特許第6686577号(P6686577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686577
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】重金属処理剤の必要添加量決定方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20200413BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20200413BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20200413BHJP
   G01N 21/83 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B09B3/00 304G
   B09C1/08
   C02F11/00 JZAB
   G01N21/83
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-51617(P2016-51617)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-164677(P2017-164677A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義宏
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−000829(JP,A)
【文献】 特開2008−264624(JP,A)
【文献】 特開2000−054038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00−5/00
B09C1/00−10
G01N21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁度法による重金属含有物に対する重金属処理剤の必要量の決定方法において、重金属含有物が鉛及びカルシウムを含有し、カルシウム含有量が鉛含有量の1500倍モル以上である当該重金属含有物と水、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及びアンモニウム塩とを接触させて得られた水溶液に、重金属処理剤を添加して濁度を測定することを特徴とする重金属処理剤の必要量の決定方法。
【請求項2】
アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の重金属処理剤の必要量の決定方法。
【請求項3】
アンモニウム塩が、塩化アンモニウム、又は硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重金属処理剤の必要量の決定方法。
【請求項4】
重金属処理剤が、ジチオカルバミン酸塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属処理剤の必要量の決定方法。
【請求項5】
重金属含有物が、飛灰、汚泥、又は土壌であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の重金属処理剤の必要量の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属含有物に重金属処理剤を加えて重金属を不溶化処理する際に、重金属処理剤の必要量を決定する方法及び該方法により決定された重金属処理剤を用いた重金属含有物の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジチオカルバミン酸塩は、飛灰、土壌、廃水等の重金属含有物に対する重金属の不溶化処理剤として用いられており、例えばジチオカルバミン酸塩であるピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸塩は重金属処理能が高く、熱及び酸に対して安定で有害ガスの発生がないため、飛灰用の重金属処理剤として広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
重金属含有物中の重金属を不溶化するためには、重金属処理剤の必要量を把握することが必要であるが、重金属処理剤の必要量を決定するためは、机上試験にて飛灰に重金属処理剤を添加して、加湿水添加、混練等の前処理を施し、さらに昭和48年2月17日環境庁告示第13号法で定められる方法で重金属の溶出試験を行い、その溶出液中の重金属濃度を測定する公定法(以下、「13号試験」という。)を行うことにより、溶出液中の重金属濃度を測定する方法がある。しかし、公定法は長時間を要するものであるため、飛灰の様に連続的に処理することが必要な重金属含有物に迅速に対応することが困難であった。
【0004】
それに対して、重金属処理剤の必要量を簡易的に決定する方法も種々提案されており、例えば、重金属含有物中に含まれる鉛と銅の含有量と重金属処理剤の必要量が比例する相関を利用して重金属処理剤の必要量を決定する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、重金属含有物中の鉛、銅をICPや原子吸光法等で分析するには前処理を含めると長時間を要し、また、高価な分析機器が必要であった。
【0005】
より簡易的かつ正確な方法として、例えば、重金属含有物から重金属を溶出した溶液に重金属処理剤を混合した際に生成する金属錯体の濁度変化を測定することにより、重金属処理剤の必要量を決定する方法が提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。しかし、従来の濁度法では得られた結果に別途係数を乗ずる必要があり、その係数は重金属含有物の形態等によって異なり、重金属が十分に不溶化されない場合があるという問題があった。
【0006】
また、この問題に対応した重金属含有物に対する重金属処理剤の必要量の決定方法について、重金属含有物から重金属を水、カルボン酸で溶出させた溶液に、重金属処理剤を添加して濁度を測定し、濁度変化が一定となる終点又は濁度変化の変曲点における重金属処理剤の添加量から重金属処理剤の必要量を決定する方法(例えば、特許文献6参照)が提案されているが、この方法では重金属含有物が鉛及びカルシウムを含有し、カルシウムの含有量が鉛の含有量より1500倍モル以上ある重金属含有物においては適応できず、この点の改良が望まれていた。
【0007】
一方、最近では各種酸性物質の存在、特に重金属と錯体形成能力を有する有機酸が存在する厳しい条件下においても重金属の溶出がないことが求められつつある。有機酸は生ごみ等が直接埋め立てされた場合に発生する可能性があり、その錯体形成能によって重金属処理剤と競争反応する結果、重金属の溶出を促進する場合がある。その様な条件に対する試験方法として、酢酸等の脂肪族カルボン酸や硝酸等の共存条件下において重金属の溶出を測定する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3391173号公報
【特許文献2】特許第3843551号公報
【特許文献3】特許第4784309号公報
【特許文献4】特許第4793314号公報
【特許文献5】特許第4599913号公報
【特許文献6】特開2013−136026公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】廃棄物学会論文誌 Vol.13,No.2,pp.79−88,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、重金属処理剤の必要量を係数を用いることなく、直接、簡易的かつ正確に決定する重金属処理剤の必要量の決定方法及び該方法により決定された必要量の重金属処理剤を用いたカルシウムを含む重金属含有物の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、少なくとも鉛及びカルシウムを含有し、好ましくはカルシウムの含有量が鉛の含有量の1500倍モル以上である重金属含有物に対する重金属処理剤の必要量の決定方法について鋭意検討を重ねた結果、当該重金属含有物から水、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及びアンモニウム塩を含む水溶液で溶出させた溶出液に、重金属処理剤を添加して濁度を測定し、濁度変化の変曲点における重金属処理剤の添加量から重金属処理剤の必要量を決定できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
以下に、本発明の重金属処理剤の必要量の決定方法及び当該方法により決定された重金属処理剤を用いた、少なくとも鉛及びカルシウムを含有し、好ましくはカルシウムの含有量が鉛の含有量の1500倍モル以上である重金属含有物の処理方法をさらに詳しく説明する。
【0013】
本発明の決定方法は、濁度法による当該重金属含有物に対する重金属処理剤の必要量の決定方法(以下、「決定方法」という。)において、重金属含有物から重金属を水、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及びアンモニウム塩を含む水溶液で溶出させた溶出液に、重金属処理剤を添加して濁度を測定することを特徴とする決定方法である。ここで、濁度法による重金属含有物に対する決定方法とは、重金属含有物から重金属を溶出した溶液に重金属処理剤を添加し、該水溶液の濁度を測定し、濁度変化の変曲点における重金属処理剤の添加量から重金属処理剤の必要量を決定する、少なくとも鉛及びカルシウムを含有し、好ましくはカルシウムの含有量が鉛の含有量の1500倍モル以上である重金属含有物に対する決定方法を意味する。
【0014】
本発明の決定方法では、当該重金属含有物から重金属を、水、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及びアンモニウム塩を含む水溶液で溶出させる。
【0015】
本発明の決定方法では、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物を用いることによって、重金属処理剤の必要量を決定することができる。
【0016】
本発明の決定方法で用いるアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物としては、特に限定はなく、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物を挙げることができ、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましい。
【0017】
本発明の決定方法で用いるアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物の使用量は、カルシウムを含む重金属含有物の形態、カルシウムを含む重金属含有物の組成等によって異なり、飛灰の場合、使用する飛灰は0.1倍重量部〜20倍重量部が好ましく、特に0.1倍重量部〜10倍重量部が好ましい。
【0018】
本発明の決定方法で用いるアンモニウム塩としては、特に限定はなく、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩を挙げることができ、特に塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムが好ましい。
【0019】
本発明の決定方法で用いるアンモニウム塩の使用量は、カルシウムを含む重金属含有物の形態、カルシウムを含む重金属含有物の組成等によって異なり、飛灰の場合、使用する飛灰は0.1倍重量部〜20倍重量部が好ましく、特に0.1倍重量部〜10倍重量部が好ましい。
【0020】
本発明の決定方法で用いる水の量としては特に限定はなく、当該重金属含有物に対して100倍重量部〜10000倍重量部の水を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の決定方法における溶出処理としては特に限定はなく、当該重金属含有物に前記範囲の水を用いて、1〜30分の攪拌又は振とう操作を行うことが好ましい。
【0022】
本発明の決定方法では、従来の方法と異なり、係数を用いることなく、当該重金属含有物に必要な重金属処理剤の必要量を決定することができる。
【0023】
本発明の決定方法では、重金属含有物が鉛及びカルシウムを含有し、カルシウムの含有量が鉛の含有量の1500倍モル未満の重金属含有物も測定可能であるが、当該重金属含有物のカルシウムの含有量が鉛の含有量の1500倍モル以上の重金属含有物から重金属を、水、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及びアンモニウム塩を含む水溶液で溶出させた溶出液に重金属処理剤を添加し、濁度を測定することが好ましい。
【0024】
当該溶液中に溶解した当該重金属含有物中の重金属は、重金属処理剤の添加によって不溶性の金属錯体を形成し、徐々に溶液の濁度が上昇する。溶解した全ての重金属が錯体形成された後には重金属処理剤をさらに添加しても濁度は変化しなくなる、又は変化が著しく小さくなるため、その点を変曲点とすることができる。
【0025】
例えば、重金属含有物が鉛及びカルシウムを含有し、好ましくはカルシウムの含有量が鉛の含有量の1500倍モル以上の重金属含有物のxグラムから重金属を、水、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及びアンモニウム塩を含む水溶液で溶出させ、当該水溶液に重金属処理剤を徐々に添加した際に、重金属処理剤をyグラム添加した時が濁度変化の変曲点であれば、当該重金属含有物xグラムに対する重金属処理剤の必要量はyグラムと決定できる。
【0026】
また、実際の重金属処理では、当該重金属含有物の形態、重金属含有量のバラツキ、重金属処理剤の混合方法等により重金属処理にバラツキが生じるため、本発明の決定方法で決定された重金属処理剤の必要量にさらに上乗せした量を使用することが好ましい。その場合の上乗せ量は、当該重金属含有物の形態、重金属含有量のバラツキ、重金属処理剤の混合方法等により異なり、通常飛灰の場合、飛灰に対して0.1wt%〜3.0wt%が好ましく、特に0.5wt%〜2.0wt%が好ましい。
【0027】
本発明における当該重金属含有物は重金属を含有する物質であれば特に限定はなく、例えば、飛灰、汚泥、及び土壌等が例示できる。
【0028】
本発明の決定方法で用いる重金属処理剤は特に限定はなく、特にジチオカルバミン酸塩、特にピペラジンのカルボジチオ酸塩(ピペラジン−N−カルボジチオ酸塩、ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸塩のいずれか一方、又はそれらの混合物)であることが好ましい。ピペラジンのカルボジチオ酸塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を挙げることができ、濁度を測定する観点から水溶性のアルカリ金属塩が好ましく、中でもナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
【0029】
本発明の決定方法で用いる重金属処理剤の添加方法は特に限定はなく、ポンプを用いた添加、ピペットによる添加等を例示することができ、精度の点からポンプを用いた添加が好ましい。また重金属処理剤の添加における時間間隔は特に限定はなく、濁度変化が安定し、測定によるばらつきを軽減する上で、1分以上が好ましく、特に2分以上の間隔で添加することが好ましい。
【0030】
本発明の決定方法における濁度の測定方法は特に限定はなく、例えば溶液中の濁度を光学的に検出できる吸光度計、レーザーセンサー等を用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の決定方法は、当該重金属含有物中の重金属を不溶化できる重金属処理剤の必要量を係数を用いることなく、直接、簡易的、迅速かつ正確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】重金属処理剤の必要添加量決定装置の検出部の概略図を示す。
図2】飛灰サンプル1の溶出方法Aにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図3】飛灰サンプル2の溶出方法Aにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図4】飛灰サンプル3の溶出方法Aにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図5】飛灰サンプル1の溶出方法Bにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図6】飛灰サンプル4の溶出方法Cにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図7】飛灰サンプル5の溶出方法Cにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図8】飛灰サンプル6の溶出方法Cにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図9】飛灰サンプル4の溶出方法Dにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図10】飛灰サンプル1の溶出方法Eにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図11】飛灰サンプル1の溶出方法Fにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図12】飛灰サンプル1の溶出方法Gにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図13】飛灰サンプル3の溶出方法Gにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図14】飛灰サンプル1の溶出方法Hにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図15】飛灰サンプル4の溶出方法Iにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図16】飛灰サンプル5の溶出方法Iにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図17】飛灰サンプル6の溶出方法Iにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
図18】飛灰サンプル4の溶出方法Jにおける重金属処理剤の必要添加量決定装置を用いた試験結果を示す。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
なお、以下の実施例、比較例において評価した飛灰サンプルを表1、表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1は、各飛灰サンプルの元素換算含有量を示す。表2は、飛灰中のCaの換算含有量(wt%)と飛灰1kgあたりのモル(a)、Pbの換算含有量(wt%)と飛灰1kgあたりのモル(b)、及びCaのモル(a)/Pbのモル(b)のモル比を示す。
【0038】
飛灰サンプル1〜飛灰サンプル3は、Caのモル(a)/Pbのモル(b)のモル比が1500倍モル以上の飛灰サンプルであり、飛灰サンプル4〜飛灰サンプル6は、Caのモル(a)/Pbのモル(b)のモル比が1500倍モル未満の飛灰サンプルである。
【0039】
[溶出方法]
表3に各溶出方法で使用した薬剤を示し、以下に各溶出方法を記す。
【0040】
溶出方法A
250mLのポリエチレン容器に純水200g、20wt%水酸化ナトリウム10mL、塩化アンモニウム0.5gを入れ混合した。この溶液に飛灰サンプル1.0gを入れ、攪拌機(スピンバー)で2分攪拌による溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0041】
溶出方法B
250mLのポリエチレン容器に純水200g、水酸化カルシウム1.0g、塩化アンモニウム0.5gを入れ混合した。この溶液に飛灰サンプル1.0gを入れ、攪拌機(スピンバー)で2分攪拌による溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0042】
溶出方法C
250mLのポリエチレン容器に純水200g、20wt%水酸化ナトリウム10mL、塩化アンモニウム0.5gを入れ混合した。この溶液に飛灰サンプル0.2gを入れ、攪拌機(スピンバー)で2分攪拌による溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0043】
溶出方法D
250mLのポリエチレン容器に純水200g、水酸化カルシウム0.5g、塩化アンモニウム0.5gを入れ混合した。この溶液に飛灰サンプル0.2gを入れ、攪拌機(スピンバー)で2分攪拌による溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0044】
溶出方法E
250mLのポリエチレン容器に純水200g、20wt%水酸化ナトリウム10mLを入れ混合した。この溶液に飛灰サンプル1.0gを入れ、攪拌機(スピンバー)で2分攪拌による溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0045】
溶出方法F
250mLのポリエチレン容器に純水200g、水酸化カルシウム1.0gを入れ混合した。この溶液に飛灰サンプル1.0gを入れ、攪拌機(スピンバー)で2分攪拌による溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0046】
溶出方法G
500mLのポリエチレン容器に飛灰サンプル1.0g、純水200g、フタル酸水素カリウム3.0gを入れ、30秒振とうによる溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、20wt%水酸化ナトリウム5mLを加え、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0047】
溶出方法H
500mLのポリエチレン容器に飛灰サンプル1.0g、純水200g、DL−リンゴ酸3.5gを入れ、30秒振とうによる溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、20wt%水酸化ナトリウム10mLを加え、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0048】
溶出方法I
500mLのポリエチレン容器に飛灰サンプル0.2g、純水200g、フタル酸水素カリウム3.0gを入れ、30秒振とうによる溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、20wt%水酸化ナトリウム5mLを加え、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0049】
溶出方法J
500mLのポリエチレン容器に飛灰サンプル0.2g、純水200g、DL−リンゴ酸3.5gを入れ、30秒振とうによる溶出処理を行い、重金属含有物の飛灰から重金属を溶出した。次に当該溶液をろ過後、20wt%水酸化ナトリウム10mLを加え、pHが12以上であることを確認し、pHが12未満であれば20wt%水酸化ナトリウムで調整した。
【0050】
【表3】
【0051】
[決定方法]
溶出液を入れたガラスビーカーを図1のように投光器と受光器よりなるレーザーセンサーの間に設置した。レーザーセンサーはセンサー部としてLX−02(キーエンス社製)、コントローラ部としてLX2−V10(キーエンス社製)を使用した。その溶液を攪拌しながら受光量を測定し、受光量が安定してから、重金属処理剤(東ソー株式会社製:TS−300(ピペラジンビスジチオカルバミン酸塩の40wt%水溶液)の3.5wt%水溶液)を3分間隔で一定量づつ添加していき、その懸濁物質量の変化をセンサー部の受光量より検出した。
【0052】
実施例1〜実施例3
溶出方法Aで飛灰サンプル1〜飛灰サンプル3を溶出試験した結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
何れも決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0055】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い実施例1〜実施例3の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表5〜表7と図2図4に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
実施例1と実施例2は、10mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰1gに対し重金属処理剤量が10mg(飛灰に対して1.0wt%)を示した。実施例3は、5mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰1gに対し重金属処理剤量が5mg(飛灰に対して0.5wt%)を示した。この結果は、表8〜表10に示す重金属処理剤の必要量を決定する13号試験で得られた結果である飛灰サンプル1と飛灰サンプル2の1.0wt%、飛灰サンプル3の0.5wt%と一致した。
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
【表10】
【0063】
実施例4
溶出方法Bで飛灰サンプル1を溶出試験した結果を表4に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0064】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い実施例4の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表11と図5に示す。
【0065】
【表11】
【0066】
実施例4は、10mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰1gに対し重金属処理剤量が10mg(飛灰に対して1.0wt%)を示した。この結果は、表8示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果の1.0wt%と一致した。
【0067】
実施例5〜実施例7
溶出方法Cで飛灰サンプル4〜6を溶出試験した結果を表4に示す。何れも決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0068】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い実施例5〜実施例7の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表12〜表14と図6図8に示す。
【0069】
【表12】
【0070】
【表13】
【0071】
【表14】
【0072】
実施例5は、16mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が16mg(飛灰に対して8.0wt%)を示した。実施例6は、9mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が9mg(飛灰に対して4.5wt%)を示した。実施例7は、4mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が4mg(飛灰に対して2.0wt%)を示した。この結果は、表15〜表17で示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果と一致した。
【0073】
【表15】
【0074】
【表16】
【0075】
【表17】
【0076】
実施例8
溶出方法Dで飛灰サンプル4を溶出試験した結果を表4に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0077】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い実施例8の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表18と図9に示す。
【0078】
【表18】
【0079】
実施例8は、16mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が16mg(飛灰に対して8.0wt%)を示した。この結果は、表15で示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果と一致した。
【0080】
比較例1
溶出方法Eで飛灰サンプル1を溶出試験した結果を表19に示す。
【0081】
【表19】
【0082】
決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0083】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い比較例1の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表20と図10に示す。
【0084】
【表20】
【0085】
比較例1は、20mg添加した時点で変曲点が観測されるものの不明瞭であり、また変曲点における添加量は飛灰1gに対し重金属処理剤量が20mg(飛灰に対して2.0wt%)を示した。この結果は、表8に示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果の1.0wt%と一致しなかった。
【0086】
比較例2
溶出方法Fで飛灰サンプル1を溶出試験した結果を表19に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0087】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い比較例2の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表21と図11に示す。
【0088】
【表21】
【0089】
比較例2は、20mg添加した時点で変曲点が観測されるものの不明瞭であり、また変曲点における添加量は飛灰1gに対し重金属処理剤量が20mg(飛灰に対して2.0wt%)を示した。この結果は、表8に示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果の1.0wt%と一致しなかった。
【0090】
比較例3〜比較例4
溶出方法Gで飛灰サンプル1、飛灰サンプル3を溶出試験した結果を表19に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が白く濁り、受光量も2000mV未満であった。
【0091】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い比較例3〜比較例4の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表22、表23と図12図13に示す。
【0092】
【表22】
【0093】
【表23】
【0094】
比較例3と比較例4の何れも液が白く濁り、変曲点が観測されなかった。
【0095】
比較例5
溶出方法Hで飛灰サンプル1を溶出試験した結果を表19に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が白く濁り、受光量も2000mV未満であった。
【0096】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い比較例5の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表24と図14に示す。
【0097】
【表24】
【0098】
液が白く濁り、変曲点が観測されなかった。
【0099】
参考例1〜参考例3
溶出方法Iで飛灰サンプル4〜飛灰サンプル6を溶出試験した結果を表19に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0100】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い参考例1〜参考例3の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表25〜表27と図15図17に示す。
【0101】
【表25】
【0102】
【表26】
【0103】
【表27】
【0104】
参考例1は、16mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が16mg(飛灰に対して8.0wt%)を示した。参考例2は、9mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が9mg(飛灰に対して4.5wt%)を示した。参考例3は、4mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が4mg(飛灰に対して2.0wt%)を示した。この結果は、表15〜表17に示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果と一致した。
【0105】
参考例4
溶出方法Jで飛灰サンプル4を溶出試験した結果を表19に示す。決定方法の測定前のろ液の状態が透明で、受光量も4000mV以上であった。
【0106】
次にこの溶出液を用いて、決定方法に従い参考例4の重金属処理剤の必要量を測定した結果を表28と図18に示す。
【0107】
【表28】
【0108】
参考例4は、16mg添加した時点で明確な変曲点が観測され、変曲点における添加量は飛灰0.2gに対し重金属処理剤量が16mg(飛灰に対して8.0wt%)を示した。この結果は、表15に示す重金属処理剤の必要量を決定した13号試験で得られた結果と一致した。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の重金属処理剤の必要量の決定方法は、重金属含有物質中の重金属を不溶化できる重金属処理剤の必要量を簡易的、迅速かつ正確に決定することができるため、焼却場で連続的に排出される飛灰等の重金属含有物の処理を連続的に処理することに特に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 受光器
2 投光器
3 センサーコントロール部
4 スターラー
5 測定容器(ガラスビーカー)
6 攪拌子
図1
図2
図3
図4
図5
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図18