(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685764
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】パルス処理
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
G01T1/17 C
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-31718(P2016-31718)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-161574(P2016-161574A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】15156716.1
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ニコラオス コンタラス
(72)【発明者】
【氏名】バルト ヨゼフ ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス サンダー クージマン
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−224938(JP,A)
【文献】
米国特許第05307299(US,A)
【文献】
細見健二,ゲルマニウム検出器の波形読み出し法の研究,修士論文,東北大学,2007年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子装置によって検出されたX線フォトンもしくは電子のエネルギーを決定するための方法であって、当該方法は
、
前記荷電粒子装置により、高エネルギーの電子の集束ビームでサンプル試料を照射すること、
前記サンプル試料に高エネルギー電子の前記集束ビームを照射したことに応答して、前記サンプルから放出されたX線及び/又は二次電子を検出器により検出することであって、X線及び/又は二次電子を検出することは、1つ又は複数のランダムに離間したイベントを含むアナログ信号を生成することを含み、前記1つ又は複数のランダムに離間したイベントの各イベントは対応するイベント高さを有すること、
プログラム可能なプロセッサにより、前記アナログ信号を一連のサンプルS(t)
に対応するサンプリングされた離散時間信号に変換することであって、ここで、tはサンプリングの瞬時
に対応すること、
前記プログラム可能なプロセッサにより及び前記時間信号内で、前記1つ又は複数のランダムに離間したイベントの存在を
決定する
ことであって、前記イベントは、
前記検出器によって検出されたX線フォトン又は二次電子に対応し、且つ前記イベントはt=Tにおいて検出される
こと、
前記プログラム可能なプロセッサにより、より多くのサンプルがイベント間のノイズ寄与を推定するために利用できるように、前記イベントを時間的に圧縮させる前記時間信号に対して、希薄化操作を実行することにより圧縮信号を形成すること、
プログラム可能なプロセッサにより及び前記時間信号に基づき、前記イベントに先行する多数のサンプル及びS(T)に続く多数のサンプルを使用して、
推定イベント高さ
Eを
決定する
ことであって、
ここで、前記推定イベント高さを決定することは、
前記プログラム可能なプロセッサにより、前記時間信号S(t)及び前記圧縮時間信号のうち一方の少なくとも一部にモデルを適用することに基づいて、前記サンプルに対するノイズ寄与を決定することであって、ここで、前記モデルは、t=(T−Δ
1)からt=(T+Δ
2)までのノイズ寄与N(t)を、t≦(T−Δ
1)のサンプルS(t)から及び/又はt
≧(T+Δ
2)のサンプルS(t)から
導出するように構成され
ており、但しΔ
1及びΔ
2は、所定のもしくは予め設定された時間期間であり、Δ
1は、
前記イベントが(T−Δ
1)前に採取されたサンプルに対する無視できる寄与を有するような値を有し、
且つΔ
2は、
前記イベントが(T+Δ
2)後に採取されたサンプルに対する無視できる寄与を有するような値を有する
こと、
及び
前記プログラム可能なプロセッサにより、前記サンプルについての
前記ノイズ寄与を引いて、
前記一連のサンプルを(T−Δ
1)から(T+Δ
2)まで積分することにより、
前記推定イベント高さEを
決定する
こと、
【数1】
を含み、
及び
前記プログラム可能なプロセッサにより及び前記推定イベント高さEに基づき、前記検出器によって検出された前記X線フォトンもしくは電子のエネルギーを決定すること、
を
含む、方法。
【請求項2】
前記時間信号内の前記イベントは、ステップ(301、302)もしくはパルス(400)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イベントは、ディラックのデルタ関数に似た形に一時的に圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アナログ信号が、一連のサンプルに対応する前記サンプリングされた離散時間信号に変換される前に、前記アナログ信号はフィルタリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アナログ信号のフィルタリングは、微分及び/もしくは積分を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アナログ信号の変換は、アナログ−デジタル変換を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モデル(412)は、S(T−Δ1)およびS(T+Δ2)を使用する補間、自己回帰(AR)モデリング、サンプルS(t)(ただしt≦(T−Δ1)及び/もしくはt≧(T+Δ2))を使用するARMAモデリング、又は線形最適ギャップ補間、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モデル(412)は、パラメータを使用し、且つ前記パラメータは、前記パルスの瞬時、t=Tに先行する前記時間信号に応じて変化する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Δ1は、イベントと以前のイベントとの間の時間に基づき、及び/又は
Δ2は、イベントと次のイベントとの間の時間及び/又はイベントのフォームに基づいて求められる、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ランダムに離間したイベントは、ランダムに離間したパルスの積分から得られるステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出器と、前記検出器のデータを処理するための前記プログラム可能なプロセッサとを備えた荷電粒子装置であって、前記検出器はX線又は二次電子検出器であり、且つ前記プロセッサは、請求項1に記載の方法を実行するようにプログラムされる、装置。
【請求項12】
前記イベントは、ディラックのデルタ関数に似た形に一時的に圧縮される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、S(T−Δ1)およびS(T+Δ2)を使用する補間、自己回帰(AR)モデリング、サンプルS(t)(ただしt≦(T−Δ1)及び/もしくはt≧(T+Δ2))を使用するARMAモデリング、又は線形最適ギャップ補間、又はそれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記モデルは、パラメータを使用し、且つ前記パラメータは、前記パルスの瞬時、t=Tに先行する前記時間信号に応じて変化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アナログ信号が、一連のサンプルに対応する前記サンプリングされた離散時間信号に変換される前に、前記アナログ信号はフィルタリングされる、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記アナログ信号のフィルタリングは、微分及び/もしくは積分を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Δ1は、イベントと以前のイベントとの間の時間に基づき、及び/又は
Δ2は、イベントと次のイベントとの間の時間及び/又はイベントのフォームに基づいて求められる、
請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記ランダムに離間したイベントは、ランダムに離間したパルスの積分から得られるステップである、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記検出器は、X線フォトンを検出するように構成されるシリコンドリフト検出器である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記プログラム可能なプロセッサにより及び前記検出器によって検出された前記X線フォトンもしくは電子のエネルギーに基づき、前記検出器によって検出された前記X線フォトンもしくは電子を放出した元素を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムに離間したイベントを有するアナログ信号を分析するための方法に関わる。当該方法は
・信号を一連のサンプルS(t)(但しtはサンプリングの瞬時(moment)である)に変換し、それによりサンプリングされた離散時間信号を形成するステップと、
・イベントの存在を検出するステップであって、前記イベントは、t=Tにおいて検出されるステップと、
・イベントに先行する多数のサンプル及びS(T)に続く多数のサンプルを使用して、イベント高さを推定するステップと、
を有する。
【0002】
本発明は、当該方法を実行するように装備された装置に関わる。
【背景技術】
【0003】
X線フォトンが半導体検出器にヒットすると、多数の電子正孔対が検出器内に生成される。外部から印加される電圧、もしくは半導体材料のドーピングにより組み込まれた内部電界のいずれかによって、検出器にバイアスをかけることにより、電子はアノードに引き寄せられるか、又は正孔はカソードに引き寄せられる。これはパルスをもたらす。好ましくは、例えばFET増幅器により、信号に第1の増幅処理した後に、このパルスは検出され得る。この時パルス高さを検出することにより、X線フォトンもしくは電子のエネルギーが決定できる。当業者に知られているように、X線フォトンのエネルギーは、前記フォトンを放出した元素の指標となる。
【0004】
欧州特許出願EP2653892A1は、荷電粒子装置におけるX線検出のためのシリコンドリフト検出器(SDD)の信号を分析する方法について記載する。以下のステップ、
各ステップの前及び各ステップの後に信号のレベルを推定するステップと、
2つのレベルを互いに減じることにより、ステップ高さを推定するこれらの推定値を使用するステップと
を検出するために、信号は分析される。各ステップの前のレベルは、時間にわたって信号を平均化(積分)することにより推定される。即ち、平均化が長いほど、信号における分散が低い。しかしながら、最大積分時間は、低周波ノイズ、漏洩、等に起因するノイズ寄与を回避するために制限される。
【0005】
これらのステップは、FET増幅器によるパルスの(アナログ)積分の結果であることが留意される。
【0006】
もう一つのこのような方法は、米国特許US7,966,155B2で知られている。
【0007】
この米国特許方法は、
信号を一連のサンプルに変換すること、
ステップの存在を検出して、切替可能な積分器を使用することにより信号をフィルタリングすることにより、ステップの前及びステップの後に信号レベルを推定すること、及び
2つのレベルを互いに減じることにより、ステップ高さを推定すること
を含む。2つの積分器の積分時間は、前記パルスと先行及び後行するパルスとの間の期間に応じて選択可能である。
【0008】
例えば半導体デバイス内でX線フォトンが検出され得ることは公知である(フォトンもしくは電子は、十分に高エネルギーであると仮定する)。欧州特許出願及び米国特許に記載された方法はいずれも、半導体デバイス(例えばSDD)もしくはガイガー=ミュラーデバイス内で検出されたX線フォトンのエネルギーを決定するのに、又は半導体検出器内で検出された電子のエネルギーを検出するのに使用できる。
【0009】
欧州特許出願及び米国特許に記載された方法はいずれも、できるだけイベントの前及び後に信号レベルを決定しようとする。イベント間の時間が小さいならば、イベント間の信号レベルの推定の分散は、信号対ノイズ比問題のせいで高い。(FET)増幅器の信号のノイズ源は、系列ノイズ(series noise)、平行ノイズ及び増幅器入力における1/f、並びにX線及び電子検出器の場合においては、イベント(入射フォトンもしくは電子)内で生成した電子の数の不確定性によるFanoノイズであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
イベント間の時間が減少するとき、欧州特許出願及び米国特許に記載された方法はいずれも、イベント高さについて低い信頼性の値を与える。
【0011】
高係数率におけるイベント高さについてより信頼できる推定を可能にする方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのためにも、本発明による方法は、
・t=(T−Δ
1)からt=(T+Δ
2)までのノイズ寄与N(t)を推定するため、モデルが使用され、前記ノイズ寄与は、t≦(T−Δ
1)のサンプルS(t)から及び/又はt
≧(T+Δ
2)のサンプルS(t)から誘導され、但しΔ
1及びΔ
2は、所定のもしくは予め設定された時間期間であり、Δ
1は、イベントが(T−Δ
1)前に採取されたサンプルに対する無視できる寄与を有するような値を有し、Δ
2は、(T+Δ
2)後に採取されたサンプルに対する無視できる寄与を有するような値を有すること、
・前記サンプルについてのノイズ寄与を引いて、一連のサンプルを(T−Δ
1)から(T+Δ
2)まで積分することにより、イベント高さEが推定されること、
【数1】
を特徴とする。
【0013】
本発明は、発生するイベントは、イベントに先行する及び/もしくは後行するサンプルから少なくとも部分的に推定され得る、という洞察に基づく。イベントが発生する期間にわたって信号を積分し、且つそれからノイズを減じることにより、イベント高さのより正確な推定が為される。即ち、本発明は、ノイズにおける相関の(画期的な(inventive))使用に基づく。
【0014】
信号源の非網羅的なリストは、以下の通りである。:
・X線を検出するためのシリコンX線検出器(例えば、PINダイオード又はSSDなど)、
・粒子光学装置で使用するための電子検出器、
・アコースティック検出器、例えばソニック「ブーム」を検出するためのマイクロフォンなど、
・例えば電子デバイス、例えば飛行機のブラックボックスからの「ソナー音(pings)」を検出するためのハイドロフォン、
・地震検出器、
・放射線を検出するための超伝導ボロメータ、
・シンチレーション検出器。
【0015】
信号は、サンプル&ホールドデバイスによりサンプリングされてよく、バケツリレー(bucket-brigade)遅延ラインを使用して、又はデジタルドメイン内で処理するためのアナログ−デジタル変換器を介してそれを通過させることにより、デバイス内で処理され得る。
【0016】
信号がサンプリングされる前に、当該信号はフィルタリングされてよい。例えば信号を微分することにより、サンプリングされるべき信号のダイナミックレンジは、低減される。;その結果、改善された信号表現が達成され得る。例えば積分することにより、エイリアシングが回避される。サンプリングする前の(例えばアナログフィルタによる)このような操作は、信号「成形」と称することができる。
【0017】
本発明の特に有利な実施形態において、信号が一連のサンプルに変換された後、サンプリングされた信号は、希薄化(sparsification)操作に付され、これにより前記イベントを一時的に圧縮する。このようにイベントを圧縮することにより、より少ないサンプル(サンプル窓)に及び/を占有することにり、その境界内のノイズ挙動のより正確な推定を可能にする。本発明のこの態様は、例えば
図4に、示される。
図4中、適切な線形(エネルギー比例)フィルタリング操作は、ブロック402内に描かれ、これは例えば幅が約1000のサンプル窓から幅が約20のオーダーのサンプル窓までイベントの時間スパンを減少させ得る。このような希薄化(sparsification)は、例えば米国特許5,307,299で行われるような(当該特許において、イベントは、拡張されたステップへと変換される)、「ストレッチ」するイベントのアンチテーゼであることに、関連するノイズの「ランダムウォーク」の付随する問題と共に、留意すべきである。それは、WO2003/040757A2における、例えば、イベントを圧縮もしくはストレッチしようとせずに、「そのままの」イベントを処理するアプローチとも異なる。画期的な希薄化を達成するための一つの方法は、連続時間伝達関数の離散時間変換:
D(s)=(1+sτ
h)(1+sτ
l)
で、入力信号をフィルタリングすることである。式中、τ
h及びτ
lは、信号対ノイズ比(SNR)及びs=jω(ここで、ωは周波数を表し、且つ
【数2】
)を最大化するように選択される時定数である。マッチしたポール−ゼロ離散化方法を利用すると、FIR(有限インパルス応答)フィルタ:
【数3】
(但し、T
Sは、サンプリング周期であり、zは、離散sに対応する)がもたらされる。このフィルタリング操作の出力は、
図4のブロック404に示されるような結果をもたらす。この場合、元のパルスイベントは、ディラックのデルタ関数に似た形に圧縮されていた。このことは、
−(パルス内で)推定されるべきサンプルの数が減少する;
−同時に、より多くのサンプルが後続のパルス間での評価目的のために利用可能になる、
という点において有利である。
【0018】
イベントは、例えば信号内のパルス、又は信号上のステップ(例えばブロックの側面)、又は減衰時間が続くエッジであり得る。信号が複雑な信号であることが知られている場合、当該信号は、(例えば電気積分器及び/もしくは微分器を使用して)サンプリングの前に、又はサンプリングされた信号を、フィルタを通過させることのいずれかにより、デコンボリュートすることができる。
【0019】
ノイズ予測モデルは、線形補間、補外、自己回帰モデリング(ORモデリング)、ARMAモデリング、又は線形最適ギャップ補間(LOGI)に基づく方法を有し得る。
【0020】
モデリングは、(例えばΔ
1とΔ
2のための固定値を使用して)パラメータの固定セットを使用するモデリングであり得、又は変数セットを使用してよく、例えば、例えばそれ以前のノイズ(t以前の信号=T)の時間に依存するΔ
1及びΔ
2に関する値を使用する。
【0021】
サンプルの数は、前のイベントもしくは後のイベントが生じる瞬時(the moment of time)に依存することが留意される。即ち、期間が小さい場合、ごく少数のサンプルが使用される一方、長期にわたる場合、サンプル数は最大数に限定され得る。
【0022】
本発明の一態様において、装置は、X線又は二次電子検出器と、前記二次電子検出器のデータを処理するためのプログラム可能なプロセッサとを備える。プロセッサは、先行する方法のいずれかを実行するようにプログラムされる。
【0023】
この態様は、例えばSDD及び検出器により生成される信号を処理するためのプロセッサを備えた荷電粒子装置、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)又はX線源を使用する装置、を説明する。
【0024】
一実施形態において、中でサンプルが照射される装置は、高エネルギー電子の集束ビームがサンプルに照射され、それに応答してX線及び/もしくは二次電子が、検出器により検出されるべきサンプルにより放出される装置である。
【0025】
サンプルのX線分析は、ビームエネルギー、例えば10keV以上を使用するSEMにおいてなされ得ることは周知である。
【0026】
ここで本発明は、図面を使用して説明される。図面中同一の参照番号は、対応する特徴を意味する。そのため、
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】SDDのFET増幅器部分の電気スキームを模式的に表した図である。
【
図3】電荷増幅器後のSDDの出力信号を模式的に表した図である。
【
図4】当該方法によるワークフローを模式的に表した図である。
【
図5】ARMAモデルのボード線図を表した図である。
【
図6】
図6a乃至
図6dは、どのように信号が補間され得るかを模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
SDDは、高純度のボリュームを表すか、もしくは第1のサイド11と第2のサイド18少なくとも再結合サイドをほとんど表さない、シリコンウエハ(もしくはその一部)10である。サイド11は、アノード16を有し、サイド18は、カソード19を有する。これら2つのサイド間のボリューム内で生成するいずれの電子/正孔対の電極は、アノードへドリフトしていき、正孔は、カソードへとドリフトする。サイド11は、第1のサイド11において、FETのドレインを形成する中心電極12を表す。中心電極を囲む電極13は、FETのゲートを形成し、電極13を囲む電極14は、FETのソースを形成する。FETは、電極12,13及び14を囲むシールド電極15により、シリコンウエハの残りから、ウエハの横方向及び「内部方向」の両方共にシールドされる。アノードは、FETのゲートに結合される(結合部は、
図1Aにおいて示されない)。
【0030】
アノードを囲んで、多数の同心電極17−iが形成される。これら同心円曲の最も内側は、アノード電圧に近い電圧に接続され、当該連続したリング17−iは、これら電極の最も内側のアノード電圧よりわずかに上から、最も外側の電極のカソード電圧に近似もしくは等しい電圧まで増加する電圧に接続されている。
リング電極17−iは、ウエハの内部で電子/正孔対からアノードまで電子全てをガイドするフィールドをひき起こす。当該アノードは小さな構造でしかないので、従ってカソードに対して小さなキャパシタンスしか示さない。
作動中、電圧差がアノードとカソードの間に印加されることが留意される。それにより、カソードに関するアノードのキャパシタンスが低減される。作動中、アノードキャパシタンス0.15pFを有するSDDが市販されている。
【0031】
図1Bは、
図1Aの細部を模式的に表す。
図1Bは、中心からアノードまでの部分を表す。ここで、アノード16とFETのゲートとの間の接続は、金属化物(metallization)21として表される。サイド18は、放射線感受性なサイドである。この表面の下に感受性ボリューム20が示される。感受性表面に入射するX線は、ボリューム内へと浸透し、且つこのボリューム内で多数の電子/正孔対を生成する。電子/正孔対の量は、フォトンのエネルギーに依存する。通常の操作では、フォトンの数は、各イベントは、別々に検出することができるものであり、従ってイベント毎、即ち入射フォトン毎の電子/正孔対の数、である。
例えばリセットダイオード(図示せず)を有するアノードをリセットすることにより、アノードのリセットが引き起こされるまで、アノードの電圧を、(カソードに関して)ますます負になるように強制しながら、電荷は、アノード上に蓄積される。
あるいは、FETのドレインからFETのゲートまでのリーク電流が、平均電荷蓄積を保証するのに使用され得る。
【0032】
しばしばフィードバックキャパシタが、SSD上に集積され、アノードを出力に接続すること、但しこのキャパシタは、SDDの外側にも配置され得ることが留意される。
【0033】
図2は、SDD(の一部)の電気的表現を模式的に表す。
【0034】
電気的表現は、電荷増幅器構成において使用されるSDDを表す。ボックス200内のパーツは、
図1A及び1Bで示されるようにSDDウエハの一部であり、その他のパーツは、SDDウエハに対して外部にある。
SDDは、
カソード201とアノード202、
ゲートがアノード202に内部で接続されるFET203、
一方の側がアノード202に接続されるフィードバックキャパシタ205、及び
カソードがアノード202に接続されるダイオードの形態のリセット要素204を有する。SDDの出力に接続されるのは、
SSDのカソード、
FETのソースとドレイン、
アノードに接続されないフィードバックキャパシタ、及び
リセットダイオードのアノード、
である。カソード201とFETのソースとの外部接続は、アース電位につながれている。FETのドレインは、増幅器206に接続される。増幅器の出力は、SDD上のフィードバックキャパシタに接続され鵜、及び従って電荷増幅器が形成される。さらに、リセットロジック207は、増幅器の出力に接続され、リセットダイオードのアノードに対してパルスを生成する。その結果、SDDはリセットされる。
【0035】
FETがソースフォロワとして使用される場合、及びドレインとゲートとの間の電圧V
dgが変化する場合、検出器は、リセットロジックがアクティブでないか、又はプリセットさえされていない、いわゆる「連続リセットモード」で動作することができること、且つFETのドレイン/ゲート電圧は、誘導(平均)アノード/カソード電流を補償する(電圧依存)リーク電流を発生させることが、言及される。
【0036】
図示されないが、検出器を走査するのに必要なのは、アノード202にバイアスをかけるためのエレクトロニクス、FETのドレイン、及び同心円状(concentric)リング17−iである。同心円状リングは、SDDのアノードとカソードとの間に、SDD上に集積されたレジスティブネットワークから誘導され得ることが留意される。
【0037】
入射フォトンに起因する電荷増幅器のパルス高さを決定するために、増幅器の出力は、さらなるエレクトロニクス及びロジックに接続されることが言及される。
【0038】
Application note AN−SDD−003: Amptek Silicon Drift Detectors (http://www.amptek.com/pdf/ansdd3.pdf)、より具体的にはそのFigure 10及び関連テキストにおいて、この回路のノイズが考察される。
【0039】
図3は、電荷増幅器(
図2の206)後のSDDの出力信号を模式的に表す。
【0040】
出力信号、典型的には電圧は、間隔(例えば間隔303)により分離されている多数のステップ、例えばステップ301及び302を表す。これらのステップは、ダイオードに衝突する光子の結果である。ステップの高さは変化し、且つフォトンのエネルギーの尺度である。ピークツーピーク値304により、ステップ間の信号に対するノイズが、はっきりと見える。信号が所定のレベルを超えると、電荷増幅器がリセットされ、シグナル305の低下をもたらすことがさらに示される。
【0041】
図4は、本発明による方法を模式的に表す。
【0042】
横軸と縦軸を表すボックスにおいて、横軸は、時間軸を模式的に表し、縦軸は、信号の増幅を模式的に表す。
【0043】
ボックス400は、フィルタリング(この場合は、微分)後(広域フィルリング後)の
図3に示す信号を表す。フィルタリングは、信号のダイナミックレンジを、ステップ(エベント)のダイナミックレンジよりわずかに多くまで低下させ、及び従って信号をサンプリングするADC上の制約を低下させる。
【0044】
ボックス402は、(サンプリングされた)信号の希薄化(sparsification)を表し、ボックス404に示される(一時的に)圧縮された信号をもたらす。この特定の希薄化ステップ(この特的の場合においては、信号を一時的に圧縮するフィルタリング操作)は、アルゴリズムの改善されたパフォーマンスをもたらす。
【0045】
ボックス404は、ボックス402に示されたフィルタリングアクション後の圧縮された信号、2つのストリームに分割された信号(1つのストリームは、ボックス406に行き、もう1つのストリームは、サミングノードに行く)を表す。この圧縮された信号において、パルスは、明らかに検出可能であり、瞬時t=Tにおいて検出される。
【0046】
ボックス406は、パルスを囲むデータの一部、t=(T−Δ
1)からt=(T+Δ
2)までのデータ、が削除されるアクションを模式的に表す。
【0047】
ボックス408は、t=(T−Δ
1)からt=(T+Δ
2)までのデータ削除後のデータストリームを模式的に表す。パルスが有意に貢献するいずれの信号は削除されているように(ボックス406のはさみによって示される)、このデータは、もっぱらノイズを有することが留意される。
【0048】
ボックス410は、便宜上ボックス408と同一のボックスを表す。
【0049】
ボックス412は、どのようなデータをギャップ内補間に使用すべきかを決定するアクションを模式的に表し、補間及びモデルのために使用すべき前記データを使用して、補間された及び/もしくは補外されたデータを見出し、及び従ってギャップを、このようにして見つけたデータで充填する。このボックスは、t=(T−Δ
1)の前及び/又はt=(T+Δ
2)の後にサンプリングされたサンプルを使用するデータS(t)内に存在するデータを使用するモデルに基づく補間アクションの結果を模式的に表す。
【0050】
ボックス414は、ボックス412のアクションにより検索されたデータの一例を表す。従ってこれは、ギャップにおけるノイズ寄与N(t)の推定である。
【0051】
ボックス416は、t=(T−Δ
1)からt=(T+Δ
2)までの信号S(t)からノイズ寄与N(t)が引かれることを表す。
【0052】
ボックス418は、引き算の結果であり、且つボックス414内で表されるノイズ寄与を引いたボックス404のパルスの推定を表す。
【0053】
ボックス420は、ボックス418の信号のフィルタリング(積分)を表す。
【0054】
ボックス422は、ボックス420のフィルタリング後に得られる信号を表す。この信号から、ステップ高さが誘導され得る。
【0055】
本書に記載される方法は、入力信号の変換に基づき、それにより入力信号は、容易に信号成分(X線検出成分)と静止相関ノイズ成分とに分割され得る。この相関ノイズ成分は、X線検出成分のエネルギー量の推定を改善するのに、引き続き使用される。
【0056】
本書に記載される方法の鍵及び新規性は、変換された信号が静止していることである。このことは、例えば先に言及されたEP2653892A1、に記載される方法、上に言及されたパルスプロセッサと対照的である。このことは、X線検出成分内に存在するノイズの、隣接ノイズ成分に基づく、予測を行うことができる固定モデル(ボックス412)を「トレーニング」(train)可能にする。X線検出成分から推定ノイズ成分の引き算は、X線スペクトルの解像度を改善する。モデルは、システム特異的なデータに基づきトレーニングされているので、ノイズ相関性を誘導するシステム不完全性は、自動的に補償されることを、我々は特記する。
【0057】
図5は、ARMAモデルのボード線図を表す。前記モデルは、ギャップ内のノイズ寄与を推定するのに使用される。パルスが発生する前に、ARMAモデルは、ノイズ信号でトレーニングされてよい。好ましくは、ノイズについての先験的(a-priori)知識において、最も好ましくはオフラインでトレーニングされる。トレーニング結果(使用されるべきモデル)は、エレクトロニクスのノイズ特性、信号のダイナミクス(例えば、信号の幅)、等に依存することが留意される。それゆえ、モデルが、各検出器のためにトレーニングされ、且つ可能な限り実際の信号の代表として信号を使用するとき、最善の結果が得られる(又は:可能な限り代表として多くのサンプルを有することが好ましい)。
【0058】
図6a乃至
図6dは、どのように信号が補間され得るかを模式的に表す。
【0059】
このARMAモデル及びギャップを囲む信号(
図6aに示される)を使用すると、パルスに先行するデータに基づく推定(
図6bに示される)及びパルスに後行するデータに基づく推定(
図6cに示される)が決定される。且つ重み係数を使用すると、これら2つの推定は合計されて、
図6dに示されるようなノイズ信号の推定を形成する。
【0060】
前述のARMAモデリングは、モデルが常に変化し、及び従ってモデルは、最適なパフォーマンスのためにトレーニングされ得る方法をこのようにもたらし得ることが留意される。
【0061】
前述のARMAモデリングは、使用することができる多くの実装の一例にすぎないことさらに留意する。
【0062】
最適モデルをノイズのために使用するとき、最善の結果が得られる。これは、前記最適(もしくはそれに近い解)が見つかるまで、モデルを「トレーニング」することにより、最もよく行われる。発明者らは、本発明にとって特別に興味深かったトレーニング法、即ち線形最適ギャップ補間(LOGI)を見出した。LOGIは、イベント(ステップ)なしの信号を使用し、且つ左側部分、中間部分及び右側部分を定義する。中間部部分は、ボックス408又は
図6aにおいて採取される部分と類似の長さ(時間又はサンプルの数)を有する。ここでのトリックは、左右のパーツを使用して、実際の中央部分からできるだけ少なくずれた中間部分の再構築を形成する解を見つけるためである。トレーニングは、非常に多数の実際のサンプルを使用して最もよく行われる。
【0063】
これは、数学的には以下のように表現される。
【0064】
(サンプリングした)信号は、それぞれ左、中間及び右間隔(部分/セグメント)を表すベクトルx
1..m,x
m+1..k及びx
k+1として表記されると仮定する。ベクトルyを既知の(連結された)間隔として、及びsを未知の間隔として表記するならば、最小平均二乗法における最適ギャップ補間器Wは、
【数4】
を最小化することにより与えられる(m+n)・k行列である。
【0065】
Wの要素に関する、且つゼロに等しくなるこの等式の微分、この問題に対する解は、以下を満足する。
【数5】
【0066】
Σは、yの自己相関行率であり、Qは、未知のサンプル値kのそれぞれを、yに含まれる利用可能な測定値に関連付ける(m+n)・k行列であることがわかる。R
nにより、x
iの自己相関関数、2つの行列の構造は、それから:
【数6】
及び
【数7】
へと展開される。
【0067】
このようにて見つかった推定器は、ノイズのダイナミクス並びに既知及び未知の間隔の長さにより定義される(に依存する)。
【0068】
式の左側部分について行列Σ、及び右側部分について行列Qを使用すると、これは、
W=Σ
−1Q
に、除算される。
【0069】
パルス(イベント)jについての補間は、
【数8】
により与えられる(予測される)。
【0070】
LOGIのメモリ要件は、ARMAモデリングの要件よりもかなり高いけれども、必要とされるメモリは、データの希薄化により劇的に減らされ得る。
【0071】
さらに、補間に使用され得るその他の方法/モデルは、以下のハンドブックに記載されることが留意される。
Box, G. et al.,”Time Series Analysis: Forecasting & Control”, 4th edition, Wiley, ISBN. ISBN: 978−0−470−27284−8.
Hyndman, R. et al., (2014). “Forecasting: principles and practice”, OTexts (October 17, 2013) ISBN−10: 0987507109.
【符号の説明】
【0072】
400,402,404,406,408 ボックス
401,412,414,416,418,420,422 ボックス