特許第6686737号(P6686737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686737
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】無水アルカリ金属硫化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/38 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   C01B17/38
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-128873(P2016-128873)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-2513(P2018-2513A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大槻 周次郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏
(72)【発明者】
【氏名】古沢 高志
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182594(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0109819(US,A1)
【文献】 特開2004−182592(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0109818(US,A1)
【文献】 国際公開第01/25146(WO,A2)
【文献】 特開平05−049911(JP,A)
【文献】 特開2014−201627(JP,A)
【文献】 特開2006−241220(JP,A)
【文献】 特開昭50−053299(JP,A)
【文献】 特開昭51−006957(JP,A)
【文献】 特開2003−119505(JP,A)
【文献】 特開昭62−262734(JP,A)
【文献】 特開2005−104840(JP,A)
【文献】 特開2011−012107(JP,A)
【文献】 特開2006−016281(JP,A)
【文献】 特開2001−158608(JP,A)
【文献】 特開平09−067108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水アルカリ金属硫化物を、250℃以上の流動パラフィン中に滴下する工程(1)を有することを特徴とする無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項2】
前記流動パラフィンが、初留点300℃以上の流動パラフィンを含む請求項1記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項3】
前記流動パラフィンが、初留点300℃以上の流動パラフィンと、炭素原子数14〜16のノルマルパラフィンとの混合液である請求項1または2記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項4】
前記混合液における、初留点300℃以上の流動パラフィン(a)と、炭素原子数14〜16のノルマルパラフィン(b)との割合が、質量基準で(a)/(b)=99/1〜50/50の範囲である請求項3記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)の後、流動パラフィンを溶解する有機溶媒で、無水アルカリ金属硫化物表面に付着した流動パラフィンを除去する工程を有する請求項1〜4のいずれか一項記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【請求項6】
前記流動パラフィンを溶解する有機溶媒が、炭素原子数6〜10の範囲の直鎖状炭化水素である、請求項5記載の無水アルカリ金属硫化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水アルカリ金属硫化物の製造方法に関し、詳しくは、高純度で均一な無水アルカリ金属硫化物を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジニアリングプラスチックや医薬品の原料として、高純度であり、かつ取り扱いの容易な無水アルカリ金属硫化物、中でもポリアリーレンスルフィドやスルフィド結合を有する医薬品等の原料である無水硫化ナトリウムが要求されている。現在、一般に市販されている硫化ナトリウムとしては、硫化ナトリウム水溶液を冷却または濃縮して晶析させた結晶水を有する硫化ナトリウム結晶(Na2S・9H2O、Na2S・6H2O、Na2S・5.5HO、Na2S・5H2O等)や60%程度の濃度の硫化ナトリウム熱水溶液をペレット状、フレーク状、チップ状等に固化して得られる含水硫化ナトリウム等がある。しかしながら、これらの硫化ナトリウムは水分を30%以上含有するものであり、純度が低いことに加えて潮解性が強く酸化され易いという欠点を有する。
【0003】
これらアルカリ金属硫化物を原料とする化学反応においては、製品中に存在する水が好ましくない副反応を誘発することや反応の平衡状態を変えると言う問題点があるため、反応に使用する前に脱水等の操作が必要となって操作が煩雑となる。また反応をスムーズに進行させるために反応溶媒に良分散して溶解し易い様な微粒子状の無水アルカリ金属硫化物が望まれている。
【0004】
無水硫化ナトリウムを得る方法としては、水和または含水硫化ナトリウムを融点以上の温度に加熱し脱水する方法が一般的である。しかしながら、水分を含有する硫化ナトリウムを融解させると極めて高粘度の塊となって、容器に強固に付着して攪拌や取り出しが困難となる。これまでに無水硫化ナトリウムの製法として知られているものには、
(1)水和硫化ナトリウム・9水和物をパイプに充填し、攪拌することなく1トールの減圧下で特定の条件で加熱して融解を避けながら徐々に800℃まで昇温し、強制脱水する方法(特許文献1参照)。
(2)水酸化ナトリウムを2〜15質量%含有する97℃以上の硫化ナトリウム水溶液から無水硫化ナトリウム結晶を析出させる方法(特許文献2参照)
(3)高水和硫化ナトリウム結晶を500トール以下の圧力で高水和硫化ナトリウム結晶から硫化ナトリウム・1水和物への相転移点±10℃で4〜5時間加熱し、次いで大気圧下または減圧下で90〜200℃で4〜5時間加熱して無水硫化ナトリウムを得る方法(特許文献3参照)。
(4)炭化水素溶媒あるいはポリハロ芳香族化合物の存在下、硫化ナトリウム水和物及び有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、有機カルボン酸金属塩、リン酸アルカリ金属塩の中から選ばれる少なくとも一種の金属塩を接触せしめ脱水を行ない、硫化ナトリウム組成物を得る方法(特許文献4、5参照)等が知られている。
【0005】
しかしながら、(1)の方法は、加熱温度が極めて高温であることから実用的ではなく、しかも得られた無水硫化ナトリウムは水和物の結晶形状を保持した骸晶となり、比表面積が大きく潮解性があり、非常に酸化され易いものであった。(2)及び(3)の方法は、これらの欠点を改良した方法ではあるが、(2)の方法では無水硫化ナトリウム結晶を析出させている間の水酸化ナトリウム濃度及び温度を厳密に制御する必要があり容易な方法ではなかった。また、(3)の方法では、減圧下で長時間を要し数工程が必要であり、原料としてNa2S・5水和物を溶融させることなく粒子形を保持したまま脱水を行なっており、原料であるNaS・5水和物の粒子径がそのまま無水硫化ナトリウムの粒子径に反映し、得られる無水硫化ナトリウムの粒子径も1〜1.5mmと、比較的大きい結晶であった。このような結晶体を呈していると、比表面積が小さくなり、エンジニアリングプラスチックや医薬品の原料として用いた場合に反応性が低下したり、それゆえ、別途、当該結晶を微子粒状(例えば800μm以下)にまで破砕する工程が必要になることもあった。また、(4)の方法では脱水時の系に有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、有機カルボン酸金属塩、リン酸アルカリ金属塩等を分散剤として加える必要があるため脱水後の系内はそれら金属塩との混合物となり無水硫化ナトリウム単品を取り出すことは不可能に近かった。
【0006】
そこで、微粒子状の高純度の無水アルカリ金属硫化物を得る方法として、アルカリ金属硫化物水溶液と、該水溶液の沸点以下の融点を有する分散媒とを接触させ脱水を行なう、無水アルカリ金属硫化物と分散媒の混合物の製造方法が知られている(特許文献6参照)。しかし該方法もエネルギー効率が低く、生産性良く無水アルカリ金属硫化物を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許2533163号公報
【特許文献2】特開昭64−28207号公報
【特許文献3】特開平2−51404号公報
【特許文献4】特開昭60−200807号公報
【特許文献5】特開昭60−210509号公報
【特許文献6】特開平9−67108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、微粒子状の高純度の無水アルカリ金属硫化物を生産性良く製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、含水アルカリ金属硫化物を、高温の流動パラフィン中に滴下することで、該アルカリ金属硫化物中の結晶水を脱水させることが可能となり、効率よく、無水アルカリ金属硫化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、含水アルカリ金属硫化物を、250℃以上の流動パラフィン中に滴下する工程を有することを特徴とする無水アルカリ金属硫化物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微粒子状の高純度の無水アルカリ金属硫化物を生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の無水アルカリ金属硫化物の製造方法は、含水アルカリ金属硫化物を、250℃以上の流動パラフィン中に滴下する工程(1)を有することを特徴とする。
【0013】
本発明で用いる含水アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の化合物の液状又は固体状の含水物が挙げられ、その固形分濃度は特に限定されないが10〜80質量%、特に35〜65質量%であることが好ましい。含水アルカリ金属硫化物として、好ましいのは含水硫化ナトリウムである。使用する含水硫化ナトリウムの形状は、結晶、フレーク状、固形、液体及び水溶液のいずれでもかまわない。
【0014】
含水アルカリ金属硫化物は、例えば、含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物より調製されたものであってもよい。含水アルカリ金属水硫化物としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム等の化合物の液状又は固体状の含水物が挙げられ、その固形分濃度は特に限定されないが10〜80質量%、特に35〜65質量%であることが好ましい。含水アルカリ金属水硫化物として、好ましいのは含水水硫化ナトリウムである。使用する含水水硫化ナトリウムの形状は、結晶、フレーク状、固形、液体及び水溶液のいずれでもかまわない。また、アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの水溶液が挙げられる。なお、該水溶液として用いる場合には、濃度20質量%以上の水溶液であることが好ましい。これらの中でも特に水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、無水アルカリ金属硫化物の生成が促進される点から、アルカリ金属水硫化物1モル当たり、0.8〜1.2モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.1モルの範囲がより好ましい。
【0015】
滴下する含水アルカリ金属硫化物は、水溶液であってもよいが、好ましくは、水に溶解する有機溶媒の存在下に、溶解して溶液として、若しくは分散して分散液として存在してもよい。
【0016】
水に溶解する有機溶媒としては、例えば、アセトン(溶解度:全ての割合で水と相溶する。沸点:56.1℃)等のケトン類;メタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:64.7℃)、エタノール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:78.3℃)、イソプロピルアルコール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:82.26℃)、エチレングリコール(溶解度:全ての割合で水と相溶する、沸点:197℃)等のアルコール類;酢酸メチル(溶解度:24質量%、沸点:56.9℃)等のエステル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合した混合溶剤を用いても良い。有機溶剤として好ましいものはケトン類、アルコール類であり、より好ましいものはエタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、エチレングリコールであり、最も好ましいものはエタノール、アセトン、エチレングリコールである。
【0017】
本発明に用いる流動パラフィンは、初留点300℃以上の流動パラフィンを含み、初留点300℃以上の流動パラフィン(a)と、炭素原子数14〜16のノルマルパラフィン(b)との混合液であることがより好ましい。前記混合液を用いることで、流動パラフィン中に滴下して生成した含水アルカリ金属硫化物の粒子が凝集することなく、すばやく沈降し、各粒子が効率よく熱を吸収して結晶水を脱水し、無水アルカリ金属硫化物の凝集を防ぐことが可能となるため好ましい。前記混合液における、初留点300℃以上の流動パラフィン(a)と、炭素原子数14〜16のノルマルパラフィン(b)との割合が、質量基準で(a)/(b)=99/1〜50/50の範囲であることが好ましく、さらに90/10〜70/30の範囲であることがより好ましい。
【0018】
前記ノルマルパラフィンとしては炭素原子数14〜16の直鎖状炭化水素が好ましい。これらの炭化水素はそれぞれを単独で用いても良いが、これらの炭化水素混合物であるノルマルパラフィン混合物を用いても良い。
【0019】
滴下する流動パラフィンの加熱温度は、250℃以上の範囲であり、かつ、300℃以下の範囲であることが好ましい。含水アルカリ金属硫化物の滴下に対して、流動パラフィン温度が低下しないよう加熱し、上記温度範囲を維持することが好ましい。
【0020】
含水アルカリ金属硫化物または含水アルカリ金属硫化物を含む水溶液の、流動パラフィン中への滴下は、滴下用ノズルから滴下する方法が良い。当該ノズルは、気相中から落下させるように前記含水アルカリ金属硫化物を流動パラフィン中へ滴下してもよいし、ノズル先端を流動パラフィン中に浸けておき、流動パラフィン中に直接投入するように滴下してもよい。
【0021】
また、滴下する際のノズル径を調節することによって、滴下する液滴の粒子径、ひいては無水アルカリ金属硫化物の粒径が調整できる。ノズル径としては0.5〜5mmの範囲であることが好ましく、さらに1〜2mmの範囲であることがより好ましい。
【0022】
このように、本発明では、含水アルカリ金属硫化物を滴下する際の液滴の粒子径と、前記流動パラフィン(a)と前記ノルマルパラフィンの割合を調整することにより、例えば、30〜500μmの範囲、さらには100〜300μmの範囲で所望の粒子径の範囲を有する無水アルカリ金属硫化物を得ることができる。
【0023】
上記工程(1)を経て得られた無水アルカリ金属硫化物は、続いて、適宜フィルターを用いて固液分離した後、流動パラフィンを溶解する有機溶媒で、無水アルカリ金属硫化物表面に付着した流動パラフィンを除去する工程を有していてもよい。
【0024】
当該除去に用いる有機溶媒は、前記流動パラフィンを良く溶解し得るものであれば何でも良いが、中でもパラフィン系炭化水素は流動パラフィンと相溶性が良く、無水アルカリ金属硫化物表面の流動パラフィンを完全に洗浄できるため好ましい。
【0025】
かかる除去用のパラフィン系炭化水素としては、炭素原子数6〜10の直鎖状炭化水素、すなわち、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンが特に好適に使用できる。これらは単独、又は2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
かくして得られた無水アルカリ金属硫化物は、乾燥して粉末状ないし顆粒状の無水アルカリ金属硫化物として調製することができる。無水アルカリ金属硫化物は、潮解性を有し、空気中の二酸化炭素と反応することから、密封して空気と遮断して保存することが望ましい。
【0027】
上記の方法で得られた本発明の無水アルカリ金属硫化物は、高純度で均一なことから エンジニアリングプラスチックや医薬品の原料として用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りが無い場合、%は質量%をあらわすものとする。
【0029】
(測定法)水分量
水分気化装置を備えた電量式カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製)を用い、得られた無水硫化ナトリウムを280℃20分加熱して、蒸発させた水分を窒素ガスでカールフィッシャー液に送り、カールフィッシャー法にて水分量を測定した。
【0030】
(測定法)結晶中の無水硫化ナトリウムの純度測定
無水硫化ナトリウムの純度測定はJIS K1435−1986に準拠した測定により求めた。
【0031】
(測定法)無水硫化ナトリウムの二次粒子径
無水硫化ナトリウムの二次粒子径は、JIS Z8815−1994に準拠した測定により求めた。
【0032】
〔実施例1〕
攪拌機及びデカンターを備えたフラスコに含水水硫化ナトリウム(48.30%水硫化ソーダ水溶液)116.1g(水硫化ナトリウム1.000モル)、48.64%水酸化ナトリウム水溶液82.22g(水酸化ナトリウム1.000モル)を入れ混合して、120℃に維持し、硫化ナトリウムを溶解させた水溶液を調製した。
【0033】
次に、デカンターを付属したガラス機器を用いて、流動パラフィン(和光純薬工業「流動パラフィン」)500gを仕込み、撹拌しながら250℃まで昇温した。
【0034】
その後、調製した硫化ナトリウムの水溶液50gを、温度を120℃に維持しながら、1g/分の割合で、滴下ノズル(ノズル径1mm)から流動パラフィンに投入した。120℃、窒素雰囲気下で1時間撹拌後、60℃まで冷却し、無水硫化ナトリウムをろ過分離したのち、ヘキサンを用いて3回洗浄を繰り返した。その後、シャーレに広げて硝子デシケータに入れ、13.3kPaまで減圧し、ヘキサンを揮発させ無水硫化ナトリウムを乾燥させた。
【0035】
得られた乾燥物を採取し77.20g(収率99.50%)の粒状生成物を得た。生成物は、無水硫化ナトリウム99.99%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0036】
〔実施例2〕
含水硫化ナトリウム・9水和物(和光純薬工業株式会社「和光一級」)240.2g(硫化ナトリウム1.0モル)、水79.20gを入れ昇温を開始した。内温140℃で2時間維持した。その後、120℃に冷却して、生成した硫化ナトリウムを溶解させた水溶液を調製した。
【0037】
次に、デカンターを付属したガラス機器を用いて、流動パラフィン(和光純薬工業「流動パラフィン」)とノルマルパラフィン(JXエネルギー株式会社製「スーパーオイルN460」)を質量比率90:10となる混合液500gを仕込み、撹拌しながら250℃まで昇温した。
【0038】
その後、含水硫化ナトリウム水溶液50gを、温度を120℃に維持しながら、1g/分の割合で、滴下ノズル(ノズル径1mm)から流動パラフィンに投入した。120℃、窒素雰囲気下で5時間撹拌後、60℃まで冷却し、無水硫化ナトリウムをろ過分離したのち、ヘキサンを用いて3回洗浄を繰り返した。その後、シャーレに広げて硝子デシケータに入れ、13.3kPaまで減圧し、ヘキサンを揮発させ無水硫化ナトリウムを乾燥させた。
【0039】
得られた乾燥物を採取し77.20g(収率99.50%)の粒状生成物を得た。生成物は、無水硫化ナトリウム99.99%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0040】
〔比較例1〕
攪拌機及びデカンターを備えたフラスコに含水水硫化ナトリウム(48.30%水硫化ソーダ水溶液)116.1g(水硫化ナトリウム1.000モル)、48.64%水酸化ナトリウム水溶液82.22g(水酸化ナトリウム1.000モル)及び
分散媒としてp−ジクロロベンゼン147.0g(1.000モル)を入れ昇温を開始した。内温が140℃に到達すると水とp−ジクロロベンゼンの留出 が始まった。p−ジクロロベンゼンは、デカンターで分離して連続的に系内に戻した。留出開始後しばらくすると系内に粒子が分散し始めた。2時間後90.0gの水が留出し内温がp−ジクロロベンゼンの沸点である174℃に上昇したので脱水を終了した。脱水終了時の系内は、無水硫化ナトリウムの微粒子がp−ジクロロベンゼンに分散している状態であった。冷却後粒子をろ取し、100℃で2時間減圧乾燥し77.2g(収率99.0%)の粒状生成物を得た。生成物は硫化ナトリウム98%及び水分0.001%を含むものであった。得られた無水硫化ナトリウムの粒子径は、下記表1に示した。
【0041】
【表1】