特許第6686500号(P6686500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6686500導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686500
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20200413BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20200413BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20200413BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20200413BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20200413BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20200413BHJP
   H01B 5/14 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   C08L65/00
   C08G61/12
   C08K5/053
   H01B1/20 A
   H01B1/12 F
   H01B13/00 503B
   !H01B5/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-25276(P2016-25276)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-141409(P2017-141409A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西山 正一
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−063652(JP,A)
【文献】 特開2015−157923(JP,A)
【文献】 特開2015−147834(JP,A)
【文献】 特開2013−168463(JP,A)
【文献】 特開2014−014262(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073259(WO,A1)
【文献】 特開2014−197500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08G2,61、H01B1,5,13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェンの水溶液とエチレングリコールからなる組成物であって、前記のポリチオフェンの水溶液におけるポリチオフェンの濃度が0.01〜10重量%であって、エチレングリコール含量が前記水溶液における水 100重量部に対して50〜150重量部であることを特徴とする組成物。
【化1】
【化2】
[上記式(1)、(2)中、Mは、繰返し単位ごとに異なっていてもよく、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。Lは下記式(3)又は(4)のいずれかを表す。
【化3】
[上記式(3)中、lは6〜12の整数を表す。]
【化4】
[上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
【請求項2】
エチレングリコール含量が水100重量部に対して70〜130重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物を乾燥させることを特徴とする導電膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高導電性を示す自己ドープ型の導電性高分子水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ電極材料、電池電極材料、帯電防止材料として有効な自己ドープ型導電性高分子及びその水溶液が数多く報告されている。例えば、ポリチオフェンアルカンスルホン酸(特許文献1)、ポリイソチアナフテンスルホン酸(特許文献2)、直鎖のアルキレンスルホン酸基が置換したポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタンスルホン酸)(PEDT−S)、分岐のアルキレンスルホン酸が置換したポリチオフェン等が報告されている(例えば、特許文献3及び4)。中でも、PEDOT−S、又は3−[(2,3−ジヒドロチエノ)[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル]メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ポリマーが数十S/cm以上の導電率を示すことが報告されている。このような自己ドープ型導電性高分子、デバイスの微細化に伴い、更なる高導電率化が求められている。
【0003】
これに対して、PEDOT−PSSに代表される外部ドープ型導電性高分子においては、エチレングリコールを前記導電性高分子水溶液に対して3重量%添加した組成物を用いることによって導電率の高い導電膜が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−13873号公報
【特許文献2】特許第3182239号明細書
【特許文献3】特許第4974095号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/007299号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】PEDOTの材料物性とデバイス応用、S&T出版、167−173頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己ドープ型導電性高分子のエチレングリコール添加による導電性向上を狙ったところ、非特許文献1と同様の手法では、高導電率化させることができなかった。非特許文献1に記載された3重量%のエチレングリコールの添加効果は、外部ドープ型導電性高分子特有の構造に基づくものであると推測される。
【0007】
従って、本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来とは異なる手法・概念によって、
(1)高導電性の自己ドープ型導電性高分子膜を提供すること、及び
(2)当該自己ドープ型導電性高分子膜を形成するための新規な導電性高分子組成物を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、後述するポリチオフェンを含有する水溶液に、エチレングリコールを、当該水溶液の水100重量部に対して70〜130重量部含有させた組成物が、顕著に高い導電率を示すことを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示すとおりの導電性高分子組成物、及びそれを用いて作製した導電性高分子膜に関するものである。
[1]下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン水溶液とエチレングリコールからなる組成物であって、エチレングリコール含量が前記水溶液における水 100重量部に対して50〜150重量部であることを特徴とする組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
[上記式(1)、(2)中、Mは、繰返し単位ごとに異なっていてもよく、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。Lは下記式(3)又は(4)のいずれかを表す。]
【0013】
【化3】
【0014】
[上記式(3)中、lは6〜12の整数を表す。]
【0015】
【化4】
【0016】
[上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
[2]エチレングリコール含量が水 100重量部に対して、70〜130重量部であることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[3]ポリチオフェンの水溶液におけるポリチオフェンの濃度が0.01〜10重量%であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]上記[1]乃至[3]に記載の組成物を乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、当業者が先行技術文献に基づいて検討し得ない本願発明特有のエチレングルコール含有量範囲において、顕著に高い導電性備えた均一導電性膜を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の導電性高分子水溶液は、上記式(1)で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(以下、「本発明のポリチオフェン」と称する場合がある。)の水溶液とエチレングリコールからなる組成物であって、エチレングリコール含量が前記水溶液における水 100重量部に対して50〜150重量部であることを特徴とする。
【0020】
上記式(2)で表される構造単位は、上記式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
【0021】
ドーピングにより絶縁体−金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
【0022】
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型ポリマーと呼ばれている。
【0023】
上記式(1)又は(2)中、Mは、水素原子、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属原子、又はアミン化合物の共役酸を表す。アルカリ金属原原子としては、Li、Na、Kが好ましい。
【0024】
前記アミン化合物の共役酸は、アミン化合物にプロトンが付加したカチオン化合物を表す。当該アミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、一般式N(R)(R)(R)で表されるsp混成軌道を有するアミン化合物、sp混成軌道を有するアミン化合物等があげられる。ここで、当該R〜Rは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1〜40のアルキル基を表わす。
【0025】
当該R〜Rについては、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1〜20のアルキル基であることがより好ましく、各々独立して、水素原子、又は直鎖若しくは分岐の炭素数1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0026】
前述した、置換基を有していてもよい総炭素数1〜40のアルキル基及び置換基を有していてもよい総炭素数1〜20のアルキル基としては、何れも、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基メトキシメチル基、エトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、ベンジル基、フェネチル基、アミノエチル基等が挙げられる。
【0027】
前述した直鎖若しくは分岐の炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。
【0028】
前記の一般式N(R)(R)(R)で表されるsp混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、前記のsp混成軌道を有するアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジンピリジン(以上、ピリジン類)、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール(以上、イミダゾール類)、ピリジン、ピコリン、又はルチジン等が挙げられる。
【0029】
よって、本願発明におけるアミン化合物の共役酸としては、特に限定するものではないが、アンモニウムイオン、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、2−メチルピリジニウムイオン、3−メチルピリジニウムイオン、4−メチルピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、2−メチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチルイミダゾリウムイオン、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムイオン、2−フェニルイミダゾリウムイオン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチルイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオンが挙げられる。
【0030】
Mについては、導電性に優れる点で、水素原子、Liイオン、Naイオン、Kイオン、アンモニウムイオン、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、2−メチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−メチルイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオンであることが好ましく、水素原子、Liイオン、Naイオン、Kイオン、アンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオンであることがより好ましい。
【0031】
上記式(1)又は(2)中、Lは上記した式(3)又は(4)のいずれかで表される。
【0032】
上記式(3)においてlは6〜12の整数を表し、好ましくは6〜8の整数である。
【0033】
上記式(4)において、Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。mは1〜6の整数を表す。
【0034】
置換基Rにおいて、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0035】
は、導電性に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
【0036】
本発明のポリチオフェンは、下記式(5)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に重合させることで製造できる。
【0037】
【化5】
【0038】
[上記式(5)中、M、及びLは上記と同じ定義である。]
重合後のポリマーがアルカリ金属塩である場合は、必要に応じて、得られたポリマーを無機酸又はイオン交換樹脂等を用いて酸性化処理することでMを水素原子へ変換可能であり、さらにこれをアミン化合物と反応させることでMがNH(R)(R)(R)で表されるアミン塩への変換が可能である。ここでR〜Rは上記と同じ定義である。
【0039】
上記式(1)又は(2)においてLが上記式(3)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、具体的には、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸ナトリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸カリウム等が例示される。
【0040】
上記式(1)又は(2)においてLが上記式(4)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、具体的には、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−エチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ヘキシル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソプロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明のポリチオフェンの固体を、室温〜加温下(100℃以下が好ましい)で水に撹拌溶解させた水溶液に、エチレングリコールを添加することで達成される。また、別の方法として、上記式(5)で表されるチオフェンモノマーを水溶液中で重合させ(さらに必要に応じて精製、濃度調整する)ことで得られるポリチオフェンの水溶液に、エチレングリコールを添加することで達成される。
【0042】
エチレングリコールの量としては、本発明のポリチオフェン水溶液中に含まれる水 100重量部に対して50〜150重量部である。当該エチレングリコールの量としては、導電性に優れる点で、水 100重量部に対して70〜130重量部であることが好ましく、75〜110重量部であることがより好ましい。
【0043】
本発明のポリチオフェンの固体を撹拌溶解させる際には、スターラーチップや攪拌羽根による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0044】
本発明の組成物において、ポリチオフェン水溶液におけるポリチオフェンの濃度は、0.01〜10重量%である。当該濃度は、成膜の作業性に優れる点で、0.02〜8重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。
【0045】
本発明の組成物から導電膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の組成物を、基材に塗布し乾燥する方法が挙げられる。
【0046】
基材としては、特に限定するものではないが、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、又はレジスト基板等が挙げられる。
【0047】
塗布方法としては、特に限定するものではないが、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、又はインクジェット印刷法等が挙げられる。
【0048】
塗膜の乾燥温度は、均一な導電膜が得られる温度であれば特に限定されないが、室温〜300℃の範囲であり、好ましくは室温〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温〜200℃の範囲である。
【0049】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0050】
塗膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10−2〜10μmの範囲が好ましい。得られる塗膜の表面抵抗値としては特に限定するものではないが、1〜10Ω/□の範囲のものが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下に本発明に関する実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0052】
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV−1 P
rime。
【0053】
[導電率測定]
導電性組成物 0.5mlを30mm角の無アルカリガラス板に塗布し、窒素ガス雰囲気下、室温で一晩乾燥した後、窒素ガス雰囲気下、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗率から、以下の式に基づき算出した。
【0054】
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])。
【0055】
合成例 下記一般式(1)で表されるポリマー水溶液の合成
国際公開第2014/007299号明細書記載の方法により合成した3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4,−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 12.0g(36.3mmol)、及び水 94.2gを、4枚羽根傾斜パドルを装着した300mlセパラブルフラスコに加えたのち、窒素雰囲気下、撹拌しながら無水塩化鉄(III)3.53g(21.8mmol)を加えた。次いで、室温下、20分攪拌したのち、過硫酸ナトリウム 17.3g(72.7mmol)と54.0gの水からなる混合溶液を反応液温度が30℃以下を保持するように除熱しながら滴下した。滴下終了後3時間攪拌したのち、蒸留水を加えて、約1重量%のポリマー水溶液を1.2kg調製した。
【0056】
次に、上記ポリマー水溶液を中空糸膜(スペクトラム製、分画分子量=10,000,膜面積=0.079m)を用いて限外ろ過を行ったのち、更に、得られた水溶液を事前に希塩酸にて酸型に変換済みのアンバーライト 120B 250ml(オルガノ製)を用いて空間速度=1hr−1の条件下で通液した。通液により得られたポリマー水溶液 400gを陰イオン交換樹脂Lewatit MP−62(Lanxess製)に空間速度=5hr−1の条件下で通液した。次に、通液により得られたポリマー水溶液を上記と同じ中空糸膜を用いて濃縮し、濃度が0.94重量%の下式(6)で表されるポリマー水溶液を得た(収率=64%)。
【0057】
【化6】
【0058】
参考例1
上記合成例で得られたポリマー水溶液 2gを無アルカリガラス板(30mm×30mm)にキャスト後、150℃、30分アニール処理して膜を作製した。得られた膜の表面抵抗、膜厚及び導電率は、夫々10.0Ω/□、3.3μm、303S/cmであった。又、粒子径D50は、検出限外の0.8nmを示し、粘度は15mPa・s(20℃)であった。
【0059】
比較例1
10mlポリ瓶に、上記合成例で得られたポリマー水溶液 2gにエチレングリコール 0.044gを加えたのち、2分間超音波処理(アズワン製US−5)し、組成物を得た。次いで、前記組成物の全量を30m角のガラス基板にキヤストして窒素気流下で一晩放置させたのち、窒素気流下ホットプレート上で150℃、30分加熱して薄膜を調製した。得られた薄膜の導電率は286S/cmであった(表)。
【0060】
比較例2
エチレングリコールを0.105gに変更した以外は、比較例1と同様な処理を行い、導電率を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例3〜6及び実施例1〜2
エチレングリコールを表1記載の量に変更して、比較例1と同様な処理を行い、導電率を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0063】
上記したとおり、本発明の組成物を使用すれば、当業者が予想し得ない高い導電性を有する導電膜を提供することができる。
【0064】
この新規な組成物は、帯電防止材、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が期待できる。
【0065】
本発明の組成物中に含有されるポリチオフェンは、ポリマー鎖中に水溶性付与と自己ドーピングの機能を有するスルホン酸基をモノマー単位当たり一つ有しており、そのため非常に良好な水溶性を示す。したがって、ポリマー粒子径が非常に小さく、例えば、アルミ固体電解コンデンサの化成処理されたエッチドアルミ箔や、タンタル固体電解コンデンサのタンタル焼結体への良好な浸透性(含浸性)が期待されるとともに、当該ポリマーによる被覆面積が向上して、コンデンサの静電容量のアップが期待される。
【0066】
さらに、塗膜の導電性と耐湿性も改善されていることから、低ESR(等価直列抵抗)化や信頼性といったコンデンサの重要な特性改善も期待できる。