(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の樹脂含有シートの構造を示す説明図を示す。本発明の樹脂含有シートは、主として繊維成分と樹脂成分から形成されるシート状体であり、図示するように、繊維基材11と、繊維基材11中の繊維1同士を固着する固着剤2と、繊維基材11と固着剤2とに接する樹脂3と、を有している。なお、図中の符号Sは、繊維基材11内で固着剤2および樹脂3のいずれも含浸されていない空間を示す。本発明の樹脂含有シートにおいては、繊維基材11を構成する繊維1と、固着剤2と、樹脂3とが、全体として1つの層を形成しているものといえる。本発明の樹脂含有シートにおいては、繊維1同士を固着する固着剤2の貯蔵弾性率が、いずれかの温度において、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高い点が重要である。
【0017】
すなわち、本発明者らは鋭意検討の結果、樹脂含有シートに含まれる樹脂成分の役割には2つあり、1つは、繊維同士の滑りを抑制して、樹脂含有シートを高強度および高弾性率化するための固着剤としての役割であり、もう1つは、絶縁樹脂層と金属箔表面等とを密着させる役割であることを見出した。かかる観点から、本発明者らはさらに検討した結果、樹脂含有シートに含まれる樹脂成分の2つの役割を、高強度の確保については固着剤に、密着性の確保については樹脂に、それぞれ分担させて、これら固着剤と樹脂との貯蔵弾性率の関係を規定することで、これら両性能をともに良好に確保できることを見出したものである。このように、樹脂成分の役割を2つに分けて、高弾性率と良好な密着性とを両立させた技術は、従来、知られていない。
【0018】
図2(b)に示すように、本発明を概念的に説明すると、繊維基材11に含まれる繊維1の接点Pを固着剤2により固着したことで、一方向に張力Tをかけた場合でも、接点Pで滑りが生じないので、繊維基材11を高強度・高弾性率化することができる。さらに、繊維基材11と固着剤2に接するように樹脂3を含浸することで、樹脂含有シートとしての、良好な接着性も得ることができるものである。よって、本発明の樹脂含有シートによれば、繊維基材11に対し要求される高い弾性率を固着剤2により確保しつつ、基板等に対する密着性を樹脂3により確保することができ、単にポリイミド等の高弾性率材料を用いることによっては得られなかった、高強度と良好な密着性との双方を兼ね備えた樹脂含有シートを得ることが可能となった。
【0019】
[繊維基材]
本発明に係る繊維基材11は、繊維1の集合体よりなる。繊維1としては、集合体を形成し、織布または不織布を製造できるものであれば特に限定されず、主として天然繊維や化学繊維を使用することができる。繊維1の具体例のうち、天然繊維としては、ガラス繊維、セルロース繊維、岩石繊維、金属繊維、炭素繊維、ロックウール等が挙げられ、化学繊維としては、アラミド、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アセテート、トリアセテート、プロミックス、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、その製法、繊維含有量(繊維配合率)、繊維径、繊維長、質量(坪量)・密度(比重)、厚み、および、織布の織組織については、目的に応じて適宜選択することができる。繊維基材11としては、上記のうちでも、固着剤との親和性の観点から、ガラス繊維、セルロース繊維、アラミド繊維が好ましい。
【0020】
本発明においては、特には、繊維基材11として織布を用いることが好ましく、織りを加えることにより、元々強度の低い繊維であっても高強度化できるメリットが得られる。また、本発明においては、繊維基材11として、元々高強度であるガラス繊維ではなく、強度が低い有機繊維を用いた場合であっても、貯蔵弾性率の高い固着剤を用いることで高強度化できるという利点もある。
【0021】
[固着剤組成物]
固着剤2を形成する固着剤組成物としては、繊維1に付着して、繊維1同士を固着させることができるものであればよく、繊維同士が互いに接し合う接点部のみを固着するものであっても、繊維1の全体を被覆して固着するものであってもよい。固着剤組成物の使用量としては、繊維1同士を固着させることができ、密着性に悪影響が及ばない程度の量であればよく、繊維1を固着剤2により固着させた集合体において、有機溶媒を除いた固形分で、繊維1と固着剤2との体積比が99:1〜50:50の範囲、特には、99:1〜60:40の範囲であることが好ましい。繊維1と固着剤2との体積比がこの範囲であると、繊維1同士が固着剤により十分に固着されて所望の高強度が得られるものとなるとともに、その後の樹脂3の含浸により良好な密着性が確保できるものとなり、好ましい。特には、固着剤2の使用量は、固着剤2の適用前後において、繊維基材11の膜厚が実質的に変化しない程度の量であることが好ましい。ここで、膜厚が実質的に変化しないとは、繊維基材11が固着剤組成物の溶剤成分等により膨潤して見かけ上厚みを増すような場合を膜厚の変化に含まないとの意味である。また、固着剤組成物は、繊維に付着させる際に液体であることが好ましく、温度や圧力を変えることで液体にして用いることができるものであってもよい。特には、固着剤組成物の、25℃にてE型粘度計におけるローター回転数5rpmで測定した粘度が1Pa・s以下、例えば、1〜0.0001Pa・sであることが好ましく、これにより、繊維1の集合体の内部まで、固着剤組成物を含浸させることができ、繊維同士を、より確実に固着させることができる。
【0022】
また、固着剤組成物は、熱または光により硬化するものを用いる。ここでいう硬化とは、熱または光のエネルギーにより液体から固体に化学変化することを意味する。固着剤組成物としては、その用途に応じて、慣用の成分を用いることができ、1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。固着剤組成物に用いられる慣用の成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤、熱硬化触媒、光硬化性樹脂、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、有機溶媒などが挙げられ、具体的には、以下に示すものが使用可能である。
【0023】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも特に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂が、絶縁層としての信頼性が優れているために好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形または半固形であってもよい。中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂としては、具体的には例えば、三菱化学(株)製のjER828等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0025】
エポキシ樹脂を用いて硬化物を形成する場合には、エポキシ樹脂の他に、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)等のイミダゾール系硬化剤、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン等のアミン系硬化剤、ポリアミド、ビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂、フェノールフェニルアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂等のフェノール系硬化剤、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等の酸無水物系硬化剤、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、脂肪族または芳香族の一級または二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などの公知の硬化剤を使用できる。硬化剤の配合量は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは0.5〜100質量部である。硬化剤の配合量を、0.1質量部以上とすることで樹脂組成物を十分に硬化させることができ、150質量部以下とすることで、配合量に見合った効果を効率的に得ることができる。
【0026】
また、熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもできる。
【0027】
ポリイミド樹脂としては、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとの合成反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られるものと、既に有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものが挙げられる。
【0028】
芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いられる。これらの中でも、特に、少なくとも成分の1つとして、ピロメリット酸二無水物を用いることが好ましい。
【0029】
芳香族多価カルボン酸無水物等の多価カルボン酸と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。これらの中でも、特に、少なくとも成分の1つとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0030】
ポリイミドワニスとしては、新日本理化(株)製のリカコートSN20、リカコートPN20、リカコートEN20、東レ(株)製のトレニース、宇部興産(株)製U−ワニス、JSR(株)製のオプトマー、日産化学(株)製のSE812、住友ベークライト(株)製のCRC8000が挙げられる。
【0031】
合成反応により得られるかまたは上市されているポリアミック酸溶液を、加熱等により処理することで、ポリアミック酸からポリイミドへの環化(イミド化)が行なわれる。ポリアミック酸は、加熱のみによる方法、または、化学的方法によって、イミド化することが可能である。加熱のみによる方法の場合、ポリアミック酸を、例えば、200〜350℃で加熱処理することによってイミド化する。また、化学的方法は、イミド化を速やかに進行させるために塩基性触媒を利用しつつ、ポリアミック酸を加熱処理して、完全にイミド化する方法である。上記塩基性触媒としては、特に限定されず、従来公知の塩基性触媒が用いられ、例えば、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、各種3級アミン等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線の照射により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、特には、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーおよび光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
【0033】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0034】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0035】
光硬化性樹脂としては、脂環エポキシ化合物、オキセタン化合物およびビニルエーテル化合物等も好適に用いることができる。このうち脂環エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3’,4’−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、シクロヘキセンオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物などが挙げられる。
【0036】
オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体などの多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等のオキセタン化合物が挙げられる。
【0037】
ビニルエーテル化合物としては、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル、αおよび/またはβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物などが挙げられる。市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
光硬化性樹脂を用いる場合には、上述した光硬化性樹脂に加えて、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等が用いられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアミノアルキルフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;またはキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類、チタノセン系開始剤、オキシムエステル系開始剤などが挙げられる。これらは、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤等と併用してもよい。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン(例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン)、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物;鉄アレン錯体等を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。このような光塩基発生剤としては、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物や、オキシムエステル化合物、アシルオキシイミノ基,N−ホルミル化芳香族アミノ基、N−アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。これらの光塩基発生剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよび上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン類;N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアニリン、ジブチルアニリン、ジイソプロピルアニリン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶媒等を挙げることができる。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドンやメチルエチルケトンは、取扱いが容易であるため好ましい。
【0043】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂含有シートにおいて、樹脂3は、固着剤2と繊維基材11とに接するものである。本発明において、樹脂3は、密着性を確保する役割を奏しうるものであればよいので、繊維基材11の外側を被覆していてもよい。樹脂組成物の含浸率としては、樹脂含有シートを金属箔等に密着することができるものであれば特に限定はないが、樹脂含有シート中の樹脂の濃度として、10〜99体積%、特には、10〜70体積%であることが好ましい。樹脂組成物の含浸率を上記範囲内とすることで、良好な密着性と、高強度とをバランス良く得ることができる。
【0044】
樹脂3を形成する樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のうちから選ばれる少なくとも1種類を含むものとすることができ、その用途に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硬化物または成形物の物性の観点から、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。樹脂組成物として、熱硬化性樹脂ないし光硬化性樹脂を使用する場合には、固着剤組成物について挙げたのと同様の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、有機溶媒等を適宜使用することが可能であり、本発明においては、樹脂組成物および固着剤組成物が、それぞれ異なればよい。また、熱可塑性樹脂としては、以下に示すものが使用可能である。
【0045】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、アクリル、変性アクリル、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸等の汎用プラスチック類、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステルイミド、熱可塑性ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック類、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ウレタン系、アミド系、塩化ビニル系、水添系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。本発明においては、樹脂複合体を使用することもでき、例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の樹脂複合体として、エポキシ樹脂−PSF、エポキシ樹脂−PPS、エポキシ樹脂−PES等が使用できる。
【0046】
本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物には、その他の成分として、着色剤を配合することもできる。
【0047】
着色剤としては、着色顔料や染料等としてカラーインデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、Pigment Green 7、36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139、179、185、93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、Pigment Brown 23、25、Pigment Black 1、7等が挙げられる。
【0048】
また、本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物には、必要に応じて、消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0049】
消泡剤・レベリング剤としては、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0050】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘土鉱物や、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0051】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である、例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシラン、Ν―β―(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、Ν−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス−(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ−ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m−アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3−メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2−ビス(2−プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2−(ビス2−プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト−O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0052】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。
【0053】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコーンポリマー等が使用できる。
【0054】
本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物は、その他、硫酸バリウム、シリカ、ハイドロタルサイト等の無機フィラー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機フィラー、ラジカル補捉剤、紫外線吸収剤、過酸化物分解剤、熱重合禁止剤、密着促進剤、防錆剤、表面処理剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、pH調整剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
【0055】
[貯蔵弾性率]
本発明においては、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことが必要である。ここで、固着剤2の貯蔵弾性率とは、繊維1は含まずに、固着剤組成物の成分のみの配合物を、成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味する。同様に、樹脂3の貯蔵弾性率についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味し、熱可塑性樹脂の場合には、溶融成膜後に溶剤を除去して得られる塗膜の貯蔵弾性率を意味する。また、貯蔵弾性率とは、試料の硬さの一指標値であって、一定の温度変化を加えながら試料に対し周期的な荷重をかけて歪を検出する動的粘弾性測定と呼ばれる評価を行って、検出した歪から算出される値であり、この値が高いほど優れた力学強度を示していることを意味する。本発明においては、いずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いものであればよく、その好適範囲は、固着剤2の貯蔵弾性率については30〜0.1GPaであり、より好ましくは20〜0.5GPaであり、樹脂3の貯蔵弾性率については10〜0.001GPaであり、より好ましくは5〜0.01GPaであり、いずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が樹脂3の貯蔵弾性率よりも0.1GPa以上大きいことが好ましい。特には、150〜250℃の範囲内のいずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましく、150〜250℃の全温度範囲において、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことがより好ましい。これにより、本発明の樹脂含有シートは、150〜250℃の高温領域でも使用可能となるので、用途が広がることから、好ましい。
【0056】
[ガラス転移温度]
本発明においては、固着剤2のガラス転移温度が、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度よりも高いことが好ましい。ここで、固着剤2のガラス転移温度とは、繊維1は含まずに、固着剤組成物の成分のみの配合物を、成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜のガラス転移温度を意味する。同様に、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜のガラス転移温度を意味し、熱可塑性樹脂の場合には、溶融成膜後に溶剤を除去して得られる塗膜の軟化温度を意味する。また、ガラス転移温度とは、前述の動的粘弾性測定から得られた貯蔵弾性率(E′)と損失弾性率(E″)の比(E″/E′)から算出される値(損失正接)が最大のときの温度のことであり、この温度が高いほど優れた耐熱性を示していることを意味する。本発明においては、ガラス転移温度の上限については特に制限されないが、その好適範囲は、固着剤2のガラス転移温度については130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは250℃以上である。固着剤2のガラス転移温度が高いほど、本発明の樹脂含有シートの貯蔵弾性率が高くなるので好ましい。
一方、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度については70℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。また、固着剤2のガラス転移温度が樹脂3のガラス転移温度または軟化温度よりも5℃以上大きいことが好ましい。
【0057】
[樹脂含有シートの製造]
本発明の樹脂含有シートは、繊維基材11を固着剤組成物で処理して繊維1同士を固着させた後、固着された繊維基材11に樹脂組成物を含浸することにより、得ることができる。本発明の樹脂含有シートは、例えば、キャリアフィルム等の被塗布物上に繊維を配置した状態で、固着剤組成物および樹脂組成物を順次塗布、含浸させて、固着剤組成物および樹脂組成物中に含まれる有機溶媒を揮発乾燥することにより、ドライフィルムとして製造することもでき、所望に応じ、さらに、その上にカバーフィルムを貼り合わせてもよい。この際、樹脂組成物が、固着剤組成物の繊維に対する固着性能を阻害するものでなければ、樹脂組成物の塗布プロセスは、固着剤の乾燥前であっても乾燥後であっても、いずれでもよい。
【0058】
この場合、本発明の固着剤組成物および樹脂組成物は、必要に応じ、各成分を配合、分散、希釈して、塗布方法に適した粘度に調整し、塗布することができる。上述したように、固着剤組成物については、繊維基材11に浸透させて繊維1同士を固着させることができるものであればよく、また、樹脂組成物については、繊維基材11の少なくとも一方の面、特には両方の面を、金属箔等に対し密着させることができるものであればよい。
【0059】
被塗布物としては、ドライフィルム用のキャリアフィルムが好ましいが、金属箔表面や回路形成された配線板表面に直接塗布してもよい。塗布方法の具体例としては、ピペット等を用いた滴下法、ディップコート法、バーコーター法、スピンコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スリットコート法、ブレードコート法、リップコート法、コンマコート法、フィルムコート法等の各種コート法や、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の各種印刷法が挙げられる。
【0060】
また、キャリアフィルムとカバーフィルムとは、ドライフィルムに用いられる材料として公知のものを、いずれも使用することができ、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。キャリアフィルムとカバーフィルムとは、同一のフィルム材料を用いても、異なるフィルム材料を用いてもよいが、カバーフィルムについては、樹脂3との接着性が、キャリアフィルムよりも小さいものが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂含有シートを基板に密着させることで、構造体を得ることができる。基板としては、金属箔基板や、回路基板(回路形成された配線板)などが挙げられる。本発明の樹脂含有シートを基板表面に熱密着させることで、樹脂絶縁層を形成することができ、その繰り返しにより、金属箔層と樹脂絶縁層とをそれぞれ複数層で積層することもできる。なお、樹脂含有シートは、キャリアフィルム上で製造した際に、樹脂含有シート同士で積層してもよく、金属箔等との密着時に樹脂含有シート同士で積層してもよい。
【0062】
本発明の樹脂含有シートを用いて構造体を作製する際に、固着剤組成物および樹脂組成物が熱硬化性樹脂ないし光硬化性樹脂の組合せである場合には、加熱硬化のみの方法、活性エネルギー線照射のみの方法、活性エネルギー線の照射後に加熱硬化させる方法、または、加熱硬化後に活性エネルギー線を照射する方法を用いることで、構造体を作製することができる。また、ドライフィルムを用いる場合には、カバーフィルムがある場合にはカバーフィルムを剥がして、基板表面に樹脂含有シートを熱密着させ、次いで、キャリアフィルムを剥がし、上記硬化方法により硬化させて、構造体を製造することができる。なお、固着剤組成物および樹脂組成物として、ともに熱硬化性樹脂を用いる場合には、繊維同士の固着および樹脂の含浸の、双方の加熱硬化プロセスを同時に実施してもよい。また、加熱を行う際の加熱温度については、目的とする基材に含まれる繊維や固着剤が高熱により分解しない範囲であれば、特に下限および上限の制限はなく、活性エネルギー線照射を行う際の露光量についても、露光量が低すぎて未硬化部分が生ずることがなければ、特に下限および上限の制限はない。
【0063】
また、本発明の樹脂含有シートを作製する際に、樹脂組成物が熱可塑性樹脂である場合には、ペレット形状やシート形状の熱可塑性樹脂を加熱または加熱、圧着する手法を用いることもできる。ここで、熱可塑性樹脂を、固着剤により固着した繊維基材内に含浸させるためには、装置を用いて加圧することは必須要件ではないが、加圧を行うことにより熱可塑性樹脂の繊維基材内への浸入がより容易となる。加圧を行う場合、目的とする樹脂含有シートの形状を損なわない限り、特に圧力の上限はない。この樹脂含有シートを基体表面に熱密着することにより、構造体を成形することができる。また、ドライフィルムを用いて構造体を成形する際には、前記同様に作製することができる。
【0064】
なお、上記において、乾燥時、加熱硬化時または加熱加圧時に用いられる装置としては、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン、加熱・加圧ロール、プレス機等が挙げられる。また、活性エネルギー線照射の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0065】
本発明の樹脂含有シートの構成部材である繊維基材、繊維同士を固着剤により固着したもの(以下、「中間体」とも称する)、および、ドライフィルムの厚みについては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、特に中間体については、固着剤により繊維同士が互いに固着されているものであればよいので、その厚みは、繊維基材の厚みと同等、または、繊維基材の厚みの2倍を超えない程度の膜厚であることが好ましい。具体的には、繊維基材の厚みの1〜1.5倍の範囲内であることがより好ましい。中間体の厚みが繊維基材の厚みの2倍を超えると、固着剤そのものの物性の影響が出るため、好ましくない。
【0066】
本発明の樹脂含有シートを基板表面に形成し、硬化または成形して得られる構造体は、配線板用のコア材として使用することができ、エッチング処理等を行うことで、配線板用の層間絶縁材として使用することもできる。また、樹脂含有シートを回路形成された配線板表面に形成し、回路配線のみを覆うようにパターニング処理および硬化または成形して構造体とすれば、配線板の最外層であるソルダーレジスト等として使用することもできる。
【0067】
以上説明したような構成の本発明の樹脂含有シートは、電子機器用の配線板等に適用することができ、例えば、配線板用の層間絶縁材やソルダーレジスト、コア材等に好適に適用することができ、これにより、本発明の所期の効果を得ることができるものである。その他、例えば、繊維同士を固着剤組成物で固着し、樹脂を浸透、乾燥させて、半硬化である状態(Bステージ)の樹脂絶縁層を形成し、樹脂絶縁層と金属箔を積層プレスすることで、多層板を作製することもできる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例、参考例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、参考例および比較例によって制限されるものではない。なお、以下の表中の配合量は、すべて質量部を示す。
【0069】
[ポリアミック酸ワニス1の合成]
窒素置換させた攪拌機付属の三つ口フラスコに、脱水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒(和光純薬工業(株)製)を入れ、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)(和光純薬工業(株)製)と1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)(和光純薬工業(株)製)とを1:1のモル比で配合し、室温で16時間以上撹拌して、樹脂固形分割合が7.5質量%であるポリアミック酸ワニス1を得た。
【0070】
[ポリアミック酸ワニス2の合成]
窒素置換させた攪拌機付属の三つ口フラスコに、脱水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒(和光純薬工業(株)製)を入れ、p−フェニレンジアミン(PDA)(和光純薬工業(株)製)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)(和光純薬工業(株)製)とを1:1のモル比で配合し、室温で16時間以上撹拌して、樹脂固形分割合が7.5質量%であるポリアミック酸ワニス2を得た。
【0071】
[固着剤組成物または樹脂組成物の調製]
下記表1中に、固着剤組成物または樹脂組成物として使用される組成物1〜4の配合内容を示す。下記表1中の組成物1〜4の記載に従い、各組成物を調製した。組成物1の複数成分系の場合は、各成分を配合した後、自転・公転ミキサーを用いて攪拌し、調製した。
【0072】
[固着剤または樹脂の貯蔵弾性率等評価用試験片の作製]
各組成物1〜4をそれぞれ、厚さ18μmの銅箔にアプリケーターを用いて塗布し、塗膜を得た。
組成物1については、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、150℃、60分間の大気条件下で加熱させてエポキシ樹脂硬化物を得た。銅箔を除去したところ、厚みは50μmであった。この硬化物を用いて、幅5mm、長さ50mmの貯蔵弾性率等評価用試験片を作製した。
組成物2については、塗布後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間の窒素条件下(100ml/min.)で加熱してイミド化物を得た。銅箔を除去したところ、厚みは50μmであった。その後、上記と同様にして評価用試験片を作製した。
組成物3については、加熱操作を300℃、60分間の窒素条件下で行った以外は組成物2と同様にして評価用試験片を作製した。
組成物4については、高密度ポリエチレンペレット(比重0.95)をプレス機に適量投入して、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却して成形体を得た後に個片化したところ、厚みは50μmであった。その後、上記と同様にして評価用試験片を作製した。
【0073】
[樹脂含有シートおよびシートについての貯蔵弾性率評価用試験片の作製]
下記表2,3中に、各実施例、参考例および比較例の樹脂含有シートないしシートの構成を示す。
【0074】
(実施例1−Aの中間体の作製)
下記表2中の実施例1−Aについては、繊維基材としてガラスクロス(タイプ1035(IPC規格)、厚み30μm)を用いて、ここに、上記組成物1(粘度0.0005Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、150℃、60分間で加熱硬化させて、ガラスクロスおよび固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0075】
(実施例2−Aの中間体の作製)
下記表2中の実施例2−Aについては、実施例1−Aと同様のガラスクロスに、上記組成物2(粘度0.001Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間で加熱してイミド化し、ガラスクロスおよび固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0076】
(実施例3−Aの中間体の作製)
下記表2中の実施例3−Aについては、実施例1−Aと同様のガラスクロスに、上記組成物3(粘度0.001Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、300℃、60分間で加熱してイミド化し、ガラスクロスおよび固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0077】
(比較例4−Aの中間体の作製)
実施例1−Aと同様に、上記組成物1を使用してガラスクロスおよび固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0078】
実施例1−A〜3−Aおよび比較例4−Aの各中間体の厚みは33〜35μmであり、ガラスクロスの厚みからの厚みの増大は3〜5μmとわずかだった。
【0079】
(参考例1−Bの中間体の作製)
下記表3中の参考例1−Bについては、繊維としてアラミド不織布(ノーメックス410、厚み50μm)を用いたこと以外は、実施例1−Aの中間体の作製と同様に処理して、アラミド不織布および固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0080】
(参考例2−Bの中間体の作製)
下記表3中の参考例2−Bについては、繊維として参考例1−Bと同様のアラミド不織布を用いたこと以外は、実施例2−Aの中間体の作製と同様に処理して、アラミド不織布および固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0081】
(参考例3−Bの中間体の作製)
下記表3中の参考例3−Bについては、繊維として参考例1−Bと同様のアラミド不織布を用いたこと以外は、実施例3−Aの中間体の作製と同様に処理して、アラミド不織布および固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0082】
(比較例4−Bの中間体の作製)
参考例1−Bと同様に、上記組成物1を使用してガラスクロスおよび固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0083】
参考例1−B〜3−Bおよび比較例4−Bの各中間体の厚みは53〜56μmであり、アラミド不織布の厚みからの厚みの増大は3〜6μmとわずかだった。
【0084】
(各実施例、参考例および比較例の樹脂含有シートないしシートの作製)
実施例1−Aおよび参考例1−Bについては、上記組成物4をプレス機に投入して、140℃で溶融させた後に、上記で得られた各中間体に含浸させ、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却させることで、固着剤(エポキシ)で固着されたガラスクロスまたはアラミド不織布に、樹脂(高密度ポリエチレン樹脂)が含浸された樹脂含有シートを作製した。
実施例2−A、参考例2−B、実施例3−Aおよび参考例3−Bについては、上記組成物1を、上記で得られた各中間体に対し、繊維全体に行き渡るように適量で塗布し、含浸させ、上記固着剤または樹脂の評価用試験片の作製と同様の条件で、加熱硬化させることで、固着剤(ポリイミド)で固着されたガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(エポキシ樹脂硬化物)が含浸された樹脂含有シートを作製した。
実施例1−A〜3−Aおよび参考例1−B〜3−Bの各樹脂含有シートの厚みは、中間体の厚みよりも5〜10μm厚くなった。その後、各樹脂含有シートについて、上記と同様の条件で、評価用試験片を作製した。
【0085】
比較例1−Aおよび比較例1−Bについては、上記組成物1を、ガラスクロスまたはアラミド不織布に対し、繊維全体に行き渡るように適量で塗布し、含浸させ、上記固着剤または樹脂の評価用試験片の作製と同様の条件で、加熱硬化させることで、固着剤を含まないガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(エポキシ樹脂硬化物)が含浸されたシートを作製した。
比較例2−Aおよび比較例2−Bについては、ガラスクロスまたはアラミド不織布に、上記組成物2を比較例1−Aと同様に塗布、含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間の大気条件下で加熱してイミド化し、固着剤を含まないガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(ポリイミド)が含浸されたシートを作製した。
比較例3−Aおよび比較例3−Bについては、上記組成物4をプレス機に投入して、140℃で溶融させた後に、ガラスクロスまたはアラミド不織布に含浸させ、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却させることで、固着剤を含まないガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(高密度ポリエチレン樹脂)が含浸されたシートを作製した。
比較例4−Aおよび比較例4−Bについては、比較例2−Aおよび比較例2−Bにおけるガラスクロス又はアラミド不織布を上記組成物1からなる固着剤を有する中間体に変えて使用した以外は、比較例2−A,2−Bと同様に樹脂含有シートを作製した。
その後、各シートについて、上記と同様に評価用試験片を作製した。
【0086】
なお、樹脂分濃度は、下記表2,表3に示したように、実施例1−A〜3−Aおよび比較例1−A〜4−Aについて同程度であり、また、参考例1−B〜3−Bおよび比較例1−B〜4−Bについても同程度であった。ここで、樹脂分濃度は、固着剤量={1−(繊維基材の体積/中間体の体積)}×100[体積%]、樹脂量={1−(中間体の体積/樹脂含有シートまたはシートの体積)}×100[体積%](体積は、質量および比重を基に換算)から、それぞれ求めた。
【0087】
[貯蔵弾性率等の測定]
固着剤または樹脂の貯蔵弾性率等評価用試験片を用いて、DMA粘弾性測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製 DMA7100)の引張モードを用い、測定周波数1Hz、最小張力および最小圧縮力200mN、歪振幅10μm、昇温速度5℃/分、大気下条件で粘弾性を測定し、50℃、150℃および250℃における貯蔵弾性率を得るとともに、ガラス転移温度または軟化温度を得た。その結果を下記表1に示す。
【0088】
【表1】
*1:jER828,三菱化学(株)製
*2:2−エチル−4−メチルイミダゾール,四国化成(株)製
*3:和光純薬工業(株)製
*4:比重0.95
【0089】
[樹脂含有シートまたはシートの貯蔵弾性率の評価]
樹脂含有シートまたはシート評価用試験片については、シート中のガラスクロスまたはアラミド不織布の繊維のバイアス(斜め)方向が装置の引張方向となるように試験片を取り付け、最小張力および圧縮力を50mNとした以外は、上記と同様にして粘弾性を測定し、50℃、150℃および250℃における貯蔵弾性率を得た。ここで、バイアス(斜め)方向に測定するのは、繊維基材そのものの弾性率の影響を極力排除し、固着効果による弾性率向上の影響を調べるためである。各実施例および参考例については、固着剤を付着させていない比較例のシートと比べたとき、貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きい場合は〇、小さい場合は×とした。
【0090】
具体的に説明すると、実施例1−Aの樹脂含有シートは、50℃、150℃、250℃のいずれの温度においても、固着剤を使用しなかった比較例3−Aのシートよりも貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
参考例1−Bにおいても、固着剤を使用しなかった比較例3−Bのシートと比較して貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
実施例2−A,参考例2−B,実施例3−A,参考例3−Bの樹脂含有シートにおいても、それぞれ固着剤を使用しなかった比較例1−A,1−Bのシートと比較して貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
一方、比較例4−Aの樹脂含有シートは、50℃、150℃、250℃のいずれの温度においても、固着剤を使用しなかった比較例2−Aのシートよりも貯蔵弾性率E[GPa]の値が小さくなるため、「×」とした。
比較例4−Bの樹脂含有シートにおいても、固着剤を使用しなかった比較例2−Bのシートと比較して「×」とした。
その結果を下記表2、表3に示す。
【0091】
なお、参考として、ガラスクロスのみを用いて上記測定を実施した場合、バイアス方向の引張りにより測定開始時において編み込んだ繊維がほどけたために、貯蔵弾性率の値が得られなかった。
【0092】
[密着性評価用試験片の作製]
繊維基材としてのガラスクロスまたはアラミド不織布をキャリアフィルム上に配置したこと以外は、上記と同様にして固着剤組成物を塗布、含浸させて、各中間体を作製した。その後、乾燥後の固着剤の表面に、樹脂組成物を成形または塗布し、乾燥させた後、カバーフィルムを貼り合わせて、ドライフィルムを得た。このドライフィルムの両面に厚み18μmの表面未処理銅箔を重ね合わせて(密着させる際にキャリアフィルムおよびカバーフィルムは剥離した)、真空プレス機で、加圧条件を1MPa、加熱条件を、実施例1−Aおよび参考例1−Bについては150℃×10分、実施例2−Aおよび参考例2−B,比較例4−Aおよび4−Bについては250℃×60分、実施例3−Aおよび参考例3−Bについては300℃×60分として成形し、樹脂層と銅箔とが密着した密着性評価用試験片を作製した。また、比較例1−A〜3−A,比較例1−B〜3−Bについては、固着剤組成物を塗布、含浸しないこと以外は同様にドライフィルムを作製、真空プレス機で加圧し、比較例1−A〜3−Aおよび比較例1−B〜3−Bのシート作製と同様の温度条件で密着性評価用試験片を作製した。
【0093】
[密着性の評価]
密着性評価用試験片を用いて、樹脂層と表面未処理銅箔との界面で両者を剥離する際のピール強度を、ピール角度90°、ピール速度50mm/分として測定し、0.5kN/m以上の場合を〇、0.5kN/m未満の場合を×とした。その結果を下記表2、表3に示す。ピール強度が高い場合、凹凸に追従する密着性に優れ、銅箔との密着性に優れるといえる。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
上記表2,3に示すように、実施例1−A〜3−A,参考例1−B〜3−Bの固着剤の貯蔵弾性率は、樹脂の貯蔵弾性率に比べていずれも大きく、一方、比較例4−A,4−Bでは、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率に比べ、いずれも小さくなっている。また、比較例1−A〜3−A,1−B〜3−Bでは、樹脂のみを用いて、固着剤を用いていない。
【0097】
上記表2,3に示す通り、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも高い固着剤を用いて、ガラスクロスまたはアラミド不織布を固着し、さらに樹脂を含浸させた実施例および参考例の樹脂含有シートは、樹脂のみを含浸させた比較例のシートと比べ、密着性に優れており、かつ、貯蔵弾性率が大きいことがわかる。
例えば、実施例1−Aと比較例3−Aとを対比すると明らかなように、ガラスクロスの繊維同士を固着組成物により固着させ、さらに繊維基材に樹脂組成物を含浸させた実施例の樹脂含有シートは、ガラスクロスの繊維同士を固着組成物により固着させていない比較例3−Aと比較して、いずれの温度においても貯蔵弾性率が高いので、力学強度が高いことが分かった。
特に、実施例2−A,3−Aおよび参考例2−B,3−Bの樹脂含有シートは、250℃の貯蔵弾性率が1GPaを超えており、高温時の力学強度にも優れていることがわかる。一方、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも低い比較例4−Aおよび比較例4−Bでは、樹脂含有シートとしての貯蔵弾性率が低くなり、密着性も劣っていた。
【0098】
以上より、繊維基材中の繊維同士を固着する固着剤と、固着された繊維に接する樹脂とを有し、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも高い樹脂含有シートを用いることにより、優れた力学強度、弾性率および密着性を実現することが可能であることが確かめられた。かかる本発明の樹脂含有シートは、電子機器用の配線板等に適用することができ、例えば、配線板用の層間絶縁材やソルダーレジスト、コア材等に好適に適用することができる。