(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
いわゆるサブミクロン銅粉は、一般に粒径が1μm以下である微細な銅粒子からなる粉末であり、たとえば、積層セラミックコンデンサないしインダクタその他の電子部品の内外電極用材料や、インクジェット配線の用途等に用いることが期待されている。
【0003】
この種の銅粉は、亜酸化銅粒子を含む亜酸化銅粉が分散したスラリーから、化学還元法または不均化法を利用することにより作製することができる。
【0004】
銅粉を作製する方法として、たとえば特許文献1には、「以下に述べる工程A〜工程Fを備え、工程A〜工程Dのいずれかの工程で溶液中の銅1molに対し塩素濃度を0.05mol以上とすることを特徴とした銅粒子の製造方法。工程A:銅塩を温水に溶解させ銅塩含有溶液を得る銅塩含有溶液調製工程。工程B:前記銅塩含有溶液にキレート剤を添加して成分調整溶液を得る成分調整工程。工程C:前記成分調製溶液にpH調整剤を添加しpH調整操作を行いpH調整溶液とするpH調製工程。工程D:前記pH調整溶液に第1還元剤を添加して亜酸化銅粒子を生成する還元処理を行う第1還元工程。工程E:更に、第2還元剤を添加して、前記亜酸化銅粒子を銅粒子とする還元処理を行う第2還元工程。工程F:銅粒子を洗浄し、乾燥し採取し、銅粒子を得る洗浄乾燥工程。」と記載されている。
【0005】
また特許文献2には、銅粉を作製する際の原料となる亜酸化銅粒子を製造する方法として、「2価の銅イオンを含有する水溶液にアルカリ溶液と還元剤溶液を添加して亜酸化銅粒子を還元析出させる亜酸化銅粉末の製造方法において、前記アルカリ溶液が炭素および塩素を含まないアルカリの溶液であり、前記還元剤溶液が炭素および塩素を含まない還元剤の溶液であることを特徴とする、亜酸化銅粉末の製造方法」が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、亜酸化銅粉から銅粉を作製するには、化学還元法または不均化法等のいずれを採用するにしても、銅粉の微細化の観点から均一な反応を実現するため、亜酸化銅粉を含むスラリー中で亜酸化銅粒子を十分に分散させることが必要になる。このことは、銅粉を量産するための大掛かりな生産設備等といったように反応容器が大きくなるほど、亜酸化銅粉の凝集や沈降が生じやすくなることから重要になる。
しかるに、これまでは、このようなスラリー中での亜酸化銅粒子の分散性について十分に検討されているとは言い難い。
【0008】
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、スラリー中での亜酸化銅粒子の分散性を有効に向上させることのできる亜酸化銅粒子、亜酸化銅粒子スラリー及び、亜酸化銅粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は鋭意検討の結果、亜酸化銅粒子を製造する際の硫酸銅水溶液で、銅化合物の変性を防止するための変性防止剤として所定の高分子化合物を含ませ、かつ、アルカリの添加によりpHを所定の範囲に保持することにより、亜酸化銅粒子の分散性を有効に向上させ得ることを見出した。
【0010】
このような知見の下、この発明の亜酸化銅粒子は、純水に分散させたときにゼータ電位が−10mV以下であ
り、SEM画像観察により測定した平均粒径が1μm以下であるものである
。
この発明の亜酸化銅粒子では、燃焼法により測定した炭素付着量が0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0011】
この発明の亜酸化銅粒子スラリーは、ゼータ電位が−10mV以下であ
り、乾燥後の亜酸化銅粒子をSEM画像観察により測定した平均粒径が1μm以下であるものである
。
この発明の亜酸化銅粒子スラリーでは、乾燥後の亜酸化銅粒子を燃焼法により測定した場合に、炭素付着量が0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0012】
この発明の亜酸化銅粒子の製造方法は、還元糖と変性防止剤とアルカリとを含む硫酸銅水溶液にて、前記変性防止剤が、多糖類、ニカワ及びコラーゲンペプチドからなる群から選択される少なくとも一種を含むものとし、前記アルカリによりpHを8〜11に保持
し、前記硫酸銅水溶液を得るに当り、変性防止剤を含み硫酸銅が溶解した水溶液に、還元糖を添加し、その後、アルカリを添加して前記pHに保持することにある。
【0014】
また、この発明の亜酸化銅粒子の製造方法では、前記還元糖がグルコースを含むことが好適である。
そしてまた、この発明の亜酸化銅粒子の製造方法では、硫酸銅水溶液に前記変性防止剤を含ませることにより、亜酸化銅粒子における、当該変性防止剤由来の炭素付着量を、0.1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
【0015】
前記硫酸銅水溶液を得るに当っては、溶媒に硫酸銅を溶解させる際に、50rpm〜1000rpmで攪拌することができる。
また、前記硫酸銅水溶液を得るに当っては、溶媒に硫酸銅を溶解させる際に、液温が50℃〜90℃になるように加熱することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、スラリー中での亜酸化銅粒子の分散性を有効に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の実施形態の亜酸化銅粒子は、純水に分散させたときにゼータ電位が−10mV以下となり、分散性に優れたものである。
【0019】
(ゼータ電位)
ゼータ電位とは、粒子から十分に離れて電気的に中性である領域の電位をゼロとし、このゼロ点を基準として測った場合の、滑り面の電位を意味する。この滑り面は、粒子の周囲に形成されるイオンの固定層と、その外側のイオンの拡散層との間に存在するとされる概念的な境界面である。ゼータ電位は界面動電電位と称されることもある。
【0020】
亜酸化銅粒子を純水に分散させたときのゼータ電位が−10mV以下であることにより、亜酸化銅粒子間での反発が十分に大きく、亜酸化銅粒子がスラリー中で有効に分散することができる。その結果として、当該亜酸化銅粒子を用いて化学還元法または不均化法等により銅粉を作製すれば、所望の微細な銅粒子の銅粉を得ることができる。
【0021】
純水に分散させた場合にゼータ電位が−10mVよりも大きくゼロに近い値となる亜酸化銅粒子では、亜酸化銅粒子スラリーの分散が不十分になり、化学還元法または不均化法等によって微細な銅粉を得ることができない。この一方で、ゼータ電位が小さすぎるものでは、還元剤、あるいは希硫酸をはじいて、反応が進行しにくくなることが懸念される。
この観点から、亜酸化銅粒子を純水に分散させたときのゼータ電位は、好ましくは−10mV〜−200mV、より好ましくは−10mV〜−100mVである。
【0022】
上述したゼータ電位の測定は、亜酸化銅粒子を純水に添加し、亜酸化銅粒子を純水中に十分に分散させてスラリーとし、このスラリーに対してゼータ電位測定装置を用いて行う。この際に用いる純水は、RO水、つまり逆浸透膜による処理を施した水程度のものでよい。ゼータ電位の詳細な測定条件の詳細は、実施例にて後述する。
【0023】
(平均粒径)
亜酸化銅粒子は、SEM画像観察により測定した平均粒径が1μm以下であることが好ましく、さらに0.7μm以下であることがより一層好ましい。亜酸化銅粒子の平均粒径が小さいと、比表面積が大きくなることに起因して、それを用いて作製する銅粉の銅粒子の粒径も小さくなり、微細な銅粉がより得られやすくなる。亜酸化銅粒子の平均粒径が小さすぎることによる不都合は特にないが、亜酸化銅粒子の平均粒径は、たとえば0.05μm以上、典型的には0.1μm以上となることが多い。
【0024】
亜酸化銅粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像を観察し、画像解析法により求める。
【0025】
(炭素付着量)
亜酸化銅粒子には炭素が付着することがあるが、この炭素付着量は、0.1質量%〜5質量%であることが好適である。亜酸化銅粒子の炭素付着量が0.1質量%未満である場合は、変質が進行する可能性があり、この一方で、炭素付着量が5質量%を超える場合、これに起因して銅粉にも比較的多量の炭素が含まれるおそれがあり、このことが、積層セラミック部品等の電極の緻密性に悪影響を及ぼすことが懸念される。したがって、亜酸化銅粒子の炭素付着量は、0.1質量%〜5質量%であることがより一層好ましい。
【0026】
亜酸化銅粒子の炭素付着量は、燃焼法により測定する。燃焼法とは、酸素を吹き込んで定量の亜酸化銅粒子を燃焼させ、発生したCO、CO
2の量からC量を求める方法である。
【0027】
(亜酸化銅粒子スラリー)
亜酸化銅粒子スラリーは、亜酸化銅粒子が分散して含まれるスラリーであり、ゼータ電位が−10mV以下であるものである。ゼータ電位については先述したとおりであり、この亜酸化銅粒子スラリーでも、ゼータ電位の好ましい範囲は、−10mV〜−200mV、さらに−10mV〜−100mVである。
【0028】
亜酸化銅粒子スラリーを乾燥させることにより、上述した亜酸化銅粒子が得られる。亜酸化銅粒子スラリーを乾燥させて得られた亜酸化銅粒子は、SEM画像観察により測定した平均粒径が1μm以下、さらに0.7μm以下であることが好ましく、0.05μm以上、さらに0.1μm以上である場合があり、また、当該亜酸化銅粒子の炭素付着量は、燃焼法により測定して0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0029】
(亜酸化銅粒子の製造方法)
先に述べたような亜酸化銅粒子は、たとえば次のようにして製造することができる。
この実施形態の製造方法では、硫酸銅を溶解させた水溶液であって、還元糖と変性防止剤とアルカリとを含ませた硫酸銅水溶液を用いる。
【0030】
ここにおいて、亜酸化銅粒子の製造時における変性防止剤の種類及び量ならびにpHの調整は、それにより製造された亜酸化銅粒子を純水に分散させたときのゼータ電位に影響を及ぼすことが解かった。この知見に基いて、この実施形態では、変性防止剤が、多糖類、ニカワ及びコラーゲンペプチドからなる群から選択される少なくとも一種を含むものとし、また、アルカリにより、硫酸銅水溶液のpHを8〜11の範囲内に保持する。これにより、先述したようなゼータ電位が低く分散性に優れた亜酸化銅粒子を製造することができる。
【0031】
この実施形態の製造方法を詳説すると、はじめに、純水などの溶媒に変性防止剤を添加し、その後、硫酸銅を添加して溶解させて水溶液とする。なお、先に溶媒に硫酸銅を添加して溶解させてもよいが、予め変性防止剤を添加しておくこともできる。
【0032】
ここで、変性防止剤は、先述したように、多糖類、ニカワ及びコラーゲンペプチドからなる群から選択される少なくとも一種を含む。このうち多糖類としては、たとえば、アラビアゴム、デキストリン等を挙げることができる。
【0033】
変性防止剤は、後に得られる乾燥状態の亜酸化銅粒子や亜酸化銅粒子スラリーの状態において、亜酸化銅が酸化銅に変性することを防止する働きをするものである。仮に変性防止剤を用いなかった場合、亜酸化銅が酸化銅に変性してしまい、そのような粒子を含むスラリーのゼータ電位が0mVに近づき得る。液中の変性防止剤の荷電が大きいほど、亜酸化銅粒子のゼータ電位はゼロから離れて小さくなる傾向(つまり、絶対値が大きくなる傾向)がある。そして、液中の変性防止剤の荷電は、変性防止剤の官能基に依存する。それ故に、このことを考慮して、変性防止剤の種類を選択することが肝要である。
【0034】
また、液中の変性防止剤の量が多いほど、ゼータ電位は小さくなる傾向(つまり、絶対値が大きくなる傾向)にある。変性防止剤は、溶媒に対し、好ましくは0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.01質量%〜5質量%で添加することができる。ニカワ及びアラビアゴム等の複数種類の変性防止剤を添加する場合は、この添加量はそれらの合計を意味する。なお、変性防止剤の添加量が多すぎると、変性防止剤自体が凝集し、この凝集体が亜酸化銅粒子の凝集を引き起こす可能性がある。
【0035】
なお、溶媒に硫酸銅を溶解させる際には、好ましくは50rpm〜1000rpm、より好ましくは200rpm〜1000rpmで攪拌することができ、また、液温が、好ましくは50℃〜90℃になるように加熱することができる。これにより、硫酸銅を容易に溶解させることができる。なお、後述のアルカリ添加後の反応終了まで、この速度で攪拌することができ、また、この液温に維持することができる。
【0036】
次いで、上記の水溶液に、還元糖及びアルカリを添加し、該アルカリの滴下によりpHを、上述した8〜11の範囲内に保持する。
還元糖及びアルカリの添加順序については、いずれが先でもかまわないが、還元糖を添加した後にアルカリを添加することが好ましい。仮に、アルカリを先に添加した場合、硫酸銅が水酸化銅の凝集体になり、その後に還元糖を添加しても凝集体として存在する水酸化銅の表面だけが還元される。この場合、水酸化銅が不純物として残留するとともに、亜酸化銅の歩留りが低下する。一方、還元糖を先に添加した場合、このような不都合が生じない。
【0037】
ここで、還元糖としては、亜酸化銅に還元することのできるものであれば、その種類は特に問わない。たとえば、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース等の還元糖を挙げることができる。また、スクロース自体は還元糖ではないが、スクロースが加水分解して生成される転化糖も、還元糖として利用可能である。
【0038】
またここで、pHの調整のために添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アミノ基を分子末端に有するカップリング剤、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。
pHを所定の範囲に保持する時間は、たとえば0.1時間〜10時間、好ましくは0.1時間〜5時間とすることができる。
【0039】
上述したアルカリの添加により、硫酸銅水溶液のpHを8〜11の範囲内に保持する。硫酸銅水溶液のpHが8よりも小さい場合は、ゼータ電位が大きくなってゼロに近づくので、亜酸化銅粒子の分散性が十分に向上しない。一方、pHが11より大きい場合は、Cuまで還元が進行する可能性がある。この観点から、硫酸銅水溶液のpHは、好ましくは8〜11、より好ましくは8〜10とする。
【0040】
しかる後は、デカンテーション等による固液分離、純水を用いた洗浄等を行い、亜酸化銅粒子スラリーとし、これを乾燥させることにより、亜酸化銅粒子を得ることができる。
このようにして得られた亜酸化銅粒子では、上記の変性防止剤由来の炭素付着量が、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。なお、還元糖由来の炭素は、亜酸化銅スラリーを掬い、ろ紙上で水洗を行い、吸引ろ過で回収した洗浄水を質量分析することにより確認することができる。これに対し、変性防止剤由来の炭素付着量は、燃焼法により測定することができる。洗浄水中の還元糖由来の成分の増加が収まるまで水洗を行うことで得られた亜酸化銅粒子が炭素付着量測定の対象となる。
【0041】
以上に述べた亜酸化銅粒子は、純水等に分散させ、公知の化学還元法または不均化法等を適用することにより、銅粒子を含む銅粉を作製することができる。このような銅粉は、その作成時にスラリー中で亜酸化銅粒子を十分に分散させることができることから、粒径の小さい微細なものとなり、特に、積層セラミックコンデンサないしインダクタ等の電子部品の内外電極用材料や、インクジェット配線の用途に適している。
【実施例】
【0042】
次に、この発明を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0043】
(実施例1)
5Lビーカーに純水600mL、アラビアゴム0.9gを添加し、ホットバス中の液温が70℃となるように加温した。ここに硫酸銅五水和物349gを添加し、350rpmで撹拌しながら、硫酸銅の結晶がすべて溶解したことを目視で確認した。ここにD−グルコース138.5gを添加した。ここに送液ポンプで5wt%の水酸化ナトリウム水溶液を30mL/分の速度でpH5に達するまで添加した。pHが5に達したら、スポイトで水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pH8.4に上昇させた。ここから液温70±2℃、pH8.5±0.1に3時間保持した。pHの調整は水酸化ナトリウム水溶液で行った。反応終了後、デカンテーション、上澄み排出、純水での洗浄を繰り返し、上澄み液のpHが8.0を下回るまで行った。
【0044】
(XRDによる粉末の組成確認)
実施例1のスラリーの固形分を掬い、窒素雰囲気中で70℃、2時間乾燥させて得られた粉末をX線回折(XRD)で分析した。その結果を
図1に示す。これにより、亜酸化銅であることが確認された。
【0045】
(ゼータ電位の測定)
実施例1の亜酸化銅粒子スラリーを一晩撹拌し、RO水で200倍に希釈し、3分間超音波照射した後に、マイクロピペットでMalvern Panalytical社のゼータサイザーZSの測定セルに注入し、ゼータ電位を測定したところ、−22.6mVであった。なおここで、超音波照射装置としては、アズワン製のUS−4Rを用い、出力を180W、周波数を40kHzに設定した。液温は25℃に調整した。
【0046】
(SEMによる亜酸化銅粒子の観察)
実施例1のスラリーの固形分を掬い、窒素雰囲気中で70℃、2時間乾燥させて得られた粉末をSEMで観察したところ、平均粒径が1μm以下であることが確認された。なお、このSEM画像を
図2に示す。
【0047】
(炭素付着量)
実施例1のスラリーの固形分を掬い、窒素雰囲気中で70℃、2時間乾燥させて得られた粉末の炭素付着量を燃焼法で測定したところ、炭素付着量(C付着量)は0.92質量%であった。
【0048】
(実施例2)
実施例1のスラリーの固形分を掬い、窒素雰囲気中で70℃、2時間乾燥させて得られた粉末を、RO水で300分の1の濃度となるようにスラリーを作製し、3分間超音波照射した後に、マイクロピペットでマルバーンパナリティカルのゼータサイザーZSの測定セルに注入し、ゼータ電位を測定したところ、−16.2mVであった。超音波照射装置としては、アズワン製のUS−4Rを用い、出力を180W、周波数を40kHzに設定した。液温は25℃に調整した。
【0049】
(実施例3、4)
アラビアゴムの添加量をそれぞれ0.1g、4gとしたことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を作製し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。アラビアゴム量が増えるとデカンテーションの沈降時間が長くなる傾向が認められた。
【0050】
(実施例5)
5wt%の水酸化ナトリウム水溶液に代えて、28%のアンモニア水(試薬)を1/2に希釈したアンモニア水溶液を用いたことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を合成し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。
【0051】
(実施例6)
アラビアゴムに代えて、平均分子量20000の牛由来のニカワを用いたことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を合成し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。
【0052】
(実施例7)
アラビアゴムに代えて、平均分子量3000の豚由来のコラーゲンペプチドを用いたことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を合成し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。
【0053】
(実施例8)
pHを8±0.1に保持したことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を合成し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。
【0054】
(実施例9)
pHを11±0.1に保持したことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を合成し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。
【0055】
(比較例1)
日進ケムコ社製の亜酸化銅粒子について、実施例1と同様の手順でゼータ電位の測定を行った。ゼータ電位測定用のスラリーを10分静置したところ、比較例のみ容器底面に亜酸化銅粒子の沈殿が目視で確認された。また、この比較例についても同様に、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価した。比較例のSEM画像を
図3に示す。
【0056】
(比較例2)
pHを7.5±0.1に保持したことを除いて、実施例1と同様の手順で亜酸化銅粒子を合成し、実施例1と同様にゼータ電位の測定、SEMによる平均粒径の測定及び炭素付着量について評価を行った。
【0057】
上述した実施例1〜9、比較例1、2の主な条件及び評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すところから、実施例1〜9はいずれも、所定の変性防止剤を用いるとともに所定のpHに保持したことにより、ゼータ電位が−10mV以下となり、分散性に優れたものになったことが解かる。一方、比較例1、2では、ゼータ電位が−10mVよりも大きくなった。
したがって、この発明によれば、スラリー中での亜酸化銅粒子の分散性を有効に向上させ得る可能性が示唆された。