【文献】
Jus4SweetZ,How to make Heart Shaped Butter,<https://www.youtube.com/watch?v=q7Nif9epGEk>,2013年 2月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、スライス状バターを使用することによって、バターナイフ等によって食パンにバターを均一に塗ることの煩雑さは解消される。
ところで、冷蔵庫から出した直後は硬いバターも、一定時間室温(20℃程度)下にバターを保持すると、バターの温度が上昇し、柔らかな状態となる。スライス状バターも冷蔵庫から出して一定の時間が経過すると柔らかな状態となるので、一定時間が経過するとスライス状の形状を保持できず、手で持って食パン上の想定している位置に載せることが困難となる。その為、柔らかな状態となってもスライス状の形状を保持するために、上記のような可食性フィルムで包装する方法が考えられていた。しかし、可食性フィルムを使用すると、フィルム本体の食感や風味がスライス状バターの風味や食感に影響を与えるという問題があるので好ましくない。
そこで、スライス状バターを冷蔵庫から出した後に柔らかな状態となる時間を出来るだけ遅くする為に、スライス状バターに一定以上の厚みを持たせ、温度上昇を出来るだけ抑制することが考えられる。
この場合、スライス状バターの面積(スライス状バターを上から見た面積)を一定のままにして厚みのみを増した場合、スライス状バターの厚みが増すにしたがい、食パンの量に対してバターの量が過剰となり油の多さを感じやすいという問題がある。
そこで、スライス状バターの量を減らす為に、一定の厚みを確保しつつ面積を小さくする事が考えられるが、面積を小さくしてしまうと、食パンの上面(食パンを上からみた面)上のスライス状バターの面積が小さくなり、食パンの一部はバターがあるが、その他の部分はバターがないこととなる。その結果、スライス状バターを載せた食パンを食するときに、食パンの場所によりバターの量が異なるという問題点が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、可食性フィルムを使用せずに、冷蔵庫から出して直後又は室温下で一定の時間が経過した後に、スライス状バターの形状が持ち上げ可能な程度に保持され、バターナイフ等を用いて食パンにバターを塗るよりも簡便に食パンにバターを載せる事のできるスライス状バターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スライス状バターに孔を開けることで、上記の課題を解決した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>1または2以上の孔を有するスライス状バター。
<2>
厚さが1.2mm以上である、<1>に記載のスライス状バター。
<3>
厚さが2.0mm以上である、<1>乃至<2>のいずれかに記載のスライス状バター。
<4>
孔の総面積が、外周部で囲まれた面積の1/10〜8/10である<1>乃至<3>のいずれかに記載のスライス状バター。
<5>
孔の総面積が外周部で囲まれた面積の2/10〜8/10である<1>乃至<3>のいずれかに記載のスライス状バター。
<6>
ブロックに形成されてなるバターであって、該ブロック中に1または2以上の孔が形成され、スライス状に切断した場合に、1または2以上の孔を有するスライス状バターを生成可能な、バター。
<7>
ブロックが直方体である<6>に記載のバター。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスライス状バターにより、冷蔵庫から出した直後または一定時間が経過後も、食パンに簡単に一定量のバターを載せることが出来、食パンにバターを塗る作業の利便性が高められる。
また、バターに孔が形成されているため、室温ですぐに溶け出さないような一定以上の厚みを保持しつつも、バターの全体の重量を抑えられているので、カロリーを出来るだけ抑えることが出来て、一日のカロリーの摂取コントロールが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の、「バター」とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)に規定するバター以外に、バターに植物油や動物油を混合した油脂組成物も含む。ただし、バターに植物油や動物油を混合した油脂組成物は、乳等省令に規定するバターの温度曲線(温度が5℃〜25℃の範囲)と同等か高い固体脂含量を有する必要がある。油脂組成物の原料は、植物油としては、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、大豆油、パーム核油、ナタネ硬化油、大豆硬化油などが、動物油としてはラードや牛脂などが使用可能である。
本発明のスライス状バターについて実施状態を図面に基づいて説明する。以下の説明においては、バターについて記載しているが、バターに植物油や動物油を混合した油脂組成物に置き換えても同等の効果を有する。
図1(a)、
図1(b)は、本発明のスライス状バターの使用形態を示す図である。何れも、上方から見た平面図である。
図1(a)は食パン(1)の上に、5つの円形状の孔(3a〜3e)を有するスライス状バター(2)が載っている状態を示している。孔(3a〜3e)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。スライス状バター(2)は太線で表した四角形の外周部(4)で囲われており、スライス状バターの面積(2)と5つの孔(3a〜3e)の面積を全て含めた全ての面積を合計した面積を、外周部で囲まれた面積とする。
図1(b)は食パン(5)の上に、1つの円の形状の孔(7)を有するスライス状バター(6)が載っている状態を示している。孔(7)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。
図1(a)の外周部(4)が直線で構成されているのに対し、
図1(b)の外周部(8)は直線及び曲線で構成されている。この様に、外周部は直線や曲線の組み合わせで構成される場合もある。スライス状バター(6)は太線で表した外周部(8)で囲われており、スライス状バター(6)と1つの孔(7)を全て含めた全ての面積を合計した面積を、外周部で囲まれた面積とする。外周部とは換言すればスライス状バターの外側の輪郭線とも言える。したがって、外周部で囲まれた面積とは、チーズ外側の輪郭線で囲まれた面積ともいえる。
【0010】
本発明のスライス状バターの形状及び孔の形状、個数及び位置のバリエーションを
図2に示す。スライス状バターを上方から見た平面図を
図2(a)〜(e)に示した。
図2(a)は1つの円の形状の孔(11)を有する太線の四角形の外周部(12)で囲まれたスライス状バター(10)である。孔(11)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。
図2(b)は9個の円の形状の孔(14a〜14i)を有する太線の四角形の外周部(15)で囲まれたスライス状バター(13)である。孔(14a〜14i)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。このように、孔の数は任意に増減することができる。
図2(c)は9個の星の形状の孔(21a〜21i)を有する太線の四角形の外周部(22)で囲まれたスライス状バター(20)である。孔(21a〜21i)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。このように、孔の形は任意に変更可能である。
図2(d)は4個の円の形状の孔(23a〜23d)を有する太線の外周部(25)で囲まれたスライス状バター(23)である。孔(23a〜23d)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。本バリエーションの外周部(25)で囲まれる形は三角形である。このように、外周部で囲まれる形は任意に変更可能である。
図2(e)は4個の円の形状の孔(31a〜31d)を有する太線の外周部(32)で囲まれたスライス状バター(30)である。孔(31a〜31d)はスライス状バターの表面から裏面へ貫通するように設けられている。外周部(32)で囲まれる形は円を2個重ねた形である。このように、外周部で囲まれる形は、複数の図形を任意に組み合わせる事も出来る。
また、スライス状バター内の孔も任意の形状とすることが可能であり、任意の形状を組み合わせることで、イラストや文字の形の孔を有するスライス状バターとすることも出来る。
このほかにも、本発明のスライス状バターの孔の形状、大きさ、個数及び位置並びにスライス状バターの形状、大きさのバリエーションは、スライス状バター1枚分の重量や溶け出した時の形状等を考慮して適宜変更できる。孔の数も1個から数個、数十個程度の場合を
図1,2において例示したが、この他にも小さな孔を数百個以上設けることも可能である(図示せず)。
本発明のスライス状バターの孔の総面積は、例えば、外周部で囲まれた面積の1/10〜8/10とすることができ、2/10〜8/10程度がより望ましい。
スライス状バターの厚みは、食パンに載せて食することを考慮すれば、下限は1.0mm以上であり、1.2mm以上が望ましく、1.5mm以上がより望ましく、2mm以上がよりいっそう望ましいこともある。また、上限は、10mm以下であり、5mm以下が望ましく、4mm以下がさらに望ましく、3mm以下がよりいっそう望ましいこともある。
【0011】
本発明のスライスバターは、フィルムで包装してもよい。フィルムは食品包装用プラスチックフイルムであればよい。フィルムで包装する場合は、スライスバターを覆いこむように包装することが好ましい。
【0012】
図3に本発明のブロックに形成されたバターの斜視図を示す。ブロック状バター(40)の長手方向を(a方向)とし、(a方向)に直交し、互いに直交する2つの方向をそれぞれ(b方向)、(c方向)とする。ブロック状バター(40)の内部には(a方向)に延在するように3つの孔(41a〜41c)が設けられている。該孔は貫通して形成されていることが好ましい。このブロック状バター(40)は、a方向と略垂直に、任意の厚さに切断することができる。そのように切断することにより、本発明のスライス状バターを得ることが出来る。ブロックの形状は他に、円柱、三角柱、5角柱、楕円形状の円柱などいずれでもよく、内部に1または2以上の孔が形成されていればよい。孔は、必ずしも(a方向)と水平である必要はなく、(b方向)や(c方向)と水平でもよく、いずれの方向とも水平でなくても良い。また、ブロックの外周面に、スライスしやすいように溝が等間隔で形成されていてもよい。溝の間隔は1.2mm以上が好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。
【0013】
このようなブロック形状のバターは、例えば、常法に従い製造されたバターを以下の通り加工することで製造することも出来る。バターを30℃前後に昇温し、流動性のある状態にする(以下この段落でのみ「流動性バター」と呼ぶ)。作成する型にあわせた容器内に流動性バターを流し込んだ後に冷却し固めればブロック状のバターとなる。冷却後に固まったブロック状のバターを取り出し、棒状の道具等を用いて孔を形成する。また、孔を形成する棒状の道具等を容器内にあらかじめ配置してから流動性バター流し込んでから冷却し固めることにより孔を形成してもよい。
【0014】
<試験例1>スライス状バターの使用適正評価(フィルムで包装)
フィルムで包装したスライス状バターの表面温度の違いによる、使用適正を評価する為に以下の試験を行った。
(1)試料(スライス状バター)の作成
市販の雪印北海道バター(登録商標)を、ローラーにて展延し目的の形状に加工した。縦100mm、横100mmの正方形で厚さ2mmのスライス状バターを作成した。作成したスライス状バターを厚さ0.16mmの透明プラスチックフィルムで上下から包み込むように挟んで、フィルムが縦110mm、横105mmとなるように調整した。フィルムで包装したスライス状バターを、中心温度が5℃になるように、事前に冷蔵庫で冷却した。
(2)評価内容
冷蔵庫からスライス状バターを取り出し室温(25℃)に静置した。スライス状バターの表面温度は徐々に上昇するので、表面温度計にて温度を測定した。表面温度は放射温度計THI−500(タスコジャパン製)にて表面温度を測定し、5℃、15℃、20℃に到達した時点で使用の適性評価を行った。評価項目を表2に示す。
【0016】
(3)評価結果
使用の適性評価の結果、表面温度5℃、15℃では、溶解性、保形性、剥離性ともに良好であった。一方、20℃ではいずれの項目も悪い評価となった。したがって、フィルムに包装されたスライス状バターを取り出して使用するには、表面温度が15℃を大きく超えないことが必要であることが分かった。
【0017】
<試験例2>スライス状バターの使用適正評価(包装なし)
フィルムで包装していないスライス状バターの表面温度の違いによる、使用適正を評価する為に以下の試験を行った。
(1)試料(スライス状バター)の作成
試験例1の(1)と同様の手順で試料を作成した。フィルム包装は行わなかった。
(2)評価内容
評価内容は、試験例1の(2)に順じて行った。評価項目は保形性のみ実施した。
【0018】
(3)評価結果
使用の適性評価の結果、表面温度5℃、15℃では、保形性が良好であった。一方、20℃では保形性が悪かった。したがって、フィルムに包装されていないスライス状バターを取り出して使用するには、表面温度が15℃を大きく超えないことが必要であることが分かった
【0019】
<試験例3>スライス状バターの表面温度変化の評価
試験例1の結果を踏まえ、冷蔵庫から出したスライス状バターの表面温度が、室温下で15℃に達するまでの時間を測定した。15℃に達するまでの時間が長いほど、スライス状バターを冷蔵庫から取り出して使用するまでの時間が長く確保できるので、好ましい。
(1)試料(スライス状バター)の作成
市販の雪印北海道バター(登録商標)を、ローラーにて展延し目的の形状に加工した。縦100mm、横100mmの正方形で厚さを表1に示すようなスライス状バターを作成した。作成したスライス状バターを厚さ0.16mmの透明プラスチックフィルムで上下から包み込むように挟んで、フィルムが縦110mm、横105mmとなるように調整した。フィルムで包装したスライス状バターを、中心温度が5℃になるように、事前に冷蔵庫で冷却した。
【0020】
【表2】
(2)表面温度評価
雰囲気温度25℃にコントロールされた実験室内に、フィルムで挟んだスライス状バターを静置した。表面温度は放射温度計THI−500(タスコジャパン製)にて経時的に測定した。表面温度が5℃から20℃になるまで、測定を行った。5℃から15℃に上昇するまでに要した時間を表2に示した。
No1では到達時間が30秒であり、厚さが増すにしたがい、到達時間は延長した。No2では到達時間が50秒であった。到達時間は長い方が冷蔵庫から出したスライス状バターを食パンに載せるまでの時間も長くなるので好ましいが、通常の使用の範囲では50秒あればスライス状バターを食パンに載せる時間としては十分であると考えられる。したがって、1.2mm以上であればスライス状バターの日常的な使用に要求される時間を満たしていると思われる。厚さが2.0mm以上であれば、到達時間は100秒となるので、更に好ましい。
【0021】
<試験例4>スライス状バターの厚みと重量の関係
試験例1でスライス状バターの厚さは1.2mm以上が好ましい事がわかった。以下に厚さが1.2mm以上で、本発明のスライス状バターを作成する試験を行った。
(1)スライス状バターの作成
通常の食パンは縦11cm、横12cm程度である。食パンに載せて食することが想定されているスライスチーズの大きさが縦8cm〜10cm、横8cm〜10cm程度の正方形であることから、スライス状バターの大きさも同様に縦10cm、横10cmの正方形と想定し、試験を行った。食パン1枚に対して適正と思われるバターの量は5g〜10gであることから、バターの量を5g、10g、15g、20gとして、それぞれの場合に、厚さが1.2mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5、0mmのスライス状バターを作成した。スライス状バターの外周部で囲まれた面積及びバターの厚みはそれぞれ一定のため、バターの重量の調整は、スライス状バターの中央1箇所に孔を設けて、孔の面積を調整することにより行った。孔の面積がスライス状バターの外周部に囲まれた面積に占める割合を表3に示す。尚、斜線の欄は作成が出来ない組合せである。
【0023】
(2)評価結果
表3の斜線欄以外の組合せはいずれも作成することが出来た。よって、孔の面積比を変更することにより、目的の重量及び厚さのスライス状バターを得ることができることが分かった。また、何れの組合せも風味は良好であったが、バターの重量が増加するに伴い、バターの風味が増強した。表3を元に、各種スライス状バターを作成することが出来る。
【0024】
<試験例5>本発明のスライス状バターをパンに載せて焼いた時の評価
(1)試料の作成
縦10cm、横10cmの正方形の外周で囲まれ、バター10g、厚さ3.0mmで、孔の面積のスライス状バターの外周部に囲まれた面積に占める割合が64%であるスライス状バターを作成した。孔の形状は、
図4(b)が縦4cm横4cmの正方形の孔を4個、図(c)が半径4.5cmの円の孔を1個有する。
図4(a)が本発明のスライス状バターの外周部で囲まれた形状、厚みが同じであって孔を有さないスライス状バター(従来品)を縦6cm、横6cmの正方形とした。
(2)評価結果
(a)スライス状バターを食パンに載せたあと加熱して評価
(1)で得られたスライス状バターをそれぞれ縦11cm、横12cmの食パンに載せてオーブンで焼いた。社内の訓練された官能パネラー5人でそれぞれの組み合わせを官能評価した所、5人とも本発明のスライス状バターの組み合わせ
図4(b)、(c)の方が
図4(a)と比較し風味が良好だと判断した。
(b)オーブンで焼いた食パンにスライス状バターを載せて評価
予め縦11cm、横12cmの食パンをオーブンで焼き色が付く程度に焼いた。(1)で得られたスライス状バターをそれぞれ食パンに載せた。社内の訓練された官能パネラー5人でそれぞれの組み合わせを官能評価した所、5人とも本発明のスライス状バターの組み合わせ
図4(b)、(c)の方が
図4(a)と比較し風味が良好だと判断した。