(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステージ上に載置した測定対象物をカメラで撮影した画像を表示した撮影画像表示画面を用いて測定した結果に基づく判定結果を、測定対象物の撮影画像とは別にリストで一覧表示するようにした画像測定装置において、
測定位置毎の個別判定結果をリストで表示する個別判定結果表示領域と、測定対象物単位の総合判定結果を表示する総合判定結果表示領域を設けて、
個別判定結果と総合判定結果を合わせて表示すると共に、
個別判定結果をクリックすることで再測定が行われるようにしたことを特徴とする画像測定装置。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や2に記載されているような一般的な画像測定機は、一度実行した測定手順を記録しておき、同一形状の測定対象物(ワークとも称する)を測定する際には、記録した測定手順を自動で再現することができるパートプログラム機能を有する。又、特許文献3に記載されているように、測定対象物の測定を行なった後に、測定値が設計値に対して所定の公差以内であるか否かを照合する公差照合機能を有する。通常、画像測定機でパートプログラム機能を使用して複数の同一形状ワークの連続測定を行なう場合、オペレータは、それぞれのワークに対してパートプログラムを実行し、出力される公差判定結果を確認してワークの良否を判定する。
【0003】
公差照合の判定結果(「OK」又は「NG」)の表示は、例えば
図1に示す如く、測定結果の表示領域に測定値や設計値と表記して表示している。しかし、これでは公差判定結果が分かり難いので、特許文献4に記載されているように、測定対象物の画像とは別に判定結果をリストで一覧表示することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公差照合の判定結果は、通常、
図1に示したように、測定結果と共に、「OK」や「NG」等の文字で表示されるため、測定結果が設計値に近いのかそれとも公差範囲ぎりぎりなのか、測定結果が設計値に対して大きいのか小さいのか、などを直感的に理解することが難しい。
【0006】
又、従来の画像測定システムで同一形状ワークの連続測定を行なった場合、その測定結果の推移を確認するには、その画像測定システムに搭載された統計・分析のための機能や、統計・分析機能を有する外部プログラムを使用して、測定結果の解析を別途行なう必要があり、オペレータが測定結果の推移をリアルタイムに確認することが難しかった。
【0007】
これらの問題のため、オペレータがワーク形状の偏りや変遷を確認することは困難であり、例えば、ワークを加工する工具が摩耗するなどして、ワークの加工精度が時間とともに劣化していったとしても、測定を行なうオペレータがその劣化に気付くのは困難で、公差判定結果で「NG」が発生するまで気付くことができなかった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、例えばパートプログラム機能を使用した同一形状の測定対象物の連続測定において、判定結果の詳細と測定結果の推移をオペレータに直感的に分かり易く通知できるようにすると共に再測定を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ステージ上に載置した測定対象物をカメラで撮影した画像を表示した撮影画像表示画面を用いて測定した結果に基づく判定結果を、測定対象物の撮影画像とは別にリストで一覧表示するようにした画像測定装置において、測定位置毎の個別判定結果をリストで表示する個別判定結果表示領域34B1と、測定対象物単位の総合判定結果を表示する総合判定結果表示領域34B2を設け、個別判定結果と総合判定結果を合わせて表示すると共に、個別判定結果をクリックすることで再測定が行われるようにして、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えばパートプログラム機能を使用した同一形状の測定対象物の連続測定において、判定結果の詳細と測定結果の推移をオペレータに直感的に分かり易く通知すると共に再測定を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0013】
図3は、本発明が適用されるマニュアル操作型の画像測定機の全体構成を示す。この画像測定機は、非接触画像計測型の測定機本体1と、この測定機本体1のステージ移動操作をアシストする処理を実行すると共に、必要な測定データ処理を実行するコンピュータシステム2と、測定機本体1に対して必要な測定指令や測定パラメータを与えるための指令入力部3、キーボード32及びマウス33と、各部に安定した電力を供給する電源ユニット4とから構成されている。
【0014】
測定機本体1は、架台11と、この上に装着された、測定対象物であるワーク12を載置するためのステージ13を有する。このステージ13は、X軸駆動軸14及びY軸駆動軸15によりX軸方向及びY軸方向に駆動される。架台11の後端部には上方に延びるフレーム17が固定されている。このフレーム17にカメラユニット18が支持されている。このカメラユニット18は、Z軸駆動軸19により、フレーム17に形成されたガイドレールに沿ってZ軸方向に移動可能になっている。カメラユニット18の内部には、ステージ13を上部から撮影するように、カメラ(例えばCCDカメラ等)20が取り付けられている。カメラ20の下端近傍には、ワーク12を照明するリング状の照明装置21が備えられている。
【0015】
コンピュータシステム2は、コンピュータ本体31、キーボード32、マウス33及びディスプレイ(例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等)34を備えて構成されている。コンピュータ本体31を中心とするこのシステムは例えば、
図4のように構成されている。カメラ20で捉えられたワーク12の画像信号は、AD変換部35でデジタル画像データに変換され、画像メモリ36に格納される。画像メモリ36に格納されたデジタル画像データは、表示制御部37の動作によりディスプレイ34に表示される。キーボード32及びマウス33からのオペレータの指令は、インターフェイス(I/F)38を介してCPU39に伝えられる。CPU39は、オペレータの指令又は、プログラムメモリ40に格納されたパートプログラムに従って測定処理を実行する。ワークメモリ41は、CPU39の各種処理のための作業領域を提供する。
【0016】
また、ステージ13に対するカメラ20のX軸、Y軸、Z軸方向の位置をそれぞれ検出するために、X軸エンコーダ42、Y軸エンコーダ43及びZ軸エンコーダ44が設けられている。これらのエンコーダ42〜44の出力は、CPU39に取り込まれる。照明制御部45は、CPU39で生成された指令値に基づいてアナログ量の指令電圧を生成し、照明装置21を駆動する。
【0017】
以下、参考形態及び本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
リスト中の判定結果を指定したときに、対応する撮影画像表示画面上の測定位置を強調表示するようにした第1参考形態の処理手順を
図5に、そのディスプレイ34上の表示例を
図6に示す。
【0019】
この第1参考形態においては、まずステップ100で測定機本体1のステージ13上に測定対象物(ワーク12)を載置する。
【0020】
次いでステップ110で、測定機本体1に取り付けられたカメラ20でワーク12を撮像する。
【0021】
次いでステップ120で、
図6の左上に示すカメラ20からの撮影画像(ワーク12の拡大画像)を表示した撮影画像表示画面34Aに対して、任意の要素及びエッジ検出ツールを選択して測定を行なう。
【0022】
その際、測定を行なう毎に、公差判定結果を含む測定結果の情報を記録していき(ステップ130)、オペレータが随時、把握可能な公差判定結果のリスト34Bを作成する(ステップ140)。
【0023】
ステップ150で測定終了と判定されるまで、ステップ160で次の測定位置へ移って、ステップ120乃至140を繰り返す。
【0024】
公差判定結果は、例えばOKは緑、NGは赤と、色を変えて表示することができる。
【0025】
ステップ150で測定終了と判定された後、ステップ170で、作成した公差判定結果のリスト34Bに表示された任意の判定結果を含む測定結果(
図6では一番上のID1)をオペレータが指定すると、ステップ180で対応する撮影画像表示画面34A上に表示された測定位置(
図6ではLine−1)を例えばハイライトで強調表示する。
【0026】
これにより、1画面内の複数の測定結果(
図6ではID1の他、ID2:Circle1、ID3:Line−2、ID4:Distance−1、ID5:Circle−2の5つ)が表示され、指定した測定結果(ここではID1)の撮影画像表示画面34A中での選択が困難な場合でも、リスト化された公差判定結果を含む測定結果を選択することで、リスト34B中の測定結果に対応する撮影画像表示画面34A中の測定位置を容易に知ることができ、オペレータによる測定結果の選択ミスを未然に防ぐことができる。
【0027】
この第1参考形態においては、
図2に示す如くリスト34Bを、測定位置毎の公差判定結果の詳細を示す個別判定結果表示領域34B1と、ワーク12単位の総合判定結果を示す総合判定結果表示領域34B2で構成し、個別判定結果だけでなく総合判定結果(図ではNG)も表示するようにしているので、総合判定結果を極めて容易に知ることができる。
【0028】
本参考形態においては、更に、総合判定結果表示領域34B2中でNGの個数もカッコ内に表示しているので、NGの程度も知ることができる。
【0029】
なお、
図7に示す本発明の実施形態の如く、測定結果の全体数(ここでは5)を分母とし、NG個数(ここでは2)を分子で示すことによって、測定結果全体に対するNG数の割合も分かるようにすることができる。
【0030】
又、第1参考形態においては、カメラ20からの撮影画像34Aとリスト34Bに加えて、測定対象物の全体を示す測定対象全体
図34Cも表示しているので、測定対象物全体に対する撮影画像(34A)の位置を容易に知ることができる。なお、測定対象全体
図34Cは省略することもできる。
【0031】
次に、測定結果選択時の再測定を容易とした本発明の実施形態を詳細に説明する。
図8は本実施形態の処理手順、
図9はそのディスプレイ34上の表示例を示したものである。
【0032】
図5と同じステップ100乃至150を行なって測定を終了した後、ステップ270で撮影画像表示画面34A中に表示された測定結果(
図9では、Line−1)をクリックすると、ステップ280で、
図9に示す如く、測定結果の詳細(ここではX、Y座標、投影角度、真直度)を表示する。測定結果が表示されている間は、詳細表示をクリックすることにより再測定を行う(ステップ290)。再測定を実施するに際しては、測定時に使用した検出ツールの検出位置の編集(測定開始時に手動入力した設計値の入れ直し)や、公差判定結果に係わる設計値、上限値/下限値の編集を可能とし、測定結果の更新が行なえる状態とする。
【0033】
本実施形態によれば、撮影画像表示画面34A中に表示される測定結果をクリックするだけで、再測定を行って作業効率を向上することができる。
【0034】
なお、撮影画像表示画面34A中に表示される測定結果の代わりに、リスト34Bの個別判定結果表示領域34B1中に表示される測定結果や判定結果を指定して、再測定を行うこともできる。
【0035】
次に、測定結果とステージ位置とをリンクさせて、表示されている撮影画像表示画面34A中に測定位置が無い場合にステージ移動のナビゲートを可能とした第2参考形態を詳細に説明する。
図10は、第2参考形態の処理手順を、
図11はそのディスプレイ34上の表示例を示したものである。
【0036】
第1参考形態と同様のステップ170終了後、ステップ372に進み、指定(選択)した測定結果(ここではID5)が、撮影画像34Aの現在の表示画面内にあるか否かを判定する。判定結果が否である場合にはステップ374に進み、ステージ移動のナビゲート画面(ここではID5へのX軸方向及びY軸方向の移動距離)を画面上に表示してステージ移動(ステップ376)を促す。なお、残り距離の情報は、ステージ移動に合わせて更新することができる。
【0037】
ナビゲートは
図11のように残り距離を数値で表示するだけでなく、例えばクロスヘアラインの交点が撮影画像表示画面34Aの中心となるよう移動するように提示したり、あるいは矢印等で移動方向を直接表示することも可能である。又、CNC等自動制御型画像測定機の場合には、ステップ376のステージ移動を自動的に行うことができる。
【0038】
ステージ移動により、指定(選択)した測定結果が表示中の画面内に入るか、又は指定(選択)した測定結果が表示中の画面内にあるとステップ372で判定されたときには、ステップ380に進み、画面上に表示された測定結果を例えばハイライトで強調表示する。
【0039】
本参考形態によれば、リスト上の判定結果を含む測定結果を指定(選択)することで、対応する測定位置への移動がナビゲートされるため、作業効率を向上させることができる。
【0040】
なお前記参考形態及び実施形態においては、いずれも、総合判定結果表示領域34B2で総合判定結果が、色分け、及び、OK又はNGの文字とNG数により表示されていたが、
図12(A)(OKの場合)、(B)(NGの場合)に示す第3参考形態の如く、総合判定結果表示領域34B2内に、公差範囲MIN〜MAXに対する測定値の位置を、例えば図中で左右に動く縦線でなるメーター指針34Dを用いてメーター状に表示することもできる。これにより、オペレータは公差判定結果の詳細、即ち、測定結果が設計値に近いのかそれとも公差範囲ぎりぎりなのか、測定結果が設計値に対して大きいのか小さいのか、などを直感的に理解することができる。
【0041】
更に、前回の測定結果に対する今回の測定結果の値の増減方向を示す矢印マーク34Eを合わせて表示することもできる。これにより、オペレータは測定結果の推移をリアルタイムに確認することができる。
【0042】
あるいは、
図13(A)(OKの場合)、(B)(NGの場合)に示す第4参考形態のように、総合判定結果表示領域34B2内に、測定結果の推移を示すトレンドグラフ34Fを背景として表示することもできる。この際、図中に示したように最大値MAXと最小値MINの限界(上限値34G、下限値34H)を合わせて表示すれば、トレンドだけでなく上限値、下限値に対する関係も容易に把握することができる。なお、トレンドグラフ34Fのみとしても良い。
【0043】
又、
図14(A)(OKの場合)、(B)(NGの場合)に示す第5参考形態のように、総合判定結果表示領域34B2内にOKの数、NGの数、測定エラーの数を合わせて表示することもできる。なお、総合判定結果がOKとなるのが、個別判定結果が全てOKである場合のみである時には、
図14(A)に示すOKの場合は右側の表示を省略して見易くすることもできる。又、エラー表示は省略することもできる。なお、エラーを無視しても良い場合には、エラー個数の表示も不要である。
【0044】
前記参考形態及び実施形態においては、いずれも、リスト34B中に個別判定結果と総合判定結果が表示されているので、両者の比較対象が容易である。なお、個別判定結果と総合判定結果を別ウィンドウに表示させることも可能である。
【0045】
又、前記参考形態及び実施形態においては、いずれも、リスト34Bに公差判定結果が表示されていたが、リストに表示する判定結果は、これに限定されない。更に、リスト34Bの表示位置も前記参考形態及び実施形態に限定されず、例えば撮影画像表示画面34Aの隅に表示することもできる。
【0046】
本発明の適用対象は画像測定機に限定されず、例えば画像ユニットを搭載した測定顕微鏡等にも適用することができる。