(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る発光装置及びその製造方法について説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、又は、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、以下の説明において、同一の名称及び符号を付したものについては、原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略することとする。
【0011】
<第1実施形態>
[発光装置の構成]
第1実施形態に係る発光装置の構成について、
図1A〜
図1Cを参照して説明する。
図1Aは、第1実施形態に係る発光装置の構成を示す斜視図である。
図1Bは、第1実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図1Cは、第1実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図であり、
図1BのIC−IC線における断面を示す。
【0012】
なお、
図1Cにおいて、遮光性部材及び透光性部材の上面近傍の破線で囲んだ部分をそれぞれ拡大して示している。また、
図1Cにおいて、2種類の第1充填剤を円形及び菱形で示し、第2充填剤を円形で示している。これらの形状は該当する部材の具体的な形状を示すものではなく、充填剤の粒子の種類を区別するために便宜的に用いている。
【0013】
第1実施形態に係る発光装置100は、基台と、基台に載置される発光素子1と、発光素子1を覆う透光性部材5と、を備える。透光性部材5及び基台は、それぞれの上面に凹凸形状すなわち複数の突起を有する。透光性部材5は、透光性部材5の母材51よりも屈折率の低い透光性の第1充填剤52の粒子を含有し、第1充填剤52の粒子の一部が、透光性部材5の上面において透光性部材5の母材51から露出している。基台はパッケージ2に相当する。
より具体的には、発光装置100は平面視形状が略正方形であり、上面側に開口する凹部2aを有するパッケージ2と、凹部2a内に実装される発光素子1と、凹部2a内に配置され、発光素子1を覆う透光性部材5と、を備えている。また、パッケージ2は、リード電極3と遮光性部材4とを有し、発光素子1は、ワイヤ6を用いて凹部2aの底面に配置されているリード電極3と電気的に接続されている。
【0014】
発光素子1は、パッケージ2の凹部2a内に実装されている。本実施形態では、互いに発光色の異なる3個の発光素子11,12,13が凹部2a内に実装されている。例えば、発光素子11の発光色を青色、発光素子12の発光色を緑色、発光素子13の発光色を赤色とすることができる。
なお、以降は、3個の発光素子11,12,13のそれぞれを特に区別しない場合には、「発光素子1」と呼ぶことがある。
【0015】
発光素子11,12,13は、凹部2aの底面2bの中央部に配置されているリード電極33上にダイボンドされている。また、発光素子11,12,13の一方の電極であるアノード電極が、ワイヤ6を用いてリード電極34に電気的に接続されている。また、発光素子11,12,13の他方の電極であるカソード電極が、ワイヤ6を用いてそれぞれに対応するリード電極31,32,33の何れかと電気的に接続されている。つまり、3つの発光素子11,12,13は、それぞれ独立して電圧を印加できるように構成されている。これによって、発光素子11,12,13を個別に点灯させたり、発光素子11,12,13の輝度レベルを任意に調節したりすることが可能であり、発光装置100の発光色及び明るさを任意に変化させることができる。従って、発光装置100は、カラー画像表示装置の1画素として用いることができる。
【0016】
ここで用いられる発光素子1は、形状や大きさ、半導体材料などが特に限定されるものではない。発光素子1の発光色としては、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。青色や緑色に発光する発光素子11、12は、近紫外から可視光領域に発光波長を有する、In
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y≦1)で表される窒化物半導体からなる発光素子を好適に用いることができる。また、赤色に発光する発光素子13としては、GaAs、AlInGaP、AlGaAs系の半導体を用いることもできる。
本実施形態においては、発光素子1として、正負の電極が同じ面側に配置されたものでもよく、正負の電極が互いに異なる面側に配置されたものでもよい。正負の電極が同じ面側に配置された発光素子1を用いる場合は、フェイスアップ実装型、フェイスダウン実装型のいずれであってもよい。また、複数の発光素子1を搭載する場合に、実装型の異なるものが混在してもよい。
【0017】
なお、凹部2a内に実装される発光素子1の数は1個以上であればよく、発光素子1を複数個搭載する場合の発光色の組み合わせ、発光素子1の外形形状などは適宜に変更することができる。
【0018】
パッケージ2は、リード電極3と遮光性部材4とを有しており、平面視で略正方形の外形形状を有し、上面側に開口を有する凹部2aが設けられている。凹部2aは、発光素子1を実装するための領域であり、凹部2aの底面2bは、リード電極3と、遮光性部材4とで構成されている。また、凹部2aの側壁は、遮光性部材4で構成されている。
【0019】
リード電極3は、4つのリード電極31〜34で構成されており、ワイヤ6を介して電気的に接続されている3つの発光素子11〜13と外部電源とを接続するための配線である。
リード電極31〜34は、それぞれの一部が凹部2aの底面2bを構成しており、平面視でそれぞれ遮光性部材4の端部まで延伸して当該端部で下方に折れ曲がり、遮光性部材4の側面に沿って延伸し、更に遮光性部材4の下面に沿って内側に折れ曲がるように配置されている。発光装置100は、下面側が実装面であり、遮光性部材4の下面側において内側に折れ曲がって設けられているリード電極31〜34の部位が、半田などの導電性接合部材を用いて接合される接合部である。
【0020】
また、リード電極31〜34の凹部2aの底面2bに露出している部分が、ワイヤ6を介して発光素子11〜13と電気的に接続される部位である。リード電極31は発光素子11のカソード電極と、リード電極32は発光素子12のカソード電極と、リード電極33は発光素子13のカソード電極と、それぞれ電気的に接続されている。リード電極34は、発光素子11〜13のそれぞれのアノード電極と電気的に接続されている。
また、リード電極33は、凹部2aの底面2bの中央部に配置されており、発光素子11〜13がダイボンド部材を用いて接合される発光素子配置領域を兼ねている。
【0021】
リード電極3は、平板状の板金に、プレス加工の穴抜きや折り曲げを施すことで形成することができる。原材料である板金は、発光素子のパッケージのリードフレームに用いられるものであれば、特に限定されるものではない。板金の厚さは、パッケージの形状や大きさなどに応じて適宜に選択されるが、例えば、100〜500μm程度の厚さのものが用いられ、120〜300μmの厚さが更に好ましい。また、板金の材料としては、例えば、Cu系の合金が用いられる。
また、凹部2aの底面2bとなるリード電極3の上面は、光反射性又は/及びワイヤ6やダイボンド部材などとの接合性を高めるために、Ag、Au、Niなどのメッキ処理を施すようにしてもよい。
【0022】
遮光性部材4は、4つのリード電極31〜34を互いに離間して固定するとともに、凹部2aの側壁を構成する部材である。遮光性部材4は、光を透過せずに遮光する材料で構成されており、光を反射することで遮光する光反射性材料、又は、光を吸収することで遮光する光吸収性材料が用いられる。
遮光性部材4は、具体的には、透光性を有する樹脂を母材41とし、フィラーとして遮光性を付与するための第2充填剤42を含有した樹脂材料を用いて形成することができる。また、凹部2aの側壁の上面である遮光性部材4の上面4aは、第2充填剤42の粒子の一部が母材41から露出しており、第2充填剤42の粒子に起因する凹凸形状すなわち突起を有している。
【0023】
遮光性部材4に光反射性材料を用いる場合は、遮光性部材4は、発光素子1から出射して、透光性部材5を伝播して遮光性部材4に到達した光を透光性部材5内に戻すように機能する。これによって、発光装置100の上面からの光取り出し効率を向上させることができる。
また、遮光性部材4に光吸収性材料を用いる場合は、遮光性部材4は、発光素子1から出射して、透光性部材5を透過して遮光性部材4に入射する光を吸収する。このため、発光装置100の上面のみから光を出射させることができる。
【0024】
また、光反射性材料又は光吸収性材料の何れを遮光性部材4に用いる場合であっても、このような遮光性部材4を設けることで、発光装置100からの光の出射が透光性部材5の上面に限定されるため、発光領域と非発光領域とのコントラストが高い、いわゆる「見切り性」の良好な発光装置100とすることができる。
【0025】
遮光性部材4の母材41に用いられる樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。
熱可塑性樹脂の場合、例えば、ポリフタルアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステルなどを用いることができる。
熱硬化性樹脂の場合、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0026】
遮光性部材4が光反射性を有する場合は、母材41に第2充填剤42として光反射性物質の粒子を含有させて光反射性を付与した樹脂材料を用いて遮光性部材4を形成することができる。光反射性物質としては、例えば、TiO
2,Al
2O
3,ZrO
2,MgOなどを挙げることができる。
また、凹部2aの内側面は、発光素子1が発する光の波長域において反射率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましい。遮光性部材4における光反射性物質である第2充填剤42の含有量は、5質量%以上50質量%以下であればよく、10質量%以上30質量%以下が好ましい。
また、第2充填剤42の粒径は、0.1μm以上0.5μm以下程度とすることが好ましい。第2充填剤42の粒径をこの範囲とすることで、遮光性部材4は、良好な光反射性を得ることができる。
なお、特に断らない限り、本明細書において、各種のフィラーや研磨剤などの粒径の値は、空気透過法又はFisher−SubSieve−Sizers−No.(F.S.S.S.法)によるものとする。
【0027】
また、遮光性部材4の上面4aの複数の突起は、JIS規格B0601:2013で規定される算術平均粗さRaで、0.090μm以上0.210μm以下程度となるように形成することが好ましい。特に、遮光性部材4の上面4aを算術平均粗さRaで、0.130μm以上とすることで外来光を、より効率よく散乱させることができる。
【0028】
遮光性部材4が光吸収性を有する場合は、前記した母材41に、第2充填剤42として光吸収性物質の粒子を含有させて光吸収性を付与された樹脂材料を用いて形成することができる。第2充填剤42に用いる光吸収性物質としては、黒色顔料を挙げることができ、より具体的には、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素系顔料を挙げることができる。
なお、第2充填剤42として光吸収性物質を用いる場合の粒径及び含有量は、前記した反射性物質を用いる場合と同程度とすることができる。例えば、第2充填剤42としてカーボンブラックを添加する場合は、1質量%程度とすることができる。更に、例えば、強化剤であるワラストナイトなどを、その他のフィラーとして25質量%程度添加してもよい。
【0029】
遮光性部材4は、母材41に第2充填剤42を含有することで光反射性又は光吸収性を付与された樹脂材料を用いて、金型を用いたトランスファーモールド法、射出成形法、圧縮成形法などの成形法、スクリーン印刷法などの塗布法などによって形成することができる。
【0030】
また、遮光性部材4の上面4aの複数の突起は、上面4aにブラスト加工処理を施して、第2充填剤42の粒子の一部を母材41から露出させることで形成することができる。つまり、遮光性部材4の上面4aの複数の突起は、第2充填剤42の粒子に起因して形成されることが好ましい。
前記した範囲の粒径の第2充填剤42の粒子に起因して形成される複数の突起によって、遮光性部材4の上面4aで反射される外光の正反射光成分を良好に低減することができる。発光装置100を画像表示装置の画素として用いる場合は、外光が画像表示装置に照射される場合であっても、外光の正反射光成分が低減されるため、観察方向に依らずに画素の明暗や色彩を良好に認識できることができる。
【0031】
透光性部材5は、パッケージ2の凹部2a内に設けられ、発光素子1を封止する封止部材である。
透光性部材5は、透光性を有する樹脂を母材51として用いて形成する際に未硬化の樹脂の粘度を調整したり、透光性部材5に光拡散性を付与したりするためのフィラーとして第1充填剤52を含有している。また、透光性部材5の上面5aは、第1充填剤52の粒子の一部が母材51から露出しており、第1充填剤52の粒子に起因する凹凸形状すなわち複数の突起を有している。
【0032】
透光性部材5に含有させる第1充填剤52は、1種類でもよいが、本実施形態のように2種類の第1充填剤52a,52bを含有させてもよく、更に3種類以上であってもよい。具体的には、第1充填剤52aと第1充填剤52bとで、異なる材質のものを用いるようにしてもよく、同じ材質であっても粒径や形状が異なるものを用いるようにしてもよい。
【0033】
また、透光性部材5は、透光性が損なわれない程度に、カーボンブラックなどの光吸収性物質の粒子を他のフィラーとして含有するようにしてもよい。透光性部材5に適量の光吸収性物質の粒子を含有させることで、リード電極3の表面などでの正反射光の光取り出し面からの出射を抑制することができる。これによって、発光装置100からの出射光の配光特性を改善することができる。
更にまた、透光性部材5は、必要に応じて、蛍光体や着色顔料、母材51よりも屈折率の高い光拡散性物質などの粒子を含有させるようにしてもよい。
【0034】
透光性部材5の母材51としては、透光性を有する熱硬化性樹脂を用いることができ、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂などを挙げることができる。また、第1充填剤52としては、母材51よりも屈折率の低い透光性材料が用いられる。第1充填剤52は、具体的には、SiO
2を挙げることができる。例えば、母材51として、屈折率が1.53のエポキシ樹脂を用いた場合に、第1充填剤52として、屈折率が1.46のSiO
2を用いることができる。
また、第1充填剤52の粒径は、0.5μm以上10μm以下程度とすることが好ましい。第1充填剤52の粒径をこの範囲とすることで、第1充填剤52の粒子に起因して形成される複数の突起によって、上面5aにおける外光の正反射光成分を効率よく低減することができる。
また、透光性部材5における第1充填剤52の含有量は、2質量%以上40質量%以下程度とすることが好ましい。
【0035】
透光性部材5の上面5aの複数の突起は、JIS規格B0601:2013で規定される算術平均粗さRaで、0.095μm以上0.220μm以下程度となるように形成することが好ましく、0.180μm以下が更に好ましい。
【0036】
また、発光装置100の光取り出し面である透光性部材5の上面5aにおいて、母材51よりも低屈折率の第1充填剤52を露出させることで、透光性部材5と光が取り出される先の媒質である空気(屈折率1.0)との屈折率差を小さくすることができる。また、光が取り出される界面における屈折率差を小さくすることで、当該界面での光反射率を小さくすることができる。従って、発光装置100の外部への光取り出し効率を高めることができる。ここで、母材51と第1充填剤52との屈折率差は、0.03以上あれば、第1充填剤52を露出させることで発光装置100の光取り出し効率を高めることができる。
なお、発光装置100の光取り出し効率が向上するメカニズムの詳細については後記する。
【0037】
また、発光装置100の上面である遮光性部材4の上面4a及び透光性部材の上面5aに複数の突起を設けることで、上面が他の部材と接触した場合に点接触となるため、接触した他の部材のタック(付着)を防止することができ、製造する際や実装する際の発光装置100の取り扱いが容易となる。
【0038】
ワイヤ6は、発光素子1や保護素子などの電子部品と、リード電極31〜34とを電気的に接続するための配線である。ワイヤ6の材質としては、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Pt(白金)、Al(アルミニウム)などの金属、及び、それらの合金を用いたものが挙げられるが、特に、熱伝導率等に優れたAuを用いるのが好ましい。なお、ワイヤ6の太さは特に限定されず、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0039】
[発光装置の動作]
次に、発光装置100の動作について、
図1C及び
図2A〜
図2Cを参照して説明する。
図2Aは、第1実施形態に係る発光装置における透光性部材及びフィラーの一部を示す断面図である。
図2Bは、従来の発光装置における透光性部材及びフィラーの一部を示す断面図である。
図2Cは、第1実施形態に係る発光装置において、透光性部材及び遮光性部材の上面での光反射を説明するための断面図である。
なお、発光装置100の光取り出し面である透光性部材5の上面5aは、空気と接しているものとして説明する。
【0040】
リード電極31〜34に外部電源を接続することで、発光素子1が発光する。発光素子1からの光は、透光性部材5内を伝播して、直接又は凹部2aの底面や内側面で反射されて、上面5aから外部に取り出される。上面5aにおいて、発光素子1からの光は、一部は母材41と空気との界面を通って外部に取り出される。また、上面5a近傍に第1充填剤52の粒子が配置されている部分では、発光素子1からの光は、第1充填剤52と空気との界面を通って外部に取り出される。
【0041】
ここで、第1充填剤52を通って外部に光が取り出される場合について説明する。
図2Aに示すように、第1充填剤52の表面が母材51から露出している場合は、透光性部材5内を上方に伝播する光L1は、第1充填剤52と空気との界面を通って外部に取り出される。
また、
図2Bに示すように、第1充填剤52の表面が母材51で被覆されている場合は、透光性部材5内を上方に伝播する光L2は、母材51と空気との界面を通って外部に取り出される。
【0042】
一般に、屈折率差のある界面に光が入射した際には、界面への入射光は、屈折率差に応じて一部が反射される。界面を挟んだ2つの媒体の屈折率をn
1,n
2とすると、その界面に垂直に入射する光の反射率Rは、式(1)で表すことができる。
R=(n
1−n
2)
2/(n
1+n
2)
2 ・・・(1)
【0043】
従って、発光装置100の光取り出し面が空気と接する場合には、光取り出し面である透光性部材5の上面5aの最表面が、母材51である樹脂よりも、より低屈折率、すなわち空気との屈折率差の小さい第1充填剤52とする方が、空気との界面での光反射を低減することができる。その結果として、発光装置100の光取り出し効率を高めることができる。
また、相対的に高屈折率な媒体から低屈折率な媒体に光が伝播する場合は、スネルの法則に基づいて、界面で光が全反射される。透光性部材5と空気との界面における屈折率差を小さくすることで、当該界面で全反射される光量を低減することができる。つまり、全反射を低減する点からも、外部への光取り出し効率を高めることができる。
【0044】
また、発光装置100を、例えば、画像表示装置の画素として用いる場合において、発光装置100の上面に、蛍光灯などの照明光が外光として入射することがある。発光装置100の上面が平坦面である場合は、当該上面は光沢面となり、外光の多くの成分が正反射(鏡面反射)される。
図2Cに示すように、外光として光L3が透光性部材5の上面5aに入射した場合、その多くが光L5のように正反射される。このため、外光が正反射される方向(光L5の進行方向)から観察すると、外光の正反射光成分の影響で発光装置100の表面が明るく光って見え、発光装置100の本来の出射光の明暗のコントラストが低下する。すなわち、表面のいわゆる「テカリ」によって、画像表示装置が表示する画像の視認性が低下する。
【0045】
ここで、上面5aに第1充填剤52の粒径に起因する突起を設けることで、光L3を光L4のように拡散反射させることができる。言い換えれば、正反射光成分を低減することができる。このため、外光が正反射される方向から観察しても、発光装置100からの出射光の明暗のコントラストの低下を低減することができる。
【0046】
なお、遮光性部材4の上面4aにおいても透光性部材5の上面5aと同様に、外光である光L6は、一部が上面4aで光L8のように正反射される。ここで、上面4aに第2充填剤42の粒径に起因する突起を設けることで、光L6を光L7のように拡散反射させることができる。このため、外光が正反射される方向(光L8の進行方向)から観察しても、発光装置100からの出射光の明暗のコントラストの低下を低減することができる。
【0047】
なお、上面5a及び上面4aの表面粗さは、前記した範囲とすることが好ましい。表面が粗過ぎると、発光装置100の上面5a及び上面4aが白濁して見え、発光装置100の明暗のコントラストが却って低下することがある。第1充填剤52及び第2充填剤42の粒径を前記した範囲とし、上面5a及び上面4aに、第1充填剤52及び第2充填剤42に起因する突起を設けることで、表面粗さを適切な範囲とすることができる。
【0048】
[発光装置の製造方法]
次に、第1実施形態に係る発光装置の製造方法について、
図3〜
図6Bを参照して説明する。
図3は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図4Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のパッケージ準備工程で準備されるパッケージの構成を示す断面図である。
図4Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の発光素子実装工程を示す断面図である。
図4Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の樹脂供給工程を示す断面図である。
図4Dは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の樹脂硬化工程を示す断面図である。
図4Eは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のブラスト加工処理工程を示す断面図である。
図5Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のブラスト加工処理工程において、研磨剤を投射する方向の第1の例を示す平面図である。
図5Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のブラスト加工処理工程において、研磨剤を投射する方向の第2の例を示す平面図である。
図5Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のブラスト加工処理工程において、研磨剤を投射する方向の第3の例を示す平面図である。
図6Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のブラスト加工処理工程において、第1工程を示す断面図である。
図6Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法のブラスト加工処理工程において、第2工程を示す断面図である。
なお、
図4A〜
図4Eにおいて、パッケージ2は、凹部2aの底面2b及び側壁を構成する上部のみを示し、下部は省略している。
【0049】
第1実施形態に係る発光装置100の製造方法は、パッケージ2に発光素子1が載置された後に、発光素子1を覆う透光性部材5を形成する工程と、透光性部材5及びパッケージ2のそれぞれの上面にブラスト加工処理を施す工程と、を含む。透光性部材5を形成する工程において、透光性部材5は、母材51として透光性樹脂を用い、母材51よりも屈折率の低い透光性の第1充填剤52の粒子を含有した樹脂材料を用いて形成される。ブラスト加工処理を施す工程によって、透光性部材5の上面において、第1充填剤52の粒子の一部を透光性部材5の母材51から露出させる。
第1実施形態に係る発光装置100の製造方法は、パッケージ準備工程S11と、発光素子実装工程S12と、透光性部材形成工程S13と、ブラスト加工処理工程S14と、を含んでいる。また、透光性部材形成工程S13は、樹脂供給工程S131と、樹脂硬化工程S132と、を含んでいる。
【0050】
パッケージ準備工程S11は、リード電極3が底面2bに配置され、遮光性部材4を側壁として囲まれて上方に開口する凹部2aを有するパッケージ2を準備する工程である。
具体的には、本工程において、まず、板金をプレス加工で穴抜きすることで、リード電極3の外形を備えたリードフレームを形成する。次に、遮光性部材4の形状に相当する空洞を有する上下金型でリードフレームを挟み込む。次に、金型内の空洞に、母材41となる樹脂に第2充填剤42を含有した樹脂材料を注入し、樹脂材料を固化又は硬化後に金型から取り出すことで、遮光性部材4がリード電極3と一体的に形成される。次に、遮光性部材4の側面から突出しているリード電極3を、遮光性部材4の側面及び下面に沿って折り曲げることで、パッケージ2が準備される。
なお、本工程で準備されるパッケージ2において、遮光性部材4の上面4a近傍に配置されている第2充填剤42は、母材41で被覆されている。
【0051】
発光素子実装工程S12は、パッケージ2の凹部2a内に、発光素子1を実装する工程である。本工程において、発光素子1(11〜13)は、リード電極33上にダイボンドされ、ワイヤ6を用いて、各発光素子1が対応するリード電極31〜34と電気的に接続される。
【0052】
透光性部材形成工程S13は、凹部2a内に発光素子1を実装された後に、凹部2a内に発光素子1を被覆する透光性部材5を形成する工程である。前記したように、透光性部材形成工程S13は、樹脂供給工程S131と樹脂硬化工程S132とを含んでいる。
【0053】
まず、樹脂供給工程S131において、母材51となる未硬化の樹脂に第1充填剤52(52a,52b)を含有した樹脂材料を、例えば、ディスペンサ71を用いたポッティング法で凹部2aに供給する。
次に、樹脂硬化工程S132において、ヒーターやリフロー炉などの加熱装置72を用いて加熱することで、樹脂材料を硬化させる。これによって、透光性部材5が形成される。
なお、本工程で形成される透光性部材5において、上面5a近傍に配置されている第1充填剤52は、母材51で被覆されている。
【0054】
ブラスト加工処理工程S14は、透光性部材5の上面5a及び遮光性部材4の上面4aにブラスト加工処理を施す工程である。本工程により、上面5a近傍に配置されている第1充填剤52及び上面4a近傍に配置されている第2充填剤42を露出させ、上面5aに第1充填剤52に起因する突起が形成されるとともに、上面4aに第2充填剤42に起因する突起が形成される。
第1充填剤52及び第2充填剤42が露出するようにブラスト加工処理を施すことで、上面5a及び上面4aが微細に荒らされるため、上面5a及び上面4aの光拡散性が向上し、これらの面において反射防止効果を得ることができる。
【0055】
ブラスト加工処理は、ウェットブラスト法で行うことが好ましく、例えば、純水に研磨剤74を含有させたスラリーをノズル73から加工対象面に投射することで行われる。ウェットブラスト法は、ドライブラスト法に比べて、加工対象物に対する研磨剤74による衝撃を小さくすることができる。このため、第1充填剤52や第2充填剤42に用いられる無機物の粒子に大きな損傷を与えずに、比較的に軟質な樹脂材料を選択的に削り取ることで除去することできる。また、ウェットブラスト法によれば、より小径の研磨剤74を用いることができるため微細な加工に適している。このため、透光性部材5の上面5aや遮光性部材4の上面4aに粗い凹凸を形成することなく、第1充填剤52や第2充填剤42の表面を被覆する母材51及び母材41を除去することができる。これによって、上面5a及び上面4aに、それぞれ第1充填剤52の粒子及び第2充填剤42の粒子が露出して、第1充填剤52の粒子及び第2充填剤42の粒子に起因する突起を形成することができる。
【0056】
具体的には、上面5a近傍の第1充填剤52の上方を被覆する母材51及び上面4a近傍の第2充填剤42の上方を被覆する母材41を除去する際に、第1充填剤52及び第2充填剤42ができる限りそれぞれ母材51及び母材41から剥離しないように、ブラスト加工処理を行うことが好ましい。
具体的には、研磨剤74の粒径は、3μm以上14μm以下程度とすることが好ましい。また、ウェットブラスト法により、純水に研磨剤74を含有させたスラリーを用いる場合、スラリーにおける研磨剤74の含有量は、5体積%以上30体積%以下程度とすることが好ましい。
また、研磨剤74は、ブラスト加工処理によって除去される母材51及び母材41よりも硬度の高いものが好ましく、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、ステンレス、ジルコニア(ZrO
2)、ガラスなどを挙げることができる。
【0057】
また、研磨剤74を含有するスラリーの投射角度73aは、加工処理の対象面である上面5a及び上面4aに対して、15°以上45°以下とすることが好ましく、30°近傍とすることがより好ましい。
加工処理の対象面に対して垂直(90°)に近い投射角度73aで研磨剤74を投射すると、研磨剤74が母材41や母材51に突き刺さり、ブラスト加工処理後のパッケージ2に残存し易くなる。また、水平に近い投射角度73aで研磨剤74を投射すると、研磨剤74で母材41や母材51を除去する効率が低下することがある。従って、投射角度73aを前記した範囲とすることで、母材51及び母材41を効率よく除去することができる。
【0058】
また、ウェットブラスト法では、前記したスラリーを圧縮空気とともに噴射銃のノズル73から加工処理の対象面に向かって噴射させる。このときの圧縮空気の圧力(噴射銃のガン圧)は、ノズル73の形状や投射角度73a、研磨剤74の材質や形状、粒径などによって最適値は異なるが、例えば、0.1MPa〜0.5MPa程度とすることができる。
【0059】
また、前記した投射角度73aで研磨剤74を、平面視で一方向D1のみから投射すると、第1充填剤52の片側(
図6Aにおいて、左側)の母材51が除去され、反対側の母材51が残存し易くなる。このため、方向D1から研磨剤74を投射した後で、ノズル73の向きを変更して、反対方向(
図6Bにおいて、右側)である方向D2からも研磨剤74を投射することが好ましい。
更に、平面視で、方向D1,D2と直交する方向D3,D4からも研磨剤74を投射するようにしてもよい。また、例えば、平面視で、互いに120°ずつ異なる3方向から、研磨剤74を投射するようにしてもよい。
なお、複数の方向から研磨剤74を投射する場合は、上面5a及び上面4aの全面に対して一方向に処理を施した後に、順次にノズル73の方向を変更して処理を行う。また、ノズル73は、発光装置100に対して相対的に方向を変更すればよく、ノズル73を固定したままで、発光装置100の向きを変更するようにしてもよい。
【0060】
以上は、透光性部材5の上面5aについて説明したが、発光装置100の上面全体に一様にブラスト加工処理を施すことで、遮光性部材4の上面4aについても、第2充填剤42の表面から母材41が除去される。
以上説明したように各工程を行うことにより、発光装置100が製造される。
【0061】
<応用例>
[画像表示装置の構成]
次に、第1実施形態に係る発光装置100の応用例として、発光装置100を用いた画像表示装置について、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。
図7Aは、第1実施形態に係る発光装置を用いた画像表示装置の構成を示す斜視図である。
図7Bは、第1実施形態に係る発光装置を用いた画像表示装置の構成を示す分解斜視図である。
【0062】
画像表示装置200は、回路基板210と、回路基板210の上面に実装されている複数の発光装置100と、発光装置100及び回路基板210の電極や配線部を被覆する保護部材220と、複数の発光装置100の間を覆うように設けられている枠部材230と、を備えている。画像表示装置200は、1個の発光装置100を1画素として用いるものである。
【0063】
画像表示装置200は、3×3のマトリクス状に9個の発光装置100が回路基板210に実装されているが、更に多くの発光装置100が実装されるように構成してもよい。また、例えば、3×3の発光装置100が搭載されている回路基板210を1ユニットとして、複数のユニットを配列して用いることで、更に画素数の多い画像表示装置を構成するようにしてもよい。
【0064】
回路基板210は、複数の発光装置100を機械的に保持するとともに電気的に接続するための基板である。回路基板210は、矩形平板状に形成されている。また、回路基板210は、具体的には、発光装置100を駆動する駆動制御回路や通信回路などを実装したガラスエポキシなどからなる基板で構成することができる。
【0065】
保護部材220は、発光装置100の内部に外気中の雨水や湿気などの水分が浸入することを防止するものである。保護部材220は、シリコーン樹脂などの防水性材料を用いることができ、回路基板210上において、発光装置100の側面を覆うように形成されている。
【0066】
枠部材230は、回路基板210及び回路基板210上の保護部材220を保護するための部材である。枠部材230は、矩形平板状に形成され、回路基板210と略同じ面積で形成されている。また、枠部材230には、個々の発光装置100の面積に対応した開口部230aが、発光装置100と同じ個数だけ形成されている。そして、枠部材230は、開口部230aから発光装置100の上面が露出するように配置され、回路基板210とネジ部材などによって接合される。
また、枠部材230は、金属、樹脂、セラミックスなどを用いて形成することができるが、上面は粗面化するなどして、外光の正反射を抑制するように構成することが好ましい。
【0067】
発光装置100は、前記したように上面側に複数の突起を設けることで、外光の正反射光成分が低減されている。このため、発光装置100を画素として用いた画像表示装置200は、外光の影響が低減され、観察方向に依らずに画素の明暗や色彩を良好に認識できることができる。
【0068】
<第2実施形態>
[発光装置の構成]
次に、第2実施形態に係る発光装置について、
図8A〜
図8Cを参照して説明する。
図8Aは、第2実施形態に係る発光装置の構成を示す斜視図である。
図8Bは、第2実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図8Cは、第2実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図であり、
図8BのVIIIC−VIIIC線における断面を示す。
なお、
図8Cにおいて、2種類の第1充填剤を円形及び菱形で示し、第2充填剤を円形で示し、波長変換物質を五角形で示している。これらの形状は該当する部材の具体的な形状を示すものではなく、充填剤の粒子の種類を区別するために便宜的に用いている。
【0069】
第2実施形態に係る発光装置100Aは、平面視形状が長方形であり、上面側に開口する凹部2Aaを有するパッケージ2Aと、凹部2Aa内に実装される発光素子1と、凹部2Aa内に設けられて発光素子1を封止する透光性部材5Aと、を備えている。また、パッケージ2Aは、リード電極3Aと遮光性部材4Aとを有し、発光素子1は、ワイヤ6を用いて凹部2Aaの底面に設けられているリード電極3Aと電気的に接続されている。また、発光装置100Aは、凹部2Aa内に、保護素子8が実装されている。
なお、保護素子8は、例えば、ツェナーダイオードであり、発光素子1を静電放電による破壊から保護する素子である。
【0070】
第2実施形態に係る発光装置100Aは、第1実施形態に係る発光装置100のパッケージ2と外形形状が異なるパッケージ2Aを備えている。更に、発光装置100Aは、実装されている発光素子1が1個であること、保護素子8が実装されていること、及び、透光性部材5Aに、第1充填剤52(52a,52b)に加えて、波長変換物質53の粒子が含有されていること、が発光装置100と異なる。
【0071】
パッケージ2Aは、リード電極3Aと遮光性部材4Aとから構成されており、平面視で略長方形の外形形状を有し、上面側に開口を有する凹部2Aaが設けられている。凹部2Aaは、発光素子1を実装するための領域であり、凹部2Aaの底面2Abは、リード電極3Aと、遮光性部材4Aとで構成されている。また、凹部2Aaの側壁は、遮光性部材4Aで構成されている。
また、パッケージ2Aの下面は、平坦面であるとともに、リード電極31A,32Aが露出するように設けられており、当該下面が発光装置100Aの実装面となっている。
【0072】
リード電極3Aは、平板状のリード電極31A及びリード電極32Aからなり、互いに離間してパッケージ2Aの底部に設けられている。リード電極31A,32Aは、外周の端部に、下面側が凹むように段差が設けられており、遮光性部材4Aから剥がれ難いように構成されている。
リード電極31A,32Aは、上面の一部が凹部2Aaの底面2Abを構成しており、リード電極31A上に発光素子1がダイボンドされているとともに、リード電極32A上に保護素子8がダイボンドされている。また、発光素子1は、ワイヤ6を介してリード電極31A,32Aと電気的に接続されている。保護素子8は、下面側に設けられている一方の電極がダイボンドされることでリード電極32Aと電気的に接続され、上面側に設けられている他方の電極がワイヤ6を介してリード電極31Aと電気的に接続されている。
【0073】
遮光性部材4Aは、第1実施形態における遮光性部材4と同様の材料を用いて形成することができ、上面4Aaに第2充填剤42の粒子の一部が露出している。
【0074】
透光性部材5Aは、凹部2Aa内に設けられ、発光素子1及び保護素子8を封止している。透光性部材5Aは、母材51に第1充填剤52(52a,52b)に加えて、波長変換物質53の粒子を含有している。透光性部材5Aは、上面5Aaに第1充填剤52の粒子の一部が母材51から露出している。また、波長変換物質53は、主として発光素子1の周囲及び凹部2Aaの底面2Abの近傍に配置され、上面5Aaから露出しないように配置されている。
なお、母材51及び第1充填剤52は、第1実施形態における透光性部材5と同様の材料を用いることができる。
【0075】
波長変換物質53は、発光素子1からの光の一部又は全部を吸収して、異なる波長の光を発することで波長変換する蛍光体である。
例えば、青色光を発する発光素子1と、青色光を吸収して黄色光を発する波長変換物質53とを組み合わせることで、白色光を生成することができる。なお、波長変換物質53は、1種類に限定されず、発光色が異なる複数種類を用いるようにしてもよい。
【0076】
波長変換物質53としては、発光素子1からの光を吸収し、波長変換するものを用いることができる。波長変換物質53は、製造時における未硬化の透光性部材5Aの母材51よりも比重が大きいものが好ましい。波長変換物質53は、未硬化の母材51よりも比重が大きいと、製造時の透光性部材5Aを形成する際に波長変換物質53の粒子を沈降させて、発光素子1やリード電極31A,32Aの表面の近傍に配置することができる。
波長変換物質53を発光素子1やリード電極31A,32Aの表面の近傍に配置することで、波長変換の効率を高めることができる。また、波長変換物質53を上面5Aaから露出しないように配置することで、外気との接触による波長変換物質53の劣化や変質を抑制することができる。
【0077】
波長変換物質53としては、具体的には、例えば、Y
3Al
5O
12:Ceで表されるYAG蛍光体やシリケートなどの黄色蛍光体、あるいは、CaAlSiN
3:Euで表されるCASN蛍光体やK
2SiF
6:Mnで表されるKSF蛍光体などの赤色蛍光体、を挙げることができる。
【0078】
[発光装置の動作]
発光装置100Aは、発光素子1からの光の一部又は全部が、波長変換物質53によって波長変換されて光取り出し面である透光性部材5Aの上面5Aaから外部に取り出される。
なお、発光装置100Aの上面に照射される外光の少なくとも一部が、上面5Aa及び上面4Aaに設けられた複数の突起によって拡散反射されることで、表面の「テカリ」が低減されることは、第1実施形態と同様である。また、透光性部材5Aの上面5Aaから第1充填剤52の一部が露出することで、光取り出し効率が向上することも、第1実施形態と同様である。
【0079】
[発光装置の製造方法]
次に、第2実施形態に係る発光装置の製造方法について、
図8A〜
図8C及び
図9を参照して説明する。
図9は、第2実施形態に係る発光装置の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【0080】
第2実施形態に係る発光装置100Aの製造方法は、パッケージ準備工程S21と、発光素子実装工程S22と、透光性部材形成工程S23と、ブラスト加工処理工程S24と、を含んでいる。また、透光性部材形成工程S23は、樹脂供給工程S231と、波長変換物質沈降工程S232と、樹脂硬化工程S233と、を含んでいる。
【0081】
パッケージ準備工程S21は、パッケージ2Aを準備する工程である。準備するパッケージの形状は異なるが、第1実施形態におけるパッケージ準備工程S11と同様の方法でパッケージ2Aを準備することができる。
なお、本工程で準備されるパッケージ2Aにおいて、遮光性部材4Aの上面4Aa近傍に配置されている第2充填剤42は、母材41で被覆されている。
【0082】
発光素子実装工程S22は、パッケージ2Aの凹部2Aa内に発光素子1を実装する工程である。発光素子1は、第1実施形態における発光素子実装工程S12と同様の方法で行うことができる。
なお、本工程において、凹部2Aa内に保護素子8も実装する。
【0083】
透光性部材形成工程S23は、凹部2Aa内に透光性部材5Aを形成する工程であり、前記したように、樹脂供給工程S231と波長変換物質沈降工程S232と樹脂硬化工程S233とを含んでいる。
【0084】
樹脂供給工程S231は、第1実施形態における樹脂供給工程S131と同様の方法で行うことができる。凹部2Aa内に供給する樹脂材料は、未硬化の母材51に、第1充填剤52と波長変換物質53とを含有するように調製する。また、波長変換物質53及び母材51は、波長変換物質53が未硬化の母材51よりも比重が大きくなるようにそれぞれの材料を選択することが好ましい。
【0085】
波長変換物質沈降工程S232は、樹脂供給工程S231において、凹部2Aa内に未硬化の樹脂材料を供給した後、樹脂材料に含有されている波長変換物質53を沈降させる工程である。具体的には、未硬化の母材51よりも比重の大きな波長変換物質53が、重力によって沈降して、発光素子1やリード電極311,32Aの表面近傍に来るまで放置する工程である。
【0086】
樹脂硬化工程S233は、第1実施形態における樹脂硬化工程S132と同様に行うことができるため、説明は省略する。
【0087】
ブラスト加工処理工程S24は、第1実施形態におけるブラスト加工処理工程S14と同様に行うことができるため、説明は省略する。
なお、波長変換物質53を沈降させない場合は、樹脂供給工程S231後に、速やかに樹脂硬化工程S233が行われる。
以上の工程を行うことで、発光装置100Aを製造することができる。
【実施例】
【0088】
次に、本発明の実施例について説明する。
図1Aに示した形態の発光装置及び
図8Aに示した形態の発光装置を、それぞれ前記した製造方法で作製した。このとき、ブラスト加工処理の条件を変えて、複数のサンプルを作製した。
【0089】
(発光装置の形状及び材料:第1実施形態のサンプル)
・透光性部材:
母材:エポキシ樹脂(屈折率1.53)
第1充填剤:シリカ(SiO
2)(屈折率1.46、粒径1.5μm、含有量40質量%)
・遮光性部材(光吸収性部材):
母材:ポリフタルアミド樹脂
第2充填剤:カーボンブラック(粒径3μm、含有量1質量%)
・パッケージ:
平面視での外形寸法:1辺が3mm
透光性部材の開口径:1辺が2.6mm
・発光素子:青色LED、緑色LED、赤色LEDを各1個実装
【0090】
(発光装置の形状及び材料:第2実施形態のサンプル)
・透光性部材:
母材:シリコーン樹脂(屈折率1.52)
第1充填部材:シリカ(SiO
2)(屈折率1.46、粒径6μm、含有量15質量%)
波長変換物質:YAG系蛍光体
・遮光性部材(光反射性部材):
母材:エポキシ樹脂
第2充填剤:TiO
2(粒径0.3μm、含有量17質量%)
・パッケージ:
平面視での外形寸法:長辺が3mm、短辺が1.4mm
透光性部材の開口径:長辺が2.6mm、短辺が1.0mm
・発光素子:青色LEDを1個実装
【0091】
(ブラスト加工処理の条件:各実施形態のサンプルに共通)
・研磨液(スラリー):
溶媒:純水
研磨剤:アルミナ(Al
2O
3)(粒径3μm(D50)、含有量5体積%)
・投射角度:30°/90°
・投射方向:1方向/2方向/4方向
・ガン圧:0.2/0.3/0.4(MPa)
・加工処理速度:40mm/秒
上記の各条件で、空気圧を加えて研磨液をノズルから霧状に噴射することで、発光装置のサンプルの上面にブラスト加工処理を施した。
【0092】
(評価)
ブラスト加工処理の条件を変えて作製した各サンプルについて、ブラスト加工処理を行わないサンプルを基準としたときの、光出力、上面の光反射防止効果、上面の表面粗さ、フィラー(第1充填剤及び第2充填剤)の脱落の有無、について確認した。
何れの条件でブラスト加工処理を行ったサンプルも、加工面においてフィラーが露出していることが確認された。
ガン圧を高くするほどフィラーの露出量が多くなり、表面からフィラーが脱落しているサンプルも確認されたが、他の条件が同じ場合は、ガン圧が高いほど光出力(光束)が高くなることが確認された。光出力の向上は、第1実施形態の各サンプルで1〜2.9%、第2実施形態の各サンプルで、0.3〜0.9%である。
【0093】
投射角度を90°、すなわち、加工面に垂直に研磨剤を投射した場合は、同じガン圧で比較すると、投射角度を30°とした場合よりもフィラーの露出量が少なかった。
また、投射角度を30°としたときに、一方向から投射した場合は、投射方向に対向するフィラーの面は露出しているが、反対側の面は、フィラー自身の陰になるため、あまり露出していなかった。投射方向を二方向、更には四方向とすることで、フィラーの露出量が増加し、投射角度90°としたときよりも露出量が増加した。投射角度を垂直よりも小さくすることで、研磨剤が樹脂を剥ぎ取り易くなったものと考えられる。投射角度を90°、ガン圧を0.4MPaとしたときのサンプルと、投射角度を30°、ガン圧を0.2MPa、投射方向を四方向としたときにサンプルとが、光出力が同程度に向上することが確認できた。
【0094】
また、各サンプルとも、ブラスト加工処理を施さないサンプルに比べて、外光の反射防止効果があることが、目視で確認できた。
なお、各サンプルとも、上面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、ブラスト加工処理を施してないサンプルと略同程度であった。つまり、ブラスト加工処理によって樹脂部材である透光性部材の本体に対して大きな凹凸ができるようなダメージを与えることなく、フィラーの表面を被覆する樹脂のみが除去されていることが確認できた。
【0095】
[形態1]
基台と、前記基台に載置される発光素子と、前記発光素子を覆う透光性部材と、を備え、前記透光性部材及び前記基台は、それぞれの上面に複数の突起を有し、前記透光性部材は、前記透光性部材の母材よりも屈折率の低い透光性の第1充填剤の粒子を含有し、前記第1充填剤の粒子の一部が、前記透光性部材の上面において前記透光性部材の母材から露出している発光装置。
[形態2]
前記基台は、リード電極及び前記リード電極を固定する遮光性部材を備える、形態1に記載の発光装置。
[形態3]
前記基台は、上面に開口を有する凹部を成し、前記発光素子が前記凹部内に載置され、前記凹部を囲む側壁の上面に前記突起が形成されている、形態1又は形態2に記載の発光装置。
[形態4]
前記第1充填剤と前記透光性部材の母材との屈折率差が、0.03以上である形態1乃至形態3の何れか一項に記載の発光装置。
[形態5]
前記透光性部材及び前記遮光性部材は、母材として透光性を有する樹脂を用いる形態1乃至形態4の何れか一項に記載の発光装置。
[形態6]
前記透光性部材の上面に設けられる前記突起は、前記第1充填剤の粒子に起因する形態1乃至形態5の何れか一項に記載の発光装置。
[形態7]
前記第1充填剤は、空気透過法又はFisher−SubSieve−Sizers―No.で規定される粒径が、0.5μm以上10μm以下である形態6に記載の発光装置。
[形態8]
前記透光性部材の上面は、JIS規格B0601:2013で規定される算術平均粗さRaが、0.095μm以上0.220μm以下である形態1乃至形態7の何れか一項に記載の発光装置。
[形態9]
前記第1充填剤は、SiO
2である形態1乃至形態8の何れか一項に記載の発光装置。
[形態10]
前記透光性部材の母材は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂から選択される材料からなる形態1乃至形態9の何れか一項に記載の発光装置。
[形態11]
前記遮光性部材は、樹脂からなる母材に第2充填剤の粒子を含有し、前記第2充填剤の粒子の一部が、前記遮光性部材の上面において前記遮光性部材の母材から露出しており、前記遮光性部材の上面に設けられる前記突起は、前記第2充填剤の粒子に起因する形態1乃至形態10の何れか一項に記載の発光装置。
[形態12]
前記透光性部材は、前記発光素子からの光を異なる波長の光に変換する波長変換物質の粒子を更に含有し、
前記波長変換物質の粒子は、前記透光性部材の母材から露出しないように設けられている形態1乃至形態11の何れか一項に記載の発光装置。
[形態13]
基台と、前記基台に載置される発光素子と、前記発光素子を覆う透光性部材と、を備える発光装置の製造方法であって、前記基台に前記発光素子が載置された後に、前記発光素子を覆う前記透光性部材を形成する工程と、前記透光性部材及び前記基台のそれぞれの上面にブラスト加工処理を施す工程と、を含み、前記透光性部材を形成する工程において、前記透光性部材は、母材として透光性樹脂を用い、当該母材よりも屈折率の低い透光性の第1充填剤の粒子を含有した樹脂材料を用いて形成され、前記ブラスト加工処理を施す工程によって、前記透光性部材の上面において、前記第1充填剤の粒子の一部を前記透光性部材の母材から露出させる発光装置の製造方法。
[形態14]
前記基台は、リード電極及び前記リード電極を固定する遮光性部材を備える、形態13に記載の発光装置の製造方法。
[形態15]
前記基台は、上面に開口を有する凹部を成しており、前記凹部内に前記発光素子が載置されている、形態13又は形態14に記載の発光装置の製造方法。
[形態16]
前記第1充填剤の粒子は、空気透過法又はFisher−SubSieve−Sizers―No.で規定される粒径が、0.5μm以上10μm以下である形態13乃至形態15の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
[形態17]
前記ブラスト加工処理は、水と研磨剤とを含有するスラリーを投射するウェットブラスト加工処理である形態13乃至形態16の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
[形態18]
前記ブラスト加工処理は、前記透光性部材の上面に対して、15°以上45°以下の角度で前記スラリーを投射する形態17に記載の発光装置の製造方法。
[形態19]
前記ブラスト加工処理は、平面視において異なる2以上の方向から、前記スラリーを順次に投射する形態18に記載の発光装置の製造方法。
[形態20]
前記遮光性部材は、母材として樹脂を用い、当該母材に第2充填剤の粒子を分散した樹脂材料を用いて形成され、
前記ブラスト加工処理によって、前記遮光性部材の上面において、前記第2充填剤の粒子の一部を前記遮光性部材の母材から露出させる形態13乃至形態19の何れか一項に記載に発光装置の製造方法。
[形態21]
前記透光性部材は、前記第1充填剤の粒子に加えて、前記発光素子からの光を異なる波長の光に変換する波長変換物質の粒子を前記透光性部材の母材に更に含有した樹脂材料を用いて形成され、
前記透光性部材を形成する工程において、前記第1充填剤の粒子及び前記波長変換物質の粒子を含有する未硬化の前記樹脂材料を前記凹部内に供給し、前記波長変換物質の粒子が沈降した後で、前記樹脂材料を硬化させる形態13乃至形態20の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。