特許第6687418号(P6687418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687418シリカ膜形成用組成物、シリカ膜の製造方法およびシリカ膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687418
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】シリカ膜形成用組成物、シリカ膜の製造方法およびシリカ膜
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20200413BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C01B33/12 C
   H01L21/312 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-36077(P2016-36077)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-31040(P2017-31040A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年1月15日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0109028
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張 俊 英
(72)【発明者】
【氏名】尹 熙 燦
(72)【発明者】
【氏名】金 佑 翰
(72)【発明者】
【氏名】盧 健 培
(72)【発明者】
【氏名】李 殷 善
(72)【発明者】
【氏名】郭 澤 秀
(72)【発明者】
【氏名】金 眞 教
(72)【発明者】
【氏名】金 ハヌル
(72)【発明者】
【氏名】羅 隆 熙
(72)【発明者】
【氏名】▲はい▼ 鎭 希
(72)【発明者】
【氏名】徐 珍 雨
(72)【発明者】
【氏名】黄 丙 奎
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−213317(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0093545(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/047362(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/083660(WO,A1)
【文献】 特表2011−515835(JP,A)
【文献】 特開昭56−049540(JP,A)
【文献】 特開2013−001721(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有重合体と、
少なくとも2種の溶媒を含む混合溶媒と、を含み、
前記混合溶媒は、25℃で5mN/m〜35mN/mの表面張力を有し、
前記混合溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、パラメチルアニソール、およびテトラメチルベンゼンからなる群より選択された少なくとも2種を含み、ただし、前記混合溶媒が(1)トルエンおよびジブチルエーテルの双方を含む形態、(2)ヘキサンおよびジブチルエーテルの双方を含む形態、(3)オクタンおよびジブチルエーテルの双方を含む形態、(4)キシレンおよびジブチルエーテルの双方を含む形態、および(5)トルエンおよびキシレンの双方を含む形態は除く、シリカ膜形成用組成物。
【請求項2】
前記混合溶媒は、25℃で15mN/m〜35mN/mの表面張力を有する、請求項1に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項3】
前記ケイ素含有重合体は、ポリシラザン、ポリシロキサザン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項4】
前記ケイ素含有重合体は、重量平均分子量が1,000〜160,000g/molである、請求項1〜のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項5】
前記ケイ素含有重合体は、前記シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1〜30重量%含まれている、請求項1〜のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項6】
基板上に、請求項1〜のいずれか1項に記載のシリカ膜形成用組成物を塗布する段階と、
前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階と、
150℃以上で硬化する段階と、を含む、シリカ膜の製造方法。
【請求項7】
前記シリカ膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンコート法により行われる、請求項に記載のシリカ膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ膜形成用組成物、シリカ膜の製造方法、およびこれにより製造されたシリカ膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の発達に伴い、より小さいサイズの半導体チップへの集積度を高め、性能が改善された高集積および高速化半導体メモリセルに対する研究が行われている。しかし、半導体の高集積化の要求に応じて配線間の間隔が狭くなるにつれ、RC遅延、クロストーク、応答速度の低下などが発生し、これは、半導体デバイスなどのインターコネクション(interconnection)の点で問題を引き起こすことがある。このような問題を解決するために、デバイス間を適切に分離することが必要である。
【0003】
デバイス間を適切に分離するために、ケイ素含有材料で形成されたシリカ膜が半導体素子の層間絶縁膜、平坦化膜、パッシベーション膜、素子間分離絶縁膜などとして幅広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。シリカ膜は、半導体素子だけでなく、表示装置などの保護膜、絶縁膜などにも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第1993−0006901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、シリカ膜は、素子の所定領域にケイ素含有材料をコーティングした後、硬化して形成されるが、膜表面に発生するディフェクト(defect;欠陥)は素子の歩留まりおよび信頼性に良くない影響を与えることがある。
【0006】
本発明の目的は、ディフェクトの発生が少なく、均一な厚さの膜を形成できるシリカ膜形成用組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記シリカ膜形成用組成物を用いてシリカ膜を製造する方法を提供することである。
【0008】
さらに本発明の他の目的は、ディフェクトの発生が少なく、厚さの均一なシリカ膜を提供することである。
【0009】
さらに本発明の他の目的は、前記シリカ膜を含む電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、ケイ素含有重合体と、少なくとも2種の溶媒を含む混合溶媒とを含み、前記混合溶媒は、25℃で5mN/m〜35mN/mの表面張力を有する、シリカ膜形成用組成物を提供する。
【0011】
前記混合溶媒は、25℃で15mN/m〜35mN/mの表面張力を有してもよい。
【0012】
前記混合溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、パラメチルアニソール、およびテトラメチルベンゼンからなる群より選択された少なくとも2種を含んでもよい。
【0013】
前記ケイ素含有重合体は、ポリシラザン、ポリシロキサザン、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0014】
前記ケイ素含有重合体は、重量平均分子量が1,000〜160,000g/molであってもよい。
【0015】
前記ケイ素含有重合体は、前記シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1〜30重量%含まれてもよい。
【0016】
他の実施形態によれば、基板上に、上述したシリカ膜形成用組成物を塗布する段階と、前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階と、150℃以上で硬化する段階と、を含む、シリカ膜の製造方法を提供する。
【0017】
前記シリカ膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンコート法により行われてもよい。
【0018】
また、本発明の他の一実施形態は、ケイ素含有重合体と、25℃で5mN/m〜35mN/mの表面張力を有する、少なくとも2種の溶媒を含む混合溶媒とを、混合する段階を含む、シリカ膜形成用組成物の製造方法である。
【0019】
さらに他の実施形態によれば、上述した製造方法により形成されたシリカ膜を提供する。
【0020】
さらに他の実施形態によれば、前記シリカ膜を含む電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0021】
ディフェクトの発生が少なく、厚さの均一なシリカ膜を形成できるシリカ膜形成用組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0023】
層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする時、これは、他の部分の「直上」にある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直上」にある(隣接して配置される)とする際には、中間に他の部分がないことを意味する。
【0024】
本明細書において、別途の定義がない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、アルキル基、C2〜C16のアルケニル基、C2〜C16のアルキニル基、アリール基(好適にはC6〜C30)、C7〜C13のアリールアルキル基、C1〜C4のオキシアルキル基、C1〜C20のヘテロアルキル基、C3〜C20のヘテロアリールアルキル基、シクロアルキル基(好適にはC3〜C30)、C3〜C15のシクロアルケニル基、C6〜C15のシクロアルキニル基、ヘテロシクロアルキル基(好適にはC2〜C30)、およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0025】
また、本明細書において、別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S、およびPから選択されたヘテロ原子を1〜3個含有したものを意味する。
【0026】
さらに、本明細書において、「*」は、同一または異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係るシリカ膜形成用組成物に関して説明する。
【0028】
本発明の一実施形態に係るシリカ膜形成用組成物は、ケイ素含有重合体と、少なくとも2種の溶媒を含む混合溶媒とを含む。
【0029】
まず、前記混合溶媒に関して説明する。
【0030】
前記混合溶媒は、互いに異なる2種以上の溶媒が混合されたもので、25℃で5mN/m〜35mN/mの表面張力を有している。さらには、混合溶媒は、15mN/m〜35mN/mの表面張力を有していることが好ましく、25mN/m〜35mN/mの表面張力を有していることがさらに好ましく、28〜32mN/mの表面張力を有していることが特に好ましい。前記混合溶媒の表面張力は下記条件下で測定できる。
【0031】
※表面張力の測定条件
□測定機器:Force Tensiometer−K11
□測定温度:25℃
□測定規格:ASTM D1331
なお、組成物中の溶媒とは、固形分を溶質とした場合に、溶質を溶解した成分を指す。このため、単にケイ素含有重合体を溶解するための溶媒のみならず、その他の成分を溶解するのに要した溶媒も含まれる。
【0032】
また、混合溶媒の表面張力は、混合溶媒を構成する各溶媒の表面張力および溶媒の混合重量比を考慮して、適宜設定することができる。
【0033】
一実施形態に係るシリカ膜形成用組成物は、固形分を溶解する溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を使用するが、前記混合溶媒の表面張力が前記範囲を満足するように配合することによって、製造される膜表面のディフェクトの発生を低減させられるだけでなく、膜厚均一性も確保することができる。
【0034】
一方、混合溶媒の表面張力が35mN/mを超えると、膜表面で欠陥が発生しやすく、また、膜厚が不均一になりやすくなる。さらに、混合溶媒の表面張力が5mN/m未満であっても、膜表面で欠陥が発生しやすく、また、膜厚が不均一になりやすくなる。
【0035】
また、後述の比較例1のように、25℃で5mN/m〜35mN/mの表面張力を有する1種の溶媒を用いた場合よりも、2種の溶媒を用いて、この混合溶媒の表面張力を25℃で5mN/m〜35mN/mとすることで、膜欠陥の低減が顕著に向上することを本発明者らは見出した。
【0036】
前記溶媒の非制限的な例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、パラメチルアニソール、テトラメチルベンゼン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0037】
ジエチルベンゼンとしては、o−,m−,p−ジエチルベンゼンが挙げられる。トリメチルベンゼンとしては、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼンなどが挙げられる。トリエチルベンゼンとしては、1,2,3−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0038】
混合溶媒に用いられる溶媒の種類は、2種以上であれば、特に限定されるものではないが、生産性や相溶性の観点から、2〜5種であることが好ましく、2〜3種であることがより好ましく、2種であることがさらに好ましい。
【0039】
混合溶媒の組み合わせとしては、特に限定されるものではないが、キシレンおよびデカリン;ジエチルベンゼンおよびパラメチルアニソール;テトラメチルベンゼンおよびパラメチルアニソール;などが挙げられる。
【0040】
混合溶媒に用いられる各溶媒の25℃での表面張力は、混合溶媒での表面張力を上記範囲内に設定できる限り、特に限定されるものではないが、混合溶媒の表面張力を調整しやすいことから、各溶媒の表面張力が1mN/m〜50mN/mであることが好ましく、5mN/m〜35mN/mであることがより好ましい。
【0041】
一方、前記ケイ素含有重合体は、その構造中にSiを含む重合体である。簡便なコーティング法により形成することができ、また形成される膜が平坦となりやすいことから、ケイ素含有重合体は、ポリシラザン(polysilazane)、ポリシロキサザン(polysiloxazane)、またはこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0042】
具体的には、前記シリカ膜形成用組成物に含まれているケイ素含有重合体は、下記化学式1で表される部分(moiety)を含むポリシラザンを含んでもよい。
【0043】
【化1】
【0044】
前記化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基(好適にはC1〜C30)、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、前記「*」は、連結地点を意味する。
【0045】
ケイ素含有重合体はR〜Rが水素であるパーヒドロポリシラザンであることがより好ましい。
【0046】
前記ポリシラザンは、多様な方法によって製造可能であり、例えば、ハロシラン(例えば、ジクロロシラン)とアンモニアとを反応させて製造することができる。
【0047】
前記シリカ膜形成用組成物に含まれているケイ素含有重合体は、前記化学式1で表される部分(moiety)のほか、下記化学式2で表される部分(moiety)をさらに含むポリシラザン(ポリシロキサザン)であってもよい。
【0048】
【化2】
【0049】
前記化学式2のR〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基(好適にはC1〜C30)、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、前記「*」は、連結地点を意味する。ここで、R〜Rは、水素原子であることが好ましい。
【0050】
このように、前記組成物が前記化学式2の部分をさらに含む場合、前記実施形態により製造されるポリシロキサザンは、その構造中にケイ素−窒素(Si−N)結合部分以外にケイ素−酸素−ケイ素(Si−O−Si)結合部分を含み、該ケイ素−酸素−ケイ素(Si−O−Si)結合部分が熱処理による硬化時に応力を緩和させて収縮を低減することができる。
【0051】
さらに、前記シリカ膜形成用組成物に含まれる前記ポリシラザンまたはポリシロキサザンは、末端部に下記化学式3で表される部分を含んでもよい。
【0052】
【化3】
【0053】
前記化学式3で表される部分は、末端部が水素でキャッピングされている構造で、これは、前記ポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中のSi−H結合の総含有量に対して15〜35重量%含まれてもよい。前記化学式3の部分がポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中に前記範囲に含まれる場合、熱処理時に酸化反応が十分に起こりながらも、熱処理時にSiH部分がSiHとなって飛散することを防止して収縮を防止し、これからクラックが発生することを防止することができる。
【0054】
ケイ素含有重合体の重量平均分子量は、1,000〜160,000g/molであることが好ましく、なかでも3,000〜120,000g/molであることがより好ましい。ケイ素含有重合体の重量平均分子量が1,000g/mol以上であることで、シリカ膜への転化の際に、ケイ素含有重合体が飛散することが少なく、体積収縮や低密度化を防ぐことができる。また、ケイ素含有重合体の重量平均分子量が160,000g/mol以下であることで、組成物の粘度が高くなりすぎず、塗布性が高まるため好ましい。重量平均分子量とは、ポリスチレン換算重量平均分子量であり、ポリスチレンの基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0055】
ケイ素含有重合体の含有量は、膜が硬化できる量であれば特に限定されないが、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して0.1〜50重量%含まれることが好ましく、0.1〜30重量%含まれていることがより好ましく、5〜30重量%含まれていることがさらに好ましい。前記範囲に含まれる場合、シリカ膜形成用組成物が適切な粘度を維持することができ、膜形成時、間隙(void)なく平坦で均等に膜を形成することが可能になる。
【0056】
前記シリカ膜形成用組成物は、熱酸発生剤(thermal acid generator、TAG)をさらに含んでもよい。
【0057】
熱酸発生剤は、前記シリカ膜形成用組成物の現像性を改善するための添加剤で、前記組成物に含まれている重合体が比較的低い温度で現像できるようにする。
【0058】
前記熱酸発生剤は、熱によって酸(H)を発生できる化合物であれば特に限定はないが、90℃以上で活性化して十分な酸を発生し、揮発性の低いものを選択することができる。
【0059】
前記熱酸発生剤は、例えば、ニトロベンジルトシレート、ニトロベンジルベンゼンスルホネート、フェノールスルホネート、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0060】
前記熱酸発生剤は、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して0.01〜25重量%の範囲で含まれることが好ましい。前記範囲で含まれる場合、比較的低い温度で前記重合体が現像できると同時にコーティング性を改善することができる。
【0061】
前記シリカ膜形成用組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0062】
界面活性剤は特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製造)、メガファックF171、F173(大日本インキ(株)製造)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製造)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製造)などのフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製造)などと、その他シリコン系界面活性剤が挙げられる。
【0063】
界面活性剤は、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して0.001〜10重量%の範囲で含まれることが好ましい。前記範囲で含まれる場合、溶液の分散性を改善すると同時に膜形成時の膜厚均一性を高めることができる。
【0064】
前記シリカ膜形成用組成物は、前記ケイ素含有重合体および前記成分(任意成分である熱酸発生剤や前記界面活性剤など)が混合溶媒に溶解した溶液の形態であることが好ましい。
【0065】
本発明の他の実施形態によれば、基板上に、上述したシリカ膜形成用組成物を塗布する段階と、前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階と、150℃以上で硬化する段階とを含むシリカ膜の製造方法を提供する。
【0066】
前記基板は、例えば、半導体、液晶などのデバイス基板であってもよいが、これに限定されるものではない。基板としては特に限定されるものではないが、シリコンウエハ;液晶;ガラス基板;ポリオキシメチレン、ポリビニルナフタレン、ポリエーテルケトン、フルオロ重合体、ポリ−αメチルスチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂基板;金属基板;などが挙げられる。中でも、本発明の効果が顕著に得られることから、半導体、液晶などのデバイス基板であることが好ましい。
【0067】
前記シリカ膜形成用組成物は、溶液工程で塗布することができ、例えば、スピンコート、スリットコーティング、インクジェット印刷などのような方法で塗布することができる。中でも、成膜が均一に行われやすいことから、シリカ膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンコート法による行われることが好ましい。
【0068】
塗布膜厚は、用いられる用途により適宜設定されるが、乾燥後の膜厚で5〜1000nmとなるように塗布することが好ましい。
【0069】
シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階における乾燥は、溶媒が除去できる温度であれば特に限定されないが、100〜500℃、より好ましくは100〜400℃で乾燥することが好ましい。また、乾燥時間としては、1〜5分、より好ましは2〜3分であることが好ましい。
【0070】
ケイ素含有重合体がSi−N結合を含む場合、酸素および水(水蒸気)を含む雰囲気中で加熱するとSi−N結合がSi−O結合に置換されることが知られている。この際の加熱条件としては、硬化を考慮して、150℃以上であることが好ましく、300℃以上であることが好ましい。加熱温度の上限としては、形成されるシリカ膜の平坦度が低下しないよう、通常1000℃以下とする。加熱時間としては特に限定されるものではないが、硬化性などを考慮して、10〜180分とすることが好ましく、30〜120分とすることがより好ましい。硬化段階での雰囲気としては、例えば、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気、酸素と水蒸気の混合雰囲気または不活性雰囲気で行うことが好ましく、特に酸素と水蒸気の混合雰囲気であることがより好ましい。不活性雰囲気としては、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、ネオン雰囲気、またはアルゴン雰囲気などが挙げられる。
【0071】
本発明の他の実施形態によれば、上述した方法により製造されたシリカ膜を提供する。前記シリカ膜は、例えば、絶縁膜、分離膜、ハードコート膜などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の他の実施形態によれば、上述した方法により製造されたシリカ膜を含む電子素子を提供する。前記電子素子は、例えば、LCDやLEDなどのようなディスプレイ素子、または半導体素子であってもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0074】
シリカ膜形成用組成物の製造
合成例1
撹拌装置および温度制御装置付きの2L反応器の内部を乾燥窒素に置換した。そして、乾燥ピリジン1,500gに純水2.0gを注入して十分に混合した後に、これを反応器に入れて5℃に保温した。次に、これにジクロロシラン100gを1時間かけて徐々に注入した後、撹拌しながらアンモニア70gを3時間かけて徐々に注入した。次に、乾燥窒素を30分間注入し、反応器内に残存するアンモニアを除去した。
【0075】
得られた白色のスラリー状の生成物を、乾燥窒素雰囲気中で1μmのテフロン(登録商標)製ろ過器を用いてろ過してろ液1,000gを得た。これに乾燥キシレン1,000gを添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて、溶媒をピリジンからキシレンに置換する操作を計3回繰り返しながら固形分濃度を20重量%に調整し、ポアサイズ0.03μmのテフロン(登録商標)製ろ過器でろ過した。
【0076】
最後に、ロータリーエバポレーターを用いて、水分が5ppm以下の乾燥ジ−n−ブチルエーテルを添加しながら、溶媒をキシレンからジ−n−ブチルエーテルに置換する操作を計3回繰り返しながら固形分濃度を20%に調整し、最後に、ポアサイズ0.03μmのテフロン(登録商標)製ろ過器でろ過して、重量平均分子量(Mw)が7,000のポリシラザン重合体を得た。重量平均分子量は、GPC;HPLC Pump1515、RI Detector2414(Waters社製造)およびColumn:LF804(Shodex社製造)を用いて測定した。
【0077】
実施例1
キシレン20gおよびデカリン20gを混合して混合溶媒を準備した。
【0078】
前記混合溶媒の表面張力を、Force Tensiometer−K11を用いて、25℃の条件で測定した結果、29.51mN/mであった。
【0079】
その後、前記合成例1から製造されたポリシラザン重合体8gを前記混合溶媒40gに溶解させた後、ろ過して、シリカ膜形成用組成物を製造した。
【0080】
実施例2
前記実施例1で使用された混合溶媒の代わりにジエチルベンゼン20gとパラメチルアニソール20gとを混合した混合溶媒(25℃での表面張力:31.57mN/m)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、シリカ膜形成用組成物を製造した。
【0081】
実施例3
前記実施例1で使用された混合溶媒の代わりにテトラメチルベンゼン20gとパラメチルアニソール20gとを混合した混合溶媒(25℃での表面張力:30.75mN/m)を用いたことを除いては、実施例1と同様一にして、シリカ膜形成用組成物を製造した。
【0082】
比較例1
前記実施例1で使用された混合溶媒の代わりにアニソール20gとエチルヘキシルエーテル20gとを混合した混合溶媒(25℃での表面張力:35.30mN/m)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、シリカ膜形成用組成物を製造した。
【0083】
比較例2
前記実施例1で使用された混合溶媒の代わりにキシレン40g(25℃での表面張力:29.02mN/m)を単独で用いたことを除いては、実施例1と同様にして、シリカ膜形成用組成物を製造した。
【0084】
評価1:膜表面特性
実施例1〜3、および比較例1〜2によるシリカ膜形成用組成物を、直径8インチのパターン化されたシリコンウエハ上にスピンコート法によりコーティングした後、150℃で130秒間乾燥して、薄膜を形成した。
【0085】
その後、Pyrogenic furnaceを用いて、酸素および水蒸気雰囲気下、350℃で1時間湿式酸化を進行させた後、CF気体を用いて表面を100nm乾式エッチングを実施して、サンプルを準備した。
【0086】
次に、AIT−XP defect検査器を用いてサンプル表面のディフェクトの座標を認識した後、CD−SEMでディフェクトをレビューしてホールディフェクト(hole defect)とパーティクルディフェクト(particle defect)を分類し、全体ディフェクト(hole defect)数および直径175nm以上のホールディフェクト(hole defect)数を測定した。
【0087】
膜表面特性(%)は下記式1に基づいて導出した。
【0088】
【数1】
【0089】
評価2:膜厚均一性
実施例1〜3、および比較例1〜2によるシリカ膜形成用組成物を、直径8インチのパターン化されたシリコンウエハ上にスピンオンコーティング方式によりコーティングした後、150℃で130秒間ベークして、薄膜を形成した。
【0090】
その後、Atlas膜厚測定装備を用いて、左から右方向に6mm間隔で51pointsの厚さを測定した後、これら地点の平均厚さ、最高厚さ、最小厚さ値から、下記式2に基づいて膜厚均一性を評価した。
【0091】
【数2】
【0092】
前記評価1および2の結果を下記表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
前記表1を参照すれば、実施例1〜3によるシリカ膜形成用組成物は、比較例1〜2によるシリカ膜形成用組成物と比較して、ホールディフェクトの発生が少なくて膜表面特性が良好であるだけでなく、膜厚均一性にも優れていることを確認することができる。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。