(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687906
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20200421BHJP
C08F 220/32 20060101ALI20200421BHJP
C08G 59/02 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
H01L21/312 A
C08F220/32
C08G59/02
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-540120(P2016-540120)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2015069291
(87)【国際公開番号】WO2016021348
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-162368(P2014-162368)
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
(72)【発明者】
【氏名】坂口 崇洋
【審査官】
正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−003116(JP,A)
【文献】
特開2013−061616(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/129250(WO,A1)
【文献】
特開2014−089453(JP,A)
【文献】
特開昭64−010666(JP,A)
【文献】
特開平06−347601(JP,A)
【文献】
特開2010−139822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
C08F 220/32
C08G 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位および式(2)で表される構造単位を有する共重合体、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7およびその有機酸塩、ホスフィン類並びにホスホニウム塩からなる群から選択される、前記共重合体の硬化を促進させる触媒、及び溶剤を含有する
熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
0はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその主鎖にエーテル結合を有してもよく、R
2はエポキシ基、又はエポキシ環を有する炭素原子数5乃至12の有機基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される構造単位は下記式(1ー1)又は式(1ー2)で表される、請求項1に記載の
熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化2】
(式中、R
0及びR
1は請求項1と同義である。)
【請求項3】
前記共重合体はさらに下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体である、請求項1又は請求項2に記載の
熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化3】
(式中、R
0は請求項1と同義であり、R
3は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシル基、フェニル基又はハロゲノ基を表す。)
【請求項4】
前記共重合体の硬化を促進させる触媒をさらに含有する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【請求項5】
前記触媒は、前記樹脂組成物から前記溶剤を除いた固形分中の含有量に基づいて0.1質量%乃至20質量%含まれる、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合体の重量平均分子量は1,000乃至50,000である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【請求項7】
界面活性剤をさらに含有し、前記共重合体、前記共重合体の硬化を促進させる触媒、前記溶剤、及び前記界面活性剤以外の成分を含有しない、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の熱硬化性の樹脂組成物を基板上に塗布し、100℃よりも高く180℃未満の温度でベークする平坦化膜の作製方法。
【請求項9】
前記基板上にカラーフィルターが形成され、該カラーフィルター上に前記熱硬化性の樹脂組成物を塗布する、請求項8に記載の平坦化膜の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の熱硬化性の樹脂組成物をカラーフィルターが形成された基板上に塗布し、100℃よりも高く180℃未満の温度でベークし樹脂膜を形成し、前記樹脂膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをリフローしてレンズパターンを形成し、前記レンズパターンをエッチングマスクとして前記樹脂膜をエッチバックする、マイクロレンズの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を用いた、平坦化膜の作製方法及びマイクロレンズの作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCD/CMOSイメージセンサを製造する工程では、溶剤、アルカリ溶液等による浸漬処理が行われ、このような処理により素子が劣化あるいは損傷することを防止するために、当該処理に対して耐性を有する保護膜を素子表面に設けることが行われている。このような保護膜には、透明性を有すること、耐熱性および耐光性が高く、長期間にわたって着色等の変質を起こさないこと、耐溶剤性、耐アルカリ性に優れたものであることなどの性能が要求される(特許文献1)。さらに、近年、CCD/CMOSイメージセンサの高精細化によってセンサ感度の向上が必要となったことから、マイクロレンズから効率良く受光部へ集光するため、保護膜をカラーフィルター上などに形成する場合には、当該保護膜は下地基板上に形成された段差を平坦化できることも求められる(特許文献2乃至特許文献4)。また、このような保護膜からマイクロレンズを作製することも行われている。
【0003】
CCD/CMOSイメージセンサ用マイクロレンズの作製方法の1つとして、エッチバック法が知られている(特許文献5及び特許文献6)。すなわち、カラーフィルター上に形成したマイクロレンズ用樹脂膜上にレジストパターンを形成し、熱処理によってこのレジストパターンをリフローしてレンズパターンを形成する。このレジストパターンをリフローして形成したレンズパターンをエッチングマスクとして、下層のマイクロレンズ用樹脂膜をエッチバックし、レンズパターン形状をマイクロレンズ用樹脂膜に転写することによってマイクロレンズを作製する。
【0004】
一方、CCD/CMOSイメージセンサ用のカラーフィルターにおいては、従来の顔料分散系では解像度を更に向上させることは困難であり、顔料の粗大粒子により色ムラが発生する等の問題があるため、固体撮像素子のように微細パターンが要求される用途には適さない。そのため、顔料分散系に代えて染料を使用する技術が提案されている(特許文献7)。しかしながら、従来の熱硬化性の保護膜は、180℃以上の温度で焼成されるため、一般的に180℃程度で分解が開始する染料を使用したカラーフィルター上への適用は困難であった(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2921770号
【特許文献2】国際公開第2013/005619号
【特許文献3】特開2008−31417号公報
【特許文献4】特開2006−113547号公報
【特許文献5】特開平1−10666号公報
【特許文献6】特開平6−112459号公報
【特許文献7】特開平6−75375号公報
【特許文献8】特開2010−237374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、前記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、透明性、耐溶剤性及び平坦性に優れた、100℃よりも高い所望の温度で硬化可能な熱硬化性の樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1観点として、下記式(1)で表される構造単位および式(2)で表される構造単位を有する共重合体及び溶剤を含有する平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
0はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその主鎖にエーテル結合を有してもよく、R
2はエポキシ基、又はエポキシ環を有する炭素原子数5乃至12の有機基を表す。)
第2観点として、前記式(1)で表される構造単位は下記式(1−1)又は式(1−2)で表される、第1観点に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化2】
(式中、R
0は水素原子又はメチル基を表し、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその主鎖にエーテル結合を有してもよい。)
第3観点として、前記共重合体はさらに下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体である、第1観点又は第2観点に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
【化3】
(式中、R
0は水素原子又はメチル基を表し、R
3は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシル基、フェニル基又はハロゲノ基を表す。)
第4観点として、前記共重合体の硬化を促進させる触媒をさらに含有する、第1観点乃至第3観点のいずれか一に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
第5観点として、前記触媒は、前記樹脂組成物から前記溶剤を除いた固形分中の含有量に基づいて0.1質量%乃至20質量%含まれる、第1観点乃至第4観点のいずれか一に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
第6観点として、前記共重合体の重量平均分子量は1,000乃至50,000である、第1観点乃至第5観点のいずれか一に記載の平坦化膜用又はマイクロレンズ用樹脂組成物。
第7観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一に記載の樹脂組成物を基板上に塗布し、100℃よりも高く180℃未満の温度でベークして作製される平坦化膜。
第8観点として、前記基板上にカラーフィルターが形成され、該カラーフィルター上に前記樹脂組成物が塗布される、第7観点に記載の平坦化膜の作製方法。
第9観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一に記載の樹脂組成物をカラーフィルターが形成された基板上に塗布し、100℃よりも高く180℃未満の温度でベークし樹脂膜を形成し、前記樹脂膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをリフローしてレンズパターンを形成し、前記レンズパターンをエッチングマスクとして前記樹脂膜をエッチバックする、マイクロレンズの作製方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、当該組成物に含まれる共重合体が、エポキシ基又はエポキシ環とヒドロキシ基とを有する自己架橋タイプであるため必ずしも架橋剤が添加される必要はなく、100℃より高く180℃未満の所望の温度、例えば140℃での熱硬化性を有する。さらに、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂膜は、優れた透明性、耐溶剤性、及び平坦性を有する。以上より、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂膜により、下地基板上に形成された段差を平坦化することができる。また、本発明の樹脂組成物から樹脂膜を形成後にレジストを塗布する場合、及び平坦化膜又はマイクロレンズ形成後に電極/配線形成工程が行われる場合には、前記樹脂膜は、レジストとのミキシング、有機溶剤による平坦化膜又はマイクロレンズの変形及び剥離といった問題も著しく減少させることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、平坦化膜及びマイクロレンズを形成する材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、段差基板上に本発明の樹脂組成物を塗布し、ベークして形成される樹脂膜を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各成分の詳細を説明する。本発明の樹脂組成物から溶剤を除いた固形分は通常、1質量%乃至50質量%である。
【0011】
<共重合体>
本発明の樹脂組成物に含まれる共重合体は、前述の下記式(1)で表される構造単位および式(2)で表される構造単位を有する共重合体である。
【化4】
(式中、R
0はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、当該アルキレン基はその主鎖にエーテル結合を有してもよく、R
2はエポキシ基、又はエポキシ環を有する炭素原子数5乃至12の有機基を表す。)
【0012】
前記式(1)の例としては、下記式(1−1)又は式(1−2)で表される構造単位が挙げられる。
【化5】
(式中、R
0は水素原子又はメチル基を表し、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表す。)
【0013】
前記共重合体はさらに下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体であってもよい。
【化6】
(式中、R
0は水素原子又はメチル基を表し、R
3は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシル基、フェニル基又はハロゲノ基を表す。)
【0014】
前記式(3)で表される構造単位を形成する化合物(モノマー)の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−シアノスチレン、4−ビニル安息香酸、4−ビニルビフェニル、4−フルオロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレンが挙げられる。これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
前記共重合体において、上記式(1)で表される構造単位の含有量は、例えば10mol%乃至90mol%であり、好ましくは20mol%乃至70mol%である。また上記式(2)で表される構造単位の含有量は、例えば10mol%乃至90mol%であり、好ましくは20mol%乃至80mol%である。前記共重合体がさらに上記式(3)で表される構造単位を有する場合、その含有量は、例えば10mol%乃至90mol%であり、好ましくは20mol%乃至70mol%である。
【0016】
前記共重合体の重量平均分子量は通常、1,000乃至50,000であり、好ましくは3,000乃至30,000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物における前記共重合体の含有量は、当該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて通常、1質量%乃至99質量%であり、好ましくは5質量%乃至95質量%である。
【0018】
本発明において、前記共重合体を得る方法は特に限定されないが、一般的には、上述した共重合体を得るために用いるモノマー種を含むモノマー混合物を重合溶媒中、通常50℃乃至120℃の温度下で重合反応させることにより得られる。このようにして得られる共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液状態であり、この状態で単離することなく、本発明の樹脂組成物に用いることもできる。
【0019】
また、上記のようにして得られた共重合体の溶液を、攪拌させたヘキサン、ジエチルエーテル、メタノール、水等の貧溶媒に投入して当該共重合体を再沈殿させ、生成した沈殿物をろ過・洗浄後、常圧又は減圧下で常温又は加熱乾燥することで、当該共重合体を粉体とすることができる。このような操作により、前記共重合体と共存する重合開始剤や未反応化合物を除去することができる。本発明においては、前記共重合体の粉体をそのまま用いてもよく、あるいはその粉体を、例えば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いてもよい。
【0020】
<硬化促進触媒>
本発明の樹脂組成物に含まれる触媒は前記共重合体の硬化を促進させる触媒であり、硬化促進触媒又は硬化促進剤と称する場合もあり、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7およびその有機酸塩、イミダゾール類、ホスフィン類、ホスホニウム塩が用いられる。
【0021】
硬化促進触媒の市販品としては、例えば、DBU〔登録商標〕、U−CAT〔登録商標〕SA 1、U−CAT〔登録商標〕SA 102、U−CAT〔登録商標〕SA 106、U−CAT〔登録商標〕SA 506、U−CAT〔登録商標〕SA 603(以上、サンアプロ(株)製)、キュアゾール〔登録商標〕2E4MZ(四国化成工業(株)製)、ホクコーTPP〔登録商標〕、TPP−MK〔登録商標〕(以上、北興化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの硬化促進触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物における硬化促進触媒の含有量は、当該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて通常、0.1質量%乃至20質量%である。
【0023】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、前記共重合体を溶剤に溶解し、この溶液に前記硬化促進触媒を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法が挙げられる。さらに、この調製方法の適当な段階において、必要に応じて、その他の添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0024】
前記溶剤としては、前記共重合体及び前記硬化促進触媒を溶解するものであれば特に限定されない。そのような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトンを挙げることができる。これらの溶剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
これらの溶剤の中でも、本発明の樹脂組成物を基板上に塗布して形成される塗膜のレベリング性の向上の観点より、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、乳酸エチル、乳酸ブチル及びシクロヘキサノンが好ましい。
【0026】
また、本発明の樹脂組成物は、塗布性を向上させる目的で、界面活性剤を含有することもできる。当該界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F−171、同F−173、同R−30、同R−40、同R−40−LM(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)、FTX−206D、FTX−212D、FTX−218、FTX−220D、FTX−230D、FTX−240D、FTX−212P、FTX−220P、FTX−228P、FTX−240G、DFX−18等フタージェントシリーズ((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、前記界面活性剤が使用される場合、本発明の樹脂組成物における含有量は、当該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて、0.001質量%乃至3質量%以下であり、好ましくは0.01質量%乃至1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%乃至0.5質量%以下である。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、架橋剤、紫外線吸収剤、増感剤、可塑剤、酸化防止剤、密着助剤等の添加剤を含むことができる。
【0029】
以下、本発明の樹脂組成物の使用例について説明する。
基板{例えば、酸化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、カラーフィルターが形成されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む)、ITO膜が形成されたガラス基板}上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の樹脂組成物を塗布後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークして硬化させて平坦化膜又はマイクロレンズ用樹脂膜を形成する。
【0030】
ベーク条件は、ベーク温度80℃乃至300℃、ベーク時間0.3分乃至60分間の中から適宜選択される。また上記温度範囲内の異なるベーク温度で2ステップ以上処理してもよい。本発明の樹脂組成物の場合、180℃未満のベーク温度で所望の樹脂膜が形成可能である。
【0031】
また、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂膜の膜厚としては、0.005μm乃至5.0μmであり、好ましくは0.01μm乃至3.0μmである。
【0032】
その後、本発明の樹脂組成物から形成されたマイクロレンズ用樹脂膜の上にレジスト溶液を塗布し、所定のマスクを通して露光し、必要に応じて露光後加熱(PEB)を行い、アルカリ現像、リンス及び乾燥することにより、所定のレジストパターンを形成する。露光には、例えば、g線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーを使用することができる。
【0033】
次いで、加熱処理(通常は200℃を超えない温度で)することにより、上記レジストパターンをリフローしてレンズパターンを形成する。このレンズパターンをエッチングマスクとして下層のマイクロレンズ用樹脂膜をエッチバックして、レンズパターン形状をマイクロレンズ用樹脂膜に転写することによってマイクロレンズを作製する。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
[下記表1に記載した共重合体の重量平均分子量の測定]
装置:日本分光(株)製GPCシステム
カラム:Shodex〔登録商標〕KF−804L及びKF−803L
カラムオーブン:40℃
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
【0035】
[実施例で用いる略称]
以下の実施例で用いる略称の意味は、次の通りである。
GMA:グリシジルメタクリレート
4−HS:4−ヒドロキシスチレン
St:スチレン
TPP:トリフェニルホスフィン
jER828:三菱化学(株)製エポキシ樹脂 jER〔登録商標〕828(商品名)
DFX−18:(株)ネオス製界面活性剤 フタージェント〔登録商標〕DFX−18(商品名)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0036】
<実施例1乃至実施例3及び比較例1>
次の表1に示す組成に従い、共重合体、架橋剤、硬化促進触媒、界面活性剤及び溶剤を混合して均一な溶液とした。なお、実施例1は架橋剤及び硬化促進触媒を使用せず、実施例2は架橋剤を使用せず、実施例3は架橋剤及び架橋促進触媒を使用していない。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して樹脂組成物を調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
[耐溶剤性試験]
実施例1乃至実施例3及び比較例1で調製した樹脂組成物をそれぞれ、シリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。これらの樹脂膜に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、2−プロパノール、及び2.38質量%濃度の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に、それぞれ23℃の温度条件下、5分間浸漬する試験を行った。浸漬前後において膜厚変化を測定し、上記浸漬溶剤のうち1つでも、浸漬前の膜厚に対して5%以上の膜厚増減があった場合は“×”、全ての溶剤について膜厚増減が5%未満であった場合は“○”として耐溶剤性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0039】
[透過率測定]
実施例1乃至実施例3で調製した樹脂組成物をそれぞれ、石英基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。これらの樹脂膜に対し、紫外線可視分光光度計UV−2550((株)島津製作所製)を用いて、波長400nmの透過率を測定した。評価結果を表2に示す。
【0040】
[保存安定性]
実施例1乃至実施例3で調製した直後の樹脂組成物をそれぞれ、シリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行うことにより樹脂膜を形成し、光干渉式膜厚測定装置ラムダエースVM−2110(大日本スクリーン製造(株)製)を用いてこれらの樹脂膜の膜厚を測定した。さらに、同じ樹脂組成物を35℃(加速試験)にて1ヶ月保管し、保管後の樹脂組成物から同様の方法にて形成した樹脂膜の膜厚を測定した。調製直後の樹脂組成物から形成した樹脂膜の膜厚と比較して、膜厚変化が10%未満であるものを“○”、10%以上であるものを“×”とした。評価結果を表2に示す。
【0041】
[段差平坦化性]
実施例1乃至実施例3で調製した樹脂組成物を、それぞれ高さ0.3μm、ライン幅10μm、ライン間スペース10μmの段差基板(
図1参照)上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。
図1に示すh1(段差基板1の段差)とh2(樹脂膜2の段差、即ちライン上の樹脂膜の高さとスペース上の樹脂膜の高さとの高低差)から、“式:(1−(h2/h1))×100”を用いて平坦化率を求めた。評価結果を表2に示す。
【0042】
[ドライエッチングレートの測定]
ドライエッチングレートの測定に用いたエッチャー及びエッチングガスは、以下の通りである。
エッチャー:RIE−10NR(サムコ(株)製)
エッチングガス:CF
4【0043】
実施例1乃至実施例3で調製した樹脂組成物をそれぞれ、シリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において100℃で1分間、さらに140℃で10分間ベークを行い、膜厚0.6μmの樹脂膜を形成した。前記エッチャー及びエッチングガスを用い、これらの膜のドライエッチングレートを測定した。同様に、レジスト溶液(THMR−iP1800(東京応化工業(株)製)を、シリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において90℃で1.5分間ベークを行い、膜厚1μmのレジスト膜を形成し、ドライエッチングレートを測定した。そして、前記レジスト膜に対する、実施例1乃至実施例3で調製し樹脂組成物から得られた膜のドライエッチングレート比を求めた。評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2の結果から、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂膜は、高耐溶剤性であると共に高透明性であった。さらに、本発明の樹脂組成物は、保存安定性に優れることがわかった。また、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂膜は、平坦化率50%以上の段差平坦化性を有するものであった。さらに、エッチバック法によるマイクロレンズ作製において、レンズパターンの形状を忠実に下層の樹脂膜へ転写するにあたり、レジスト膜のドライエッチングレートXと樹脂膜のドライエッチングレートYが同等(X:Y=1:0.8〜1.2)であることが求められるが、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂膜は、いずれもこれを満足する結果となった。一方、比較例1で調製した樹脂組成物から形成された樹脂膜については、耐溶剤性を満足しない結果となり、平坦化膜用及びマイクロレンズ用いずれにも適さないことがわかった。
【符号の説明】
【0046】
1:段差基板
2:樹脂膜
3:ライン幅
4:ライン間スペース
h1:段差基板の段差
h2:樹脂膜の段差