(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[実施形態]
(フィルタ部材)
本発明の一実施形態に係るフィルタ部材は、光透過面を有する光学フィルタと、光学フィルタを、当該光学フィルタの側面から支持する封止部と、を備え、光学フィルタと封止部との間、又は封止部の内側面と外側面との間、の少なくともいずれか一方に、窪み又は貫通孔の少なくともいずれか一方を有するものである。
【0010】
ここで、光学フィルタは光透過面として、光が入射する光入射面と、光学フィルタに入射した光がその面を通して外部に出て行く光出射面とを有している。また光入射面及び光出射面の間を繋ぐ部分の外縁が側面として定義される。光入射面、光出射面及び側面は平坦な面であってもよく、平坦でない面であってもよい。また、光学フィルタの形状は正方形や長方形等の矩形であってもよく、また、多角形や円形であってもよく、どのような形状であってもよい。
【0011】
封止部は光学フィルタの側面の少なくとも一部と接していればよく、光学フィルタの側面の全域と接していてもよい。また、封止部は光学フィルタの側面のみに限らず、光入射面及び光出射面とも接していてよい。また、封止部と光学フィルタとの間に、上面視で光学フィルタの縁部全周に沿った形状の貫通孔が形成されている場合には、封止部の内側面に、光学フィルタ側に突出して設けられた凸部により光学フィルタが支持されていてよい。凸部は封止部と同一部材で形成されていてもよく、封止部と光学フィルタとを接着する接着剤であってもよい。つまり光学フィルタが、接着剤を介して封止部によって支持されていてもよい。封止部と光学フィルタとの間により多くの空間を確保して、光学フィルタに伝わる封止部の変形応力量を低減する観点から、凸部と光学フィルタの側面とが接する面積は小さいことが好ましい。
【0012】
窪みとは、その周囲よりも凹んだ領域を意味する。また窪みは側面及び底面を有する。つまり、封止部の内側面と外側面との間に窪みを有するとは、封止部の一部がその周囲よりも凹んだ状態となっていることを意味する。また、封止部と光学フィルタとの間に窪みを備えるとは、窪みの側面又は底面の少なくとも一部が封止部及び光学フィルタからなることを意味する。この形態の一例としては、光学フィルタの側面が窪みの側面の一部をなし、封止部側に窪みの側面の他の部分と底面とが形成されている形態が挙げられる。
【0013】
貫通孔とは、光学フィルタの一方の光透過面に対応する側から、他方の光透過面に対応する側にフィルタ部材の内部を貫いて通じる孔を意味する。また、封止部の内側面と外側面との間に貫通孔を備えるとは、封止部の一部に貫通孔が形成されており、貫通孔の側面が封止部によって区画された状態を意味する。また、封止部と光学フィルタとの間に貫通孔を備えるとは、貫通孔の側面が封止部及び光学フィルタによって区画された状態を意味する。この形態の一例としては、光学フィルタの側面の一部が貫通孔の側面の一部をなし、封止部の側面の一部が貫通孔の側面の他の一部をなす形態が挙げられる。
【0014】
窪み又は貫通孔を、光学フィルタの縁部の一部又は縁部全周に沿った形状とすることで、光学フィルタに伝わる変形応力を光学フィルタの縁部に沿って抑制することができる。そのため、光学フィルタの変形をより確実に回避することができる。
窪み又は貫通孔は、上面視で、複数の窪み又は貫通孔が、光学フィルタの縁部の一部又は縁部全周に沿って配置されていてもよい。つまり、例えば光学フィルタが多角形である場合には、複数の窪み又は貫通孔が一辺に沿って配置されていてもよい。
【0015】
また、窪みと貫通孔とが混在して設けられていてもよい。また、例えば、光学フィルタと封止部との間に光学フィルタの縁部全周に沿った形状の貫通孔を設けると共に、貫通孔よりも封止部の外側面側に、窪みを設けてもよい。
本発明の一実施形態に係るフィルタ部材は、このような構成を有する結果、温度や湿度等の環境変化によって光学フィルタの透過特性の変化を抑制することの可能なフィルタ部材を実現することができる。
【0016】
<<第1実施形態>>
<構造>
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルタ部材の一例を示す構成図である。
図1(a)は上面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A′断面図である。
図1(a)、
図1(b)に示すように、フィルタ部材1は、上面視で、光学フィルタ2を挟んで向かい合うように2つの貫通孔4を封止部3に備え、各貫通孔4は、光学フィルタ2の縁部の一部に沿った形状を有する。
【0017】
封止部3は、例えば上面視で略正方形の板状を有し、封止部3の略中央部分に光学フィルタ2が配置される。
光学フィルタ2は、例えば上面視で略正方形状であり、光学フィルタ2の略正方形の一方の面が光入射面2a、他方の面が光出射面2bとなる。
この光学フィルタ2は、その側面を覆うように配置される封止部3によって支持される。
貫通孔4は、光学フィルタ2を挟んで封止部3の、光学フィルタ2側の内側面と光学フィルタ2とは逆側の外側面との間の略中央部分に設けられ、光学フィルタ2の平行な2つの辺それぞれに設けられる。貫通孔4は、光学フィルタ2の辺に沿った線形状を有する。
【0018】
<製造方法>
図2は、フィルタ部材1の製造方法の一例を工程順に示す断面図である。ここでは、
図1(b)に示した断面図に沿って、各工程を説明する。
図2(a)に示すように、まず耐熱性の粘着シート11を用意する。
なお、粘着シート11としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂性のテープが用いられる。粘着性については、粘着層の糊厚がより薄い方が望ましい。また、耐熱性については、約150℃以上200℃以下の温度に耐えることが必要とされる。
このような粘着シート11として、例えばポリイミドテープを用いることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、例えば、後工程としてトランスファーモールド工程が実行される場合には、このトランスファーモールド工程時に加わる高熱にも耐えることが可能である。
【0019】
また、粘着シート11としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
・ポリエステルテープ 耐熱温度:約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標) テープ耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックスペーパー(登録商標 デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社製)
耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が粘着シート11として利用することができる。
【0020】
次に、粘着シート11の粘着層11aに光学フィルタ2の一方の面、例えば光入射面2aを貼付する。
なお、光学フィルタ2の光入射面2aや光出射面2bには、予め、保護膜を貼付してもよい。
次に、
図2(b)に示すように、光学フィルタ2の光入射面2a側に下金型22を配置すると共に、光学フィルタ2の光出射面2b側に上金型21を配置する。そして、上金型21と下金型22とにより光学フィルタ2を挟み込み、上金型21と下金型22とに挟まれた空間(即ち、キャビティ)にサイドから溶融した封止材を注入し充填する。封止材として、例えばエポキシ樹脂を用いる。これにより、封止部3を形成する。
【0021】
図2(b)に示すように、例えば上金型21の下側(即ち、キャビティ側)の面は断面視で凹凸形状となっている。この凸部21aによって、
図1に示す貫通孔4が形成される。
また、このフィルタ部材1の形成工程では、上金型21の凹部21bと光学フィルタ2との間にフッ素樹脂製シートを介在させ、上金型21の凹部と光学フィルタ2とがフッ素樹脂製シートを介して隙間無く接触し、且つ、光学フィルタ2の光入射面2aと下金型22とが粘着シート11を介して隙間無く接触した状態で、サイドからエポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、フィルタ部材1の形成終了後は、光学フィルタ2の光入射面2a及び光出射面2bが、それぞれ封止材から露出した状態となる。
【0022】
次に、上金型21及び下金型22をそれぞれ上方向及び下方向に移動させて、
図2(c)に示すように、フィルタ部材1が形成されたフィルタ部材群を両金型間から取り出す。そして、光学フィルタ2の光入射面2a側から粘着シート11を除去する。粘着シート11の除去後、封止材をより硬化させるためのポストキュアを行い、封止材薄バリを完全に除去するのに必要ならばウェットブラストを施し、さらに、光学フィルタ2の光入射面2aや光出射面2bに保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
次に、
図2(d)に示すように、フィルタ部材1の光出射面2b側にダイシングテープ12を貼付し、ダイシング装置によりダイシングする。これにより、フィルタ部材1は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、
図1に示したフィルタ部材1が完成する。
【0023】
<変形例>
図1では、封止部3に貫通孔4を設けた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、貫通孔4に代えて窪みを設けてもよい。
<第1実施形態の効果>
封止部3に貫通孔4を設けることで、封止材の体積が減少し、湿度や温度等の変動によって封止材が膨張、収縮した場合の封止材の変形応力が減少する。また、封止部3に設けられた貫通孔4が変形することによって封止部3の変形応力が吸収され、結果的に光学フィルタ2に伝わる変形応力が減少する。そのため、変形応力が光学フィルタ2に伝わった際に生じる光学フィルタ2の変形量も減少し、光学フィルタ2の透過特性の変化を低減することができる。
【0024】
なお、第1実施形態では、光学フィルタ2の一対の平行な辺それぞれについて、この辺に沿った形状の貫通孔4を、封止部3に設けた場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、封止部3に、光学フィルタ2の4辺それぞれに対応する、各辺に沿った形状の4つの貫通孔4を設けてもよく、また、いずれか1辺或いは3辺に沿った形状の貫通孔4を設けるようにしてもよい。また、光学フィルタ2の一辺に、この辺に沿った形状の一つの貫通孔4を設けているが、例えば、複数の貫通孔4を光学フィルタ2の一辺に沿って設けてもよい。
【0025】
<<第2実施形態>>
<構造>
図3は、本発明の第2実施形態に係るフィルタ部材の一例を示す構成図である。
図3(a)は上面図であり、
図3(b)は
図3(a)のA−A′の断面図である。
図3(a)、
図3(b)に示すように、封止部3は、その略中央部に、光学フィルタ2の外周よりも大きい貫通孔が形成されている。この貫通孔に光学フィルタ2を配置すると、光学フィルタ2と封止部3との間に隙間が形成される。つまり、上面視で光学フィルタ2の縁部全周にわたって、光学フィルタ2と封止部3との間に貫通孔4aが形成される。そして、光学フィルタ2の角部分で、接着剤5により封止部3と光学フィルタ2とを固定することによって、光学フィルタ2は、封止部3により支持される。
【0026】
<製造方法>
図4は、第2実施形態におけるフィルタ部材の製造方法の一例を工程順に示す断面図である。ここでは、
図3(b)に示した断面図に沿って、各工程を説明する。ただし、接着剤塗布工程のみは
図3(a)に示した上面図を用いて説明する。
まず、
図4(a)に示すように、上金型31と下金型32とを対向するように配置させ、上金型31と下金型32とに挟まれた空間(即ち、キャビティ)にサイドから溶融した封止材を注入し、充填する。封止材として例えばエポキシ樹脂を用いる。これにより、封止部3となる封止材群を形成する。
図4(a)に示すように、例えば上金型31の下側(即ち、キャビティ側)の面は断面視で凹凸形状となっており、この凸部31aによって、
図4(b)に示すように、光学フィルタ2を収容可能な大きさの貫通孔4a′が形成される。
【0027】
次に、上金型31及び下金型32をそれぞれ上方向及び下方向に移動させて、フィルタ部材1が形成された封止材群を両金型間から取り出す。そして、封止材をより硬化させるためのポストキュアを行い、さらに封止材薄バリを完全に除去するのに必要ならばウェットブラストを施す。
次に、
図4(c)に示すように封止材群間の貫通孔4aに光学フィルタ2を挿入して位置決めし、
図4(d)に示すように光学フィルタ2の一方の面、例えば光入射面2a側の、4つの角部分の封止材つまり封止部3と光学フィルタ2との間に接着剤(エポキシ樹脂等)5を塗布し、封止部3と光学フィルタ2とを固定する。そして、接着剤5をより硬化させるためのポストキュアを行う。さらに、光学フィルタ2の他方の面、例えば、光出射面2b側にも光入射面2aと同様の接着剤処理を行ってもよい。また、光学フィルタ2の角部分だけでなく、角部分の、光入射面2a側から光出射面2b側にかけて光学フィルタ2の厚さ方向にわたって全体に接着剤5を塗布してもよい。封止部3の貫通孔4aからなる開口部の角部分は、例えば
図4(d)に示すように、上面視で曲率Rを持っており、光学フィルタ2の角部と封止部3の曲率Rを有する角部との間の、封止部3の角部と光学フィルタ2の角部との距離が最も短くなる部分で接着剤5により接着される。
【0028】
これによって、
図4(d)に示すように、封止部3と光学フィルタ2との間に、上面視で、光学フィルタ2の縁部全周に沿った形状の貫通孔4aが形成され且つ、封止部3と光学フィルタ2とが角部分で接着剤5によって固定されたフィルタ部材1が形成される。
次に、
図4(e)に示すように、フィルタ部材1の一方の面、例えば光出射面2b側にダイシングテープ12を貼付し、ダイシング装置によりダイシングする。これにより、フィルタ部材1は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、
図3(b)に示したフィルタ部材1が完成する。
【0029】
<変形例>
図3では、封止部3と光学フィルタ2との間に、上面視で光学フィルタ2の縁部全周に沿った形状の貫通孔4aを設けた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、貫通孔4aに代えて窪みを設けてもよい。つまり、上面視で光学フィルタ2の縁部全周に沿った形状の窪みを設けてもよい。この場合には、窪みの底部に相当する光学フィルタ2と封止部3とが接する側面部分で光学フィルタ2を支持するようにしてもよく、光学フィルタ2と封止部3とが接する部分を接着剤5で接着してもよい。
【0030】
<第2実施形態の効果>
上面視で光学フィルタ2の縁部全周に沿った形状の貫通孔4aを設け、光学フィルタ2の角部で光学フィルタ2と封止部3とを接着剤5で固定することで、接着剤5を介した、光学フィルタ2と封止部3との接触面積を最小化することができる。そのため、第1実施形態と同様に、湿度や温度等の変動によって封止材が膨張又は収縮した場合の封止材の変形応力が光学フィルタ2に伝わり難くなる。また、封止部3と光学フィルタ2の間の貫通孔4aが変形することによって封止部3の変形応力が吸収され、結果的に光学フィルタ2に伝わる変形応力が減少する。そのため、光学フィルタ2の変形量を低減することができ、光学フィルタ2の透過特性の変化を低減することができる。
【0031】
<<第3実施形態>>
<構造>
図5は、本発明の第3実施形態に係るフィルタ部材の一例を示す構成図である。
図5(a)は上面図であり、
図5(b)は
図5(a)のA−A′の断面図である。
図5(a)、
図5(b)に示すように、フィルタ部材1は、光学フィルタ2と封止部3との間に、上面視で、光学フィルタ2の縁部全周に沿った形状の貫通孔4bを有し、光学フィルタ2と封止部3とはその各辺の中央で接着剤5により固定されている。つまり、第2実施形態におけるフィルタ部材では、上面視で矩形の光学フィルタ2の縁部全周において光学フィルタ2と封止部3との間に隙間が形成され、封止部3と光学フィルタ2とを4つの角部で接着剤5により接着することによって、封止部3により光学フィルタ2を支持しているのに対し、第3実施形態では、角部ではなく、各辺の中央部分で、封止部3と光学フィルタ2とが接着剤5により接着されている。
【0032】
<製造方法>
接着剤5の塗布部分が光学フィルタ2の各辺の端部ではなく各辺の中央部分であることを除けば、製造方法は第2実施形態と同様である。
<変形例>
図6は本発明の第3実施形態に係るフィルタ部材の変形例を示す図である。
図6(a)は上面図であり、
図6(b)は
図6(a)のA−A′の断面図である。光学フィルタ2と封止部3との接着部分は、各辺の中央部にある必要はなく、例えば、
図6(a)、
図6(b)に示すように、各辺の中央部からずれた位置にあってもよく、上面視で光学フィルタ2の重心を対称中心として、点対称となる位置にあってもよい。
【0033】
また、光学フィルタ2と封止部3との接着部分は、光学フィルタ2の互いに平行な2つの側面それぞれに対応する接着部分(凸部)が、これら接着部分どうしを結んだ線分が、互いに平行な側面に対して非垂直となるように配置されていてもよい。つまり、矩形の光学フィルタ2の、平行な2つの側面それぞれに対応する接着部分が、上面視で、平行な2つの側面間の中央を通り且つこれら側面に平行な線分を対称の軸として、線対称の位置とならないように配置されていてもよい。
また、
図5及び
図6では、貫通孔4bを設けた場合について説明したが、貫通孔4bではなく窪みであってもよい。
【0034】
<第3実施形態の効果>
上面視で、光学フィルタ2の縁部に沿って全周にわたって貫通孔4bを設け、光学フィルタ2と封止部3とを辺毎に1箇所ずつ接着剤5で接着する構成とし、光学フィルタ2と封止部3との接着剤5を介した接触面積をより低減することによって、湿度や温度の変動によって封止材が膨張、収縮した場合に、封止材の変形応力が光学フィルタ2に伝わり難くすることができる。また、封止部3と光学フィルタ2の間の貫通孔4bが変形することによって封止部3の変形応力が吸収され、結果的に光学フィルタ2に伝わる変形応力が減少する。そのため、光学フィルタ2の変形量を低減することができ、光学フィルタ2の透過特性の変化を低減することができる。
【0035】
また、上面視が矩形の光学フィルタ2において、光学フィルタ2の平行な2辺において、光学フィルタ2と封止部3とを接着する場合、接着剤を塗布する位置を、各辺の中央ではなく、中央からずらして配置してもよい。
例えば、上面視で、光学フィルタの2つの対角線を、対角線の交点を基準として左右45度未満の範囲で回転させた2つの線分上に接着剤を塗布して固定するようにしてもよい。このように、各辺の中央からずらした位置で接着することで、光学フィルタ2に応力が伝わったとしても、上面視で光学フィルタ2の重心を中心に上面視水平方向に光学フィルタ2が回転し、光学フィルタ2の変形量が低減する。これにより、光学フィルタ2の透過特性の変化をより低減することができる。また、2つの接着部分がフィルタ中心点を基準に点対称であると、光学フィルタ2を効率的に回転させることができるため光学フィルタ2の変形量がより低減し、透過特性の変化をさらに低減することができる。
【0036】
同様に、光学フィルタ2の互いに平行な2つの側面それぞれに対応する接着部分を、上面視で、平行な2つの側面間の中央を通るこれら側面に平行な線分を対称の軸として、線対称の位置とならないように配置した場合も、封止部3の変形応力により、光学フィルタ2が上面視水平方向で回転する。そのため、この場合も、光学フィルタ2を効率的に回転させることができ、透過特性の変化の低減を図ることができる。
【0037】
また、上記第1から第3実施形態のように、窪み又は貫通孔を設けることで温度や湿度等の環境の変化により光学フィルタ2の透過特性が変化することを低減することができる。そのため、本発明の各実施形態におけるフィルタ部材1を用いて光センサを構成した場合には、温度や湿度等の環境に変化に伴う光センサの出力特性の変化を抑制することができ、すなわちより高精度な光センサを実現することができる。
【0038】
なお、フィルタ部材1を用いて光センサを構成される場合、光センサ素子とフィルタ部材とが、光センサ素子とフィルタ部材の光学フィルタと対向するように張り合わされている場合には、窪み又は貫通孔は、封止部のうち光センサ素子側と張り合わされていない部分に形成されることが好ましい。
このように、窪み又は貫通孔が、封止部のうち光センサ素子と張り合わされていない部分に形成されることにより、光センサ素子と封止部とが貼り合わされることにより、封止部の変形が妨げられ、窪み又は貫通孔を設けることによる効果が妨げられることを回避することができる。
【0039】
図7に、本発明に係るフィルタ部材1を用いて構成した光センサ40の一例を示す。
図7に示すように、赤外線センサ素子等の光センサ素子からなるセンサ素子41は、封止部42によって支持され、センサ素子41の受光面又は発光面を除く領域が封止部42により覆われている。そして、センサ素子41の受光面又は発光面と光学フィルタ2とが対向し、且つ、センサ素子41の受光面又は発光面と光学フィルタ2とが間隙をもって、接着剤43によって固定される。接着剤43は、
図7(b)に示すように、貫通孔4よりも縁側に配置され、貫通孔4よりも光学フィルタ2側には配置されない。
【0040】
なお、窪み又は貫通孔内に封止部3よりも弾性係数の小さい部材をさらに備えてもよい。これによって、封止部3からの応力が緩和され光学フィルタ2に伝わる変形応力が減少するという効果を得ることができる。
以下、本発明の一実施形態におけるフィルタ部材1における各構成要件について説明する。各構成要件の具体例や技術的特徴は、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で単独または組み合わせて適用可能である。
【0041】
(光学フィルタ)
光学フィルタ2は、所望の波長範囲の光を選択的に(即ち、透過率が高くなるように)透過させる機能を有するものである。光学フィルタ2は、例えば赤外線のみを透過する機能を有する。光学フィルタ2を構成する光学部材の材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO
2)、サファイヤ(Al
2O
3)、ゲルマニウム(Ge)、ZnS、ZnSe、CaF
2、BaF
2等、予め設定した(即ち、所定の)波長範囲の赤外線が透過する材料が用いられる。また、これら光学部材に蒸着される薄膜材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO
2)、サファイヤ(Al
2O
3)、Ge、ZnS、TiO
2、MgF
2、SiO
2、ZrO
2、Ta
2O
5等が用いられる。また、光学部材上に異なる屈折率を有する誘電体を層状に積層した誘電体多層膜フィルタは、表面、裏面異なる所定の厚み構成で両面に作られていてもよいし、また、片面のみに形成されていてもよい。また、不要な反射を防止する目的で反射防止膜が表面、裏面の両面、又は片面の最表層に形成されていても構わない。
【0042】
(封止材)
封止材は、リフロー時の高熱に耐えられる部材であることが好ましい。リフロー時の高熱に耐えられる部材としては、例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。
(接着剤)
接着剤は、封止材と同様にリフロー時の高熱に耐えられる部材であることが好ましい。リフロー時の高熱に耐えられる部材としては、例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。