【実施例】
【0068】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例、比較例における熱線遮蔽微粒子分散液の波長300〜2100nmの光に対する透過率は、分光光度計用セル(ジーエルサイエンス株式会社製、型番:S10−SQ−1、材質:合成石英、光路長:1mm)に分散液を保持して、日立製作所(株)製の分光光度計U−4100を用いて測定した。
当該測定の際、分散液の溶媒(メチルイソブチルケトン)を、上述のセルに満たした状態で透過率を測定し、透過率測定のベースラインを求めた。この結果、以下に説明する分光透過率、および可視光透過率は、分光光度計用セル表面の光反射や、溶媒の光吸収による寄与が除外され、熱線遮蔽微粒子による光吸収のみが算出されることとなる。
可視光透過率は、波長380〜780nmの光に対する透過率から、JIS R 3106に基づいて算出した。熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計を用いて測定した。
【0070】
実施例、比較例における熱線遮蔽シート、および合わせ透明基材の光学特性は、分光光度計U−4000(日立製作所(株)製)を用いて測定した。可視光透過率は、波長380〜780nmの光に対する透過率からJIS R 3106に従って測定を行った。
【0071】
[実施例1]
(Rb/Cs/W(モル比)=0.30/0.03/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)の各粉末を、Rb/Cs/W(モル比)=0.30/0.03/1.00相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、N
2ガスをキャリアーとした5%H
2ガスを供給下で加熱し600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、N
2ガス雰囲気下で800℃、30分間焼成して、実施例1に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末A」と略称する。)を得た。
【0072】
粉末AをX線回折法で測定した結果を
図1に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Aは六方晶単相であることが判明した。従って、Rb成分、Cs成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0073】
粉末A20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と略称する。)10質量%、メチルイソブチルケトン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、15時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液A」と略称する)を得た。ここで、分散液A内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ26nmであった。
【0074】
分散液Aを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Aの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は37.1%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は8.2%、波長2100nmの透過率は15.2%であることが判明した。
当該測定結果より、実施例1に係る複合タングステン酸化物微粒子は、後述する比較例1に係る従来方法で作製したセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっており、波長2100nmの熱線遮蔽性能が向上していることが確認された。
分散液Aの測定結果を表1に記載した。
【0075】
分散液Aへ、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと複合タングステン酸化物微粒子との質量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物微粒子]=3となるように調製した。次に、スプレードライヤーを用いて、この複合タングステン酸化物微粒子分散液Aから
メチルイソブチルケトンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Aと略称する。)を得た。
【0076】
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂に対して、製造される熱線遮蔽シート(2.0mm厚)の可視光透過率が70%となるように所定量の分散粉Aを添加し、熱線遮蔽シートの製造用組成物を調製した。
【0077】
この熱線遮蔽シートの製造用組成物を、二軸押出機を用いて280℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により2.0mm厚のシート材とし、実施例1に係る熱線遮蔽シート(以下、シートAと略称する。)を得た。
【0078】
上述したシートAの可視光透過率は70%であった。
シートAの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は19.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.8%、波長2100nmの透過率は2.5%、ヘイズは1.0%と測定された。シートAの評価結果を表2に記載した。
【0079】
[実施例2]
(Rb/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と、水酸化ルビジウム(RbOH)および水酸化カリウム(KOH)の各粉末とを、Rb/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末B」と略称する。)を得た。
【0080】
粉末BをX線回折法で測定した結果を
図2に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Bは純粋な六方晶単相であることが判明した。従って、Rb成分、K成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0081】
粉末B20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液B」と略称する)を得た。ここで、分散液B内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ21nmであった。
【0082】
分散液Bを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Bの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は58.3%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は19.4%、波長2100nmの透過率は16.2%であることが判明した。
分散液Bの測定結果を表1に記載した。
【0083】
分散液Bへ、さらに分散剤aを添加した以外は実施例1と同様にして、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Bと略称する。)を得た。
【0084】
分散粉Bを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る熱線遮蔽シート(以下、シートBと略称する。)を得た。
【0085】
上述したシートBの可視光透過率は70%であった。
シートBの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は39.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は7.0%、波長2100nmの透過率は2.7%、ヘイズは1.2%と測定された。シートBの評価結果を表2に記載した。
【0086】
[実施例3]
(Rb/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化カリウム(KOH)、の各粉末を、Rb/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末C」と略称する。)を得た。
【0087】
粉末CをX線回折法で測定した結果を
図3に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Cは六方晶単相であることが判明した。従って、Rb成分、K成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0088】
粉末C20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液C」と略称する)を得た。ここで、分散液C内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ18nmであった。
【0089】
分散液Cを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Cの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は53.3%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は13.2%、波長2100nmの透過率は11.5%であることが判明した。
分散液Cの測定結果を表1に記載した。
【0090】
分散液Cへ、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと複合タングステン酸化物微粒子との質量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物微粒子]=3となるように調製し、これを撹拌型真空乾燥機(月島製ユニバーサルミキサー)を使用して、減圧操作も加えた加熱蒸留を80℃で2時間行い、メチルイソブチルケトンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Cと略称する。)を得た。
【0091】
分散粉Cを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る熱線遮蔽シート(以下、シートCと略称する。)を得た。
【0092】
上述したシートCの可視光透過率は70%であった。
シートCの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は34.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は3.9%、波長2100nmの透過率は1.6%、ヘイズは1.1%と測定された。シートCの評価結果を表2に記載した。
【0093】
[実施例4]
(Cs/K/W(モル比)=0.05/0.28/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)の各粉末とを、Cs/K/W(モル比)=0.05/0.28/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末D」と略称する。)を得た。
【0094】
粉末DをX線回折法で測定した結果を
図4に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Dは六方晶単相であることが判明した。従って、Cs成分、K成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0095】
粉末D20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液D」と略称する)を得た。ここで、分散液D内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ23nmであった。
【0096】
分散液Dを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Dの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は57.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は15.7%、波長2100nmの透過率は13.3%であることが判明した。
分散液Dの測定結果を表1に記載した。
【0097】
分散液Dへ、さらに分散剤aを添加した以外は実施例1と同様にして、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Dと略称する。)を得た。
【0098】
分散粉Dを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る熱線遮蔽シート(以下、シートDと略称する。)を得た。
【0099】
上述したシートDの可視光透過率は70%であった。
シートDの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は38.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は5.0%、波長2100nmの透過率は2.0%、ヘイズは1.0%と測定された。シートDの評価結果を表2に記載した。
【0100】
[実施例5]
(Cs/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Cs/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末E」と略称する。)を得た。
【0101】
粉末EをX線回折法で測定した結果を
図5に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Eは六方晶単相であることが判明した。従って、Cs成分、K成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0102】
粉末E20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液E」と略称する)を得た。ここで、分散液E内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ24nmであった。
【0103】
分散液Eを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Eの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は50.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は10.9%、波長2100nmの透過率は10.7%であることが判明した。
分散液Eの測定結果を表1に記載した。
【0104】
分散液Eへ、さらに分散剤aを添加した以外は実施例1と同様にして、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Eと略称する。)を得た。
【0105】
分散粉Eを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る熱線遮蔽シート(以下、シートEと略称する。)を得た。
【0106】
上述したシートEの可視光透過率は70%であった。
シートEの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は31.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.9%、波長2100nmの透過率は1.4%、ヘイズは1.0%と測定された。シートEの評価結果を表2に記載した。
【0107】
[実施例6]
(Cs/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Cs/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末F」と略称する。)を得た。
【0108】
粉末FをX線回折法で測定した結果を
図6に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Fは六方晶単相であることが判明した。従って、Cs成分、K成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0109】
粉末F20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液F」と略称する)を得た。ここで、分散液F内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ28nmであった。
【0110】
分散液Fを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Fの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は42.5%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は8.0%、波長2100nmの透過率は10.7%であることが判明した。
分散液Fの測定結果を表1に記載した。
【0111】
分散液Fへ、さらに分散剤aを添加した以外は実施例1と同様にして、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Fと略称する。)を得た。
【0112】
分散粉Fを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る熱線遮蔽シート(以下、シートFと略称する。)を得た。
【0113】
上述したシートFの可視光透過率は70%であった。
シートEの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は24.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.8%、波長2100nmの透過率は1.4%、ヘイズは1.1%と測定された。シートFの評価結果を表2に記載した。
【0114】
[実施例7]
(Cs/K/W(モル比)=0.25/0.08/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Cs/K/W(モル比)=0.25/0.08/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末G」と略称する。)を得た。
【0115】
粉末GをX線回折法で測定した結果を
図7に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Gは六方晶単相であることが判明した。従って、Cs成分、K成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0116】
粉末G20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液G」と略称する)を得た。ここで、分散液G内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ20nmであった。
【0117】
分散液Gを、適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した際の、分散液Gの透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は34.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は7.0%、波長2100nmの透過率は14.1%であることが判明した。
分散液Gの測定結果を表1に記載した。
【0118】
分散液Gへ、さらに分散剤aを添加した以外は実施例1と同様にして、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Gと略称する。)を得た。
【0119】
分散粉Gを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る熱線遮蔽シート(以下、シートGと略称する。)を得た。
【0120】
上述したシートGの可視光透過率は70%であった。
シートEの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は17.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.5%、波長2100nmの透過率は2.2%、ヘイズは1.2%と測定された。シートGの評価結果を表2に記載した。
【0121】
[比較例1]
(Cs/W(モル比)=0.33/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽シート)
タングステン酸(H
2WO
4)と、水酸化セシウム(CsOH)との各粉末を、Cs/W(モル比)=0.33/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末H」と略称する。)を得た。
【0122】
粉末HをX線回折法で測定した結果を
図8に示す。得られたX線回折プロファイルから、粉末Hは六方晶単相であることが判明した。従って、Cs成分、タングステン成分は、六方晶複合タングステン酸化物微粒子の結晶中に完全に固溶していると判断された。
【0123】
粉末H20質量%、分散剤a10質量%、MIBK70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液H」と略称する)を得た。ここで、分散液H内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ29nmであった。
【0124】
分散液Hを適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は21.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は10.9%、波長2100nmの透過率は22.3%となった。分散液Hの測定結果を表1に記載した。
【0125】
分散液Hへ、さらに分散剤aを添加した以外は実施例1と同様にして、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下、分散粉Hと略称する。)を得た。
【0126】
分散粉Hを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る熱線遮蔽シート(以下、シートHと略称する。)を得た。
【0127】
上述したシートHの可視光透過率は70%であった。
シートHの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は8.5%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.8%、波長2100nmの透過率は4.5%、ヘイズは1.0%と測定された。シートHの評価結果を表2に記載した。
【0128】
[実施例8]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例1で作製した分散粉Aとポリカーボネート樹脂ペレットとを、複合タングステン酸化物微粒子の濃度が2.0質量%となるように混合し、ブレンダーを用いて均一に混合し混合物とした。当該混合物を、二軸押出機を用いて290℃で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、熱線遮蔽透明樹脂成形体用の実施例8に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチAと略称する。)を得た。
ポリカーボネート樹脂ペレットへ、所定量のマスターバッチAを所定量添加し、実施例8に係る熱線遮蔽シートの製造用組成物を調製した。尚、当該所定量とは、製造される熱線遮蔽シート(2.0mm厚)の可視光透過率が70%となる量である。
【0129】
当該実施例8に係る熱線遮蔽シートの製造用組成物を、二軸押出機を用いて280℃で混練し、Tダイより押出し、カレンダーロール法により2.0mm厚のシート材として、実施例8に係る熱線遮蔽シート(以下、シートIと略称する。)を得た。
【0130】
上述したシートIの可視光透過率は70%であった。
シートIの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は19.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.8%、波長2100nmの透過率は2.2%、ヘイズは1.1%と測定された。シートIの評価結果を表3に記載した。
【0131】
[実施例9]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例2で作製した分散粉Bを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例9に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチBと略称する。)を得た。
【0132】
マスターバッチBを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例9に係る熱線遮蔽シート(以下、シートJと略称する。)を得た。
【0133】
上述したシートJの可視光透過率は70%であった。
シートJの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は39.3%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は7.0%、波長2100nmの透過率は2.4%、ヘイズは1.1%と測定された。シートJの評価結果を表3に記載した。
【0134】
[実施例10]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例3で作製した分散粉Cを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例10に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチCと略称する。)を得た。
【0135】
マスターバッチCを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例10に係る熱線遮蔽シート(以下、シートKと略称する。)を得た。
【0136】
上述したシートKの可視光透過率は70%であった。
シートKの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は34.3%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は3.9%、波長2100nmの透過率は1.4%、ヘイズは1.2%と測定された。シートKの評価結果を表3に記載した。
【0137】
[実施例11]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例4で作製した分散粉Dを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例11に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチDと略称する。)を得た。
【0138】
マスターバッチDを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例11に係る熱線遮蔽シート(以下、シートLと略称する。)を得た。
【0139】
上述したシートLの可視光透過率は70%であった。
シートLの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は38.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は5.0%、波長2100nmの透過率は1.7%、ヘイズは1.0%と測定された。シートLの評価結果を表3に記載した。
【0140】
[実施例12]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例5で作製した分散粉Eを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例12に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチEと略称する。)を得た。
【0141】
マスターバッチEを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例12に係る熱線遮蔽シート(以下、シートMと略称する。)を得た。
【0142】
上述したシートMの可視光透過率は70%であった。
シートMの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は31.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.9%、波長2100nmの透過率は1.3%、ヘイズは1.2%と測定された。シートMの評価結果を表3に記載した。
【0143】
[実施例13]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例6で作製した分散粉Fを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例13に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチFと略称する。)を得た。
【0144】
マスターバッチFを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例13に係る熱線遮蔽シート(以下、シートNと略称する。)を得た。
【0145】
上述したシートNの可視光透過率は70%であった。
シートNの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は24.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.8%、波長2100nmの透過率は1.3%、ヘイズは1.1%と測定された。シートNの評価結果を表3に記載した。
【0146】
[実施例14]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
実施例7で作製した分散粉Gを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例14に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチGと略称する。)を得た。
【0147】
マスターバッチGを用いた以外は実施例8と同様にして、実施例13に係る熱線遮蔽シート(以下、シートPと略称する。)を得た。
【0148】
上述したシートPの可視光透過率は70%であった。
シートPの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は17.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.5%、波長2100nmの透過率は1.9%、ヘイズは1.1%と測定された。シートPの評価結果を表3に記載した。
【0149】
[比較例2]
(熱線遮蔽マスターバッチを用いて作製した熱線遮蔽シート)
比較例1で作製した分散粉Hを用いた以外は実施例8と同様にして、比較例2に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチHと略称する。)を得た。
【0150】
マスターバッチHを用いた以外は実施例8と同様にして、比較例2に係る熱線遮蔽シート(以下、シートRと略称する。)を得た。
【0151】
上述したシートRの可視光透過率は70%であった。
シートHの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は8.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.9%、波長2100nmの透過率は3.9%、ヘイズは1.0%と測定された。シートRの評価結果を表3に記載した。
【0152】
[実施例15]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
ポリビニルブチラール樹脂に可塑剤のトリエチレングリコ−ル−ジ−2−エチルブチレ−トを添加し、ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤との重量比が[ポリビニルブチラール樹脂/可塑剤]=100/40となるように調製した混合物を作製した。この混合物に実施例1で作製した分散粉Aを、所定量添加し、熱線遮蔽フィルムの製造用組成物を調製した。尚、当該所定量とは、製造される熱線遮蔽合わせ透明基材の可視光透過率が70%となる量である。
【0153】
この製造用組成物を3本ロールのミキサーを用いて70℃で30分練り込み混合し、混合物とした。当該混合物を、型押出機で180℃に昇温して厚み1mm程度にフィルム化してロールに巻き取ることで、実施例15に係る熱線遮蔽フィルムを作製した。
この実施例15に係る熱線遮蔽フィルムを10cm×10cmに裁断し、同寸法を有する厚さ3mmの無機クリアガラス板2枚の間に挟み込み、積層体とした。次に、この積層体をゴム製の真空袋に入れ、袋内を脱気して90℃で30分保持した後、常温まで戻し袋から取り出した。そして、当該積層体をオートクレーブ装置に入れ、圧力12kg/cm
2、温度140℃で20分加圧加熱して、実施例7に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートAと略称する。)を作製した。
【0154】
合わせガラスシートAの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートAの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は17.8%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.9%、波長2100nmの透過率は4.2%、ヘイズは1.6%と測定された。合わせガラスシートAの評価結果を表4に記載した。
【0155】
[実施例16]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Bを用いた以外は、実施例15と同様にして実施例16に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートBと略称する。)を作製した。
【0156】
合わせガラスシートBの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートBの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は34.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は6.6%、波長2100nmの透過率は4.6%、ヘイズは1.2%と測定された。合わせガラスシートBの評価結果を表4に記載した。
【0157】
[実施例17]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Cを用いた以外は、実施例15と同様にして実施例17に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートCと略称する。)を作製した。
【0158】
合わせガラスシートCの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートCの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は30.1%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は3.8%、波長2100nmの透過率は2.8%、ヘイズは1.5%と測定された。合わせガラスシートCの評価結果を表4に記載した。
【0159】
[実施例18]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Dを用いた以外は、実施例15と同様にして実施例18に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートDと略称する。)を作製した。
【0160】
合わせガラスシートDの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートDの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は33.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は4.9%、波長2100nmの透過率は3.4%、ヘイズは1.4%と測定された。合わせガラスシートDの評価結果を表4に記載した。
【0161】
[実施例19]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Eを用いた以外は、実施例15と同様にして実施例19に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートEと略称する。)を作製した。
【0162】
合わせガラスシートEの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートEの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は28.0%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.9%、波長2100nmの透過率は2.5%、ヘイズは1.6%と測定された。合わせガラスシートEの評価結果を表4に記載した。
【0163】
[実施例20]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Fを用いた以外は、実施例15と同様にして実施例20に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートFと略称する。)を作製した。
【0164】
合わせガラスシートFの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートFの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は21.7%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.8%、波長2100nmの透過率は2.5%、ヘイズは1.6%と測定された。合わせガラスシートFの評価結果を表4に記載した。
【0165】
[実施例21]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Gを用いた以外は、実施例15と同様にして実施例21に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートGと略称する。)を作製した。
【0166】
合わせガラスシートGの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートGの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は16.1%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.5%、波長2100nmの透過率は3.8%、ヘイズは1.4%と測定された。合わせガラスシートGの評価結果を表4に記載した。
【0167】
[比較例3]
(熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材)
分散粉Hを用いた以外は、実施例15と同様にして比較例3に係る熱線遮蔽合わせガラスシート(以下、合わせガラスシートHと略称する。)を作製した。
【0168】
合わせガラスシートHの可視光透過率は70.0%であった。
合わせガラスシートHの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は8.1%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.9%、波長2100nmの透過率は7.3%、ヘイズは1.8%と測定された。合わせガラスシートHの評価結果を表4に記載した。
【0169】
[実施例1〜21および比較例1〜3の評価]
実施例1〜14に係る熱線遮蔽シート、実施例15〜21に係る熱線遮蔽合わせガラスシートにおいては、従来の複合タングステン酸化物微粒子を用いた比較例1、2に係る熱線遮蔽シート、比較例3に係る熱線遮蔽合わせガラスシートと比較して、可視光透過率が85%のとき、波長800〜900nmの近赤外光の透過率の平均値が高く、波長1200〜1800nm、波長2100nmの透過率が低い。この結果から、
K、Rb、Csのうちから選択される1種類以上の元素
Lと、
K、Rb、Csのうちから選択される1種類以上の元素
M(ただし元素
Lと元素
Mは異なる)を含み、六方晶系の結晶構造を含む複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽熱線遮蔽微粒子分散体は、高い遮熱特性を担保し、肌へのジリジリ感を低減しながら、波長800〜900nmの近赤外光で高い透過率が得られることが判明した。
【0170】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】