特許第6683896号(P6683896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683896難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
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  • 特許6683896-難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683896
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20200413BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20200413BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20200413BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20200413BHJP
   C08F 20/22 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C08L67/03
   C08L33/16
   C08K5/05
   C08K5/09
   C08F20/22
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-559377(P2019-559377)
(86)(22)【出願日】2019年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2019011671
(87)【国際公開番号】WO2019182006
(87)【国際公開日】20190926
【審査請求日】2019年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2018-54166(P2018-54166)
(32)【優先日】2018年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 樹
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−277718(JP,A)
【文献】 特開2012−201857(JP,A)
【文献】 特開2001−261948(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105669885(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 − 13/08
C08F 6/00 −246/00;301/00
C08L 1/00 −101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂と、
ヘッドスペースガスクロマトグラフ法(180℃、1時間加熱)により測定される、アルコキシアルコールまたは芳香族カルボン酸の含有量が10〜1000ppmであるハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を含有することを特徴とする、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリブチレンテレフタレート樹脂が、線状低分子量体を50〜1000ppm含有する、請求項1に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
アルコキシアルコールまたは芳香族カルボン酸が、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の重合溶媒に由来する、請求項1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
アルコキシアルコールが、C1〜C20アルコキシC1〜C20アルコールである、請求項1からのいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
アルコキシアルコールが、メトキシエタノールである、請求項1からのいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
アルコキシアルコールが、C1〜C20ジアルコキシC1〜C20アルコールである、請求項1からのいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項7】
アルコキシアルコールが、3,3−ジエトキシプロパノールである、請求項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項8】
アルコキシアルコールまたは芳香族カルボン酸が、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の原料に由来する、請求項1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項9】
芳香族カルボン酸が、安息香酸である、請求項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項10】
ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、一般式(I)で表されるブロム化アクリル重合体である、請求項1からのいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化1】
(式中、少なくとも1つ以上のXは臭素であり、mは10〜2000の数である。)
【請求項11】
ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、ポリペンタブロモベンジルアクリレートである、請求項10に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、各種の電気的特性に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子部品等の種々の用途に広く利用されている。これらの用途では、トラッキング等による発火を防ぐため、使用される材料には難燃性が要求されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、それ自体では難燃性が不足するため、難燃剤を添加した難燃性樹脂組成物として使用されている。
【0003】
ポリブチレンテレフタレート樹脂に添加される難燃剤の一種であるハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤として、特許文献1には、ポリペンタブロモベンジルアクリレート(PBBPA)が紹介されている。
【0004】
一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂の流動性を高めるため、特許文献2には鎖状ポリエステルオリゴマーを添加することが紹介されている。しかしながらその目的は、鎖状ポリエステルオリゴマーをグリシジル基含有エラストマーと反応させることである。
【0005】
また、特許文献3には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂が有する優れた機械的強度などの特性を保持しつつ、溶融流動性を向上させるため、環状ポリエステルオリゴマーを添加することが紹介されている。
さらに特許文献4には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂にオリゴマーを添加する旨の記載がある。しかしながら、添加するオリゴマーについては鎖状か環状かの言及はなく、実施例ではポリマーしか用いられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015−532350号公報
【特許文献2】特開2012−201857号公報
【特許文献3】特開2008−156381号公報
【特許文献4】特開2001−261948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂が有する優れた機械的強度などの特性を保持しつつ、難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性を高めることを課題とする研究の過程において、プロトン性化合物を添加することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(13)に関する。
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法(180℃、1時間加熱)により測定される、プロトン性化合物の含有量が10〜1000ppmであるハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を含有することを特徴とする、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(2)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、線状低分子量体を50〜1000ppm含有する、(1)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(3)プロトン性化合物が、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の重合溶媒に由来する、(1)または(2)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(4)プロトン性化合物が、アルコキシアルコールである、(1)から(3)のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(5)プロトン性化合物が、C1〜C20アルコキシC1〜C20アルコールである、(1)から(4)のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(6)プロトン性化合物が、メトキシエタノールである、(1)から(5)のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(7)プロトン性化合物が、C1〜C20ジアルコキシC1〜C20アルコールである、(1)から(4)のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(8)プロトン性化合物が、3,3−ジエトキシプロパノールである、(7)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(9)プロトン性化合物が、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の原料に由来する、(1)または(2)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(10)プロトン性化合物が、芳香族カルボン酸である、(9)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(11)プロトン性化合物が、安息香酸である、(10)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(12)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、一般式(I)で表されるブロム化アクリル重合体である、(1)から(11)のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化1】
(式中、少なくとも1つ以上のXは臭素であり、mは10〜2000の数である。)
(13)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、ポリペンタブロモベンジルアクリレートである、(12)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、プロトン性化合物を添加することにより、流動性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明において溶融流動性を測定する際に用いた成形品の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
以下、本実施形態の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の各成分の詳細を例を挙げて説明する。
【0014】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂)
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、0.60dL/g以上1.20dL/g以下であるのが好ましく、0.65dL/g以上0.90dL/g以下であるのがより好ましい。このような範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.00dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.70dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.90dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0019】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分として1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を用いることができる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0021】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0022】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物の全質量の30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
(ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤)
本発明に用いられるハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤としては、下記一般式(I)で示されるブロム化アクリル重合体が挙げられる。
【化2】
式中のXは少なくとも1つ以上が臭素である。Xの数は、一構成単位中1〜5であるが、難燃化の効果から3〜5であることが好ましい。平均重合度mは10〜2000であり、好ましくは15〜1000の範囲である。平均重合度が低いものは、熱安定性が悪化し、2000を超えると添加したポリブチレンテレフタレート樹脂の成形加工性を悪化させる。また、上記ブロム化アクリル重合体は1種又は2種以上混合使用してもよい。
【0024】
本発明に用いられるハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤は、当該難燃剤自体である上記のブロム化アクリル重合体以外に、不純物として、重合時の溶媒やブロム化アクリル重合体の分解物に由来するハロゲン化芳香族化合物を含有しうるが、そのような不純物である、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、例えば、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を粉砕した試料を、ヘッドスペース中で加熱処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフにより測定し、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量から求めることができる。
【0025】
一般式(I)で表されるブロム化アクリル重合体は臭素を含有するベンジルアクリレートを単独で重合することによって得られるが、類似構造のベンジルメタクリレート等を共重合させてもよい。臭素含有ベンジルアクリレートとしては、ペンタブロモベンジルアクリレート、テトラブロモベンジルアクリレート、トリブロモベンジルアクリレート、又はその混合物が挙げられる。中でも、ペンタブロモベンジルアクリレートが好ましい。また、共重合可能な成分であるベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。さらにはビニル系モノマーとの共重合も可能であり、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類、スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。また、架橋性のビニル系モノマー、キシリレンジアクリレート、キシリレンジメタクリレート、テトラブロムキシリレンジアクリレート、テトラブロムキシリレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼンなども使用できる。これらはベンジルアクリレートやベンジルメタクリレートに対し等モル量以下、好ましくは0.5倍モル量以下が使用される。
【0026】
上記のブロム化アクリル重合体の製造法の一例を示すと、ブロム化アクリルのモノマーを溶液重合あるいは、塊状重合にて所定の重合度に反応させる方法が挙げられる。溶液重合の場合、溶媒としてハロゲン化ベンゼンや、クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物を用いないことが好ましい。また、溶液重合の際の溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテルや、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテルおよびジオキサンなどの非プロトン性溶媒が好ましい。ただし、本発明においては後述の通り、樹脂組成物としてプロトン性化合物を含むものとするため、重合溶媒としてプロトン性化合物を含むものを用いることができる。
【0027】
上記のブロム化アクリル重合体は、残留ポリアクリル酸ナトリウム等の反応副生成物を除去するために、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液にて洗浄されることが好ましい。アルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液はアルカリ(土類)金属塩を水に投入することで容易に得られるが、塩化物イオン、リン酸イオン等を含まないアルカリ(土類)金属である水酸化物(例えば水酸化カルシウム)が最適である。アルカリ(土類)金属塩として、例えば水酸化カルシウムを用いる場合、水酸化カルシウムは一般に20℃において100gの水中に0.126g程度可溶であり、水溶液濃度は溶解度までであれば特に規定はない。また、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液による洗浄の手法も特に限定されず、ブロム化アクリル重合体を適当な時間、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液に浸漬させる等の手法で良い。上記、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液による洗浄処理を終えたブロム化アクリル重合体は、一般的に温水抽出分中の乾固分が100ppm以下のものとなり、このようなブロム化アクリル重合体を用いる場合、その成形品表面に異物を発生させることが殆どなくなる。
【0028】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物においては、前述の不純物である、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が、0.5ppm未満であることが好ましく、より好ましくは0.3ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下である。難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が上記範囲であることにより、当該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いたインサート成形品において、金属端子の腐蝕を抑制することができる。このような難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を粉砕した試料を、ヘッドスペース中で加熱処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフにより測定し、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量から求めることができる。
【0029】
上記樹脂の難燃化において、アンチモン系の難燃助剤をあわせて使用することが好ましい。難燃助剤の代表的なものとしては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。さらに、燃焼した樹脂が滴下することによる延焼を防ぐ目的で、ポリテトラフルオロエチレン等の滴下防止剤をあわせて使用することも好ましい。
【0030】
上記のブロム化アクリル重合体及びアンチモン系難燃助剤の樹脂に対する添加の範囲は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して前記重合体3〜30質量部、アンチモン系難燃助剤1〜20質量部の範囲が好ましい。ブロム化アクリル重合体及びアンチモン系難燃助剤の添加量が過少であると十分な難燃性を付与することができず、過大であると成形品としての物性を悪化させることがある。
【0031】
(プロトン性化合物)

本発明においてプロトン性化合物とは、プロトン(水素イオン)供与性を有する化合物のことをいう。 本発明においてプロトン性化合物としては、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の重合溶媒に由来するものが一例として挙げられ、アルコキシアルコールが好ましく、C1〜C20アルコキシC1〜C20アルコールがより好ましい。C1〜C20アルコキシC1〜C20アルコールとしては、メトキシC1〜C20アルコールや、C1〜C20アルコキシエタノールがより好ましく、メトキシエタノールがさらに好ましい。
【0032】
またプロトン性化合物としては、C1〜C20ジアルコキシC1〜C20アルコールも好ましく、C1〜C20ジアルコキシC1〜C20アルコールとしては、3,3−ジエトキシプロパノールが好ましい。
【0033】
また本発明においてプロトン性化合物としては、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の原料に由来するものが一例として挙げられ、芳香族カルボン酸が好ましく、安息香酸がより好ましい。なお、本発明においてプロトン性化合物としては、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の原料に由来するものよりも、重合溶媒に由来するものの方が好ましい。
【0034】
本発明においてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤に含有されるプロトン性化合物の量は、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤中、10〜1000ppmであるが、100〜800ppmであることが好ましく、300〜500ppmであることがより好ましい。ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤に含有されるプロトン性化合物の量が10ppm未満であると、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性の改善効果が得にくくなる。また、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤に含有されるプロトン性化合物の量が1000ppmを超えると、コンパウンド時にガスの発生量が増加し、ペレット化の際にストランド切れが発生しやすくなる。
【0035】
(線状低分子量体)
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤に含まれるプロトン性化合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の線状低分子量体(オリゴマー)との反応物である線状化合物を生成し、これが可塑剤と同様の効果をもたらし、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性を改善させるものと推測される。このため、ポリブチレンテレフタレート樹脂は線状低分子量体を含有することが好ましい。含有される線状低分子量体の量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂中、50〜1000ppmであることが好ましく、70〜700ppmであることがより好ましく、100〜200ppmであることがさらに好ましい。線状低分子量体の量が50ppm未満であると、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性の改善効果が得にくく、1000ppmを超えると、Mold Deposit(金型付着物)が発生しやすくなるため、好ましくない。
【0036】
(充填剤)

本発明の組成物には必要に応じて充填剤が使用される。このような充填剤は、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質等の性能に優れた性質を得るためには配合することが好ましく、特に剛性を高める目的で有効である。これは目的に応じて繊維状、粉粒状又は板状の充填剤が用いられる。
【0037】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などが挙げられる。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物質も使用することができる。
【0038】
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトなどの珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナなどの金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、その他、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0039】
また、板状無機充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。
【0040】
充填剤の種類は特に限定されず、1種又は複数種以上の充填剤を添加することができる。特に、チタン酸カリ繊維、マイカ、タルク、ウォラストナイトを使用することが好ましい。
【0041】
充填剤の添加量は特に規定されるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して200質量部以下が好ましい。充填剤を過剰に添加した場合は成形性に劣り靭性の低下が見られる。
【0042】
(添加剤)
さらに本発明の組成物には、その目的に応じ、難燃性以外の所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を添加併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤等いずれも配合することが可能である。特に耐熱性を向上させるための酸化防止剤の添加は効果的である。
【0043】
[難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の形態は、粉粒体混合物であってもよいし、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)であってもよい。本発明の一実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で知られている設備及び方法を用いて製造することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0044】
また、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、真空乾燥(真空引き)により製造することが好ましい。真空乾燥には、一般的に用いられているエバポレーターや、オーブンなどを用いることができる。
【0045】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
プロトン性化合物を表1に示す種類・量で含有するハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤と、線状低分子量体を表1に示す量で含有するポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて、表2に示す配合量にて、各成分を秤量・混合し、日本製鋼所製二軸押出機TEX−30にて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数120rpm、押出量15kg/hrの条件で溶融混練し、ダイからストランド状に押し出した後、冷却・裁断してペレット状の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。なお、その際に、ストランド切れの発生状況を確認し、ストランド切れがほとんど発生しなかったものを○、度々発生したものを×として評価した。結果を表1に示す。
【0047】
得られた各実施例・比較例のペレットを用いて、溶融流動性、燃焼性、金型付着物を評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
1) 溶融流動性
図1に示す箱状成形品(四辺の壁および底の厚さはいずれも0.7mm)を樹脂温度260℃金型温度60℃射出速度100mm/s保圧力50MPaで射出成形し、完全に充填できたものを〇、流動性不足で末端まで充填できなかったものを×として評価した。
【0050】
2) 燃焼性
UL94に準拠し、125mm×13mm×0.4mmの短冊状試験片を用いて燃焼性を評価した。
【0051】
3) 金型付着物
上記燃焼性評価に用いた短冊状試験片を連続で6000ショット成形した後、金型キャビティ表面を目視観察により評価した。金型付着物が見られなかったものを○、付着が見られたものを×として評価した。
【0052】
【表2】
図1