【文献】
'年越し蕎麦・鍋焼きにも海老の天ぷら♪', クックパッド,2014年12月6日,[2019年8月16日検索],<https://cookpad.com/recipe/2916573>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状型枠の下部に皿状型枠があるフライ用型枠を前記筒状型枠の一部が油面上に飛出る状態で油中に沈めた後、前記フライ用型枠内に一次バッター液を投入してフライし、花咲き構造を有する一次衣を作製する一次衣作製工程と、
前記フライ用型枠の前記皿状型枠が油面上に出るまで前記フライ用型枠を移動して、前記筒状型枠を外すか、外さない状態で、前記一次衣作製工程で作製した前記一次衣を前記皿状型枠に乗せ、前記皿状型枠に二次バッター液を投入して油面の表層で加熱し、前記一次衣と結着するように前記一次衣の下に板状の二次衣を作製する二次衣作製工程と、
前記二次衣作製工程の後、前記一次衣と前記二次衣が結着したフライ食品を前記皿状型枠または前記フライ用型枠を油中に沈めることで前記フライ食品を前記皿状型枠または前記フライ用型枠をから外し、前記フライ食品を油中に沈めて浸漬フライして乾燥する浸漬フライ工程と、を含む乾燥フライ食品の製造方法であって、
前記一次バッター液の固形分含量が17〜33重量%であり、
前記二次バッター液の固形分含量が10〜25重量%であることを特徴とする乾燥フライ食品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥フライ食品として即席麺用の乾燥天ぷらなどがある。乾燥天ぷらの製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1〜3などの技術が開示されている。
【0003】
特許文献1は、長期保存可能な即席天ぷらの製造方法に関する技術であり、揚種を軽く一次油ちょうした後、衣をつけて型枠に収納し、高温の油をかけて熱成形処理を施した後、二次油ちょうする即席天ぷらの製造方法に関する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2は、膨化度が大きく、揚げ花の乱雑さ(程度)の大きい天ぷらの工業的生産方法に関する技術であり、皿型枠上に、先入れ油及び天ぷらバッターを入れ、皿型枠の内法に略沿った着脱自在の筒状物を載置し、高温の油を筒上部からシャワーした後、筒状物を皿型枠から分離し、その後油ちょうする技術が記載されている。
【0005】
特許文献3は、揚種から充分に水分が蒸発して、製品の長期保存を可能とする乾燥天ぷらに関する技術であり、天ぷら材料からなる未加熱天ぷら台または加熱開始直後の天ぷら台の表面に、予め空揚げした揚種を付着して一体化し、これを加熱した食用油でフライ処理し、さらにこれを脱油処理してなる乾燥天ぷらに関する技術が記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの技術で製造された乾燥天ぷらは、揚種が上にトッピングされるか、バッターと混合された状態で、乾燥天ぷら自体は板状であり、膨化剤による発泡や高温の油によるシャワーにより、板状の上面に凹凸はできるものの天ぷら特有の衣が花開いたようないわゆる花咲構造とは異なる形状であった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。尚、本発明における乾燥フライ食品としては、乾燥天ぷらやスナック菓子が挙げられる。
【0017】
まず、本発明の乾燥フライ食品の製造に用いるバッター原料は、小麦粉を主体として、必要に応じて、米粉や馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び米粉澱粉等の各種澱粉並びにこれらの加工澱粉、大豆タンパク、卵白粉、全卵粉及び小麦タンパクなどのタンパク系素材を副原料として用いることができる。その他、食塩、グルタミン酸ナトリウム、魚介や野菜等の粉末及び蛋白加水分解物等の味付け素材、ベーキングパウダー等の膨張剤、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、色素、リン酸塩、重合リン酸塩、及びトコフェロール等の酸化防止剤を用いることもできる。これらのバッター原料を水で溶いてバッター液とする。
【0018】
本発明においては、花咲構造を形成するための一次バッター液と花咲構造を形成した衣の下に花咲構造の衣と結着するように板状の衣を形成するための二次バッター液を用意する。
【0019】
一次バッター液は、後述する第一衣作製工程において、花咲構造を形成する必要があり、一次バッター液の固形分含量としては、17〜33重量%が好ましい。固形分含量とは、バッター液の重量を100重量%とした時のバッター液の水分重量%を差し引いた値を指す(食用油脂を添加した場合は、添加した食用油脂の重量%も差し引く)。固形分含量が17重量%未満であると、後述する第一衣作製工程において、一次バッター液がフライ用型枠内に投入した際に細かく散り散り分散してしまい、花咲構造が得られにくい。逆に固形分含量が33重量%よりも多くなると一次バッター液がきれいに花咲かず、団子状になってしまう。より好ましい一次バッターの固形分含量としては、20〜30重量%である。
【0020】
二次バッター液は、後述する第二衣作製工程において、皿状型枠に投入した際に皿状型枠全体に均質に素早く広がって板状の衣を形成する必要があり、二次バッター液の固形分含量としては、10〜25重量%が好ましい。固形分含量が10重量%未満であると皿状型枠全体に均質に広がるが、板状の衣が脆く、出来上がった乾燥フライ食品は、構造的に脆いものとなる。逆に固形分含量が25重量%よりも多くになると皿状型枠全体に衣が広がりにくい。より好ましい二次バッター液の固形分含量としては、14〜20重量%である。
【0021】
次いで用意したバッター液とフライ用型枠を用いて乾燥フライ食品を製造する。フライ用の油としては、食用油脂であれば特に限定はなく、例えば、大豆油、米白絞油、菜種油、コーン油、オリーブ油、ごま油、パーム油等の植物油や、ラード、牛脂等の動物油が挙げられる。この内、常温で長期保存する場合は、パーム油やラード等の半固形油を用いることが好ましい。
【0022】
図1及び
図2で示すように本発明に係るフライ用型枠3は、筒状型枠1と皿状型枠2からなる。
図2で示すようにフライ用型枠3は、筒状型枠1の下部に皿状型枠2がある状態であればよく、筒状型枠1と皿状型枠2は、接触した状態でも、離れた状態でもよい。接触した状態の方が後述する一次衣作製工程において、一次衣が筒状型枠1内に収まりやすく好ましい。離れた状態で使用する場合は、筒状型枠1と皿状型枠2の間ができる限り近い状態で使用することが好ましい。
【0023】
筒状型枠1の形状は特に限定はなく、円柱形でも、角柱形でもよく、筒状型枠1の上下が開放していればよい。筒状型枠1の側面には、油の流入口や小孔を複数設けて油が流入しやすくしてもよく、この場合、一次バッター液を投入した際のフライ用型枠3内の油の温度低下を抑えることができる。
【0024】
皿状型枠2の形状は特に限定はなく、底面が円形でも四角形でもよいが、底面が非開孔であることが好ましい。底面に小孔を多数設ける場合は、油の流入の面では好ましいが、一次バッター液や二次バッター液が皿状型枠2から剥がれにくくなり、さらには小孔の形状の跡が一次衣または二次衣につくため好ましくない。また、皿状型枠2の天面は、底面よりも大きく、側面は底面に沿って外側に開くように傾いた状態にすることにより、後述する二次衣作製工程の後、皿状型枠2からフライ食品が剥がれやすくなるため好ましい。皿状型枠2の側面の高さは、後述する二次衣作製工程で作製する板状の二次衣の厚みよりも高ければよいが、高すぎても一次衣と二次衣が結着しにくくなるため、このましくは0.5cm〜2cm程度であることが好ましい。
【0025】
また、
図1及び
図2で示すようにフライ用型枠3の筒状型枠1と皿状型枠2は着脱可能でもよく、
図3で示すように筒状型枠1と皿状型枠2が一体化した状態でもよい。
【0026】
まず、
図4(a)で示すような筒状型枠1及び皿状型枠2からなるフライ用型枠3を150〜180℃に調整した油の中に筒状型枠1の上部が油面Aから出るように沈めて、
図4(b)で示すようにフライ用型枠3内に一次バッター液5を投入する。
図4(b)及び(c)で示すように、投入した一次バッター液5は、一旦沈んで皿状型枠2に付着した後、勢いよく浮き上がるため、筒状型枠1は油面より2cm以上高く出ていることが好ましい。また、一次バッター液5が沈んで皿状型枠2の底面に付着した後、浮き上がる際に花咲状の構造が形成されるため、皿状型枠2の油中の位置が浅すぎると綺麗な花咲構造となりにくく、皿状型枠2は2cm以上油面Aより深く沈めることが好ましい。
図4(d)及び(e)で示すように、筒状型枠1を設けることにより、花咲状の衣片6一つ一つが拡散することなくまとまった形状を保った状態で花咲構造を有する一次衣9となる。
【0027】
また、一次バッター液5の充填量が少なすぎてもまとまった形状のある一次衣9とはならず、多すぎても綺麗な花咲構造となりにくい。したがって、一次バッター液5の添加量としては、筒状型枠1の開口面の面積に対して固形分含量が0.10〜0.25g/cm
2となるように添加することが好ましい。また、一次バッター液5の投入は、一気に行うのではなく、フライ用型枠内に15〜30秒程度かけて万遍なく徐々に投入することが好ましい。
【0028】
図4(d)で示すように、トッピング用の具材等を投入する場合には、一次バッター液5を投入後に投入することが好ましい。投入時期は、一次バッター液5を投入後、比較的早い時期で衣片6の花咲構造が固定される前に投入することが好ましい。衣片6の花咲構造が固定されてから投入してもトッピング用の具材は、衣片6に結着しにくい。好ましくは、一次バッター液5を投入終了後30秒以内に投入することが好ましい。
【0029】
トッピング用の具材としては、例えば、乾燥フライ食品15が乾燥天ぷらの場合、小エビ、イカ、タコ等の魚介類、ゴボウ、タマネギ、ニンジン、ネギなどの野菜、豚肉、牛肉等の肉類、揚げ玉等が挙げられる。また、これらの具材をトッピングとして使用するには、予め乾燥しておくか、空揚げや衣をつけてフライして水分を飛ばした状態で用いることが好ましい。
【0030】
一次衣作製工程でのフライ時間は、作製する乾燥フライ食品15の大きさや一次衣9の厚みにもよるため、特に限定はしないが、衣片6どうしが結着しまとまった花咲構造が固定される程度で一次バッター液5投入開始から60〜150秒程度フライすればよい。
【0031】
次いで花咲構造を有する一次衣9を作製した後、
図4(f)で示すようにフライ用型枠3の皿状型枠2が油面A上に出るまでフライ用型枠3を移動して、フライ用型枠3の筒状型枠1と皿状型枠2が脱着可能な場合には筒状型枠1を外し、
図3で示すようにフライ用型枠3の筒状型枠1と皿状型枠2が一体化している場合には一体化した状態で、一次衣作製工程で作製した一次衣9を皿状型枠2に乗せ、
図4(g)で示すように皿状型枠2に二次バッター液11を投入し、
図4(h)で示すように一次衣9と結着するように油面Aの表層で加熱することにより一次衣9の下に板状の二次衣12を作製する。
【0032】
花咲構造を有する一次衣9だけでは、構造的に不安定であり、輸送により粉々に割れてしまうため、強度を増すために一次衣9の下側に一次衣9と結着するように板状の二次衣12を作製する。
【0033】
二次衣12の厚みが薄い場合、乾燥フライ食品15の強度が弱く、二次衣12の厚みが厚い場合は、乾燥フライ食品15の強度は増すが、一次衣9の花咲き構造が二次衣12内に埋もれてしまう。従って、一次衣9の厚みにもよるが、二次衣12の厚みが1〜15mm、より好ましくは5〜10mmとなるように二次バッター液11を添加することが好ましい。また、二次バッター液11は素早く皿状型枠全体に広がる必要があるため、投入はできる早く行うことが好ましく、1〜10秒程度で投入することが好ましい。
【0034】
二次衣作製工程での油面Aの表層での加熱時間は、皿状型枠2の大きさや二次衣12の厚みにもよるため、特に限定はしないが、一次衣9と二次衣12がある程度結着し、二次衣12が皿状型枠2またはフライ用型枠3から容易に剥がれる程度でよく、加熱時間としては30〜90秒程度加熱ればよい。
【0035】
図4(i)で示すように、ある程度二次衣9が固まったところで、皿状型枠2またはフライ用型枠3を油中に沈めることで皿状型枠2またはフライ用型枠3からフライ食品13を離脱させる。離脱したフライ食品13は、水分が高い状態であるため、10〜60秒程度油面Aの表層でフライし水分を飛ばした後、
図4(k)で示すように、油中に浸漬して水分が2〜5重量%となるようにフライすることで、
図4(j)で示すように乾燥フライ食品15となる。
【0036】
フライ食品13を浸漬フライする方法に特に限定はなく、例えばネット状の抑え具14で強制的に浸漬フライしてもよく、機械的に連続生産する場合は、油面A上から油中に向けて斜めに設置されたネットコンベアを油面A上から油中に向けて動かし、浮力を利用して浸漬フライする方法が挙げられる。
【0037】
浸漬フライによるフライ時間は、フライ食品13の大きさや水分により変わるため、特に限定はしないが、水分を2〜5重量%となるように120〜300秒程度浸漬フライすればよい。水分が2重量%よりも低くなるとトッピング具材や一次衣9が変色したり、焦げたりするため好ましくない。また、水分が5重量%よりも多くなると保存性の面で好ましくない。
【0038】
浸漬によりフライ乾燥した乾燥フライ食品15は、必要により、遠心脱油や熱風により脱油する。また、浸漬フライ乾燥後にまだ温かいうちに青のりや乾燥したネギ等をふりかけ乾燥フライ食品15に付着させることもできる。次いで浸漬フライした乾燥フライ食品15を送風等により冷却する。
【0039】
作製した乾燥フライ食品15は、乾燥天ぷらの場合は、即席麺等の具材として使用することができ、スナック菓子の場合は、そのまま喫食することができる。
【0040】
以上のように、筒状型枠の下部に皿状型枠があるフライ用型枠を筒状型枠の一部が油面上に飛出る状態で油中に沈めた後、フライ用型枠内に一次バッター液を投入してフライし、花咲き構造を有する一次衣を作製した後、皿状型枠が油面上に出るまでフライ用型枠を移動して、筒状型枠を外すか、外さない状態で、一次衣を皿状型枠に乗せ、皿状型枠に二次バッター液を投入して油面の表層で加熱し、一次衣と結着するように一次衣の下に板状の二次衣を作製し、一次衣と二次衣が結着したフライ食品を皿状型枠またはフライ用型枠を油中に沈めることで型枠から外し、フライ食品を油中に沈めて浸漬フライして乾燥することで、天ぷら様の花咲構造を有する乾燥フライ食品の製造方法を提供することができる。
【0041】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
小麦粉865g、コーンスターチ50g、米粉50g、食塩10g、グルタミン酸ナトリウム3g、蛋白加水分解物1g、ベーキングパウダー20g、色素0.5g、トコフェロール0.5gを粉体混合し1kgのバッター粉を作製した。
【0043】
バッター粉300gに対して水785gを添加し、ダマにならないように素早く攪拌し、一次バッター液を作製した(固形分含量24重量%)。
【0044】
次いで、バッター粉300gに対して水1180gを添加し、ダマにならないように素早く攪拌し、二次バッター液を作製した(固形分含量17.6重量%)。
【0045】
次いで165℃に温めたパーム油の中に
図1で示したようなフライ用型枠(筒状型枠:直径95mm、高さ50mm(切れ込み10mm),皿状型枠:天面直径100mm、底面直径95mm、高さ10mm)を
図2で示すように筒状型枠と皿状型枠が接触した状態で筒状型枠が油面上2cm出るように沈め、フライ用型枠内に一次バッター液45gを20秒かけて投入した。
【0046】
一次バッター液投入終了後10秒後にトッピング具材として予め乾燥した揚げ玉2g、小エビ0.5gを投入した。
【0047】
トッピング具材を投入後、引き続き75秒間フライし一次衣を作製した後、フライ用型枠を皿状型枠が油面上に出るように移動し、皿状型枠に一次衣を載せ、筒状型枠を外して、皿状型枠内に二次バッター液24gを3秒間かけて投入した。
【0048】
二次バッター液投入後、油面上にて60秒間加熱し、一次衣と二次衣を結着させ、ある程度固まった状態で皿状型枠を油中に沈めて一次衣と二次衣が結着したフライ食品を分離した。
【0049】
皿状型枠から分離したフライ食品は、油面上で30秒フライした後、ネット状の金属製の網で油中に沈めて180秒間浸漬フライした。
【0050】
浸漬フライした乾燥フライ食品は、遠心脱油後、青のりをトッピングし、冷却して乾燥フライ食品(乾燥天ぷら)サンプル(水分3重量%)とした。
【0051】
(比較例1)
実施例1で作製したバッター粉300gに水400gを添加し、ダマにならないように素早く混合してバッター液を作製した。
【0052】
実施例1で使用した皿状型枠にパーム油を軽く引いた後、24gのバッター液を投入し、全体に広がった状態でトッピング具材として揚げ玉2g、小エビ0.5をバッター液の上に投入した。
【0053】
次いで、170℃加温したパーム油120gを皿状型枠の13cm上の高さからバッター液に向けてシャワーした後、皿状型枠からフライ食品を外し、165℃に加温したパーム油の油面上で40秒フライした後、油中に沈めて6分間浸漬フライした。
【0054】
浸漬フライした乾燥フライ食品は、遠心脱油後、青のりをトッピングし、冷却して乾燥フライ食品(乾燥天ぷら)従来品サンプル(水分3重量%)とした。
【0055】
図5で示すように、実施例1で作製した乾燥フライ食品(乾燥天ぷら)は、表面に天ぷら様の綺麗な花咲構造を有していることがわかる。それに対し、比較例1で製造した従来品である乾燥フライ食品(乾燥天ぷら)は、表面に凹凸はあるものの天ぷら様の綺麗な花咲構造を有していないことがわかる。