【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発「超高精細度衛星・地上放送の周波数有効利用技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
蔀 拓也ほか,次世代地上放送に向けた伝送技術−STC−SDM伝送用パイロット方式の検討−,映像情報メディア学会技術報告,2012年10月11日,第36巻,第42号,p.33〜36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、MISOシステムまたはMIMOシステムにおいて、直交するSP信号を用いて遅延プロファイルを求め、遅延プロファイルを用いて各放送波の遅延差を測定することを特徴とする。具体的には、本発明の測定器は、直交するSP信号が重畳した信号から各径路の伝送路応答を求め、伝送路応答から遅延プロファイルを求め、遅延プロファイルから各放送波の遅延差を測定する。ここで、直交するSP信号が重畳した場合、その重畳した信号を四則演算することにより、各経路のSP信号を抽出することができ、各経路の伝送路応答を求めることができる。
【0019】
以下、実施例1にMISOシステムの例を挙げ、実施例2に偏波MIMOシステムの例を挙げて説明する。
【0020】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、1本の送信アンテナをそれぞれ備えた2つの送信局(A,B局)、及び1本の受信アンテナを備えた測定器により構成されるSTC−SFNの2×1MISOシステムにおいて、直交する2パターンのSP信号を用いて遅延プロファイルを求め、遅延プロファイルを用いてA,B局間の放送波の遅延差を測定する例である。A,B局から送信される放送波はMISO変調されている。遅延差は、SFNを構築する放送エリアの設計を行う上で重要なパラメータであり、測定器に搭載される測定項目である。尚、実施例1は、同一偏波を用いる例であるが、本発明は、異なる偏波を用いるMISOシステム、及び偏波を用いない空間MISOシステム等にも適用がある。
【0021】
〔MISOシステム/実施例1〕
図1は、実施例1のMISOシステムの全体構成例を示す概略図である。このMISOシステムは、STC−SFNのシステムであり、A局に設けられた送信装置101、B局に設けられた送信装置102、及び測定器1を備えて構成される。送信装置101は1本の送信アンテナ111を備え、送信装置102は1本の送信アンテナ112を備え、測定器1は1本の受信アンテナ3を備えている。2本の送信アンテナ111,112及び1本の受信アンテナ3により、全体として2×1MISOシステムが構成される。
【0022】
送信装置101及び送信装置102は、互いに直交するSP信号を含む放送波を、送信アンテナ111,112からそれぞれ送信する。送信装置101及び送信装置102から測定器1への伝送路において、それぞれのSP信号が重畳する。
【0023】
図2は、実施例1にて用いるSPパターンの例を説明する図である。
図2(1)(3)は、A局の送信装置101に用いるSPパターンの例であり、
図2(2)(4)は、B局の送信装置102に用いるSPパターンの例である。A局の送信装置101にて
図2(1)のSPパターンが用いられる場合、B局の送信装置102にて
図2(2)のSPパターンが用いられる。また、A局の送信装置101にて
図2(3)のSPパターンが用いられる場合、B局の送信装置102にて
図2(4)のSPパターンが用いられる。横軸はキャリア方向、縦軸はシンボル方向を示す。黒丸及び黒四角は、正のSP信号(1+0j)を示し、白丸及び白四角は、ヌルのSP信号(0+0j)を示し、バツ印の四角は、負のSP信号(−1+0j)を示す。
【0024】
図2(1)(2)に示すように、SP信号は、各シンボルに配置され、同一シンボルにおいて、キャリア方向につき12個間隔に配置されており、正のSP信号及びヌルのSP信号は、24個間隔に交互に配置されている。また、SP信号は、複数のシンボルにおいて3キャリア毎に配置され、同一キャリアにおいて、シンボル方向につき4シンボル間隔に配置されており、正のSP信号及びヌルのSP信号は、8シンボル間隔に交互に配置されている。
【0025】
このように、SP信号は、8シンボルを周期としたパターンで構成されており、
図2(1)(2)のSP信号は直交している。このような直交するSP信号を利用することにより、A局の送信装置101から測定器1への伝送路応答とB局の送信装置102から測定器1への伝送路応答とを、個別に求めることができる。
【0026】
尚、
図2(1)(2)は、正のパイロットとヌルパイロットを合わせたSPパターンの例を示しているが、
図2(3)(4)のように、正のパイロットのみのSPパターン、及び正のパイロットと負のパイロット(反転型パイロット)を合わせたSPパターンを用いるようにしてもよい。また、後述する
図8に示すように、
図8(1)(3)のSPパターンを用いるようにしてもよいし、
図8(2)(4)のSPパターンを用いるようにしてもよいし、
図8(1)(4)のSPパターンを用いるようにしてもよいし、
図8(2)(3)のSPパターンを用いるようにしてもよい。また、SP信号のキャリア方向の補間後の間隔をDx、シンボル方向の間隔をDyとすると、
図2ではこれらの組み合わせの一例として、(Dx,Dy)=(3,4)を示している。これに対し、(Dx,Dy)=(6,2)、(6,4)等の様々な組み合わせとしてもよい。いずれの場合も、SP信号は直交しており、各成分を個別に分離できれば、どのような直交パターンでもよい。
【0027】
図3は、実施例1における各経路の遅延プロファイルを説明する図である。
図1に示したMISOシステムでは、A局の送信装置101及びB局の送信装置102と測定器1との間に2つの経路が形成される。送信装置101の送信アンテナ111から測定器1の受信アンテナ3への経路の遅延プロファイルをaとし、送信装置102の送信アンテナ112から測定器1の受信アンテナ3への経路の遅延プロファイルをbとする。
【0028】
送信装置101の送信アンテナ111から送信された放送波は、遅延プロファイルaの経路を介して測定器1の受信アンテナ3へ送信され、送信装置102の送信アンテナ112から送信された放送波は、遅延プロファイルbの経路を介して測定器1の受信アンテナ3へ送信される。このとき、送信装置101及び送信装置102から測定器1への伝送路において、送信装置101からのSP信号と送信装置102からのSP信号とが重畳する。
【0029】
図1に戻って、測定器1は、送信装置101からの放送波及び送信装置102からの放送波を、受信アンテナ3にて受信し、SP信号の直交性を利用して、重畳した信号からそれぞれのSP信号を抽出し各経路の伝送路応答を求める。
【0030】
そして、測定器1は、各経路の伝送路応答から遅延プロファイルa,bを求め、遅延プロファイルa,bから両放送波の遅延差を検出する。これにより、測定器1の受信アンテナ3を受信点として、両放送波の遅延差が検出される。
【0031】
〔測定器1/実施例1〕
次に、
図1に示した測定器1について詳細に説明する。
図4は、実施例1の測定器1の構成例を示すブロック図である。この測定器1は、受信アンテナ3、有効シンボル期間抽出部11、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部12、SP抽出部13、SP補間部14、IFFT部(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)15及び遅延差検出部16を備えている。
【0032】
尚、
図4には、本発明と直接関連する構成部のみ示してあり、本発明と直接関連しないシンボル同期部等の構成部は省略してある。有効シンボル期間抽出部11からIFFT部15までの構成部の処理は、従来のOFDM信号を処理する構成部と同じである。
【0033】
測定器1が受信アンテナ3にて、送信装置101,102から送信された放送波をそれぞれ受信すると、有効シンボル期間抽出部11は、受信した放送波のOFDM信号を入力し、OFDM信号から有効シンボル期間を抽出し、有効シンボル期間の信号をFFT部12に出力する。具体的には、有効シンボル期間抽出部11は、図示しないシンボル同期部からシンボルタイミングを入力し、シンボルタイミングに基づいて、受信したOFDM信号からGI期間及び有効シンボル期間を抽出し、GI期間を除去することで有効シンボル期間を抽出する。
【0034】
FFT部12は、有効シンボル期間抽出部11から有効シンボル期間の信号を入力し、有効シンボル期間の信号を高速フーリエ変換することで、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換し、キャリアシンボルを生成する。FFT部12は、キャリアシンボルをSP抽出部13に出力する。
【0035】
SP抽出部13は、FFT部12からキャリアシンボルを入力し、キャリアシンボルから所定位置のSP信号を抽出し、SP信号(受信SP信号)をSP補間部14に出力する。
【0036】
SP補間部14は、SP抽出部13からSP信号を入力し、SP信号をシンボル方向(時間方向)に補間する。そして、SP補間部14は、補間後のSP信号に基づいて、送信装置101の送信アンテナ111から測定器1の受信アンテナ3への経路の伝送路応答、及び送信装置102の送信アンテナ112から測定器1の受信アンテナ3への経路の伝送路応答を求め、各経路の伝送路応答をIFFT部15に出力する。
【0037】
ここで、SP抽出部13から入力したSP信号(受信SP信号)は、
図2(1)に示した送信装置101からのSP信号と
図2(2)に示した送信装置102からのSP信号とが重畳した信号であるが、これらのSP信号は直交している。このため、SP補間部14は、受信SP信号から、送信装置101からのSP信号を抽出して、送信装置101の送信アンテナ111から測定器1の受信アンテナ3への伝送路応答を求めることができ、送信装置102からのSP信号を抽出して、送信装置102の送信アンテナ112から測定器1の受信アンテナ3への伝送路応答を求めることができる。
【0038】
IFFT部15は、SP補間部14から各経路の伝送路応答を入力し、各経路の伝送路応答を逆高速フーリエ変換することで、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し、遅延プロファイルa,bを求める。
【0039】
遅延差検出部16は、IFFT部15から遅延プロファイルa,bを入力し、遅延プロファイルa,bのピーク位置を検出し、ピーク位置の時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。そして、遅延差検出部16は、遅延差を表示部等へ出力する。
【0040】
図5は、遅延差検出部16の処理例を示すフローチャートである。まず、遅延差検出部16は、IFFT部15から各経路の遅延プロファイルa,bを入力する(ステップS501)。
【0041】
遅延差検出部16は、時間軸上において、遅延プロファイルaのピーク位置を検出すると共に、遅延プロファイルbのピーク位置を検出する(ステップS502)。そして、遅延差検出部16は、両ピーク位置の時間間隔(ピーク間隔)を求め、ピーク間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出し(ステップS503)、遅延差を表示部等へ出力する(ステップS504)。
【0042】
測定器1の受信アンテナ3を受信点として、A局から送信された放送波とB局から送信された放送波との間に遅延差がある場合、両遅延プロファイルは、その分だけずれた状態となる。したがって、A局の遅延プロファイルにおける主波(ピーク)とB局の遅延プロファイルにおける主波(ピーク)との間隔を求めることにより、FFTクロック単位で精度の高い遅延差を検出することができる。
【0043】
図6は、遅延差を説明する図である。遅延差検出部16により、A局の送信装置101に備えた送信アンテナ111から測定器1の受信アンテナ3への経路の遅延プロファイルaからピーク位置T1が検出され、B局の送信装置102に備えた送信アンテナ112から測定器1の受信アンテナ3への経路の遅延プロファイルbからピーク位置T2が検出される。そして、遅延差検出部16により、ピーク位置T1,T2の時間間隔が求められ、これが遅延差として検出される。
【0044】
図6に示すように、A局の遅延プロファイルaのレベルがB局の遅延プロファイルbよりも高い場合を想定する。有効シンボル期間抽出部11により有効シンボル期間が抽出されるシンボルタイミングは、遅延プロファイルaのピーク位置T1であり、遅延プロファイルbのピーク位置T2ではない。シンボルタイミングは、ガード相関等により検出され、有効シンボル期間の先頭を示す。このため、遅延プロファイルbのピーク位置T2は、有効シンボル期間の先頭ではなく、ずれた分(ピーク位置T2とピーク位置T1との間の差)だけ位相が回転してしまう。
【0045】
そこで、IFFT部15により、例えば、A局との間の伝送路応答の位相を基準にして、B局との間の伝送路応答について位相差が算出され、B局との間の伝送路応答に対し、位相差分の位相が補正される。そして、IFFT部15により伝送路応答が逆高速フーリエ変換され、遅延プロファイルa,bが求められる。これにより、
図6に示したように、遅延プロファイルa,bの関係が明確となり、それぞれのピーク位置T1,T2を精度高く検出することができる。
【0046】
以上のように、実施例1の測定器1によれば、A局の送信装置101及びB局の送信装置102から直交したSP信号を含む放送波がそれぞれ送信され、SP信号が重畳した放送波を受信する。SP抽出部13は、受信した放送波のOFDM信号のキャリアシンボルからSP信号を抽出し、SP補間部14は、SP信号の直交性を利用し、SP信号を補間して各経路の伝送路応答を求める。そして、IFFT部15は、各経路の伝送路応答を逆高速フーリエ変換することで、遅延プロファイルa,bを求め、遅延差検出部16は、遅延プロファイルa,bのピーク位置を検出し、その時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。
【0047】
これにより、A,B局からパターンの異なるSP信号を含む放送波が送信された場合であっても、互いに分離可能な直交したSP信号を利用することで、A局から送信された放送波とB局から送信された放送波との間の遅延差を、遅延プロファイルを用いて測定することが可能となる。
【0048】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、2本の送信アンテナをそれぞれ備えた2つの送信局(A,B局)、及び2本の受信アンテナを備えた測定器により構成されるSTC−SFNの4×2偏波MIMOシステムにおいて、直交する4パターンのSP信号を用いて遅延プロファイルを求め、遅延プロファイルを用いてA,B局間の放送波の遅延差を測定する例である。A,B局から送信される放送波は偏波MIMO波である。遅延差は、SFNを構築する放送エリアの設計を行う上で重要なパラメータであり、測定器に搭載される測定項目である。尚、実施例2は、両偏波を用いる例であるが、本発明は、偏波を用いない空間MIMOシステム、指向性MIMOシステム等にも適用がある。
【0049】
〔MIMOシステム/実施例2〕
図7は、実施例2のMIMOシステムの全体構成例を示す概略図である。このMIMOシステムは、STC−SFNの偏波システムであり、A局に設けられた送信装置103、B局に設けられた送信装置104、及び測定器2を備えて構成される。送信装置103は2本の送信アンテナ113,114を備え、送信装置104は2本の送信アンテナ115,116を備え、測定器2は2本の受信アンテナ4,5を備えている。4本の送信アンテナ113〜116及び2本の受信アンテナ4,5により、全体として4×2偏波MIMOシステムが構成される。送信アンテナ113,115及び受信アンテナ4は、H偏波用のアンテナであり、送信アンテナ114,116及び受信アンテナ5は、V偏波用のアンテナである。
【0050】
送信装置103,104は、互いに直交するSP信号を含むOFDM信号を生成し、放送波を、送信アンテナ113〜116からそれぞれ送信する。送信装置103は、送信アンテナ113からH偏波を送信し、送信アンテナ114からV偏波を送信する。また、送信装置104は、送信アンテナ115からH偏波を送信し、送信アンテナ116からV偏波を送信する。送信装置103及び送信装置104から測定器2への伝送路において、それぞれのSP信号が重畳する。
【0051】
図8は、実施例2にて用いるSPパターンの例を説明する図であり、正及び負の反転型パイロットとヌルパイロットとを合わせたSPパターンを示している。
図8(1)は、A局に設けられた送信装置103の送信アンテナ113の系統(H偏波が送信される系統)に用いるSPパターンの例である。
図8(2)は、A局に設けられた送信装置103の送信アンテナ114の系統(V偏波が送信される系統)に用いるSPパターンの例である。また、
図8(3)は、B局に設けられた送信装置104の送信アンテナ115の系統(H偏波が送信される系統)に用いるSPパターンの例である。
図8(4)は、B局に設けられた送信装置104の送信アンテナ116の系統(V偏波が送信される系統)に用いるSPパターンの例である。横軸はキャリア方向、縦軸はシンボル方向を示す。黒丸及び黒四角は、正のSP信号(1+0j)を示し、バツ印の丸及び四角は、負のSP信号(−1+0j)を示し、白丸及び白四角は、ヌルのSP信号(0+0j)を示す。
【0052】
図8(1)〜(4)に示すように、SP信号は、各シンボルに配置され、同一シンボルにおいて、キャリア方向につき12個間隔に配置されている。
図8(1)(3)では、正のSP信号及びヌルのSP信号のそれぞれが24個間隔に交互に配置されている。
図8(2)(4)では、正または負のSP信号及びヌルのSP信号が交互に配置されている。正または負のSP信号は48個間隔であり、ヌルのSP信号は24個間隔である。
【0053】
また、SP信号は、複数のシンボルにおいて3キャリア毎に配置され、同一キャリアにおいて、シンボル方向につき4シンボル間隔に配置されている。
図8(1)(3)では、正のSP信号及びヌルのSP信号のそれぞれが8シンボル間隔に交互に配置されている。
図8(2)(4)では、正または負のSP信号及びヌルのSP信号が交互に配置されている。正または負のSP信号は16シンボル間隔であり、ヌルのSP信号は8シンボル間隔である。また、SP信号のキャリア方向の補間後の間隔をDx、シンボル方向の間隔をDyとすると、
図8ではこれらの組み合わせの一例として、(Dx,Dy)=(3,4)を示している。これに対し、(Dx,Dy)=(6,2)、(6,4)等の様々な組み合わせとしてもよい。
【0054】
このように、SP信号は、16シンボルを周期としたパターンで構成されており、
図8(1)〜(4)のSP信号は、直交している。直交するSP信号のパターンは、SP信号の各成分を個別に分離できれば、どのような直交パターンでもよい。このような直交するSP信号を利用することにより、A局の送信装置103に備えた送信アンテナ113,114及びB局の送信装置104に備えた送信アンテナ115,116から測定器2の受信アンテナ4,5への伝送路応答を、個別に求めることができる。
【0055】
図9は、実施例2における各経路の遅延プロファイルを説明する図である。
図7に示したMIMOシステムでは、A局の送信装置103及びB局の送信装置104と測定器2との間に8つの経路が形成される。送信装置103の送信アンテナ113から測定器2の受信アンテナ4への経路の遅延プロファイルをa
HHとし、送信装置103の送信アンテナ113から測定器2の受信アンテナ5への経路の遅延プロファイルをa
HVとする。また、送信装置103の送信アンテナ114から測定器2の受信アンテナ4,5への経路の遅延プロファイルをそれぞれa
VH,a
VVとする。同様に、送信装置104の送信アンテナ115から測定器2の受信アンテナ4,5への経路の遅延プロファイルをそれぞれb
HH,b
HVとし、送信装置104の送信アンテナ116から測定器2の受信アンテナ4,5への経路の遅延プロファイルをそれぞれb
VH,b
VVとする。
【0056】
送信装置103の送信アンテナ113から送信されたH偏波は、遅延プロファイルa
HHの経路を介して測定器2の受信アンテナ4へ送信され、送信装置103の送信アンテナ114から送信されたV偏波は、遅延プロファイルa
VHの経路を介して測定器2の受信アンテナ4へ送信される。また、送信装置104の送信アンテナ115から送信されたH偏波は、遅延プロファイルb
HHの経路を介して測定器2の受信アンテナ4へ送信され、送信装置104の送信アンテナ116から送信されたV偏波は、遅延プロファイルb
VHの経路を介して測定器2の受信アンテナ4へ送信される。このとき、送信装置103,104から測定器2への伝送路において、送信装置103の送信アンテナ113からのSP信号、送信装置103の送信アンテナ114からのSP信号、送信装置104の送信アンテナ115からのSP信号、及び送信装置104の送信アンテナ116からのSP信号が重畳する。
【0057】
送信装置103の送信アンテナ113から送信されたH偏波は、遅延プロファイルa
HVの経路を介して測定器2の受信アンテナ5へ送信され、送信装置103の送信アンテナ114から送信されたV偏波は、遅延プロファイルa
VVの経路を介して測定器2の受信アンテナ5へ送信される。また、送信装置104の送信アンテナ115から送信されたH偏波は、遅延プロファイルb
HVの経路を介して測定器2の受信アンテナ5へ送信され、送信装置104の送信アンテナ116から送信されたV偏波は、遅延プロファイルb
VVの経路を介して測定器2の受信アンテナ5へ送信される。このとき、送信装置103,104から測定器2への伝送路において、送信装置103の送信アンテナ113からのSP信号、送信装置103の送信アンテナ114からのSP信号、送信装置104の送信アンテナ115からのSP信号、及び送信装置104の送信アンテナ116からのSP信号が重畳する。
【0058】
図7に戻って、測定器2は、送信装置103の送信アンテナ113,114からの放送波及び送信装置104の送信アンテナ115,116からの放送波を、受信アンテナ4,5にて受信する。そして、測定器2は、SP信号の直交性を利用して、重畳した信号からそれぞれのSP信号を抽出し各経路の伝送路応答を求める。
【0059】
そして、測定器2は、各経路の伝送路応答から遅延プロファイルa
HH,a
VH,b
HH,b
VH,a
HV,a
VV,b
HV,b
VVを求め、遅延プロファイルa
HH,a
VH,b
HH,b
VH,a
HV,a
VV,b
HV,b
VVから放送波の遅延差を検出する。これにより、測定器2の受信アンテナ4,5を受信点として、放送波の遅延差が検出される。
【0060】
〔測定器2/実施例2〕
次に、
図7に示した測定器2について詳細に説明する。
図10は、実施例2の測定器2の構成例を示すブロック図である。この測定器2は、受信アンテナ4,5、受信アンテナ4の系統の各構成部、受信アンテナ5の系統の各構成部、及び遅延差検出部26を備えている。受信アンテナ4の系統は、有効シンボル期間抽出部21−1、FFT部22−1、SP抽出部23−1、SP補間部24−1及びIFFT部25−1を備え、受信アンテナ5の系統は、有効シンボル期間抽出部21−2、FFT部22−2、SP抽出部23−2、SP補間部24−2及びIFFT部25−2を備えている。
【0061】
尚、
図10には、本発明と直接関連する構成部のみ示してあり、本発明と直接関連しないシンボル同期部等の構成部は省略してある。受信アンテナ4の系統の各構成部の処理及び受信アンテナ5の系統の各構成部の処理は、従来のOFDM信号を処理する構成部と同じである。
【0062】
有効シンボル期間抽出部21−1,21−2は、
図4に示した有効シンボル期間抽出部11と同じ処理を行い、FFT部22−1,22−2は、FFT部12と同じ処理を行い、SP抽出部23−1,23−2は、SP抽出部13と同じ処理を行う。また、SP補間部24−1,24−2は、SP補間部14を同じ処理を行い、IFFT部25−1,25−2は、IFFT部15と同じ処理を行う。有効シンボル期間抽出部21−1,21−2、FFT部22−1,22−2、SP抽出部23−1,23−2及びSP補間部24−1,24−2の処理については省略する。
【0063】
測定器2が受信アンテナ4にて、送信装置103及び送信装置104から送信された放送波をそれぞれ受信すると、H偏波のOFDM信号は、受信アンテナ4の系統により処理される。また、測定器2が受信アンテナ5にて、送信装置103及び送信装置104から送信された放送波をそれぞれ受信すると、V偏波のOFDM信号は、受信アンテナ5の系統により処理される。
【0064】
IFFT部25−1は、SP補間部24−1から各経路の伝送路応答を入力し、各経路の伝送路応答を逆高速フーリエ変換することで、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し、遅延プロファイルa
HH,a
VH,b
HH,b
VHを求める。IFFT部25−2は、SP補間部24−2から各経路の伝送路応答を入力し、各経路の伝送路応答を逆高速フーリエ変換することで、周波数領域の信号を時間領域の信号に変換し、遅延プロファイルa
HV,a
VV,b
HV,b
VVを求める。
【0065】
遅延差検出部26は、IFFT部25−1から遅延プロファイルa
HH,a
VH,b
HH,b
VHを入力すると共に、IFFT部25−2から遅延プロファイルa
HV,a
VV,b
HV,b
VVを入力する。そして、遅延差検出部26は、主偏差成分(送信の偏波方向と受信の偏波方向が同一の成分)の遅延プロファイルa
HH,b
HH,a
VV,b
VVのピーク位置を検出し、H偏波成分における遅延プロファイルa
HHのピーク位置と遅延プロファイルb
HHのピーク位置との時間間隔、または、V偏波成分における遅延プロファイルa
VVのピーク位置と遅延プロファイルb
VVのピーク位置との時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。そして、遅延差検出部16は、遅延差を表示部等へ出力する。遅延差検出部26は、
図5に示した遅延差検出部16の処理例と同様の処理を行う
【0066】
遅延プロファイルa
HH,a
VH,b
HH,b
VH,a
HV,a
VV,b
HV,b
VVのうち、主偏波成分の遅延プロファイルa
HH,b
HHまたは遅延プロファイルa
VV,b
VVを用いて遅延差を検出するのは、交差偏波成分(送信の偏波方向と受信の偏波方向が異なる成分)の遅延プロファイルa
VH,b
VH,a
HV,b
HVが遅延差の測定に影響しないからである。
【0067】
尚、遅延差検出部26は、遅延プロファイルa
HHのピーク位置と遅延プロファイルb
HHのピーク位置との時間間隔を求めると共に、遅延プロファイルa
VVのピーク位置と遅延プロファイルb
VVのピーク位置との時間間隔を求め、両時間間隔の平均値を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出するようにしてもよい。
【0068】
また、遅延差検出部26は、受信アンテナ4,5の系統のうち受信感度の高い系統の遅延プロファイルを用いて、遅延差を検出するようにしてもよい。具体的には、遅延差検出部26は、受信アンテナ4,5の系統のうち受信感度の高い系統を、遅延プロファイルa
HH,b
HHの振幅及び遅延プロファイルa
VV,b
VVの振幅を比較することで判定する。そして、遅延差検出部26は、受信アンテナ4の系統の受信感度が高いと判定した場合(遅延プロファイルa
HH,b
HHの振幅が大きいと判定した場合)、遅延プロファイルa
HHのピーク位置と遅延プロファイルb
HHのピーク位置との時間間隔を遅延差として検出する。一方、遅延差検出部26は、受信アンテナ5の系統の受信感度が高いと判定した場合(遅延プロファイルa
VV,b
VVの振幅が大きいと判定した場合)、遅延プロファイルa
VVのピーク位置と遅延プロファイルb
VVのピーク位置との時間間隔を遅延差として検出する。
【0069】
また、
図10に示した測定器2は、受信アンテナ4,5の2系統の構成部を備えているが、1系統のみの構成部を備えるようにしてもよい。例えば、測定器2は、受信アンテナ4の系統の構成部及び遅延差検出部26を備え、遅延差検出部26は、主偏波成分であるH偏波成分の遅延プロファイルa
HH,b
HHのピーク位置を検出し、遅延プロファイルa
HHのピーク位置と遅延プロファイルb
HHのピーク位置との時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。また、測定器2は、受信アンテナ5の系統の構成部及び遅延差検出部26を備え、遅延差検出部26は、主偏波成分であるV偏波成分の遅延プロファイルa
VV,b
VVのピーク位置を検出し、遅延プロファイルa
VVのピーク位置と遅延プロファイルb
VVのピーク位置との時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。
【0070】
以上のように、実施例2の測定器2によれば、A局の送信装置103に備えた送信アンテナ113,114及びB局の送信装置103に備えた送信アンテナ115,116から直交したSP信号を含むH偏波及びV偏波がそれぞれ送信され、SP信号が重畳したH偏波及びV偏波を受信する。SP抽出部23−1,23−2は、受信したH偏波及びV偏波のOFDM信号のキャリアシンボルからSP信号を抽出し、SP補間部24−1,24−2は、SP信号の直交性を利用することで、SP信号を補間して各経路の伝送路応答を求める。そして、IFFT部25−2,25−2は、各経路の伝送路応答を逆高速フーリエ変換することで、遅延プロファイルa
HH,a
VH,b
HH,b
VH,a
HV,a
VV,b
HV,b
VVを求め、遅延差検出部16は、遅延プロファイルa
HH,b
HHのピーク位置または遅延プロファイルa
VV,b
VVのピーク位置を検出し、その時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。
【0071】
これにより、A,B局からパターンの異なるSP信号を含む放送波が送信された場合であっても、互いに分離可能な直交したSP信号を利用することで、A局から送信された放送波とB局から送信された放送波との間の遅延差を、遅延プロファイルを用いて測定することが可能となる。
【0072】
尚、実施例1の測定器1及び実施例2の測定器2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。測定器1,2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。測定器1に備えた有効シンボル期間抽出部11、FFT部12、SP抽出部13、SP補間部14、IFFT部15及び遅延差検出部16の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、測定器2に備えた有効シンボル期間抽出部21−1,21−2、FFT部22−1,22−2、SP抽出部23−1,23−2、SP補間部24−1,24−2、IFFT部25−1,25−2及び遅延差検出部26の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【0073】
以上、実施例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、
図2及び
図8に示したSPパターンは一例であり、本発明は、このSPパターンに限定されるものではなく、他のSPパターンを用いるようにしてもよい。要するに、SPパターンは、経路間で直交していればよく、測定器1,2が直交するSP信号を用いて各経路の伝送路応答を算出できるように、SP信号が配置されていればよい。また、SP信号以外のパイロット信号を用いるようにしてもよい。
【0074】
また、前記実施例1では、送信局がA局及びB局の場合を例として説明したが、本発明は、送信局が3以上の場合にも適用がある。つまり、本発明は、n×1MISOシステムに適用がある(nは2以上の正の整数)。この場合、測定器1の遅延差検出部16は、n経路の遅延プロファイルを入力し、n経路の遅延プロファイルのピーク位置を検出する。そして、遅延差検出部16は、n経路の遅延プロファイルのピーク位置のうち、所定の1つの送信局との間の経路における遅延プロファイルのピーク位置、及び他の1つの送信局との間の経路における遅延プロファイルのピーク位置について、その時間間隔を、所定の1つの送信局及び他の送信局から送信された両放送波の遅延差として検出する。
【0075】
また、前記実施例1では、同一偏波を用いたMISOシステムの例を挙げて説明したが、本発明は、異なる偏波を用いるMISOシステム、及び偏波を用いない空間MISOシステム等にも適用がある。また、前記実施例2では、両偏波を用いたMIMOシステムの例を挙げて説明したが、本発明は、偏波を用いない空間MIMOシステム、指向性MIMOシステム等にも適用がある。本発明では、アンテナ間の距離を十分にとり、相関を低くすることにより、MISOシステム及びMIMOシステムにおいて同一偏波を用いることができる。
【0076】
例えば、偏波を用いない空間MIMOシステムにおいて、
図7及び
図9を参照して、送信装置103は、送信アンテナ113から第1の主成分の放送波を送信し、送信アンテナ114から第2の主成分の放送波を送信する。また、送信装置104は、送信アンテナ115から第1の主成分の放送波を送信し、送信アンテナ116から第2の主成分の放送波を送信する。また、
図9及び
図10を参照して、測定器2は、第1の主成分の放送波を、受信アンテナ4にて受信し、第2の主成分の放送波を、受信アンテナ5にて受信する。測定器2の遅延差検出部26は、受信した放送波における主成分の遅延プロファイル(
図9に示した遅延プロファイルa
HH,b
HH,a
VV,b
VVに対応する遅延プロファイル)のピーク位置をそれぞれ検出し、第1の主成分における2つの遅延プロファイル(遅延プロファイルa
HH,b
HHに対応する遅延プロファイル)のピーク位置の時間間隔、または、第2の主成分における遅延プロファイル(遅延プロファイルa
VV,b
VVに対応する遅延プロファイル)のピーク位置の時間間隔を、A,B局から送信された両放送波の遅延差として検出する。
【0077】
また、前記実施例2では、H偏波及びV偏波による偏波方式の例を用いて説明したが、本発明は、他の偏波(例えば円偏波)によるMIMO方式を用いた場合にも適用がある。また、前記実施例2では、送信局がA局及びB局の場合を例として説明したが、本発明は、送信局が3以上の場合にも適用がある。つまり、本発明は、2n×2偏波MIMOシステムに適用がある(nは2以上の正の整数)。
【0078】
この場合、測定器2の遅延差検出部26は、2n×2偏波MIMOシステムにおける複数の経路の遅延プロファイルを入力し、複数の経路における主偏波成分の遅延プロファイルのピーク位置を検出する。そして、遅延差検出部26は、複数の経路における主偏波成分のピーク位置(例えば、H偏波を主偏波成分とした場合の遅延プロファイルa
HH,b
HH,c
HH,d
HH,・・・のピーク位置、及びV偏波を主偏波成分とした場合の遅延プロファイルa
VV,b
VV,c
VV,d
VV,・・・のピーク位置)のうち、同じ種類の偏波成分のピーク位置(例えば、H偏波成分の遅延プロファイルa
HH,b
HH,c
HH,d
HH,・・・のピーク位置)を選択する。そして、遅延差検出部26は、選択した複数のピーク位置のうち、所定の1つの送信局(例えばB局)との間の経路におけるピーク位置(例えば、遅延プロファイルb
HHのピーク位置)、及び他の送信局(例えばC局)との間の経路におけるピーク位置(例えば、遅延プロファイルC
HHのピーク位置)について、その時間間隔を、所定の1つの送信局(例えばB局)及び他の送信局(例えばC局)から送信された両放送波の遅延差として検出する。また、本発明は、例えば4×4MIMOシステムにも適用がある。
【0079】
また、前記実施例1,2では、測定器1,2の例を挙げて説明したが、本発明は受信装置にも適用がある。受信装置は、
図4に示した実施例1の構成部または
図10に示した実施例2の構成部を備え、遅延差を検出すると共に、受信した放送波OFDM信号を復調する。
【0080】
また、前記実施例1において、
図4に示した実施例1における測定器1の有効シンボル期間抽出部11から遅延差検出部16までの各構成部の処理は、測定器1に搭載される集積回路であるLSIのチップにより実現されるようにしてもよい。これらは、個別に1チップ化されていてもよいし、これらの一部または全部が1チップ化されていてもよい。
【0081】
また、LSIの代わりに、集積度の異なるVLSI、ULSI等のチップにより実現されるようにしてもよい。さらに、LSI等のチップに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いるようにしてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いるようにしてもよい。
図10に示した実施例2における測定器2の有効シンボル期間抽出部21−1,21−2から遅延差検出部26までの各構成部の処理についても同様であり、測定器2に搭載されるチップにより実現される。