(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
焙煎胡麻ドレッシング等の焙煎胡麻風味の酸性液状調味料が販売されている。この酸性液状調味料は、酸性調味液にすり胡麻や切り胡麻等の焙煎胡麻粉砕物を含有させ、均一に混合することで得られるものであり、酢酸等を含有し酸性であることによりすっきりとした味と焙煎胡麻特有の芳香を特徴とする調味料である。
このような焙煎胡麻風味の酸性液状調味料の使用用途としては、サラダ用ドレッシング以外にも、豆腐や肉等のたれとしても使用され、近年、食卓における使用頻度も増加する傾向にある。
一方で、近年の健康志向により焙煎胡麻ドレッシング等の焙煎胡麻風味の酸性液状調味料も低カロリー化が求められており、配合されている食用油脂を減らすことで対処している。
【0003】
ところで、胡麻は、炒ることによって胡麻特有の香りを生じる。これは、加熱により糖、アミノ酸、油脂等の成分が化学変化して香りが生じていると考えられている。また、より一層強い香りを得る場合には、香気成分が揮発性であることを利用し、表面積を大きくして揮発を促進する方法が昔から行われてきた。すなわち、ひねり胡麻、切り胡麻、擂り胡麻と順次細かく傷を入れて表面積を大きくするとより強く芳香する。
【0004】
従来、焙煎胡麻特有の芳香を有する酸性液状調味料を調製するためには、焙煎した胡麻を細かく傷を入れて表面積を大きくしたひねり胡麻、切り胡麻やすり胡麻等の焙煎胡麻粉砕物がもっとも効果的な方法と考えられてきた。
しかしながら、芳香成分が揮発してしまった後の焙煎胡麻の芳香が薄くなるのは当然であり、更に、酢酸を含有した酸性液状調味料中で、数カ月以上の長期間や、温度や湿度が一定でない条件下で、胡麻の芳香を保持することは非常に困難であった。
【0005】
焙煎胡麻の香りを酢酸を含有した酸性液状調味料の中で長期間保持する方法として、胡麻を油相中で粉砕した後、他の原料と混合する液体調味料の製造方法が知られている(特許文献1)。
【0006】
上述のとおり、胡麻の芳香成分の多くは、油滴群からなる子葉に詰まっており、油溶性成分である。したがって、上記方法によれば、油相中の食用油脂に胡麻の芳香成分が保持されるためか、油相を十分量有する液体調味料においては効果を奏するものと推測される。
【0007】
しかしながら、脂質含有量が10質量%以下の低オイル又はノンオイルの酸性液体調味料においては、油相中の食用油脂中に焙煎胡麻の芳香成分を十分に保持できないためか、保管後に焙煎胡麻の香りを十分に感じることができる解決方法が未だ提案されておらず、脂質含有量が10質量%以下の低オイル又はノンオイルの酸性液状調味料において胡麻の焙煎風味を十分に感じられるものが望まれている。
【0008】
上記要望に応えるため、本出願人は、マヨネーズの粘度(約100Pa・s)程度まで高めることで、保管後の胡麻の芳香成分を保持することを検討した。本発明の酸性液状調味料は脂質含有量が10質量%以下とノンオイル又は低オイルであるから、マヨネーズと同様に食用植物油脂を高含有させ、乳化により粘度を高めることができないため、ガム質又は澱粉を用いて、マヨネーズと同程度の粘度になるよう調製した。
しかしながら、脂質含有量が10質量%以下のノンオイル又は低オイルの酸性液状調味料の場合、マヨネーズ様の粘度とするまでガム質又は澱粉を大量に配合することとなり、食感がガム質特有のべたついたものとなり、好ましくなかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の酸性液状調味料を詳細に説明する。
【0015】
<本発明の特徴>
本発明は、焙煎胡麻粉砕物(練り胡麻を除く)と澱粉粒の体積平均粒子径が小さい加工澱粉とを組み合わせることにより、低脂質にも拘わらず、焙煎胡麻粉砕物の香りを保管後においても良好に維持できる。
【0016】
<酸性液状調味料>
本発明の酸性液状調味料は、脂質含有量が10質量%以下、pHが3.0〜4.6の酸性液状調味料である。
【0017】
<脂質含有量>
本発明の酸性液状調味料は、脂質含有量が10質量%以下の酸性液状調味料である。本発明の酸性液状調味料は、低脂質にも拘わらず、焙煎胡麻粉砕物の香りが保存後においても良好に維持されているのが特徴である。
更に、本発明の酸性液状調味料の脂質含有量は、上限が8質量%以下、5質量%以下、3%質量以下、3質量%未満、下限は特に限定されるものではないが、脂質を実質的に含まなくてもよく、更に0.01質量%以上、0.05質量%以上であるとよい。
【0018】
<脂質含有量の測定方法>
前記脂質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3欄記載のエーテル抽出法に準じて測定することができる。
【0019】
<ノンオイルの酸性液状調味料>
脂質含有量が10質量%以下の低脂質の酸性液状調味料のうち、ノンオイルの酸性液状調味料とは、食用油脂を使用せず且つ脂質含有量が3質量%未満の酸性液状調味料を言う。これは、JAS規格とドレッシング類の表示に関する公正競争規約に基づく。
【0020】
<低オイルの酸性液状調味料>
低オイルの酸性液状調味料は、上記ノンオイルの酸性液状調味料以外の脂質含有量が10質量%以下の酸性液状調味料をいう。
より具体的には、食用油脂を使用し且つ脂質含有量が10質量%以下、好ましくは上限が8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、3質量%未満である酸性液状調味料、又は食用油脂を使用せず且つ脂質含有量が3質量%以上10質量%以下、好ましくは上限が8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、3質量%未満である酸性液状調味料を低オイルの酸性液状調味料という。
食用植物油脂の配合量及び脂質含有量の下限は、特に限定されるものではないが、実質的に食用植物油脂又は脂質を含まない0質量%以上としてもよく、0.01質量%以上、0.05質量%以上としてもよい。
ここで、食用植物油脂を使用する低オイルの酸性液状調味料としては、食用植物油脂と水相とが乳化された酸性乳化液状調味料、食用植物油脂が水相の上に積層された分離液状調味料が挙げられる。
【0021】
<粘度>
本発明の酸性液状調味料は、低粘度であっても焙煎胡麻粉砕物の良好な香りを保持することができるため、粘度は15Pa・s以下であり、更に13Pa・s以下、10Pa・s以下、8Pa・s以下、5Pa・s以下、3Pa・s以下とすることができる。一方、下限値は、特に限定されないが、0Pa・s以上がよく、0.9Pa・s以上が更によく、1Pa・s以上が更によい。
【0022】
<粘度の測定条件>
上記粘度の測定は、BH型粘度計で、品温25℃、回転数:10rpmの条件で粘度が0.7Pa・s未満のときローター:No.1、0.7Pa・s以上2.8Pa・s未満のときローターNo.2、2.8Pa・s以上7.0Pa・s未満のときNo.3、7.0Pa・s以上のときNo.4を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0023】
<焙煎胡麻粉砕物>
本発明で用いる焙煎胡麻粉砕物は、焙煎胡麻を粉砕したものであり、一般的に擂り胡麻、切り胡麻が挙げられる。本発明で用いる焙煎胡麻粉砕物には練り胡麻を含めない。
粉砕処理方法は特に制限はなく、常法により、石臼、コロイドミル、フードカッター、マイルダー、ロール粉砕器等により粉砕処理されたものであればよい。
前記焙煎胡麻としては、胡麻を常法により焙煎したものであればよく、具体的には、外種皮付の胡麻を直火式、遠赤外線式等の焙煎釜で焙煎したもの等が挙げられ、原料胡麻としては、通常焙煎胡麻に使用される白ゴマ、金ゴマ、黒ゴマ、茶ゴマ等が挙げらえる。これらの中でも、白ゴマ又は金ゴマを外種皮付の状態で焙煎した焙煎胡麻を用いると、保管後の焙煎香がより強い酸性液状調味料が得られ易く好ましい。
【0024】
<焙煎胡麻粉砕物の大きさ>
本発明で用いる焙煎胡麻粉砕物は、焙煎胡麻粉砕物全量に対して、14メッシュ(Trler規格、目開き1.18mm)パスの焙煎胡麻粉砕物の含有量が、50質量%以上、60質量%以上であると良い。本発明で用いる焙煎胡麻粉砕物の50質量%以上が上記メッシュを通過しない場合、即ち焙煎胡麻の粉砕が不十分であり、胡麻の焙煎香が弱く感じられ、保管後の液状調味料の焙煎香も維持され難い場合がある。
また、本発明で用いる焙煎胡麻粉砕物は、焙煎胡麻粉砕物全量に対して、32メッシュ(Trler規格、目開き0.5mm)オンの焙煎胡麻粉砕物の含有量が30質量%以上、50質量%以上であると良い。本発明で用いる焙煎胡麻粉砕物の30質量%以上が上記メッシュを通過する場合、即ち焙煎胡麻を粉砕しすぎて小さすぎるため外観上好ましくない。また、摩砕しすぎて練り胡麻状のものであると、コクが強くなりすぎて焙煎胡麻粉砕物の軽い香りを感じ難い。
【0025】
<焙煎胡麻粉砕物の含有量>
本発明の酸性液状調味料に対する焙煎胡麻粉砕物の含有量は、良好な胡麻焙煎香を酸性液状調味料に付与しやすいことから、下限値が1質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上がよい。一方、焙煎胡麻粉砕物が多すぎると、焙煎胡麻特有の味が強くなりすぎてマイルドな食べやすい酸性液状調味料が得られ難いため、本発明の酸性液状調味料に対する焙煎胡麻粉砕物の含有量の上限は、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下がよい。
【0026】
<澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉>
本発明の酸性液状調味料には、澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉が分散している。当該加工澱粉により、保管後においても焙煎胡麻粉砕物の焙煎香を良好に維持することができる。
【0027】
<加工澱粉の体積平均粒子径>
加工澱粉の体積平均粒子径は、焙煎胡麻粉砕物の焙煎香を維持する観点から、上限が15μm以下であり、10μm以下、8μm以下、8μm未満がよい。また、下限値は、3μm以上であり、5μm以上であるとよい。
【0028】
<体積平均粒子径の測定方法>
試料の調製:加工澱粉が無水換算で3質量%の水懸濁液を品温50℃まで達温させ、品温50℃で10分間保持した後、30℃まで放冷させる。
体積平均粒子径の測定:上記調製した試料をレーザー回析式粒度分布測定装置により測定する。測定基準は体積とし、その他測定条件は常法に従って行う。
本発明の酸性液状調味料は、その製造工程中に加熱殺菌工程があったとしても、調味料中の加工澱粉が少なくとも澱粉粒として存在することが肝要であるため、上記試料の調製において加熱処理を行う。
【0029】
<加工澱粉の含有量>
加工澱粉の含有量は、酸性液状調味料に対して下限は1質量%以上、2質量%以上がよく、上限は8質量%以下、6質量%以下が良い。加工澱粉の含有量を前記範囲とすることで、酸性液状調味料の保管後においても焙煎胡麻粉砕物の香りを良好に維持することができる。
【0030】
<加工澱粉の原料澱粉>
加工澱粉の原料澱粉としては、その種類によって限定するものではなく、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ(例えば、スイートコーン由来、デントコーン由来、ワキシーコーン由来のコーンスターチ)、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、および米澱粉のいずれのものでもよいが、特に、澱粉粒の体積平均粒子径が1〜15μm、更に1〜10μmの米澱粉、サトイモ澱粉、小麦小粒子、馬鈴薯小粒子等が好適である。
【0031】
<加工澱粉の種類>
加工澱粉とは、食品衛生法で添加物に指定された化学的処理を施された澱粉であって食用として供されるものである。加工澱粉は、前記それぞれの体積平均粒子径となれば、特に限定されないが、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸化架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉が挙げられる。
特に、加工澱粉は、調味料中に少なくともそれぞれが粒子として存在することが肝要であるため、加熱膨潤を抑制できる架橋澱粉が好適であり、アセチル化アジピン酸架橋、アセチル化リン酸化架橋、ヒドロキシプロピルリン酸架橋、リン酸架橋等の架橋方法が挙げられ、特にリン酸架橋、ヒドロキシプロピルリン酸架橋、アセチル化アジピン酸架橋がよい。
【0032】
<酸性液状調味料中の体積基準粒度分布測定の理由>
本発明では、酸性液状調味料中に上記加工澱粉が分散しているかどうかを確かめるために、酸性液状調味料の体積基準粒度分布を測定し、澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉のピークの存在を確認する。
ここで、加工澱粉の配合量ではなく、酸性液状調味料中の体積基準粒度分布におけるピークの有無を確認する理由は、澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μ以下である加工澱粉を用いたとしても、最終的に得られる酸性液状調味料中に必ずしも当該体積平均粒子径の加工澱粉が存在するとは限らないからである。例えば、酸性液状調味料の製造工程中に加熱工程があれば、加工澱粉の種類と加熱条件によって澱粉粒が崩壊して粒子が残らない場合が考えられる。したがって、本発明の効果を奏する範囲を特定するためには、最終的に得られる酸性液状調味料中に上述の大きさの加工澱粉が存在することを示すことができる、酸性液状調味料の体積基準粒度分布のピークの有無で特定することが肝要である。
【0033】
<酸性液状調味料中の体積基準粒度分布測定方法>
酸性液状調味料中の体積基準粒度分布を測定方法は、本発明の酸性液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後に、レーザー回析式粒度分布測定装置にて測定することができる。測定された体積基準粒度分布は、以下の特徴を有するものとする
3μm以上15μm以下の範囲にピークを少なくとも有する。
【0034】
<食用植物油脂を配合する低オイルの酸性液状調味料の体積基準粒度分布>
低オイルの酸性液状調味料のうち、食用植物油脂を配合する調味料は、油滴が生じる可能性があるため、体積基準粒度分布測定の際には、以下の前処理を行うとよい。
当該前処理は、低オイルの酸性液状調味料を油相と水相に分離できる程度に遠心分離を行い、上澄みの食用油脂を除去した後、水相部分を均一攪拌する処理である。当該前処理後、食用油脂を使用しない酸性液状調味料と同様に体積基準粒度分布を測定するものとする。
【0035】
<ピークの定義>
ピークの位置は、体積基準粒度分布中に存在する「山」の頂点の粒子径を言う。より詳細には、体積基準粒度分布のグラフを算出するための粒子径(μm)、頻度(%)、累積頻度(%)の生データを粒子径の小さい方から順に頻度を参照し、最も高く且つそこから減少に転じる際の粒子径をピークとする。2つ目以降のピークも同様に特定する。
【0036】
<加工澱粉のピーク>
本発明の酸性液状調味料の体積基準粒度分布では、3μm以上15μm以下の範囲に少なくともピークを有する。
本発明の酸性液状調味料には、澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下である加工澱粉が分散していることから、当該ピークは少なくとも加工澱粉に起因するものであると言える。
より具体的に特定するならば、例えば以下の方法で特定することができる。酸性液状調味料を目開き150μmの篩に通した後、更に目開き38μmの篩に通し、篩を通過した酸性液状調味料を回収する。回収した調味料をヨウ素液と電子顕微鏡を用いて、ピークの粒子が澱粉由来であることを確認することができる。更に澱粉粒の形状から、澱粉の原料についても推測することができる。
【0037】
<焙煎胡麻粉砕物と加工澱粉との含有割合>
本発明の酸性液状調味料は、焙煎胡麻粉砕物と前記加工澱粉の含有比率が、15:1〜1:8であると保管後の焙煎胡麻粉砕物の焙煎香を良好に維持できるため、好ましい。更に、焙煎胡麻粉砕物と前記加工澱粉の含有比率が10:1〜1:5であると更によい。
【0038】
<ガム質>
本発明の酸性液状調味料は、当該調味料の粘度が15Pa・s未満となる範囲で、ガム質を0.01質量%以上1質量%以下含有させると、保管後においても焙煎胡麻粉砕物の焙煎香が維持することができるため好ましい。更にガム質を0.01質量%以上0.7質量%以下含有させることが好ましい。
【0039】
<ガム質の種類>
本発明の酸性液状調味料に用いるガム質は、特に限定されるものではないが、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、グアガム、タラガム等が挙げられ、特にキサンタンガムを用いるのが好ましい。
【0040】
<加工澱粉とガム質の配合割合>
本発明の酸性液状調味料は、前記加工澱粉とガム質の含有比率が、1:1〜300:1であると保管後の焙煎胡麻粉砕物の焙煎香を良好に維持できるため、好ましい。更に、前記含有比率が、3:1〜100:1であると更に良い。
【0041】
<シイタケエキス>
本発明の酸性液状調味料に、更にシイタケエキスを含有させることにより、保管後においても焙煎胡麻粉砕物の焙煎香を維持することができる。本発明の酸性液状調味料に対するシイタケエキスの含有量が、0.05質量%以上2質量%以下であると好ましく、更に上限が0.1質量%以上、0.5質量%以上、下限が1.5質量%以下、1質量%以下であると好ましい。
【0042】
<その他の原料>
本発明の酸性液状調味料には、上述の焙煎胡麻粉砕物、加工澱粉、ガム質、シイタケエキス以外に本発明の効果を損なわない範囲で当該食品に一般的に使用されている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、食酢、グルタミン酸ナトリウム、食塩、醤油、味噌、乳製品等の各種調味料、各種エキス、全卵、卵黄、ホスフォリパーゼA
1、ホスフォリパーゼA
2、ホスフォリパーゼC若しくはホスフォリパーゼDで酵素処理した卵黄、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウム等の乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、香味食材や各種野菜のおろし、ペースト状物、截断物等の具材の粉砕物、大豆、ピーナッツ等の種子類の具材が挙げられる。
低オイルの酸性液状調味料の場合、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油等の動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等の食用油脂等を用いることができる。
【0043】
<製造方法>
本発明の酸性液状調味料の製造方法は、焙煎胡麻粉砕物及び加工澱粉を必須原料として配合し、必要に応じてガム質、シイタケエキス等を配合し、常法に則り製造できる。
【0044】
以下、本発明の実施例、比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【0045】
[実施例1]
<ノンオイルの酸性液状調味料(ゴマドレッシング)>
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合し、70℃に加熱し、70℃で5分間加熱を施した後、250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの酸性液状調味料を製した。
【0046】
<焙煎胡麻粉砕物の大きさの測定方法>
(1)焙煎胡麻粉砕物全量に対する14メッシュパスの焙煎胡麻粉砕物の量
酸性液状調味料に10倍量の清水を加えて調製した分散液を14メッシュ(Tyler規格、目開き1.18mm)のフルイに流しいれて自然落下させ、フルイ上に残った残渣を減圧加熱乾燥法により原料の焙煎胡麻の水分量と同程度となるように乾燥して質量を測定し、次に、焙煎胡麻粉砕物全量(原料として使用した焙煎胡麻の全量)から前記14メッシュのフルイを通過しない焙煎胡麻粉砕物の質量を控除することにより14メッシュパスの焙煎胡麻粉砕物の量を求めた。この14メッシュパスの焙煎胡麻粉砕物の量が焙煎胡麻粉砕物の全量(原料として使用した焙煎ゴマの全量)に占める割合(%)を求めた。
【0047】
(2)焙煎胡麻粉砕物全量に対する32メッシュオンの焙煎胡麻粉砕物の量
酸性液状調味料に10倍量の清水を加えて調製した分散液を32メッシュのフルイ(Tyler規格、目開き0.5mm)に流しいれて自然落下させ、フルイ上に残った残渣を減圧加熱乾燥法により原料の焙煎胡麻の水分量と同程度となるように乾燥して質量を測定することにより32メッシュオンの焙煎胡麻粉砕物の量を測定した。この32メッシュオンの焙煎胡麻粉砕物の量が焙煎胡麻粉砕物の全量(原料として使用した焙煎胡麻粉砕物の全量)に占める割合(%)を求めた。
【0048】
<加工澱粉の体積平均粒子径の測定>
加工澱粉の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置である粒度分布径MT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて、段落0028記載の測定条件で測定した。
【0049】
<ノンオイルの酸性液状調味料の配合割合>
醸造酢(酸度5%) 15質量%
醤油 5質量%
砂糖 15質量%
食塩 4質量%
体積平均粒子径が7μmの加工澱粉 1.5質量%
体積平均粒子径が42μmの加工澱粉 0.5質量%
グルタミン酸ナトリウム 0.3質量%
シイタケエキス 0.8質量%
キサンタンガム 0.3質量%
結晶セルロース 0.3質量%
焙煎胡麻粉砕物 4質量%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
※体積平均粒子径が7μmの加工澱粉は、原料澱粉が米のリン酸架橋澱粉
※体積平均粒子径が42μmの加工澱粉は、原料澱粉がワキシーコーンスターチの架橋澱粉
※焙煎胡麻粉砕物の大きさは、焙煎胡麻粉砕物全量に対して14メッシュパスの焙煎胡麻の含有量が93質量%であり、32メッシュオンの焙煎胡麻粉砕物の含有量が76質量%である。
【0050】
得られたノンオイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が2.1質量%であった。
なお、粘度の測定条件は段落0021、脂質含有量の測定条件は段落0017の記載従って行った。
また、段落0033記載の測定条件に従って、得られた酸性液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、レーザー回析式粒度分布測定装置である粒度分布径MT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて、体積基準粒度分布を測定した結果、粒子径7.8μmの位置にピークが存在していた。
【0051】
[試験例1]
体積平均粒子径が7μmの加工澱粉及び焙煎胡麻粉砕物の含有量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1に準じて酸性液状調味料を製した。
また、粘度、脂質含有量、体積基準粒度分布の測定は、実施例1記載の方法に従い行った。
得られた酸性液状調味料を20℃で5日間保管した後、焙煎胡麻粉砕物の香りが維持されているかどうかを確認した。
【0052】
<官能評価基準>
A:焙煎胡麻粉砕物の香りが良好に維持されていた。
B:焙煎胡麻粉砕物の香りが若干劣っていたが、問題ない程度であった。
C:焙煎胡麻粉砕物の香りが維持されていなかった。
【0054】
表1より、焙煎胡麻粉砕物と澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉とを含有する、実施例1〜5の酸性液状調味料は、保管後においても焙煎胡麻粉砕物の香りが維持されており、良好な風味であった。
一方、体積平均粒子径が7μmの加工澱粉を除いた比較例1の酸性液状調味料は、保管後の焙煎胡麻粉砕物の香りが維持されておらず、劣っていた。
なお、用いた体積平均粒子径が7μmの加工澱粉を体積平均粒子径が3〜15μmのヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、体積平均粒子径が3〜15μmのアセチル化アジピン酸架橋澱粉に置換えても、保管後の焙煎胡麻粉砕物の香りが維持できた。
【0055】
[比較例2]
<ノンオイルの酸性液状調味料(ゴマドレッシング)>
下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合し、90℃まで加熱後、冷却し250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの酸性液状調味料を製した。
なお、本比較例3は、特開2013−138637の実施例6を追試した結果である。
【0056】
<ノンオイルの酸性液状調味料の配合割合>
醸造酢 10質量%
砂糖 7質量%
醤油 6質量%
練り胡麻 4.5質量%
味噌 2.0質量%
食塩 2.0質量%
酵母エキス 0.05質量%
体積平均粒子径が8μm以下の加工澱粉 5質量%
(パインホワイトR 松谷化学工業(株)製)
体積平均粒子径が50μmの加工澱粉 2.1質量%
(松谷マーガレット 松谷化学工業(株)製)
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――
合計 100質量%
【0057】
得られたノンオイルの酸性液状調味料は、加工澱粉の沈殿が生じていたため、体積基準粒度分布を測定時は、原料が均一となるよう攪拌した後、段落0033記載の測定条件に従って測定した。測定した結果、粒子径6.5μmの位置にピークが存在していた。
また、得られたノンオイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が10質量%以下であった。
【0058】
得られたノンオイルの酸性液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、焙煎胡麻粉砕物ではなく練り胡麻を用いているためか、焙煎胡麻の香りが維持されておらず、劣っていた。
【0059】
[比較例3]
焙煎胡麻粉砕物4質量%を練り胡麻8質量%に変更した以外は、実施例1に準じてノンオイルの酸性液状調味料を製した。
【0060】
得られたノンオイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が10質量%以下、
また、段落0031記載の測定条件に従って目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定したところ、粒子径3〜8μmの位置にピークが存在していた。
【0061】
得られたノンオイルの酸性液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、練り胡麻を用いているためか、焙煎胡麻粉砕物の香りが維持されておらず、劣っていた。
【0062】
[実施例6]
<ノンオイルの酸性液状調味料(ゴマドレッシング)>
キサンタンガムを除いた以外は、実施例1に準じてノンオイルの酸性液状調味料を製した。
【0063】
得られたノンオイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0〜3Pa・s、
脂質含有量が2.1質量%
また、段落0033記載の測定条件に従って、得られた酸性液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、3〜8μmの位置にピークが存在していた。
【0064】
得られたノンオイルの酸性液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、若干焙煎胡麻粉砕物の香りが減少していたが、問題ない程度に焙煎胡麻粉砕物の香りが維持されていた。
【0065】
[試験例2]
ガム質の有無による、焙煎胡麻粉砕物の焙煎香の影響を確認する試験を行った。なお、本試験は、醤油や酢酸等の焙煎胡麻粉砕物以外の香りの影響を除くため酸性液状調味料ではなく、焙煎胡麻粉砕物配合の水溶液を用いた。なお、グルタミン酸ナトリウムはキサンタンガムを均一に分散するために使用した。
具体的には、以下調製サンプル1及び2の配合表に従って各原料を攪拌して水溶液を用意した。得られた水溶液の香気成分を以下の条件に従って、固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した。
【0066】
[調製サンプル1配合表]
ホールの焙煎胡麻 35g
焙煎胡麻粉砕物 5g
グルタミン酸ナトリウム 6g
キサンタンガム 1.5g
清水 300g
――――――――――――――――――
合計 347.5g
【0067】
[調製サンプル2配合表]
ホールの焙煎胡麻 35g
焙煎胡麻粉砕物 5g
グルタミン酸ナトリウム 6g
清水 301.5g
――――――――――――――――――
合計 347.5g
【0068】
(1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<試料調製>
測定する調製サンプルを香気分析用の10mlバイアルに3.0g秤量し、セプタム付きの蓋で密封したものを試料として用いる。
(2)香気成分の測定方法
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、調製サンプル中の焙煎香の影響を確認するため、焙煎胡麻粉砕物の特徴香として知られている2−methyl butanal及び3− methyl butanalの合計ピーク面積を算出した。
<測定機器>
Agilent 6890N(Agilent Technologies社製)
<測定条件>
下記条件により自動ヘッドスペース注入装置を用いてバイアルのヘッドスペースの揮発性成分をGC−MSに導入し分析を行った。
1)固相マイクロ抽出(SPME)条件
SPMEファイバー:PDMS/Carboxen/DVB(sigma aldrich)
揮発性成分抽出装置:Combi PAL(CTC Analitics)
予備加温 :40℃、15min
攪拌速度 :300rpm(アジテータon 5s; off 2s)
揮発性成分抽出 :40℃、20min
脱着時間 :10min
2)ガスクロマトグラフ条件
GC オーブン:Agilent 6890N(Agilent Technologies)
カラム:VF−WAX;30m, i.d. 0.25mm, film 0.25μm
GC 温度条件:35℃(5min)→5℃/min→120℃→15℃/min→220℃(6min)
キャリアー:ヘリウムガス、1.0mL/min、流量一定モード
インジェクション:パルスド・スプリットレス
スプリットレス(1.5min)→ パージ50mL/min
パルス100kPa(1.6min)→ 47kPa(スタート時)
インレット:250℃
ワークステーション:MSD ChemStation Build75(Agilent Technologies)
3)質量分析条件
質量検出器:Agilent 5973N(Agilent Technologies)
スキャン質量:m/z=29.0〜350.0
イオン源 :EI(70eV)
【0069】
調製サンプル2における2−methyl butanal及び3− methyl butanalの合計ピーク面積に対し、調製サンプル1のピーク面積は、2倍以上であった。
従って、焙煎胡麻粉砕物とガム質とを併用した調製サンプル1は、ガム質を配合していない調製サンプル2に比べて、焙煎胡麻粉砕物の焙煎香がより維持されていることが理解できる。
【0070】
[実施例7]
<ノンオイルの酸性液状調味料(ゴマドレッシング)>
焙煎胡麻粉砕物を以下の大きさのものに変更し、キサンタンガムの配合量を0.1%に変更し、シイタケエキスを除いた以外は、実施例1に準じてノンオイルの酸性液状調味料を製した。
用いた焙煎胡麻粉砕物の大きさ:
焙煎胡麻粉砕物全量に対して14メッシュパスの焙煎胡麻の含有量が73%であり、32メッシュオンの焙煎胡麻粉砕物の含有量が63質量%である。
【0071】
得られたノンオイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が2.1質量%
また、段落0033記載の測定条件に従って、得られた酸性液状調味料を目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、3〜8μmの位置にピークが存在していた。
【0072】
得られたノンオイルの酸性液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、若干焙煎胡麻粉砕物の焙煎香が減少していたが、問題ない程度に焙煎胡麻粉砕物の焙煎香が維持されていた。
【0073】
[実施例8]
<低オイルの酸性液状調味料(ゴマドレッシング)>
食用植物油脂として胡麻油を5質量%注油する以外は、実施例1に準じて、低オイルの酸性液状調味料を製した。
【0074】
得られた低オイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が7質量%
また、低オイルの酸性液状調味料を油相と水相が分離されるよう遠心分離した後、上澄みの食用油脂を除去する前処理した。
得られた水相部分を再度均一に攪拌混合し、目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、粒子径3〜8μmの位置にピークが存在していた。
【0075】
得られた低オイルの酸性液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、焙煎胡麻粉砕物の香りが良好に維持されていた。
【0076】
[実施例9]
<低オイルの酸性液状調味料(ゴマドレッシング)>
焙煎ゴマ粉砕物を8質量%に変更し、シイタケエキスを0.5%に変更した以外は、実施例1に準じて、低オイルの酸性液状調味料を製した。
【0077】
得られた低オイルの酸性液状調味料は、
25℃における粘度が0.9〜5Pa・s、
脂質含有量が4質量%、
また、低オイルの酸性液状調味料を油相と水相が分離されるよう遠心分離した後、上澄みの食用油脂を除去する前処理した。
得られた水相部分を再度均一に攪拌混合し、目開き150μmの篩を通過させた後、体積基準粒度分布を測定した結果、粒子径3〜8μmの位置にピークが存在していた。
【0078】
得られた低オイルの酸性液状調味料を試験例1の評価方法及び評価基準に従って評価したところ、焙煎胡麻粉砕物の香りが良好に維持されていた。