。
上記のポリカルボン酸及び/又はその塩は、カリウムイオン二次電池負極用結着剤として有用であり、かかるカリウムイオン二次電池負極用結着剤もまた本発明の一つである。
【0029】
本発明の負極は、ポリカルボン酸等を含む結着剤を含有するものであるので、好ましくは水分量を500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下とした負極活物質を適用することができる。含まれる水分量を少なくした負極活物質と吸水性のポリマーであるポリカルボン酸等を含む結着剤とを用いて負極を形成することにより、水分による電解液の分解が抑制され、また、負極表面における分解物の堆積量を低減させることができるため、容量低下を抑制することができる。ここで、負極活物質の水分量は、例えば、電極形成前の負極活物質の粉末を測定対象としてカールフィッシャー水分計により測定することができる。
【0030】
本発明における負極炭素は、充電時において、層間にカリウムを含む層状炭素材料である。負極炭素が黒鉛である場合、理論的には、KCで表される組成までカリウムイオンを負極炭素に挿入可能であるが、本発明においては、理論容量に非常に近い可逆容量を達成することができ、例えばX線回折パターンにおいて、KCで表される組成を示すピークを得ることもできる。
【0031】
本発明の負極は、負極集電体の両方の表面に負極合剤層が形成された構成を有していることが好ましい。上述の負極炭素及びポリカルボン酸等は、負極合剤層に含有されることが好ましい。
【0032】
負極集電体としては、例えば、箔状又はメッシュ状のニッケル、アルミニウム、銅、ステンレス(SUS)等の導電性の材料により構成されていることが好ましい。かかる導電性の材料としては、ニッケル、アルミニウム、銅、ステンレス(SUS)が好ましく、アルミニウム、銅がより好ましい。通常リチウムイオン電池で用いられる高額な銅箔に代えて通常廉価なアルミニウム箔を用いることが可能である。例えば、正極集電体にアルミニウム箔を用いる場合、負極集電体にもアルミニウム箔を用いると、バイポーラ型積層構造を持つカリウムイオン二次電池又はカリウムイオンキャパシタを作製することができる。これに対し、従来のリチウムイオン二次電池又はリチウムイオンキャパシタでは、正極集電体にアルミニウム箔を用いる場合、負極集電体にアルミニウム箔を用いるとリチウムとアルミニウムとの合金が生じてしまうので、負極集電体にはアルミニウム箔を用いることができず銅箔を用いる必要がある。
【0033】
負極合剤層における結着剤の含有量は、用いる炭素粉末の粒子サイズ等によって最適量が変わるのが一般的だが、サイクル耐久性の向上、可逆容量の向上等の観点から、下限値として0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、5質量%が更に好ましく、上限値として20質量%が好ましく、15質量%より好ましく、13質量%が更に好ましい。
【0034】
本発明の負極は、必要に応じて、更に、導電助剤を含むものであってもよい。
導電助剤としては特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素微粉末;VGCF(登録商標)等のカーボンナノチューブ(気相法炭素繊維、CNT);その他の炭素繊維等の導電助剤として用いられる炭素材料等が挙げられる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、既に市販されているリチウムイオン二次電池で導電助剤として使用可能な従来公知の材料を用いることができる。これらの導電助剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の負極は、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン等の非水溶媒等を添加して混練することにより作製する負極合剤スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させて、負極合剤層を形成することにより、製造することができ、必要に応じ上記乾燥後に圧縮成型してもよい。
【0036】
負極合剤スラリーとしては、例えば粒状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と結着剤と必要に応じて導電助剤及び粘度調整溶剤とを混合して、作製することができる。
負極合剤スラリーを負極集電体に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ドクターブレード法等を用いることができる。
【0037】
負極は、次いで、負極集電体のなかでも、負極活物質を有しない領域に負極タブを取り付けることにより製造することができる。
【0038】
[カリウムイオン二次電池用正極]
本発明において、カリウムイオン二次電池用正極(以下、「正極」と略称することがある。)としては、カリウムを吸蔵及び放出することが可能なカリウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」と略称することがある。)を含有するものであれば特に限定されない。
【0039】
正極集電体としては、特に限定されないが、例えば、負極集電体として例示したもの等を用いることができ、負極集電体と同じ材質のもの及び/又は負極集電体と同様の箔状、メッシュ状等の形状のものを用いてもよい。
【0040】
正極活物質としては、例えば容量、出力特性の観点から、組成の構成元素としてカリウムを含む化合物(以下、「カリウム含有化合物」ということがある。)が好ましい。カリウム含有化合物としては、例えば、層状酸化物系材料であるカリウム鉄複合酸化物(NaFeO)、カリウムコバルト複合酸化物(KCoO)、カリウムクロム複合酸化物(KCrO)、カリウムマンガン複合酸化物(KMnO)、カリウムニッケル複合酸化物(KNiO)、カリウムニッケルチタン複合酸化物(KNiTi)、カリウムニッケルマンガン複合酸化物(KNiMn)、カリウム鉄マンガン複合酸化物(KFeMn)、カリウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(KNiCoMn)、それらの固溶体や非化学量論組成の化合物等を挙げることができる。また、カリウム含有化合物としては、例えば、カリウムマンガン複合酸化物(KMnO、KMn)、カリウムニッケルマンガン複合酸化物(KNiMn、KNiMn)等を挙げることもできる。更に、カリウム含有化合物としては、例えばオリビン系材料であるカリウム鉄リン酸化合物(KFePO)、カリウムマンガンリン酸化合物(KMnPO)、カリウムコバルトリン酸化合物(KCoPO)等を挙げることもできる。また、カリウム含有化合物としては、例えばフッ化オリビン系材料であるKFePOF、KMnPOF、KCoPOF等を挙げることもできる。更に、カリウム含有鉄シアノ錯体、カリウム含有鉄マンガン錯体、有機ラジカル電池で知られる、高分子ラジカル化合物、π共役系高分子等の有機活物質等を挙げることもできる。更にまた、固体の硫黄、硫黄・炭素複合材料等のカリウムと化合物を作る元素も挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、カリウムを吸蔵及び放出することが可能なものであれば、その他のカリウム含有遷移金属酸化物、カリウム含有遷移金属硫化物、カリウム含有遷移金属フッ化物、カリウム含有遷移金属錯体等の従来公知の材料を用いることもできる。
【0041】
正極としては、正極活物質として電解質を用いる場合、例えば、該電解質と、導電剤と、結着剤とを含有する材料(以下、「正極材料」ということがある。)を、非水溶媒等に混合することにより、正極合剤としてのスラリーを作製し、上述のような正極集電体の表面に該スラリーを塗布した後、乾燥させて正極活物質層を形成することにより、製造することができる。
上記非水溶媒等としては、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
上記正極材料の結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアセテート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエンラバー、カルボキシメチルセルロース等から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0042】
なお、結着剤の量が多いと、正極材料に含まれる正極活物質の割合が少なくなるため、高いエネルギー密度が得られなくなる。したがって、結着剤の量は、正極材料の全体の0〜30重量%の範囲とし、好ましくは0〜20重量%の範囲とし、より好ましくは0〜10重量%の範囲とする。
【0043】
正極材料の導電剤としては、例えば、負極炭素として例示した炭素材料等を用いることができる。なお、導電剤の添加量が少ないと、正極材料における導電性を充分に向上させることができない一方、その添加量が多くなり過ぎると、正極材料に含まれる正極活物質の割合が少なくなり高いエネルギー密度が得られなくなる。したがって、導電剤の量は、正極材料の全体の0〜30重量%の範囲とし、好ましくは0〜20重量%の範囲とし、より好ましくは0〜10重量%の範囲とする。
【0044】
上述の正極活物質に結着剤や導電剤を混合した後、水、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン等の非水溶媒等を添加して混練することにより作製する正極合剤スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させて、正極活物質層を形成することにより、製造することができ、必要に応じ上記乾燥後に圧縮成型してもよい。
更に、正極集電体としては、電子導電性を高めるために発泡アルミニウム、発泡ニッケル等を用いることも可能である。
【0045】
正極は、以上のように正極活物質を正極集電体の表面上に設けた後、正極集電体のなかでも、正極活物質を有しない領域に正極タブを取り付けることにより製造することができる。
【0046】
[カリウムイオン二次電池]
本発明のカリウムイオン二次電池は、上述した正極及び負極に加え、非水電解質を含む。
【0047】
[非水電解質]
非水電解質としては、カリウムイオンを含む電解質塩を含有するものであれば特に限定されないが、かかる電解質塩を非水溶媒に溶解させたものが好ましい。
【0048】
電解質塩としては、カリウムイオンを含むものであれば特に限定されないが、非水溶媒に可溶な過酸化物でない安全性の高いものが好ましく、例えば、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドカリウム(KFSI)、N,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(KTFSI)、六フッ化リン酸カリウム(KPF)、フルオロホウ酸カリウム(KBF)、過塩素酸カリウム(KClO)、KCFSO、KBeTi等が挙げられ、KFSI、KPFが好ましい。電解質塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
電解質塩を非水溶媒に溶解させてなる非水電解質における電解質塩の濃度は、下限値として0.5mol/lが好ましく、0.8mol/lがより好ましく、上限値として2mol/lが好ましく、1.5mol/lがより好ましく、1.2mol/lが更に好ましい。
【0050】
非水溶媒としては、通常電池用の非水溶媒として用いられる環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類等及びこれらの組合せからなるものが挙げられる。
【0051】
環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられ、これらの水素基の一部又は全部がフッ素化されているものも用いることが可能で、例えば、トリフルオロプロピレンカーボネート、フルオロエチルカーボネート等が挙げられる。
【0052】
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等が挙げられ、これらの水素基の一部又は全部がフッ素化されているものも用いることが可能である。
【0053】
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。環状エーテル類としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1、3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等が挙げられる。
【0054】
鎖状エーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等が挙げられる。
【0055】
ニトリル類としては、アセトニトリル等が挙げられ、アミド類としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
これらの非水溶媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
非水溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステルが好ましく、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとを併用するものがより好ましい。
非水溶媒として環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとを併用する場合、両者の比率(環状炭酸エステル:鎖状炭酸エステル)としては、特に限定されないが、例えば、体積比として、30:70〜70:30が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。
【0057】
[カリウムイオン二次電池の作製]
本発明のカリウムイオン二次電池としては、特に限定されず、例えば、リチウムイオン二次電池等と同様の構成をとることができるので、現行のリチウムイオン二次電池の代替として有用である。カリウムイオン二次電池は、通常、外装体を備え、外装体内に負極集電体及び正極集電体が設けられており、負極タブ及び正極タブが外装体内から外部に引き出されるように設けられる。
【0058】
以下は、カリウムイオン二次電池の構成の一例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
外装体は、例えばアルミニウム層を内挿したラミネートフィルムにより形成される。
負極集電体上に形成された負極活物質を含有する負極合剤層及び正極集電体上に形成された正極活物質層は、セパレータを介して互いに対向するように設けられる。
【0060】
外装体内には非水電解質が注入される。負極タブ及び正極タブが引き出されている側の外装体の端部には、溶着により封口された封口部が形成される。
負極集電体に接続された負極タブは、上記封口部を介して外部に引き出される。正極集電体に接続された正極タブについても、負極タブと同様に、封口部を介して外部に引き出される。
【0061】
本発明のカリウムイオン二次電池においては、充電を行うと、正極活物質層からカリウムが放出され、非水電解質を介して負極合剤層に吸蔵される。放電を行うと、負極合剤層からカリウムが放出され、非水電解質を介して正極活物質層に吸蔵される。
【0062】
本発明のカリウムイオン二次電池は、リチウムの約1000倍の地殻中存在量であるカリウムを稼働イオンとして用いることができるので、リチウムイオン二次電池よりも安価且つ安定した資源供給により提供することができる。更に、本発明のカリウムイオン二次電池は、サイクル耐久性に優れ、二次電池としての寿命が長く、特に負極の寿命が延び、電池特性に優れる。また、急速に充電でき、レート特性(充電レート)に優れることが期待できる。
【0063】
本発明のカリウムイオン二次電池は、リチウムよりもイオン半径の大きいカリウムを用いるにもかかわらず、理論容量である279mAh/gに非常に近い約250mAh/gもの可逆容量が得られ、黒鉛負極を備えた従来のリチウムイオン二次電池よりも高いエネルギー密度も期待できる。カリウム金属はリチウム金属よりも標準電極電位が低く、カリウム金属析出電位はリチウム金属よりも約0.15V低く、リチウムイオン二次電池よりも高電位作動蓄電池が期待できる。
【0064】
[カリウムイオンキャパシタ]
上述のカリウムイオン二次電池用負極は、カリウムイオンキャパシタ用負極としても使用することができる。カリウムイオンキャパシタは、負極として上述の負極を用い、リチウムイオンの代りにカリウムイオンを用いること以外、例えば、従来のリチウムイオンキャパシタと同様の構成で基本的に作製することができる。
なお、カリウムイオンキャパシタの性能を十分に発揮させるには、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方に、カリウムをプレドープする必要がある。例えば、正極活物質として活性炭を用い、負極活物質として黒鉛を用いる場合、正極及び負極は、元来、カリウムを含有していない。従って、カリウムを補充しなければ、電荷移動を担うイオン種が不足するからである。また、高電圧のカリウムイオンキャパシタを得るためには、負極に予めカリウムをプレドープして、負極電位を低下させることが望まれる。カリウムのプレドープはキャパシタの組み立て時に行われる。カリウムのプレドープは、例えば、カリウム金属を、正極、負極及び非水電解質とともにセル内に収容し、カリウム金属と正極及び負極とを液絡させた状態で実施される。その際、カリウム金属と、正極及び負極との間に、絶縁材料を介在させてもよく、逆に、カリウム金属と正極又は負極とを導通させて短絡させてもよい。カリウム金属と正極又は負極とを導通させる場合には、カリウム金属と正極又は負極との間に電圧を印加して、強制的に正極又は負極にカリウムをプレドープしてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例1〜実施例3及び実施例5は、いずれも参考例と読み替えるものとする。
【0066】
以下のように、負極活物質として黒鉛を用いて作用極とし、対極にカリウム金属を用いて、カリウムイオン二次電池の負極(作用極)特性を半電池として評価した。なお、この半電池において、対極のカリウム金属に対し、黒鉛を用いる電極は作用極となるので、以下の例において作用極活物質、作用極合剤スラリー、作用極集電体と表すが、これらはそれぞれ上述の負極活物質、負極合剤スラリー、負極集電体に該当する。
【0067】
<実施例1> 測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
(1)作用極の作製
粘度調整溶剤である水に、結着剤としてのポリアクリル酸ナトリウム塩(キシダ化学社製、PAANa(分子量2,000,000〜6,000,000))を10質量部添加し、更に、作用極活物質としての黒鉛(SECカーボン社製、粒子径約3μm、SNO3)を90質量部添加し、乳鉢で混合撹拌して、作用極合剤スラリーを得た。
得られた作用極合剤スラリーを、作用極集電体であるニッケルメッシュ(厚さ100μm、100メッシュ、東京スクリーン社製)上に塗布(1cm×1cm)し、150℃の真空乾燥機内で乾燥させ、本例の作用極を得た。
なお、黒鉛の粒子径は、電子顕微鏡で観察することにより求めた。
【0068】
(2)測定用対極の作製
一方、ニッケルメッシュ(同上)上に金属カリウムを析出させて、測定用対極とした。金属カリウムの析出は、エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1(体積比)の比率により混合した非水溶媒にカリウムN,N−ビス(フルオロスルホニル)イミド(KFSI)を0.25mol/lの濃度で溶解させた電解液を、図1に示すように作用極、参照極にニッケルメッシュ、対極にニッケルメッシュに挟んだ活性炭素を使用し、ガラスフィルター(厚み:3.8mm)を介して備えたH型セルに注入し、0.45mAで24時間定電流電解することにより行った。
【0069】
(3)測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の構築
上記作用極と測定用対極とをワニ口クリップで挟み、非水電解質を注液したビーカーに浸すことで測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。非水電解質としては、EC:DEC=1:1(体積比)の比率により混合した非水溶媒にKFSIを溶解した1mol/l電解液を用いた。
【0070】
<実施例2> 測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
ポリアクリル酸ナトリウム塩に代えてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル化学工業社製、CMC(粘度平均分子量(Mv)=1,000,000))を用い、黒鉛に代えてアセチレンブラック(strem chemicals社製、粒子径約50nm)を用いること以外は実施例1と同様にして、測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。なお、アセチレンブラックの粒子径は、黒鉛の粒子径と同様の方法により求めた。
【0071】
<比較例1> 比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
ポリアクリル酸ナトリウム塩に代えてポリフッ化ビニリデンを用いること以外は実施例1と同様にして、比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。
【0072】
<評価1>
(1)実施例1において作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。各電極に対して電流密度が25mA/gの電流になるように設定し、充電電圧2.0Vまで定電流充電を行った。充電後、各電極に対して電流密度が25mA/gの電流になるように設定し、2回目以降は、充電電圧2.0V、放電終止電圧が0Vになるまで定電流放電を行った。この充放電を17サイクル行い、1サイクル目の充放電曲線を図2に示し、2〜17サイクル目の放電曲線を図3に示す。また、サイクル数と可逆容量及びクーロン効率との関係を図4に示す。
【0073】
(2)充放電を10サイクル行うこと以外は、上記(1)と同様にして、実施例2において作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。1サイクル目の充放電曲線を図5に示し、2〜10サイクル目の充放電曲線を図6に示し、サイクル数と可逆容量及びクーロン効率との関係を図7に示す。
【0074】
(3)定電流充電を充電電圧0.8Vまで行い、定電流放電を放電終止電圧が0Vになるまで行い、この充放電を7サイクル行うこと以外は、上記(1)と同様にして、比較例1において作製した比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。1サイクル目の充放電曲線を図8に示し、2〜7サイクル目の充放電曲線を図9に示し、サイクル数と可逆容量及びクーロン効率との関係を図10に示す。
【0075】
実施例1の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)は、図2図4から、充放電を繰り返しても可逆容量の低下が小さく、可逆容量維持率が高いこと、しかも、理論容量である279mAh/gに非常に近い約250mAh/gもの可逆容量が得られ、非常に良好に充放電が行われていることが確認された。即ち、炭素材料を含む作用極に対してカリウムが可逆的に吸蔵及び放出されていることが明らかになった。実施例2の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)も、図5図7から、同様に、充放電を繰り返しても可逆容量の低下が小さく、可逆容量維持率が高いことが確認された。
これに対し、比較例1の比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)は、図8図10から、充放電を繰り返したときの可逆容量の低下が著しく、可逆容量維持率が非常に低いこと、サイクルの初期であっても可逆容量が約200mAh/gにすぎず、実施例1についての可逆容量よりも明らかに劣ることが確認された。
【0076】
<評価2>
充電状態の実施例1で作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を解体し、炭素材料を含有する作用極シートを粉末X線回折(XRD)により測定した。具体的には、リガク製の粉末X線回折測定装置MultiFlexを用いて、以下の条件で測定を行った。XRD測定は、作用極シートが空気に触れないように、作用極シートをガスバリア性フィルム(ミクトロンフィルム(登録商標)、東レ社製)で保護し、測定を行った。測定結果を図11に示す。
X線:CuKα
電圧−電流:40kV−20mA
測定角度範囲:2θ=10〜70°
ステップ:0.02°
スキャンスピード:2°/分
【0077】
作用極炭素が黒鉛である場合、理論的には、KCで表される組成までカリウムイオンを負極炭素に挿入可能である。本発明の負極について、図9に示すように、回折角2θ=17°及び34°付近にKCを示すピークが0V充電後に出現することが観察されたことから、理論的に最大の組成まで、黒鉛の層間にカリウムを挿入されたことが判る。
【0078】
<実施例3> カリウム電気化学セルの作製
作用極集電体である銅箔を電極打ち抜き機で直径1cmの円形に打ち抜いたものを本例の作用極として用いた。
0.5cm四方に切った金属カリウムを対極とし、上記作用極及び実施例1と同じ非水電解質を用いてカリウム電気化学セルを得た。セルにはコインセルを使用し、セパレータとしてはガラスフィルターを使用した。
【0079】
<実施例4> カリウム電気化学セルの作製
銅箔に代えてアルミニウム箔を用いること以外は実施例3と同様にして、カリウム電気化学セルを得た。
【0080】
<比較例2> 比較測定用リチウム電気化学セルの作製
直径1cmの円形にくり抜いた金属リチウムを対極とし、非水電解質としてEC:ジメチルカーボネート(DMC)=1:1(体積比)の比率により混合した非水溶媒にLiPFを溶解した1mol/l電解液を用いること以外は実施例3と同様にして、比較測定用リチウム電気化学セルを得た。
【0081】
<比較例3> 比較測定用リチウム電気化学セルの作製
銅箔に代えてアルミニウム箔を用いること以外は比較例2と同様にして、比較測定用リチウム電気化学セルを得た。
【0082】
<評価3>
実施例3及び実施例4においてそれぞれ作製したカリウム電気化学セル並びに比較例2及び比較例3においてそれぞれ作製した比較測定用リチウム電気化学セルについて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。CV測定の条件は、電位の走査範囲を0.0〜2.0V、走査速度を1mV/sとした。結果を図12に示す。
【0083】
図12から、作用極の集電体として銅箔を用いた比較例2の比較測定用リチウム電気化学セルでは、銅とリチウムとが合金化しないが、作用極の集電体としてアルミニウム箔を用いた比較例3の比較測定用リチウム電気化学セルでは、アルミニウムとリチウムとが反応して合金化してしまうことが確認された。これは、リチウムイオン二次電池においては、作用極即ち負極の集電体として、アルミニウム箔を用いることができず、銅箔を用いる必要があるという従来の問題を示唆する。
これに対し、図12から、実施例3及び実施例4のカリウム電気化学セルでは、銅箔、アルミニウム箔の何れであってもカリウムと合金化しないことが確認された。このことから、カリウムイオン二次電池においては、作用極即ち負極の集電体として、銅箔、アルミニウム箔の何れをも用いることができることが明らかになった。
【0084】
<実施例5> 測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
(1)作用極の作製
粘度調整溶剤である水に、結着剤としてのポリアクリル酸ナトリウム塩(キシダ化学社製、PAANa(分子量2,000,000〜6,000,000))を10質量部添加し、更に、作用極活物質としての黒鉛(SECカーボン社製、粒子径約3μm、SNO3)を90質量部添加し、乳鉢で混合撹拌して、作用極合剤スラリーを得た。
得られた作用極合剤スラリーを、作用極集電体である銅箔上に塗布し、150℃の真空乾燥機内で乾燥させ、電極シートを得た。この電極シートを電極打ち抜き機で直径1cmの円形に打ち抜いたものを本例の作用極として用いた。
なお、黒鉛の粒子径は、電子顕微鏡で観察することにより求めた。
【0085】
(2)測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の構築
0.5cm四方に切った金属カリウムを測定用対極とし、上記作用極及び実施例1と同じ非水電解質を用いて測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。セルにはコインセルを使用し、セパレータとしてはガラスフィルターを使用した。
【0086】
<実施例6> 測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
銅箔に代えてアルミニウム箔を用いること以外は実施例5と同様にして、測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。
【0087】
<評価4>
実施例5及び実施例6においてそれぞれ作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)について、充放電を1サイクル行うこと以外は、評価1(1)と同様にして、充放電評価を行った。得られた充放電曲線を図13に示す。
【0088】
図13から、実施例5及び実施例6の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)では、作用極集電体として銅箔とアルミニウム箔とで1サイクル目の充放電曲線に違いは殆どないことが確認された。このことからも、評価3の結果と同様に、カリウムイオン二次電池においては、作用極即ち負極の集電体として、銅箔、アルミニウム箔の何れをも用いることができることが明らかになった。
【0089】
<実施例7> 測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
ポリアクリル酸ナトリウム塩に代えてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル化学工業社製、CMC(粘度平均分子量(Mv)=1,000,000))を用いること以外は実施例6と同様にして、測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。
【0090】
<比較例4> 比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の作製
ポリアクリル酸ナトリウム塩に代えてポリフッ化ビニリデンを用いること以外は実施例6と同様にして、比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)を得た。
【0091】
<評価5>
(1)充放電を40サイクル行うこと以外は、評価4と同様にして、実施例6において作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。得られた充放電曲線を図14に示す。
【0092】
(2)充放電を8サイクル行うこと以外は、評価4と同様にして、実施例7において作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。得られた充放電曲線を図15に示す。
【0093】
(3)充放電を20サイクル行うこと以外は、評価4と同様にして、比較例4において作製した比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。得られた充放電曲線を図16に示す。
【0094】
(4)上記(1)〜(3)の結果から、サイクル数と可逆容量との関係を図17に示し、サイクル数とクーロン効率との関係を図18に示し、図18の拡大グラフを図19に示す。
【0095】
実施例6の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)は、図14及び図17から、充放電を繰り返しても可逆容量の低下が小さく、可逆容量維持率が高いこと、しかも、理論容量である279mAh/gに非常に近い約250mAh/gもの可逆容量が得られ、非常に良好に充放電が行われていることが確認された。即ち、作用極の集電体としてアルミニウム箔を用いた場合であっても、炭素材料を含む作用極に対してカリウムが可逆的に吸蔵及び放出されていることが明らかになった。実施例7の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)も、図15及び図17から、同様に、作用極の集電体としてアルミニウム箔を用いた場合であっても、充放電を繰り返しても可逆容量の低下が小さく、可逆容量維持率が高いことが確認された。
これに対し、比較例4の比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)は、図16及び図17から、サイクル初期の可逆容量は約240mAh/gであり、実施例6及び実施例7についての可逆容量と同等の容量を示したが、充放電を繰り返したときの可逆容量の低下が著しく、可逆容量維持率が非常に低いことが確認された。
【0096】
図18及び図19から、比較例4の比較測定用カリウムイオン二次電池(半電池)よりも実施例6及び実施例7の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の方が、クーロン効率が改善されることが確認された。即ち、負極用結着剤としてポリアクリル酸ナトリウム塩又はカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いる場合、ポリフッ化ビニリデンを用いるよりもクーロン効率が改善されることが明らかになった。
【0097】
<評価6>
実施例6において作製した測定用カリウムイオン二次電池(半電池)の充放電評価を行った。各電極に対して電流密度が28mA/gの電流になるように設定し、放電電圧0.0Vまで定電流放電を行った。放電後、各電極に対して電流密度が28(C/10)〜4185(15C)mA/gの電流になるように設定し、2回目以降は、充電電圧2.0V、放電終止電圧が0Vになるまで定電流放電を行った。それぞれの電流密度で3サイクルずつ充放電を行い、サイクル数と充電容量との関係を図20に示し、高速充電曲線を図21に示す。
【0098】
図20及び図21から、実施例6の測定用カリウムイオン二次電池(半電池)は、充電(カリウム脱離)時のみ電流密度を変更した場合、電流密度を上げても容量の減少が見られないことが確認された。このことから、急速充電が可能であることが示唆される。具体的には、急速充放電試験において、カリウム挿入をC/10のレートで行い、カリウム脱離をC/10〜15Cのレートに設定し、評価したところ、15Cのレート、即ち、4分で充電可能であった。尚、1Cとは1時間で充電できる電流密度である。例えば、2Cでは30分、3Cでは20分、15Cでは4分でそれぞれ充電することができる電流密度となる。
【符号の説明】
【0099】
1 ニッケルメッシュ(参照極)
2 ニッケルメッシュ作用極
3 活性炭素
4、5 ガラスフィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21