特許第6685923号(P6685923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6685923TiO2のALD用オゾン活性化リガンドを有するシクロペンタジエニルチタンアルコキシド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685923
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】TiO2のALD用オゾン活性化リガンドを有するシクロペンタジエニルチタンアルコキシド
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/28 20060101AFI20200413BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20200413BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C07F7/28 F
   C23C16/18
   H01L21/316 X
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-560874(P2016-560874)
(86)(22)【出願日】2014年12月20日
(65)【公表番号】特表2017-504657(P2017-504657A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】US2014071754
(87)【国際公開番号】WO2015095845
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】62/060,266
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/919,795
(32)【優先日】2013年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/939,211
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,トーマス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ハンクス,ウィリアム
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−156491(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1235976(CN,A)
【文献】 米国特許第05344948(US,A)
【文献】 特開平04−232272(JP,A)
【文献】 特表2010−539709(JP,A)
【文献】 Meiran Xie, Qing Wu, Shangan Lin,Synthesis of high-molecular-weight elastomeric poly(propylene) with half-titanocene/MAO catalyst,Molecular Rapid Communication,1999年,Vol. 20,pp.167-169
【文献】 Karel Mach, Jiri Kubista, Libor Trojan, Ivana Cisarova, Petr Stepnicka,The synthesis of (η5-cyclopentadienyl)titanium(IV) alkoxides by alcoholysis of the Ti-π-ligand bond in permethyl η3:η4-allyldiene-(η5-cyclopentadienyl)titanium(II),Inorganic Chemistry Communications,2003年,Vol. 6,pp.974-977
【文献】 Jiri PINKAS, Robert GYEPES, Ivana CISAROVA, Petr STEPNICKA, Michal HORACEK, Jiri KUBISTA, Vojtech VARGA and Karel MACH,REACTIONS OF DOUBLY TUCKED-IN PERMETHYLTITANOCENE WITH tert-BUTANOL AND PROPARGYL ALCOHOL. THE CRYSTAL STRUCTURES OF UNUSUAL HYDROLYTIC BYPRODUCTS,COLLECTION OF CZECHOSLOVAK CHEMICAL COMMUNICATIONS,2008年,Vol. 73,pp.967-982
【文献】 Zhibang Duan and John G. Verkade,Synthesis and Characterization of a Novel Azatitanatrane,Inorganic Chemistry,1995年,Vol. 34,pp.4311-4316
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着法のための有機チタン前駆体であって、
式(I)の有機チタン化合物:
【化1】
(式中、
、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、独立して、アリル、エチニル、プロピニル、ブチニルおよびペンチニルからなる群から選択され、
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、独立して、H、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む置換基から選択される)
からなる群から選択される有機チタン前駆体。
【請求項2】
、RおよびRの各々が、オレフィン不飽和を含む、請求項1に記載の有機チタン前駆体。
【請求項3】
、R、R、RおよびRの各々が、独立して、H、C−C12アルキルおよびC−C12アルケニルから選択される、請求項1に記載の有機チタン前駆体。
【請求項4】
蒸着法のための有機チタン前駆体であって、
式(II)の有機チタン化合物:
【化2】
(式中、
およびRの各々は、他方と同じであるかまたは他方と異なり、独立してHおよびC−C12アルキルから選択され、
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、独立して、H、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機置換基から選択される)
からなる群から選択される有機チタン前駆体。
【請求項5】
蒸着法のための有機チタン前駆体であって、
式(III)の有機チタン化合物:
【化3】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、独立してHおよびC−C12アルキルから選択される)
からなる群から選択される有機チタン前駆体。
【請求項6】
チタン含有膜を基板上に形成するための方法であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機チタン前駆体
または下記式の有機チタン化合物:
【化5】
(式中、Cpは、
【化6】
であり、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、独立してHおよびC−C12アルキルから選択される)
を使用して蒸着法を実施することを含む方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機チタン前駆体を作成する方法であって、オレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機部分を含むアルコールを、モノシクロペンタジエニルチタントリアミドと反応させて、前記前駆体を得ることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条に条項に基づき、2013年12月22日出願の米国特許仮出願第61/919,795号の利益、2014年2月12日出願の米国特許仮出願第61/939,211号の利益、および2014年10月6日出願の米国特許仮出願第62/060,266号の利益を請求するものである。このような米国特許仮出願の開示は、参照によりそれぞれの全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、蒸着法に有用性を示す有機チタン前駆体、およびこれを用いた蒸着法に関する。より詳しくは、本開示は、シクロペンタジエニルチタン化合物、およびこのような化合物を、共反応物としてのオゾンを有する有機金属前駆体として使用して、マイクロ電子デバイスおよびデバイス前駆体構造、例えば強誘電体キャパシタおよびダイナミックランダムアクセスメモリデバイス等の誘電材料構造物を製造する原子層蒸着(ALD)等の蒸着法に関する。
【背景技術】
【0003】
チタン含有薄膜は、高誘電体キャパシタ、バリヤ膜およびゲート構造等のマイクロ電子デバイス構造物に広く使用されている。
【0004】
このような膜は、有機金属前駆体から、即ち有機チタン化合物または錯体から形成される。つまり、有機チタン化合物または錯体を気化させて、対応する前駆体蒸気を形成してから、上記蒸気を、蒸着条件下でマイクロ電子デバイス製品またはデバイス前駆体構造用の基板と接触させる。このような目的のために使用される蒸着法には、種々のタイプの化学蒸着法(CVD)ならびに原子層蒸着法(ALD)が挙げられる。ALDは、多くの場合、優れたコンフォーマルコーティングおよびステップカバレージならびに膜均一性を達成するのに好ましい。
【0005】
このような蒸着法では、多数の有機チタン化合物および錯体が、従来技術により前駆体として使用されている。このような前駆体の所望の特性としては、好ましい気化および蒸気輸送特性、良好な熱安定性および早期分解に対する耐性、有利な膜形成特性ならびに蒸着法に適切な低い温度でチタン金属を蒸着させる能力が挙げられる。
【0006】
半導体製造用途に使用される種々のチタン前駆体は、熱安定性が劣っていること、早期分解しやすいことまたは蒸着法での蒸着が不適切であること、蒸気圧が低いこと、輸送特性が不良であることならびに/または蒸着温度要件が過度に高いこと等の欠点を示す。従って、当技術分野では、依然としてチタン前駆体の向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、有機チタン前駆体、およびこのような前駆体を作成するための方法、およびこのような前駆体を、例えばマイクロ電子デバイス製品およびデバイス前駆体構造物の製造に使用するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、本開示は、以下のものからなる群から選択される有機チタン化合物に関する:
(i)式(I)の有機チタン化合物:
【0009】
【化1】
式中、
、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、オレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機置換基から選択され、
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、H、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む置換基から選択される;
(ii)少なくとも1つのトリス(アルキルアミノアルキル)アミンリガンドおよび少なくとも1つのジアルキルアミンリガンドを含み、アルキルがC−Cアルキルである有機チタン化合物;および
(iii)シクロペンタジエニルリガンド、およびシクロペンタジエニル以外の環式ジエニルまたはトリエニルリガンドを含む有機チタン化合物。
【0010】
別の態様では、本開示は、式(II)の化合物からなる群から選択される有機チタン化合物に関する。
【0011】
【化2】
(式中、
およびRの各々は、他方と同じであるかまたは他方と異なり、各々が、独立してHおよびC−C12アルキルから選択され、および
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、H、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機置換基から選択される)。
【0012】
別の態様では、本開示は、式(III)の化合物からなる群から選択される有機チタン化合物に関する。
【0013】
【化3】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立してHおよびC−C12アルキルから選択される)。
【0014】
別の態様では、本開示は、本開示の有機チタン化合物、および本開示の有機チタン化合物のための溶剤媒体を含む前駆体組成物に関する。
【0015】
本開示の更なる態様は、チタン含有膜を基板上に形成するための方法であって、上述の有機チタン化合物またはこの代わりに下記式の有機チタン化合物を使用して、蒸着法を実施することを含む方法に関する。
【0016】
【化4】
(式中、Cpは、
【0017】
【化5】
であり、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立してHおよびC−C12アルキルから選択される)。
【0018】
本開示の別の態様は、本開示のシクロペンタジエニル有機チタン化合物を作成する方法であって、オレフィン不飽和を含む有機部分を含むアルコールを、モノシクロペンタジエニルチタントリアミドと反応させて、このような化合物を得る方法に関する。
【0019】
本開示のまた更なる態様は、容器、および上記容器に含有されている本開示の有機チタン化合物を含み、上記容器が、上記有機チタン化合物の保管分配用に構成されている前駆体供給パッケージに関する。
【0020】
本開示の他の態様、特徴および実施形態は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより十分に明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】二酸化チタン系誘電材料ならびに上部および底部電極を含むマイクロ電子デバイスの概略図である。
図2】本開示の1つの実施形態における、本開示の前駆体を含む材料保管分配パッケージの概略図である。
図3】このようなプロットで特定されたチタン前駆体を使用したALD処理における、前駆体パルス時間(秒)の関数としての蒸着率(オングストローム/サイクル)のプロットである。
図4】このようなプロットで特定されたチタン前駆体を使用したALD処理における、前駆体パルス時間(秒)の関数としての蒸着率(オングストローム/サイクル)のプロットである。
図5】このようなプロットで特定されたチタン前駆体を使用したALD処理における、前駆体パルス時間(秒)の関数としての蒸着率(オングストローム/サイクル)のプロットである。
図6】ルテニウム基板上にCpトリエタノールアミンチタンを蒸着した場合の、前駆体のサブパルスの関数としての、1サイクル当たりの蒸着のプロット(オングストローム、X線蛍光(XRF)で測定)である。
図7】ジメチルアミノチタニウムトリス(2−メチルアミノエチル)アミドを蒸着した場合の、前駆体のサブパルスの関数としての、1サイクル当たりの蒸着のプロット(オングストローム、SEで決定)である。
図8】20%オゾンを含有する蒸着雰囲気中で、シクロペンタジエニル(シクロヘプタトリエニル)チタンからジルコニア基板上にチタンを蒸着した場合の、前駆体のサブパルスの関数としての、1サイクル当たりの蒸着のプロット(オングストローム、X線蛍光で決定)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、化学蒸着法および原子層蒸着法等の蒸着法でチタン含有膜を蒸着するための前駆体として有用な有機チタン化合物、およびこのような化合物を作成および使用するための方法に関する。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「膜」は、1000マイクロメートル未満の、例えば、このような値から単原子層の厚さの値までの厚さを有する蒸着材料の層を指す。種々の実施形態では、本開示の実施における蒸着材料層の膜厚は、関与する特定の用途に応じて、例えば、100、10または1マイクロメートル未満であってもよく、または200、100もしくは50ナノメートル未満の種々の薄膜形態であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「薄膜」は、1マイクロメートル未満の厚さを有する材料の層を意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「および(and)」および「その(the)」は、状況が明白にそうではないと示さない限り、複数の参照対象を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、例えば、C−C12アルキルにおける、炭素数範囲の特定は、このような範囲内にある成分炭素数部分の各々を含むことが意図されており、この間の各炭素数、およびこの表記範囲にある任意の他の表記されている炭素数の値またはこの間の炭素数の値が包含される。指定されている炭素数範囲内の炭素数の部分範囲は、本発明の範囲内にあるより小さな炭素数範囲に独立して含まれていてもよく、1つ以上の炭素数が特に除外されている炭素数の範囲は、本発明に含まれており、特定の範囲の炭素数の上下限値のいずれかまたは両方が除外されている部分範囲も、本開示に含まれることが更に理解される。
【0026】
従って、C−C12アルキルは、このようなタイプの直鎖基ならびに分岐基を含む、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルを含むことが意図される。従って、炭素数範囲の特定、例えば、置換基部分として広く適用可能なC−C12は、本開示の特定の実施形態では、炭素数範囲を、置換基部分のより幅広い仕様内の炭素数範囲を有する部分基として更に限定することを可能にする。例として、炭素数範囲、例えばC−C12アルキルは、本開示の特定の実施形態では、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキルまたは幅広い炭素数範囲内の任意の他の部分範囲等の部分範囲を包含するように、より限定的に指定することができる。従って、例えば、範囲C−Cは、包括的であるだろう。また、より幅広い範囲の範囲内のC−C、C−C、C−C、C−C等の部分範囲を指定することにより更に限定することができる。
【0027】
本開示の前駆体は、本明細書に示されているこれらの種々の仕様および例証に関して、特定の置換基、基、部分または構造を除外する但し書きまたは限定により、特定の実施形態で更に指定することができる。従って、本開示は、限定的に規定されている組成物、例えば、RがC−C12アルキルであり、ただしR≠Ciアルキルであり、MまたはXが指定されている分子成分であり、iが特定の炭素数である組成物を意図している。
【0028】
本開示は、種々の記載されている特徴、態様および実施形態に関して本明細書において様々に示されており、特定の実施では、このような特徴、態様および実施形態の幾つかまたは全てを含むか、からなるか、または本質的にからなるように構成されていてもよく、ならびにこれらの要素および成分を一緒にして、本開示の種々の更なる具現例を構成してもよい。本開示は、本開示の範囲内となるように種々に並び替えおよび組み合わせた、このような特徴、態様および実施形態を意図している。従って、本開示は、これら特定の特徴、態様および実施形態の任意の組み合わせおよび並び替え、またはこれらの選択された1つ以上のいずれかを含むか、からなるか、または本質的に含むと指定されていてもよい。
【0029】
本開示の有機チタン化合物としては、以下のものからなる群から選択される化合物が挙げられる。
(i)式(I)の有機チタン化合物:
【0030】
【化6】
式中、
、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、オレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機置換基から選択され、
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、H、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む置換基から選択される;
(ii)少なくとも1つのトリス(アルキルアミノアルキル)アミンリガンドおよび少なくとも1つのジアルキルアミンリガンドを含み、アルキルがC−Cアルキルである有機チタン化合物;および
(iii)シクロペンタジエニルリガンド、およびシクロペンタジエニル以外の環式ジエニルまたはトリエニルリガンドを含む有機チタン化合物。
【0031】
式(I)化合物の1つの実施形態では、R、RおよびRの各々は、オレフィン不飽和を含む。別の実施形態では、R、RおよびRの各々は、独立してC−C12アルケニルから選択される。また更なる実施形態では、R、RおよびRの各々は、独立して、ビニル、アリル、アルケニルオキシ、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル等から選択される。
【0032】
1つの実施形態では、R、R、R、RおよびRの各々は、独立して、H、C−C12アルキルおよびC−C12アルケニルから選択される。別の実施形態では、R、R、R、RおよびRの各々は、独立して、HおよびC−C12アルキルから選択される。更なる実施形態では、R、R、R、RおよびRの各々は、独立して、Hおよびメチルから選択される。
【0033】
他の実施形態では、有機チタン化合物は、少なくとも1つのトリス(アルキルアミノアルキル)アミンリガンドおよび少なくとも1つのジアルキルアミンリガンドを含み、アルキルは、C−Cアルキルである。特定の実施形態では、有機チタン前駆体は、ジメチルアミノチタニウムトリス(2−メチルアミノエチル)アミドを含む。
【0034】
【化7】
【0035】
更に他の実施形態では、有機チタン化合物は、シクロペンタジエニルリガンド、およびシクロペンタジエニル以外の環式ジエニルまたはトリエニルリガンドを含む有機チタン化合物を含む。例えば、後者である非シクロペンタジエニルリガンドは、例えば、シクロペンタジエニル(シクロヘプタトリエニル)チタン:
【0036】
【化8】
を含む有機チタン化合物を有するシクロヘプタトリエニルリガンドを含んでいてもよい。
【0037】
シクロペンタジエニルリガンドおよび環式ジエニルまたはトリエニルリガンドは、これらの環炭素が、ヒドロカルビルリガンド、例えばC−Cアルキル置換基で置換されていてもよい。
【0038】
更なる態様では、本開示の有機チタン化合物は、式(II)の化合物からなる群から選択される。
【0039】
【化9】
(式中、
およびRの各々は、他方と同じであるかまたは他方と異なり、各々が、独立してHおよびC−C12アルキルから選択され、および
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立してH、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機置換基から選択される)。
【0040】
1つの実施形態では、式(II)化合物のR、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他方と異なっていてもよく、各々が、独立して、H、C−C12アルキルおよびC−C12アルケニルから選択される。別の実施形態では、式(II)化合物のR、R、R、RおよびRの各々は、他方と同じであるかまたは他方と異なっていてもよく、各々が、独立して、HおよびC−C12アルキルから選択される。更なる実施形態では、式(II)化合物のR、R、R、RおよびRの各々は、他方と同じであるかまたは他方と異なっていてもよく、各々が、独立して、Hおよびメチルから選択される。
【0041】
別の実施形態では、式(II)化合物のRおよびRの各々は、Hである。更なる実施形態では、式(II)化合物のRおよびRの各々は、C−C12アルキルから選択される。また更なる実施形態では、式(II)化合物のRおよびRの各々は、メチルである。
【0042】
別の態様では、本開示の有機チタン化合物は、式(III)の化合物からなる群から選択される。
【0043】
【化10】
(式中、
、R、R、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立してHおよびC−C12アルキルから選択される)。
【0044】
式(III)化合物の1つの実施形態では、R、R、R、RおよびRの各々は、独立してHおよびメチルから選択される。別の実施形態では、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立してHおよびメチルから選択される。
【0045】
別の実施形態では、本開示は、本開示の化合物、例えば、式(I)、(II)または(III)からなる群から選択される有機チタン化合物、およびこのような化合物の溶剤媒体を含む前駆体組成物に関する。
【0046】
溶剤媒体は、任意の好適なタイプであってもよく、例えば、C−C12アルカン、C−C12エーテル、C−C12芳香族、C−C16アリールアルカン、C10−C25アリールシクロアルカン、ならびに芳香族類、アリールアルカン類およびアリールシクロアルカン類の更なるアルキル置換形態からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒類を挙げることができ、前記更なるアルキル置換基が複数の場合、アルキル置換基は、互いに同じであってもよくまたは互いに異なっていてもよく、各々は、独立して、C−Cアルキル、アミン、エーテル、芳香族溶媒、グリム、テトラグリム、アルカン、アルキル置換ベンゼン化合物、ベンゾシクロヘキサン(テトラリン)、アルキル置換ベンゾシクロヘキサンおよびエーテル、テトラヒドロフラン、キシレン、1,4−tertブチルトルエン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ジメチルテトラリン、オクタン、デカン、アルキル置換芳香族溶媒、ならびにルイス塩基リガンドを含む安定化溶媒から選択される。
【0047】
別の態様では、本開示は、チタン含有膜を基板上に形成するための方法であって、有機チタン化合物を蒸着法用の金属源化合物として使用して、蒸着法を実施することを含む方法に関する。
【0048】
このような蒸着法の金属源化合物として使用することができる有機チタン化合物としては、以下のものが挙げられる。
(i)式(I)の有機チタン化合物:
【0049】
【化11】
式中、
、RおよびRの各々が、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、オレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む有機置換基から選択され、および
、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立して、H、C−C12アルキルおよびオレフィン不飽和またはアルキニル不飽和を含む置換基から選択される;
(ii)少なくとも1つのトリス(アルキルアミノアルキル)アミンリガンドおよび少なくとも1つのジアルキルアミンリガンドを含み、アルキルがC−Cアルキルである有機チタン化合物;
(iii)シクロペンタジエニルリガンド、およびシクロペンタジエニル以外の環式ジエニルまたはトリエニルリガンドを含む有機チタン化合物;および
(iv)以下の式の、トリエタノールアミンリガンドを有するシクロペンタジエニルチタン化合物を含む有機チタン化合物:
【0050】
【化12】
式中、Cpが、
【0051】
【化13】
であり、R、R、R、RおよびRの各々は、他のものと同じであるかまたは他のものと異なり、各々が、独立してHおよびC−C12アルキルから選択される。
【0052】
前述の有機チタン化合物(iv)としては、化合物シクロペンタジエニルトリエタノールアミンチタンであって、CpのR、R、R、RおよびR置換基の各々がHである化合物が挙げられる。このような化合物には、化合物ペンタメチルシクロペンタジエニル−トリエタノールアミンチタンであって、CpのR、R、R、RおよびR置換基の各々がCHであり、このような完全に置換されたシクロペンタジエニル環が、以下の対応する式ではCpと指定されている化合物も挙げられる。
【0053】
【化14】
【0054】
先述のシクロペンタジエニルトリエタノールアミンチタン化合物は、対応するシクロペンタジエニルチタントリクロリドをトリエチルアミンおよびニトリロトリエタノールと反応させることにより合成することができる。
【0055】
1つの実施形態では、蒸着法は、化学蒸着法(CVD)を含む。別の実施形態では、蒸着法は、原子層蒸着法(ALD)を含む。1つの実施形態では、このような蒸着法により生産されるチタン含有膜は、マイクロ電子デバイス、例えばDRAMデバイスの一部である。
【0056】
本開示の有機チタン前駆体化合物は、マイクロ電子デバイスおよびマイクロ電子デバイス前駆体構造物の製造に特定の有用性を有する。例えば、本開示の有機チタン前駆体化合物を、CVDおよびALD等の蒸着法に使用して、強誘電体キャパシタおよびダイナミックランダムアクセスメモリデバイス等の高κ誘電材料構造物を製造することができる。本開示の有機チタン化合物は、特にオゾンをALD法での共反応物として使用する場合、このような前駆体は、高い揮発性、優れた熱安定性およびウエハ表面での高い表面反応性を示すため、マイクロ電子デバイスまたはマイクロ電子デバイス前駆体構造物の製造でのALD法に特に有用である。
【0057】
本開示の更なる態様は、容器、および上記容器中に含有されている本開示の有機チタン化合物を含み、上記容器が、このような有機チタン化合物の保管分配用に構成されている前駆体供給パッケージに関する。
【0058】
本開示の前駆体は、以下に考察されているように、容易に合成される。
【0059】
ALDおよび他の蒸着法への用途では、本開示の有機チタン化合物は、液体バブラーを用いて、低温で、例えば90から150℃までの範囲で送達することができ、このような送達温度では熱的に安定しており、つまり熱分解しない。これら前駆体化合物は、ALDならびに他の蒸着法に使用することができ、このような蒸着法は、例えば、200℃から300℃までの範囲の温度で実施することができる。1つの実施形態では、本開示の有機チタン前駆体化合物は、前駆体化合物を含む液体に、つまり、このような化合物の融点を超える温度で液相状態である前駆体化合物の容積に、または好適な溶媒中の前駆体化合物の溶液に、適切なキャリアガスをバブリングして、キャリアガス中での蒸気圧の作用により液体に関連する蒸気を運搬することにより送達することができる。
【0060】
CVDおよびALD等の蒸着用途では、本開示の有機チタン化合物は、本明細書に記載の本開示に基づき、当技術分野の技術内にある適切な酸化剤、共反応物、処理条件等を使用して、チタン含有膜の蒸着を達成することができる。蒸着法では、前駆体の送達を達成するために、直接液体注入法(DLI)またはバブラー法または他の好適な方法を使用することができる。特定の実施形態では、有用な酸化剤としては、限定ではないが、オゾン、水、酸素、過酸化物、亜酸化窒素、二酸化炭素および/またはアルコールが挙げられる。1つの特定の実施形態では、式(II)の有機チタン化合物およびオゾンを、ALD法の共反応物種として使用して、二酸化チタンの基板上への蒸着を達成する。
【0061】
特定の実施形態では、本開示のチタン前駆体化合物と共に、複数の添加剤を使用して、このような添加剤を含まない対応する配合物と比較して、前駆体の熱安定性の増強および/または膜特性の向上、例えば高アスペクト比構造でのステップカバレージの向上を達成する配合物を構成することができることが理解されるだろう。このようなタイプの複数の添加剤配合物は、配合物の各成分の選択した1つ以上の濃度を変動させて、得られた安定性およびステップカバレージ特徴、または得られた配合物の他の膜特性を決定することを含む実験的決定により、本開示の所与の具現例に適切な前駆体および添加剤の相対的割合を指定することができる。
【0062】
本開示の前駆体を使用する蒸着法は、本明細書に記載の本開示に基づき、当業者にとって、所望の特徴の対応するチタン含有膜を形成するのに適切な、任意の好適な処理条件下(温度、圧力、流速、濃度、周囲環境等)で実施することができる。
【0063】
ALD法実施形態では、前駆体蒸気を蒸着チャンバに導入し、その後パージガスをチャンバにパルスして、このような前駆体混合ガスを除去する。次に、第2の流体を蒸着チャンバに導入して、反応順序を完了する。第2の流体は、例えば、基板上に酸化膜、例えばTiO膜を形成するための、オゾン、酸素または他の酸素含有ガスを含んでいてもよい。あるいは、第2の流体は、窒化チタン膜を基板上に形成するために窒素を含んでいてもよく、または第2の流体は、硫化チタン膜を基板上に形成のために硫黄を含んでいてもよい。
【0064】
種々の実施形態では、本開示のチタン前駆体は、高κ誘電体キャパシタまたは論理回路のゲート誘電材料構造を含む強誘電体キャパシタまたはダイナミックランダムアクセスメモリデバイス(DRAM)等の、高κ誘電材料構造物を製造するために使用することができる。
【0065】
本開示の有機チタン化合物から形成されるチタン含有膜は、二次物質、例えば、Nb、Ta、Zr、Hf、Ge、Si、Sn、La、Y、Ce、Pr、Nd、Gd、Dy、Sr、Ba、CaおよびMg、ならびにこのような金属の酸化物の中から選択される物質でドープ、共蒸着、合金化または層化することができる。例えば、本開示の種々の実施形態では、ドーパント物質、例えばIV族ドーパント種で場合によりドープされているチタン含有膜を、本開示の前駆体から形成することが意図される。
【0066】
種々の実施形態では、二酸化チタンのコンフォーマル薄膜のALD形成は、本開示の有機チタン化合物を使用し、好適な処理条件下、例えば、200℃から350℃までの範囲の温度にて、オゾン、酸素、水、過酸化物、亜酸化窒素、二酸化炭素、二酸化炭素またはアルコール等の酸素源を、0.2から20Torrまでの範囲の圧力で使用して実施することができる。このような酸素含有酸化剤種は、例えば、遠隔プラズマまたは直接プラズマにより活性化することができる。
【0067】
同様に、好適な酸素源、例えば、オゾンおよび過酸化物以外で、プラズマ活性化を必要としない酸素源を使用して、CVD法を実施して、酸化チタン膜を基板上に形成することができる。種々の実施形態では、CVD法は、200℃から600℃までの範囲の温度にて、0.2から10.0Torrまでの範囲の圧力で実施することができる。より高温高圧の条件を使用することができるが、一般的には、気相反応を回避するために、より低い酸化剤濃度が必要とされる場合がある。
【0068】
本開示の有機チタン化合物をALD法に使用して、TiO膜を形成する種々の用途では、チタン前駆体および共反応物オゾンのパルスを使用して、二酸化チタン膜を形成する。このような用途では、オゾンとのチタン前駆体の反応性は、膜成長速度に影響を及ぼす主要な要因である。本開示の有機チタン化合物は、オレフィン不飽和、例えばビニル基、アリル基、アルケニルオキシ官能基等を含む限り、優れた反応性を示し、対応する飽和有機チタン化合物と比較して、より高い膜成長速度をもたらし、また、高アスペクト比構造でも高いステップカバレージおよび共形性で基板が均一にコーティングされる共形性に優れたALD膜が得られる。
【0069】
本開示の別の態様は、本開示の、例えば、式(I)、(II)または(III)の有機チタン化合物を作成するための方法であって、オレフィン不飽和またはアルキニル不飽和、例えば、ビニル、アリル、アルケニルオキシ、エチニル、プロピニル、ブチニル等を含む有機部分を含むアルコールを、モノシクロペンタジエニルチタントリアミドと反応させて、有機チタン化合物を、このような式のモノシクロペンタジエニルチタントリアルコキシドとして産出することを含む方法に関する。
【0070】
特定の実施形態では、式(II)のシクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体は、以下のような反応合成工程により容易に合成される。
【0071】
【化15】
この反応スキームでは、3当量の適切なアルコールを、反応物および反応生成物に相溶する溶剤媒体中のモノシクロペンタジエニルチタントリアミドに添加する。得られるプロトノリシス反応は、所望のモノシクロペンタジエニルチタントリアルコキシドおよび3当量のアミンを生成する。
【0072】
本開示のシクロペンタジエニルチタンアルコキシド化合物を、ALDおよびCVD等の蒸着法に使用して、多種多様なチタン含有金属膜、例えば、二酸化チタン膜、PZT膜、PLZT膜、BST膜、チタン酸バリウム膜、チタン酸ストロンチウム膜、窒化チタン膜、硫化チタン膜、チタンを含有する酸化膜等を基板上に蒸着することができる。
【0073】
本開示の有機チタン前駆体化合物を、任意の好適な形態で、例えば、気化される液体の形態で、またはフラッシュ気化用の溶剤媒体に溶解または懸濁されている固体として、昇華性固体として、または蒸着チャンバへの蒸気送達に好適である十分な蒸気圧を有する固体として、または任意の他の好適な形態で、気化に供して、基板と接触する蒸着用の前駆体蒸気を生成することができる。
【0074】
本開示の前駆体の送達に溶媒を使用する場合、前駆体を溶解または分散して送達することができる任意の好適な溶剤媒体を使用することができる。例として、溶剤媒体は、単一成分の溶媒であってもよく、または複数成分の混合溶媒であってもよく、溶剤類としては、C−C12アルカン、C−C12エーテル、C−C12芳香族、C−C16アリールアルカン、C10−C25アリールシクロアルカンならびに芳香族、アリールアルカンおよびアリールシクロアルカン類の更なるアルキル置換基等の溶媒種が挙げられ、前記更なるアルキル置換基が複数の場合、アルキル置換基は、互いに同じであってもよくまたは互いに異なっていてもよく、各々は、独立して、C−Cアルキルから選択される。
【0075】
例示的な溶媒としては、アミン、エーテル、芳香族溶媒、グリム、テトラグリム、アルカン、アルキル置換ベンゼン化合物、ベンゾシクロヘキサン(テトラリン)、アルキル置換ベンゾシクロヘキサンおよびエーテルが挙げられ、特定の用途では、テトラヒドロフラン、キシレン、1,4−tertブチルトルエン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、ジメチルテトラリン、オクタンおよびデカンが、潜在的に有用な溶媒類である。
【0076】
幾つかの実施形態では、キシレン、1,4−tertブチルトルエン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、テトラリン、ジメチルテトラリンおよび他のアルキル置換芳香族溶媒等の芳香族溶媒を使用することが望ましい場合がある。また、溶剤媒体は、安定化溶媒、例えばルイス塩基リガンドを含んでいてもよい。
【0077】
他の実施形態では、好ましい溶媒としては、アミン溶媒、DMAPA等の中性アミン、オクタンまたは他の脂肪族溶媒、トルエン等の芳香族溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテルおよびテトラグリムを挙げることができる。
【0078】
特定の用途では、シクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体化合物を、所与の用途に応じて、単一成分の溶媒で構成されていてよく、あるいは混合溶媒で構成されていてもよい溶剤媒体中の個々の前駆体化合物または前駆体化合物の混合物として、液体送達システムに供給してもよい。このような目的のために使用することができる溶媒は、特定の前駆体を溶解または懸濁し、その後気化させて、チタン金属含有膜を蒸着しようとする基板と接触させる前駆体蒸気を形成することができる任意の好適なタイプであってもよい。
【0079】
他の特定の用途では、バブラーが、前駆体化合物の融点でまたは融点を超える温度で作動するように配置されている、シクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体のバブラー送達が意図される。
【0080】
あるいは、概して、本開示のシクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体組成物は、本開示の特定の実施形態では、本明細書に開示されている任意の1つ以上の化合物または配合物を含むか、からなるかまたはから本質的に含まれていてもよい。特定の実施形態では、本開示のシクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体化合物は、このような前駆体化合物の2つ以上を、液体送達用の前駆体カクテル組成物として、例えば溶液中に互いに混合し、組み合わせて使用することもできる。
【0081】
幾つかの実施形態では、シクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体種を、1つ以上の溶媒中に個々に溶解し、前駆体溶液を気化させるための気化器へと送達して前駆体蒸気を形成し、その後、前駆体蒸気を、蒸着システムの蒸着チャンバに輸送して、ウエハまたは他のマイクロ電子デバイス基板上にチタン含有膜を蒸着する。1つの実施形態では、前駆体は、イオン性液体媒体に溶解され、前駆体蒸気は、分配条件下でイオン性液体溶液から取り出される。
【0082】
他の実施形態では、シクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体は、固体送達技法により送達され、固体を気化させて前駆体蒸気を形成し、その後、前駆体蒸気を蒸着チャンバに輸送し、前駆体蒸気は、まず第1にパッケージ化された使用形態で供給される。
【0083】
なお更なる代替例として、シクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体は、好適な固相物理的吸着性保管媒体に吸着させた状態で、保管分配容器の内部容積に保管してもよい。使用の際には、固相物理的吸着性保管媒体から吸着前駆体の脱着させることを含む分配条件下で、前駆体蒸気を容器から分配する。
【0084】
一般的に、前駆体送達用の供給容器は、幅広く様々なタイプであってもよく、本開示の特定の前駆体化合物または組成物の所与の保管分配用途に応じて、SDS、SAGE、VAC、VACSorbおよびProE−Vapという商標でATMI,Inc.社(ダンベリー、コネチカット州、アメリカ合衆国)から市販されているもの等の容器を使用することができる。
【0085】
本発明の前駆体により、幅広く多様なマイクロ電子デバイス、例えば半導体製品、フラットパネルディスプレイ等を、優れた品質のチタン含有膜で製造することが可能になる。
【0086】
図1は、リード線12と接続している上部電極16とリード線14と接続している底部電極20との間に、チタン含有誘電材料18を含むキャパシタ10を含むマイクロ電子デバイス構造物の概略図である。誘電材料18を、本開示のシクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体を使用してチタン含有誘電材料を底部電極に蒸着するALDにより形成し、その後、上部電極層を形成してもよい。
【0087】
図2は、本開示の1つの実施形態によるシクロペンタジエニルチタンアルコキシド前駆体を含む材料保管分配パッケージ100の概略図である。
【0088】
材料保管分配パッケージ100は、例えば、図示されているように概して円筒形であってもよく、材料保管分配パッケージの内部容積104を画定する容器102を含む。この特定の実施形態では、前駆体は、周囲温度条件下で固体であり、このような前駆体は、容器の内部容積104に配置されているトレイ106の表面に支持されていてもよく、上記トレイは、容器の使用時に蒸気を容器の上方にバルブヘッド構築体へと流動させるための、上記トレイに備えられている流路導管108を有する。
【0089】
固体前駆体は、容器の内部容積の内側表面、例えばトレイ106および導管108の表面にコーティングされていてもよい。このようなコーティングは、前駆体を蒸気形態で容器に導入して、固体前駆体を蒸気形態から容器表面に凝縮させて膜にすることにより達成することができる。あるいは、前駆体固形物を、溶剤媒体に溶解または懸濁し、溶媒蒸発により容器の内部容積の表面に堆積させてもよい。更に別の方法では、前駆体を溶融させ、容器の内部容積の表面に注いでもよい。このような目的のため、容器は、前駆体膜を支持するための追加表面積を容器に提供する基材品または要素を含んでいてもよい。
【0090】
また更なる代替例として、固体前駆体は、粒状または微粉の形態で提供されてもよく、容器へと注がれて、それぞれのトレイ106の上部支持表面に保持される。別の代替例として、金属発泡体が、容器の内部容積に備えられていてもよく、このような金属発泡体は、固形粒子状前駆体の高度に効率的な気化を達成するために固形粒子状前駆体を保持するように構成されている特定の特徴を有する多孔度を有する。
【0091】
容器102は、バルブヘッド構築体110に接続する頸部109を有する。バルブヘッド構築体110には、図示されている実施形態では、手回しハンドル112が装備されている。バルブヘッド構築体は、手回しハンドルの代わりに、自動作動用のコントローラに接続またはそうでなければ作動可能に結合されていてもよい。バルブヘッド構築体110は、分配ポート114を含み、分配ポート114は、嵌合または連結要素と接続して、流路回路を容器に接続するように構成されていてもよい。このような流路回路は、図2の矢印Aにより概略的に表わされており、流路回路は、下流のALDまたは化学蒸着チャンバ(図2には表示されていない)に接続されていてもよい。
【0092】
使用時には、容器中の固体前駆体を少なくとも部分的に気化させて前駆体蒸気を提供するために、容器102を、加熱ジャケット、容器の外側壁面に取り付けられた抵抗発熱体または他の好適な加熱デバイスおよび手段等の好適なヒータで加熱することができる。熱の入力は、図2では参照矢印Qで概略的に示されている。前駆体蒸気は、手回しハンドル112または代替バルブアクチュエータもしくはコントローラを、バルブ要素が開位置に変更されるように操作すると、バルブヘッド構築体110のバルブ通路を通って容器から放出され、前駆体から生じる蒸気が、矢印Aにより概略的に示されている流路回路へと分配される。
【実施例】
【0093】
[実施例1]
この例は、例えば半導体製造工程で使用するための、二酸化チタン(TiO)原子層蒸着法(ALD)に関する。
【0094】
ALDは、種々の基板、広範な特性要件および他の処理制約が使用される非常に広範な用途においてTiO膜を蒸着するために使用される。例えば、TiOは、他の酸化物のドーパントとして、ルチル型構造のバルク誘電体としてならびにSrTiOおよび関連するペロブスカイトの主成分として、種々のDRAMキャパシタ用途に使用される。
【0095】
チタン前駆体を使用してALDによりチタニア膜の蒸着を実施する場合には、処理温度は、例えば、200℃から300℃までの範囲であってもよく、酸素源として、水またはオゾンを使用することができる。
【0096】
22個の化学的ファミリーに由来する130個の前駆体候補を含む前駆体スクリーニング研究を開始し、これらの中から60個を超える前駆体候補を得、スクリーニングし、最終的に20個をALD処理システムで試験した。このスクリーニング研究では、最初の作業は、熱重量分析(TGA)を使用して前駆体化合物の揮発性を試験することであった。その後、十分な揮発性を示す候補を、前駆体をALD工程に送達するのに必要な温度よりも高い温度に24時間晒した後で、前駆体の分解を測定することによりスクリーニングした。初期揮発性およびその後の静的熱安定度試験の両方の合格基準は、商業生産ALDツールに使用されている普及型送達システムとの適合性に基づいて選択した。揮発性および静的熱安定性試験後の次のスクリーニングには、蒸着率および飽和度の測定が含まれていた。
【0097】
ホモレプティックアミドチタン前駆体の飽和度は、ハロゲン化物、「D5」およびシクロペンタジエニルリガンドとの置換により向上することが見出された。各々の場合、輸送特性または蒸着率はトレードオフの関係にある。シクロペンタジエニル置換アミドは、検討した種類の中では良好な飽和度を示すことが見出され、蒸着率は0.6Å/サイクルであったが、シクロペンタジエニル置換アルコキシドのほうがより飽和していた。
【0098】
ホモレプティックアルコキシドは、HOおよびOの両方で良好な蒸着率を達成し、R基の長さが、イソプロポキシドから、エトキシドへ、メトキシドへと減少するにつれて、蒸着率が増加し、飽和度が向上するものの、同様に送達の困難性も増加させることが見出された。この点で、イソプロポキシドは、高揮発性で低粘性の液体であり、エトキシドは、著しい揮発性および送達温度未満の融点を有し、メトキシドは、適切な固形物送達技法を必要とする固形物である。
【0099】
このスクリーニング研究で評価した前駆体には、β−ジケトネート、ハロゲン化物、またはシクロペンタジエニルリガンドを置換することにより修飾されていたか、あるいはR基が、ビニル結合またはアセチリド結合またはトリメチルシリル基を含むように修飾されていたアルコキシド前駆体が含まれていた。概して、ビニル結合またはアセチリド結合を付加することによる前駆体の修飾は、飽和挙動を犠牲にして、高い蒸着率を示す揮発性液体が得られた。β−ジケトネート置換化合物は、低い蒸着率を示したが、蒸着の際に非常に安定だった。飽和度が低減されたとはいえ、揮発性および蒸着率の向上が、低融点固体で達成された。シクロペンタジエニル置換は、揮発性液体で最も良好な飽和度を提供したが、蒸着率は、Oでは中程度であり(0.3Å/サイクル)、HOでは使用に適さないものだった。シクロペンタジエニル置換を有するアルコキシリガンドにビニル基を付加することにより、飽和能力でのおよそ25℃を犠牲にして、Oでは高い蒸着率(0.8Å/サイクル)、HOでは中程度の蒸着率を示す揮発性液体が得られた。
【0100】
図3は、このようなプロットで特定されたチタン前駆体を使用し、300℃の温度にて10秒間のOでシリコン基板上に蒸着したALD法での、前駆体パルス時間(秒)の関数としての蒸着率(オングストローム/サイクル)のプロットである。
【0101】
図4は、このようなプロットで特定されたチタン前駆体を使用し、グラフに指定されている温度にて10秒間のOでシリコン基板上に蒸着したALD法での、前駆体パルス時間(秒)の関数としての蒸着率(オングストローム/サイクル)のプロットである。
【0102】
図5は、このようなプロットで特定されたチタン前駆体を使用したALD法での、前駆体パルス時間(秒)の関数としての蒸着率(オングストローム/サイクル)のプロットである。前駆体パルスの増加と共に蒸着率が飽和することは、3つの前駆体全てのALD挙動が良好であることを示した。最上部の前駆体は、最も高い蒸着率を示す揮発性液体である。中央の前駆体Ti(OMe)は、高い蒸着率を示したが、送達温度では固体であった。最下部の前駆体は、揮発性液体で優れた飽和度を示したが、蒸着率は低かった。
【0103】
図6は、前駆体のサブパルスの関数としての、1サイクル当たりの蒸着のプロット(オングストローム、X線蛍光(XRF)で測定)であり、Cpトリエタノールアミンチタン:
【0104】
【化16】
を、110℃にて、指定温度のルテニウム基板上に、オゾン(100グラム/ノーマル立方メートル)を用いておよびHOを用いて蒸着した。この前駆体は、高蒸着率で良好な飽和度を示した。
【0105】
上記で考察したように、本開示のシクロペンタジエニルトリエタノールアミンチタン化合物は、対応するシクロペンタジエニルチタントリクロリドをトリエチルアミンおよびニトリロトリエタノールと反応させることにより合成することができる。例えば、Cpトリエタノールアミンチタンは、下記の実施例2に記載のように合成することができる。
【0106】
[実施例2]
以下の反応を実施して、Cpトリエタノールアミンチタンを得た。
【0107】
【化17】
反応物(1,2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタ−2,4−ジエニル)チタン(IV)クロリド(5g)、トリエチルアミン(5.51g)および2,2’,2’’−ニトリルトリエタノール(8.12g)を、250mL丸底フラスコに添加し、150mLのヘキサンおよびおよそ10mLのトルエンで満した。この混合物は、この混合溶媒にはあまり可溶性ではなかったが、20mLの塩化メチレンを添加することにより、溶解性を助けた。この混合物は、最初は明るい赤色/オレンジ色に見えたが、撹拌後は淡黄色になった。この反応容積を、撹拌条件下でおよそ10時間維持した。この混合物の6mL等量をろ過して、淡黄色液体を回収した。溶媒を減圧下で除去して、淡黄色結晶を得た。CDCl中での生成物のNMRは、反応が成功したことを示した。この混合物を、中多孔度フィルターを使用してろ過し、50mLのヘキサンですすいで、淡黄色溶液を得た。溶媒を減圧下で除去して、3.92gの産物を得た。産物の元素分析は、C(%)=58.52、H(%)=8.04、N(%)=4.27およびCl(%)=0をもたらした。
【0108】
図7は、ジメチルアミノチタニウムトリス(2−メチルアミノエチル)アミド(NXTD5と記す)を90℃で蒸着した場合の、前駆体のサブパルスの関数としての、1サイクル当たりの蒸着のプロット(オングストローム、SEで決定)である。飽和度は、250℃では妥当だったが、300℃ほど良好ではなかった。
【0109】
図8は、前駆体のサブパルスの関数としての、1サイクル当たりの蒸着のプロット(オングストローム、X線蛍光で決定)であり、シクロペンタジエニル(シクロヘプタトリエニル)チタン:
【0110】
【化18】
から、20%オゾンを含有する蒸着雰囲気中でジルコニア基板上にチタンを蒸着した。試験は、250℃、275℃および300℃で実施した。図8の結果に示されているように、このような温度にて、特に100サブパルスの前駆体で、良好な蒸着性能が得られた。
【0111】
本開示は、特定の態様、特徴および例示的実施形態を参照して本明細書に示されているが、本開示の有用性はこれらに限定されず、むしろ他の変異、改変および代替実施形態に拡大および包含され、これらは、本明細書の記載に基づいて、本開示の分野の当業者に示唆されるだろう。従って、以下で特許請求されている本発明は、本発明の趣旨および範囲内にある、このような変異、修飾および代替実施形態を全て含むように、広く理解および解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8