特許第6683559号(P6683559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683559樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂フィルムの製造方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置
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  • 特許6683559-樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂フィルムの製造方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置 図000035
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683559
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂フィルムの製造方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20200413BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200413BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200413BHJP
   C08G 77/54 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C08G59/32
   H01L23/30 R
   C08G77/54
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-130354(P2016-130354)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-186497(P2017-186497A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-75754(P2016-75754)
(32)【優先日】2016年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和紀
(72)【発明者】
【氏名】市岡 揚一郎
(72)【発明者】
【氏名】菅生 道博
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/111427(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0009022(US,A1)
【文献】 特開2013−095915(JP,A)
【文献】 特開2012−224062(JP,A)
【文献】 特開2003−020337(JP,A)
【文献】 特開2004−359703(JP,A)
【文献】 特開2013−173920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)で表される構成単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシリコーン樹脂(A)、
【化1】
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、RとRは同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数であり、a、bはともに正数で、a+b=1である。Xは、それぞれ独立に、下記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)の群から選ばれる2価の基で示される連結基であり、シリコーン樹脂(A)に含まれる下記一般式(2)で示される単位のモル数をc、下記一般式(3)で示される単位のモル数をd、下記一般式(4)で示される単位のモル数をe、下記一般式(5)で示される単位のモル数をfとするとき、eは正数、c、d及びfはそれぞれ0または正数であり、c+d+e+f/シリコーン樹脂(A)に含まれるXで示される連結基のモル数=1を満たし、eを1とした割合の場合、c+d=1〜10、f=0〜1の範囲である。
【化2】
(式中、Vは
【化3】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは1である。また、Rは水素原子又はメチル基を示し、gは0〜7の整数である。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、qは0〜7の整数である。)
【化5】
(式中、Yは
【化6】
のいずれかより選ばれる2価の基であり、R、R10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【化7】
(式中、R12とR13はそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R12とR13は同時にメチル基であることはない。rとsはそれぞれ独立に0〜300の整数である。また、R11は水素原子又はメチル基を示し、kは0〜7の整数である。)]
(B)エポキシ樹脂硬化剤、及び
(C)フィラー
を含有するものであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、アミン系、フェノール系、及び酸無水物系のいずれかのエポキシ樹脂硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の量が、前記(A)成分100質量部に対し5〜50質量部であり、全質量に対する前記(C)成分の質量分率が、50〜95質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に、エポキシ樹脂硬化促進剤を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
更に、前記(A)成分以外のエポキシ樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分がシリカであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物がフィルム化されたものであることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、剥離フィルム上にコートすることにより、前記剥離フィルム上に樹脂組成物層を有する樹脂形成フィルムを2つ以上作製して用意し、
該2つ以上の樹脂形成フィルム相互の前記樹脂組成物層同士を重ね合わせることを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記用意する樹脂形成フィルムのうち少なくとも1つを、前記剥離フィルム上に前記樹脂組成物層、及び該樹脂組成物層を保護するための保護フィルムが順に形成された樹脂形成フィルムとし、
前記樹脂形成フィルム相互の前記樹脂組成物層同士の重ね合わせを、前記樹脂形成フィルムから、互いに積層すべき前記樹脂組成物層が露呈するように前記保護フィルム又は前記剥離フィルムを取り除き、露呈した樹脂組成物層同士を重ね合わせることで行うことを特徴とする請求項8に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハを前記樹脂フィルムでモールドする工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載の樹脂フィルムの加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハが個片化されたものであることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂フィルムとその製造方法、及び、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の製造に用いられるウエハのサイズは大口径化、薄膜化が進んでおり、これらをウエハレベルで封止する技術が求められている。そこで、従来の固形タイプのエポキシ樹脂のトランスファー成形方法の他、液状タイプのエポキシ樹脂を用いた圧縮成形方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、トランスファー成形では狭部に樹脂を流動させるためワイヤ変形を起こすことが懸念され、封止面積の増大に伴う充填不良も起こし易くなるという問題がある。また、圧縮成形法ではウエハの端面部分での成形範囲の細かい制御が難しい上、成形機へ液状封止樹脂を流し込む際の流動性と物性とを最適化することが容易ではないという問題があった。その上、近年のウエハサイズの大口径化、ウエハの薄膜化により、これまで問題にならなかったモールド後のウエハの反りが問題となってきており、更には良好なウエハ保護性能も求められる。そのため、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせずにウエハを一括してモールドすることができ、モールド後において低反り性、及び良好なウエハ保護性能、良好な密着性、良好な信頼性、及び良好な耐熱性を有するウエハモールド材の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/142065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)することができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有し、同時に、モールド後において低反り性、及び良好なウエハ保護性能、良好な密着性、良好な信頼性、および良好な耐熱性を与え、モールド工程を良好に行うことができ、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂組成物及び樹脂フィルムを提供すること、該樹脂フィルムの製造方法、また、該樹脂フィルムによりモールドされた半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、下記組成式(1)で表される構成単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシリコーン樹脂(A)、
【化1】
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、RとRは同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数であり、a、bはともに正数で、a+b=1である。Xは、それぞれ独立に、下記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)の群から選ばれる2価の基で示される連結基であり、シリコーン樹脂(A)に含まれる下記一般式(2)で示される単位のモル数をc、下記一般式(3)で示される単位のモル数をd、下記一般式(4)で示される単位のモル数をe、下記一般式(5)で示される単位のモル数をfとするとき、eは正数、c、d及びfはそれぞれ0または正数であり、c+d+e+f/シリコーン樹脂(A)に含まれるXで示される連結基のモル数=1を満たし、eを1とした割合の場合、c+d=1〜10、f=0〜1の範囲である。
【化2】
(式中、Vは
【化3】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、Rは水素原子又はメチル基を示し、gは0〜7の整数である。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、qは0〜7の整数である。)
【化5】
(式中、Yは
【化6】
のいずれかより選ばれる2価の基(上記式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)であり、R、R10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【化7】
(式中、R12とR13はそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R12とR13は同時にメチル基であることはない。rとsはそれぞれ独立に0〜300の整数である。また、R11は水素原子又はメチル基を示し、kは0〜7の整数である。)]
(B)エポキシ樹脂硬化剤、及び
(C)フィラー
を含有するものであることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0007】
このような特徴あるシリコーン樹脂(A)を含有する樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが可能であるため、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)することができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有し、同時に、モールド後において、密着性、低反り性、ウエハ保護性、信頼性、及び耐熱性に優れたものとなり、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂組成物となる。
【0008】
また、前記一般式(4)中のYが、
【化8】
のいずれかより選ばれる2価の基であることが好ましい。
【0009】
このような、Yが上記の結合基のいずれかであるシリコーン樹脂(A)を含有する樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが容易であるため、ウエハを容易に一括してモールドすることができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して更に良好なモールド性を有し、かつ、モールド後において、密着性、低反り性、ウエハ保護性、信頼性及び耐熱性がより一層優れたものとなり、ウエハレベルパッケージに更に好適に用いることができる樹脂組成物となる。
【0010】
また、前記(B)成分が、アミン系、フェノール系、及び酸無水物系のいずれかのエポキシ樹脂硬化剤であることが好ましい。
【0011】
このような(B)エポキシ樹脂硬化剤を含有する樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが容易であるため、ウエハを容易に一括してモールドすることができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して更に良好なモールド性を有し、かつ、モールド後において、密着性、低反り性、ウエハ保護性、信頼性及び耐熱性がより一層優れたものとなり、ウエハレベルパッケージに更に好適に用いることができる樹脂組成物となる。
【0012】
また、前記(B)成分の量が、前記(A)成分100質量部に対し5〜50質量部であり、全質量に対する前記(C)成分の質量分率が、50〜95質量%であることが好ましい。
【0013】
このような樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが容易であるため、ウエハを容易に一括してモールドすることができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して更に良好なモールド性を有し、かつ、モールド後において、密着性、低反り性、ウエハ保護性、信頼性及び耐熱性がより一層優れたものとなり、ウエハレベルパッケージに更に好適に用いることができる樹脂組成物となる。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物は、更に、エポキシ樹脂硬化促進剤を含有するものであることが好ましい。
【0015】
このように、本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂硬化促進剤を含有することで、ウエハへの密着性、ウエハ保護性が一層良好となるため、ウエハレベルパッケージに更に好適に用いることができる。
【0016】
また、本発明の樹脂組成物は、更に、前記(A)成分以外のエポキシ樹脂を含有するものであることが好ましい。
【0017】
このように、前記(A)成分以外のエポキシ樹脂を配合することで、ウエハへの密着性、保護性を更に向上させることができる。
【0018】
また、前記(C)成分がシリカであることが好ましい。
【0019】
このように、(C)フィラーがシリカである樹脂組成物であれば、ウエハ保護性を更に向上させることができ、耐熱性、耐湿性、強度等を更に向上させ、より一層信頼性を上げることができるため好都合である。
【0020】
また、本発明では、前記樹脂組成物がフィルム化されたものであることを特徴とする樹脂フィルムを提供する。
【0021】
このような、フィルム状に形成された樹脂フィルムであれば、ウエハ、特には大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がないため、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせることがない。また、このような本発明の樹脂組成物がフィルム化された樹脂フィルムは、ウエハに対する良好な密着性、ウエハ保護性、低反り性、信頼性、及び耐熱性を同時に併せ持つウエハモールド材となる。
【0022】
また、本発明では、前記樹脂組成物を、剥離フィルム上にコートすることにより、前記剥離フィルム上に樹脂組成物層を有する樹脂形成フィルムを2つ以上作製して用意し、該2つ以上の樹脂形成フィルム相互の前記樹脂組成物層同士を重ね合わせることを特徴とする樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0023】
またこの場合、前記用意する樹脂形成フィルムのうち少なくとも1つを、前記剥離フィルム上に前記樹脂組成物層、及び該樹脂組成物層を保護するための保護フィルムが順に形成された樹脂形成フィルムとし、前記樹脂形成フィルム相互の前記樹脂組成物層同士の重ね合わせを、前記樹脂形成フィルムから、互いに積層すべき前記樹脂組成物層が露呈するように前記保護フィルム又は前記剥離フィルムを取り除き、露呈した樹脂組成物層同士を重ね合わせることで行うことが好ましい。
【0024】
このような樹脂フィルムの製造方法であれば、多層の樹脂フィルムからなる複合樹脂フィルムを容易に製造することができる。
【0025】
また、本発明では、前記樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハを前記樹脂フィルムでモールドする工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0026】
このように、前記樹脂フィルムでモールドされた半導体ウエハは、反りが少なく十分に保護されたものとなるので、これを個片化することで歩留まりよく高品質な半導体装置を製造することができる。
【0027】
また、本発明では、前記樹脂フィルムの加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハが個片化されたものであることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0028】
このように、樹脂フィルムを加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハは、反りが少なく十分に保護されたウエハであり、これを個片化することで得られる半導体装置は、反りのない高品質な半導体装置となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の樹脂組成物は、フィルム状に加工することが可能であるため、ウエハ、特に大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなる。また、モールド後の密着性、低反り性、ウエハ保護性、信頼性、耐熱性に優れ、ウエハを一括してモールドすることが可能となるため、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂フィルムとなる。また、本発明の樹脂フィルムの製造方法であれば、容易に、多層からなる樹脂フィルムを製造することが可能となる。また、本発明の半導体装置及びその製造方法であれば、歩留まりよく高品質な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)本発明の樹脂フィルムで一括モールドされたウエハの一例を示す断面図、(B)本発明の樹脂フィルムで一括モールドされたウエハの別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
前述のように、近年、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせずにウエハを一括してモールドすることができ、モールド後において良好な密着性、低反り性、良好なウエハ保護性能、良好な信頼性、及び良好な耐熱性を有するウエハモールド材の開発が望まれていた。
【0032】
そこで、本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記(A)シリコーン樹脂と、下記(B)エポキシ樹脂硬化剤を組み合わせることで、ウエハへの密着性、硬化後の低反り性、耐熱性に優れた樹脂組成物を与えることを見出し、更に下記(C)フィラーがウエハ保護性並びに硬化後の樹脂組成物の信頼性を向上させるため、これらの成分からなる樹脂組成物より得られた樹脂フィルムが、ウエハに対する優れた密着性、ウエハ保護性、低反り性、信頼性、耐熱性を同時に併せ持つウエハモールド材となることを見出して、本発明を完成させた。
【0033】
以下、本発明の樹脂組成物、該樹脂組成物から得られる樹脂フィルム(複合フィルム)及びその製造方法、半導体装置及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
本発明に係る樹脂組成物は、下記 (A)シリコーン樹脂と、下記(B)エポキシ樹脂硬化剤、及び(C)フィラーを含有する樹脂組成物である。
【0035】
[(A)シリコーン樹脂]
本発明において、(A)成分のシリコーン樹脂はフィルム形成能を与えるものとして機能する。また、得られた樹脂フィルムをウエハモールド材として用いた場合、ウエハへの密着性、低反り性、良好なモールド性と耐熱性を与える。
【0036】
この(A)成分のシリコーン樹脂は、下記組成式(1)で表される構成単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000のシリコーン樹脂である。
【化9】
[式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、RとRは同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数であり、また、a、bはともに正数で、a+b=1である。Xは、それぞれ独立に、下記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)の群から選ばれる2価の基で示される連結基であり、シリコーン樹脂(A)に含まれる下記一般式(2)で示される単位のモル数をc、下記一般式(3)で示される単位のモル数をd、下記一般式(4)で示される単位のモル数をe、下記一般式(5)で示される単位のモル数をfとするとき、eは正数、c、d及びfはそれぞれ0または正数であり、c+d+e+f/シリコーン樹脂(A)に含まれるXで示される連結基のモル数=1を満たし、eを1とした割合の場合、c+d=1〜10、f=0〜1の範囲である。
【化10】
(式中、Vは
【化11】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、Rは水素原子又はメチル基を示し、gは0〜7の整数である。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【化12】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、qは0〜7の整数である。)
【化13】
(式中、Yは
【化14】
のいずれかより選ばれる2価の基(上記式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)であり、R、R10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【化15】
(式中、R12とR13はそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R12とR13は同時にメチル基であることはない。rとsはそれぞれ独立に0〜300の整数である。また、R11は水素原子又はメチル基を示し、kは0〜7の整数である。)]
【0037】
本発明のシリコーン樹脂(A)は、上記式(1)で表される繰り返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000〜500,000、好ましくは5,000〜200,000である重合体である。
【0038】
a、bは、シリコーン樹脂(A)中の各繰り返し単位のモル比を示し、ともに正数で、a+b=1であるが、好ましくは0.05≦a≦0.8、特に0.1≦a≦0.7、好ましくは0.2≦b≦0.95、特に0.3≦b≦0.9である。各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
【0039】
上記式(1)において、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数であり、好ましくはmは0〜200、特に0〜100、nは0〜200、特に0〜100である。
【0040】
また、Xは、それぞれ独立に、上記式(2)、(3)、(4)及び(5)で示される群より選ばれる2価の連結基であり、上記式(2)で示される単位のモル数をc、上記式(3)で示される単位のモル数をd、上記式(4)で示される単位のモル数をe、上記式(5)で示される単位のモル数をfとするとき、eは正数、c、d及びfはそれぞれ0または正数であり、c+d+e+f/シリコーン樹脂(A)に含まれるXで示される連結基のモル数=1を満たし、eを1とした割合の場合、c+d=1〜10、好ましくはc+d=2〜10、f=0〜1、好ましくはf=0〜0.5の範囲である。
【0041】
また、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基などが挙げられる。中でもメチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。但し、RとRは同時にメチル基ではない。
【0042】
上記式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。R及びRとして、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。gは0〜7の整数である。pは0又は1であり、hは0、1、及び2のいずれかである。
【0043】
上記式(3)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、qは0〜7の整数である。上記式(4)において、R、R10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0044】
また、上記式(4)中のYは、上記の中でも、下記の結合基のいずれかより選択されることが望ましい。
【化16】
【0045】
上記式(5)において、R12とR13はそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示すが、R12とR13は同時にメチル基であることはない。rとsはそれぞれ独立に0〜300の整数であり、好ましくはrは0〜200、特に0〜100、sは0〜200、特に0〜100である。また、R11は水素原子又はメチル基を示し、kは0〜7の整数である。
【0046】
[(A)シリコーン樹脂の製造方法]
本発明におけるシリコーン樹脂(A)は、下記一般式(6)、下記一般式(7)、下記一般式(8)、下記一般式(9)、下記一般式(10)、及び下記一般式(11)で表される化合物から選択される化合物を用いて金属触媒存在下、付加重合することにより製造することができる。
【化17】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、RとRは同時にメチル基であることはなく、mとnはそれぞれ独立に0〜300の整数である。)
【化18】
(式中、Vは
【化19】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、Rは水素原子又はメチル基を示し、gは0〜7の整数である。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【化20】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、qは0〜7の整数である。)
【化21】
(式中、Yは
【化22】
のいずれかより選ばれる2価の基(上記式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)であり、R、R10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【化23】
(式中、R12とR13はそれぞれ独立に炭素原子数1〜8の1価炭化水素基を示す。但し、R12とR13は同時にメチル基であることはない。rとsはそれぞれ独立に0〜300の整数である。また、R11は水素原子又はメチル基を示し、kは0〜7の整数である。)
【0047】
金属触媒は、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・xHO、HPtCl・xHO、NaHPtCl・xHO、KHPtCl・xHO、NaPtCl・xHO、KPtCl・xHO、PtCl・xHO、PtCl、NaHPtCl・xHO(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(例えば、米国特許第3,220,972号に記載のもの);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(例えば、米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、及び米国特許第3,775,452号明細書に記載のもの);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(所謂ウィルキンソン触媒);及び、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体を使用することができる。
【0048】
触媒の使用量は触媒量であればよく、白金族金属として、反応に供する原料化合物の総量に対して0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%であることが好ましい。付加反応は溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。反応温度は、触媒が失活せず、かつ、短時間で重合の完結が可能である温度であればよく、例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。反応時間は、重合物の種類及び量により適宜選択すればよく、例えば0.5〜100時間、特に0.5〜30時間が好ましい。溶剤を使用した場合には、反応終了後に減圧留去に供して溶剤を留去する。
【0049】
反応方法は特に制限されるものではないが、例えば、式(6)で表される化合物と、式(7)で表される化合物と、式(8)で表される化合物と、式(10)で表される化合物とを反応させる場合、先ず、式(8)及び式(10)で表される化合物を混合して加温した後、前記混合液に金属触媒を添加し、次いで式(6)及び式(7)で表される化合物を0.1〜5時間かけて滴下する方法が好ましい。
【0050】
各化合物の配合比は、上記式(6)及び式(7)で表される化合物が有するヒドロシリル基のモル数の合計と、上記式(8)、上記式(9)、上記式(10)及び式(11)で表される化合物が有するアルケニル基のモル数の合計が、アルケニル基の合計モル数に対するヒドロシリル基の合計モル数が0.67〜1.67、好ましくは0.83〜1.25となるように配合することが好ましい。重合体の重量平均分子量は、o−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、又は、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより制御することが可能である。
【0051】
[(B)エポキシ樹脂硬化剤]
(B)成分は、エポキシ基を有するシリコーン樹脂(A)と架橋反応するための成分であり、(B)成分を加えることで、樹脂のウエハへの密着性、保護性、信頼性がより向上する。本発明においてエポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化に通常使用されるものであればよく、特に限定されないが、耐熱性の観点から芳香族系硬化剤や脂環式硬化剤がより好ましい。
【0052】
このようなエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯塩等が挙げられ、特に、アミン系、フェノール系、及び酸無水物系のいずれかのエポキシ樹脂硬化剤であることが好ましい。また、エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン系硬化剤、イソホロンジアミン等の脂環式アミン系硬化剤、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0054】
また、エポキシ樹脂硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いることもできる。該フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールやビスフェノールA、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール、p−フェニルフェノール、クレゾール等を原料として調製したレゾール型フェノール樹脂及び/又はノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
【0055】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0056】
エポキシ樹脂硬化剤(B)の配合量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、更に好ましくは5〜45質量部である。エポキシ樹脂硬化剤の配合量が上記範囲内であれば、樹脂組成物の密着性、保護性が更に向上する。また、該樹脂組成物の硬化物は信頼性に優れた硬化物となるため好ましい。
【0057】
[(C)フィラー]
(C)成分は、本発明の樹脂組成物に、ウエハ保護性を与え、更に、耐熱性、耐湿性、強度等を向上させ、信頼性を上げることができる。フィラーとしては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ粉末等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩又は亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等を挙げることができる。これらのフィラーは1種単独で混合しても、2種以上を併せて混合してもよい。
【0058】
これらの中でも溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末が好ましい。前記シリカ粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等の補強性シリカ;石英等の結晶性シリカが挙げられる。具体的には、日本アエロジル(株)製のAerosil R972、R974、R976;(株)アドマテックス製のSE−2050、SC−2050、SE−1050、SO−E1、SO−C1、SO−E2、SO−C2、SO−E3、SO−C3、SO−E5、SO−C5;信越化学工業(株)製のMusil120A、Musil130A等が例示される。
【0059】
フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm以上20μm以下が好ましく、特には0.01μm以上10μm以下が好ましい。フィラーの平均粒子径が上記0.01μm以上であれば、フィラーが凝集しにくくなり、強度が高くなるため好ましい。また20μm以下であれば、フィルム系性能が高くなり、チップ間への樹脂の流動性が高くなり、充填性が良好になるため好ましい。なお、平均粒子径はレーザー光回折法による粒度分布測定装置によって求めることができ、質量平均値D50(即ち、累積質量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)として測定することができる。
【0060】
フィラーの含有量は、本発明の樹脂組成物の総質量に対し50質量%以上95質量%以下、好ましくは60質量%以上92質量%以下とすることが好ましい。フィラーの含有量が95質量%以下であればフィルム系性能が高くなり、樹脂の流動性が高くなり、充填性が良好となるため好ましい。また、50質量%以上であれば、十分にフィラーとしての効果を奏する。
【0061】
エポキシ樹脂硬化促進剤
また、本発明の樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂硬化剤に加え、更にエポキシ樹脂硬化促進剤を含有することができる。エポキシ樹脂硬化促進剤を含有することにより、硬化反応を適切かつ均一に進めることができる。エポキシ樹脂硬化促進剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.2〜5質量部が好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂硬化促進剤は、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、及びこれらの化合物のエチルイソシアネート化合物、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5(DBN)、DBUの有機酸塩、DBUのフェノール樹脂塩、DBU誘導体のテトラフェニルボレート塩等のDBU系化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のトリオルガノホスフィン類、四級ホスホニウム塩、トリエチレンアンモニウム・トリフェニルボレート等の第三級アミン、及びそのテトラフェニルホウ素酸塩等が挙げられる。上記エポキシ樹脂硬化促進剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
エポキシ樹脂
本発明の樹脂組成物に、ウエハへの密着性、保護性を向上させる目的で、更にシリコーン樹脂(A)以外のエポキシ樹脂を添加することもできる。エポキシ樹脂はシリコーン樹脂(A)とともにエポキシ樹脂硬化剤(B)と架橋反応するため、樹脂のウエハへの密着性、保護性、信頼性がより向上する。
【0064】
エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらに水素添化したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂等が挙げられ、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、商品名で、jER1001(三菱化学(株)製)、エピクロン830S(DIC(株)製)、jER517(三菱化学(株)製)、EOCN103S(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0065】
エポキシ樹脂の配合量は、配合する場合、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部、特には2〜30質量部であるのが好ましい。
【0066】
シランカップリング剤
本発明の樹脂組成物はシランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、樹脂組成物の被接着体(ウエハ)への密着性を更に高めることができる。
【0067】
シランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、配合させる場合には、本発明の樹脂組成物の総質量の0.01質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
【0068】
また、本発明の樹脂組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。例えば、シリコーン樹脂(A)とエポキシ樹脂硬化剤(B)の相溶性を向上するため、あるいは樹脂組成物の貯蔵安定性又は作業性等の各種特性を向上するために、各種添加剤を適宜添加してもよい。例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系、もしくは硫黄系酸化防止剤等を添加することができる。
【0069】
有機溶剤
その他の任意成分として有機溶剤を用いることができる。即ち、本発明の樹脂組成物は、無溶剤で用いてもよいが、有機溶剤に溶解又は分散し、溶液又は分散液(以下、単に「溶液」という)として調製してから使用してもよい。この有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、好ましくはメチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
<樹脂フィルム>
本発明の樹脂組成物はフィルム状に形成されることが好ましい。このような本発明の樹脂組成物がフィルム化されたものである樹脂フィルムであれば、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がない。そのため、従来のトランスファー成形で生じ得るワイヤ変形、ウエハ表面への充填不良や、圧縮成形法で生じうる成形範囲の制御の難しさ、液状封止樹脂の流動性と物性の問題は根本的に解消することができる。
【0071】
樹脂フィルムの厚みは、特に制限はされないが、50μm以上1,000μm以下であることが好ましく、更には80μm以上700μm以下がより好ましい。このような厚みであれば、低反り性、保護性が一層優れる樹脂フィルムとなるため好ましい。
【0072】
従って、本発明は、前記樹脂組成物をフィルム化して形成された樹脂フィルムを提供する。このような樹脂フィルムは、例えば、該樹脂フィルムと、該樹脂フィルムを被覆するための保護層とを有する保護層付き樹脂フィルムの態様で提供される。該保護層は、後に説明するものを用いることができる。以下、本発明の樹脂フィルムの製造方法の一例について説明する。
【0073】
(樹脂フィルムの製造方法)
予め、本発明の(A)シリコーン樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)フィラー、必要に応じて、その他の任意成分(有機溶剤含む)を混合して液状に調製した樹脂組成物溶液を作製し、該樹脂組成物溶液をリバースロールコータ、コンマコータ等を用いて、保護層(剥離フィルム)に塗布する。前記樹脂組成物溶液が塗布された保護層をインラインドライヤに通し、80〜160℃で2〜20分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥させ、次いでロールラミネーターを用いて別の保護層(保護フィルム)と圧着し、積層することにより、本発明の樹脂組成物をフィルム化して形成された樹脂フィルムを得ることができる。
【0074】
尚、本発明において、「剥離フィルム」とは、本発明の樹脂組成物がコートされるフィルムであり、後に本発明の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層から剥離するものをいう。また、「保護フィルム」とは、剥離フィルム上に形成された樹脂組成物層を被覆して保護するためのフィルムをいう。
【0075】
また、上記圧着条件としては、特に制限はないが、温度50〜100℃、線圧0.5〜5kgf/cm、速度0.1〜5m/minでラミネートすることが好ましい。
【0076】
また、別の態様として、本発明の樹脂組成物を、剥離フィルム上にコートすることにより、前記剥離フィルム上に樹脂組成物層を有する樹脂形成フィルムを2つ以上作製して用意し、該2つ以上の樹脂形成フィルム相互の前記樹脂組成物層同士を重ね合わせることにより、多層からなる複合樹脂フィルムを製造することができる。
【0077】
またこの場合、前記用意する樹脂形成フィルムのうち少なくとも1つを、前記剥離フィルム上に前記樹脂組成物層、及び該樹脂組成物層を保護するための保護フィルムが順に形成された樹脂形成フィルムとし、前記樹脂形成フィルム相互の前記樹脂組成物層同士の重ね合わせを、前記樹脂形成フィルムから、互いに積層すべき前記樹脂組成物層が露呈するように前記保護フィルム又は前記剥離フィルムを取り除き、露呈した樹脂組成物層同士を重ね合わせることで行うことが好ましい。
【0078】
このように、樹脂形成フィルム、即ち、保護層(剥離フィルム)/樹脂フィルム/保護層(保護フィルム)からなる積層体から、いずれかの保護層を取り除き、残された樹脂フィルム/保護層同士を貼り合わせることで2層以上の樹脂が直接積層した樹脂フィルムを得ることができ、これを繰り返すことで多層の樹脂フィルムからなる積層体を得ることができ、好ましくは2〜4層からなる樹脂フィルムが本発明では好都合である。積層の際は、30〜120℃で加温しながらフィルム同士を積層させることが好ましい。
【0079】
保護フィルム/剥離フィルム(保護層)
樹脂フィルム(樹脂組成物層)を保護するための保護フィルムや、樹脂組成物溶液が塗布される剥離フィルムとしては、いずれも、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムの形態を損なうことなく剥離できるものであれば特に限定されないが、ウエハ用の保護フィルム及び剥離フィルムとして活用するものであり、通常、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、離型処理を施したポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、剥離力は50〜300mN/minが好ましく、厚さは25〜100μm、好ましくは38〜75μmである。
【0080】
(モールドされるウエハ)
本発明の樹脂フィルムにより一括してモールドされるウエハとしては、特に制限されないが、表面に半導体素子(チップ)が積載されたウエハであっても、表面に半導体素子が作製された半導体ウエハであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、モールド前にはこのようなウエハ表面に対する充填性が良好であり、また、モールド後には低反り性を有し、このようなウエハの保護性に優れる。また、本発明の樹脂フィルムは特に制限されないが、直径8インチ(200mm)以上、例えば、直径8インチ(200mm)、12インチ(300mm)といった大口径のウエハや薄膜ウエハをモールドするのに好適に用いることができる。また、薄型ウエハとしては、厚さ5〜300μmに薄型加工されたウエハに用いることが好ましい。
【0081】
(ウエハのモールド方法)
本発明の樹脂フィルムを用いたウエハのモールド方法については、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルム上に貼られた一方の保護層を剥がし、図1に示すように、樹脂フィルム1を、ウエハ2の回路面をモールドするように回路面積に合わせて貼付する方法や(図1(A))、ウエハ2全体を覆うようにウエハ2上に一括貼付する方法が挙げられる(図1(B))。例えば(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM−100RF)を用いて、真空チャンバー内を真空度50〜1,000Pa、好ましくは50〜500Pa、例えば100Paに設定し、80〜200℃、好ましくは80〜130℃、例えば100℃で他方の保護層が貼られた樹脂フィルムを上記ウエハに一括して密着させ、常圧に戻した後、上記ウエハを室温まで冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、他方の保護層を剥離することで行うことができる。その後、120〜220℃で15〜180分間の条件で樹脂フィルムを加熱硬化することができる。
【0082】
<半導体装置>
更に、本発明では前記樹脂フィルムを加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハが個片化されたものである、加熱硬化皮膜を有する半導体装置を提供する。モールドされたウエハは、ダイシングテープなどの半導体加工用保護テープにモールド樹脂面、あるいは、ウエハ面が接するように貼られ、ダイサーの吸着テーブル上に設置され、このモールドされたウエハは、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(例えば、DISCO製、DFD6361)を使用して切断される。ダイシング時のスピンドル回転数及び切断速度は適宜選択すればよいが、通常、スピンドル回転数25,000〜45,000rpm、切断速度10〜50mm/secである。また、個片化されるサイズは半導体パッケージの設計によるが、概ね2mm×2mm〜30mm×30mm程度である。
【0083】
本発明により、反りが少なく十分に保護されたウエハをダイシングブレード等を用いたダイシングにより個片化することで得られる半導体装置は、歩留まりのよい高品質な半導体装置となる。
【0084】
<半導体装置の製造方法>
また、本発明では、本発明の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハを前記樹脂フィルムでモールドする工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0085】
具体的には、例えば、両面に保護層が形成された樹脂フィルムの一方の保護層を樹脂フィルムから剥離し、露出した樹脂フィルムを半導体ウエハの表面に貼り付け、他方の保護層を樹脂フィルムから剥離し、樹脂フィルムで半導体ウエハをモールドし、モールドされた半導体ウエハを個片化する方法が上げられる。
【実施例】
【0086】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0087】
下記合成例において、各重合体の重量平均分子量は、GPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー(株)製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0088】
合成例、比較合成例において使用した化合物を以下に示す。
【化24】
【0089】
(合成例1)
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物84.1g(0.20モル)、上記式(S−2)で示される化合物66.3g(0.25モル)、上記式(S−3)で示される化合物28.5g(0.05モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、上記式(S−5)で示される化合物58.3g(0.30モル)及び上記式(S−6)で示される化合物(y=40)553g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1、シリコーン含有率70.0質量%、S−3のモル数eを1とした場合、S−1のモル数c、S−2のモル数dはc+d=9であり、S−4のモル数fはf=0であった)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は45,000であった。得られた樹脂を樹脂(1)とし、実施例、比較例に供した。
【0090】
(合成例2)
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−2)で示される化合物44.1g(0.167モル)、上記式(S−3)で示される化合物94.9g(0.167モル)、上記式(S−4)で示される化合物31.0g(0.167モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、上記式(S−5)で示される化合物58.3g(0.30モル)及び上記式(S−6)で示される化合物(y=10)141g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1、シリコーン含有率46.6質量%、S−3のモル数eを1とした場合、c+d=1、f=1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は41,000であった。得られた樹脂を樹脂(2)とし、実施例に供した。
【0091】
(合成例3)
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物84.1g(0.20モル)、上記式(S−2)で示される化合物53.0g(0.20モル)、上記式(S−3)で示される化合物28.5g(0.05モル)、上記式(S−4)で示される化合物9.3g(0.05モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、上記式(S−5)で示される化合物58.3g(0.30モル)及び上記式(S−6)で示される化合物(y=20)317g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1、シリコーン含有率59.3質量%、S−3のモル数eを1とした場合、c+d=8、f=1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は43,000であった。得られた樹脂を樹脂(3)とし、実施例に供した。
【0092】
(合成例4)
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−2)で示される化合物66.3g(0.25モル)、上記式(S−3)で示される化合物143g(0.25モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、上記式(S−5)で示される化合物58.3g(0.30モル)及び上記式(S−6)で示される化合物(y=40)553g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1、シリコーン含有率67.4質量%、S−3のモル数eを1とした場合、c+d=1、f=0)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は39,000であった。得られた樹脂を樹脂(4)とし、実施例に供した。
【0093】
(比較合成例1)
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物210g(0.50モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、上記式(S−5)で示される化合物58.3g(0.30モル)及び上記式(S−6)で示される化合物(y=40)553g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1、シリコーン含有率67.3質量%、S−3を含まないためS−3モル数e=0)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は42,000であった。得られた樹脂を樹脂(5)とし、比較例に供した。
【0094】
(比較合成例2)
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−3)で示される化合物28.5g(0.05モル)、上記式(S−7)で示される化合物194g(0.45モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、上記式(S−5)で示される化合物58.3g(0.30モル)及び上記式(S−6)で示される化合物(y=40)553g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1、シリコーン含有率66.4質量%、S−3モル数をeを1とした場合、c+d=0、f=0)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は45,000であった。得られた樹脂を樹脂(6)とし、比較例に供した。
【0095】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1−1〜1−6)
下記表1に記載した組成で、(A)上記合成例1〜4で合成したシリコーン樹脂(上記樹脂(1)〜(4))、(B)エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂硬化促進剤、(C)フィラー及び任意成分を配合した。更に固形成分濃度が75質量%となる量のシクロペンタノンを添加し、ボールミルを使用して撹拌し、混合及び溶解分散して、樹脂組成物の分散液を調製した(実施例1−1〜1−6)。なお、表1中の配合量を示す数値の単位は「質量部」である。
【0096】
(比較例1−1〜1−3)
また、比較例1−1は、本発明におけるシリコーン樹脂(A)の必須単位(上記式(4)で示される単位)を含まない、本発明におけるシリコーン樹脂(A)とは異なるシリコーン樹脂(上記樹脂(5))を含む樹脂組成物であり、本発明の要件を満たしていない組成物である。比較例1−2は本発明におけるシリコーン樹脂(A)とは異なるシリコーン樹脂(上記樹脂(6))を含む樹脂組成物であり、本発明の要件を満たしていない組成物である。比較例1−3は本発明におけるシリコーン樹脂(A)を含む組成物であるが、(C)フィラーを含まず、本発明の要件を満たしていない組成物である。
【0097】
樹脂組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
(B)エポキシ樹脂硬化剤
・フェノライトTD−2093(DIC(株)製、フェノールノボラック樹脂、OH当量:98〜102)
・リカジットHH(商品名)(新日本理化(株)製、ヘキサヒドロ無水フタル酸、分子量:154)
【0098】
更に、以下に示すエポキシ樹脂硬化促進剤を使用した。
エポキシ樹脂硬化促進剤:
・キュアゾール2P4MHZ(商品名)(四国化成工業(株)製、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
【0099】
(C)フィラー
・シリカ((株)アドマテックス製、平均粒子径5.0μm)
その他の成分
・EOCN−103S(商品名)(日本化薬(株)製エポキシ樹脂、エポキシ当量:209〜219)
ここで、エポキシ当量とは各成分一分子あたりが有するエポキシ基の当量をいう。
【0100】
【表1】
【0101】
[樹脂フィルムの製造]
樹脂フィルムの製造に用いた剥離フィルム及び保護フィルムを以下に示す。
剥離フィルム(1):E7304(東洋紡績(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力200mN/50mm)
剥離フィルム(2):E7302(東洋紡績(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力90mN/50mm)
保護フィルム:ポリエチレンフィルム(100μm)
【0102】
(実施例2−1)
フィルムコーターとしてダイコーターを用い、上記E7304を剥離フィルム(1)として用いて、表1の実施例1−1に示す樹脂組成物を剥離フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより、膜厚100μmの樹脂フィルムを上記剥離フィルム(1)上に形成した。
【0103】
次に樹脂フィルムの上から、ポリエチレンフィルム(厚さ100μm)をラミネートロールを用いて線圧力10N/cmにて貼り合わせて、剥離フィルム(1)/樹脂フィルム/保護フィルムからなる積層フィルム(1)を作製した。
【0104】
また、剥離フィルム(1)の代りに上記E7302を剥離フィルム(2)として用いる以外は上記と同様にして剥離フィルム(2)/樹脂フィルム/保護フィルムからなる積層フィルム(2)を作製した。
【0105】
更に、得られた積層フィルム(1),(2)のそれぞれのポリエチレンフィルム(保護フィルム)を取り除き、樹脂フィルム同士を重ね合わせ、60℃に加温された熱ロールラミネーターに投入し、膜厚が200μmの樹脂フィルムを有する剥離フィルム(1)/樹脂フィルム/剥離フィルム(2)からなる複合フィルムを製造した。
【0106】
(実施例2−2〜2−6、比較例2−1〜2−3)
実施例2−1と同様の方法にて、実施例1−2〜1−4、実施例1−6、比較例1−1〜1−3で調製した樹脂組成物を用いて膜厚が200μmの樹脂フィルムを有する複合フィルムを製造した(実施例2−2〜2−4、実施例2−6、比較例2−1〜2−3)。また、実施例2−5では、実施例1−4と同じ樹脂組成物である実施例1−5の樹脂組成物を用い、膜厚が500μmの樹脂フィルムを作製した。
【0107】
[樹脂フィルムのウエハへのモールド]
ウエハ厚み100μm、直径12インチ(300mm)のシリコンウエハを用意した。実施例2−1〜2−6及び比較例2−1〜2−3で製造した複合フィルムについて、剥離フィルム(2)を剥離し、真空ラミネーター((株)タカトリ製、製品名:TEAM−300M)を用いて、真空チャンバー内を真空度250Paに設定し、110℃で、樹脂フィルムを一括して上記シリコンウエハに貼り付けた。常圧に戻した後、上記シリコンウエハを25℃に冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、残りの剥離フィルム(1)を剥離した。得られた樹脂フィルム付ウエハは、イナートオーブンにて、180℃、2時間加熱することにより樹脂の硬化を行った。
【0108】
[評価1:ウエハ反り量]
樹脂フィルム硬化後のウエハ反り量をレーザー(東朋テクノロジー(株)製、FLX−3300−T)測定し、得られた値を表2に示す。なお、反り量が大きく、本装置で測定できなかった場合は、定規(JIS1級)を用いて測定した値を示した。
【0109】
[評価2:ウエハサポート性]
ウエハサポート性はウエハの端を支持した際のウエハのたわみ量を測定し、20mm以内を良好とし、20mmを超えた場合を不良と判断した結果を表2に示す。
【0110】
[評価3:密着力]
各樹脂フィルムを真空フィルムラミネーター(温度:100℃、圧力:100Pa、TEAM−100、(株)タカトリ製)を用いて、直径6インチ(150mm)半導体ウエハ(厚み625μm、信越化学工業(株)製)に貼り合わせた。次いで、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(DAD685、DISCO社製)を使用して2mm×2mm角の大きさに切断した。別途用意した、15mm×15mm角のシリコンウエハ(ベース基板)上に、樹脂フィルムを介して150℃、50mNの荷重にて2mm×2mm角のチップ貼り合わせた。その後、180℃にて2時間加熱して樹脂フィルムを硬化させ、試験片を得た。試験片は各5個ずつ製造し、以下の接着力測定試験に供した。
【0111】
ボンドテスター(Dage series 4000−PXY:Dage社製)を用いて、半導体チップ(2mm×2mm)がベース基板(15mm×15mm角のシリコンウエハ)から剥離する時にかかる抵抗力を測定し、樹脂フィルム層の密着力を評価した。テスト条件は、テストスピード200μm/sec、テスト高さ50μmで行った。結果を表2に示す。表2に示される数値は、各々5個の試験片における測定値の平均であり、数値が高いほど接着シートの接着力が高いことを示す。
【0112】
[評価4:信頼性]
硬化後の樹脂フィルム付ウエハをダイシングブレードを備えるダイシングソー(DAD685、DISCO社製、スピンドル回転数は40,000rpm、切断速度は20mm/sec)を使用して10mm×10mm角の試験片を得た。得られた試験片(各10片づつ)をヒートサイクル試験(−25℃で10分間保持、125℃で10分間保持を1,000サイクル繰り返す)に供し、ヒートサイクル試験後の樹脂フィルムのウエハからの剥離状態を確認した。全く剥離を生じなかったものを良好、1つでも剥離を生じたものを不良として判定した結果を表2に示す。
【0113】
[評価5:耐熱性]
評価4で作製した試験片の試験前質量を測定し、その後、試験片を200℃に加熱したオーブンに1000時間放置した後、試験片をオーブンから取り出し、試験後質量を測定した。試験前後の質量変化率が0.5質量パーセント未満だった場合を良好、試験前後の重量変化率が0.5質量パーセント以上だった場合を不良として判定した結果を表2に示す。
【表2】
【0114】
以上の結果、本発明の樹脂組成物から得られる樹脂フィルム(実施例2−1〜2−6)は、比較例2−1〜2−3の樹脂フィルムと比べてウエハの反り量が少なく、ウエハサポート性、密着性、信頼性、耐熱性に優れることがわかった。
【0115】
以上説明したように、本発明の樹脂組成物であれば、フィルム状に形成することが可能であるためウエハを一括してモールド(ウエハモールド)できるものであり、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有するものであることが示された。また、本発明の樹脂組成物より得られる樹脂フィルムは、低反り性及びウエハ保護性に優れ、密着性、信頼性、耐熱性にも優れることが示された。
【0116】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0117】
1…樹脂フィルム、 2…ウエハ
図1