(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1セラミックプレートおよび前記第2有機絶縁層に囲まれた空間に前記第1有機絶縁層および前記静電吸着用電極が封止された静電チャック部材と、前記温度調節用ベース部とを接着する接着層を有する請求項6に記載の静電チャック装置。
前記第1有機絶縁層と前記静電吸着用電極との間、または前記静電吸着用電極の前記第1有機絶縁層側とは反対側に設けられた第2セラミックプレートをさらに有する請求項1に記載の静電チャック装置。
前記第1セラミックプレートが、酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体、酸化アルミニウム焼結体、窒化アルミニウム焼結体、または酸化イットリウム焼結体からなる請求項1〜17のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
前記第2セラミックプレートが、酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体、酸化アルミニウム焼結体、窒化アルミニウム焼結体、または酸化イットリウム焼結体からなる請求項11〜17のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電チャック装置は、使用時には高温のプラズマ環境下に曝されることから、プラズマに対する耐久性(耐プラズマ性)が求められる。また、近年では、プラズマ工程の処理対象物である板状試料が大型化していることから、静電チャック装置には、板状試料に対する強い吸着力が求められている。
【0005】
セラミックプレートを誘電層とする静電チャックにおいては、板状試料に対する強い吸着力を実現しようとする場合、セラミックプレートを薄くすることで、静電吸着用電極の表面から載置面までの距離を短くし、クーロン力を大きくすることが考えられる。しかし、静電チャック装置は、使用時にプラズマ環境下に曝されることから、セラミックプレートが薄くなると、セラミックプレートがプラズマで破損しやすくなり、製品寿命が短くなるおそれがある。また、セラミックプレートが薄くなると、セラミックプレートが絶縁破壊し、ピンホールが生じてしまうことがある。
【0006】
別の方法にて板状試料に対する強い吸着力を実現しようとする場合、静電吸着用電極に高い電圧を印加し、クーロン力を大きくすることが考えられる。しかし、その場合でも、静電吸着用電極には、セラミックプレートの耐電圧を超える電圧を印加することはできず、得られる静電吸着力には上限があった。
【0007】
そのため、従来よりも耐電圧が高く、静電吸着用電極に高い電圧を印加可能とすることで、従来の装置よりも強い吸着力で板状試料を固定可能とする静電チャック装置が求められていた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、一方の面に板状試料を載置する載置面を有する第1セラミックプレートと、前記第1セラミックプレートの他方の面側に設けられた静電吸着用電極と、前記第1セラミックプレートと前記静電吸着用電極との間に設けられた第1有機絶縁層と、を有する静電チャック装置を提供する。
【0010】
本発明の一態様においては、前記静電吸着用電極の前記第1セラミックプレート側とは反対側に配置され、前記第1セラミックプレートを冷却する温度調節用ベース部と、前記温度調節用ベース部と前記静電吸着用電極との間に設けられた第2有機絶縁層と、をさらに有する構成としてもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、前記第1セラミックプレートは、前記他方の面の周縁部において前記他方の面を囲む第1堤部を有し、前記第1有機絶縁層および前記静電吸着用電極は、前記第1堤部および前記他方の面によって形成される凹部に嵌合している構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、前記静電吸着用電極の前記第1セラミックプレート側とは反対側に配置され、前記第1セラミックプレートを冷却する温度調節用ベース部と、前記温度調節用ベース部と前記静電吸着用電極との間に設けられた第2有機絶縁層と、をさらに有し、前記第1堤部は、前記第2有機絶縁層に接して設けられ、前記第1有機絶縁層および前記静電吸着用電極が、前記第1セラミックプレートおよび前記第2有機絶縁層に囲まれた空間に封止されている構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、前記第1堤部は、前記第2有機絶縁層の前記第1セラミックプレート側の面に接して設けられている構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記第2有機絶縁層は、前記凹部に嵌合している構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記第1セラミックプレートおよび前記第2有機絶縁層に囲まれた空間に前記第1有機絶縁層および前記静電吸着用電極が封止された静電チャック部材と、前記温度調節用ベース部とを接着する接着層を有する構成としてもよい。
【0016】
本発明の一態様においては、前記静電吸着用電極および前記第1有機絶縁層は、平面視において前記温度調節用ベース部よりも小さく形成され、前記第1堤部は、外側面から外側に張り出して設けられ、前記温度調節用ベース部の表面を覆う外周部を有する構成としてもよい。
【0017】
本発明の一態様においては前記静電チャック装置の全体を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記第1セラミックプレートは、厚さ方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記静電吸着用電極は、前記貫通孔を避けて形成され、前記第1有機絶縁層は、厚さ方向に貫通し前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有し、前記第1セラミックプレートは、前記第1貫通孔の周囲を囲み、前記第2貫通孔に挿入される第2堤部をさらに有する構成としてもよい。
【0018】
本発明の一態様においては、前記静電チャック装置の全体を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記第1セラミックプレートは、厚さ方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記静電吸着用電極は、前記貫通孔を避けて形成され、前記第1有機絶縁層は、厚さ方向に貫通し前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有し、前記静電吸着用電極と前記貫通孔との間には、前記貫通孔の周囲を囲む第3有機絶縁層が設けられている構成としてもよい。
【0019】
本発明の一態様においては、前記第1有機絶縁層は、5kV以上の耐電圧を有する構成としてもよい。
【0020】
本発明の一態様においては、平面視において、前記静電吸着用電極は前記第1有機絶縁層よりも小さい構成としてもよい。
【0021】
本発明の一態様においては、前記第1有機絶縁層は、前記第1セラミックプレートと前記静電吸着用電極との熱伝達率が>750W/m
2Kとなるように制御されている構成としてもよい。
【0022】
本発明の一態様においては、前記第1有機絶縁層と前記静電吸着用電極との間、または前記静電吸着用電極の前記第1有機絶縁層側とは反対側に設けられた第2セラミックプレートをさらに有する構成としてもよい。
【0023】
本発明の一態様においては、前記静電吸着用電極の前記第1セラミックプレート側とは反対側に配置され、前記第1セラミックプレートを冷却する温度調節用ベース部と、前記温度調節用ベース部と前記静電吸着用電極との間に設けられた第2有機絶縁層と、をさらに有する構成としてもよい。
【0024】
本発明の一態様においては、前記第1セラミックプレートは、前記他方の面の周縁部において前記他方の面を囲む第1堤部を有し、前記第1有機絶縁層、前記第2セラミックプレートおよび前記静電吸着用電極は、前記第1堤部及び前記他方の面によって形成される凹部に嵌合している構成としてもよい。
【0025】
本発明の一態様においては、前記第2セラミックプレートは、前記第1有機絶縁層と前記静電吸着用電極との間に設けられている構成としてもよい。
【0026】
本発明の一態様においては、前記第2セラミックプレートは、前記静電吸着用電極の前記第1有機絶縁層側とは反対側に設けられている構成としてもよい。
【0027】
本発明の一態様においては、前記第1有機絶縁層は、前記第1セラミックプレートおよび前記第2セラミックプレートに囲まれた空間に封止されている構成としてもよい。
【0028】
本発明の一態様においては、前記静電チャック装置の全体を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記第1セラミックプレートは、厚さ方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記静電吸着用電極は、前記貫通孔を避けて形成され、前記第1有機絶縁層は、厚さ方向に貫通し前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有し、前記第2セラミックプレートは、厚さ方向に貫通し前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と連通する第3貫通孔を有し、前記第1セラミックプレートは、前記第1貫通孔の周囲を囲み、前記第2貫通孔および前記第3貫通孔に挿入される第2堤部をさらに有する構成としてもよい。
【0029】
本発明の一態様においては、前記第1有機絶縁層は、5kV以上の耐電圧を有する構成としてもよい。
【0030】
本発明の一態様においては、平面視において、前記静電吸着用電極は前記第1有機絶縁層よりも小さい構成としてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
以下、
図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る静電チャック装置1Aについて説明する。以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0034】
図1は、静電チャック装置1Aの断面図である。図に示すように、静電チャック装置1Aは、上面が半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面19とされた静電チャック部2と、静電チャック部2を所望の温度に調整する温度調節用ベース部3と、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とを接着一体化する接着層8と、を有している。以下の説明においては、載置面19側を「上」、温度調節用ベース部3側を「下」として示し、各構成の相対位置を表すことがある。
【0035】
静電チャック部2は、上面が半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面19とされた載置板(第1セラミックプレート)11と、載置板11の載置面19とは反対側の面(他方側の面)に設けられた静電吸着用電極13と、載置板11と静電吸着用電極13との間に設けられた第1有機絶縁層14と、を有している。
【0036】
図に示すように、静電チャック部2の載置面19には、直径が板状試料Wの厚さより小さい突起部30が複数個形成されている。静電チャック装置1Aは、複数の突起部30が板状試料Wを支える構成になっている。
【0037】
また載置面19の周縁には、周縁壁17が形成されている。周縁壁17は、突起部30と同じ高さに形成されており、突起部30とともに板状試料Wを支持する。
【0038】
載置板11は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。
【0039】
セラミックス焼結体中のセラミックス粒子の平均粒径は10μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。静電チャック部2の載置面19に設けられる突起部30の形成過程でサンドブラスト加工を行う。サンドブラスト工程は、載置面19の表面にダメージを与えて、掘削する工程であるため、突起部30の内部にクラックが残留する。クラックは、サンドブラスト工程の後に行われるバフ研磨によって、強制的に進行され、事前に除去される。
【0040】
クラックは、セラミック焼結体中のセラミック粒子の粒界に形成される。したがって、セラミック粒子の粒径が大きい場合には、バフ研磨を経ることで、粒界に沿って大きく角部が除去される。セラミック粒子の粒径が大きくなるほど、突起部30はより丸みを帯びた形状となる。後段において、説明するように、本実施形態の突起部30は、高さ方向に断面積の変化がないことが好ましいため、突起部30は丸みを帯びていないことが好ましい。セラミックス粒子の平均粒径は10μm以下(より好ましくは2μm以下)とすることで、高さ方向に沿った断面積の変化を抑制した突起部30を載置面19に形成することができる。
【0041】
載置板11の上面から静電吸着用電極13の下面までの厚さ、即ち、静電チャック部2の厚さは、0.5mm以上かつ5.0mm以下が好ましい。静電チャック部2の厚さが0.5mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することができない。一方、静電チャック部2の厚さが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり過ぎて、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化する。また、静電チャック装置によっては、静電吸着用電極13と温度調節用ベース部3の間にヒータを有し、ヒータにより板状試料Wに温度分布を形成する構成を採用することがある。このような静電チャック装置においては、静電チャック部2の厚さが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の横方向の熱伝導の増加により、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になる。
【0042】
特に、載置板11の厚さは、0.3mm以上かつ1.0mm以下が好ましい。載置板11の厚さが0.3mmを下回ると、静電吸着用電極13に印加された電圧により載置板11の絶縁が破られ放電するおそれがある。また、載置板11の厚さが0.3mmを下回ると、加工時に破損し亀裂が発生しやすくなる。一方、1.0mmを超えると、板状試料Wを所望の強さで十分に吸着固定することが困難となる。
【0043】
第1有機絶縁層14は、絶縁性および耐電圧性を有する樹脂層である。第1有機絶縁層14は、フィルム状またはシート状の形成材料を接着して形成することが好ましい。第1有機絶縁層14は、不図示の接着層を介して載置板11の下面に接着されている。静電吸着用電極13に印加される高電圧に対しては、載置板11と第1有機絶縁層14とが協働して、絶縁破壊されないような耐電圧(絶縁破壊電圧、(単位:kV))を示す。
【0044】
第1有機絶縁層14の厚さは、0.05mm以上かつ0.2mm以下が好ましい。この第1有機絶縁層14の厚さは、第1有機絶縁層14と載置板11とを接着する接着層、および第1有機絶縁層14と静電吸着用電極13とを接着する接着層を含む。第1有機絶縁層14の厚さが0.05mmを下回ると、静電吸着用電極13に印加された電圧により静電吸着用電極13と載置板11との絶縁が破られ、放電するおそれがある。一方、0.2mmを超えると、静電吸着用電極13と板状試料Wとの距離が離れすぎ、板状試料Wを所望の強さで十分に吸着固定することが困難となるおそれがある。
【0045】
第1有機絶縁層14の絶縁破壊電圧は、5kV以上であると好ましく、10kV以上であるとより好ましい。第1有機絶縁層14の形成材料としては、例えば、上述した第1有機絶縁層14の厚さにおいて、所望の絶縁破壊電圧を実現できる絶縁破壊の強さ(単位:kV/mm)を示すものを用いる。また、静電チャック装置1Aの使用環境における温度で、劣化や変形を生じないだけの耐熱性を有するものであればよい。第1有機絶縁層14の形成材料としては、例えばポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0046】
一般に、これらの形成材料は、載置板11の形成材料であるセラミックスよりも絶縁破壊の強さが大きい。例えば、ポリイミド樹脂の絶縁破壊の強さは、300kV/mmであり、載置板11の形成材料であるAl
2O
3−SiCの絶縁破壊の強さ(10kV/mm)と比べると桁違いに強い。そのため、載置板11と第1有機絶縁層14との積層体を用いた場合、セラミックスを形成材料とする載置板11のみを用いた場合と比べ、同じ厚さであってもより大きい絶縁破壊電圧とすることができる。
【0047】
さらに、載置板11において、仮にピンホール欠陥を生じやすい脆弱箇所が存在していた場合、載置板11のみを用いた構成では、静電吸着用電極13に高電圧を印加すると、脆弱箇所にピンホールが生じやすく、絶縁破壊しやすい。
【0048】
一方、載置板11と第1有機絶縁層14との積層体を用いた場合には、載置板11の脆弱箇所と第1有機絶縁層14の脆弱箇所とが、偶発的に平面的に重なった場合にはじめて積層体全体としてピンホール欠陥が生じやすい箇所となる。そのため、載置板11や第1有機絶縁層14に脆弱箇所があったとしても、問題が生じにくくなる。
【0049】
第1有機絶縁層14の面内の厚さのバラツキは50μm以内が好ましく、10μm以内がより好ましい。第1有機絶縁層14の面内の厚さのバラツキが50μmを超えると、厚さの大小により温度分布に高低の差が生じる。その結果、第1有機絶縁層14の厚さ調整による温度制御に悪影響を及ぼすので、好ましくない。また、吸着力が載置面19の面内で不均一となるため好ましくない。
【0050】
第1有機絶縁層14の熱伝導率は、0.05W/mk以上が好ましく、0.1W/mk以上がより好ましい。
【0051】
熱伝導率が0.05W/mk未満であると、静電チャック部2から温度調節用ベース部3への第2有機絶縁層7を介しての熱伝導が難くなり、冷却速度が低下するので好ましくない。
【0052】
また、第1有機絶縁層14の熱伝導率は、載置板11と静電吸着用電極13との熱伝達率が>750W/m
2K、より好ましくは>4000W/m
2Kとなるように制御されているとよい。
【0053】
静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。例えば、静電吸着用電極13は、静電吸着用電極13が形成される階層に、所定のパターンを有する電極として設けられる。静電吸着用電極13は、パターンを有しない、いわゆるベタ電極として設けられていても機能する。
【0054】
静電吸着用電極13は、第1有機絶縁層14に、静電吸着用電極13の形成材料である非磁性の金属箔を接着する、またはスパッタや蒸着により成膜することで形成することができる。他にも、静電吸着用電極13の形成材料である導電性材料と、有機物との複合材料を、スクリーン印刷等の塗工法を用いて塗布することにより形成することができる。
【0055】
静電吸着用電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成することができる。
【0056】
また、静電吸着用電極13は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、炭素(C)により形成することもできる。
【0057】
静電吸着用電極13の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ100μm以下が好ましく、5μm以上かつ50μm以下がより好ましい。厚さが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することができない。一方、厚さが100μmを越えると、静電吸着用電極13と載置板11との間の熱膨張率差に起因して、静電吸着用電極13と載置板11との接合界面にクラックが入り易くなる。
【0058】
静電吸着用電極13は、平面視において第1有機絶縁層14と同じ大きさであってもよいが、平面視において第1有機絶縁層14よりも小さい構成としてもよい。静電吸着用電極13をこのような構成とすることで、静電吸着用電極13の端部から装置外側に向けた斜め上方にも第1有機絶縁層14が存在することになる。そのため、静電吸着用電極13の鉛直上方のみならず、静電吸着用電極13の斜め上方にも第1有機絶縁層14を設けることによる耐電圧の向上の効果を得ることができ、絶縁破壊を抑制することができる。
【0059】
給電用端子15は、静電吸着用電極13に直流電圧を印加するために設けられた棒状のもので、給電用端子15の形成材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではなく、金属材料や導電性有機材料を用いることができる。給電用端子15の電気伝導率は、10
4Ω・cm以下であると好ましい。
【0060】
給電用端子15は、熱膨張係数が静電吸着用電極13に近似したものが好ましく、例えば、静電吸着用電極13を構成している導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料が好適に用いられる。
【0061】
給電用端子15は、絶縁性を有する碍子23により温度調節用ベース部3に対して絶縁されている。
【0062】
温度調節用ベース部3は、静電吸着用電極13の載置板11側とは反対側(静電吸着用電極13の下方)に配置され、載置板11を冷却して所望の温度に調整する。温度調節用ベース部3は、厚さのある円板状を呈している。また、温度調節用ベース部3は、平面視において静電チャック部2(静電吸着用電極13および第1有機絶縁層14)よりも大きく形成されている。
【0063】
温度調節用ベース部3としては、例えば、その内部に水を循環させる流路(図示略)が形成された水冷ベース等が好適である。
【0064】
温度調節用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が好適に用いられる。温度調節用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0065】
第2有機絶縁層7は、絶縁性および耐電圧性を有するフィルム状またはシート状の樹脂であり、温度調節用ベース部3と静電吸着用電極13との間に設けられている。本実施形態においては、第2有機絶縁層7は、不図示の接着層を介して温度調節用ベース部3の上面に接着されている。
【0066】
本実施形態の静電チャック装置1Aにおいて、強い静電吸着力を得るために静電吸着用電極13に高電圧を印加した場合、静電吸着用電極13から上方については、載置板11と第1有機絶縁層14とが協働して高い耐電圧を実現している。一方で、静電吸着用電極13に高電圧を印加すると、静電吸着用電極13と温度調節用ベース部3との間で絶縁破壊し、放電するおそれが生じる。しかし、静電チャック装置1Aでは、第2有機絶縁層7を設けることで、静電吸着用電極13に印加される高電圧により、静電吸着用電極13と温度調節用ベース部3との間で放電しないように絶縁している。
【0067】
第2有機絶縁層7は、上述した第1有機絶縁層14と同様の構成(形成材料、厚さ)とすることができる。第1有機絶縁層14および第2有機絶縁層7は、同じ構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0068】
第1有機絶縁層14および第2有機絶縁層7が有する接着材は、例えばポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性および絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂であり、厚さは5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは10μm〜50μmである。
【0069】
接着材の面内の厚さのバラツキは10μm以内が好ましい。接着材の面内の厚さのバラツキが10μm以内であると、温度調節用ベース部3による静電チャック部2の温度制御の精度が面内で許容範囲に収まり、静電チャック部2の載置面19における面内温度を均一とすることができる。
【0070】
接着層8は、静電チャック部2の下面と温度調節用ベース部3の上面との間に介在し、第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13、第2有機絶縁層7の側面を覆って、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とを接着一体化している。また、接着層8は、熱応力の緩和作用を有する。
【0071】
接着層8の厚さは、特に限定されるものではないが、100μm以上かつ200μm以下が好ましい。
【0072】
接着層8は、接着層8の内部、接着層8と静電チャック部2との界面、接着層8と温度調節用ベース部3との界面に空隙や欠陥が少ないことが望まれる。空隙や欠陥が形成されていると、熱伝導性が低下して板状試料Wの面内温度分布が均一にならない虞がある。
【0073】
接着層8は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体またはアクリル樹脂で形成されている。接着層8は、流動性ある樹脂組成物を静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に充填した後に加熱硬化させることで形成することが好ましい。
【0074】
また、温度調節用ベース部3の上面および静電チャック部2の下面は必ずしも平坦ではない。流動性の樹脂組成物を温度調節用ベース部3と静電チャック部2の間に充填させた後に硬化させて接着層8を形成することで、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の凹凸に起因して接着層8に空隙が生じることを抑制できる。これにより、接着層8の熱伝導特性を面内で均一にすることが出来、静電チャック部2の均熱性を高めることが出来る。
【0075】
また、静電チャック装置1Aには、装置全体を厚さ(高さ)方向に貫通する冷却ガス導入孔(貫通孔)18が形成されている。冷却ガス導入孔18からは、He等の冷却ガスが供給される。冷却ガスは、静電チャック部2の載置面19と板状試料Wの下面との隙間を流れることで載置面19と板状試料Wとの間の熱伝達率を上げることにより、板状試料Wの温度を下げる働きをする。載置板11の周縁壁17は、載置面19と板状試料Wとの間に導入される冷却ガスの漏出を抑制する。
【0076】
冷却ガス導入孔18が形成されていることに伴い、載置板11には、載置板11の厚さ方向に貫通する第1貫通孔11hが設けられている。
また、静電吸着用電極13は、冷却ガス導入孔18を避けて形成されている。
また、第1有機絶縁層14には、第1有機絶縁層14の厚さ方向に貫通し、第1貫通孔11hと連通する第2貫通孔14hが設けられている。
【0077】
第2貫通孔14hは、平面視で第1貫通孔11hよりも大きく形成されている。静電吸着用電極13の側面(図中、符号13hで示す)および第2貫通孔14hの側面は、接着層8により覆われている。
【0078】
さらに、第2有機絶縁層7には、第2有機絶縁層7の厚さ方向に貫通する貫通孔7hが設けられている。
本実施形態の静電チャック装置1Aは、以上のような構成となっている。
【0079】
以上のような構成の静電チャック装置1Aによれば、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0080】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態に係る静電チャック装置1Bの断面図であり、
図1に対応する図である。本実施形態の静電チャック装置1Bは、第1実施形態の静電チャック装置1Aと一部共通している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0081】
静電チャック装置1Bの載置板11は、載置板11の下面(他方の面)11aの周縁部において下面11aを囲む第1堤部11xを有している。第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13は、第1堤部11xおよび下面11aによって形成される凹部110に嵌合している。
【0082】
これにより、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面は、プラズマに対する耐久性が接着層8よりも高いセラミックスで覆われることになる。そのため、静電チャック装置1Aと比べて、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面側に存在する構成が、プラズマ環境下で劣化しにくい。したがって、静電吸着用電極13に高電圧を印加した場合に、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面から放電しにくく、装置全体の耐電圧を向上させることができる。
【0083】
また、載置板11は、下面11aにおいて第1貫通孔11hの周囲を囲み、第2貫通孔14hに挿入される第2堤部11yをさらに有している。これにより、冷却ガス導入孔18に面する第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面は、プラズマに対する耐久性が接着層8よりも高いセラミックスで覆われることになる。したがって、静電吸着用電極13に高電圧を印加した場合に、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面から放電しにくく、装置全体の耐電圧を向上させることができる。
【0084】
このような第1堤部11xおよび第2堤部11yを有する載置板11は、例えば、セラミックプレートを座繰り加工して凹部110を形成することで成形可能である。このように成形した載置板11に対し、凹部110の平面視形状に応じて成形した第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13を貼合することで、静電チャック部2を形成することができる。第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13は、順次貼合してもよく、第1有機絶縁層14と静電吸着用電極13とが予め積層されたものを貼合してもよい。
【0085】
以上のような構成の静電チャック装置1Bであっても、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0086】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態に係る静電チャック装置1Cの断面図であり、
図1に対応する図である。上述の実施形態の説明において既出の構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0087】
静電チャック装置1Cの載置板11は、載置板11の下面11aの周縁部において下面11aを囲む第1堤部11xを有している。第1堤部11xは、第2有機絶縁層7に接して設けられている。そのため、第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13および接着層8は、載置板11および第2有機絶縁層7に囲まれた空間に封止されている。
【0088】
静電チャック装置1Cにおいては、第2有機絶縁層7は、平面視において載置板11と同形状となるように設けられている。第1堤部11xは、第2有機絶縁層7の載置板11側の面7aに接して設けられている。例えば、第1堤部11xは、第2有機絶縁層7の面7aに設けられた不図示の接着層を介して接着されている。
【0089】
このような構成の静電チャック装置1Cでは、第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13および接着層8の側面は、プラズマに対する耐久性が接着層8よりも高いセラミックスで覆われることになる。したがって、静電吸着用電極13に高電圧を印加した場合に、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面から放電しにくく、装置全体の耐電圧を向上させることができる。
【0090】
以上のような構成の静電チャック装置1Cであっても、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0091】
静電チャック装置1Cにおいては、第1堤部11xは、第2有機絶縁層7の載置板11側の面7aに接して設けられていることとしたが、第2有機絶縁層7も凹部110に嵌合していることとしてもよい。
【0092】
また、静電チャック装置1Cにおいて、載置板11は、下面11aに第2堤部11yをさらに有していることとしてもよい。
【0093】
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態に係る静電チャック装置1Dの断面図であり、
図1に対応する図である。上述の実施形態の説明において既出の構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0094】
静電チャック装置1Dの載置板11は、載置板11の下面11aの周縁部において下面11aを囲む第1堤部11xを有している。第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13は、第1堤部11xおよび下面11aによって形成される凹部110に嵌合している。
【0095】
静電チャック装置1Dが有する第1堤部11xは、下面11aからの高さが第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の合計の厚さと同程度となっている。そのため、静電チャック装置1Dでは、第1〜第3実施形態の静電チャック装置1A〜1Cと異なり、第1堤部11xおよび静電吸着用電極13は、接着層8を介することなく第2有機絶縁層7に接して設けられている。例えば、第1堤部11xおよび静電吸着用電極13は、第2有機絶縁層7の面7aに設けられた不図示の接着層を介して接着されている。
【0096】
これにより、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13は、載置板11および第2有機絶縁層7に囲まれた空間に封止されている。また、接着層8を用いないことにより、接着層8を形成する際の塗りムラを考慮する必要が無くなり、板状試料Wの面内温度分布を均一に制御しやすくなる。
【0097】
第1有機絶縁層14と静電吸着用電極13とが、シート状の接着材(シート接着材)を介して貼合されている場合、静電吸着用電極13の厚さが10μm以下であれば、シート接着材が変形することにより、静電吸着用電極13と冷却ガス導入孔18との間にシート接着材が配置される。これにより、静電吸着用電極13と冷却ガス導入孔18との間が電気的に絶縁される。
第2有機絶縁層7と静電吸着用電極13とが、シート状の接着材(シート接着材)を介して貼合されている場合であっても同様である。
静電吸着用電極13の厚さが10μmを超える場合は、静電吸着用電極13のパターンに合わせて、静電吸着用電極13のパターンの隙間を埋める絶縁層を配置する。このような絶縁層は、例えば、絶縁シートを静電吸着用電極13のパターンと相補的なパターンに加工し、配置することで得られる。
これにより、静電チャック部2の内部に空隙が残存することなくなるため、破損を抑制することができる。
【0098】
第3有機絶縁層16の形成材料は、上述した第1有機絶縁層14や第2有機絶縁層7と同様のものを用いることができる。第3有機絶縁層16の形成材料は、第1有機絶縁層14および第2有機絶縁層7と、同じでもよく異なっていてもよい。また、第3有機絶縁層16が有する接着材は、上述した第1有機絶縁層14や第2有機絶縁層7が有する接着材と同様の構成(形成材料、厚さ)とすることができる。
【0099】
これにより、静電吸着用電極13は、周囲を、載置板11、第1有機絶縁層14、第2有機絶縁層7および第3有機絶縁層16で囲まれることとなる。
【0100】
このような構成の静電チャック装置1Dでは、静電吸着用電極13の周囲は、耐電圧が高い第1〜第3有機絶縁層およびプラズマに対する耐久性が接着層8よりも高いセラミックスで囲まれることとなる。そのため、プラズマに対する劣化を抑制すると共に、装置全体の耐電圧を向上させることができる。
【0101】
冷却ガス導入孔18に面する第1有機絶縁層14や第3有機絶縁層16は、載置板11を構成するセラミックスと比べると、プラズマに対する耐久性が低い樹脂を形成材料としている。
【0102】
しかし、冷却ガス導入孔18は、静電チャック装置1Dの使用時には、載置面19に載置された板状試料Wで覆われるため、使用時のプラズマに直接曝されない。
【0103】
また、プラズマを用いて載置面19をドライクリーニングする際には、冷却ガス導入孔18はプラズマに曝されるが、ドライクリーニングでは、プラズマCVDやエッチング等で使用するプラズマよりも弱いプラズマを用いて、載置面19の表面の異物を除去する。
そのため、冷却ガス導入孔18は、第1堤部11xで覆われた静電チャック部2の外周側の側面よりもプラズマによる劣化が進行しにくい。
【0104】
加えて、ドライクリーニング時に冷却ガス導入孔18から少量の冷却ガスを流出させることで、冷却ガス導入孔18の内部への侵入を抑制することができる。
【0105】
そのため、第1有機絶縁層14や第3有機絶縁層16は、冷却ガス導入孔18に面する部分についてプラズマによる劣化を過度に憂慮することなく、静電吸着用電極13を絶縁する部材として採用することができる。
【0106】
以上のような構成の静電チャック装置1Dであっても、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0107】
[第5実施形態]
図5は、本発明の第5実施形態に係る静電チャック装置1Eの断面図であり、
図1に対応する図である。上述の実施形態の説明において既出の構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0108】
静電チャック装置1Eの載置板11は、載置板11の下面11aの周縁部において下面11aを囲む第1堤部11xを有している。第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13および第2有機絶縁層7は、第1堤部11xおよび下面11aによって形成される凹部110に嵌合している。
【0109】
第1有機絶縁層14が有する第2貫通孔14hは、載置板11が有する第1貫通孔11hと同じ大きさである。静電吸着用電極13と冷却ガス導入孔18との間には、冷却ガス導入孔18の周囲を囲む第3有機絶縁層16が設けられている。
【0110】
このような構成の載置板11、静電吸着用電極13、第1有機絶縁層14、第2有機絶縁層7および第3有機絶縁層16は、例えば、互いに接着材を介して接着されている。接着材としては、上述したものを用いることができる。これにより、載置板11および第2有機絶縁層7に囲まれた空間に第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13が封止され、静電チャック部材20を構成している。
【0111】
静電チャック部材20は、接着層8を介して温度調節用ベース部3に接着されている。
例えば、第2有機絶縁層7の下面にシート状またはフィルム状の接着材を付して温度調節用ベース部3に接着することで、温度調節用ベース部3に静電チャック部材20を接着することも可能である。しかし、接着層8を介して温度調節用ベース部3に静電チャック部材20を接着する場合、静電チャック部材20の下面に、段差が形成されていたとしても接着層8により平坦化することができる。例えば、載置板11の座繰り加工時の公差により、静電チャック部材20の下面が平坦にならない場合であっても、良好に静電チャック装置1Eを製造することができる。
【0112】
以上のような構成の静電チャック装置1Eであっても、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0113】
[第6実施形態]
図6は、本発明の第6実施形態に係る静電チャック装置1Fの断面図であり、
図1に対応する図である。上述の実施形態の説明において既出の構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0114】
静電チャック装置1Fの載置板11は、載置板11の下面11aの周縁部において下面11aを囲む第1堤部11xを有している。第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13は、第1堤部11xおよび下面11aによって形成される凹部110に嵌合し、下面11aから第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13の順に積層している。
【0115】
また、凹部110には第2有機絶縁層7が嵌合している。第2有機絶縁層7は、第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13を覆って凹部110内に形成された接着層8を介して接着されている。
【0116】
さらに、第1堤部11xの下端部では、外側面11bから外側に張り出した外周部11zが形成されている。外周部11zは、温度調節用ベース部3の表面3aを覆っている。
【0117】
図7に示すように、静電チャック装置1Fにおいて、外周部11zが表面を覆う温度調節用ベース部3の表面3aには、フォーカスリング40が配置される。フォーカスリング40は、静電チャック装置をプラズマ工程にて用いるときに、発生するプラズマが板状試料Wの中心へ集中したり、逆に外周へ拡散したりすることを抑制し、均一なプラズマを発生させるために設けられる。
【0118】
静電吸着用電極13に高電圧を印加すると、静電チャック部2とフォーカスリング40との間でアーク放電を生じることがある。そこで、本実施形態の静電チャック装置1Fでは、セラミックスを形成材料とする載置板11の第1堤部11xと外周部11zにより、フォーカスリング40が面する部分を覆う構成としている。これにより、接着層、接着材、有機絶縁層などの有機物が、生じるアークに曝されることが無く、劣化を抑制することができる。
【0119】
図8に示す静電チャック装置1Gのように、載置板11は、下面11aに第2堤部11yをさらに有していることとしてもよい。このような構成の静電チャック装置1Fでは、静電吸着用電極13に高電圧を印加した場合に、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面から放電しにくく、装置全体の耐電圧を向上させることができる。
【0120】
以上のような構成の静電チャック装置1Fおよび静電チャック装置1Gであっても、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0121】
[第7実施形態]
図9は、本発明の第7実施形態に係る静電チャック装置1Hの断面図であり、
図1に対応する図である。上述の実施形態の説明において既出の構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0122】
静電チャック部2は、上面が半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面19とされた載置板(第1セラミックプレート)11と、載置板11の載置面19とは反対側の面(他方側の面)に設けられた静電吸着用電極13と、載置板11と静電吸着用電極13との間に設けられた第1有機絶縁層14と、静電吸着用電極13と第1有機絶縁層14との間に設けられた支持板(第2セラミックプレート)12と、を有している。
【0123】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状の部材である。載置板11および支持板12は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体、立方晶系ガーネット型の酸化イットリウムアルミニウム(イットリウムアルミニウムガーネット:5Al
2O
3・3Y
2O
3、YAG)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体を形成材料としている。
【0124】
載置板11と支持板12とは、形成材料が同じであってもよい。例えば、載置板11と支持板12とをAl
2O
3−SiC複合焼結体を用いて形成する構成が挙げられる。
【0125】
また、載置板11と支持板12とは、形成材料が異なっていてもよい。載置板11と支持板12との形成材料を異ならせる場合、各部材に求められる要求物性に応じて適切な形成材料を選択するとよい。
【0126】
例えば、装置の使用中にプラズマに曝される載置板11は、上述した形成材料のうち相対的に耐プラズマ性が高いAl
2O
3焼結体、Y
2O
3焼結体、YAG焼結体等を用いて形成し、支持板12は、載置板11ほどは耐プラズマ性が要求されないことから誘電率が高いAl
2O
3−SiC複合焼結体を用いて形成するとよい。このような構成とすることで、載置板11によって耐プラズマ性を向上させつつ、静電チャック部2を薄く構成することができるため、板状試料Wに及ぼす吸着力を少なくとも維持することができる。
【0127】
載置板11および支持板12の厚さは、0.2mm以上かつ0.5mm以下が好ましい。載置板11および支持板12の厚さが0.2mmを下回ると、静電吸着用電極13に印加された電圧により載置板11および支持板12の絶縁が破られ放電するおそれがある。
一方、0.5mmを超えると、板状試料Wを所望の強さで十分に吸着固定することが困難となるおそれがある。載置板11と支持板12との合計の厚さは、0.4mm以上且つ1.0mm以下が好ましい。
【0128】
第1有機絶縁層14の厚さは、0.025mm以上が好ましい。第1有機絶縁層14の厚さの上限値は、例えば0.5mmである。この第1有機絶縁層14の厚さは、第1有機絶縁層14と載置板11とを接着する接着層、および第1有機絶縁層14と静電吸着用電極13とを接着する接着層を含む。第1有機絶縁層14の厚さが0.025mmを下回ると、静電吸着用電極13に印加された電圧により静電吸着用電極13と載置板11の絶縁が破られ、放電するおそれがある。一方、0.5mmを超えると、静電吸着用電極13と板状試料Wとの距離が離れすぎ、板状試料Wを所望の強さで十分に吸着固定することが困難となるおそれがある。
【0129】
一般に、上述した第1有機絶縁層14の形成材料は、載置板11および支持板12の形成材料であるセラミックスよりも絶縁破壊の強さが大きい。例えば、ポリイミド樹脂の絶縁破壊の強さは、300kV/mmであり、載置板11および支持板12の形成材料であるAl
2O
3−SiCの絶縁破壊の強さ(10kV/mm)と比べると桁違いに強い。そのため、静電チャック部2に載置板11、第1有機絶縁層14および支持板12の積層体を用いた場合、セラミックスを形成材料とする載置板11のみを用いた場合と比べ、同じ厚さであってもより大きい絶縁破壊電圧とすることができる。
【0130】
一方、載置板11、第1有機絶縁層14および支持板12の積層体を用いた場合には、載置板11の脆弱箇所と第1有機絶縁層14の脆弱箇所と支持板12の脆弱箇所とが、偶発的に平面的に重なった場合にはじめて、前記脆弱箇所が重なった部分が積層体全体としてピンホール欠陥が生じやすい箇所となる。そのため、載置板11や支持板12や第1有機絶縁層14に脆弱箇所があったとしても、問題が生じにくくなる。
【0131】
静電吸着用電極13は、支持板12に、静電吸着用電極13の形成材料である非磁性の金属箔を接着する、またはスパッタや蒸着により成膜することで形成することができる。他にも、静電吸着用電極13の形成材料である導電性材料と、有機物との複合材料を、スクリーン印刷等の塗工法を用いて塗布することにより形成することができる。
【0132】
静電吸着用電極13の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ100μm以下が好ましく、10μm以上かつ50μm以下がより好ましい。厚さが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することができない。一方、厚さが100μmを越えると、静電吸着用電極13と支持板12との間の熱膨張率差に起因して、静電吸着用電極13と支持板12との接合界面にクラックが入り易くなる。
【0133】
このような厚さの静電吸着用電極13は、静電吸着用電極13の形成材料からなる薄膜を接着後に成形することのほか、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、スクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0134】
温度調節用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。温度調節用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0135】
第2有機絶縁層7は、上述した第1有機絶縁層14と同様の構成(形成材料、厚さ)とすることができる。例えば、第2有機絶縁層7の厚さは、0.05mm以上が好ましい。
第2有機絶縁層7の厚さの上限値は、例えば0.5mmである。第1有機絶縁層14および第2有機絶縁層7は、同じ構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0136】
接着層8は、静電チャック部2の下面と温度調節用ベース部3の上面との間に介在し、静電吸着用電極13、第2有機絶縁層7の側面を覆って、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とを接着一体化している。また、接着層8は、熱応力の緩和作用を有する。
【0137】
冷却ガス導入孔18が形成されていることに伴い、載置板11には、載置板11の厚さ方向に貫通する第1貫通孔11hが設けられている。
また、静電吸着用電極13は、冷却ガス導入孔18を避けて形成されている。
また、第1有機絶縁層14には、第1有機絶縁層14の厚さ方向に貫通し、第1貫通孔11hと連通する第2貫通孔14hが設けられている。
また、支持板12には、支持板12の厚さ方向に貫通し、第1貫通孔11hおよび第2貫通孔14hと連通する第3貫通孔12hが設けられている。
【0138】
第2貫通孔14hおよび第3貫通孔12hは、第1貫通孔11hと同じ大きさである。
静電吸着用電極13の側面(図中、符号13hで示す)の側面は、接着層8により覆われている。
本実施形態の静電チャック装置1Hは、以上のような構成となっている。
【0139】
以上のような構成の静電チャック装置1Hによれば、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0140】
[第8実施形態]
図10は、本発明の第8実施形態に係る静電チャック装置1Iの断面図であり、
図1に対応する図である。上述の実施形態の説明において既出の構成要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0141】
静電チャック装置1Iの載置板11は、載置板11の下面(他方の面)11aの周縁部において下面11aを囲む第1堤部11xを有している。第1有機絶縁層14、支持板12および静電吸着用電極13は、この順に、第1堤部11xおよび下面11aによって形成される凹部110に嵌合している。
【0142】
また、第1有機絶縁層14が有する第2貫通孔14hおよび支持板12が有する第3貫通孔12hは、第1貫通孔11hよりも大きく形成されている。また、静電吸着用電極13の側面13hは、冷却ガス導入孔18と離間している。載置板11は、下面11aにおいて第1貫通孔11hの周囲を囲み、第2貫通孔14hおよび第3貫通孔12hに挿入される第2堤部11yをさらに有している。これにより、冷却ガス導入孔18に面する第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面は、プラズマに対する耐久性が接着層8よりも高いセラミックスで覆われることになる。したがって、静電吸着用電極13に高電圧を印加した場合に、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13の側面から放電しにくく、装置全体の耐電圧を向上させることができる。
【0143】
さらに、第1有機絶縁層14は、載置板11および支持板12に囲まれた空間に封止されている。すなわち、第1有機絶縁層14は、全周がセラミックスで覆われることになる。そのため、第1有機絶縁層14は、プラズマによる劣化が限りなく小さく抑制される。
【0144】
図11に示す静電チャック装置1Jのように、凹部110においては、下面11aから順に第1有機絶縁層14、静電吸着用電極13、支持板12が順に積層する構成としてもよい。このような構成の静電チャック装置1Jにおいては、第1有機絶縁層14および静電吸着用電極13は、順次貼合してもよく、第1有機絶縁層14と静電吸着用電極13とが予め積層されたものを貼合してもよい。このような構成の場合、静電吸着用電極13と支持板12とは、例えばシート状の接着材(シート接着材)を介して貼合されている。
【0145】
静電吸着用電極13が所定のパターンを有する電極として形成されている場合、静電吸着用電極13の厚さが10μm以下であれば、シート接着材が変形することにより、静電吸着用電極13が有するパターンの隙間にシート接着材が配置される。
静電吸着用電極13の厚さが10μmを超える場合は、静電吸着用電極13のパターンに合わせて、静電吸着用電極13のパターンの隙間を埋める絶縁層を配置する。このような絶縁層は、例えば、絶縁シートを静電吸着用電極13のパターンと相補的なパターンに加工し、配置することで得られる。
これにより、静電チャック部2の内部に空隙が残存することなくなるため、破損を抑制することができる。
【0146】
以上のような構成の静電チャック装置1Iおよび静電チャック装置1Jであっても、耐電圧が高い新規な静電チャック装置を提供することができる。
【0147】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。