(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記二次電池の状態、前記車両の走行状態、および、負荷の稼働状態を示す複数の状態変数に対して走行モード毎に定まる所定の重み値を積和演算して得られる値を比較することで、最適な走行モードを特定することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
前記制御手段は、前記二次電池の放電可能時間が所定の閾値以上である場合にはコースティング走行モードを選択し、前記所定の閾値未満である場合には回生走行モードを選択することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
前記制御手段は、前記コースティング走行モードで走行中に、前記車両のブレーキが操作された場合には、前記選択手段を制御して前記回生走行モードを選択することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両制御装置。
前記制御手段は、前記回生走行モードで走行中に、前記車両のアクセルが操作された場合であって、前記アクセルの操作量が所定の閾値未満であるか、または、操作時間が所定の閾値未満であるときには、前記選択手段を制御して前記コースティング走行モードを選択することを特徴とする請求項7に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(A)第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図に示すように、車両の電源系統は、スタータモータ10、エンジン11、オルタネータ12、二次電池13、電圧センサ14、電流センサ15、温度センサ16、状態検出部17、エンジンECU(Electric Control Unit)18、電気量推定部19、車両状態検出部20、信号線21、電力線22、および、負荷23−1〜23−3を有している。
【0022】
ここで、スタータモータ10は、二次電池13に蓄電された電力によって駆動され、エンジン11を始動する電動機である。エンジン11は、例えば、ガソリンエンジンもしくはディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ10によって始動され、図示しない車輪に回転力を与えて車両を走行させるとともに、オルタネータ12を駆動して二次電池13を充電する。
【0023】
オルタネータ12は、エンジン11によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池13を充電する。
【0024】
二次電池13は、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、または、リチウムイオン電池等の二次電池によって構成され、オルタネータ12によって充電され、スタータモータ10を駆動してエンジン11を始動するとともに、負荷23−1〜23−3に電力を供給する。
【0025】
電圧センサ14は、二次電池13の端子電圧を検出し、状態検出部17に通知する。電流センサ15は、二次電池13に流れる電流を検出し、状態検出部17に通知する。温度センサ16は、二次電池13の液温を検出し、状態検出部17に通知する。
【0026】
状態検出部17は、電圧センサ14、電流センサ15、および、温度センサ16の出力を参照し、二次電池13の状態を検出し、検出結果をエンジンECU18および電気量推定部19に通知する。
【0027】
エンジンECU18は、信号線21を介してスタータモータ10、エンジン11、状態検出部17、電気量推定部19、および、車両状態検出部20と接続され、これらとの間で情報を授受する。
【0028】
電気量推定部19は、状態検出部17による検知結果を参照して、二次電池13の電力を推定し、推定結果をエンジンECU18に通知する。また、エンジンECU18が休止状態である場合には、エンジンECU18の代わりに各部を制御する。
【0029】
車両状態検出部20は、車両の走行状態(例えば、車速、アクセルの操作状態、ブレーキの操作状態等)を検出し、エンジンECU18に通知する。
【0030】
信号線21は、スタータモータ10、エンジン11、オルタネータ12、状態検出部17、エンジンECU18、電気量推定部19、および、車両状態検出部20を相互に接続し、これらの間で情報を授受するための信号線である。
【0031】
電力線22は、スタータモータ10、オルタネータ12、二次電池13、および、負荷23−1〜23−3を接続し、オルタネータ12によって発電された電力を二次電池13に供給するとともに、二次電池13に蓄電された電力を各部に供給する。
【0032】
負荷23−1〜23−3は、カーオーディオ、ナビゲーションシステム、ブレーキ、ステアリング、エアコン、および、デフォガ等によって構成され、二次電池13から供給される電力によって動作する。
【0033】
(B)第1実施形態の動作の説明
つぎに、
図1に示す第1実施形態の動作について説明する。第1実施形態では、車両は、エンジン11によって走行する通常走行モード、オルタネータ12の発電電圧を通常走行モードよりも高く設定することで車両の運動エネルギを電気エネルギに変換して二次電池13に蓄積する回生走行モード、および、図示しないクラッチを切断するとともにエンジン11を停止することで慣性走行するコースティング走行モードの3種類の走行モードを有している。エンジンECU18は、二次電池13の状態、車両の走行状態、および、負荷23−1〜23−3の稼働状態を検出し、検出したこれらの状態に基づいてこれら3つの走行モードから最適な走行モードを選択する。これにより、二次電池13の状態、車両の走行状態、および、負荷23−1〜23−3の稼働状態に応じた最適な走行モードを選択することで、燃費性能を改善することができる。
【0034】
より詳細に説明する。エンジンECU18は、状態検出部17から供給される二次電池13の状態に関する情報と、電気量推定部19から供給される情報とに基づいて二次電池13の状態を検出する。また、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報に基づいて、車両の走行状態を検出する。さらに、エンジンECU18は、負荷23−1〜23−3の動作状況を参照して、負荷23−1〜23−3の稼働状態を検出する。
【0035】
つぎに、エンジンECU18は、例えば、
図2に示すような状態変数と重み値とに基づいて状態の判定を行う。
図2の例では、状態変数X1〜X9は、その左側に示す状態に応じて“1”または“0”の値を有し、重み値W11〜W93は、予め定められた重み値であり、これらの積和によってそれぞれの走行モード毎の判定値を算出する。より詳細には、例えば、通常走行モードに関する判定値D1は、以下の式(1)によって求めることができる。なお、
図2の例では、状態変数X1はアクセルオフの場合に“1”となりアクセルオンの場合に“0”となる変数である。状態変数X2はブレーキオンの場合に“1”となりブレーキオフの場合に“0”となる変数である。状態変数X3は下り坂を走行中の場合に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。状態変数X4は車速が低の場合(例えば、10km/h以下の場合)に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。状態変数X5は前車との者間距離が大きい場合(例えば、20m以上の場合)に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。状態変数X6は負荷が大の場合(例えば、負荷23−1〜23−3の稼働率が50%以上の場合)に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。状態変数X7は二次電池13のSOCが大きい場合(例えば、50%以上の場合)に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。状態変数X8は二次電池13のSOH(State of Health)が大きい場合(例えば、0.5以上の場合)に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。また、状態変数X9は二次電池13のSOF(State of Function)が大きい場合(例えば、10.5V以上の場合)に“1”となりそれ以外の場合に“0”となる変数である。
【0036】
D1=W11×X1+W21×X2+W31×X3+・・・+W91×X9 ・・・(1)
【0037】
同様にして、回生走行モードの判定値D2およびコースティング走行モードの判定値D3は以下の式(2)および式(3)によって求める。
【0038】
D2=W12×X1+W22×X2+W32×X3+・・・+W92×X9 ・・・(2)
【0039】
D3=W13×X1+W23×X2+W33×X3+・・・+W93×X9 ・・・(3)
【0040】
なお、これらの重み値W11〜W93は、例えば、燃費改善を教師信号とする学習処理によって最適化がされる。このような学習処理により、重み値W11〜W93は、それぞれの状態に対して、燃費効率が高い走行モード順に大きい値を有するとともに、他の状態との関係では優先順位に応じてその値が設定される。
【0041】
エンジンECU18は、以上の式(1)〜式(3)によって得た判定値D1〜D3を比較して、最大の判定値を特定する。例えば、最大の判定値がD2であった場合には、D2が特定される。
【0042】
エンジンECU18は、特定した最大の判定値に対応する走行モードを選択する。例えば、判定値D2が最大である場合(D2>D1,D3の場合)には、回生走行モードが選択される。その結果、エンジンECU18は、回生走行モードを選択し、オルタネータ12の発電電圧を通常よりも高く設定することで、回生充電を実行する。
【0043】
また、例えば、判定値D1が最大である場合(D1>D2,D3の場合)には、通常走行モードが選択される。その結果、エンジンECU18は、通常走行モードを選択し、二次電池13のSOC(State of Charge(充電率))に応じてオルタネータ12の発電電圧を設定して充電する。
【0044】
また、例えば、判定値D3が最大である場合(D3>D1,D2の場合)には、コースティング走行モードが選択される。その結果、エンジンECU18は、コースティング走行モードを選択し、エンジン11を停止するとともに、トランスミッションを制御してクラッチを切断し、エンジン11と車輪との接続を遮断することで、慣性走行状態とする。
【0045】
以上のような処理によれば、二次電池13の状態、車両の走行状態、および、負荷23−1〜23−3の稼働状態に応じて最適な走行モードを選択することができるので、燃費性能を改善することができる。また、
図2に示す重み値W11〜W93を学習処理によって最適化することで、燃費性能をさらに改善することができるとともに、それぞれのユーザの用途に応じた最適化を行うことができる。
【0046】
つぎに、
図3を参照して、第1実施形態で実行される処理の流れについて説明する。
図3に示すフローチャートは所定の間隔(例えば、1秒間隔)で実行される。
図3に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0047】
ステップS10では、エンジンECU18は、図示しないイグニッションキーが操作されて、イグニッションオンの状態になったか否かを判定し、イグニッションオンの状態になったと判定した場合(ステップS10:Y)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:N)には処理を終了する。例えば、運転者が車両に搭乗し、エンジン11を始動するために、イグニッションキーをオンに操作した場合にはステップS11に進む。
【0048】
ステップS11では、エンジンECU18は、二次電池13の状態を検出する。より詳細には、状態検出部17から供給される情報を参照して、二次電池13のSOC、SOH、SOFを算出するとともに、電気量推定部19から供給される情報を参照して、二次電池13の電気量を推定する。
【0049】
ステップS12では、エンジンECU18は、車両の走行状態を推定する。より詳細には、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報を参照して、車両の走行状態を特定する。例えば、アクセルのオン/オフの状態、ブレーキのオン/オフの状態、車速の状態、走行道路の状態(下り坂/上り坂/平坦)、前車との車間距離等について特定する。
【0050】
ステップS13では、エンジンECU18は、負荷23−1〜23−3の稼働状態を検出する。より詳細には、負荷23−1〜23−3からの情報および電流センサ15から出力される情報を参照し、負荷23−1〜23−3の稼働状態を検出する。
【0051】
ステップS14では、エンジンECU18は、ステップS11〜ステップS13において検出された二次電池13の状態、車両の走行状態、および、負荷23−1〜23−3の稼働状態を参照して状態判定を行う。より詳細には、式(1)〜式(3)に対して、ステップS11〜S13で取得した状態を適用して判定値D1〜D3の値を求め、これらの最大値を求めることで、走行モードの判定を実行する。
【0052】
ステップS15では、エンジンECU18は、ステップS14での判定結果に基づいてステップS16〜S18に分岐する。例えば、判定値D1が最大である場合にはステップS18に分岐し、判定値D2が最大である場合にはステップS16に分岐し、判定値D3が最大である場合にはステップS17に分岐する。
【0053】
ステップS16では、エンジンECU18は、回生走行モードを実行する。なお、この処理の詳細は
図4を参照して後述する。
【0054】
ステップS17では、エンジンECU18は、コースティング走行モードを実行する。なお、この処理の詳細は
図5を参照して後述する。
【0055】
ステップS18では、エンジンECU18は、通常走行モードを実行する。なお、この処理の詳細は
図10を参照して後述する。
【0056】
ステップS19では、エンジンECU18は、図示しないイグニッションキーが操作されて、イグニッションオフの状態になったか否かを判定し、イグニッションオフの状態になったと判定した場合(ステップS19:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS19:N)にはステップS11に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
【0057】
つぎに、
図4を参照して、
図3のステップS16の処理の詳細について説明する。
図3のフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0058】
ステップS30では、エンジンECU18は、オルタネータ12の発電電圧を通常走行時よりも高く設定することで、回生走行モードに移行する。
【0059】
ステップS31では、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報を参照し、アクセルが操作されたか否かを判定し、アクセルが操作されたと判定した場合(ステップS31:Y)にはステップS33に進み、それ以外の場合(ステップS31:N)にはステップS32に進む。なお、具体的な判断としては、例えば、アクセルが所定の開度以上操作されるか、または、所定の時間以上操作された場合にYと判定してステップS32に進むようにすることができる。もちろん、これ以外の判断基準でもよい。
【0060】
ステップS32では、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報を参照し、車両が所定の車速未満であるか否かを判定し、所定の車速未満と判定した場合(ステップS32:Y)にはステップS33に進み、それ以外の場合(ステップS32:N)にはステップS30に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。なお、具体的な判断としては、例えば、車速が10km/h未満の場合にYと判定してステップS33に進むようにすることができる。もちろん、これ以外の車速でもよい。
【0061】
ステップS33では、エンジンECU18は、オルタネータ12の発電電圧を通常走行時の電圧に設定することで、回生走行モードを終了する。
【0062】
以上の処理によれば、例えば、車両が減速される場合において、通常走行モードに比較して、オルタネータ12の発電電圧が高く設定されるので、車両の運動エネルギが電気エネルギに変換されて二次電池13に蓄積される。
【0063】
つぎに、
図5を参照して、
図3のステップS17の処理の詳細について説明する。なお、以下では、まず、
図6〜
図7を参照してコースティング走行モードにおける動作の概要を説明した後に、
図5のフローチャートの詳細について説明する。
【0064】
図6は、コースティング走行モードにおける動作の概要を説明するための図である。
図6の上段は車両の状態を示し、下段は電気量推定部19によって推定される二次電池13の状態を示している。
図6の上段に模式的に示すように、例えば、車両が下り坂を走行している場合や、所定の速度以上で走行している場合に、燃料消費を抑えるために、エンジン11を停止するコースティング走行モードが実行される。
図6の例では、時刻t1においてコースティング走行モードが実行され、エンジン11が停止される。
【0065】
図6の下段に示すように、二次電池13の電圧は、エンジン11が動作中は、オルタネータ12の発電電圧の変動や負荷の消費電力の変動に応じて電圧が変化する。時刻t1においてエンジン11が停止されると、オルタネータ12からの電力の供給が停止されるので、二次電池13に対する充電が停止され、二次電池13は電力の持ち出しのみの状態になる。このため、
図6の時刻t1〜t2間に実線で示すように、時間の経過とともに二次電池13の電圧が低下する。
【0066】
コースティングを終了してエンジン11を再始動する場合、スタータモータ10を回転させる必要がある。スタータモータ10を回転させると、時刻t1〜t2間に「電圧降下」と説明を付した電圧が急降下する破線部分のように、二次電池13の電圧が急激に低下する。
図6において、破線で示す電圧降下予測ラインは、各タイミングにおいて、エンジン11を再始動した場合の電圧降下の予測ラインである。
【0067】
ここで、例えば、スタータモータ10は、二次電池13の電圧が所定の電圧以下に低下すると、エンジン11の再始動ができなくなる。このようにエンジン11が再始動できなくなる限界の電圧を「エンジン始動限界電圧」と本明細書中では称する。
【0068】
車両がコースティング走行モードを継続し、電圧降下予測ラインが、
図6において横方向の破線で示す「エンジン始動限界電圧」を下回った場合、エンジン11を再始動できなくなる。
【0069】
そこで、本発明の第1実施形態では、コースティング走行モードが開始されると、再始動による電圧降下を予測し、予測された電圧降下がエンジン始動限界電圧以下になる前に、エンジン11を再始動することで、エンジン11を確実に再始動する。
【0070】
つぎに、より詳細な動作について説明する。
図7は二次電池13を一定電流で放電した場合の電圧変化を示す図である。
図7の横軸は時間(秒[s])を示し、縦軸は電圧[V]を示している。また、実線の曲線は一定電流による放電を行った際の二次電池13の電圧の時間的変化を示す「二次電池電圧変化予測曲線」であり、破線の曲線は負荷を動作させた場合の電圧降下の予測曲線を示す「応答電圧予測曲線」である。図中破線で示す横線は前述したエンジン始動限界電圧を示す。第1実施形態では、破線で示す応答電圧予測曲線がエンジン始動限界電圧に到達したときのSOCを下限SOCと称する。
【0071】
コースティング走行モードが開始されると、エンジンECU18は、エンジン始動限界電圧に対する下限SOCを、例えば、電圧とSOCの関係を示す関係式によって求める。つぎに、エンジンECU18は、状態検出部17から、二次電池13のその時点におけるSOCを取得する。そして、以下の式(4)に対して、その時点のSOCと下限SOCを代入し、連続放電可能な電気量[Ah]を求める。
【0072】
連続放電可能な電気量=((その時点のSOC−下限SOC)/100)×補正SOH ・・・(4)
【0073】
なお、補正SOHは、以下の式(5)によって得ることができる。ここで、20時間率容量とは、二次電池13の液温が25℃である場合に、0.05CAにより放電した場合の二次電池13の電気容量を示す。なお、右辺のf(放電レート,温度)は、放電レートと温度を変数とする所定の関数である。
【0074】
補正SOH=20時間率容量×f(放電レート,温度) ・・・(5)
【0075】
なお、放電レートと温度に基づいてSOHを補正するのは、
図8に示すように、温度と放電レートによってSOHが変化するからである。
図8において横軸は放電レート[CA]を示し、縦軸はSOH[Ah]を示している。また、各曲線は、65℃、45℃、25℃、0℃、および、−20℃における特性を示している。
図8に示すような特性曲線に基づいて、前述した相対SOH算出用の関数f(放電レート,温度)に含まれるパラメータを求める。
【0076】
式(4)に基づいて連続放電可能な電気量を求めると、つぎに、式(6)に基づいて、動作可能時間Tp[s]を求める。
【0077】
動作可能時間Tp=連続放電可能な電気量/車両のトータルの消費電流×3600 ・・・(6)
【0078】
以上の計算により、正確な動作可能時間Tpを求めることができるので、エンジンECU18は、その時点の時刻を参照することで、
図6に示す限界点(電圧降下予測ラインがエンジン始動限界電圧と交差する点)のタイミングを求めることができる。エンジンECU18は、以上の式によって求めた限界点に到達する前の所定のタイミングにおいて、スタータモータ10を動作させることで、エンジン11を再始動させ、コースティングを終了することができる。エンジン11が始動されると、オルタネータ12からの電力の供給が開始されるので、二次電池13の充電が開始され、二次電池13の電圧が
図6に示すように回復する。
【0079】
つぎに、
図5を参照して、コースティング走行モードにおいて実行される処理の詳細について説明する。
図5のフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0080】
ステップS50では、エンジンECU18は、図示しないクラッチをオフの状態にする。これにより、エンジン11と車輪の動力の接続が遮断されるので、慣性走行の状態になる。
【0081】
ステップS51では、エンジンECU18は、エンジン11を停止する。これにより、エンジン11への燃料の供給が停止されるので、燃料消費をさらに抑制することができる。
【0082】
ステップS52では、エンジンECU18は、前述した式(4)〜式(6)に基づいて動作可能時間Tpを算出する。
【0083】
ステップS53では、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報を参照し、ブレーキ操作がされたか否かを判定し、ブレーキ操作がされたと判定した場合(ステップS53:Y)にはステップS55に進み、それ以外の場合(ステップS53:N)にはステップS54に進む。例えば、運転者が減速するためにブレーキを操作した場合にはステップS55に進む。
【0084】
ステップS54では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpが終了間近か否かを判定し、終了間近と判定した場合(ステップS54:Y)にはステップS55に進み、それ以外の場合(ステップS54:N)にはステップS53に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
【0085】
ステップS55では、エンジンECU18は、エンジン11をスタータモータ10によって再始動する。
【0086】
ステップS56では、エンジンECU18は、図示しないクラッチをオンの状態に設定する。これにより、通常走行モードに移行する。
【0087】
なお、
図5に示す処理では、ブレーキが操作された場合、または、Tpが修了間近である場合にステップS55に進むようにしたが、これ以外にも、例えば、アクセルが所定の開度以上、または、所定の時間以上操作された場合に、ステップS55に進むようにしてもよい。そのような場合には、車両の加速が必要になることから、通常走行モードに移行する必要があるためである。
【0088】
つぎに、
図9を参照して、
図5のステップS52に示す「動作可能時間Tp算出処理」の詳細について説明する。
図9に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0089】
ステップS70では、エンジンECU18は、電気量推定部19に対してエンジン始動限界電圧を下限電圧に設定するように指示する。この結果、電気量推定部19は、エンジン始動限界電圧を下限電圧に設定する。
【0090】
ステップS71では、電気量推定部19は、状態検出部17に対して、その時点におけるトータルの消費電力を検出させる。例えば、コースティング走行モードを実行している際に、例えば、カーオーディオ、カーナビゲーションシステム、ヘッドライト、および、エアコンが作動している場合には、これらの消費電流がトータルの消費電流として検出される。
【0091】
ステップS72では、電気量推定部19は、二次電池電圧変化予測曲線を算出する。この結果、例えば、
図7に実線で示す二次電池電圧変化予測曲線を得ることができる。
【0092】
ステップS73では、電気量推定部19は、対象となる負荷による電圧降下を特定する。例えば、負荷がスタータモータ10の場合には、スタータモータ10による電圧降下を特定する。
【0093】
ステップS74では、電気量推定部19は、ステップS72で求めた二次電池電圧変化予測曲線に対して、ステップS73で求めた負荷による電圧降下を加味して、応答電圧予測曲線を算出する。この結果、例えば、
図7に破線で示す、応答電圧予測曲線を得ることができる。
【0094】
ステップS75では、電気量推定部19は、ステップS74で求めた応答電圧予測曲線と下限SOCを求める。ステップS
70において、下限電圧がエンジン始動限界電圧に設定されているので、応答電圧予測曲線とエンジン始動限界との交差する点の下限電圧に対応する下限SOCが算出される。
【0095】
ステップS76では、電気量推定部19は、前述した式(5)に基づいて、補正SOHを算出する。より詳細には、その時点における二次電池13の液温と、その時点における負荷に対する放電レートとに基づいて補正SOHが算出される。
【0096】
ステップS77では、電気量推定部19は、状態検出部17に対して、その時点(現在)のSOCを特定するように指示する。この結果、状態検出部17は、その時点のSOCを特定する。
【0097】
ステップS78では、電気量推定部19は、式(4)に基づいて、連続放電可能な電気量を算出する。
【0098】
ステップS79では、電気量推定部19は、式(6)に基づいて、動作可能時間Tpを算出する。そして、元の処理に復帰(リターン)する。
【0099】
以上の処理によれば、エンジン始動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpを得ることができる。
【0100】
つぎに、
図10を参照して、
図3のステップS18の処理の詳細について説明する。
図10のフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0101】
ステップS100では、エンジンECU18は、SOCに応じた充電制御を実行する。より詳細には、エンジンECU18は、状態検出部17から供給される情報を参照して二次電池13のSOCを算出し、算出したSOCに応じてオルタネータ12の発電電圧を調整する制御を実行する。
【0102】
ステップS101では、エンジンECU18は、アクセルがオフの状態にされたか否かを判定し、アクセルがオフの状態にされと判定した場合(ステップS101:Y)には元の処理に復帰し、それ以外の場合(ステップS101:N)にはステップS102に進む。
【0103】
ステップS102では、エンジンECU18は、ブレーキが操作されたか否かを判定し、ブレーキが操作されたと判定した場合(ステップS102:Y)には元の処理に復帰し、それ以外の場合(ステップS102:N)にはステップS100に戻って前述の場合と同様の処理を実行する。
【0104】
以上に説明したように本発明の第1実施形態によれば、二次電池13の状態、車両の走行状態、および、負荷23−1〜23−3の稼働状態等に応じて、走行モードを選択するようにしたので、これらの状態に応じて最適な走行モードを選択することができることから、燃費性能を改善することができる。
【0105】
また、第1実施形態では、二次電池13の状態も参照して走行モードを選択するようにしたので、例えば、二次電池13が劣化状態等に応じて走行モードを選択することで、二次電池13のさらなる劣化を抑制することができる。
【0106】
また、第1実施形態では、負荷23−1〜23−3の状態も参照して走行モードを選択するようにしたので、例えば、負荷23−1〜23−3の消費電力が大きい場合には、回生走行モードを選択することで、二次電池13の消費を抑制することができる。
【0107】
(C)第2実施形態の説明
つぎに、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、装置の構成は
図1に示す第1実施形態と同様であるが、実行される動作の一部が異なっている。そこで、以下では、異なる部分を中心にして説明する。
【0108】
図11は、第2実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。なお、
図11において、
図3と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図11では、
図3と比較すると、ステップS14およびステップS15の処理が除外され、ステップS90〜ステップS93が追加されているので、これらの部分を中心にして説明する。
【0109】
ステップS11〜ステップS13において、二次電池13の状態、車両走行状態、および、負荷23−1〜23−3の稼働状態を検出した後、以下に示すステップS90以降の処理が実行される。
【0110】
ステップS90では、エンジンECU18は、アクセルがオフの状態になったか否かを判定する。より詳細には、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報を参照し、アクセルがオフの状態にされたと判定した場合(ステップS90:Y)にはステップS91に進み、それ以外の場合(ステップS90:N)にはステップS18に進む。
【0111】
ステップS91では、エンジンECU18は、ブレーキが操作されたか否かを判定する。より詳細には、エンジンECU18は、車両状態検出部20から供給される情報を参照し、ブレーキが操作されたと判定した場合(ステップS91:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS91:N)にはステップS92に進む。
【0112】
ステップS92では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpを算出する。この処理の詳細は、
図9と同様である。ステップS92の処理により、エンジン始動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpを得ることができる。なお、エンジン始動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpを求めるのではなく、これ以外の電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpを求めるようにしてもよい。例えば、カーオーディオやカーナビゲーションシステムのような、運転者の快適運転に資するような「快適システム」は、二次電池13の電圧が所定の電圧以下に低下すると、スピーカからノイズが発生したり、システムが再起動されたりする場合がある。このような状態が発生する限界の電圧を「快適システム動作限界電圧」とし、快適システム動作限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpを求めるようにしてもよい。
【0113】
ステップS93では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpと所定の閾値Thを比較し、Tp>Thであるか否かを判定し、Tp>Thである場合(ステップS93:Y)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS93:N)にはステップS16に進む。例えば、ステップS92で求めた動作可能時間Tpが、例えば、10分未満である場合には、二次電池13の充電状態が低いと判定できるのでその場合にはステップS16に進んで回生走行モードを実行する。また、10分以上である場合には、二次電池13の充電状態はある程度確保されているので、その場合にはコースティング走行モードを実行する。
【0114】
なお、ステップS16〜ステップS19の処理は、第1実施形態と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0115】
つぎに、具体例を挙げて、
図11のフローチャートの処理の動作を説明する。例えば、アクセルを所定量踏み込んでいる場合には、ステップS90でNと判定され、ステップS18に進み、通常走行モードとなる。通常走行モードでは、
図10に示すように、アクセルがオフの状態にされるか、または、ブレーキが操作された場合には、通常走行モードを終了してステップS19に復帰する。例えば、信号が赤になったり、前方車両との車間を調整したりするためにブレーキが操作された場合には、
図11のステップS19の処理に復帰する。
【0116】
ステップS19の処理に復帰した後は、停車してエンジン11を停止する以外はステップS11に戻って同様の処理が繰り返される。いまの例では、アクセルがオフの状態とされているので、ステップS90ではYと判定されてステップS91に進み、ステップS91ではブレーキが操作されているのでYと判定されてステップS16に進み、回生走行モードに移行する。
【0117】
回生走行モードでは、
図4に示すように、アクセルが操作されるか、所定の車速未満になるまで、回生発電が実行され、二次電池13が充電される。
【0118】
例えば、アクセルが操作されると、ステップS31でYと判定され、発電電圧が通常電圧に変更された後、ステップS19の処理に復帰し、エンジン11が停止された場合以外は、ステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。なお、所定の車速未満になった場合も、ステップS19の処理に復帰する。
【0119】
つぎに、車両が長い下り坂を走行する状態となり、運転者がアクセルをオフの状態にすると、ステップS90ではYと判定されてステップS91に進む。いまの例では、ブレーキは操作されていないとすると、ステップS91ではNと判定されるので、ステップS92に進む。
【0120】
ステップS92では、エンジン始動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpが算出され、ステップS93に進む。ステップS93では、動作可能時間Tpが閾値Thと比較される。例えば、閾値Thが5分であるとし、動作可能時間Tpが20分であるとすると、Tp>Thが成立するので、ステップS17に進んで、コースティング走行モードに移行する。
【0121】
コースティング走行モードに移行すると、クラッチがオフに設定され、エンジン11が停止される。この結果、車両は慣性走行状態となるとともにエンジン11が停止されるので、燃料消費が抑制される。
【0122】
このような状態において、例えば、車速を抑えるためにブレーキが操作された場合には、ステップS53でYと判定されてコースティング走行モードが停止され、ステップS19の処理に復帰する。ステップS19以降の処理では、ステップS91においてYと判定されるので、回生走行モードに移行することになる。なお、ブレーキではなく、アクセルが操作された場合には、コースティング走行モードを継続する。
【0123】
以上に説明したように、本発明の第2実施形態では、車両の走行状態としてアクセルおよびブレーキの操作状態と、二次電池13および負荷23−1〜23−3の状態として動作可能時間Tpを参照して、走行モードを選択するようにしたので、これらの状態に応じた最適な走行モードを選択することができる。これにより、燃費性能を改善することができる。
【0124】
また、第1実施形態と同様に、所定の走行モードで走行中に、他の走行モードに移行することも排除しないことから、例えば、下り坂をコースティング走行モードで走行中に、ブレーキ操作やアクセル操作を行った場合には、回生走行モードや通常走行モードに移行するので、状態の変化に即して最適な走行モードを選択することができる。同様にして、回生走行モードや通常走行モードで走行中に、ブレーキ操作を終了したり、アクセルオフの状態にしたりすることにより、他の走行モードに移行するので、道路環境や渋滞状況に応じた最適な走行モードを選択することができる。
【0125】
(G)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、第1実施形態では、
図2に示す種類の状態に基づいて判定するようにしたが、
図2に列挙された状態は一例であって、これ以外の状態を用いるようにしたり、あるいは、
図2に列挙された状態の一部を用いるようにしたりしてもよい。また、第1実施形態では、式(1)〜式(3)に基づいて判定するようにしたが、例えば、ニューラルネットワークによる深層学習等の学習方法を用いたり、サポートベクターマシン等の学習方法を用いたりするようにしてもよい。
【0126】
また、第1実施形態では、変数X1〜X9の取り得る値は、“0”または“1”の2値としたが、少なくともその一部を多値または連続値としてもよい。より詳細には、
図2の例では、アクセルオン、ブレーキオン等を示すX1,X2については、“0”または“1”の2値とし、車速を示すX4については車速に応じた連続値としてもよい。もちろん、前車との車間距離、負荷、SOC、SOH、SOF等についても多値または連続値としてもよい。
【0127】
また、第2実施形態では、ブレーキが操作された場合には、ステップS16に進んで回生走行モードに移行するようにしたが、例えば、二次電池13のSOCが高い場合には、通常走行モードに移行するようにしてもよい。また、第2実施形態では、ステップS93において、動作可能時間Tpが閾値Thを上回る場合にステップS17に進むようにしたが、例えば、二次電池13のSOCが所定の閾値を上回る場合に、ステップS17に進むようにしてもよい。
【0128】
また、第1および第2実施形態では、コースティング走行モードでは、エンジン11を停止するようにしたが、エンジン11を停止しないでアイドリング状態を保つようにしてもよい。なお、エンジン11を停止しない場合には、動作可能時間Tpの計算は不要になるので、
図5ではステップS51、ステップS52、ステップS56の処理は不要になる。さらに、通常走行モードおよび回生走行モードの他に、エンジン11を停止するコースティング走行モードと停止しないコースティング走行モードの2つを有するようにし、これら4つの走行モードから所定の走行モードを選択できるようにしてもよい。
【0129】
また、第1および第2実施形態では、動作可能時間Tpを算出するようにしたが、二次電池13の電気量を算出し、算出した電気量に基づいて判定するようにしてもよい。例えば、
図11のステップS93では、電気量が所定の閾値(例えば、二次電池13の蓄積可能な電気量の1/3の電気量)以上である場合にはステップS17に進むようにしてもよい。あるいは、二次電池13の電気量ではなく、二次電池13の放電可能時間を算出し、算出した放電可能時間に基づいて判定するようにしてもよい。例えば、
図11のステップS93では、放電可能時間が所定の閾値(例えば、10分)以上である場合にはステップS17に進み、所定の閾値未満である場合にはステップS16に進むようにしてもよい。
【0130】
また、回生走行モードで走行中に、車両のアクセルが操作された場合であって、アクセルの操作量が所定の閾値未満のとき、または、操作時間が所定の閾値未満であるときには、コースティング走行モードを選択するようにしてもよい。例えば、平坦または下りの道路を走行中に、先行車両との車間距離を調整するためにブレーキを操作したことで回生走行モードに移行した場合に、少しだけアクセルが操作された場合(例えば、アクセルが数秒間操作された場合、または、アクセルが全操作量の数分の一または十分の一程度操作された場合)には、コースティングモードに移行するようにしてもよい。なお、道路の傾斜に応じて、上記のコースティングモードへの移行可否を判定しても良い。