(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の基材の少なくとも一方は、スズ(Sn)が添加された酸化インジウム(ITO)、酸化スズ、アンチモン(Sb)が添加された酸化スズ(ATO)、フッ素(F)が添加された酸化スズ(FTO)、アルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(AZO)、及びガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)から選ばれる化合物を有する導電性基材である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
前記正極は、前記一対の基材の一方の基材の表面に配置され、前記負極は、前記一対の基材の他方の基材の表面に配置されている請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
前記一方の基材は導電性基材であり、前記他方の基材は光透過性の導電性基材であり、かつ、前記正極及び前記負極が互いに向き合うように配置されている請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
前記遷移金属の酸化物は、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、タングステン(W)、及びバナジウム(V)からなる群より選ばれる金属の酸化物である請求項6に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明するが、これらの説明及び実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の実施形態の範囲を制限するものではない。
なお、本明細書全体において、数値範囲で「〜」を用いた場合、各数値範囲にはその上限値と下限値を含むものとする。
【0015】
本発明において、「光透過性」とは、光が進入して通過できる性質をいい、好ましくは、基材に光が入射した場合において、基材の一方面から入射した光量に対する他方面より出射した光量の比率が5%以上である性質をいう。
【0016】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、一対の基材の間に電解質が封入されており、一対の基材の間において電解質と接触する位置に正極と負極とが配設されている。そして、一対の基材の少なくとも一方(好ましくは両方)には、光透過性を有する基材が配設されており、一対の基材の間には、電極として特に、n型半導体材料より選ばれる負極材料を含み、電解質と接触させて配置された正極と、リチウム含有金属酸化物より選ばれる負極材料を含み、電解質と接触させて配置された負極と、を備えている。
【0017】
本発明の一実施形態においては、一対の基材の一方又は両方が光透過性を有しているので、電池内に太陽光等の光が入射し、正極及び負極は、光透過性を有する基材を通して入射した光に曝される。この場合、負極はn型半導体材料を有しているため、入射した光を吸収して電子を発生し、正極では結晶構造中からリチウムイオンが電荷質中に移動する。そして、負極の例えばTiO
2等の結晶構造中に正極側から移動してきたリチウムイオンが入り込み、充電作用を発現する。この充電作用は、負極のn型半導体材料と組み合わせられる正極材料の種類によって充電効率が異なり、正極に遷移金属の酸化物を用いた場合に充電効率がより高められる。
逆に、光が遮られた暗時には、負極の結晶構造中からリチウムイオンが電解質中に移動し、正極の結晶構造に入り込むことにより、外部回路に高電圧の電流を取り出すことが可能になる。
このように、本発明の実施形態に係るリチウム二次電池は、正負極の2つの電極を備えた構造で太陽電池と二次電池の両機能を兼ね備え、光の照射の有無によって充放電を繰り返し行うことができる光充電型リチウムイオン二次電池である。
【0018】
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上記のように充電源が不要であることから、従来より電源確保が困難な状況又は場所での使用が可能である。また、光透過性を有することから、例えば透明性が求められる用途への適用も可能である。そのため、従来型のリチウムイオン二次電池の代替のみならず、非常用電源、太陽電池としての利用が可能であり、また、家屋又は車両等の窓材、屋根、車両のボディーなどの用途への適用も期待される。
【0019】
本発明の一実施形態であるリチウムイオン二次電池について、
図1〜
図3を参照して具体的に説明する。但し、本発明は、以下に示す実施形態に制限されるものではない。
【0020】
本発明の一実施形態であるリチウムイオン二次電池は、光充電が可能なリチウムイオン二次電池であり、
図1に示す構造に形成されていてもよい。
図1に示すように、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池10は、導電性透明基材である2枚のFTO(Fluorine-doped tin oxide,フッ素(F)が添加された酸化スズ)基材11,13と、FTO基材11の一方面に配置された負極をなす負極膜15と、FTO基材13の一方面に配置された正極をなす正極膜17と、負極膜15と正極膜17との間に配置された六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)電解液19と、を備えている。
【0021】
−基材−
FTO基材11,13は、ガラス基材の一方面にフッ素が添加された酸化スズからなる光透過性の導電膜(FTO膜)を有する導電性基材(透明基材)であり、太陽光などの光に曝された場合に、光がFTO基材を通過して電池内に入射されるようになっている。電池外部より光が入射することにより、負極に存在するn型半導体材料は光に曝され、負極で電子が発生し、充電機能が発現する。すなわち、正極から負極に移動してきたリチウムイオン(Li
+)が負極材料の結晶中に入り込み、充電される。これにより、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、外部電源による充電を不要とすることができる。
【0022】
リチウムイオン二次電池を形成する一対の基材は、2つの基材のうちの少なくとも一方が光透過性を有していれば、負極への光照射が可能であり、充電機能を維持できる。すなわち、一対の基材は、一方が光透過性を有し、他方が光非透過性であってもよい。充電効率を向上させる観点から、一対の基材のうち、少なくとも負極側に配置される基材が光透過性とされた態様が好ましい。また、同様の理由から、正極側及び負極側の両方に配置される基材が光透過性とされた態様がより好ましい。本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、
図1に示すように一対の基材の両方が光透過性の基材で構成されている。
【0023】
リチウムイオン二次電池を形成する一対の基材は、正極が一対の基材の一方の表面に配置され、負極が一対の基材の他方の表面に配置されている。具体的には、導電性基材の少なくとも一方の表面に正極が配置された正極基材と、光透過性の導電性基材の少なくとも一方の表面に負極が配置された負極基材と、からなる一対の基材が配置されていることが好ましい。この場合、正極基材と負極基材とは、それぞれの基材に配置された正極及び負極を互いに向き合わせて配置されることが好ましい。これにより、正極及び負極を電解液に接触させた状態とすることができる。
【0024】
光透過性を有する基材としては、ガラス基材、セラミックス基材、アクリル樹脂等の樹脂基材等を挙げることができる。また、光非透過性の基材としては、金属板、着色された樹脂基材等を挙げることができる。
【0025】
基材は、負極材料を含む負極又は正極材料を含む正極が形成された電極基材として用いることができる観点から、導電性を有する基材(導電性基材)であることが好ましい。
「導電性」とは、電圧印加できる程度の電気伝導性を有していればよく、比抵抗が10
6Ω・cm未満である性質をいう。
導電性基材としては、例えば、金属板のほか、所望の基材に導電膜を付設した基材を挙げることができる。導電膜としては、錫(Sn)が添加された酸化インジウム(ITO)、酸化スズ、アンチモン(Sb)が添加された酸化スズ(ATO)、フッ素(F)が添加された酸化スズ(FTO)、アルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(AZO)、ガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)等を含む膜を挙げることができる。
【0026】
上記の中でも、光透過性と導電性を有する基材が好ましく、スズ(Sn)が添加された酸化インジウム(ITO)、酸化スズ、アンチモン(Sb)が添加された酸化スズ(ATO)、フッ素(F)が添加された酸化スズ(FTO)、アルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(AZO)、及びガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)から選ばれる化合物を含む膜を有する導電性基材がより好ましい。具体的には、上記の光透過性を有する基材にITO膜、ATO膜、FTO膜、AZO膜、又はGZO膜を有する導電性基材が好適である。
【0027】
−負極−
負極膜15は、対をなす2つのFTO基材のうち、FTO基材11の一方面に配置されている。負極膜15は、n型半導体材料より選ばれる負極材料を含む負極であり、本実施形態では負極材料として二酸化チタン(TiO
2)が用いられている。本実施形態のリチウムイオン二次電池には、負極膜15が光透過性のFTO基材11の表面に配置されていることにより、負極基材21が設けられている。
【0028】
負極は、負極膜15のように薄膜として基材の表面に設けられていることが好ましい。薄膜とする場合の厚みとしては、光透過性、充電容量の観点から、0.01μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μmである。負極を薄膜に形成する場合の形成方法については後述する。
【0029】
負極に用いられる負極材料としては、n型半導体材料より選ばれる金属化合物が挙げられ、リチウムイオンが入り込んで蓄え得る負極活物質として好適である。n型半導体材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等が含まれる。
【0030】
金属酸化物としては、例えば、酸化コバルト(CoO,Co
3O
4),酸化ケイ素(SiO),酸化ニオブ(Nb
2O
5),酸化ニッケル(NiO),酸化チタン(TiO
2),酸化タングステン(WO
3),酸化バナジウム(V
2O
5),チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12),酸化亜鉛(ZnO),酸化スズ(SnO,SnO
2)等が挙げられる。中でも、n型半導体特性の高い酸化物が好ましく、亜鉛(Zn),ニオブ(Nb),チタン(Ti),タングステン(W),及びバナジウム(V)からなる群より選ばれる遷移金属の酸化物がより好ましく、TiO
2、Nb
2O
5、ZnOは更に好ましい。
【0031】
金属窒化物としては、例えば、Li
3−xM
xN(M=Co,Ni,Cuなど、0<x<3)等が挙げられ、具体例として、Li
3N,Li
2.6Co
0.4N等が挙げられる。
金属硫化物としては、例えば、TiS
2等が挙げられる。
【0032】
また、負極は、負極のn型半導体(例えば負極膜)に、例えば、RuL
2(NCS)
2〔L=2,2’−bipyridyl−4,4’−dicarboxylic acid等〕などの色素が吸着された電極でもよい
【0033】
負極は、
図1に示されるように、簡易な構造にできる観点から、一対の基材のうち、正極が配置されている一方の基材と対向配置されている他方の基材の表面に配置されていることが好ましい。
【0034】
−正極−
正極膜17は、対をなす2つのFTO基材のうち、FTO基材13の一方面に配置されている。正極膜17は、リチウム含有金属酸化物より選ばれる正極材料を含む正極であり、本実施形態では正極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)が用いられている。本実施形態のリチウムイオン二次電池には、正極膜17が光透過性のFTO基材13の表面に配置されていることにより、正極基材23が設けられている。
【0035】
正極は、正極膜17のように薄膜として基材の表面に設けられていることが好ましい。薄膜とする場合の厚みとしては、負極膜と同様に光透過性、充電容量の観点から、0.01μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μmである。正極を薄膜に形成する場合の形成方法については後述する。
【0036】
正極に用いられる正極材料としては、リチウム含有金属酸化物より選ばれる化合物が挙げられ、リチウムイオンを放出する正極活物質として好適である。
【0037】
リチウム含有金属酸化物としては、例えば、LiCoO
2,LiNiO
2,LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2,LiNi
0.5Mn
0.5O
2等の層状構造を有する化合物、LiM
xMn
2−xO
4(M=Cr,Ni等、0≦x<2)で表されるスピネル型構造を有する化合物などが挙げられる。
【0038】
LiM
xMn
2−xO
4(M=Cr,Ni等、0≦x<2)で表されるスピネル型構造を有する化合物の具体例としては、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4等が挙げられる。
LiM
xMn
2−xO
4で表される化合物の中でも、MがNiであり、かつ、0≦x≦1を満たす化合物が好ましく、LiNi
0.5Mn
1.5O
4は特に好ましい。
【0039】
有機硫黄化合物の具体例としては、Li
2S等が挙げられる。
【0040】
正極は、
図1に示されるように、簡易な構造にできる観点から、一対の基材の一方の表面に配置されていることが好ましい。
【0041】
−電解質−
本実施形態のリチウムイオン二次電池の負極基材21と正極基材23との間には、電解質の例である六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)電解液19が封入されている。
【0042】
図1に示されるように、FTO基材11とFTO基材13とは、各基材の負極膜又は正極膜の形成面において負極膜15又は正極膜17の各2辺に沿って平行に配設された両面テープ25a、25bによって貼り合わせられ、2つのFTO基材の短手方向両端面に基材長手方向に長いテフロン(登録商標;以下同じ)シート27a、27bが取り付けられている。このようにして、FTO基材11とFTO基材13との間に両面テープの厚み分に相当する空間が形成され、LiPF
6電解液19が注入されることにより、LiPF
6電解液19は、FTO基材11に配置された負極膜15と、FTO基材13に配置された正極膜17と、の両方と接触されている。
【0043】
本実施形態では、液体の電解質(電解液)を用いた例を示しているが、電解質には特に制限はなく、液状の電解液に限らず、固体状の電解質(固体電解質)も用いることができる。
【0044】
電解液としては、リチウム塩と所望とする溶媒とを含有するリチウム電解液、リチウム塩と所望とする溶媒とイオン液体とを含むイオン液体系リチウム電解液等を用いることができる。リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4等が挙げられる。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フロロエチレンカーボネート、ジフロロエチレンカーボネート等の環状カーボネート、及びジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル等が挙げられる。
【0045】
固体電解質としては、上記リチウム塩とポリエチレンオキシド等とを混ぜ合わせて複合化したポリマーゲル系電解質、固体ポリマー系電解質(例えば、エチレンオキシド結合を有するポリマー)、無機固体電解質(例えば、LiAl
0.3Ti
1.7(PO
4)
3)等が挙げられる。
【0046】
〜リチウムイオン二次電池の形状〜
本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、コイン型、角型、円筒型、パック電池等のいずれの形状であってもよい。
【0047】
〜リチウムイオン二次電池の製造〜
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、例えば
図3に示すように、以下に示す方法で製造することができる。負極膜及び正極膜の付設は、例えば塗布により行うことができる。塗布によることで、薄膜である負極膜及び正極膜が得られる。本実施形態は、負極膜及び正極膜を塗布により付設するものである。
【0048】
本実施形態では、まず初めに、一対の基材として2枚のFTO基材11,13を用意し、FTO基材11の一方面に負極膜15を塗布により成膜し、さらにFTO基材13の一方面に正極膜17を塗布により成膜する。
【0049】
負極膜及び正極膜の成膜は、下記の2つの方法により行ってもよい。
(1)負極材料又は正極材料を所望とする溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、塗布液を基材の所望位置に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させて負極膜又は正極膜とする方法。
(2)負極材料又は正極材料を形成するための前駆化合物(プレカーサー)を所望とする溶媒に溶解又は分散させてプレカーサー溶液を調製し、プレカーサー溶液を塗布液として基材の所望位置に塗布して塗膜を形成し、塗膜を熱処理して前駆化合物を酸化等することで、負極膜又は正極膜とする方法。
プレカーサー溶液としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、和光純薬工業社製の各種分子プレカーサー液(例:酸化チタン薄膜形成用分子プレカーサー液TFLEAD−Ti、酸化コバルト薄膜形成用分子プレカーサー液TFLEAD−Co、酸化リチウム形成用分子プレカーサー液TFLEAD−Li等)などを用いることができる。
【0050】
塗布は、公知の塗布法により行うことができ、例えば、スピンコート法、バーコート法、ディップ法、ロールコート法等により好適に行うことができる。塗布厚は、熱処理後の厚みを考慮して設定することが好ましく、0.01μm〜5μmの厚みとすることができる。
【0051】
次いで、各FTO基材の膜形成面において、基材長手方向における負極膜15又は正極膜17の各両端の2辺に沿って平行に固定化材として両面テープ25a、25bを付与する。固定化材は、2枚のFTO基材を互いに貼り合わせて固定するための接着部材であり、例えば、基材両面に粘着剤層を有する両面テープ、溶融接着を行う熱可塑性樹脂シートなどを用いることができる。固定化材を付設することで、2枚のFTO基材間に電解液を注入するための空間を形成することができる。
【0052】
次に、固定化材が付与された2枚のFTO基材11,13を、固定化材である両面テープ25a、25bが互いに接するようにして重ね合わせ、固定化する。このとき、2枚のFTO基材の短手方向両端部には、基材間に形成された両面テープ25a、25bの厚み分の空間が開口状態にあるので、基材長手方向に長いテフロンシート27a、27bを付設して空間を閉塞する。この場合、例えばはじめに一方の側にテフロンシート27aを付設した後、他方の側より空間にLiPF
6電解液19を注入し、注入後に他方にテフロンシート27bを付設することで閉塞してもよい。
このようにすることで、FTO基材11、13と、両面テープ25a、25bと、テフロンシート27a、27bと、で取り囲まれた空間にLiPF
6電解液19が封入された構造のリチウムイオン二次電池を作製することができる。LiPF
6電解液19は、FTO基材11に配置された負極膜15と、FTO基材13に配置された正極膜17と、の両方と接触した状態となっている。
【0053】
〜変形例〜
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の第1の変形例を
図4を参照して説明する。
リチウムイオン二次電池の他の実施形態として、
図4に示すような円筒型の電池構造を有する形態であってもよい。
図4に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池30は、一対の基材として用意した円弧状のFTO基材(光透過性の導電性基材)31,33のうち、一方の円弧状のFTO基材31の内側の壁面に負極膜35を配置し、他方の円弧状のFTO基材33の内側の壁面に正極膜37を配置し、互いの内側の壁面が向き合うようにして組み合わせて固定することで円筒形状としたものである。本実施形態のリチウムイオン二次電池には、負極膜35が光透過性のFTO基材31の表面に配置されていることにより、負極基材41が設けられており、また、正極膜37が光透過性のFTO基材33の表面に配置されていることにより、正極基材43が設けられている。円筒形状の内側には、電解質として例えば電解液(不図示)が封入されている。円弧状のFTO基材は、円弧状の樹脂基材にFTO膜有する導電性基材である。
【0054】
円筒形状の開口する天部及び底部が閉塞され、円筒形状の内部に電解質として例えば電解液が注入されると、電解液は負極膜35及び正極膜37と接触した状態となり、本実施形態のリチウムイオン二次電池となる。
円筒形状の天部及び底部は、電解液等の電解質が漏れ出ない構造となれば、いずれの方法で閉塞されていてもよい。また、一対の基材、負極膜、正極膜、電解質等の詳細については、既述した実施形態と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0055】
また、本発明のリチウムイオン二次電池の第2の変形例について説明する。
既述の実施形態においては、FTO基材に負極膜又は正極膜を設けた負極基材及び正極基材を互いに貼り合わせて1つの電池構造とした場合を説明したが、絶縁性基材で作製された外装容器を用意し、この外装容器に、既述の実施形態のように、FTO基材に負極膜を付設した負極基材とFTO基材に正極膜を付設した正極基材とをそれぞれ複数組(例えば2組又は3組)設置して並列に繋ぎ、電解液等を封入することで製造された電池構造を有する形態であってもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0057】
(実施例1)
基材として、透明で導電性を有するFTO(Fluorine-doped tin oxide,フッ素(F)が添加された酸化スズ)膜を青板ガラス表面に有するFTO基材(旭硝子社製,20mm×33mm)を4枚用意し、
図3に示すように長方形の基材のFTO膜表面の一部(20mm×20mm)を電極膜成膜用の領域(成膜領域)とした。
【0058】
−負極(負極基材)の作製−
4枚のFTO基材から1枚を負極基材用として用い、そのFTO基材の成膜領域(FTO膜の表面)に酸化チタン薄膜形成用分子プレカーサー液TFLEAD−Ti(チタン錯体溶液;和光純薬工業社製)を50μL滴下し、スピンコート法で塗布して厚み2μmの塗膜を形成した。その後、塗膜を70℃で乾燥させ、チタニアプレカーサー膜を形成した。続いて、マッフル炉にFTO基材を入れ、チタニアプレカーサー膜を温度500℃で30分間熱処理し、負極膜として厚み0.1μmのTiO
2膜を形成した。
【0059】
−正極(正極基材)の作製−
次いで、3枚のFTO基材の各々の成膜領域(FTO膜の表面)に、下記のプレカーサー溶液を順次50μL滴下し、スピンコート法で塗布して厚み1μmの塗膜を形成した。その後、塗膜を70℃で乾燥させ、プレカーサー膜を形成した。続いて、各FTO基材をマッフル炉に入れ、プレカーサー膜を温度550℃で30分間熱処理し、正極膜としてLiNi
0.5Mn
0.5O
2膜、LiCoO
2膜、又はLiNiO
2膜(いずれも厚み0.1μm)を各FTO基材に形成した。
<膜形成用プレカーサー溶液の調製>
(1)LiNi
0.5Mn
0.5O
2プレカーサー溶液の調製
下記の酸化リチウムプレカーサー溶液、酸化ニッケルプレカーサー溶液、及び酸化マンガンプレカーサー溶液を、金属イオン濃度[mmol/g]の比を1:0.5:0.5として混合し、LiNi
0.5Mn
0.5O
2プレカーサー溶液とした。
(2)LiCoO
2プレカーサー溶液の調製
下記の酸化リチウムプレカーサー溶液及び酸化コバルトプレカーサー溶液を、金属イオン濃度[mmol/g]の比を1:1として混合し、LiCoO
2プレカーサー溶液とした。
(3)LiNiO
2プレカーサー溶液の調製
下記の酸化リチウムプレカーサー溶液及び酸化ニッケルプレカーサー溶液を、金属イオン濃度[mmol/g]の比を1:1として混合し、LiNiO
2プレカーサー溶液とした。
【0060】
上記の膜形成用プレカーサー溶液の調製に用いた各プレカーサー溶液は以下の方法で調製した。
<酸化リチウムプレカーサー溶液の調製>
エタノール10gに酢酸リチウム0.6g及びブチルアミン1.8g加えて溶解し、酸化リチウムプレカーサー溶液とした。
<酸化ニッケルプレカーサー溶液の調製>
エタノール10gに酢酸ニッケル1.7g及びブチルアミン2.0g加えて溶解し、酸化ニッケルプレカーサー溶液とした。
<酸化マンガンプレカーサー溶液の調製>
エタノール10gに酢酸マンガン1.9g及びブチルアミン3.3g加えて溶解し、酸化マンガンプレカーサー溶液とした。
<酸化コバルトプレカーサー溶液の調製>
エタノール10gに酢酸コバルト1.9g及びブチルアミン3.3g加えて溶解し、酸化コバルトプレカーサー溶液とした。
【0061】
−電池の作製−
熱処理を終えた2枚のFTO基材の成膜面において、基材長手方向における負極膜又は正極膜の各両端の2辺に沿って平行に200μm厚のポリエステル製両面テープを付設した。そして、付設した両面テープから保護紙を取り除き、負極膜と正極膜とが互いに向き合うように配置された2枚のFTO基材を、それぞれに形成された両面テープが互いに接するようにして重ね合わせ、接着させて固定した。接着後、LiPF
6電解液(SIGMA−ALDRICH社製のヘキサフルオロリン酸リチウム溶液(ジメチルカーボネート中のLiPF
6濃度=1.0モル);電解質)を2枚のFTO基材間の空隙部に注入して電池セルとした。また、電池セルの空隙部の開口状態にある基材短手方向両端には、200μm厚のテフロンシートを差し込んで開口を閉塞し、LiPF
6電解液の漏れと揮発を防止した。
以上のようにして、光充電型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0062】
(比較例1)
実施例1の「−正極(正極基材)の作製−」において、プレカーサー溶液をLi
3Fe
2(PO
4)
3溶液に変更し、正極膜としてLi
3Fe
2(PO
4)
3膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0063】
(評価)
上記の実施例及び比較例にて作製した4種のリチウムイオン二次電池に対して、キセノンランプを用いて負極側から紫外光(波長365nmでの照射強度:10mW/cm
2)を20分間照射し、その後は照射を止めて20分間自然放電するサイクル操作を、5サイクル繰り返して行った。充放電の結果を
図5〜
図8に示す。サイクル操作は、各電池の2枚のFTO基板にそれぞれ導線を取り付けて電圧計に繋ぎ、電圧測定しつつ行った。
なお、
図5〜
図8中の網掛表示された時間帯(例えば横軸が20〜40min、60〜80min等の時間帯)は、照射を停止した暗時であることを示す。
【0064】
図5〜
図7に示されるように、負極にn型半導体材料である二酸化チタンを用い、正極にリチウム含有金属酸化物を用いた実施例の光充電型リチウムイオン二次電池では、紫外光を照射している際には電圧が上昇し、照射を停止した後にも電圧が保たれている状態、つまり充電された状態にあることが確認された。
特にコバルト酸リチウム(LiCoO
2)又はニッケル酸リチウム(LiNiO
2)を正極とした光充電型リチウムイオン二次電池では、LiNi
0.5Mn
0.5O
2を正極とした電池に比べ、照射を停止した後の電圧降下が小さく、良好な充電効果が示された。また、LiCoO
2を正極とした場合には、特に、高い電圧が得られ、かつ、充電効果にも優れた性能を示した。
このように、正極に用いる正極材料の種類により充電電圧が変化することが分かった。
【0065】
これに対して、負極にn型半導体材料(二酸化チタン)を用いたが、正極にはリチウム含有金属酸化物とは異なるリン酸系リチウム化合物を用いた比較例のリチウムイオン二次電池では、
図8に示すように、電圧が低いのみならず、充電効果はほとんど認められなかった。
【0066】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。