(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷電粒子銃と、前記荷電粒子銃から放出された荷電粒子を含む荷電粒子線が照射される測定試料が設置される試料ステージと、前記試料ステージの周辺部に配置された電界補正用電極と、対物レンズを含み前記荷電粒子線に対する荷電粒子光学系と、各構成要素を制御する制御部と、前記制御部に接続された表示部と、を有する荷電粒子線装置において、
前記表示部は、
前記電界補正用電極に付着した異物を除去するときに前記電界補正用電極の近傍の電極に印加される、周期性を有する電圧の時間変化、或いは、前記測定試料を測定する際に印加される電圧の絶対値以上である電圧の絶対値の時間変化を表示すること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明者等は、電界補正用電極に付着した異物を除去する方法について検討した。その結果、試料ステージに測定対象ではない試料が設置されている、または試料が設置されていないときに、電界補正用電極またはその近傍の電極に対して、測定時における印加電圧の絶対値以上の絶対値である電圧、もしくは周期性を有する電圧を印加することにより、電界補正用電極に付着した異物が除去されることを見出した。本発明は、課題を含む新たな知見に基づいて生まれたものである。
【0015】
以下では、本発明を適用した荷電粒子線装置の一例として、観察や検査、計測に用いられる走査電子顕微鏡に適用した実施の形態について説明するが、電子ビームだけでなく、イオンビームを用いて観察等を行う集束イオンビーム装置にも適用できる。
【0016】
なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、下記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る荷電粒子線装置及びその電界補正用電極に付着した異物を除去する構成について、
図1、
図2および
図3を用いて説明する。
【0018】
図1は本実施例の荷電粒子線装置の概略全体構成断面図(一部ブロック図)である。筐体109の内部に設置された電子銃101より1次電子線は、第1コンデンサレンズ102、絞り103、第2コンデンサレンズ104、走査偏向器106、対物レンズ107、シールド電極110などを通過して収束や偏向され、試料ステージ108の上に保持される観察や検査、計測用の試料(以下、測定試料という)の測定位置に照射される。
【0019】
1次電子線の照射によって測定試料から放出される2次電子の一部は検出器105に到達する。検出器105で検出された2次電子信号により、画像を形成し、測定試料の寸法計測や欠陥検査などの測定ができる。シールド電極110は、測定試料全面における電界の歪みを抑制し、測定試料を測定するときに1次電子線の軌道が曲がることを抑制するために設けられている。また、電界補正用電極201は、測定試料の外周部の電界の歪みを抑制するために設けられている。
【0020】
上記電子銃101、第1コンデンサレンズ102、絞り103、第2コンデンサレンズ104、走査偏向器106、対物レンズ107、シールド電極110、試料ステージ108、電界補正用電極201など、荷電粒子線装置の各構成への電圧の印加などの動作は制御部111で制御される。筐体109は図示しない真空ポンプによって排気される。符号120は表示部を備えたデータ入出力部を示す。この表示部はデータ入出力部と分離した別体として配置することもできる。符号121は記憶部、符号122は異物除去制御部を示す。なお、
図1では測定試料ではなく、電界補正用電極に付着した異物を除去するときに用いる測定対象でない試料203(以下、ダミー試料という)が試料ステージ108の上に載置された状態を示す。
【0021】
図2は、
図1に示す電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成要素を拡大した断面図である。本実施例で試料ステージ108に保持される試料は、例えば、半導体ウェーハ等の測定試料、或いは、ダミー試料203である。また、試料ステージ108は、高抵抗アルミナ製の円盤とその内部に配置された静電チャック電極205と静電チャック電極206を有する。それぞれの静電チャック電極205、206には、電圧を印加するための静電チャック電源207および静電チャック電源208がそれぞれ接続されており双極型の静電チャックを構成している。
【0022】
さらに静電チャックの外周部には、電界補正電圧を印加する電界補正用電源202が接続された円形状の電界補正用電極201が配置されている。電界補正用電極は一体物である必要はなく、複数の部材の複合体で構成することもできる。静電チャック電源207、静電チャック電源208、電界補正用電源202はいずれもリターディング電圧を印加するリターディング電源209に接続され、静電チャック電極205、静電チャック電極206、電界補正用電極201、測定試料或いはダミー試料203のそれぞれにリターディング電圧に相当するリターディング電位が重畳される。リターディング電位によって高い加速電圧で一次電子線を加速し、測定試料に照射する直前で照射エネルギを低減する、いわゆるリターディング法が適用できる。リターディング電源209はアース210に接続される。
【0023】
図3は、
図2に示す電界補正用電極から異物を除去するときに、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301の時間変化を示す説明図である。
図2の構成において、電界補正用電極201に電圧を印加する。電圧の印加により電位勾配が形成されると、異物にはクーロン力や誘電泳動力などの力が作用し、異物が飛散する場合がある。ここで、
図3に例示するように、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301は、測定時に電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値の最大値302以上である。更に、この最大値を超えることが望ましい。この電圧設定は、表示部を備えた入出力部120により行うことができる。また、事前に記憶部121に登録しておくこともできる。また、測定時における電界補正用電極への印加電圧の絶対値の最大値を記録しておき、その値に対して所定の電圧を加えた電圧値を制御部111内で演算し、設定することもできる。また、
図3に対応する、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301の時間変化を入出力部120の表示部に表示させることもできる。また、表示対象は、絶対値ではなく、極性を有する電圧値でもよい。
【0024】
このような電圧を異物除去制御部122により電界補正用電極201に印加するように電源(電界補正用電源202やリターディング電源209)を制御することにより、異物を除去するときに前記電界補正用電極と前記近傍電極との電位勾配が、前記試料を測定するときの前記電界補正用電極と前記近傍電極との電位勾配よりも大きくなり、測定時には電界補正用電極201から飛散しない異物が電界補正用電極201から飛散し、ダミー試料203に付着する。これにより、電界補正電極201に付着していた異物は除去されるため、ダミー試料203を搬出した後、測定試料を測定するとき、測定位置に応じて印加電圧が変化しても電界補正用電極201からの異物の飛散を抑制することができる。
【0025】
本実施例によれば、試料の外周部に配置される電界補正用電極に付着した異物を除去可能な荷電粒子線装置を提供することができる。これにより、電界補正用電極に起因する測定試料への異物付着を抑制することができる。
【0026】
本実施例では試料ステージ108に静電チャックが含まれる構成で実施の形態を説明したが、必ずしも静電チャックが含まれる構成である必要はなく、例えば試料の外周部に電界補正用電極を有するホルダタイプの試料ステージでも同様に適用することができる。また、静電チャックは高抵抗アルミナ以外の材料で構成されても良いだけでなく、静電チャック電極を2つ有する双曲型の構成である必要はなく、1つまたは3つ以上の静電チャック電極から構成されても良い。さらに、リターディング電位を重畳する必要がない場合はリターディング電源209がなくてもよい。また、リターディング電源209に接続された接触子を接触させて試料をリターディング電位にする構成であってもよい。
【実施例2】
【0027】
本発明の第2の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0028】
本実施例では、測定試料は言うまでもなくダミー試料をも用いることなく電界補正用電極に付着した異物を除去する構成について説明する。
図4は本実施例における電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成要素を拡大した断面図である。なお、
図4において、
図2と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。実施例1では、ダミー試料203が試料ステージに保持されている場合としたが、本実施例では、ダミー試料が試料ステージに保持されていない場合とした点が実施例1と比較した場合の変更点である。
【0029】
本実施例では
図4に示した構成で、異物を除去するために異物除去制御部122により電界補正用電極201に電圧を印加するように電源(電界補正用電源202やリターディング電源209)を制御する。ここで、実施例1で例示した
図3のように、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301は、測定時に電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値の最大値302以上である。更に、この最大値を超えることが望ましい。この電圧設定は、表示部を備えた入出力部120により行うことができる。また、事前に記憶部121に登録しておくこともできる。また、測定時における電界補正用電極への印加電圧の絶対値の最大値を記録しておき、その値に対して所定の電圧を加えた電圧値を制御部111内で演算し、設定することもできる。また、
図3に対応する、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301の時間変化を入出力部120の表示部に表示させることもできる。また、表示対象は、絶対値ではなく、極性を有する電圧値でもよい。
【0030】
実施例1では、電界補正用電極201から除去された異物がダミー試料203に付着する。異物が付着すると、ダミー試料203は異物の発生源となる可能性があるため再び異物を除去するときには利用できず、電界補正用電極201から異物を除去する度に、ダミー試料203を新たに用いなければならない場合があった。本実施例により、ダミー試料203を新たに使用する必要がなくなりランニングコストを抑制できるという利点がある。
【0031】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、ダミー試料が不要であり、ランニングコストを抑制することができる。
【実施例3】
【0032】
本発明の第3の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1又は2に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0033】
本実施例では、効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去する構成を説明する。全体構成は、実施例1と同様で、電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成要素を拡大した断面図は
図2の通りである。実施例1で参照した図と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。
図5は本実施例における異物を除去するときに、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301の時間変化を示す説明図である。実施例1では、異物を除去するときには必ず電界補正用電極201への印加電圧の絶対値301が測定時における電界補正用電極201への印加電圧の絶対値の最大値302以上としたが、本実施例では、異物を除去するときには電界補正用電極201への印加電圧の絶対値301が周期的に変化する点が実施例1と比較した場合の変更点である。
【0034】
本実施例は
図2に示した構成で、異物を除去するために異物除去制御部122により電界補正用電極201に電圧を印加するように電源(電界補正用電源202やリターディング電源209)を制御する。ここで、電界補正用電極201に印加する電圧は、
図5に例示するように、周期性を持った電圧である。周期性とは時間的な周期性、段階的に電圧の絶対値を大きくする周期性のうちいずれか一方またはその両方である。この印加する電圧及び周期の設定は、表示部を備えた入出力部120により行うことができる。また、事前に記憶部121に登録しておくこともできる。また、
図5に対応する、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301の時間変化を入出力部120の表示部に表示させることもできる。また、表示対象は、絶対値ではなく、極性を有する電圧値でもよい。
【0035】
一回の電圧印加による電界補正用電極201とその近傍の電位勾配の変化では電界補正用電極201から飛散しなかった異物が、電界補正用電極201に周期性を有する電圧を印加することにより飛散し除去できる。そのため、本実施例により効果的に異物を除去できるという利点がある。
【0036】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、電界補正用電極への印加電圧の絶対値を周期的に変化させることにより、より効果的に異物を電界補正用電極から除去することができる。
【実施例4】
【0037】
本発明の第4の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1乃至3の何れかに記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0038】
本実施例では、効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去する別の構成を説明する。
図6は本実施例における電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成要素を拡大した断面図である。なお、
図6において、
図2と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。実施例1から実施例3とは異なり、電界補正用電極201の近傍に対物レンズ107とシールド電極110が配置されるように試料ステージ108と電界補正用電極201とを移動させている点が変更点である。
図7は本実施例における電界補正用電極201の近傍の電極への印加電圧の絶対値701の時間変化を示す説明図である。
【0039】
本実施例では、
図6に示した構成において、異物を除去するために異物除去制御部122により電界補正用電極201の近傍の電極に電圧を印加するように電界補正用電極201の近傍の電極に接続された電源を制御する。
図7に例示した通り、電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701の時間変化は周期的であり、かつ、その大きさは測定時に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値の最大値702以上である。更に、この最大値を超えることが望ましい。この印加する電圧及び周期の設定は、表示部を備えた入出力部120により行うことができる。また、事前に記憶部121に登録しておくこともできる。また、印加電圧に関し、測定時における電界補正用電極の近傍の電極への印加電圧の絶対値の最大値を記録しておき、その値に対して所定の電圧を加えた電圧値を制御部111内で演算し、設定することもできる。また、
図7に対応する、電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値301の時間変化を入出力部120の表示部に表示させることもできる。また、表示対象は、絶対値ではなく、極性を有する電圧値でもよい。
【0040】
ここで、電界補正用電極201の近傍電極とは、ダミー試料203、対物レンズ107、静電チャック電極205、静電チャック電極206、シールド電極110の少なくとも一者である。近傍の電極に電圧を印加するための電源は、電界補正用電源202よりも印加電圧の範囲が大きく、静電チャック電源207、静電チャック電源208、リターディング電源209、図示されていない対物レンズにそれぞれ接続された電源のいずれか一つ以上、または、その全部である。
【0041】
なお、本実施例では、電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701が、測定時に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値の最大値702以上となるように設定したが、本実施例のように印加電圧が周期性を有する場合には、測定時に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値の最大値702以下であっても電界補正用電極に付着した異物の除去効果を得ることができる。但し、高い電圧ほど異物除去効果が高く、測定時に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値の最大値702以上とすることが望ましい。
【0042】
実施例1では、電界補正用電源202で電界補正用電極201に電圧を印加するだけでは、電界補正用電極201の近傍に形成される電位勾配を十分に大きくできない場合があった。電界補正用電極201の近傍に形成される電位勾配が十分に大きいと、電界補正用電極201から異物が飛散し除去しやすくなる。本実施例によって、電界補正用電源202とは異なる電源を用いて、電界補正用電極201の近傍に形成される電位勾配を大きくし、効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去できる。
【0043】
なお、電界補正用電極201の近傍に対物レンズ107とシールド電極110が配置されていない構成であっても同様に実施適用することができる。
【0044】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、電界補正用電極の近傍に電極を配置し近傍の電極に電圧を印加することにより、より効果的に異物を電界補正用電極から除去することができる。
【実施例5】
【0045】
本発明の第5の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1乃至4の何れかに記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0046】
本実施例では、効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去する構成を説明する。本実施例における電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成は、
図6に示した構成と同一である。実施例1から実施例4までに参照した図と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。
図8は本実施例における電界補正用電極から異物を除去する工程を示すフローチャートである。
【0047】
ダミー試料(ダミーウェーハ)203を試料ステージ上に搬入する(ステップS801)。次に、電界補正用電極201の近傍の電極に異物を除去するための電圧を印加する(ステップS802)。次に、電界補正用電極201に異物を除去するための電圧を印加する(ステップS803)。ここで、
図7に例示した通り、電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701の時間変化は周期的であり、かつ、その大きさは測定時に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値の最大値702以上である。また、
図3に例示するように、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301は、測定時に電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値の最大値302以上である。更に、それぞれこれらの最大値を超えることが望ましい。
【0048】
その後、ダミー試料203を搬出する(ステップS804)。なお、電界補正用電極201へ付着した異物を除去するための電界補正用電極の近傍の電極や電界補正用電極への電圧の印加は、異物除去制御部122により各々の電極に接続された電源を制御することにより行うことができる。
【0049】
電界補正用電極201の近傍の電極には異物が付着している場合がある。特に、磁場を形成する対物レンズには磁性を持った異物が多く付着している場合がある。そのため、実施例4では、電界補正用電極201の近傍の電極への印加電圧の変化によって、電界補正用電極201の近傍の電極付近の電位勾配が大きく変化し、電界補正用電極201の近傍の電極から飛散した異物が電界補正用電極201に付着する可能性がある。本実施例によって、電界補正用電極201の近傍の電極に付着した異物が飛散した後に電界補正用電極201に付着したとしても、その後に電界補正用電極201に付着した異物を除去するため、電界補正用電極201からの異物除去の効果が大きい利点がある。
【0050】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、電界補正用電極の近傍に電極を配置し近傍の電極に電圧を印加した後、電界補正用電極に電圧を印加することにより、より効果的に異物を電界補正用電極から除去することができる。
【実施例6】
【0051】
本発明の第6の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1乃至5の何れかに記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0052】
本実施例では、効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去する構成について説明する。本実施例における電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成は
図6に示した構成と同一である。実施例1から実施例5までに参照した図と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。
図9は本実施例における電界補正用電極201への印加電圧の絶対値301および電界補正用電極201の近傍の電極への印加電圧の絶対値701の時間変化を示す説明図である。
図10は本実施例における電界補正用電極から異物を除去する工程を示すフローチャートである。本実施例では、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301の時間変化と電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701の時間変化が同期する点が実施例5と比較した場合の変更点である。
【0053】
図10に示すように、先ずダミー試料(ダミーウェーハ)203を試料ステージ上に搬入する(ステップS801)。次に、電界補正用電極201と電界補正用電極201の近傍の電極にそれぞれ異物を除去するための電圧を印加する(ステップS1051)。ここで、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301と、電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701を同期して変化させる。
【0054】
具体的な例としては、
図9に例示する通り、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301が変化した時間t
0からΔtだけ遅れた時間後に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701を変化させる。ここでΔtの時間遅れがなくてもよい。電界補正用電極201への印加電圧と電界補正用電極201の近傍への印加電圧の極性が異なる場合はそれぞれの印加電圧の絶対値が同時に最大になるようにする。極性が同じ場合は電界補正用電極201と電界補正用電極201の近傍の電極との間の電位勾配が大きくなるようにする。例えば、一方の印加電圧の絶対値が最大となるときに、もう一方の印加電圧の絶対値が0となるように印加電圧を制御する。
【0055】
その後、ダミー試料203を搬出する(ステップS804)。なお、電界補正用電極201へ付着した異物を除去するための電界補正用電極の近傍の電極や電界補正用電極への電圧の印加は、異物除去制御部122により各々の電極に接続された電源を制御することにより行うことができる。
【0056】
実施例5では、電界補正用電極201とその近傍の電極との間の電位勾配が十分ではなく、異物を除去できない恐れがあった。本実施例においては、電界補正用電極201とその近傍の電極との間の電位勾配を大きくし、効率的に電界補正用電極に付着した異物を除去できるという利点がある。
【0057】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値の時間変化と電界補正用電極の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701の時間変化を同期させることにより、より効果的に異物を電界補正用電極から除去することができる。
【実施例7】
【0058】
本発明の第7の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1乃至6の何れかに記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0059】
本実施例では、必要なときのみ電界補正用電極に付着した異物を除去する構成について説明する。
図11は本実施例における電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成を拡大した断面図である。なお、
図11において、
図2と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。本実施例では電界補正用電極201の代わりに、表面が鏡面化された電界補正用電極1151を用いた点が、実施例1と比較した場合の変更点である。
図12は、
図11に示す表面が鏡面化された電界補正用電極から異物を除去するときに、表面が鏡面化された電界補正用電極1151へ印加する電圧の絶対値1251の時間変化を示す説明図である。
【0060】
本実施例では、
図11に示した構成において、異物除去制御部122により表面が鏡面化された電界補正用電極1151に電圧を印加するように表面が鏡面化された電界補正用電極1151に接続された電源を制御し、表面が鏡面化された電界補正用電極1151に付着した異物を除去する。ここで、表面が鏡面化された電界補正用電極1151に印加する電圧の絶対値1251は、測定時の表面が鏡面化された電界補正用電極1151に印加する電圧の絶対値の最大値1252以上である。更に、この最大値を超えることが望ましい。この印加する電圧及び周期の設定は、表示部を備えた入出力部120により行うことができる。また、事前に記憶部121に登録しておくこともできる。また、印加電圧に関し、測定時における電界補正用電極への印加電圧の絶対値の最大値を記録しておき、その値に対して所定の電圧を加えた電圧値を制御部111内で演算し、設定することもできる。また、
図12に対応する、表面が鏡面化された電界補正用電極1151に印加する電圧の絶対値1251の時間変化を入出力部120の表示部に表示させることもできる。
【0061】
表面が鏡面化された電界補正用電極1151の表面粗さは小さく、例えば、算術平均粗さRa値で1nm以下である。このような表面粗さにすることで、数ナノメートルから数十ミクロンの粒径の異物と、表面が鏡面化された電界補正用電極1151との間の実効的な接触面積が大きくなり、ファンデルワールス力をはじめとした付着力で表面が鏡面化された電界補正用電極1151に付着している異物の付着力が増加する。実施例1から実施例6では、一度電界補正用電極から異物を除去した後に再度電界補正用電極から異物を除去するまでの間に、電界補正用電極に付着した異物の付着力が小さいため、測定対象である試料の測定時に、測定位置に応じた電界補正用電極への電圧印加によって異物が飛散してしまう恐れがある。本実施例においては、異物の付着力が向上するため異物を除去する電圧を印加するとき以外には電界補正用電極に付着した異物が飛散せず、測定時における測定対象である試料への異物付着防止や飛散の抑制や電界補正用電極に対する異物除去を実施する回数を減らしスループット低下を抑制できるという利点がある。
【0062】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、表面が鏡面化された電界補正用電極を用いることにより、測定時の電界補正用電極からの異物飛散を抑制することができる。
【実施例8】
【0063】
本発明の第8の実施例に係る荷電粒子線装置について説明する。なお、実施例1乃至7の何れかに記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0064】
本実施例では、効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去する別の構成について説明する。
図13は本実施例における電界補正用電極201とその近傍の試料ステージ108含む構成を拡大した断面図である。なお、
図13において、実施例1から実施例7までに参照した図と同一符号は同一または相当部分を示すので、再度の説明は省略する。本実施例では、ダミー試料203が試料ステージ上に保持されていない状態で、試料ステージ108及び電界補正用電極201が、対物レンズ107やシールド電極110の下部領域から付着した異物を除電するための除電器1351の下部領域まで移動され配置されている点が実施例1と比較した場合の変更点である。
図14は本実施例における電界補正用電極201から、除電器を補助手段として用いて異物を除去する工程を示すフローチャートである。
【0065】
試料ステージにダミー試料が保持されていない状態で、電界補正用電極201を除電器1351の除電範囲に含まれるように試料ステージを移動し、
図13に例示する構成にした後、電界補正用電極201の表面を除電する(ステップS1451)。除電器1351の動作は制御部111で制御することができる。
【0066】
次にダミー試料(ダミーウェーハ)203を試料ステージ上に搬入する(ステップS801)。ここで、試料ステージを移動し、
図6に例示したように、電界補正用電極201の近傍に電極が配置されるようにする。その後、電界補正用電極201に異物を除去するための電圧を印加する(ステップS803)。ここで、異物を除去するために電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値301は、例えば
図9のように、測定時に電界補正用電極201に印加する電圧の絶対値の最大値302以上である。
【0067】
次に電界補正用電極201の近傍の電極に異物を除去するための電圧を印加する(ステップS802)。ここで、異物を除去するために電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値701の時間変化は、例えば
図7のように、周期的であり、かつ、その大きさは測定時に電界補正用電極201の近傍の電極に印加する電圧の絶対値の最大値702以上である。更に、この最大値を超えることが望ましい。
【0068】
そして、ダミー試料203を搬出する(ステップS804)。なお、電界補正用電極201へ付着した異物を除去するための電界補正用電極の近傍の電極や電界補正用電極への電圧の印加は、異物除去制御部122により各々の電極に接続された電源を制御することにより行うことができる。
【0069】
実施例1では、電界補正用電極201に付着した異物の帯電の状態と印加電圧によっては、異物には電界補正用電極201に向かう方向のクーロン力が作用し、異物を除去できない恐れがあった。本実施例においては、予め除電器により異物の帯電の状態を制御することにより、効果的に異物を除去できる利点がある。また、実施例5では、電界補正用電極201の近傍の電極よりも後に電界補正用電極201に異物を除去するための電圧を印加するので、電界補正用電極201から飛散した異物が電界補正用電極201の近傍の電極に付着したままになる恐れがあった。本実施例により、電界補正用電極201の近傍の電極への異物の付着を抑制できるため、測定時における印加電圧の変化で電界補正用電極201の近傍の電極から異物が飛散せず、測定対象である試料への異物の付着を防止できる利点がある。
【0070】
本実施例では、ダミー試料203を試料ステージ上に搬送する前に除電を実施したが、ダミー試料203を搬送した後に除電を実施し、電界補正用電極201に電圧を印加し異物を除去しても良い。また、電界補正用電極201に異物を除去するための電圧を印加しながら除電を行っても良い。さらに、本実施例では、除電器に真空紫外線照射装置を用いたが、紫外線領域以外の光照射式の除電器やX線照射式の除電器であっても良い。
【0071】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、除電器を用いることにより、より効果的に電界補正用電極に付着した異物を除去できることができる。