(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転体と該回転体に設けられ基板を配置する複数のウェーハ保持具とを備え、該ウェーハ保持具に配置され公転している複数の基板にイオン注入するバッチ式イオン注入機を使用し、ボンドウェーハの表面からイオン注入してイオン注入層を形成するイオン注入工程と、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを作製する剥離工程を有する貼り合わせウェーハの製造方法において、
前記ボンドウェーハへのイオン注入工程を、前記ボンドウェーハの表面に絶縁膜を形成せずに、又は、前記ボンドウェーハの表面に形成した厚さ50nm以下の絶縁膜を通し、かつ、前記ボンドウェーハの結晶軸に対して注入角度を傾けて軽元素イオンのビームを照射するものとし、
前記軽元素イオンのビーム中心が、前記ボンドウェーハの中心から前記ボンドウェーハの表面における前記回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように、前記ボンドウェーハの全面に前記軽元素イオンのビームを照射してイオン注入を行うことを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
イオン注入工程において、例えば、チャネリング効果を抑制するためにボンドウェーハとしてオフアングル付きのウェーハを用い、ウェーハ表面に対し垂直にイオン注入を行う際、軽元素イオン以外、例えばArイオンのビームの照射を行う場合、
図3に示すように、フィラメント7を有するイオン源4からビームを取り出すための引出電極5の位置は、イオン源4のほぼ中心位置に配置される。その引出電極5によって取り出されたイオンビームは、質量分析器6に導入された後、質量分析器外部のウェーハ保持具に設置されたウェーハ3の中心とイオンビームの中心が一致するように、質量分析器内部の磁場によってその軌道をほぼ直角に曲げられる。この結果、イオンビームはウェーハ中心に対して垂直に照射されることになる。
【0017】
一方、
図4に示すように、水素イオン等の軽元素イオンの注入を行う場合、軽元素イオンは軽いので、イオン源磁場の影響によりイオン源4から取り出されたイオンビームの軌道が若干曲げられてしまう。そのため、引出電極位置を調整する(
図4では図中の下方向へ3.1mm移動させる)ことによって、イオンビームが引出電極5に衝突してビーム電流が低下することを防止している。
【0018】
そして、上記のようにイオンビームの軌道が若干曲げられた状態で質量分析器6に導入された後は、質量分析器外部のウェーハ保持具に設置されたウェーハ3の中心とイオンビームの中心が一致するように、質量分析器内部の磁場によってその軌道を曲げて照射されるのが通常である。しかしながら、このようにウェーハ3の中心とイオンビームの中心が一致するように軌道を曲げると、
図4に示される通り、イオンビームはウェーハ中心に対して垂直に照射されず、イオン源磁場で曲げられた分に相当する若干の角度をもって照射されることになる。
【0019】
このように、バッチ式イオン注入機で水素イオンなどの軽元素をイオン注入する場合、イオン源磁場の影響によりイオン源から取り出されたイオンビームの軌道が若干曲げられてしまうため、若干の角度ズレをもってウェーハに注入されてしまう。
【0020】
そして本発明者は、単結晶からなるボンドウェーハの表面に絶縁膜を形成せず、或いは、薄い絶縁膜を形成してバッチ式イオン注入機でイオン注入を行う場合、この角度ズレがチャネリングに影響を及ぼし、結果としてイオン注入深さの面内均一性(剥離後の薄膜厚さの面内均一性)を悪化させていることを発見した。
【0021】
更に、本発明者は上記の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、軽元素イオンを注入する際、イオンビームの照射位置をボンドウェーハの中心から適切にずらした状態で、ボンドウェーハの全面へのイオン注入を行うことで、イオン注入深さの面内均一性(剥離後の薄膜厚さの面内均一性)の悪化が抑制されることを見出し、本発明に到達した。
【0022】
即ち、本発明は、回転体と該回転体に設けられ基板を配置する複数のウェーハ保持具とを備え、該ウェーハ保持具に配置され公転している複数の基板にイオン注入するバッチ式イオン注入機を使用し、ボンドウェーハの表面からイオン注入してイオン注入層を形成するイオン注入工程と、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを作製する剥離工程を有する貼り合わせウェーハの製造方法において、前記ボンドウェーハへのイオン注入工程を、前記ボンドウェーハの表面に絶縁膜を形成せずに、又は、前記ボンドウェーハの表面に形成した厚さ50nm以下の絶縁膜を通し、かつ、前記ボンドウェーハの結晶軸に対して注入角度を傾けて軽元素イオンのビームを照射するものとし、前記軽元素イオンのビーム中心が、前記ボンドウェーハの中心から前記ボンドウェーハの表面における前記回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように、前記ボンドウェーハの全面に前記軽元素イオンのビームを照射してイオン注入を行うことを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法を提供する。
【0023】
以下、本発明の貼り合わせウェーハの製造方法を説明する。
【0024】
本発明の貼り合わせウェーハの製造方法におけるイオン注入工程では、バッチ式イオン注入機を使用する。
図2に示すように、バッチ式イオン注入機10は、回転体1と該回転体1に設けられ基板(ボンドウェーハ)3を配置する複数のウェーハ保持具2とを備え、該ウェーハ保持具2に配置され公転している複数の基板(ボンドウェーハ)3にイオン注入するものである。
【0025】
このようなバッチ式イオン注入機を用いてボンドウェーハの表面から軽元素イオンを注入してイオン注入層を形成する。イオン注入を行うボンドウェーハとしては、目的に応じて任意に選択することができ、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン単結晶ウェーハを用いれば、面内均一性に優れたSOI層膜厚を有するSOIウェーハを製造することができる。
【0026】
また、本発明におけるボンドウェーハへのイオン注入工程は、ボンドウェーハの表面に絶縁膜を形成せずに、又は、ボンドウェーハの表面に形成した厚さ50nm以下の絶縁膜を通してイオン注入を行う。絶縁膜としては、例えばシリコン酸化膜が挙げられる。
【0027】
また、ボンドウェーハの表面から注入する軽元素イオンとしては、水素イオン(H
+)、水素分子イオン(H
2+)、ヘリウムイオン(He
+)、重水素イオン(D
+)が挙げられる。特に、水素イオン又はヘリウムイオンが好ましい。
【0028】
上述したように、従来は、軽元素イオンをイオン注入する場合、
図4に示される通り、質量分析器外部のウェーハ保持具に設置されたボンドウェーハ3の中心とイオンビームの中心が一致するように、質量分析器内部の磁場によってその軌道を曲げて照射されるのが通常であるため、イオンビームはウェーハ中心に対して垂直に照射されず、イオン源磁場で曲げられた分に相当する若干の角度をもって照射されることになる。
【0029】
一方、本発明では、
図1に示すように、イオン注入工程において、軽元素イオンのビーム中心が、ボンドウェーハ3の中心からボンドウェーハ3の表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように、ボンドウェーハ3の全面に軽元素イオンのビームを照射してイオン注入を行うことを特徴とする。
【0030】
このように、軽元素イオンを注入する際、イオンビーム中心が、ボンドウェーハ3の中心からボンドウェーハ3の表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように、ボンドウェーハの全面へのイオン注入を行うことで、所望の角度でイオン注入をすることができ、イオン注入深さの面内均一性(剥離後の薄膜厚さの面内均一性)の悪化が抑制される。
【0031】
また、本発明においては、ボンドウェーハの結晶軸に対して注入角度を傾けて軽元素イオンのビームを照射することでイオン注入を行う。以下、イオン注入を行うウェーハ(ボンドウェーハ)の結晶軸に対する注入角度の傾き(以下、傾斜角と呼ぶ)と、
図4の角度ズレとの関係について説明する。
【0032】
例えば、ボンドウェーハとして結晶方位<100>ジャスト(オフアングルなし)のウェーハを用いる場合、チャネリング効果を抑制するために、通常の場合、ウェーハ表面に対して傾斜角(例えば7度)をつけてイオン注入が行われる。
【0033】
この傾斜角はイオンビームに対して回転体に設けられるウェーハ保持具を傾けることで調整されるが、ウェーハ表面における回転体の中心方向(α方向)と、それに垂直な方向である回転体の円周方向(β方向)の少なくとも一方が傾斜するように調整される。
【0034】
図4の角度ズレはα方向のずれであるので、イオン注入時の傾斜角をβ方向のみに形成した場合は、軽元素イオンのビーム中心がボンドウェーハの中心からボンドウェーハの表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように調整することで、
図1のようにα方向の注入角度がウェーハ表面に対して垂直になるように調整することができ、これにより、軽元素イオンに起因する角度ズレを解消することが可能となる。
【0035】
一方、イオン注入時の傾斜角をα方向に形成した場合(α方向の傾斜角α)には、軽元素イオンのビーム中心がボンドウェーハの中心からボンドウェーハの表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように調整することで、α方向の注入角度がウェーハ表面に対して傾斜角(90−α)度と一致するように調整することが可能となる。
【0036】
尚、特許文献1、2に記載のコーンアングル効果の原因となる注入角度のズレは、β方向に発生するものである。
【0037】
詳述すると、通常、
図2に示されるように、バッチ式のイオン注入機10におけるウェーハ保持具2は、基板3を保持する為に、回転体1の回転面より若干内側に傾けてある。これにより回転体1が回転している際、遠心力により基板3をウェーハ保持具2に押し付ける力が働き、ウェーハ保持具2は基板3を保持するようになっている。ただし、このように回転体1の回転面と基板3の表面が平行でない場合、イオンビームを基板3に対して一定角度で注入しようとしても、基板中心部とビームスキャン方向の基板両端部では回転体の回転に応じて注入角度にごくわずかなズレが生じ、これによりイオン注入深さが基板中央部では深く、スキャン方向の基板両端部では浅くなる。これをコーンアングル効果と呼んでいる。
【0038】
従って、バッチ式イオン注入機では、例えばイオン注入時の傾斜角(例えば7度)をβ方向のみに形成した場合、
図4のようにα方向の注入角度が垂直とならずにズレてしまうと、チャネリング効果とコーンアングル効果の影響でイオン注入深さの面内均一性が悪化してしまう。従って、上記のように、軽元素イオンに起因する角度ズレを解消することで、イオン注入深さの面内均一性の悪化が抑制される。
【0039】
また、チャネリング効果を抑制するために、ボンドウェーハとしてオフアングル付きのウェーハを用い、ウェーハ表面に対し垂直にイオン注入を行う場合(すなわち、α方向及びβ方向の傾きがゼロでの注入の場合)は、軽元素イオンのビーム中心がボンドウェーハの中心からボンドウェーハの表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように調整することで、α方向の注入角度がウェーハ表面に対して垂直になるように調整することができ(β方向も垂直となっている)、これにより、軽元素イオンに起因する角度ズレを解消することが可能となる。従って、オフアングル通りの注入角度でウェーハに注入されることになる。
【0040】
軽元素イオンのビーム中心を、ボンドウェーハ3の中心からボンドウェーハ3の表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置に照射させるには、質量分析器6内の磁場を形成するマグネットにかける電流を調整し、ビームのピーク位置をずらすことで行うことができる。
【0041】
例えば、従来、
図5のようなイオンビーム形状を有するH
+イオンビームの場合には、イオンビームのピーク位置がウェーハ中心に一致するようにイオンビーム位置が設定され、イオン注入が行われていた。
【0042】
本発明においては、
図6のように、H
+イオンのビーム中心が、ボンドウェーハ3の中心からボンドウェーハの表面における回転体の中心方向と平行な方向に所定量ずれた位置を照射するように、イオンビーム位置を調整する。
【0043】
ただし、イオンビームがボンドウェーハ表面に対して適切な量ずらされているかどうかについては、直接的に観察する方法がないので、ウェーハ貼り合わせ法(イオン注入剥離法)を用い、イオンビーム中心の照射位置のボンドウェーハ中心からのずらし量を変化させてイオン注入を行ったボンドウェーハを用いて貼り合わせSOIウェーハを作製し、そのSOI層の面内均一性を比較することで、最適なずらし量を求めることができる。
【0044】
この場合、最適なずらし量とは、SOI層の面内均一性が得られる量であるが、結局、イオンの注入角度が所望の角度となるようなずらし量である。すなわち、例えば(100)方位のシリコンウェーハには、一方向に所望の角度(例えば7度)の傾斜となるようにイオンビーム照射位置をずらす。
【0045】
本発明における貼り合わせ工程は、ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせることで行う。ベースウェーハとしては、シリコン単結晶ウェーハを用いることができるが、特に限定されない。
【0046】
次いで、イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを作製する。例えば、不活性ガス雰囲気下約500℃以上の温度で熱処理を加えれば、イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることができる。また、常温での貼り合わせ面に予めプラズマ処理を施すことによって、熱処理を加えずに(あるいは剥離しない程度の熱処理を加えた後)、外力を加えて剥離することもできる。
【0047】
このような本発明の貼り合わせウェーハの製造方法によれば、剥離後の薄膜厚さの面内均一性の悪化を抑制することができる。
【0048】
尚、軽元素イオンをイオン注入する場合、若干の角度ズレをもって注入されてしまうことが、イオン注入深さの面内均一性を悪化させるメカニズムについては、明確には判明していない。
【0049】
しかしながら、発明者の研究によれば、軽元素イオンの注入において、単結晶からなるボンドウェーハの表面に絶縁膜を形成せず注入した場合と、十分な厚さの絶縁膜(チャネリング効果を抑制するのに十分な厚さ、例えば、100nm以上)を通して注入した場合とを比較すると、前者は、イオンビームの中心の照射位置をボンドウェーハの中心から所定量ずらした調整を行うと、面内均一性が極小値を示す照射位置が存在するのに対し、後者はそのような極小値が得られない(ほぼ一定の面内均一性を有する)ことが実験的に明らかとなった。以下、本発明者が行った実験例として、実験例1、2を示す。
【0050】
(実験例1)
図5、6のビーム形状を有する水素イオンビーム(傾斜角:β方向に7度)を用い、そのイオンビームのピーク位置のウェーハ中心からのズレを、質量分析器内の磁場を形成するマグネットにかける電流を調整することによって、ウェーハ毎に調整して変化させ、所定量をイオン注入したウェーハ(シリコン単結晶ウェーハ、結晶方位<100>、オフアングルなし、表面酸化膜なし)をボンドウェーハとして準備した。
【0051】
これらのボンドウェーハをベースウェーハ(シリコン単結晶ウェーハ、結晶方位<100>、表面酸化膜あり)と貼り合わせた後にイオン注入層で剥離して貼り合わせSOIウェーハを作製し、SOI層膜厚の面内分布(膜厚レンジ)を測定した。結果を
図7に示す。
【0052】
図7より、イオンビームのピーク位置のウェーハ中心からのズレが−3mm付近(ウェーハ中心から回転体の中心方向に約3mm)で、SOI層膜厚レンジが最小となることがわかる。これは、−3mm付近(ウェーハ中心から回転体の中心方向に約3mm)でα方向の角度ズレがほぼゼロになり、α方向の注入角度がウェーハ表面に対して垂直となる位置に、イオンビームのピーク位置が調整されていることを示す。
【0053】
(実験例2)
イオン注入を行うボンドウェーハとして、表面酸化膜付きのシリコン単結晶ウェーハ(結晶方位<100>、オフアングルなし、酸化膜200nm)を用い、実験例1と同様に、イオンビームのピーク位置のウェーハ中心からのズレを、ウェーハ毎に調整して変化させて所定量をイオン注入したウェーハをボンドウェーハとして準備した。
【0054】
これらのボンドウェーハをベースウェーハ(シリコン単結晶ウェーハ、結晶方位<100>、表面酸化膜なし)と貼り合わせた後にイオン注入層で剥離して貼り合わせSOIウェーハを作製し、SOI層膜厚の面内分布(膜厚レンジ)を測定した。結果を
図8に示す。
【0055】
図8に示されるように、ボンドウェーハにチャネリング効果を抑制するのに十分な厚さの酸化膜を形成し、それを通してイオン注入した場合のSOI層膜厚レンジは、ウェーハ中心からのズレには依存せず、ほぼ一定の値を示すことがわかる。
【0056】
この実験結果から、実験例1の面内均一性のバラツキは、チャネリング効果に関連すると考えられる。すなわち、注入角度のわずかなズレと、チャネリング効果を抑制するための傾斜角と、バッチ式イオン注入機に特有のコーンアングル効果の原因となる注入角度のズレとが複雑に重なり合うことで、部分的にチャネリング効果が助長される領域が生じ、その結果として、イオン注入深さの面内均一性が悪化するものと推定される。従って、ボンドウエーハへのイオン注入を、チャネリング効果が発生する、ボンドウェーハの表面に絶縁膜を形成せずに、又は、表面に形成した厚さ50mm以下と言った薄い絶縁膜を通して行う場合に、本発明が必要となる。
【0057】
尚、近年、通常はベースウェーハとの絶縁に用いるBOX層(埋め込み酸化膜層)にバイアスを掛けることで、デバイスの閾値電圧を制御することが提案されている。この場合にはBOX層膜厚を薄くしたThin BOX型の薄膜SOIウェーハを作製する必要があり、例えばこのような場合に本発明が有効となる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
下記条件で、
図2に示すバッチ式イオン注入機を用い、ボンドウェーハにイオン注入層を形成し、ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを酸化膜を介して貼り合わせ、イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、貼り合わせSOIウェーハを製造し、SOI膜厚レンジを測定した。
【0060】
(実施例1、比較例1)
(ボンドウェーハ)
Si単結晶ウェーハ、直径300mm、<100>、オフアングルなし、酸化膜なし
(ベースウェーハ)
Si単結晶ウェーハ、直径300mm、<100>、熱酸化膜500nm付
(イオン注入条件)
注入イオン:H+イオン、50keV、 5×10
16/cm
2
ビーム形状:実験例と同一
ビーム傾斜角:β方向に7度
ビーム中心のウェーハ中心からのズレ量:[実施例1:−3mm(ウェーハ中心から回転体の中心方向に約3mm)]、[比較例1:0mm]
(剥離熱処理)500℃、30分、Ar雰囲気
(SOI膜厚測定)測定装置:ADE社製Acumap
(測定結果)SOI膜厚レンジ:[実施例1:1.6nm]、[比較例1:2.2nm]
【0061】
(実施例2、比較例2)
(ボンドウェーハ)
Si単結晶ウェーハ、直径300mm、<100>、オフアングルなし、熱酸化膜50nm付
(ベースウェーハ)
Si単結晶ウェーハ、直径300mm、<100>、酸化膜なし
(イオン注入条件)
イオン注入装置:実施例1と同一。
注入イオン:H+イオン、50keV、 5×10
16/cm
2
ビーム形状:実験例と同一
ビーム傾斜角:β方向に7度
ビーム中心のウェーハ中心からのズレ量:[実施例2:−3mm(ウェーハ中心から回転体の中心方向に約3mm)]、[比較例2:0mm]
(SOI膜厚測定)測定装置:ADE社製Acumap
(測定結果)SOI膜厚レンジ:[実施例2:1.7nm]、[比較例2:2.4nm]
【0062】
上記結果より、実施例1、2では、比較例1、2よりもSOI膜厚レンジの値が低い、即ち、面内均一性が優れたSOIウェーハが製造された。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。