特許第6683732号(P6683732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683732
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】フォトリフレクタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/12 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   H01L31/12 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-554699(P2017-554699)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2015084436
(87)【国際公開番号】WO2017098584
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 文昭
(72)【発明者】
【氏名】小池 誠二
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0083888(KR,A)
【文献】 実開平04−032547(JP,U)
【文献】 国際公開第2014/054083(WO,A1)
【文献】 特開2001−291458(JP,A)
【文献】 特開平05−037010(JP,A)
【文献】 米国特許第05731582(US,A)
【文献】 特開平08−023121(JP,A)
【文献】 特開2013−187357(JP,A)
【文献】 特開平05−152603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基板と、
前記基板に実装される発光素子及び受光素子と、
前記発光素子及び前記受光素子を封止する透光性樹脂層と、
前記発光素子と前記受光素子との間に設けた遮光部と、を備え、
前記遮光部は、前記発光素子と前記受光素子との間で前記透光性樹脂層を介して光の一部が直接授受可能な高さに形成され、
前記発光素子を封止する透光性樹脂層と、前記受光素子を封止する透光性樹脂層との間に、空気層を有し、前記発光素子と前記受光素子との間で前記透光性樹脂層及び前記空気層を介して光の一部が直接授受可能になっており、
前記発光素子からの光は、一部が直接的に前記受光素子に入射し、前記透光性樹脂層と検出対象物との間に存在する空気への入射角が所定臨界角以上になると、全反射により他の一部が前記透光性樹脂層内で反射をして前記受光素子に入射することで、前記受光素子の出力値を増やしている、フォトリフレクタ。
【請求項2】
請求項に記載のフォトリフレクタであって、
前記基板は、複数の凹部を有し、前記発光素子と前記受光素子とが、前記複数の凹部のうちの一つにそれぞれ収納されて配置されており、前記発光素子と前記受光素子との間の前記凹部の側壁部により前記遮光部が形成されている、フォトリフレクタ。
【請求項3】
請求項に記載のフォトリフレクタであって、
前記発光素子又は前記受光素子が配置されている前記凹部の少なくとも側壁部に、反射膜が設けられている、フォトリフレクタ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のフォトリフレクタであって、
前記発光素子の上端及び前記受光素子の上端の一部が、前記遮光部の上端よりも上に位置した状態となっている、フォトリフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び受光素子を有し、反射光の検出により物体の位置等を検出するフォトリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリフレクタの従来例として、基板上に発光素子及び受光素子を搭載した表面実装型のフォトリフレクタの構成例を示す。図8は、従来のフォトリフレクタの構成例を示す図であり、図8(A)は素子の上方から見た平面図、図8(B)は側方から見た側断面図である。
【0003】
従来例のフォトリフレクタ100は、基板101上に発光素子103と受光素子104とが実装され、これらの発光素子103及び受光素子104が透光性樹脂層102によって封止された構造となっている。また、発光素子103と受光素子104との間には、素子間で直射光が授受されることによるノイズを低減するため、光透過率の低い樹脂からなる遮光壁107を設けている。発光素子と受光素子との間に遮光壁を設けた例として、例えば特許文献1に開示された近接センサがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開平11−354832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、フォトリフレクタは、スマートフォンに代表される携帯端末等のモバイル機器に搭載され、カメラモジュールのオートフォーカスレンズの位置検出などのアプリケーションに用いられるようになってきている。この種のモバイル機器においては、市場からの高機能化の要求があるため、搭載する部品の配置スペースが問題となってくる。搭載する部品のために製品サイズを大きくすることはデザイン上の制約等から難しく、個々のモジュール又はデバイスのダウンサイジングが必要になる。
【0006】
ここで、フォトリフレクタの適用例として、カメラモジュールのオートフォーカスレンズの位置検出を行う場合を例にとり説明する。カメラモジュール内で変位するオートフォーカスレンズの位置検出を行うには、レンズの光軸方向の移動に連動する反射物を設け、反射物に対向してフォトリフレクタを配置し、フォトリフレクタにより反射物からの反射光を検出する。この際、フォトリフレクタの受光素子の出力信号の変化が反射物までの距離と相関する特性を利用して、反射物までの距離を検出することにより、オートフォーカスレンズの位置検出を行う。
【0007】
カメラモジュールの高機能化、小型化を図るために、フォトリフレクタの配置スペースの縮小を検討しようとすると、フォトリフレクタ自体の薄型化、検出対象までの距離短縮などの手法が考えられる。従来の構成において、単純にフォトリフレクタを薄型化すると、基板の剛性が不足し、実装における位置精度が十分に得られない、発光素子と受光素子との配置間隔を大きくとる必要があり、フォトリフレクタのパッケージの実装面積が大きくなる、などの課題が生じる。また、上記従来例では、遮光壁によって直射光によるノイズを低減しているが、検出対象物までの距離をある程度確保する必要があり、位置検出可能な検出対象物までの距離が遠くなるため、更なる検出可能距離の短縮、配置スペースの縮小が困難であった。
【0008】
本発明は、検出対象物までの距離を短縮してより近くの検出対象物の位置検出を可能にし、配置スペースの縮小化に寄与できるフォトリフレクタを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、板状の基板と、前記基板に実装される発光素子及び受光素子と、前記発光素子及び前記受光素子を封止する透光性樹脂層と、前記発光素子と前記受光素子との間に設けた遮光部と、を備え、前記遮光部は、前記発光素子と前記受光素子との間で前記透光性樹脂層を介して光の一部が直接授受可能な高さに形成され、前記発光素子を封止する透光性樹脂層と、前記受光素子を封止する透光性樹脂層との間に、空気層を有し、前記発光素子と前記受光素子との間で前記透光性樹脂層及び前記空気層を介して光の一部が直接授受可能になっており、前記発光素子からの光は、一部が直接的に前記受光素子に入射し、前記透光性樹脂層と検出対象物との間に存在する空気への入射角が所定臨界角以上になると、全反射により他の一部が前記透光性樹脂層内で反射をして前記受光素子に入射することで、前記受光素子の出力値を増やしている、フォトリフレクタを提供する。
【0010】
また、上記のフォトリフレクタであって、前記発光素子を封止する透光性樹脂層と、前記受光素子を封止する透光性樹脂層との間に、空気層を有し、前記発光素子と前記受光素子との間で前記透光性樹脂層及び前記空気層を介して光の一部が直接授受可能になっているものでもよい。
【0011】
また、上記のフォトリフレクタであって、前記基板は、複数の凹部を有し、前記発光素子と前記受光素子とが、前記複数の凹部のうちの一つにそれぞれ収納されて配置されており、前記発光素子と前記受光素子との間の前記凹部の側壁部により前記遮光部が形成されているものでもよい。
【0012】
また、上記のフォトリフレクタであって、前記発光素子又は前記受光素子が配置されている前記凹部の少なくとも側壁部に、反射膜が設けられているものでもよい。
【0013】
また、上記のフォトリフレクタであって、前記発光素子の上端及び前記受光素子の上端の一部が、前記遮光部の上端よりも上に位置した状態となっているものでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出対象物までの距離を短縮してより近くの検出対象物の位置検出を可能にし、配置スペースの縮小化に寄与できるフォトリフレクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、(A)は素子の上方から見た平面図、(B)は側方から見た側断面図
図2】フォトリフレクタにおける光の経路を模式的に示した図であり、(A)は本実施形態の構成、(B)は従来例の構成をそれぞれ示す説明図
図3】本発明の第2の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、(A)は素子の上方から見た平面図、(B)は側方から見た側断面図
図4】第2の実施形態のフォトリフレクタにおける光の経路を模式的に示した説明図
図5】本実施形態のフォトリフレクタの出力と検出対象物までの距離との関係を示す特性図
図6】本発明の第3の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、(A)は素子の上方から見た平面図、(B)は側方から見た側断面図
図7】本発明の第4の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、素子の側方から見た側断面図
図8】従来のフォトリフレクタの構成例を示す図であり、(A)は素子の上方から見た平面図、(B)は側方から見た側断面図
図9】従来例におけるフォトリフレクタと検出対象物との距離を示す説明図
図10】従来例のフォトリフレクタの出力と検出対象物までの距離との関係を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るフォトリフレクタを具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本実施形態では、例えばモバイル機器に搭載されるカメラモジュールのオートフォーカスレンズの位置検出などに用いられるフォトリフレクタの構成例を示す。
【0018】
(本発明の各実施形態の内容に至る経緯)
本実施形態の構成を説明するにあたり、まず、フォトリフレクタの配置スペースの縮小を図る上での課題についてより具体的に説明する。
【0019】
図9は、従来例におけるフォトリフレクタと検出対象物との距離を示す説明図、図10は、従来例のフォトリフレクタの出力と検出対象物までの距離との関係を示す特性図である。
【0020】
以降の説明では、カメラモジュールのオートフォーカスレンズの位置検出を行う表面実装型のフォトリフレクタの例を述べる。この場合、カメラモジュールにおいて、オートフォーカスレンズの光軸方向の移動に連動して変位する反射物を設け、この反射物を検出対象物50とし、図9に示すように、検出対象物50に対向してフォトリフレクタ100を配置する。フォトリフレクタ100は、検出対象物50に向かって発光素子103より検出光を放射し、検出対象物50にて反射する反射光を受光素子104にて受光する。
【0021】
フォトリフレクタ100の出力(出力電流)は、フォトリフレクタ100の上端面から検出対象物50(反射物)までの距離Loに応じて、図10に示すような特性を有する。図10において、縦軸はフォトリフレクタ100のセンサ出力として、センサ相対出力Soの大きさを示しており、位置検出可能な検出対象物50の最近位置における出力値を1として正規化したものである。横軸は検出対象物50(反射物)までの距離Loを示す。センサ相対出力Soは、フォトリフレクタ100の出力電流を多項式にて近似した曲線によって表している。フォトリフレクタ100のセンサ出力は、所定の範囲において、反射物の位置に対してセンサ出力値が相関する特性を有する。
【0022】
検出対象物50となる反射物までの距離を高精度に検出するには、センサ出力の出力ピーク点Spより遠方の範囲に相当する、距離の増加に対してセンサ出力が単調に減少する領域を用いる。検出対象物50の位置検出範囲Lsとして、例えば0.9mmの範囲を検出しようとすると、図10の例では、位置検出可能な検出対象物50までの距離Loの範囲は、0.6〜1.5mmとなる。この場合、センサ出力の出力ピーク点Spにおける反射物の距離は0.3mmであり、位置検出範囲の最近位置における検出対象物50までの距離Lnが0.6mm、最遠位置までの距離Lfが1.5mmとなる。
【0023】
ここで、搭載機器であるカメラモジュールのダウンサイジングを目的として、フォトリフレクタの配置スペースの縮小を図るために、位置検出可能な検出対象物までの距離を短縮することを検討する。検出対象物までの距離を短縮するには、センサ出力の出力ピーク点Spの位置をゼロに近づけて、図10の特性図において左側に移動させる必要がある。
【0024】
そこで、上記事情を鑑み、本実施形態では、センサ出力の出力ピーク点Spをゼロに近づけ、検出対象物までの距離を短縮し、より近くの検出対象物の位置検出を可能にし、配置スペースの縮小化に寄与できるフォトリフレクタの構成例を以下に示す。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、図1(A)は素子の上方から見た平面図、図1(B)は側方から見た側断面図である。フォトリフレクタ10は、基板11上に発光素子13と受光素子14とが実装されて構成される。
【0026】
基板11は、ガラスエポキシ等の硬性の絶縁材料による板状の基体15に、導電材料の銅箔16を被着した銅張積層板により形成されるプリント配線基板である。基板11は、レーザー加工等により、一方の面(図中上面)に複数の凹部17が形成され、他方の面(図中底面)に貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔には導電材料の金属が埋められてバイアホール18が形成されている。また、バイアホール18の上部を塞ぐように、金属膜を構成する金属パターン19が凹部17の底部及び側壁部、更に基体15の上面部に至る範囲に形成されている。 銅箔16及び金属パターン19は、エッチングにより所定形状にパターニングされており、それぞれ基板11の外部及び内部の接続用電極となり、バイアホール18を介して接続されている。
【0027】
発光素子13は、発光ダイオード(LED)等の素子であり、検出対象物に光を放射可能なように実装されている。受光素子14は、フォトトランジスタ等の素子であり、検出対象物にて反射した光を受光可能なように実装されている。この場合、発光素子13及び受光素子14は、ダイボンド及びワイヤボンドによって必要な接続が形成されている。
【0028】
基板11における発光素子13及び受光素子14の実装面(図中上側の面)は、光透過率の高い透光性樹脂層12が設けられ、発光素子13及び受光素子14が透光性樹脂層12によって封止された構造となっている。
【0029】
発光素子13と受光素子14は、基板11の複数の凹部17のうちの一つにそれぞれ収納される状態で配置されている。ここで、発光素子13と受光素子14は、図1(B)に示す通り、発光素子13の上端13a又は受光素子14の上端14aの一部が凹部17に埋没せずに突出している。この突出した部分は、互いに直射光の授受を行うことになるが、殆どの光の授受は検出対象物における反射を介して行われる。また、基板11における2つの凹部17の間の側壁部によって、発光素子13と受光素子14との間で授受される光の一部を遮光する遮光部21が形成されている。ここで、発光素子13の上端13a及び受光素子14の上端14aの一部が、遮光部21の上端よりも上に露出した状態となっている。
【0030】
図2は、フォトリフレクタにおける光の経路を模式的に示した図であり、図2(A)は本実施形態の構成、図2(B)は従来例の構成をそれぞれ示す説明図である。図2において、矢印付きの破線は、理解のために光の経路を模式的に示したものである。
【0031】
図2(A)に示すように、本実施形態のフォトリフレクタ10では、発光素子13と受光素子14の一部が基板11の凹部17より露出した構造であり、発光素子13と受光素子14との間で直射光が少しだけ授受され、大部分は検出対象物50にて反射した反射光が授受される構成となっている。また図示しないが、透光性樹脂層12の上端にて反射した反射光が授受される構成となっている。このように、本実施形態では、発光素子13と受光素子14との間で、意図的にわずかな直射光の授受が行われるようにしている。これに対し、図2(B)に示す従来例では、発光素子103と受光素子104との間の直射光を遮光する遮光壁107を有する構造であり、検出対象物50が近接した状態では発光素子103から放射された光が遮光壁107により遮られて受光素子104に入射しない。
【0032】
本実施形態では、発光素子13と受光素子14との間で意図的にわずかな直射光の授受が行われるようにすることで、検出対象物50までの距離Loが短い場合でも発光素子13から放射された光が受光素子14にて受光され、検出対象物50がフォトリフレクタ10に非常に近接した状態であっても、位置検出を行うことができる。すなわち、センサ出力の出力ピーク点Spをゼロに近づけることが可能であり、近距離での検出対象物50の位置検出が可能となっている。透光性樹脂層12と検出対象物50との間には空気が存在するため、所定臨界角以上になると全反射により発光素子13からの光が検出対象物50に届かなくなり、その光の一部は直接的に又は透光性樹脂層12内で反射をして受光素子14に入射するが、この入射分は受光素子14の出力値を増やす役目を担っている。
【0033】
また、本実施形態では、基板11に凹部17を形成してその中に発光素子13及び受光素子14を実装する構成としたので、基板11の厚さを部分的に薄くするだけで遮光部21の形成と発光素子13及び受光素子14の配置を可能としている。このため、フォトリフレクタの薄型化を図るために単純に基板を薄くする場合と比べて、十分な強度を保つことができ、基板11の撓みを抑制して発光素子13及び受光素子14の実装に必要な平面度を得ることができる。また、本実施形態は樹脂等による遮光壁を設けない構成のため、遮光壁の形成のための機械加工等の追加工程を削減できる。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、基板11全体の剛性を高めるとともに、凹部17の底面から基板裏面までの厚さをかなり薄くしても実装及び封止に困難を伴う程の撓みの問題が生ずることを抑止でき、フォトリフレクタのパッケージの低背化(薄型化)を図ることができる。図2に示した例では、図2(B)の従来例と比較して、図2(A)の本実施形態は寸法Xの分だけ低背化を実現できている。
【0035】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、図3(A)は素子の上方から見た平面図、図3(B)は側方から見た側断面図である。第2の実施形態のフォトリフレクタ10Aは、図1に示した第1の実施形態と比較して、透光性樹脂層12の構成を変更した構成例である。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一または同等の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
第2の実施形態において、発光素子13及び受光素子14を封止する透光性樹脂層12は、発光素子13と受光素子14との間を分割するスリット22を有し、スリット22によって発光素子13と受光素子14との間に空気層を形成する構成となっている。スリット22は、ブレード等を用いた切削加工等によって形成でき、スリット22の幅は例えばブレードの厚さの選択によって適宜の大きさに設定できる。ただし、スリット22の細かい寸法設定が不要な場合は、透光性樹脂層12の成形時に金型によってスリット22を設けることもできる。なお、スリット22は、図3の例では透光性樹脂層12の厚さ全体に設けられ、基板11の上端面まで達しているが、透光性樹脂層12の厚さの一部にスリット22を形成したものでもよい。また、透光性樹脂層12において、凹部などのスリット以外の構成によって空気層を形成するものであってもよい。
【0037】
図4は、第2の実施形態のフォトリフレクタにおける光の経路を模式的に示した説明図である。図4において、矢印付きの破線は、理解のために光の経路を模式的に示したものである。
【0038】
第2の実施形態では、透光性樹脂層12の発光素子13と受光素子14との間にスリット22を設けることにより、通常は発光素子13から受光素子14に直接入射する光の一部を、透光性樹脂層12と空気層との屈折率の違いによって、スリット22の側壁(透光性樹脂層12と空気層の界面)で反射させることができる。これにより、受光素子14が受ける光量を低減させる構成となっている。スリット22の幅を調整することにより、直射光の授受の量を調整可能である。したがって、センサとしての用途や必要分解能に応じてスリット22の幅を調整し、検出対象物50とフォトリフレクタとの相対距離の変化に対するセンサ出力の変化について、十分な大きさを確保できるようにすることが可能となる。
【0039】
図5は、本実施形態のフォトリフレクタの出力と検出対象物までの距離との関係を示す特性図である。図5において、縦軸はフォトリフレクタのセンサ出力として、センサ相対出力Soの大きさを示しており、センサ出力の出力ピーク点Spの出力値(電流値)を1として正規化したものである。横軸は検出対象物(反射物)までの距離Loを示す。センサ相対出力Soは、フォトリフレクタの出力電流を表している。フォトリフレクタは、この曲線を多項式にて近似して直線に変換し、検出対象物までの距離を算出する。
【0040】
図5に示したそれぞれのセンサ出力の特性曲線は以下の構成例に対応するものである。
A:第1の実施形態の構成例(図1(A)、図1(B)、図2(A)の構成) スリット無し
B:第2の実施形態の構成例(図3(A)、図3(B)、図4の構成) スリット幅小(75μm)
C:第2の実施形態の構成例(図3(A)、図3(B)、図4の構成) スリット幅中(220μm)
D:第2の実施形態の構成例(図3(A)、図3(B)、図4の構成) スリット幅大(300μm)
E:比較例(従来例)(図8(A)、図8(B)、図2(B)の構成)
【0041】
図5の特性に示されるように、本実施形態の構成により、比較例(従来例)と比べて、センサ出力の出力ピーク点をゼロに近づけることが可能になる。具体例としては、センサ出力の出力ピーク点は0.15mm以下であり、検出対象物の位置検出範囲を近接した位置に移動させることができる。図示例では、センサ出力の出力ピーク点は、Aが0.03mm、Bが0.07mm、Cが0.08mm、Dが0.11mmとなっている(比較例Eは0.30mm)。
【0042】
また、第2の実施形態のようにスリットを設けた構成の場合、スリットの幅を調整することにより、センサ出力特性の傾き、すなわち検出対象物までの距離の変化に対する出力変化量を調整できる。図示例では、スリット幅が小さいBに比べて、スリット幅が大きいDの方がセンサ出力特性の傾きが急になっている。なお、センサ出力の出力ピーク点の絶対値はスリット幅が大きい方が小さくなる。この場合、スリット幅を大きく設定することにより、検出対象物の位置変化に対する出力変化量が大きくなり、位置検出の分解能をより精密にできる。
【0043】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、図6(A)は素子の上方から見た平面図、図6(B)は側方から見た側断面図である。第3の実施形態のフォトリフレクタ10Bは、図3に示した第2の実施形態と比較して、発光素子13及び受光素子14の実装構成を変更した構成例である。第3の実施形態において、第1及び第2の実施形態と同一または同等の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
第3の実施形態において、発光素子13及び受光素子14は、表面実装型チップにより形成され、ワイヤレスボンディングによって凹部17の底面に実装される構成となっている。なお、表面実装型チップによる発光素子13及び受光素子14を設ける構成は、図1の第1の実施形態、図3の第2の実施形態のいずれにも適用可能である。第3の実施形態の構成においても、第1及び第2の実施形態と同様に、フォトリフレクタを薄型化しつつ、検出距離の限界を更に短縮することが可能である。
【0045】
なお、第1〜第3の実施形態の構成において、基板11の凹部17の側壁部に被着した金属膜を構成する金属パターン19の材質を光の反射率が高い光沢のあるものとし、凹部17に反射膜を有する構成としてもよい。これによって、凹部17を反射鏡として機能させ、受光素子14における受光量を増加させることが可能である。
【0046】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態に係るフォトリフレクタの構成を示す図であり、素子の側方から見た側断面図である。第4の実施形態のフォトリフレクタ10Cは、発光素子13と受光素子14との間の遮光壁を低く形成した構成例である。
【0047】
第4の実施形態では、基板11は、硬性の絶縁材料による板状の基体15に導電材料の銅箔16を被着した銅張積層板により形成されるプリント配線基板であり、凹部を有しない構成である。基板11上には、発光素子13と受光素子14とがそれぞれフェースダウンボンディングにより実装され、これらの発光素子13及び受光素子14が透光性樹脂層12によって封止された構造となっている。
【0048】
基板11上の発光素子13と受光素子14との間には、光透過率の低い樹脂からなる遮光壁23が設けられている。遮光壁23によって、素子間で授受される直射光の一部を遮光する遮光部が形成されている。ここで、発光素子13と受光素子14は、図1に示した第1の実施形態と同様、発光素子13の上端13aと受光素子14の上端14aの一部が、遮光壁23の上端23aよりも上に露出した状態に配置された構造となっている。この構造は、透光性樹脂層12及び遮光壁23の一部を切り欠いた構成によって実現でき、第2の実施形態のスリット22と同様、ブレード等を用いた切削加工等によって形成することが可能である。遮光壁23の高さを調整することによって、発光素子13と受光素子14の素子間で授受される直射光の光量を調整し、フォトリフレクタの受光素子の出力レベル、センサ出力の出力ピーク点の距離等を適宜設定できる。
【0049】
第4の実施形態のように、遮光壁23によって直射光の一部を遮光する遮光部が形成されている構成においても、第1及び第2の実施形態と同様に、検出距離の限界を更に短縮することが可能である。
【0050】
上述したように、第1〜第3の実施形態のフォトリフレクタでは、遮光壁を設けず、基板の凹部の側壁部を遮光部として用いる構成となっている。このため、凹部以外の部分の肉厚により基板の剛性を高めることができ、且つフォトリフレクタの小型化が可能になる。
【0051】
また、本実施形態のフォトリフレクタでは、検出対象物が近接した場合であっても、発光素子の光が遮光壁に遮られずに検出対象物に照射され、検出対象物にて反射した光が遮光壁に遮られずに受光素子に入射するようになっている。このため、位置検出可能な距離を従来よりも大幅に短くすることができ、フォトリフレクタを用いたアプリケーションの小型化、薄型化に寄与できる。
【0052】
また、第1〜第3の実施形態のように、基板の凹部の側壁部が遮光部として機能する構成では、発光素子と受光素子の間に遮光壁を設ける必要が無いため、遮光壁の形成のための追加工程を削減でき、また、フォトリフレクタのサイズの小型化が可能である。
【0053】
更に、第2の実施形態のように、用途に応じた検出対象物との距離の変化に対し、発光素子と受光素子の間に所定の幅のスリット等を設けて空気層を有する構成にすることにより、センサ出力の変化量を調整できる。例えば、センサ出力の変化量を大きく取りたい場合には、スリット(空気層)の幅を大きくすることで、距離変化に対するセンサ出力の変化量を大きくできる。このように、フォトリフレクタの用途毎の距離検出の必要分解能に応じて、発光素子と受光素子の間に設ける空気層の幅によって適宜調整可能である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、遮光部の高さ、透光性樹脂層の厚さ、発光素子と受光素子の素子間距離、更には発光素子と受光素子の間に設ける空気層の幅を適宜に選択することにより、剛性を保ちながら低背化が可能であり、従来よりも近接した位置の検出対象物を検出することができる。本実施形態の構成によって、検出距離の限界を更に短縮することを可能にし、配置スペースの縮小化に寄与できるフォトリフレクタを実現できる。
【0055】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、検出距離の限界を更に短縮することを可能にし、配置スペースの縮小化に寄与できる効果を有し、例えばモバイル機器等の電子機器に搭載されるフォトリフレクタ等に有用である。
【符号の説明】
【0057】
10、10A、10B、10C:フォトリフレクタ
11:基板
12:透光性樹脂層
13:発光素子
13a:上端
14:受光素子
14a:上端
15:基体
16:銅箔
17:凹部
18:バイアホール
19:金属パターン
21:遮光部
22:スリット
23:遮光壁
23a:上端
50:検出対象物
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10