特許第6684025号(P6684025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684025
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   G01N35/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-139033(P2016-139033)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-9884(P2018-9884A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 道治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 重幸
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】磯島 宣之
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−150776(JP,A)
【文献】 特開2001−027643(JP,A)
【文献】 特開2014−235035(JP,A)
【文献】 実開平04−116766(JP,U)
【文献】 特開2012−132723(JP,A)
【文献】 特開平08−043402(JP,A)
【文献】 特開2001−083160(JP,A)
【文献】 特開2009−139269(JP,A)
【文献】 実開平04−078555(JP,U)
【文献】 特開平08−313534(JP,A)
【文献】 特開2003−083979(JP,A)
【文献】 特開2011−191114(JP,A)
【文献】 特開2002−296283(JP,A)
【文献】 国際公開第88/002120(WO,A1)
【文献】 特開2010−002236(JP,A)
【文献】 特開2010−274230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を保持する反応容器保持部を温調する第一の温調装置と、
試薬を保冷する試薬保冷庫を温調するための温調装置であって、その一部に放熱装置を含む第二の温調装置と、
一部が外部に開放されると共に、内部に前記放熱装置が配置される風路として構成された第一の空間と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を装置の外部へ排出する排熱風路と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を、第一の熱媒体を介して前記反応容器保持部が収容される伝熱空間として構成された第二の空間へ伝熱する輸送流路と、
前記第一の熱媒体の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記第一の熱媒体の流量を制御することで、前記第一の空間内から前記輸送流路に伝熱される熱量を制御する制御装置と、
前記試薬保冷庫を温調する第二の熱媒体を、当該試薬保冷庫と前記第二の温調装置の間で循環させる冷却水ループと、
前記試薬保冷庫を通過した前記第二の熱媒体を流通させる前記冷却水ループから分岐して形成され、前記反応容器保持部に通じる第2輸送流路と、
前記第2輸送流路内を流通する前記第二の熱媒体の流量を制御する第二流量制御手段と、
前記第2輸送流路内における前記第二の熱媒体の温度を検知する第二温度検知手段と、を備えた自動分析装置。
【請求項2】
請求項に記載の自動分析装置において、
前記第二温度検知手段の温度制御を前記第一の温度検知手段の温度制御に優先して行うことを特徴とする、自動分析装置。
【請求項3】
請求項に記載の自動分析装置において、
前記第一の熱媒体と前記第二の熱媒体の温度を平均化する温度混合部を設け、
前記輸送流路の前記温度混合部の下流側に前記第一の温度検知手段を設けたことを特徴とする、自動分析装置。
【請求項4】
検体を保持する反応容器保持部を温調する第一の温調装置と、
試薬を保冷する試薬保冷庫を温調するための温調装置であって、その一部に放熱装置を含む第二の温調装置と、
一部が外部に開放されると共に、内部に前記放熱装置が配置される風路として構成された第一の空間と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を装置の外部へ排出する排熱風路と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を、第一の熱媒体を介して前記反応容器保持部が収容される伝熱空間として構成された第二の空間へ伝熱する輸送流路と、
前記第一の熱媒体の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記第一の熱媒体の流量を制御することで、前記第一の空間内から前記輸送流路に伝熱される熱量を制御する制御装置と、を備え、
前記第一の熱媒体を空気とし、
置の外部空間と前記輸送流路の途中を接続するバイパス風路と、
前記バイパス風路の風量を調整するバイパス風路用ファンを設け、
前記第一の温度検知手段を前記輸送流路と前記バイパス風路の合流部の下流側に設け、
前記制御装置は、前記第一の温度検知手段の温度が目標値になるように、前記バイパス風路用ファンを制御することを特徴とする、自動分析装置。
【請求項5】
検体を保持する反応容器保持部を温調する第一の温調装置と、
試薬を保冷する試薬保冷庫を温調するための温調装置であって、その一部に放熱装置を含む第二の温調装置と、
一部が外部に開放されると共に、内部に前記放熱装置が配置される風路として構成された第一の空間と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を装置の外部へ排出する排熱風路と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を、第一の熱媒体を介して前記反応容器保持部が収容される伝熱空間として構成された第二の空間へ伝熱する輸送流路と、
前記第一の熱媒体の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記第一の熱媒体の流量を制御することで、前記第一の空間内から前記輸送流路に伝熱される熱量を制御する制御装置と、を備え、
前記第二の空間、前記輸送流路および前記第一の空間を環状に接続した第1のループと、
前記第1のループ内に封入した熱媒体としての液体を送液する送液装置と、
前記第一の空間の出入口と並行して前記輸送流路の途中をバイパスする分岐流路と、
前記第一の空間と前記分岐流路の流量比を制御する分岐流量制御手段を設け、
前記第一の空間の出口と前記分岐流路の出口の合流部の下流側に前記第一の温度検知手段を設け、
前記第一の温度検知手段の温度が目標値になるように、前記分岐流量制御手段を制御することを特徴とする、自動分析装置。
【請求項6】
検体を保持する反応容器保持部を温調する第一の温調装置と、
試薬を保冷する試薬保冷庫を温調するための温調装置であって、その一部に放熱装置を含む第二の温調装置と、
一部が外部に開放されると共に、内部に前記放熱装置が配置される風路として構成された第一の空間と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を装置の外部へ排出する排熱風路と、
前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を、第一の熱媒体を介して前記反応容器保持部が収容される伝熱空間として構成された第二の空間へ伝熱する輸送流路と、
前記第一の熱媒体の温度を検知する第一の温度検知手段と、
前記第一の熱媒体の流量を制御することで、前記第一の空間内から前記輸送流路に伝熱される熱量を制御する制御装置と、を備え、
前記第一の温調装置の側面部または下部で前記反応容器保持部の垂直方向または水平方向長さと重なる位置に伝熱体を配置し、
前記輸送流路は前記第一の熱媒体を介して前記伝熱体を加温することで、間接的に前記反応容器保持部内に保持されている前記検体を加温する、自動分析装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の自動分析装置において、
前記第二の温調装置はヒートポンプ式の冷却装置である、自動分析装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の自動分析装置において、
前記第二の温調装置はペルチェ素子を用いた冷却装置である、自動分析装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の自動分析装置において、
前記制御装置は、前記第一の温度検知手段で検出された温度が予め設定された目標温度よりも低い場合には、前記輸送流路を流れる前記第一の熱媒体の流量を増加させるように制御する、自動分析装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の自動分析装置において、
前記制御装置は、前記第一の温度検知手段で検出された温度が予め設定された目標温度よりも高い場合には、前記輸送流路を流れる前記第一の熱媒体の流量を減少させるように制御する、自動分析装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の自動分析装置において、
前記第一の熱媒体を空気とし、
前記排熱風路と前記輸送流路の風量比を制御する風量比調整ダンパーを設け、
前記第一の温度検知手段の温度が目標よりも高い場合に、前記風量比調整ダンパーを制御することを特徴とする、自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用の分析作業に使用される自動分析装置に関する
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、反応容器の中に検体と試薬を混合した反応液を生成し、反応液を所定の温度で保持することによって反応を促進させた後、反応液の光度などを測定することで、検体に含まれる成分を検出するものである。医療分野の血液検査において、酵素などを測定する生化学検査や、特定の疾患に特異的な抗原などを測定する免疫検査に使用される。
【0003】
上記目的のため、自動分析装置は、反応液を所定の温度で保持することができるヒートブロックを備えている。ヒートブロックでは反応液の温度を安定して管理するために、温水やヒータなどを用いた加熱をおこなう。特許文献1には、ヒートブロックの過剰な温度上昇を防ぐために、温度調整した流体をヒートブロックへ供給する自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−132723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒートブロックを加熱する際の要求事項は2つある。1つめは反応液の温度を±0.3℃以下の範囲で精密に制御することによって、反応を安定的に促進することである。2つめはヒートブロックを停止状態から温度安定状態まで速く昇温することである。例えば、外気温度が15℃、反応温度を37℃とした場合、22℃の昇温を行う必要がある。
【0006】
上述した特許文献1の場合、ヒートブロックの温度制御を高精度で行うために、必然的に分解能が小さく、応答性が高い熱源が選定される。一方で、この種の熱源は最大出力が小さく、ヒートブロックの立ち上がりが遅いという課題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、反応液の温度制御を精密に行いつつ、ヒートブロックの立ち上がりの速さを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。具体的一例としては、検体保持する反応容器保持部を温調する第一の温調装置と、試薬を保冷する試薬保冷庫を温調するための温調装置であって、その一部に放熱装置を含む第二の温調装置と、一部が外部に開放されると共に、内部に前記放熱装置が配置される風路として構成された第一の空間と、前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を装置の外部へ排出する排熱風路と、前記第一の空間内で前記放熱装置から発生した熱を、第一の熱媒体を介して前記反応容器保持部が収容される伝熱空間として構成された第二の空間へ伝熱する輸送流路と、前記第一の熱媒体の温度を検知する第一の温度検知手段と、前記第一の熱媒体の流量を制御することで、前記第一の空間内から前記輸送流路に伝熱される熱量を制御する制御装置と、前記試薬保冷庫を温調する第二の熱媒体を、当該試薬保冷庫と前記第二の温調装置の間で循環させる冷却水ループと、前記試薬保冷庫を通過した前記第二の熱媒体を流通させる前記冷却水ループから分岐して形成され、前記反応容器保持部に通じる第2輸送流路と、前記第2輸送流路内を流通する前記第二の熱媒体の流量を制御する第二流量制御手段と、前記第2輸送流路内における前記第二の熱媒体の温度を検知する第二温度検知手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、必要最小限の構成で、起動の立ち上がりの速さと、精密な温度制御を両立した自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態 システム構成
図2】第1の実施形態 制御フロー
図3】第2の実施形態 システム構成
図4】第2の実施形態 制御フロー
図5】第3の実施形態 システム構成
図6】第3の実施形態 制御フロー
図7】第4の実施形態 システム構成
図8】第4の実施形態 制御フロー
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における実施例を、図面を用いて説明する。
【0012】
自動分析装置は、血液に含まれる酵素、脂質、電解質、タンパク質を測定する生化学検査や、ウイルス感染症、自己免疫疾患、ホルモン、腫瘍マーカ、炎症マーカなどの疾患に特異的な抗原あるいは抗体を測定する免疫検査に使用する。一般的な自動分析装置は、検体である血液と試薬を反応容器内で混合し、この混合液を含んだ反応容器を恒温槽やインキュベータ内に保持することで、所望の成分とマーカを反応させる。その後、反応過程における混合液の透過光量の変化量や変化率、反応物からの発光量などの情報によって、検体中に含まれる分析対象物の量や濃度を検出する。これらの分析作業には精度の高さと迅速さの両方が求められるため、所定のシーケンスに沿った自動処理が実行される。
【0013】
分析に使用される試薬を収容する試薬ボトル63は、劣化を防ぐため、10度以下の低温で保持されることが望ましい。そのため、一般的に自動分析装置には、試薬ボトル63を外気温よりも低温に保管するための試薬保冷庫102を備えている。試薬保冷庫102は冷却システム101との間で循環する熱媒体(空気、水等)により常に一定の温度範囲となるように温調される。
【0014】
一方、混合液を含む反応容器は安定した分析を生じさせるため、外気温よりも高い所定の温度範囲(例えば37度)に加温されていることが望ましい。そのため、恒温槽やインキュベータ内にはヒートブロック100が設けられている。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明に係る自動分析装置のシステム構成を示したものである。自動分析装置は、少なくとも、第一の温調装置としてのヒートブロック100、試薬保冷庫102、第二の温調装置としての冷却システム101、各機器を制御する制御装置103から構成されている。
【0016】
試薬保冷庫102は、底面を閉じた円筒状の容器であり、内部に試薬ボトル63が収納されている。試薬ボトル63の側面と底面を囲う支持材は試薬保冷庫102を冷却するための熱媒体として冷却水が流通する流路を備えている。
【0017】
ヒートブロック100は円盤状の構造である。ヒートブロック100は、検体と試薬を反応させるための反応容器60を保持する複数の反応容器保持部61を円周上に備えている。ヒートブロック100の内部には、電圧を印加することで発熱作用が得られるヒータ62が配置されている。また、ヒートブロック100は図示外のモータによって回転する。
【0018】
冷却システム101は、圧縮装置90、放熱装置91、膨張装置92、冷却装置93を環状に接続した流路に冷媒を封入した冷媒ループと、冷却装置93、冷却水ポンプ95、試薬保冷庫102を環状に接続した流路に、第二の熱媒体である冷却水を封入した冷却水ループで構成される。なお、冷却システム101の冷媒ループに適用される冷媒としては、R134aやR410aなどがあるが、本発明の効果は冷媒に依存しないため、様々なものが選択できる。また、本実施例においては膨張装置92に細管からなるキャピラリーチューブを想定したが、電磁膨張弁などの制御が可能なものも選択できる。
【0019】
冷却システム101の冷却装置93は、冷却水と冷媒が熱交換する構造となっている。例えば冷却水の流路と冷媒の流路が並行して接触する構成であったり、冷却水の流路の内部に冷媒流路を配置した構成であったり、冷却水を貯めたタンクの内部に冷媒流路を通過させる構成がある。
【0020】
冷却システム101の放熱装置91と圧縮装置90は、装置外部と連通した第一の空間に配置されている。この空間の圧縮装置90の下流側に排気ファン94を配置することで、装置外部から排気ファン94へと空気が流通する風路を構成する。装置外部と放熱装置91の入口の間には、埃などの異物侵入防止のためのフィルタ64が配置されている。排気ファン94の下流側は排熱風路22へと接続し、排熱風路22は装置外部に連通する。
【0021】
本実施例では、発明の意図する効果を得るために、ヒートブロック100の下部で、反応容器保持部61の水平方向長さと重なる位置に、主原料がアルミニウムである伝熱体3を配置している。伝熱体3に対してヒートブロック100と対向する空間を伝熱空間1と定義し、冷却システム101の放熱装置91と圧縮装置90が配置されている風路と伝熱空間1を、伝熱流路である輸送流路5で接続した。これにより、放熱装置91と圧縮装置90が配置されている風路は、排熱風路22と輸送流路5の2つの流路に接続する。両者へ流れる風量を調整するために、輸送流路5の流量制御手段7として風量比調整ダンパー23を配置した。さらに、風量比調整ダンパー23の、輸送流路5への開度θを調整するために、温度検知手段9を伝熱体3の下面に配置した。
【0022】
制御装置103は、圧縮装置90、排気ファン94、ヒータ62、風量比調整ダンパー23、温度検知手段9、冷却水ポンプ95と電気配線を介して接続している。冷却システム101の起動時には、制御装置103は主に圧縮装置90、排気ファン94、冷却水ポンプ95の制御を行う。また、伝熱空間1の排熱を回収する場合には、制御装置103は温度検知手段9から温度情報を取得し、この情報を元に比較演算を行い、主に風量比調整ダンバー23へ制御信号を送信することで、制御を行う。
【0023】
第1の実施例の動作として、まず、ヒートブロック100の立ち上がり前の状態について説明する。ヒートブロック100の立ち上がり直前では冷却システム101が動作している。この時、制御装置103によって駆動された圧縮装置90では冷媒の圧縮動作が、膨張装置92では冷媒の膨張動作が行われている。これにより、圧縮装置90で高温高圧となった冷媒は、放熱装置91へと流通し、放熱装置91と圧縮装置90が配置してある空間へ熱を放出する。放熱を終えた冷媒は膨張装置92へと流通し、低温低圧へと減圧された後、冷却装置93にて水を冷却すると同時に冷媒自身が加熱される。
【0024】
冷却システム101の風路では、制御装置103によって駆動された排気ファン94によって、装置外部からフィルタ64を通して放熱装置91へと空気が流入する。放熱装置91を流出した空気は、圧縮装置90、排気ファン94を通過した後、風量比調整ダンパー23へと到達する。仮に、制御装置を介して風量比調整ダンパー23の開度θを0とした場合には、放熱装置91の排熱は全て装置外部へと放出される。以上の仕組みにより、冷却システム101の圧縮装置90から膨張装置92にかけての冷媒流路は外気温度よりも温度が高い高温領域65となり、膨張装置92から圧縮装置90の入口にかけての冷媒流路は外気温度よりも温度が低い低温領域66となる。
【0025】
冷却装置93では、低温の冷媒と冷却水とが熱交換することで、水が冷却される。冷却された水は、制御装置103によって駆動された冷却水ポンプ95によって試薬保冷庫102へと送り出される。試薬保冷庫102には試薬ボトル63が収納されているため、冷却水は試薬ボトル63と試薬保冷庫102が設置されている空間を冷却する。試薬保冷庫102にてこれらの被冷却物から加熱された水は、再び冷却装置93に流入するため、この繰り返しによって試薬保冷庫102の冷却が連続的になされる。
【0026】
本実施例の動作について、図2に従って説明する。図2のフローは、冷却システム101が動作している状態で、ヒートブロック100を起動した場合の制御方法を示したものである。
【0027】
ステップS201でヒートブロック100を起動した後、伝熱体3の下部に設置した温度検知手段9の制御目標温度Ts1を設定する(ステップS202)。具体的にはTs1は反応目標温度の37℃よりも、反応温度の許容ばらつきから、反応温度の許容ばらつきと環境温度の許容変動幅との和だけ低くすることが望ましい。例えば、反応温度の許容ばらつきが±0.3℃、環境温度の許容変動幅が±2℃の場合には、Ts1は36.7℃〜34.7℃が適切な範囲となる。理由は後述する。次にステップS203およびステップS204にて、風量比調整ダンパー23の開度θと、温度検知手段9の温度Tm1を検知する。
【0028】
検知した温度Tm1を設定した制御目標温度Ts1と比較する(ステップS205)。ヒートブロック100の起動直後は、ヒートブロック100の周囲は外気温度に近いため、通常、Tm1はTs1よりも低くなり、制御フローの最初の分岐が真(YES)となることが多い。この場合には、伝熱体3へと回収させる高温領域65の放熱量を増やすため、風量比調整ダンパー23の開度θが最大か否かを判断し(ステップS206)、最大でない場合は、風量比調整ダンパー23の開度θを加算し、輸送流路5への風量を増やす(ステップS207)。これにより、高温領域65の熱は輸送流路5を経由して伝熱空間1へと流通し、伝熱体3を加熱する。伝熱体3が加熱されることによりヒートブロック100周囲の空間を温め、ヒートブロック100を間接的に加熱する。
【0029】
なお、ヒートブロック100を伝熱体3によって間接的に加熱する理由は、輸送流路5から流入する空気の流れが反応容器60の上部に回り込むことで、埃などの不純物が反応液に混入するリスクを低減するためである。そのため、伝熱体3の代わりにヒートブロック100の近傍の流れ場から不純物を除去する手段を別途設けても良い。ヒートブロック100の近傍の流れ場から不純物を除去する手段としては、フィルタ64や粉塵の分離装置などがある。
【0030】
本実施例では、伝熱体3は主原料をアルミニウムとし、反応容器保持部61の水平方向が伝熱体3と重なるように構成した。つまり、少なくとも反応容器が保持されている部分については、水平方向に亘って伝熱体がその下に位置付けられるように配置される。伝熱体3の素材をアルミニウムとした理由は、伝熱体3の下面から加えた熱が伝熱体3の上面へ到達する際の熱抵抗を低くすることで、ヒートブロック100へ伝える熱量を多くするためである。そのため、熱抵抗が低ければ伝熱体には様々なものが選択できる。具体的には熱伝導率の高い銅や、薄い樹脂などでもよい。伝熱体3の寸法を反応容器保持部61の水平方向と重なるようにした理由は、温度を安定化させたい反応容器60の近傍を集中して加熱するためである。
【0031】
伝熱体3を加熱し終えた空気は、伝熱空間1の下部に設けた排気口から流出し、排熱風路22を経由した後、装置外部へと排出される。この一連の流れによって高温領域65の熱を伝熱体3へ回収する。
【0032】
外気温度が反応目標温度Ts1に近い場合には、時間の経過に伴って制御目標温度Ts1に対して、温度検知手段9の温度Tm1が高くなり、ステップS205の条件分岐が偽(No)、ステップS208の条件分岐が真(YES)となる。このときには、風量比調整ダンパー23が全閉(θ=0)であるか否かを確認し(ステップS209)、θ=0でない場合には風量比調整ダンパー23の開度θを減算することで、輸送流路5の風量を低減する(ステップS210)。
【0033】
次に、本実施例の効果について説明する。ヒートブロック100に配置したヒータ62は、反応液を37℃に保持することが主目的であるため、ヒートブロック100が周囲へ放熱する量と同じ熱量を出力できればよい。加えて、反応液の温度を±0.3℃の範囲で制御するためには、ヒータ62には単位信号辺りの電圧変化量が小さい、すなわち分解能を高くできるものが求められる。以上から、ヒートブロック100に設置するヒータ62の出力は数ワットから数十ワット程度と低いものが適切となる。その一方で、出力の小さい熱源は、昇温幅の大きな加熱の際に時間がかかるという特徴があるため、ヒートブロック100の起動を速めるためには、別の熱源を設けることが望ましい。
【0034】
高温領域65からの排熱の熱量は、ヒートポンプサイクルの動作原理より、概ね圧縮装置90への入力電力と冷却装置93での冷却熱量の和となる。また冷却装置93の冷却熱量は、試薬保冷庫102にて被冷却物(試薬容器)から受け取る熱量と、冷却装置93と試薬保冷庫102を接続する配管が装置内部で加熱される熱量の和となる。したがって、放熱装置91からの放出熱量は試薬保冷庫102の冷却に必要な熱量よりも数倍大きく、一般的に数十ワット以上となる。したがって、ヒートブロック100に求められる出力よりも大きい。このような熱源は応答が鈍く、また制御の分解能が粗いため、ヒートブロック100の近傍の温度が上昇しすぎた場合の温度の低減速度が遅く、精密な温度制御には不適である。
【0035】
したがって、温度検知手段9の制御目標温度Ts1を反応目標温度よりも低い値に設定し、ヒートブロック100の周囲環境温度の調整に冷却システム101の放熱を利用し、反応容器60の温度の微調整にヒートブロック100に設けたヒータ62を利用することで、ヒートブロック100の素早い起動と、精密な制御が両立できる。
ここで、反応温度には許容ばらつきがあるため、反応容器の温度を調整するためには、少なくとも許容ばらつき分だけ制御目標温度Ts1を低くする必要がある。さらに、環境温度には許容変動幅があるため、不意に環境温度が上昇した場合に、高温領域65からの排熱温度が上昇することで反応目標温度を超えてしまう可能性がある。この場合には、風量比調整ダンパー23の開度θを調整することで温度上昇を回避できるが、予め制御目標温度Ts1を低く設定しても良い。したがって、Ts1は反応温度の許容ばらつきから、反応温度の許容ばらつきと環境温度の許容変動幅の和だけ低く設定しておくことが望ましいこととなる。
【0036】
なお、本実施例は冷却システム101としてヒートポンプ式の装置を想定したが、他の動作原理によるものでも構わない。具体的には、ペルチェ素子による冷却システム101を用いた場合についても、放熱面が高温領域65、冷却面が低温領域66となり、冷却熱量と入力電力の和が放熱面から放出されるため、本実施例と同様の効果が得られる。
【0037】
また、本実施例では温度検知手段9を伝熱体3の下部に配置したが、高温領域65の下流であれば、どの領域に設置しても構わない。例えば、温度検知手段9を排気ファン94の直後に設置した場合、温度検知手段9の計測温度Tm1が制御目標温度Ts1よりも高い場合には、風量比調整ダンパー23の開度θを0とし、温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1よりも低い場合には、風量比調整ダンパー23の開度θを最大として熱回収を行うことができる。
【0038】
さらに、上記では温度検知手段9の制御目標温度Ts1を一定としたが、例えば反応容器の温度が37℃に達するまでは、Ts1を反応温度よりも高く設定しておき、反応容器の温度が目標温度に達した時に、Ts1を37℃よりも低い値に更新するなどの処理を行うこともできる。
【実施例2】
【0039】
第2の実施例について、図3図4を参照して説明する。図3は第2の実施例のシステム構成を示したものである。
【0040】
第2の実施例は、第1の実施例に、輸送流路5の途中と装置外部とを接続するバイパス風路20と、バイパス風路20の途中にバイパス風路用ファン21を加えたものである。バイパス風路用ファン21は制御装置103によって制御できるように電気配線を介して接続しており、制御装置103からの指令で駆動回転数が制御される。温度検知手段9はバイパス風路20と輸送流路5の合流部の下流側に設置されている。
【0041】
図4を用いて、第2の実施例の動作について説明する。実施例1と同じく、ヒートブロック100の起動直前は冷却システム101が動作している。
【0042】
最初に、ヒートブロック100を起動し(ステップS401)、バイパス風路用ファン21の回転数Nを0に設定し(ステップS402)、外気の吸入を止める。ここから、温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1へ上昇するまでの動作(ステップS403からステップS409)は、実施例1と同じであるため、省略する。
【0043】
ステップS409で温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1を上回った場合、まずバイパス風路用ファン21の回転数Nが最大となっているか否かを判定し(ステップS410)、Nが最大値でない場合は、バイパス風路用ファン21の回転数Nを加算し、高温領域65からの温風を外気と混合することで、ヒートブロック100へ流入する空気の温度を調整する(ステップS411)。これにより、温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1を超えた際の伝熱空間1への送風量が実施例1よりも多くなるため、伝熱体3の温度制御が行いやすくなる。
【0044】
温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1を上回り、かつバイパス風路用ファン21の回転数Nが最大の場合(ステップS409がYes、かつステップ410がYesの場合)には、伝熱空間1の温度を下げるために、風量比調整ダンパー23の開度θを減算する(ステップ412、ステップS413)。これにより、輸送流路5の風量を減らすとともに、排熱風路22の風量を増やす。仮に、ヒートブロック100の空間が予期せず異常加熱した際には、バイパス風路用ファン21の回転数Nが最大、風量比調整ダンパー23の開度θが0に近づくため、伝熱空間1は外気で冷却されることとなる。
【0045】
以上の通り、実施例2は実施例1に対して伝熱体3の温度制御をより安定して行うことができるシステムとなる。
【実施例3】
【0046】
第3の実施例について、図5図6を参照して説明する。第3の実施例は、試薬保冷庫102、ヒートブロック100、冷却システム101は実施例1と同一としつつ、排熱の回収と、伝熱空間1の冷却に2つの水系ループを用いたものである。
【0047】
図5を用いて本実施例の構成について説明する。第3の実施例は、冷却システム101の高温領域65と接した高温流路40と、輸送流路5、流量制御手段7となる分岐流路用三方弁43、熱回収ポンプ41、温度検知手段9、伝熱空間1を環状に接続した流路に、熱媒体11として水を流通させた第1のループと、冷却装置93、冷却水ポンプ95、試薬保冷庫102、第2温度検知手段10、第2流量制御手段8となる冷却用三方弁44を環状に接続した流路に第2熱媒体12として水を流通させた第2のループで構成されたものである。制御装置103は、第1の実施例において制御可能な要素の他に、分岐流路用三方弁43、熱回収ポンプ41、冷却用三方弁44、第2温度検知手段10と電気配線を介して接続している。制御装置103は、温度検知手段9と第2温度検知手段10から取得した温度情報を元に演算処理を行い、主に分岐流路用三方弁43と冷却用三方弁44へ制御信号を送信する。
【0048】
第1のループについて説明する。冷却システム101の圧縮装置90と放熱装置91の間は、熱媒体11である水が流通する流路と冷媒が流通する流路の熱交換部65が設けられている。熱交換部65では、冷却装置93と同様に、冷媒と水の流路が並行に接するなどの構成となっており、水が流通する流路が、外気よりも温度が高い高温流路40となっている。
【0049】
伝熱空間1は、ヒートブロック100の側面と重なるように螺旋状に配置した管状の伝熱体3の内側の空間である。高温流路40と伝熱空間1を接続する輸送流路5の途中は、分岐流路42でバイパスされており、熱回収ポンプ41の入口側の分岐点に、流量制御手段7として分岐流路用三方弁43が設置されている。分岐流路用三方弁43は、高温流路40の出口側と分岐流路42の出口側の切り替え開度θ1を調整できる配置となっている。この構成により、熱回収熱量を増やしたい場合には、分岐流路用三方弁43の開度θ1を減らすことで高温流路40の流量を増やし、熱回収熱量が過剰である場合には逆にθ1を増やすといった制御が可能となる。
【0050】
第2のループについて説明する。試薬保冷庫102の出口側と冷却装置93の入口側の間と、分岐流路用三方弁43と熱回収ポンプ41の入口側の間は、第2輸送流路6で接続され、第2輸送流路6と輸送流路5の合流部が、温度混合部50となる。試薬保冷庫102を流出する第2熱媒体12の流路と、第2輸送流路6の交点には第2流量制御手段8として冷却用三方弁44が設置されている。冷却用三方弁44は、冷却装置93の入口側と第2輸送流路6の入口側の切り替え開度θ2が調整できる配置となっている。また、伝熱空間1の出口側と分岐流路42の分岐点の間は、冷却用三方弁44と冷却装置93の間の流路と接続している。この構成により、輸送流路5を流れる熱媒体の温度が制御目標温度Ts1よりも高い場合には、冷却用三方弁44を第2輸送流路6側に開く、すなわちθ2を増やすことで温度混合部50を介して熱媒体の冷却を行い、逆に熱媒体の温度が低い場合にはθ2を減らすことで冷却量を減らすことが可能となる。第3の実施例の動作について、図6のフローに従って説明する。ヒートブロック100の起動直前の状態は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0051】
ヒートブロック100を起動した後(ステップS601)、ヒートポンプの排熱を回収するために、熱回収ポンプ41を起動する(ステップS602)次に温度検知手段9の制御目標温度Ts1と第2温度検知手段10の制御目標温度Ts2を設定する(ステップS603,ステップS604)。ここで、第2温度検知手段10の制御目標温度Ts2は、例えば試薬保冷庫102を所定の温度以下に保つ事ができる最大の温度を設定する。
【0052】
制御目標温度の設定後、まず第2温度検知手段10の温度Tm2を検知する(ステップS605)。この時点で、第2温度検知手段10の温度Tm2が第2温度検知手段10の制御目標温度Ts2よりも高いか否かを判定し(ステップS606)、第2温度検知手段10の温度Tm2の方が高い場合には、試薬保冷庫102の冷却が十分に行えない可能性があるため、第2輸送流路6への冷却用三方弁44の開度θ2が0でない限りθ2を減算することで第2輸送流路6の流量を減らし、ステップS603へ戻る(ステップS607〜ステップS609)。この動作により、試薬保冷庫102の冷却を優先して行う。
【0053】
ステップS606で第2温度検知手段10の温度Tm2が、制御目標Ts2よりも低い場合、分岐流路42への分岐流路用三方弁43の開度θ1と、温度検知手段9の温度Tm1を検知する(ステップS610、ステップS611)。温度検知手段9の温度Tm1が温度検知手段9の制御目標温度Ts1よりも低い場合(ステップS612でYes)、熱回収量を増やす必要があるため、冷却用三方弁44の開度θ2を検知し(ステップS613)、θ2が0でない限りはθ2を減算することで冷却水の供給量を減らす(ステップS614、ステップS615)。さらに、θ2が0の場合には、θ1が0でない限りθ1を減算することで、高温流路40の流量を増やし、熱回収量を増やす(ステップS616、ステップS617)。
【0054】
一方、ステップS612で温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1を超えた場合には、熱回収量を減らす必要があるため、分岐流路用三方弁43のθ1が最大でない限りθ1を加算し、分岐流路42の流量を増やす(ステップS618〜ステップS620)。さらに、θ1が最大であるにもかかわらず、温度検知手段9の温度Tm1が制御目標温度Ts1よりも高い場合には(ステップS618でYesかつステップS619でYes)、θ2を検知し、θ2が最大でない限りはθ2を加算することで、試薬保冷庫102から流出する冷却水を温度混合部50へと送る(ステップS621〜ステップS623)。この動作は、ヒートブロック100の温度が意図せず上昇した場合の冷却手段として利用できる。
【0055】
以上のフローにより、試薬保冷庫102の冷却を優先しつつ伝熱空間1への排熱回収を行う。伝熱空間1の温度が上昇することで、伝熱体3である螺旋状の流路とその周囲の空間を介して、ヒートブロック100が加熱されるため、本発明の効果が得られる。
【0056】
なお、本実施例では熱媒体11と第2熱媒体12を水としたが、別の方法として、第1の実施例において、試薬保冷庫へ流通させる冷却水の出口側と輸送風路6の温度を混合する熱交換部を設ける構成とすることなどでも実装できる。そのため、本実施例は熱媒体の種類によらず効果が得られる。
【実施例4】
【0057】
第4の実施例について、図7図8を参照して説明する。第4の実施例は、第1の実施例に対して、試薬保冷庫102の冷却水の出口側に流路(第2輸送流路6)を追加したものである。
【0058】
第4の実施例では、試薬保冷庫102の第2熱媒体12の出口側と冷却装置93の間に、第2熱媒体12の流れに沿って配置した第2温度検知手段10と、輸送流路6への分岐点を配置した。輸送流路6への分岐点には、第2流量制御手段8となる冷却用三方弁44を配置した。冷却用三方弁44は、冷却装置93の入口側と第2輸送流路6の入口側の切り替え開度θ2が調整できる配置となっている。
【0059】
第2輸送流路6は、ヒートブロック100の下部に設置されている発熱要素67と接した管状の第2伝熱体4の内部の第2伝熱空間2と接続している。第2伝熱空間2の出口は第2輸送流路6を経由したのち、冷却用三方弁44と冷却装置93の間に接続する。
【0060】
ヒートブロック100の下部に設置した発熱要素67は、電力を加える事で仕事を行い、加えたエネルギの一部が熱損失となって放出される機器などが該当する。本実施例ではヒートブロック100を回転させるためのモータがこれに相当する。
【0061】
制御装置103は、第1の実施例で制御可能な要素に加えて、冷却用三方弁44、第2温度検知手段10、発熱要素67であるモータと電気配線を介して接続している。制御装置103は、モータを駆動させつつ、温度検知手段9と第2温度検知手段10から取得した温度情報を元に演算処理を行い、主に風量比調整ダンパー23、冷却用三方弁44へ制御信号を送信する。
【0062】
本実施例の動作について説明する。本実施例は、流量制御手段7である風量比調整ダンパー23の開度θの制御を図2のフローで行い、第2流量制御手段8である冷却用三方弁44の開度θ2の制御を図8のフローで行う。
【0063】
ヒートブロック100を起動した際、第2温度検知手段10の制御目標温度Ts2を設定し、第2輸送流路6への冷却用三方弁44の開度θ2と、第2温度検知手段10の温度Tm2を検知する。
【0064】
第2温度検知手段10の温度Tm2が制御目標温度Ts2より低い場合は、試薬保冷庫102の冷却熱量に対して冷却システム101の生み出す冷却熱量に余裕があるため、θ2が最大でない限りθ2を加算することで第2輸送流路6の流量を増やす。これにより、発熱要素67の周囲に配置した第2伝熱空間2の冷却水流量が増えるため、円管状の第2伝熱体4を介した発熱要素67の冷却熱量が増え、温度が低下する。
【0065】
一方、第2温度検知手段10の温度Tm2が制御目標温度Ts2よりも大きいときは、試薬保冷庫102の冷却に必要な熱量が不足していることになるため、θ2がゼロでない限りθ2を減算することで発熱要素67の冷却熱量を減らす。
【0066】
以上の仕組みにより、試薬保冷庫102の冷却を優先しつつ、余剰となった冷却能力で発熱要素67を冷却し、局所的なヒートブロック100の加熱を抑制することで、温度制御を安定的に行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1:伝熱空間(第二の空間)
2:第2伝熱空間
3:伝熱体
4:第2伝熱体
5:輸送流路
6:第2輸送流路
7:流量制御手段
8:第2流量制御手段
9:温度検知手段(第一の温度検知手段)
10:第2温度検知手段(第二の温度検知手段)
11:熱媒体
12:第2熱媒体
20:バイパス風路
21:バイパス風路用ファン
22:排熱風路
23:風量比調整ダンパー
40:高温流路
41:熱回収ポンプ(送液装置)
42:分岐流路
43:分岐流路用三方弁(分岐流量制御手段)
44:冷却用三方弁
50:温度混合部
60:反応容器
61:反応容器保持部
62:ヒータ
63:試薬ボトル
64:フィルタ
65:高温領域
66:低温領域
67:発熱要素
90:圧縮装置
91:放熱装置
92:膨張装置
93:冷却装置
94:排気ファン
95:冷却水ポンプ
100:ヒートブロック(第一の温調装置)
101:冷却システム(第二の温調装置)
102:試薬保冷庫
103:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8