(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記増加レートは、前記制御部に電力が供給された後で、2回目以降に前記ポンプを始動するときの、前記ポンプの吐出側圧力の増加レートよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。
前記制御部は、前記目標圧力値が前記設定圧力値に到達した後は、前記目標圧力値を前記設定圧力値に維持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ装置。
前記制御部は、前記外部表示器からの電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部と、前記電力によって駆動される集積回路および記憶部とを備えることを特徴とする請求項7に記載のポンプ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプ装置が最初に設置されたとき、吸込管および陸上ユニット内に水は存在しない。したがって、ポンプの吐出側圧力値は0である。この状態で、ポンプを始動すると、ポンプの吐出側圧力値と目標圧力値との差が非常に大きいために、制御部は、ポンプの回転速度が最大となるような回転速度指令値をインバータに出力する。その結果、ポンプの回転速度は一瞬で(例えば、1秒で)最大の回転速度に到達する。
【0006】
このような場合、ポンプは、井戸内の水に浮遊する異物(例えば、砂および塵など)を吸い込んでしまうことがある。特に、ポンプ装置を設置した直後は、井戸内の水に多量の異物が浮遊していることがある。吸い込まれた異物は、陸上ユニットまで移送され、フロースイッチ、圧力センサ、圧力タンクなどのポンプ装置の構成要素を故障させてしまうことがあった。
【0007】
また、水中ポンプユニットの交換および点検などのポンプ装置のメンテナンスを実施した後は、吸込管や陸上ユニット内に水が存在しない場合がある。したがって、メンテナンス後にポンプを初めて始動するときに、同様の問題が発生することがある。
【0008】
そこで、本発明は、ポンプ装置の構成要素の故障を発生させずに、ポンプを始動させることができるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ポンプおよび電動機を備え
、水中に設置された水中ポンプユニットと、
地上に配置され、前記水中ポンプユニットと吸込管を介して接続される陸上ユニットと、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力の測定値と目標圧力値との差に基づいて、前記ポンプの回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、該制御部に電力が供給された後で、最初に前記ポンプを始動
して、前記水中ポンプから前記陸上ユニットに水を送るときは、予め決定された増加レートにしたがって、前記目標圧力値を設定圧力値まで増加させるスロースタート制御を実行することを特徴とするポンプ装置である。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記増加レートは、前記目標圧力値が0から前記設定圧力値まで10秒から60秒かけて増加するレートであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記増加レートは、前記制御部に電力が供給された後で、2回目以降に前記ポンプを始動するときの、前記ポンプの吐出側圧力の増加レートよりも小さいことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記目標圧力値が前記設定圧力値に到達した後は、前記目標圧力値を前記設定圧力値に維持することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記スロースタート制御が実行されていることを表示する表示器をさらに備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、外部表示器と有線通信または無線通信で接続することができることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、近距離無線通信(NFC)によって前記外部表示器に接続できることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記外部表示器からの電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部と、前記電力によって駆動される集積回路および記憶部とを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記スロースタート制御の実行履歴を示すデータを前記記憶部に記憶し、前記集積回路は、前記記憶部から前記データを読み取り、前記制御部側アンテナ部は前記データを前記外部表示器に送信することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記陸上ユニットは、前記吸込管に接続された配水管と、前記配水管に接続された空気抜き配管と、前記空気抜き配管に配置された開閉弁と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御部は、予め決定された増加レートにしたがって徐々に上昇する目標圧力値と、ポンプの吐出側圧力の測定値との差に基づいて、ポンプの回転速度を制御する。したがって、目標圧力値とポンプの吐出側圧力の測定値との差が小さい状態で、ポンプの回転速度が制御されるので、ポンプの回転速度をゆっくりと上昇させることができる。その結果、ポンプに吸い込まれる異物が減少し、フロースイッチ、圧力センサ、圧力タンクなどのポンプ装置の構成要素の故障を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るポンプ装置を示す模式図である。
図2は
図1に示すポンプ装置の詳細を示す図である。
図1および
図2に示すように、ポンプ装置は、井戸内などの水中に設置することができる水中ポンプユニット1と、吸込管4を介して水中ポンプユニット1に接続された陸上ユニット5とを備えている。水中ポンプユニット1は、羽根車(図示しない)を有するポンプ2と、このポンプ2を回転させる電動機3とを備えている。電動機3が駆動されると、ポンプ2が回転し、水は吸込管4を通じて陸上ユニット5に送られる。
【0015】
陸上ユニット5は地上に配置されている。陸上ユニット5は、水中ポンプユニット1の動作を制御する制御ユニット10と、吸込管4に接続された配水管11と、配水管11を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知するフロースイッチ12と、ポンプ2の吐出側圧力を測定する圧力センサ13とを備えている。フロースイッチ12および圧力センサ13は配水管11に接続されており、圧力センサ13はフロースイッチ12の下流側に設けられている。配水管11の一端は吸込管4に接続され、他端は排出管18に接続されている。排出管18には水栓などの給水器具19が接続されている。吸込管4には、逆止弁21が取り付けられている。この逆止弁21は、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止するために設けられている。さらに、本実施形態では、配水管11には空気抜き管33が接続されており、空気抜き管33には、開閉弁35が配置されている。
【0016】
陸上ユニット5は、ポンプ2の吐出側圧力を保持するための圧力タンク15をさらに備えている。圧力タンク15は配水管11に接続されており、圧力センサ13の下流側に設けられている。圧力タンク15は、その耐圧容器の内部にゴム製のブラダを有している。ポンプ2の吐出側圧力が上昇すると、ブラダの外側の空気は圧縮され、水が加圧状態で貯留される。配水管11内の圧力が低下すると、ブラダに保持された水は圧縮された空気によって配水管11内に押し出される。このようにして、ポンプ2が停止しても、しばらくの間、圧力タンク15から配水管11に水が供給される。
【0017】
制御ユニット10は、電動機3を変速可能とするインバータ22と、インバータ22の動作を制御する制御部20を備えている。インバータ22は制御部20に接続されている。本実施形態では、インバータ22および制御部20には、電源16から電力が供給される。制御部20は、インバータ22を構成するパワー素子(例えば、IGBTなどのスイッチング素子)のスイッチング動作を制御することで、電動機3の回転速度、すなわちポンプ2の回転速度を制御する。
【0018】
フロースイッチ12および圧力センサ13は信号線を介して制御部20に接続されている。配水管11を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことをフロースイッチ12が検出すると、制御部20はポンプ2の運転速度を一時的に上げ、圧力タンク15に蓄圧してからポンプ2の運転を停止させる。ポンプ2の吐出側圧力が所定の始動圧力まで低下したことを圧力センサ13が検出すると、制御部20はポンプ2を始動させる。
【0019】
所望の圧力を有する水が給水器具19から吐出されるように、制御部20は、ポンプ2の回転速度を制御するための目標圧力値を予め記憶している。さらに、制御部20は、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力を監視している。ポンプ2が始動すると、制御部20は、ポンプ2の吐出側圧力と目標圧力値との差に基づいて、ポンプ2の回転速度を制御する。より具体的には、制御部20は、目標圧力値とポンプ2の吐出側圧力との差を0にするためのポンプ2の回転速度指令値を算出する。制御部20によって算出された回転速度指令値は、インバータ22に送られ、インバータ22は、送られた回転速度指令値に基づいて、電動機3の回転速度、すなわち、ポンプ2の回転速度を変更する。このように、制御部20は、インバータ22の動作を制御することで、ポンプ2の回転速度を制御する。
【0020】
図3は、ポンプ2の吐出側圧力が始動圧力まで低下したときに、ポンプ2を始動させる通常スタート制御を説明するためのグラフである。
図3の縦軸はポンプ2の吐出側圧力を表し、
図3の横軸は時間を表す。
図3に示されるように、通常スタート制御では、インバータ22の動作を制御するための目標圧力値PSは一定である。ポンプ2の吐出側圧力が所定の始動圧力POまで低下すると、制御部20はポンプ2を始動させる。このとき、制御部20は、所定の始動圧力POと目標圧力値PSの差ΔPIを0にするための回転速度指令値を算出し、この回転速度指令値をインバータ22に送る。ポンプ2の運転中、制御部20は、ポンプ2の吐出側圧力値が目標圧力値PSに維持されるように、回転速度指令値を算出し、ポンプ2の回転速度を制御する。
【0021】
ポンプ装置が最初に設置されたときは、吸込管4と配水管11(
図2参照)内に水は存在しない。この場合、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力の値は0である。ポンプ2の吐出側圧力値が0の状態で、ポンプ2を始動すると、目標圧力値PSとポンプ2の吐出側圧力値(すなわち、0)との差が非常に大きいために、制御部20は、ポンプ2の回転速度が最大になる回転速度指令値をインバータに出力する。その結果、ポンプ2の回転速度は、一瞬で(例えば、1秒で)最大回転速度に到達する。
【0022】
このような場合、ポンプ2は、水中に浮遊する異物(例えば、砂および塵など)を吸い込んでしまうことがある。特に、ポンプ装置を設置した直後は、水中に多量の異物が浮遊していることがある。吸い込まれた異物は、陸上ユニット5まで移送され、フロースイッチ12、圧力センサ13、圧力タンク15などの構成要素を故障させてしまうおそれがある。
【0023】
また、水中ポンプユニット1の交換および点検などのポンプ装置のメンテナンスを実施した後は、吸込管4および配水管11内に水が存在しない場合がある。したがって、メンテナンス後にポンプ2を初めて始動するときに、同様の問題が発生することがある。
【0024】
そこで、本実施形態では、制御部20に電源16から電力が供給された後で、最初にポンプ2を始動するときは、予め決定された増加レートにしたがって、目標圧力値を設定圧力値まで増加させるスロースタート制御を実行する。以下では、スロースタート制御が説明される。
【0025】
ポンプ装置の設置後に、制御部20には電源16から電力が供給される。制御部20は、電源16から電力が供給されているか否かを検知する検知部(図示しない)を内蔵している。一旦、ポンプ装置に電力が供給されると、水栓などの給水器具19に水を供給できる状態を維持するために、ポンプ装置には、電源16から常に電力が供給され続ける。したがって、制御部20は、検知部によって、制御部20への電源16からの電力の供給を検出することにより、ポンプ2の始動がポンプ装置の設置後で、最初のポンプ2の始動であるか否かを検出することができる。
【0026】
水中ポンプユニット1の交換または点検などのメンテナンスを実施するときは、電源16からの電力の供給を停止することがある。メンテナンス後に、ポンプ装置を電源16に接続すると、検知部は、制御部20への電力の供給が開始されたことを検知する。したがって、制御部20は、検知部によって、制御部20への電源16からの電力の供給を検出することにより、ポンプ2の始動がメンテナンスの実施後で、最初のポンプ2の始動であるか否かを検出することができる。
【0027】
図4は、スロースタート制御に用いられる増加レートを説明するためのグラフである。
図4の縦軸は目標圧力値を表し、
図4の横軸は、ポンプ2を始動してからの時間を表す。制御部20には、設定圧力値が予め記憶されている。この設定圧力値は、上述した目標圧力値PSに等しい。さらに、制御部20には、増加レートを決定するための設定時間TSが図示しない入力器を通じて入力される。制御部20は、目標圧力値が0から設定圧力値(=PS)まで設定時間TSをかけて増加する増加レートを算出する。具体的には、制御部20は、設定圧力値(=PS)を設定時間TSで割り算することにより、増加レートを決定する。
図4に示されるように、増加レートは、単位時間ΔTあたりの目標圧力値の増加量ΔPであり、直線LPの傾きに相当する。このようにして決定された増加レートは、制御部20に記憶される。
【0028】
スロースタート制御が実行されるときは、制御部20は、この増加レートにしたがって、目標圧力値を設定圧力値(=PS)まで徐々に増加させる。例えば、ポンプ2の始動から時間T1が経過したときの目標圧力値はP1であり、ポンプ2の始動から時間T2が経過したときの目標圧力値はP2である。このように、目標圧力値はポンプ2の始動からの時間の経過にしたがって、徐々に増加していく。
【0029】
図5は、スロースタート制御が実行されるときの、ポンプ2の吐出側圧力の変化を表すグラフである。
図5において、圧力センサ13によって測定されたポンプ2の吐出側圧力は点線で示されている。
【0030】
本実施形態では、スロースタート制御を開始する前に、まず、空気抜き配管33に配置されている開閉弁35を開く(
図2参照)。この状態で、スロースタート制御が開始される。ポンプ2が始動すると、最初に空気のみが空気抜き配管33から吐出される。このとき、配水管11には、空気のみが流れているため、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力は実質的に0である。なお、
図2に示した実施形態とは異なるが、空気抜き配管33および開閉弁35を省略して、配出管18から空気を吐出させてもよい。この場合も、配水管11に空気のみが流れているときは、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力は実質的に0である。
【0031】
ポンプ2の始動からある程度の時間が経過すると、水と空気との混合流体が空気抜き配管33から吐出され始める(時間TA)。配水管11を流れる空気に対する水の割合が増加するにつれて、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力は徐々に増加する。さらに、ポンプ2の始動からある程度の時間が経過すると、空気抜き管33からは水のみが吐出され(時間TB)、開閉弁35が閉じられる。
【0032】
ポンプ2が運転されるにつれて、やがて、吐出側圧力は、設定圧力値(=PS)に到達する(時間TC)。時間TCの後は、制御部20は、目標圧力値を設定圧力値(=PS)に維持する。したがって、制御部20に電力が供給された後で、2回目以降にポンプ2を始動するときは、制御部20は、
図3に示される通常スタート制御を実行する。通常スタート制御では、
図3に示されるように始動圧力POと目標圧力値PSの差ΔPIに基づいて、ポンプ2の回転速度が制御される。
【0033】
図5に示されるように、ポンプ2の始動から時間TAが経過したときに、制御部20は、目標圧力値PAと0(=ポンプ2の吐出側圧力値)との差ΔPIAを0にするための回転速度指令値を算出し、この回転速度指令値をインバータ22に送る。
図5から分かるように、この差ΔPIAは、目標圧力値PSと0との差よりも小さい。同様に、ポンプ2の始動から時間TBが経過したときに、制御部20は、目標圧力値PBとポンプ2の現在の吐出側圧力値PCとの差ΔPIBを0にするための回転速度指令値を算出し、この回転速度指令値をインバータ22に送る。この差ΔPIBは、目標圧力値PSと0との差よりも小さい。したがって、ポンプ2の回転速度がゆっくりと増加される。
【0034】
本実施形態によれば、制御部20は、予め決定された増加レートにしたがって徐々に上昇する目標圧力値と、ポンプ2の吐出側圧力の測定値との差に基づいて、ポンプ2の回転速度を制御する。したがって、目標圧力値とポンプの吐出側圧力の測定値との差が小さい状態で、ポンプ2の回転速度が制御されるので、ポンプ2の回転速度をゆっくりと上昇させることができる。その結果、ポンプ2に吸い込まれる異物(例えば、砂および塵)が減少し、フロースイッチ12、圧力センサ13、圧力タンク15などのポンプ装置の構成要素の故障を防止することができる。
【0035】
上述したように、時間TAと時間TBの間の時間において、空気抜き配管33から水と空気の混合流体が吐出される。本実施形態によれば、ポンプ2の回転速度がゆっくりと増加するために、混合流体が空気抜き配管33から緩やかに吐出され、その結果、水が陸上ユニット5の周囲に広範囲にわたって飛び散ることがない。
【0036】
スロースタート制御における上記増加レートは、
図3に示される通常スタート制御におけるポンプ2の吐出圧力の増加レートよりも小さいことが好ましい。この観点から、設定時間TSは、10秒以上60秒以下に設定されるのが好ましい。すなわち、上記増加レートは、目標圧力値が0から設定圧力値PSまで10秒から60秒かけて増加するレートであるのが好ましい。
【0037】
図6は、吸込管4および配水管11内に水が残っているときの、スロースタート制御を説明するためのグラフである。例えば、ポンプ装置のメンテナンスを実施した後で、吸込管4および配水管11内に水が残っている場合がある。メンテナンス後に、制御部20に電源16から電力を供給すると、配水管11内に残っている水の圧力の測定値P3が圧力センサ13から制御部20に送られる。以下の説明では、配水管11内に残っている水の圧力の測定値P3を残圧値P3と称する。
【0038】
制御部20に電源16から電力を供給したときに、圧力センサ13から制御部20に残圧値P3が送られた場合、制御部20は、スロースタート制御を開始する初期目標圧力値を残圧値P3に設定する。ポンプ2を始動させた後は、制御部20は、残圧値P3から設定圧力値(=PS)まで、
図4を参照して説明された増加レートにしたがって、目標圧力値を徐々に増加させる。すなわち、制御部20は、設定圧力値(=PS)を設定時間TSで割り算することにより得られた増加レートにしたがって、残圧値P3から設定圧力値PSまで目標圧力値を徐々に増加させる。このように、配水管11内に水が残っている場合においても、制御部20に電力が供給された後で、最初にポンプ2を始動するときは、スロースタート制御が実行される。
【0039】
ポンプ2の吐出側圧力の測定値が設定圧力値PSに到達した後は、制御部20は、目標圧力値を設定圧力値(=PS)に維持する。したがって、制御部20に電力が供給された後で、2回目以降にポンプ2を始動するときは、制御部20は、
図3に示される通常スタート制御を実行する。
【0040】
次に、上述したポンプ装置のより詳細な構成について
図7を参照して説明する。
図7に示すように、ポンプ装置は、スロースタート制御が実行されていることを含む運転情報を表示する表示器49をさらに備えている。制御部20は、設定部46、記憶部47、演算部48、I/O部50、および運転パネル51を備えている。運転パネル51は、ヒューマンインターフェースとして機能する。設定部46には、ポンプ2の運転制御に関する各種設定値が入力される。例えば、上述した圧力増加レートを算出するための設定時間TSが設定部46に入力される。設定部46および表示器49は、運転パネル51に設けられている。表示器49は液晶パネルであり、設定部46はタッチパネル式操作器でもよい。本実施形態では、表示器49は制御部20に取り付けられているが、表示器49は制御部20から離れて配置されてもよい。また、表示器49は液晶パネルと7セグメントLEDや表示灯を組み合わせた構成でもよい。
【0041】
記憶部47は、スロースタート制御の実行の履歴などを記憶する。演算部48としては、CPUが使用される。表示器49は、ヒューマンインターフェースとして機能し、スロースタート制御が実行されていることを含む運転情報を表示する。ユーザーは、設定部46上のクリアボタン53を押すことにより、表示器49での表示を消去することができる。
【0042】
図8は記憶部47の詳細を示す図である。
図8に示すように、記憶部47は、不揮発性メモリから構成された不揮発性記憶領域47aと、揮発性メモリから構成された揮発性記憶領域47bを備えている。不揮発性記憶領域47aは、スロースタート制御の実行の履歴、ポンプ2の運転に必要な各種設定値、故障履歴、運転履歴などを記憶する領域である。揮発性記憶領域47bは、スロースタート制御の実行、圧力信号、ポンプ回転数、電流値、故障、警報などを記憶する領域である。
【0043】
図9はポンプ装置の他の実施形態を示す図である。本実施形態では、表示器49に加えて、外部表示器61がさらに設けられている。
図9に示すように、制御部20は通信部60をさらに備えている。制御部20は有線通信または無線通信によって外部表示器61に接続されている。外部表示器61として、例えばスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレットの汎用端末機器または遠隔監視器などの専用端末機器が採用される。本実施形態では、表示器49は7セグメントLEDや表示灯などの簡易な表示器であり、外部表示器61は液晶画面と液晶画面のタッチ入力方式や押圧ボタン方式用いた高機能表示器である。簡易な表示器49に比べて外部表示器61は表示できる情報量が格段に多いため、外部表示器61にスロースタート制御が実行されていることを表示することによって、ポンプ装置に不慣れなユーザーは誤解することなく、スロースタート制御が実行されていることを認識することが出来る。
【0044】
ポンプ装置は機械室やポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。本実施形態によれば、ポンプ装置に組み込まれる表示器49として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器を使用することにより、外部環境から発生される電気的なノイズにより外部表示器61の液晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示器49によりポンプ装置の運転に必要な最低限度の表示や操作を行うことが可能なため、ポンプ装置を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。さらに、外部表示器61として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレットなどの汎用端末機器を使用すると、ユーザーは専用のアプリケーションソフトウエアを用いて、スロースタート制御が実行されていることを表示させることができるため、専用のアプリケーションソフトウエアを複数用意し使い分けることによりユーザーのレベルに沿ったスロースタート制御の実行の表示を提供することが可能である。
【0045】
図10はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部20に表示器49は設けられていなく、代わりに外部表示器(高機能表示器)61のみが設けられる。その他の構成は、
図9に示す実施形態と同様である。
図10に示す実施形態によれば、ポンプ装置には表示器自体を設ける必要がなくなるので、ポンプ装置全体のコストを更に下げることが可能である。
【0046】
図11はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図11において、表示器49は7セグメントLEDや表示灯などの簡易な表示器である。通信部60は公衆回線を介して保守管理会社または管理人室に設けられた外部表示器65に接続されている。制御部20は、スロースタート制御が実行されていることを判断し、外部表示器65は制御部20に公衆回線を通じて定期的に通信し、スロースタート制御が実行されているか否かを制御部20に問い合わせる。そして、スロースタート制御が実行されている場合は、外部表示器65はスロースタート制御が実行されていることを表示する。外部表示器65はスロースタート制御が実行されていることを他の情報に追加的に表示してもよい。
【0047】
本実施形態の制御部20は、
図7に示すクリアボタン53を備えていなく、代わりに、外部表示器65は、
図11に示すように、クリアボタン66を備えている。ユーザーがこのクリアボタン66を押すと、外部表示器65上に表示されているスロースタート制御の実行の表示が消去される。
【0048】
図12はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態の制御部20の基本的構成は
図10に示す実施形態の制御部20の構成と同じであるが、制御部20が通信部60に代えて、制御部側アンテナ部67を備えている点、および制御部側アンテナ部67に接続された集積回路68を備えている点で異なっている。集積回路68は、不揮発性記憶領域47a、揮発性記憶領域47bを有する記憶部47に電気的に接続されている。なお、本実施形態の制御部20は表示器49を備えていないが、制御部20に表示器49を設けてもよい。
【0049】
外部表示器70は、電波を送受信する表示器側アンテナ部71と、表示器側アンテナ部71で受信したデータを読み取るデータリーダー74と、データリーダー74によって読み取られたデータ(例えば、スロースタート制御の実行、ポンプ2の運転状態、吐出し圧力など)を表示する表示部72と、データリーダー74、表示器側アンテナ部71、および表示部72に電力を供給するバッテリー73とを備えている。外部表示器70として、例えばスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器でもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器でもよい。特に、スマートフォンなどの汎用端末機器を外部表示器として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、ポンプ装置のコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器にスロースタート制御の実行を表示させることができるので、マンションやビルの管理人のようなポンプ装置に関する専門知識のないユーザーに対しても、スロースタート制御が実行されていることを分かり易く知らせることができるポンプ装置を安価に提供することができる。
【0050】
外部表示器70は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部20と接続される。より具体的には、外部表示器70を制御部20に近づけた状態で、表示器側アンテナ部71が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部67が受け取り、制御部側アンテナ部67は電波を電力に変換する。この電力は集積回路68および記憶部47に供給されてこれら集積回路68および記憶部47を駆動する。集積回路68は記憶部47に記憶されている上記データを読み取り、制御部側アンテナ部67にデータを送る。制御部側アンテナ部67は、データとともに電波を表示器側アンテナ部71に送信する。データリーダー74は、表示器側アンテナ部71が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部72に表示させる。
【0051】
外部表示器70は、スロースタート制御の実行の表示を消去するためのクリアボタン66を備えている。ユーザーがこのクリアボタン66を押すと、表示部72に表示されているスロースタート制御の実行の表示が消去される。本実施形態のクリアボタン66は、表示部72の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン66は表示部72の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。本実施形態の制御部20はクリアボタンを備えていないが、制御部20にクリアボタンを設けてもよい。なお、これらの操作には、操作制限を設けてもよい。具体的には、ユーザーが主に使用する外部表示器70にクリアボタン66を設け、メンテナンス員が主に使用する制御部20にリセットボタン52を設ける。このように制御部20にのみリセットボタン52を設けることで、ユーザーのリセットボタン52の誤操作を防ぐことができる。パスワード等の複雑な使用制限の解除方法ではなく、外部表示器70を設けることで、ユーザーの誤操作によるスロースタート制御の実行のクリアを防止することができる。
【0052】
本実施形態では、外部表示器70と制御部20との間で無線通信が行われ、記憶部47に記憶されているスロースタート制御の実行などを含むデータは、制御部20から外部表示器70に送られる。本実施形態によれば、ポンプ装置の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部67は外部表示器70から発せられる電波から電力を発生し、集積回路68および記憶部47を駆動することができる。したがって、ポンプ装置のメンテンナンス中などにおいて制御部20に電力が供給されていないときでも、外部表示器70は、制御部20の記憶部47からスロースタート制御の実行の履歴を含むデータを取得し、該データを表示することができる。
【0053】
制御部20が故障した場合には新制御部20に交換する必要がある。この制御部20の交換時に、故障した旧制御部20はすでに電源が入らない状態においても、本実施形態では、旧制御部20のスロースタート制御の実行の履歴に関するデータを新制御部20の記憶部47に継承することが可能となる。具体的には、旧制御部20の記憶部47の該データを外部表示器70にて表示し、その表示を確認しながらメンテナンス員が新制御部20の操作部より入力し、新制御部20の記憶部47に該データを記憶させてもよいし、旧制御部20の該データを外部表示器70にて取得し、外部表示器70から新しい制御部20の記憶部47へと通信手段にて書き込んでもよい。制御部20が電源が入らない状態で故障しても、不揮発性記憶領域47aに記憶されているデータを新制御部20の記憶部47に継承できるので、スロースタート制御の実行の履歴のデータが損失されることない。これは、ポンプ装置が新制御部20にて自動運転を開始した後でも、スロースタート制御の実行の履歴を表示することができることを意味する。
【0054】
本実施形態によれば、ポンプ装置に電力が供給されていないときでも、ユーザーやメンテナンス員が外部表示器70を制御部20に近づけるだけで、記憶部47からスロースタート制御の実行の履歴を含む情報を取得することが可能である。
【0055】
本実施形態で採用される近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)は、数cmの近距離でのみ相互通信が可能な技術である。したがって、外部表示器70にスロースタート制御の実行やその他の各種情報を表示させるためには、ユーザーやメンテナンス員は外部表示器70を制御部20に近づける必要がある。このことは、外部表示器70を操作するときは、ユーザーやメンテナンス員はポンプ装置の近くにいることを意味する。したがって、ユーザーやメンテナンス員はポンプ装置を目視しながら外部表示器70を操作することになり、誤操作に起因したポンプ装置の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数のポンプ装置が設置された現場では、スロースタート制御の実行を表示したいポンプ装置の近距離でのみ通信可能となる為、無線通信にてよくある意図しない別のポンプ装置のスロースタート制御の実行を表示してしまうという誤表示を防止することが出来る。
【0056】
図13はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部20は通信部60を備えている。通信部60は、有線通信または無線通信によって外部表示器75の通信部76に接続されている。外部表示器75は制御部80を備えており、制御部80は通信部76、記憶部77、演算部78、および表示部79を備えている。制御部20は、表示器49を備えていてもよい。また、記憶部77は記憶部47と同様に
図8の構成とする。
【0057】
図14はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部20には表示器は設けられておらず、代わりに、外部表示器75に表示部79と設定部82が設けられている。その他の構成は
図13に示す実施形態と同様である。本実施形態では、スロースタート制御の実行の状態は表示部79に表示され、その他各種設定値の入力は、外部表示器75の設定部82を通じて行われる。
【0058】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。