【文献】
WU,L. et al.,"Wavelength Switchable Semiconductor Laser Based on Half-Wave Coupled Fabry-Perot and Rectangular Ring Resonators",IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,2012年 6月15日,VOL.24,NO.12,991-993
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに前記位相調整部の屈折率を調整することで、重ね合わされた前記第一の櫛状反射スペクトルの前記ピークと前記第二の櫛状反射スペクトルの前記ピークの重なり領域に、前記レーザ共振器の前記共振器モードの一つを一致させ、その一致した前記共振器モードの波長でレーザ発振するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の波長可変レーザ素子。
前記レーザ共振器内の光帰還の経路は、前記回折格子から、前記2つのアーム部のうち一方、前記リング状導波路、前記2つのアーム部のうち他方を経由して前記回折格子に帰還する経路であることを特徴とする請求項1または2に記載の波長可変レーザ素子。
前記回折格子の屈折率を変化させる第1の屈折率変化器と、前記リング共振器の屈折率を変化させる第2の屈折率変化器とを備え、前記第1の屈折率変化器および前記第2の屈折率変化器の少なくともいずれか一つを用いて、前記第一の櫛状反射スペクトルのピークの一つと前記第二の櫛状反射スペクトルのピークの一つとを波長軸上で重ね合わせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記利得部は埋込み導波路構造内に配置され、前記リング共振器フィルタはハイメサ導波路構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記利得部はリッジ導波路構造内に配置され、前記リング共振器フィルタはハイメサ導波路構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記リング共振器フィルタにおいて、前記リング状導波路と、前記2つのアーム部とは、多モード干渉型導波路部により光学的に結合していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記リング共振器フィルタにおいて、前記リング状導波路と、前記2つのアーム部とは、方向性結合型導波路部により光学的に結合していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記レーザ共振器は、前記共振器モードのモード間の間隔が、前記第一の櫛状反射スペクトルのピーク内に、前記共振器モードが2本以上含まれるように構成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記第一の櫛状反射スペクトルのピークはガウシャン型の形状であり、前記第二の櫛状反射スペクトルのピークは二重指数分布型の形状であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子。
前記第1、第2、及び第3の屈折率変化器はそれぞれ、前記回格子、前記リング共振器、及び前記位相調整部のそれぞれの近傍に設けられ、それぞれの屈折率を熱的に変化させる抵抗ヒータであることを特徴とする請求項18に記載の波長可変レーザ素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る波長可変レーザ素子は、バーニア効果を利用した波長可変レーザ素子において、第一の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い半値全幅のピークで、第一の櫛状反射スペクトルの波長間隔とは異なる波長間隔を有する第二の櫛状反射スペクトルを有し、かつ、共振器モードのモード間の間隔が、第一の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭くなるように構成されていることにより、レーザ光の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現できる。
【0014】
以下に、図面を参照して本発明に係る波長可変レーザ素子およびレーザモジュールの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中で適宜xyz座標軸を示し、これにより方向を説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る波長可変レーザ素子の模式的な斜視図である。波長可変レーザ素子100は、1.55μm帯でレーザ発振し、レーザ光を出力するように構成されている。波長可変レーザ素子100は、共通の基部B上に形成された、第1の導波路部10と第2の導波路部20とを備えている。基部Bはたとえばn型InPからなる。なお、基部Bの裏面にはn側電極30が形成されている。n側電極30は、たとえばAuGeNiを含んで構成され、基部Bとオーミック接触する。
【0016】
第1の導波路部10は、導波路部11と、半導体積層部12と、p側電極13と、Tiからなるマイクロヒータ14、15とを備えている。導波路部11は、半導体積層部12内にz方向に延伸するように形成されている。第1の導波路部10内には、回折格子装荷型利得部11aと位相調整部11bが配置されている。半導体積層部12は、半導体層が積層して構成されており、導波路部11に対してクラッド部の機能等を備える。導波路部11、半導体積層部12の構成については後に詳述する。
【0017】
p側電極13は、半導体積層部12上において、回折格子装荷型利得部11aに沿うように配置されている。なお、半導体積層部12には後述するSiN保護膜が形成されており、p側電極13はSiN保護膜に形成された開口部を介して半導体積層部12に接触している。マイクロヒータ14は、半導体積層部12のSiN保護膜上において、位相調整部11bに沿うように配置されている。第1の屈折率変化器としてのマイクロヒータ15は、半導体積層部12のSiN保護膜上において、p側電極13に沿うように配置されている。
【0018】
図2(a)は、第1の導波路部10のうち回折格子装荷型利得部11aが含まれる部分を、
図1のxy平面に平行な面に沿って切断したA−A線断面図である。
図2(a)に示すように、回折格子装荷型利得部11aは、活性コア層11aaと、活性コア層11aaの近傍かつ直上に活性コア層11aaに沿って設けられた標本化回折格子からなる回折格子層11abとを有している。
【0019】
活性コア層11aaは、交互に積層された複数の井戸層と複数のバリア層を含んで構成された多重量子井戸構造と、多重量子井戸構造を上下から下部および上部光閉じ込め層とを有しており、電流注入により発光する。この活性コア層11aaの多重量子井戸構造を構成する井戸層及びバリア層は各々組成が異なるInGaAsPからなり、活性コア層11aaからの発光波長帯は、本実施の形態1では1.55μm帯である。下部光閉じ込め層はn型InGaAsPからなる。上部光閉じ込め層はp型InGaAsPからなる。下部及び上部光閉じ込め層のバンドギャップ波長は、活性コア層11aaのバンドギャップ波長より短い波長に設定されている。回折格子層11abはp型InGaAsP層にz方向に沿って標本化回折格子が形成され、回折格子の溝はInPで埋め込まれた構成を有する。回折格子層11abにおいて回折格子の格子間隔は一定であるが標本化されており、これにより波長に対し略周期的な反射応答を示す。回折格子層11abのp型InGaAsP層のバンドギャップ波長は活性コア層11aaのバンドギャップ波長より短いことが好ましく、たとえば1.2μmである。
【0020】
回折格子装荷型利得部11aが含まれる部分の半導体積層部12は、たとえば以下のような構成を有する。半導体積層部12は、基部Bを構成するn型InP基板上に、n型InPからなる、下部クラッド層の機能を有するバッファ層で構成されたn型半導体層12aを有している。n型半導体層12a上に活性コア層11aaが積層されている。さらに活性コア層11aa上には、p型InPからなるスペーサ層12bが積層されている。スペーサ層12b上には回折格子層11abが積層している。活性コア層11aa、スペーサ層12b及び回折格子層11abは、エッチング等により、1.55μm帯の光をシングルモードで光導波するのに適した幅(例えば1.8μm)にされたストライプメサ構造とされている。ストライプメサ構造の両脇(紙面左右方向)は、p型InP埋め込み層12cおよびn型InP電流ブロッキング層12dからなる電流ブロッキング構造を有した埋込み構造となっている。さらに、回折格子層11abおよび埋込構造の上には、p型InPからなるスペーサ層12eaと、スペーサ層12ea上に積層したp型InGaAsからなり半導体積層部12の最上層を形成するコンタクト層12ebとで構成されたp型半導体層12eが積層されている。p型半導体層12eは、少なくとも活性コア層11aaの直上からその両脇の埋め込み構造の一部にわたって設けられている。半導体積層部12には半導体積層部12を覆うようにSiN保護膜16が形成されている。p側電極13はAuZnを含んで構成されており、コンタクト層12eb上に形成されて、SiN保護膜16の開口部16aを介してコンタクト層12ebとオーミック接触している。以上の構成により、n側電極30およびp側電極13から活性コア層11aaへの電流注入が可能になっている。さらに、マイクロヒータ15は、p側電極13とマイクロヒータ15とを絶縁するために半導体積層部12に設けられたSiN保護膜17上に、p側電極13に沿うように配置されている。
【0021】
一方、
図2(b)は、第1の導波路部10のうち位相調整部11bが含まれる部分を、
図1のxy平面に平行な面に沿って切断したB−B線断面図である。
図2(b)に示すように、位相調整部11bを含む第1の導波路部10の断面構造は、
図2(a)に示す構造において活性コア層11aaをInGaAsPからなる光導波層である位相調整部11bに置き換え、回折格子層11abおよびスペーサ層12bはp型InP層12fに置き換え、コンタクト層12ebを削除した構造を有している。位相調整部11bでの光損失を低減し、光を効果的に閉じ込める為に、位相調整部11bのバンドギャップ波長は活性コア層11aaのバンドギャップ波長より短いことが好ましく、たとえば1.3μm以下である。
【0022】
以上のように、第1の導波路部10は第1の導波路構造としての埋込み導波路構造を有する。
【0023】
つぎに、
図1に戻って、第2の導波路部20について説明する。第2の導波路部20は、2分岐部21と、2つのアーム部22、23と、リング状導波路24と、Tiからなるマイクロヒータ25とを備えている。
【0024】
2分岐部21は、1×2型の多モード干渉型(MMI)導波路21aを含む1×2型の分岐型導波路で構成され、2ポート側が2つのアーム部22、23のそれぞれに接続されるとともに1ポート側が第1の導波路部10側に接続されている。2分岐部21により、2つのアーム部22、23は、その一端が統合され、回折格子層11abと光学的に結合される。
【0025】
アーム部22、23は、いずれもz方向に延伸し、リング状導波路24を挟むように配置されている。アーム部22、23はリング状導波路24と近接し、いずれも同一の結合係数κでリング状導波路24と光学的に結合している。κの値はたとえば0.2である。アーム部22、23とリング状導波路24とは、リング共振器フィルタRF1を構成している。また、リング共振器フィルタRF1と2分岐部21とは、反射ミラーM1を構成している。第2の屈折率変化器としてのマイクロヒータ25はリング状であり、リング状導波路24を覆うように形成されたSiN保護膜上に配置されている。
【0026】
図2(c)は、第2の導波路部20のうちアーム部22を、
図1のxy平面に平行な面に沿って切断したC−C線断面図である。
図2(c)に示すように、アーム部22は、基部B上に、n型InPからなる下部クラッド層22a、InGaAsPからなる光導波層22b、およびp型InPからなる上部クラッド層22cがこの順で積層して構成されたハイメサ導波路構造を有している。SiN保護膜22dはアーム部22を覆うように形成されている。なお、第2の導波路部20のその他の構成要素である2分岐部21、アーム部23、リング状導波路24も同様にハイメサ導波路構造を有しており、SiN保護膜で覆われている。すなわち、第2の導波路部20は第1の導波路部10の第1の導波路構造とは異なる第2の導波路構造を有する。
【0027】
第1の導波路部10と第2の導波路部20は、互いに光学的に接続された回折格子装荷型利得部11aの回折格子層11abと反射ミラーM1とにより構成されるレーザ共振器C1を構成している。回折格子装荷型利得部11aの利得部としての活性コア層11aaと位相調整部11bとはレーザ共振器C1内に配置される。
【0028】
つぎに、回折格子層11abとリング共振器フィルタRF1との反射特性について
図3を用いて説明する。
図3において縦軸は反射率(Reflectance)を示している。回折格子層11abは、
図3(a)に凡例「SG」で曲線を示すように、略所定の波長間隔で略周期的な反射特性を有する第一の櫛状反射スペクトルを生成する。一方、リング共振器フィルタRF1は、
図3(a)に凡例「Ring」で曲線を示すように、所定の波長間隔で周期的な反射特性を有する第二の櫛状反射スペクトルを生成する。
図3(b)は
図3(a)の反射スペクトルの1550nm近傍を拡大して示した図である。
図3(b)において、凡例「Mode」は、レーザ共振器C1の共振器モードを示している。共振器モードは少なくとも
図3(a)に示す1530nm〜1570nmの波長範囲に亘って存在している。
図3(a)、(b)に示すように、第二の櫛状反射スペクトルは、第一の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分SC1の半値全幅よりも狭い半値全幅のピークSC2を有し、第一の櫛状反射スペクトルの波長間隔とは異なる波長間隔で略周期的な反射特性を有する。但し、屈折率の波長分散を考慮すると、スペクトル成分は厳密には等波長間隔になっていないことに注意が必要である。
【0029】
各櫛状反射スペクトルの特性について例示すると、第一の櫛状反射スペクトルのピーク間の波長間隔(自由スペクトル領域:FSR)は光の周波数で表すと373GHzであり、各ピークの半値全幅は光の周波数で表すと43GHzである。また、第二の櫛状反射スペクトルのピーク間の波長間隔(FSR)は光の周波数で表すと400GHzであり、各ピークの半値全幅は光の周波数で表すと25GHzである。すなわち、第二の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅(25GHz)は第一の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅(43GHz)より狭い。
【0030】
また、第二の櫛状反射スペクトルのピークは波長に対して急峻に変化する形状を有しており、波長に対する反射率の2次微分がピークより短波長側及び長波長側で正値をとる波長域がある。第二の櫛状反射スペクトルのピークは例えば二重指数分布(ラプラス分布)型の形状である。一方、第一の櫛状反射スペクトルのピークは、第二の櫛状反射スペクトルのピークに比して、波長に対して緩やかに変化する形状を有しており、波長に対する反射率の2次微分がピークに対して短波長側及び長波長側で負値をとる波長域がある。第一の櫛状反射スペクトルのピークは例えばガウシャン型の形状である。
【0031】
波長可変レーザ素子100において、レーザ発振を実現するために、第一の櫛状反射スペクトルのピークの一つと第二の櫛状反射スペクトルのピークの一つとを波長軸上で重ね合わせ可能に構成されている。
図4は、第一の櫛状反射スペクトル、第二の櫛状反射スペクトルおよびその重なりを示す図である。凡例「Overlap」で示す曲線がスペクトルの重なりを示す。
図4に示す例では、波長1550nmにて重なりがもっとも大きくなる。
【0032】
なお、このような重ね合わせは、マイクロヒータ15およびマイクロヒータ25の少なくともいずれか一つを用いて、マイクロヒータ15により回折格子層11abを加熱して熱光学効果によりその屈折率を変化させて第一の櫛状反射スペクトルを波長軸上で全体的に移動させる、および、マイクロヒータ25によりリング状導波路24を加熱してその屈折率を変化させて第二の櫛状反射スペクトルを波長軸上で全体的に移動させる、の少なくともいずれか一つを行うことにより、実現することができる。
【0033】
一方、波長可変レーザ素子100において、
図3(b)にその一部を示すように、レーザ共振器C1による共振器モードが存在する。波長可変レーザ素子100においては、共振器モードの間隔(縦モード間隔)は25GHz以下となるようにレーザ共振器C1の共振器長が設定されている。この設定の場合、レーザ共振器C1の共振器長は1800μm以上となり、発振するレーザ光の狭線幅化が期待できる。
【0034】
波長可変レーザ素子100は、n側電極30およびp側電極13から活性コア層11aaへの電流を注入し、活性コア層11aaを発光させると、第一の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分のピーク、第二の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分のピーク、およびレーザ共振器の共振器モードの一つが一致した波長、すなわち1550nmでレーザ発振し、レーザ光L1(
図1参照)を出力するように構成されている。なお、レーザ共振器C1の共振器モードの波長は、マイクロヒータ14を用いて位相調整部11bを加熱してその屈折率を変化させて、共振器モードの波長を波長軸上で全体的に移動させることにより微調整することができる。すなわち、位相調整部11bは、レーザ共振器C1の光路長を能動的に制御するための部分である。
【0035】
ここで、上述したように、リング共振器フィルタRF1による第二の櫛状反射スペクトルは、回折格子層11abによる第一の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い半値全幅のピークを有する。これにより、半値全幅の広い第一の櫛状反射スペクトルのピークの中に、これよりも半値全幅の狭い第2の櫛状反射スペクトルのピークを存在させるように重ね合わせることとなるため、レーザ発振波長の制御が容易となる。
【0036】
すなわち、2つのリング共振器を用いて共振器を構成し、鋭い形状のピーク同士で重ね合わせを行う場合と比較して、第二の櫛状反射スペクトルのピークのみが鋭いため、これを、第二の櫛状反射スペクトルのピークよりも鋭くない形状の第一の櫛状反射スペクトルのピーク内に位置するように重ね合わせていくのは容易であり、かつ波長がずれた場合でもその変化は緩やかであり、レーザ発振の波長も安定する。
【0037】
さらに、上述したように、波長可変レーザ素子100は、レーザ共振器C1の共振器モード間の間隔は25GHz以下であり、第一の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分の半値全幅(43GHz)よりも狭くなるように構成されている。
レーザ光の狭線幅化のために共振器長を長くすると、共振器モード間の間隔が狭くなっていくが、特に、第一の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅内に複数の共振器モードが存在するほどに共振器モードのモード間の間隔が狭くなると、通常の場合はレーザ発振させる共振器モードの選択が困難となってしまう。
しかし、波長可変レーザ素子100では、このように共振器モード間の間隔が狭い場合であっても、第一の櫛状反射スペクトルの半値全幅の広いピークの中に、これよりも半値全幅の狭い第二の櫛状反射スペクトルのピークを存在させることとなるため、共振器モードを選択する制御が容易となる。従って、波長可変レーザ素子100では、レーザ共振器C1は、共振器モードのモード間の間隔が、第一の櫛状反射スペクトルのピーク内に共振器モードが2本以上含まれるような長い共振器長に構成されていても、共振器モードを選択する制御が容易となる。
さらに、
図3に示すように、第二の櫛状反射スペクトルのピークの反射率が、第一の櫛状反射スペクトルのピークの反射率よりも高いと、反射ミラーM1により反射される光の利得が大きくなり、反射ミラーM1による第二の櫛状反射スペクトルのピーク位置で、共振器モードのうち一つだけを安定的に選択することができる。
さらに、第二の櫛状反射スペクトルのピークが二重指数分布型の形状であれば、第一の櫛状反射スペクトルのピークがガウシャン型の形状の場合に、第一の櫛状反射スペクトルのピークに対するピークの先鋭度を大きくすることができる。これにより、第一の櫛状反射スペクトルのピークの高さよりも第二の櫛状反射スペクトルのピークが突出して高くなり、第二の櫛状反射スペクトルのピークの反射率を、第一の櫛状反射スペクトルのピークの反射率よりも容易に高くできる。したがって、安定した単一モード発振をより容易に実現できる。
【0038】
また、波長可変レーザ素子100では、その構成により、
図5に光路OPで示すように、レーザ共振器C1内の光帰還は、回折格子層11abから、2分岐部21、リング共振器フィルタRF1のアーム部22、23のうちの一方、リング状導波路24、アーム部22、23のうちの他方、2分岐部21を順に経由して回折格子層11abに帰還する経路で行われ、かつ1回の光帰還中にリング状導波路24内を周回する。なお、光路OPの矢頭は光の進行方向を示しており、光路OPは時計周りの光路と反時計周りの光路の両方を表している。すなわち、光帰還の光路として、時計周りの光路と反時計周りの光路の2つが存在する。これにより、光帰還長が長くなるので、実効的な共振器長を長くでき、レーザ光L1の狭線幅化を実現できる。
【0039】
つぎに、
図3、4、6を用いて、波長可変レーザ素子100におけるレーザ発振波長の選択方法を説明する。波長可変レーザ素子100では、バーニア効果を利用してレーザ発振波長の選択を行っている。
【0040】
図3、4にも示すように、第一の櫛状反射スペクトルと第二の櫛状反射スペクトルとのFSRは、わずかに異なるように設計されている。なお、ピークがより鋭い第二の櫛状反射スペクトルのFSRの方を大きくすることで、スペクトルの重なりのピークが最も高い1550nmに隣接する重なり(例えば、1547nm付近の重なり)のピークの高さが相対的に小さくなる。その結果、スペクトルの重なりのピークが最も高い波長に隣接する重なりのピークの波長でのレーザ発振が抑制されることとなるので、サイドモード抑圧比を高くできる。
【0041】
波長可変レーザ素子100における可変波長範囲は、バーニア効果により、FSRの最小公倍数で決定される。第一の櫛状反射スペクトルのピークの一つと第二の櫛状反射スペクトルのピークの一つが重ね合わせられ、そのピークが一致した波長で反射率が最大となり、レーザ発振が起こる。つまり、回折格子層11abとリング共振器フィルタRF1のバーニア効果により大まかなレーザ発振波長が決定される(スーパーモード)。より精密には、レーザ発振波長は、レーザ共振器C1内において、回折格子層11abから、2分岐部21、リング共振器フィルタRF1のアーム部22、23のうちの一方、リング状導波路24、アーム部22、23のうちの他方、2分岐部21を順に経由して回折格子層11abに帰還する経路(共振器長)で定義される共振器モードの波長とスーパーモードとの重なりで決定される。すなわち、重ね合わされた第一の櫛状反射スペクトルのピークと第二の櫛状反射スペクトルのピークの重なり領域に、レーザ共振器C1の共振器モードの一つを一致させ、その一致した共振器モードの波長でレーザ発振することとなる。したがって、波長可変レーザ素子100では、回折格子層11abに対するマイクロヒータ15とリング共振器フィルタRF1に対するマイクロヒータ25とにより第一の櫛状反射スペクトルと第二の櫛状反射スペクトルとをそれぞれチューニングすることで粗調、位相調整部11bに対するマイクロヒータ14により共振器長をチューニングすることで微調を行う波長可変動作が実現される。
【0042】
図3に示す状態(第1の状態とする)では、第一の櫛状反射スペクトルと第二の櫛状反射スペクトルとは波長1550nmで重なりが最も大きい(スーパーモード)。第1の状態ではレーザ発振波長は1550nm付近に粗調されている状態である。第1の状態で位相調整部11bをチューニングすることで共振器モードを微調することで、波長1550nmでのレーザ発振を得ることができる。
【0043】
つぎに、レーザ発振波長を変更する場合は、リング共振器フィルタRF1のチューニングを固定した状態で、回折格子層11abのみマイクロヒータ15で加熱する。すると、熱光学効果により回折格子層11abの屈折率が上昇し、回折格子層11abの反射スペクトル(第一の櫛状反射スペクトル)は、
図6に矢印で示すように全体的に長波側にシフトする。その結果、1550nm付近のリング共振器フィルタRF1の反射スペクトル(第二の櫛状反射スペクトル)のピークとの重なりが解かれ、長波側に存在する別のピーク(1556nm付近)に重なり、
図6に示す第2の状態となる。これにより、別のスーパーモードへの遷移が実現する。さらに、位相調整部11bをチューニングして共振器モードを微調することで、1556nm付近でのレーザ発振を実現できる。なお、レーザ発振波長を短波側に変更する際は、回折格子層11abのチューニングを固定し、リング共振器フィルタRF1のみマイクロヒータ25で加熱して、リング共振器フィルタRF1の櫛状反射スペクトルを全体的に長波側にシフトさせればよい。
【0044】
本実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100では、波長可変動作を実現するために、マイクロヒータによる熱光学効果を利用しているが、波長可変動作を実現するために電流注入によるキャリアプラズマ効果も利用可能にするようにしてもよい。この場合は電流注入により屈折率が下がるため、櫛状反射スペクトルは全体的に短波側にシフトし、それまでスーパーモードが形成されていた波長より短波側に存在する別のスペクトル成分において重なりが生じ、新たなスーパーモードを形成することが可能である。
【0045】
なお、第1の状態で、回折格子層11abとリング共振器フィルタRF1とで生成される櫛状反射スペクトルのピークが一致した波長で反射率が最大となりレーザ発振が起こるのは、
図6に示すとおり、半値全幅の広い第一の櫛状反射スペクトルをシフトさせて、そのピークの1つを半値全幅の狭い第一の櫛状反射スペクトルのピークの1つに一致させたときである。長波側にチューニングする際、リング共振器フィルタRF1によるピークの半値全幅が狭いので、これに対して回折格子層11abによる半値全幅の広いピークをチューニングしながらシフトさせて一致させたスーパーモードへの遷移を実現するのは容易である。
【0046】
同様の理由により、短波側にチューニングする際は、回折格子層11abのチューニングを固定し、リング共振器フィルタRF1のみマイクロヒータ25で加熱して、リング共振器フィルタRF1の櫛状反射スペクトルを全体的に長波側にシフトさせる場合も、回折格子層11abによるピークの半値全幅が広いので、これに対して半値全幅の狭いリング共振器フィルタRF1のピークをチューニングしながらシフトさせて一致させたスーパーモードへの遷移を実現するのは容易である。
【0047】
また、本実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100では、スーパーモードの遷移が行われた後、位相調整部11bをチューニングして共振器モードの微調整を行っている。ここで、共振器モードの間の間隔が狭く、回折格子層11abの櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い場合は、回折格子層11abのピークの中に複数本の共振器モードが存在することも有りうる。しかし、波長可変レーザ素子100では、リング共振器フィルタRF1の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅の方が、回折格子層11abの櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い。そのため、リング共振器フィルタRF1の櫛状反射スペクトルのピークに、複数本の共振器モードが競合する可能性は低く、一本のみの共振器モードをリング共振器フィルタRF1のピークに一致するように、位相調整部11bをチューニングして共振器モードの微調整を行うのは容易である。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100によれば、レーザ光の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現できる。
【0049】
本実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100の製造方法の一例について
図7A、7B、7C説明する。まず基部Bを構成するn型InP基板上に、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法を用いて、n型半導体層12a(下部クラッド層22a)、活性コア層11aa、スペーサ層12b、回折格子層11abとなるp型InGaAsP層、スペーサ層12ea(上部クラッド層22c)の一部となるp型InP層を順次堆積する。
【0050】
つづいて、全面にSiN膜を堆積した後、回折格子装荷型利得部11aを形成する位置のSiN膜に、回折格子のパターンニングを施す。そして、SiN膜をマスクとしてエッチングし、p型InGaAsP層に回折格子となる格子溝を形成するとともに、回折格子装荷型利得部11aを形成する位置以外の位置のp型InGaAsP層を全て取り除く。つづいて、SiN膜のマスクを除去した後に、全面にp型InP層を再成長する。つづいて、全面にSiN膜を堆積した後、回折格子装荷型利得部11aよりもやや幅広の形状のパターンになるようにSiN膜にパターンニングを施す。そして、SiN膜をマスクとしてエッチングして、n型半導体層12a(下部クラッド層22a)を露出させる。つづいて、SiN膜のマスクをそのまま選択成長マスクとして、MOCVD法により、位相調整部11bおよび第2の導波路部20における光導波層となる光導波層を成長する。つづいて、SiN膜のマスクを除去した後、新たにSiN膜を堆積し、第1の導波路部10における導波路部11および第2の導波路部20における光導波層に対応するパターンになるようにパターンニングを施す。そして、このSiN膜をマスクとしてエッチングして、第1の導波路部10および第2の導波路部20におけるメサ構造を形成するとともに、n型半導体層12a(下部クラッド層22a)を露出させる。この時、2分岐部21、アーム部22、23、リング状導波路24に相当する領域は、それらを含む広い領域の形状でエッチングを行う。
【0051】
つづいて、直前の工程で用いたSiN膜マスクを選択成長マスクとして、MOCVD法を用いて、露出したn型半導体層12a(下部クラッド層22a)上に、p型InP埋め込み層12c、n型InP電流ブロッキング層12dを順次堆積する(
図7A参照。
図7A(a)は、
図1のxy平面に平行な面に沿って切断したA−A線断面図(利得部)、
図7A(b)は、B−B線断面図(位相調整部)、
図7A(c)は、C−C線断面図(アーム部の光導波路)をそれぞれ示す。以下の
図7B、
図7Cにおいても同じである。)。つづいて、SiN膜のマスクを除去した後、MOCVD法を用いて、全面に、スペーサ層12ea(上部クラッド層22c)の残りの部分となるp型InP層、コンタクト層12ebを順次堆積する(
図7A参照)。つづいて、位相調整部とアーム部の光導波路のコンタクト層12ebを除去する工程を行う(
図7B参照)。つづいて、全面にSiN膜を堆積した後、素子分離用のトレンチ溝に対応するパターンならびに2分岐部21、アーム部22、23、リング状導波路24に相当する導波路のパターンニングを施す。そして、このSiN膜をマスクとしてエッチングを行い、トレンチ構造および第2の導波路部20におけるハイメサ導波路を形成する(
図7B参照)。このエッチングでは、たとえば基部Bに到る深さまで行う。つづいて、SiN膜マスクを除去した後、全面に再びSiN膜を堆積し(
図7C参照)、回折格子装荷型利得部11aに対応する部分に開口部を形成して、SiN膜を保護膜とし全面にAuZnを含む導電膜を堆積した後、導電膜をパターンニングすることによってp側電極13を形成する(
図7C参照)。一方、基板の裏面にはAuGeNiを含むn側電極30を形成する。さらに、SiN保護膜17を形成した後、たとえばTiからなる屈折率変化用のマイクロヒータ14、15、25を形成する。最後に、基板を波長可変レーザ素子100が複数並んだバー状に劈開し、第1の導波路部10の回折格子装荷型利得部11a側端面、アーム部22、23のスルーポートがある端面に反射防止膜をコートしたのち、各波長可変レーザ素子100ごとに素子分離することにより、波長可変レーザ素子100が完成する。
【0052】
なお、上記実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100では、アーム部22、23はリング状導波路24と近接することでリング状導波路24と光学的に結合しているが、
図8に示すようにアーム部22、23とリング状導波路24とを導波路部26、27により光学的に結合してもよい。
【0053】
図9は、導波路部の構造を説明する図である。
図9(a)は、
図8のA−A線断面の一部を示す図である。上述したように、アーム部22は、基部B上に、n型InPからなる下部クラッド層22a、InGaAsPからなる光導波層22b、およびp型InPからなる上部クラッド層22cがこの順で積層して構成されたハイメサ導波路構造を有している。同様に、アーム部23は、基部B上に、n型InPからなる下部クラッド層23a、InGaAsPからなる光導波層23b、およびp型InPからなる上部クラッド層23cがこの順で積層して構成されたハイメサ導波路構造を有している。さらに、導波路部26は、基部B上に、n型InPからなる下部クラッド層26a、InGaAsPからなる光導波層26b、およびp型InPからなる上部クラッド層26cがこの順で積層して構成されたハイメサ導波路構造の多モード干渉型(MMI)導波路である。なお、導波路部27も導波路部26と同じ構造のハイメサ導波路構造のMMI導波路である。
【0054】
このように、アーム部22、23とリング状導波路24とを導波路部26、27により光学的に結合することにより、アーム部22、23とリング状導波路24との光学結合をより容易に実現できるとともに、結合係数κの調整をより容易に行うことができる。
【0055】
アーム部22、23とリング状導波路24とを光学的に結合する導波路部はMMI導波路に限らず、たとえば
図9(b)に示すような方向性結合型の導波路部26Aでもよい。導波路部26Aは、基部B上に、n型InPからなる下部クラッド層26Aa、InGaAsPからなる光導波層26Ab、およびp型InPからなる上部クラッド層26Acがこの順で積層して構成されたハイメサ導波路構造を有するが、上部クラッド層26Acが導波路部26における上部クラッド層26cよりも薄く形成されているため、方向性結合型導波路として機能する。
【0056】
なお、方向性結合型導波路とMMI導波路とを比較すると、アーム部に沿った導波路の幅の変化に対するアーム部とリング状導波路との結合係数の変化は、方向性結合型導波路の場合の方がMMI導波路の場合よりも小さい。したがって、MMI導波路で導波路部を形成した場合、アーム部に沿った導波路の幅の変更により結合係数をより大きく変化させることができる。
【0057】
また、上記実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100では、第1の導波路部10は第1の導波路構造としての埋込み導波路構造を有するが、第1の導波路部は第1の導波路構造としてのリッジ導波路構造を有していてもよい。
【0058】
図10は、リッジ導波路構造を有する第1の導波路部の例を説明する図である。
図10は、第1の導波路部10Aにおける、位相調整部11Abが含まれる部分を、
図1のxy平面に沿って切断した断面図である。第1の導波路部10Aは、位相調整部11Abが含まれる部分において、p型InPからなる下部クラッド層12Aaと、InGaAsPからなる光導波層である位相調整部11Abと、n型InPからなる上部リッジクラッド層12Abとが順次積層した構造を有する。このように、第1の導波路部はリッジ導波路構造を有していてもよい。
【0059】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2に係る波長可変レーザ素子の模式的な斜視図である。
図11に示すように、本実施の形態2に係る波長可変レーザ素子100Aは、
図1に示す実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100と、基部B上に形成された半導体増幅器(SOA)101とを備えている。SOA101は、第1の導波路部と同様の材料、構造からなる活性コア層を備える埋込み導波路構造を有する。ただし、回折格子層は設けられていない。
【0060】
波長可変レーザ素子100とSOA101とは、不図示の空間結合光学系で光学的に結合している。波長可変レーザ素子100から出力されたレーザ光L1は、SOA101に入力される。SOA101はレーザ光L1を光増幅してレーザ光L2として出力する。本実施の形態2に係る波長可変レーザ素子100Aによれば、実施の形態1に係る波長可変レーザ素子100と同様に、レーザ光の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現し、さらにSOA101を備えているので、レーザ光をより高いパワーで出力できる。
【0061】
なお、本実施の形態2に係る波長可変レーザ素子100Aでは、波長可変レーザ素子100とSOA101とは不図示の空間結合光学系で光学的に結合しているが、波長可変レーザ素子100とSOA101とが共通の基部B上にモノリシックに形成されていてもよい。
【0062】
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3について説明する。本実施の形態3では、第2の導波路部がシリコン(Si)フォトニクス導波路からなるなど点で実施の形態1、2と異なる。
【0063】
図12は、実施の形態3に係る波長可変レーザ素子の模式図である。
図12(a)は斜視図であり、
図12(b)は後に説明する断面図である。波長可変レーザ素子200は、1.55μm帯でレーザ発振し、レーザ光を出力するように構成されている。波長可変レーザ素子200は、第1の導波路部210と第2の導波路部220とを備えている。
【0064】
第1の導波路部210は、導波路部211と、半導体積層部212と、n側電極213と、マイクロヒータ215とを備えている。導波路部211は、半導体積層部212内にz方向に延伸するように形成されている。第1の導波路部210内には、利得部211aとDBR型の回折格子層211bが配置されている。半導体積層部212は、半導体層が積層して構成されており、導波路部211に対してクラッド部の機能等を備える。利得部211aは、実施の形態1における活性コア層11aaと同一の材料からなる多重量子井戸構造と光閉じ込め層とを有する。また、回折格子層211bは、実施の形態1における回折格子層11abと同一の材料からなる標本化回折格子で構成されている。また、半導体積層部212は、利得部211aが含まれる部分においては、実施の形態1における半導体積層部12の回折格子装荷型利得部11aが含まれる部分と同様の材料、構造からなるが、回折格子層11abがp型InP層に置き換えられる点と、y方向において利得部211aを挟んでp型半導体層とn型半導体層との位置が逆転した積層構造を有する点とで異なる。また、半導体積層部212は、回折格子層211bが含まれる部分においては、実施の形態1における半導体積層部12の位相調整部11bが含まれる部分と同様の材料、構造からなるが、y方向において位相調整部11bを挟んでp型半導体層とn型半導体層との位置が逆転した積層構造を有する点とで異なる。第1の導波路部210は第1の導波路構造としての埋込み導波路構造を有する。
【0065】
n側電極213は、半導体積層部212上において、利得部211aに沿うように配置されている。なお、半導体積層部212にはSiN保護膜が形成されており、n側電極213はSiN保護膜に形成された開口部を介して半導体積層部212に接触している。第1の屈折率変化器としてのマイクロヒータ215は、半導体積層部212のSiN保護膜上において、回折格子層211bに沿うように配置されている。また、半導体積層部212のn側電極213が形成された面と反対側の面には、不図示のp側電極が形成されている。
【0066】
つぎに、第2の導波路部220について説明する。第2の導波路部220は、SOI(Silicon On Insulator)基板Sで構成されている。第2の導波路部220は、2分岐部221と、アーム部222、223と、リング状導波路224と、マイクロヒータ225、229と、位相調整部228と、SiO
2からなるオーバークラッド層230とを備えている。
【0067】
2分岐部221は、1×2型のMMI導波路221aを含む1×2型の分岐型導波路で構成され、2ポート側が2つのアーム部222、223のそれぞれに接続されるとともに1ポート側が位相調整部228を介して第1の導波路部210側に接続されている。2分岐部221により、2つのアーム部222、223は、その一端が統合され、回折格子層211bと光学的に結合される。位相調整部228の第1の導波路部210側には、第1の導波路部210に向かって幅が細くなるテーパ部が形成されている。テーパ部の外周には、SiO
2より屈折率の高い、たとえばSiNからなるオーバークラッド層が形成されており、スポットサイズ変換器構造となっている。
【0068】
アーム部222、223は、いずれもz方向に延伸し、リング状導波路224を挟むように配置されている。アーム部222、223はリング状導波路224と近接し、いずれも同一の結合係数κでリング状導波路224と光学的に結合している。アーム部222、223とリング状導波路224とは、リング共振器フィルタRF2を構成している。また、リング共振器フィルタRF2と2分岐部221とは、反射ミラーM2を構成している。第2の屈折率変化器としてのマイクロヒータ225はリング状であり、オーバークラッド層230上でリング状導波路224の直上に配置されている。また、マイクロヒータ229は、オーバークラッド層230上に位相調整部228に沿って配置されている。
【0069】
図12(b)は、第2の導波路部220のうちアーム部222を、
図12(a)のxy平面に平行な平面に沿って切断した断面図である。
図12(b)に示すように、アーム部222は、SOI基板SのSiの支持基板からなる支持層222aaと、支持層222aa上に位置するSiO
2からなるBOX(Buried OXide)層222abとで構成された下層222aと、BOX層222abに位置するSiからなるデバイス層222bと、からなるハイメサ導波路構造を有する。デバイス層222bが光導波層として機能し、ハイメサ導波路構造はオーバークラッド層230で覆われている。なお、第2の導波路部220のその他の構成要素である2分岐部221、アーム部223、リング状導波路224、位相調整部228も同様にハイメサ導波路構造を有している。すなわち、第2の導波路部220は第1の導波路部210の第1の導波路構造とは異なる第2の導波路構造を有する。
【0070】
また、第1の導波路部210は、ゲインチップとして公知の方法で別途作製され、第2の導波路部220を構成するSOI基板Sにおいてデバイス層とBOX層と支持基板の一部とが除去されることにより形成された凹部CCに実装されている。このとき、第1の導波路部210の利得部211aと、第2の導波路部220の位相調整部228とはバットジョイント接続されている。
【0071】
第1の導波路部210と第2の導波路部220は、互いに光学的に接続された回折格子層211bと反射ミラーM2とにより構成されるレーザ共振器C2を構成している。利得部211aと位相調整部228とはレーザ共振器C2内に配置される。
【0072】
この波長可変レーザ素子200においても、実施の形態1、2と同様に、回折格子層211bは、略所定の波長間隔で略周期的な反射特性を有する第一の櫛状反射スペクトルを生成する。また、リング共振器フィルタRF2は、第一の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分の半値全幅よりも狭い半値全幅のピークを有し、第一の櫛状反射スペクトルの波長間隔とは異なる波長間隔で略周期的な反射特性を有する第二の櫛状反射スペクトルを生成する。そして、第一の櫛状反射スペクトルのピーク、第二の櫛状反射スペクトルのピーク、およびレーザ共振器C2の共振器モードの一つが一致した波長でレーザ発振する。また、レーザ共振器C2の共振器モードのモード間の間隔が、第1の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分の半値全幅よりも狭い。さらには、レーザ共振器C2内の光帰還は、回折格子層211bから、2分岐部221、リング共振器フィルタRF2のアーム部222、223のうちの一方、リング状導波路224、アーム部222、223のうちの他方、2分岐部221を順に経由して回折格子層211bに帰還する経路で行われ、かつ1回の光帰還中にリング状導波路224内を周回する。これにより、本実施の形態3に係る波長可変レーザ素子200によれば、光帰還長が長くなるので、実効的なレーザ光の狭線幅化が可能となる。また、実施の形態1、2と同様に、安定した単一モード発振を実現できる。
【0073】
また、波長可変レーザ素子200においても、レーザ発振波長については、実施の形態1、2の場合と同様に、回折格子層211bに対するマイクロヒータ215とリング共振器フィルタRF2に対するマイクロヒータ225とにより第一の櫛状反射スペクトルと第二の櫛状反射スペクトルとをそれぞれチューニングすることで粗調、位相調整部228に対するマイクロヒータ229により共振器長をチューニングすることで微調を行うことにより、波長可変動作が実現される。
【0074】
本実施の形態3に係る波長可変レーザ素子200によれば、実施の形態1、2と同様に、レーザ光の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現できる。さらに、波長可変レーザ素子200は、第2の導波路部220がSiフォトニクス導波路で構成されている。Siフォトニクス導波路は、導波路閉じ込めが強いため曲げに強い。したがって、直径の小さなリング状導波路224を容易に実現できる。これにより、FSRの大きいリング状導波路224が実現でき、リング共振器フィルタRF2の設計自由度が向上するということを意味する。これにより、波長可変レーザ素子200によれば、フットプリントが小さくコンパクトであり、且つサイドモード抑圧比の高いレーザ光を出力することができる。
【0075】
本実施の形態3に係る波長可変レーザ素子200の製造方法の一例について説明する。
まず、SOI基板上に、フォトリソグラフィを用いて第2の導波路部220におけるSi導波路パターンを転写する。具体的には、例えばHBrガスを用いてデバイス層およびBOX層をエッチングし、チャネル導波路構造を得る。ここで、エッチングにより生じた導波路の側面粗さを低減する目的で、水蒸気を用いない熱酸化を行っても良い。つづいて、全面にSiN層を堆積し、フォトリソグラフィとエッチングとにより、上述したスポットサイズ変換構造の部分にSiNからなるオーバークラッド層を形成する。さらに、オーバークラッド層230となるSiO
2層を全面に堆積する。
【0076】
つづいて、リング状導波路224上と位相調整部228上に、たとえばTiからなるマイクロヒータ225、229を形成する。つづいて、別途作製したゲインチップである第1の導波路部210が実装される凹部CCに相当する部分のオーバークラッド層230と支持基板の一部をエッチングにより除去し、凹部CCを形成する。この部分に第1の導波路部210をフリップチップボンディングにより実装する。これにより波長可変レーザ素子200が完成する。
【0077】
ところで、ゲインチップである第1の導波路部210は、上述したものに限定されない。たとえば、InPまたはGaAs基板上に量子井戸構造または量子ドット構造を有するものであってもよい。量子井戸構造を構成する化合物半導体材料としては、InGaAs、InGaAsN、AlInGaAs、InGaAsなどのIII−V族化合物半導体を使用できる。また、量子ドット構造を構成する化合物半導体材料としては、InAs、InGaA、またはその他のIII−V族化合物半導体を使用できる。
【0078】
(実施の形態4)
つぎに、実施の形態4について説明する。本実施の形態4でも、実施の形態3と同様に第2の導波路部がシリコンSiフォトニクス導波路からなるが、第2の導波路部に回折格子が設けられる点と、第1の導波路部がU字形状の導波路を備える点などで実施の形態3と異なる。
【0079】
図13は、実施の形態4に係る波長可変レーザ素子の模式な斜視図である。波長可変レーザ素子300は、1.55μm帯でレーザ発振し、レーザ光を出力するように構成されている。波長可変レーザ素子300は、第1の導波路部310と第2の導波路部320とを備えている。
【0080】
第1の導波路部310は、導波路部311と、半導体積層部312と、n側電極313とを備えている。導波路部311は、半導体積層部312内においてその一部がz方向に延伸するようなU字形状に形成されている。第1の導波路部310内には、利得部311aと光導波層311bとが配置されている。半導体積層部312は、半導体層が積層して構成されており、導波路部311に対してクラッド部の機能等を備える。利得部311aは、z方向に延伸しており、実施の形態1における活性コア層11aaと同一の材料からなる多重量子井戸構造を有する。また、光導波層311bは、実施の形態1における位相調整部11bと同一の材料からなり、利得部311aとともにU字形状を形成している。また、半導体積層部312は、利得部311aが含まれる部分においては、実施の形態1における半導体積層部12の回折格子装荷型利得部11aが含まれる部分と同様の材料、構造からなるが、回折格子層11abがp型InP層に置き換えられる点と、y方向において利得部311aを挟んでp型半導体層とn型半導体層との位置が逆転した積層構造を有する点とで異なる。また、半導体積層部312は、光導波層311bが含まれる部分においては、実施の形態1における半導体積層部12の位相調整部11bが含まれる部分と同様の材料、構造からなるが、y方向において利得部311aを挟んでp型半導体層とn型半導体層との位置が逆転した積層構造を有する点とで異なる。第1の導波路部310は第1の導波路構造としての埋込み導波路構造を有する。
【0081】
n側電極313は、半導体積層部312上において、利得部311aに沿うように配置されている。なお、半導体積層部312には半導体積層部312を覆うようにSiN保護膜が形成されており、n側電極313はSiN保護膜に形成された開口部を介して半導体積層部312に接触している。また、半導体積層部312のn側電極313が形成された面と反対側の面には、不図示のp側電極が形成されている。
【0082】
つぎに、第2の導波路部320について説明する。第2の導波路部320は、SOI基板で構成されている。第2の導波路部320は、2分岐部321と、アーム部322、323と、リング状導波路324と、マイクロヒータ325、329、333と、位相調整部328と、SiO
2からなるオーバークラッド層330と、導波路部331と、回折格子部332と、を備えている。
【0083】
2分岐部321は、1×2型のMMI導波路321aを含む1×2型の分岐型導波路で構成され、2ポート側が2つのアーム部322、323のそれぞれに接続されるとともに1ポート側が第1の導波路部310の利得部311a側に接続されている。2分岐部321により、2つのアーム部322、323は、その一端が統合され、回折格子部332と光学的に結合される。2分岐部321の1ポート側には、第1の導波路部310に向かって幅が細くなるテーパ部が形成されている。テーパ部の外周には、SiO
2より屈折率の高い、たとえばSiNからなるオーバークラッド層が形成されており、スポットサイズ変換器構造となっている。
【0084】
アーム部322、323は、いずれもz方向に延伸し、リング状導波路324を挟むように配置されている。アーム部322、323はリング状導波路324と近接し、いずれも同一の結合係数κでリング状導波路324と光学的に結合している。アーム部322、323とリング状導波路324とは、リング共振器フィルタRF3を構成している。また、リング共振器フィルタRF3と2分岐部321とは、反射ミラーM3を構成している。第2の屈折率変化器としてのマイクロヒータ325はリング状であり、オーバークラッド層330上のリング状導波路324の直上に配置されている。
【0085】
導波路部331は、z方向に延伸する導波路であり、一端が第1の導波路部310の光導波層311b側に接続されており、他の一端が回折格子部332に接続されている。また、導波路部331の途中には位相調整部328が設けられている。マイクロヒータ329は、オーバークラッド層330上において位相調整部328に沿うように配置されている。第1の屈折率変化器としてのマイクロヒータ333は、オーバークラッド層330上において回折格子部332に沿うように配置されている。
【0086】
なお、第2の導波路部320の構成要素である2分岐部321、アーム部322、323、リング状導波路324、位相調整部328、導波路部331、回折格子部332は、
図12(b)に示すような実施の形態3と同様のハイメサ導波路構造を有している。すなわち、第2の導波路部320は第1の導波路部310の第1の導波路構造とは異なる第2の導波路構造を有する。なお、回折格子部332は、光導波層として機能するデバイス層にz方向に沿って標本化回折格子が形成され、回折格子の溝はオーバークラッド層330のSiO
2で埋め込まれた構成を有する。
【0087】
また、第1の導波路部310は、ゲインチップとして公知の方法で別途作製され、第2の導波路部320を構成するSOI基板においてデバイス層とBOX層と支持基板の一部とが除去されることにより形成された凹部CCに実装されている。このとき、第1の導波路部310の利得部311aと第2の導波路部320の2分岐部321の1ポート側とがバットジョイント接続され、かつ第1の導波路部310の光導波層311bと第2の導波路部320の導波路部331とがバットジョイント接続されている。なお、実施の形態3の場合と同様に、第2の導波路部320の2分岐部321の1ポート側と第2の導波路部320の導波路部331とは、第1の導波路部310に向かって幅が細くなるテーパ部とされ、その外周にたとえばSiNからなるオーバークラッド層が形成され、スポットサイズ変換器構造となっていることが好ましい。
【0088】
第1の導波路部310と第2の導波路部320は、互いに光学的に接続された回折格子部332と反射ミラーM3とにより構成されるレーザ共振器C3を構成している。利得部311aと位相調整部328とはレーザ共振器C3内に配置される。
【0089】
この波長可変レーザ素子300においても、実施の形態1〜3と同様に、回折格子部332は、略所定の波長間隔で略周期的な反射特性を有する第一の櫛状反射スペクトルを生成する。また、リング共振器フィルタRF3は、第一の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い半値全幅のピークを有し、第一の櫛状反射スペクトルの波長間隔とは異なる波長間隔で略周期的な反射特性を有する第二の櫛状反射スペクトルを生成する。そして、第一の櫛状反射スペクトルのピーク、第二の櫛状反射スペクトルのピーク、およびレーザ共振器C3の共振器モードの一つが一致した波長でレーザ発振する。また、レーザ共振器C3の共振器モードのモード間の間隔が、第1の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分の半値全幅よりも狭い。さらには、レーザ共振器C3内の光帰還は、回折格子部332から、2分岐部321、リング共振器フィルタRF3のアーム部322、323のうちの一方、リング状導波路324、アーム部322、323のうちの他方、2分岐部321を順に経由して回折格子部332に帰還する経路で行われ、かつ1回の光帰還中にリング状導波路324内を周回する。これにより、実施の形態1〜3と同様に、本実施の形態4に係る波長可変レーザ素子300によれば、レーザ光の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現できる。
【0090】
また、波長可変レーザ素子300においても、レーザ発振波長については、実施の形態1、2の場合と同様に、回折格子部332に対するマイクロヒータ333とリング共振器フィルタRF3に対するマイクロヒータ325とにより第一の櫛状反射スペクトルと第二の櫛状反射スペクトルとをそれぞれチューニングすることで粗調、位相調整部328に対するマイクロヒータ329により共振器長をチューニングすることで微調を行うことにより、波長可変動作が実現される。
【0091】
波長可変レーザ素子300も、実施の形態3に係る波長可変レーザ素子200と同様にして製造できる。すなわち、SOI基板を用いて第2の導波路部320に関連する部分を作製し、その凹部CCに、別途作製した第1の導波路部310をフリップチップボンディングにより実装する。これにより波長可変レーザ素子300が完成する。
【0092】
本実施の形態4に係る波長可変レーザ素子300によれば、実施の形態1、2と同様に、レーザ光の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現できるとともに、実施の形態3と同様に、フットプリントが小さくコンパクトであり、且つサイドモード抑圧比の高いレーザ光を出力することができる。
【0093】
(実施の形態5)
つぎに、実施の形態5に係るレーザモジュールについて説明する。
図14は、本実施の形態5に係るレーザモジュールの模式図である。レーザモジュール1000は、実施の形態2に係る波長可変レーザ素子100Aと、コリメートレンズ1001と、光アイソレータ1002と、ビームスプリッタ1003と、集光レンズ1005と、光ファイバ1006と、受光素子としてのパワーモニタPD(Photo Diode)パワーモニタPD1009と、エタロンフィルタ1010と、パワーモニタPD1011と、を備えている。また、波長可変レーザ素子100Aは、波長可変レーザ素子100Aの温度を調節するための不図示の電子冷却素子に載置されている。波長可変レーザ素子100A、パワーモニタPD1009、1011および電子冷却素子は外部の制御部に接続されている。
【0094】
波長可変レーザ素子100Aは、制御部から駆動電流を供給され、制御部によりマイクロヒータ14、15、25を制御することにより調整された回折格子層11ab、リング共振器フィルタRF1、位相調整部11bなどの条件で決定される波長のレーザ光をSOA101にて所望の出力強度まで増幅してレーザ光L2として出力する。コリメートレンズ1001は、波長可変レーザ素子100Aから出力されたレーザ光L2を平行光線とする。光アイソレータ1002は、コリメートレンズ1001による平行光線とされたレーザ光L2を一方向のみに透過する。ビームスプリッタ1003は、光アイソレータ1002を透過したレーザ光L2の大部分を透過しつつ一部をパワーモニタPD1009側に分岐する。パワーモニタPD1009は、ビームスプリッタ1008により分岐されたレーザ光L2の一部を受光し、その受光強度に応じた値の電流を出力する。エタロンフィルタ1010は、多重干渉の次数に応じて周期的に変化するピークを有する透過波長特性を有しており、ビームスプリッタ1008を透過したレーザ光L2をレーザ光L2の波長における透過波長特性に応じた透過率で透過する。エタロンフィルタ1010の周期はたとえば光の周波数で50GHzである。パワーモニタPD1011は、エタロンフィルタ1010を透過したレーザ光L2を受光し、その受光強度に応じた値の電流を出力する。集光レンズ1005は、ビームスプリッタ1003を透過したレーザ光L2を集光して光ファイバ1006に結合する。光ファイバ1006は結合されたレーザ光L2を外部に伝搬する。レーザ光L2はたとえば光ファイバ通信用の信号光として使用される。エタロンフィルタ1010はバルクのものを使用しているが、それに代えて、導波路型のフィルタを用いることもできる。
【0095】
このレーザモジュール1000によれば、波長可変レーザ素子100Aを備えることで、レーザ光L2の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現し、さらにレーザ光L2をより高いパワーで出力できる。さらに、パワーモニタPD1009、1011から出力される電流をモニタすることにより受光強度をモニタし、制御部による波長ロック制御を行うことができる。
具体的には、波長ロック制御では、制御部は、パワーモニタPD1009によってモニタされたレーザ光の強度と、パワーモニタPD1011によってモニタされた、エタロンフィルタ1010透過後のレーザ光の強度との比が、レーザ光L2の波長が所望の波長になるときの比になるように、波長可変レーザ素子100Aの駆動電流と温度とを変化させる制御をする。これにより、レーザ光L2の波長を所望の波長(ロック波長)に制御することができる。
【0096】
(実施の形態6)
つぎに、実施の形態6に係るレーザモジュールについて説明する。
図15は、本実施の形態6に係るレーザモジュールの模式図である。レーザモジュール1000Aは、波長可変レーザ素子100Bと、コリメートレンズ1001と、光アイソレータ1002と、ビームスプリッタ1003と、パワーモニタPD1004と、集光レンズ1005と、光ファイバ1006と、コリメートレンズ1007と、ビームスプリッタ1008と、パワーモニタPD1009と、エタロンフィルタ1010と、パワーモニタPD1011とを備えている。また、波長可変レーザ素子100Bは、波長可変レーザ素子100Bの温度を調節するための不図示の電子冷却素子に載置されている。波長可変レーザ素子100B、パワーモニタPD1004、1009、1011、および電子冷却素子は外部の制御部に接続されている。
【0097】
コリメートレンズ1001、光アイソレータ1002、ビームスプリッタ1003、パワーモニタPD1004、集光レンズ1005、光ファイバ1006の機能はレーザモジュール1000の場合と同じなので説明を省略する。
【0098】
波長可変レーザ素子100Bは、波長可変レーザ素子100Aの備える波長可変レーザ素子100において、アーム部22とリング状導波路24との結合係数κ1と、アーム部23とリング状導波路24との結合係数κ2とが互いに異なる値となるように設計したものである。このように、結合係数κ1とκ2を互いに異なる値とすることにより、リング共振器フィルタRF1は非対称フィルタとなり、発振したレーザ光の一部が、アーム部22、23の2分岐部21と接続された側とは反対の端面からそれぞれ出力されることとなる。
【0099】
コリメートレンズ1007は、アーム部22の端面から出力された、発振したレーザ光の一部であるレーザ光L3を平行光線とする。ビームスプリッタ1008は、平行光線とされたレーザ光L3の大部分を透過しつつ一部をパワーモニタPD1009側に分岐する。パワーモニタPD1009は、ビームスプリッタ1008により分岐されたレーザ光L3の一部を受光し、その受光強度に応じた値の電流を出力する。エタロンフィルタ1010は、多重干渉の次数に応じて周期的に変化するピークを有する透過波長特性を有しており、ビームスプリッタ1008を透過したレーザ光L3をレーザ光L3の波長における透過波長特性に応じた透過率で透過する。エタロンフィルタ1010の周期はたとえば光の周波数で50GHzである。パワーモニタPD1011は、エタロンフィルタ1010を透過したレーザ光L3を受光し、その受光強度に応じた値の電流を出力する。
【0100】
このレーザモジュール1000Aによれば、波長可変レーザ素子100Bを備えることで、レーザ光L2の狭線幅化および安定した単一モード発振を実現し、さらにレーザ光L2をより高いパワーで出力できる。さらに、パワーモニタPD1009、1011から出力される電流をモニタすることにより受光強度をモニタし、制御部による波長ロック制御を行うことができる。さらに、パワーモニタPD1004から出力される電流をモニタすることによりレーザ光L2の強度をモニタすることができるので、制御部によりパワーフィードバック制御を行うことができる。
【0101】
具体的には、波長ロック制御では、制御部は、パワーモニタPD1009によってモニタされたレーザ光の強度と、パワーモニタPD1011によってモニタされた、エタロンフィルタ1010透過後のレーザ光の強度との比が、レーザ光L2の波長が所望の波長になるときの比になるように、波長可変レーザ素子100Bの駆動電流と温度とを変化させる制御をする。これにより、レーザ光L2の波長を所望の波長(ロック波長)に制御することができる。
【0102】
なお、上記実施の形態では、回折格子は標本化回折格子であるが、回折格子の種類はこれに限られず、超構造回折格子(Superstructure Grating)や重畳回折格子(Superimposed Grating)でもよい。
また、実施の形態1では、回折格子層11abは、活性コア層11aaの近傍かつ直上に、活性コア層11aaに沿って設けられているが、本発明はこれに限られない。たとえば、位相調整部とは反対側において活性コア層と接続する光導波層が設けられている場合、活性コア層の近傍かつ当該光導波層の直上に回折格子層が設けられていてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。