特許第6688054号(P6688054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688054粘着剤組成物、光学部材および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688054
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、光学部材および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20200421BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20200421BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200421BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200421BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20200421BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20200421BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J7/00
   C09J11/06
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   C09J133/06
   C09J133/14
【請求項の数】11
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-232038(P2015-232038)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-95658(P2017-95658A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】石川 和孝
(72)【発明者】
【氏名】乾 州弘
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−164996(JP,A)
【文献】 特開2014−167094(JP,A)
【文献】 特開2012−153788(JP,A)
【文献】 特開2005−314579(JP,A)
【文献】 特開2013−006892(JP,A)
【文献】 特開2011−099078(JP,A)
【文献】 特開2014−051566(JP,A)
【文献】 特開2010−106231(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0102701(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物からなる主剤(A)を100質量部;および、
ペンタエリスリトール化合物(B)を0質量部を超えて0.05質量部以下で含み、
前記主剤(A)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)の組み合わせ、ならびに前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)に由来する構成単位(1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)に由来する構成単位(2)とを含む共重合体(a−3)の少なくとも一つを含み、
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)は、下記式(1−1)で表される化合物:
【化1】
(上記式(1−1)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、アルキル基である。)
と、下記式(1−2)で表される化合物:
【化2】
(上記式(1−2)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、−(A−O)−Qで表される基であり、ここで、Aは、アルキレン基であり、Qは、アルキル基であり、pは、1以上20以下の整数である。)
とを含み、
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)は、下記式(2−1)で表される化合物:
【化3】
(上記式(2−1)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、二価の有機基である。)
を含み、
硬化後のガラス転移温度が−70℃以上−60℃以下である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)の含有量が、前記主剤(A)全量に対して0.1質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)の含有量が、前記主剤(A)全量に対して70質量%以上である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記共重合体(a−3)の含有量が、前記主剤(A)全量に対して5質量%以上25質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記共重合体(a−3)の重量平均分子量が、100万以上250万以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記共重合体(a−3)が、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)とを含む反応液の紫外線照射により重合されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記共重合体(a−3)が、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)とを含む反応液の溶液重合により重合されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
光重合開始剤(C)を0.1質量部以上5質量部以下さらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)が、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグルコール(メタ)アクリレートおよびエトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤層を備える、光学部材。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルデバイスへの使用に適した粘着剤組成物、ならびに当該粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤層を備える光学部材および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイパネルとして、液晶ディスプレイパネル(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)等が使用されている。ディスプレイパネル表面には、通常、複数のフィルムが積層された積層体が貼り合わされている。例えば、LCDは通常、液晶パネルの表面に、偏光板、位相差板、視野角拡大フィルムおよび輝度改善フィルム等の光学フィルムが積層されている。そして、ディスプレイパネルを構成する各層は、通常、各種粘着剤により形成される粘着剤層により貼り合わされている。
【0003】
最近では、デザイン性、使い方の多様性等の観点から、曲面ディスプレイを含むフレキシブルディスプレイの開発が進んでおり、ディスプレイパネルにフレキシビリティが求められるようになっている。曲面ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイには、有機エレクトロルミネッセンスパネル(OLED)が主に使用されている。
【0004】
このフレキシブルディスプレイに使用される光学フィルム積層体には従来の平面状ディスプレイパネルで必要とされた光学特性や耐久性に加えて、光学フィルムを変形させた状態で長時間保持または屈曲試験をしてもはがれや浮きが発生しないことが要求される。
【0005】
従来の平面状ディスプレイパネル用光学フィルム積層体に用いられる粘着剤層として、特許文献1には光学フィルムの一つであるタッチパネル部材を貼り合わせるための粘着剤として、アルキル(メタ)アクリレートモノマーとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む共重合体である、タッチパネル部材貼付用粘着剤が提案されている。また、特許文献2には、N−ビニル−2−ピロリドン及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを含むアクリルプレポリマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、光重合開始剤を含有する光重合性粘着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−186808号公報
【特許文献2】特開2011−099078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機エレクトロルミネッセンスパネル(OLED)のようなフレキシブルディスプレイには様々な環境下での使用が想定されるため、広範な温度帯での使用における耐久性や、高温および低温の両条件での折りたたみ耐性(耐屈曲性)が要求される。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の粘着剤をフレキシブルディスプレイの粘着剤層に利用した場合、耐久性や、高温および低温の両条件での折りたたみ耐性(耐屈曲性)の点において満足できるものではなかった。さらに、フレキシブルディスプレイの使用環境が多様化していることを考慮すると、フレキシブルディスプレイに用いられる粘着剤層には、加湿信頼性(高湿環境下でもヘーズの上昇が抑えられる性質)および金属腐食抑制・防止性等の性能も求められる。
【0008】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、耐久性、折りたたみ耐性、加湿信頼性および金属腐食抑制・防止性に優れた粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、所定のアクリル系化合物を含む硬化性化合物からなる主剤(A)に対して、ペンタエリスリトール化合物(B)を0質量部を超えて0.05質量部以下で含み、且つ硬化後のガラス転移温度が−70℃以上−60℃以下である粘着剤組成物によって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性、折りたたみ耐性、加湿信頼性および金属腐食抑制に優れた粘着剤組成物を提供することができる。本発明にかかる粘着剤組成物は、フレキシブルディスプレイ用途に特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、金属腐食抑制・防止性の試験系を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0013】
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0014】
[粘着剤組成物]
本発明の一側面は、硬化性化合物からなる主剤(A)を100質量部;および、ペンタエリスリトール化合物(B)を0質量部を超えて0.05質量部以下で含み;前記主剤(A)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)の組み合わせ、ならびに前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)に由来する構成単位(1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)に由来する構成単位(2)とを含む共重合体(a−3)の少なくとも一つを含み;硬化後のガラス転移温度が−70℃以上−60℃以下である、粘着剤組成物である。本発明によれば、耐久性、折りたたみ耐性、加湿信頼性および金属腐食抑制に優れた粘着剤組成物を提供することができる。
【0015】
なぜ、本発明の粘着剤組成物により上記効果が得られるのか詳細は不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度が高すぎると、高温(例えば、85℃)で硬化物が軟らかくなり過ぎ、高温での折りたたみ耐性を得ることが困難になると考えられる。また、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度が低すぎると、低温(例えば、−20℃)で硬化物に十分な柔軟性が得られず、低温での折りたたみ耐性を得ることが困難となると考えられる。これに対して、本発明者らは、ホモポリマーのガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)(またはこれに由来する構成単位を含む共重合体(a−3))を含む硬化性化合物を主剤として用いることで、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度を−70℃以上−60℃以下とし、高温(例えば、85℃)および低温(例えば、−20℃)での折りたたみ耐性が改善されることを見出した。
【0016】
さらに、詳細な理由は不明ではあるものの、エチレン性不飽和基を有するポリエチレングリコール化合物やトリメチロールプロパン化合物を用いた場合と異なり、ペンタエリスリトール化合物(B)を用いることにより、折りたたみ耐性が向上することを本発明者らは見出した。本発明の粘着剤組成物はペンタエリスリトール化合物(B)を含むことから、そのフレキシブルな分子構造に起因して、折りたたみ耐性、特に高温(例えば、85℃)での折りたたみ耐性が一層向上するものと考えられる。また、ペンタエリスリトール化合物(B)の含有量を一定程度に抑えることにより、粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤組成物の硬度が過度に上昇して接着力や耐久性が低下することをも防止し得る。
【0017】
さらに、本発明の粘着剤組成物では、高極性のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)(またはこれに由来する構成単位を含む共重合体(a−3))を含む硬化性化合物を主剤として用いることを要件としている。かような構成を採用することにより、おそらくはヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)の高い極性によって、ペンタエリスリトール化合物(B)の含有量を一定程度に抑えつつも、接着力や耐久性を確保し得ると考えられる。また、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)(またはこれに由来する構成単位を含む共重合体(a−3))であれば、アクリル酸のような酸成分と比べて加湿信頼性の低下または金属腐食が生じにくいと考えられる。
【0018】
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
【0019】
本発明の粘着剤組成物は、実施例に記載の方法にて測定されるゲル分率が、70%以上90%以下であることが好ましく、75%以上84%以下であることがより好ましい。かような範囲であれば、粘着剤層を備えた光学部材として打ち抜き加工やスリット加工を速やかに行うことができる。ゲル分率を上記のように設定するには、各成分の添加量を上記の範囲に調整するなど、条件を適宜選択すればよい。
【0020】
本発明の粘着剤組成物は、高温での屈曲耐性の観点から、硬化後の85℃における貯蔵弾性率G’(85)は1×10Paを超えて4×10Pa未満であることが好ましく、2.2×10〜3.5×10Paがより好ましい。
【0021】
本発明の粘着剤組成物は、低温での屈曲耐性の観点から、硬化後の−20℃における貯蔵弾性率G’(−20)は1×10Pa以上5×10Pa未満であることが好ましく、1.5×10Pa以上〜3.2×10Pa以下がより好ましい。
【0022】
なお、貯蔵弾性率G’(85)およびG’(−20)は、実施例に記載の方法によって測定した値を採用する。貯蔵弾性率G’(85)およびG’(−20)は、主剤(A)の組成等により制御することができる。
【0023】
本発明の粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度は−70℃以上−60℃以下であればよいが、低温での折りたたみ耐性の観点から、−66℃以上−60℃以下であることが好ましい。なお、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度は、実施例に記載の方法により求めることができる。粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度を上記の範囲とするためには、ホモポリマーのガラス転移温度を考慮して、主剤(A)の調製に用いるモノマーを適宜選択したりすればよい。あるいは、ホモポリマーのガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と、ホモポリマーのガラス転移温度が比較的高いモノマー(例えば、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)や、(a−1)成分および(a−2)成分と共重合可能なモノマー(a’))との組成比を適宜調整すればよい。
【0024】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について詳細に説明する。
【0025】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸エステルモノマー」とは、アクリル酸エステルモノマーおよびメタクリル酸エステルモノマーの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。このため、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリル双方を包含する。「(メタ)アクリル酸エステルモノマー」とは、アクリル酸エステルモノマーおよびメタアクリル酸エステルモノマー双方を包含する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸双方を包含する。
【0026】
本明細書では、「粘着剤組成物」を単に「粘着剤」とも称する。また、本明細書において、「(共)重合体」は、「重合体(ホモポリマー)」および「共重合体」の総称である。
【0027】
[主剤(A)]
本発明において用いられる主剤(A)は、硬化性化合物からなる(ただし、ペンタエリスリトール化合物(B)を除く。)。本発明においては、主剤(A)の構成成分として、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)(以下、単に「(a−1)成分」とも称する)およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)(以下、単に「(a−2)成分」とも称する)、ならびに/または前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)に由来する構成単位(1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)に由来する構成単位(2)とを含む共重合体(a−3)を含む。ホモポリマーのガラス転移温度が低い(a−1)成分および/または(a−1)成分に由来する構成単位(1)を含む共重合体(a−3)を主剤(A)が含むことにより、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度を−70℃以上−60℃以下と低くすることができる。また、極性の高い(a−2)成分および/または(a−2)成分に由来する構成単位(2)を含む共重合体(a−3)を主剤(A)が含むことにより、ペンタエリスリトール化合物(B)の含有量を一定程度に抑えつつ、高極性な偏光板等の光学フィルムに対する優れた接着性を確保することができる。主剤(A)が含む硬化性化合物としては、上記以外にも、(メタ)アクリル化合物等の活性エネルギー線硬化性モノマーおよびその(共)重合体や、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ジチオカルバメート基、ジアゾ基、シンナミリデン基および/またはシンナモイル基等の重合性官能基を含むポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂等ならびにその組み合わせが例示できる。
【0028】
主剤(A)の粘度は、粘着剤組成物の塗布性や接着性の観点から、500mPa・s以上5000mPa・s未満であることが好ましく、1000mPa・s以上4500mPa・s以下がより好ましい。なお、上記の粘度は、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0029】
本発明に係る硬化性化合物からなる主剤(A)の好ましい形態としては、
(1)(a−1)成分と(a−2)成分とを含む形態
(2)(a−1)成分、(a−2)成分、ならびに(a−1)成分由来の構成単位(1)および(a−2)成分由来の構成単位(2)を含む共重合体(a−3)(以下、単に共重合体(a−3)とも称する)を含む形態(硬化性化合物がモノマーおよびポリマーからなる形態であり、いわゆるポリマーシロップの形態)
(3)共重合体(a−3)からなる形態(硬化性化合物がポリマーのみからなる形態)
が挙げられる。
【0030】
かような主剤(A)が、本発明の粘着剤組成物に含まれることによって、硬化後に得られる粘着剤層の粘着性の確保や基本特性を確保する意義を有すると考えられる。
【0031】
中でも、本発明に係る粘着剤層の形成のしやすさ、本発明の所期の効果をより効率的に奏することができる等の観点から、硬化性化合物が共重合体(a−3)を含むこと(上記(2)または(3)の形態)が好ましく、(2)の形態(いわゆるポリマーシロップの形態)がより好ましい。
【0032】
<(a−1)(メタ)アクリル酸エステルモノマー>
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部位に、アルキル基または−(A−O)−Qで表される基が導入されている形態であれば、特に制限はない。ただし、上記「−(A−O)−Q」において、Aはアルキレン基であり、Qはアルキル基であり、pは1以上20以下の整数である。
【0033】
主剤(A)が(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)および/または(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)由来の構成単位(1)を含む共重合体(a−3)を含むことにより、硬化後のガラス転移温度を低くすることができる。これにより、接着性を低下させずに低温での屈曲耐性を向上することができる。
【0034】
アルキル基または−(A−O)−Qで表される基の炭素数も特に制限はない。相溶性の観点や、ガラス転移温度を低く抑える観点から、炭素数1以上20以下が好ましく、炭素数2以上18以下がより好ましく、炭素数3以上16以下であることがさらに好ましく、炭素数4以上12以下であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部位は直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状であってもよいが、ガラス転移温度を低くする観点から、直鎖状または分枝鎖状であることが好ましい。なお、環状の場合、炭素数は3以上である。
【0035】
−(A−O)−Qで表される基において、Aは、接着性向上と耐久性向上、また本発明の所期の効果を効率よく発揮させる観点から、炭素数1以上4以下(すなわち、メチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基)であることが好ましく、炭素数2以上3以下(すなわち、エチレン基またはプロピレン基)であることがより好ましい。このとき、pは、好ましくは1以上6以下の整数であり、より好ましくは1以上4以下の整数であり、更に好ましくは2または3である。また、上記Qは、アルキル基である。かかるアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状であってもよく、本発明の所期の効果を効率よく発揮させる観点から炭素数としては、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは2以上10以下であり、さらに好ましくは2以上8以下である。かかるアルキル基の具体例としては、上記掲げたものが例示できる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)は、典型的には、下記式(1)で示される:
【0037】
【化1】
【0038】
ここで、上記式(1)中、
は、水素原子またはメチル基であり、Rは、上記アルキル基、アルコキシアルキル基または−(A−O)−Qで表される基である。
【0039】
式(1)のRにおけるアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、またはオクタデシル基等が挙げられる。特には、粘着性の確保や基本特性を確保する観点から、メチル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘキシル基、ノニル基、イソノニル基が好ましい。
【0040】
よって、式(1)のRがアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
式(1)のRにおける−(A−O)−Qで表される基は、アルコキシアルキル基であってもよい。かようなアルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、2−エチルヘキシルオキシアルキル基(アルキル基の炭素数1以上4以下)が好ましい。
【0042】
式(1)のRが−(A−O)−Qで表される基の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)の具体例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグルコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
上記の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)の具体例のうち、特に、硬化後のガラス転移温度と極性とを低くし、優れた柔軟性および接着性を確保できるという観点から、主剤(A)が含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)は、ホモポリマーのガラス転移温度が−60℃未満のものを用いることが好ましく、より具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグルコール(メタ)アクリレートおよびエトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であることが特に好ましい。
【0044】
これら(a−1)成分は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。また(a−1)成分は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0045】
(a−1)成分の市販品としては、AEH、AME(以上、株式会社日本触媒製)、ライトアクリレート(登録商標)EC−A、ライトアクリレート(登録商標)MTG−A、ライトアクリレート(登録商標)EHDG−AT、ライトアクリレート(登録商標)130A、ライトアクリレート(登録商標)DPM−A、ライトエステルL(以上、共栄社化学株式会社製)、ビスコート#190、2−MTA、MPE400A、MPE550A(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、AM−90G、AM−130G、(以上、新中村化学工業株式会社製)等が好適である。
【0046】
<(a−2)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー>
極性の高いヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)および/またはヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)に由来する構成単位(2)を含む共重合体(a−3)を主剤(A)が含むことにより、ペンタエリスリトール化合物(B)の含有量を一定程度に抑えつつ、高極性な偏光板等の光学フィルムに対する優れた接着性を確保することができる。
【0047】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマーは、典型的には、下記式(2−1)で示される:
【0048】
【化2】
【0049】
ここで、上記式(2−1)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、二価の有機基である。
【0050】
ここで、二価の有機基としては特に制限はないが、炭素数1以上10以下のアルキレン基が、好適である。炭素数1以上10以下のアルキレン基としては、上述のものが同様に挙げられる。また、上記アルキレン基は、少なくとも1つの、炭素数1以上8以下のアルキル基、フェノキシアルキル基(アルキル基の炭素数:炭素数1以上8以下)、フェニル基またはシクロヘキシル基を置換基として有していてもよい。炭素数1以上8以下のアルキル基としても上記から適宜選択できる。
【0051】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマーは、下記式(2−2)で示される構造であってもよい。
【0052】
【化3】
【0053】
ここで、上記式(2−2)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合または二価の有機基であり、
10は、水素原子または炭素数1以上10以下のアルキル基である。
【0054】
二価の有機基としても特に制限はないが、炭素数1以上10以下のアルキレン基が好適である。また、アルキレン基は、少なくとも1つの、炭素数1以上8以下のアルキル基、フェニル基またはシクロヘキシル基を置換基として有していてもよい。炭素数1以上10以下のアルキレン基としては、下記炭素数1以上10以下のアルキル基の一つの水素原子を取り除いた2価の置換基である。
【0055】
炭素数1以上10以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基などが好適である。
【0056】
以上より、(a−2)成分としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチル−2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドなどが好適である。中でも、ホモポリマーのガラス転移温度が比較的低いという観点から、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0057】
(a−2)成分の市販品としては、BHEA、HPA、HEMA、HPMA(以上、株式会社日本触媒製)、4HBA、CHDMMA(以上、日本化成株式会社製)、HEA、HPA、4−HBA(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルHOP−A(N)、ライトアクリレート(登録商標)HOB−A(以上、共栄社化学株式会社製)、HEAA(登録商標)(KJケミカルズ株式会社製)、N−MAN(三木理研工業株式会社製)等が例示できる。
【0058】
これら(a−2)成分は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。また、(a−2)成分は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0059】
<(a’)(a−1)成分および(a−2)成分と共重合可能なモノマー>
主剤(A)は、本発明の目的効果が達成される限りにおいて、(a−1)成分および(a−2)成分と共重合可能なモノマー(a’)成分を含んでもよい。(a’)成分としては、アミド基を有する(メタ)アクリルモノマー(a’−1)(以下、「(a’−1)成分」とも称する)、重合性官能基を有するマクロモノマー(a’−2)(以下、「(a’−2)成分」とも称する)、その他の重合性モノマー(a’−3)(以下、「(a’−3)成分」とも称する)が例示できる。
【0060】
≪(a’−1)アミド基を有する(メタ)アクリルモノマー≫
(a’−1)成分は、(メタ)アクリルモノマーにおいて、アミド基を有しているものであれば特に制限はない。(a’−1)成分は、典型的には、下記式(3)で示される:
【0061】
【化4】
【0062】
ここで、上記式(3)中、
’は、水素原子またはメチル基であり、
’は、単結合または二価の有機基であり、
10’は、水素原子または炭素数1以上10以下のアルキル基であり、
11’は、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アシル基、エポキシ基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基またはジメチルアミノ基である。
【0063】
二価の有機基としても特に制限はないが、炭素数1以上10以下のアルキレン基が好適である。また、アルキレン基またはアシル基が、少なくとも1つの、炭素数1以上8以下のアルキル基、フェニル基またはシクロヘキシル基を置換基として有していてもよい。
【0064】
炭素数1以上10以下のアルキル基としては、式(2−2)について上記したとおりである。
【0065】
アシル基の炭素数も特に制限はないが、好ましくは炭素数1以上18以下、より好ましくは炭素数1以上6以下である。なお、アシル基は、アセトアセトキシ基を含むものとする。
【0066】
炭素数1以上6以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−ヘキシルオキシ基、3−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが好適である。
【0067】
また、R10’とR11’とは、互いに環を形成してもよく、当該環において、酸素原子(すなわち、含酸素複素環基)または硫黄原子(すなわち、含硫黄複素環基)を有していてもよい。
【0068】
以上より、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどが好適であり、中でも、接着性向上の観点から、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0069】
(a’−1)成分の市販品としては、ACMO(登録商標)、DMAPAA(登録商標)、DMAA(登録商標)、NIPAM(登録商標)、DEAA(登録商標)(以上、KJケミカルズ株式会社製)、DAAm(以上、日本化成株式会社製)、NBMA、IBMA、NMMA、TBAA、MBAA(以上、MRCユニテック株式会社製)等が好適である。
【0070】
≪(a’−2)重合性官能基含有マクロモノマー≫
本発明に係る主剤(A)は、重合性官能基を有するマクロモノマー(a’−2)を含んでもよい。上記(a’−2)成分は、重合可能な官能基(不飽和基)を有する高分子量のモノマーであり、ポリマー鎖部分と、重合性官能基部分とからなる。
【0071】
かようなモノマーを用いて重合(硬化)したポリマーが粘着剤層に含まれることで、折り曲げ耐性(屈曲耐性)が向上する。そのメカニズムは、マクロモノマーのポリマー鎖部分のガラス転移温度によって異なると考えられる。具体的には、ポリマー鎖部分のガラス転移温度が高い場合、ポリマー鎖部分が粘着剤層中でハードなセグメントを形成することにより、粘着剤層に凝集力が生まれる。これにより、基材への接着力が高まり、折り曲げ耐性が向上すると考えられる。一方、マクロモノマーのポリマー鎖部分のガラス転移温度が低い場合、粘着剤層が柔軟になり、基材への追従性が高まることで、折り曲げ耐性が向上すると考えられる。なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムには何ら制限されない。
【0072】
(a’−2)成分の重合性官能基としては、エチレン性不飽和二重結合を有する基(エチレン性不飽和基)が好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基よりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。重合性基はマクロモノマーの末端に存在することが好ましく、マクロモノマーの一方の末端にのみ存在することが重合時の安定性の面からより好ましい。ただし、重合性基は、マクロモノマーの側鎖として存在していてもよいし、マクロモノマーの鎖の両方の末端に存在していてもよい。
【0073】
(a’−2)成分のポリマー鎖部分は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルシロキサン等から誘導される繰り返し単位を主構成単位とする(共)重合体であることが好ましい。これらのポリマー鎖部分は単一の繰り返し単位から構成されていてもよいし、複数の繰り返し単位から構成されていてもよい。また、ポリマー鎖が複数の繰り返し単位からなる共重合体である場合にその繰り返し形態は制限されず、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0074】
(a’−2)成分は、典型的には、下記式(4)で示される:
【0075】
【化5】
【0076】
ここで、上記式(4)において、R12は水素原子またはメチル基を表し、Xは単結合または二価の結合基を表す。
【0077】
二価の結合基としては、例えば、直鎖、分岐または環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基などが挙げられる。これらは、さらにヒドロキシル基、シアノ基などの置換基を有してもよい。前記アルキレン基の炭素数としては1以上10以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、などが好ましい。前記アラルキレン基の炭素数としては、7以上13以下が好ましい。該アラルキレン基としては、例えば、ベンジリデン基、シンナミリデン基、などが挙げられる。前記アリーレン基の炭素数としては、6以上12以下が好ましい。該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基、などが挙げられる。これらの中でも、フェニレン基が好ましい。
【0078】
二価の結合基中には、さらに、−NR−、−COO−、−OCO−、−O−、−S−、−SONH−、−NHSO−、−NHCOO−、−OCONH−または複素環から誘導される基、などが結合基として介在されていてもよい。前記Rは水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基である。
【0079】
また、上記式(4)において、Xは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリルから選択される1つまたは2以上のモノマーを単独重合もしくは共重合させてなるポリマー、または有機基がケイ素原子に結合したポリシロキサン(ポリオルガノシロキサン)を表す。中でも、Xは、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートを単独重合させてなるポリマー、アクリロニトリルおよびスチレンを共重合させてなるポリマーまたはポリオルガノシロキサンであることが好ましい。さらに、高温下での耐久性の観点から、Xは、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、イソブチル(メタ)アクリレートを単独重合させてなるポリマーまたはアクリロニトリルおよびスチレンを共重合させてなるポリマーが特に好ましい。あるいは、低温下での折り曲げ耐性の観点から、Xはポリオルガノシロキサンが好ましく、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。なお、粘着剤の性能に影響しない限り、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部は、水素原子やメチル基以外の有機基(エチル基、フェニル基等)に置換されていてもよい。
【0080】
なお、上記ポリジメチルシロキサンは、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシランを加水分解および縮合させることによって得ることができる。この際、メチル基以外の有機基を有するアルコキシシラン(例えば、ジエチルジエトキシシラン等)を併用することによって、ポリジメチルシロキサンにメチル基以外の有機基を導入することができる。また、上記のジアルコキシ型シラン化合物のほかに、トリアルコキシ型シラン化合物を少量添加してもよい。
【0081】
(a’−2)成分の数平均分子量(Mn)は、2000以上20000以下の範囲内にあることが好ましく、2000以上10000以下の範囲内にあることがより好ましく、4000以上8000以下の範囲内にあることがさらに好ましい。数平均分子量(Mn)が2000以上であれば、共重合体(a−3)を合成する際の(a’−2)成分の添加量が少量であっても、粘着剤の性能を向上させることができる。一方、20000以下であれば、粘着剤の粘度が低く作業性が良好である。数平均分子量(Mn)の値は、重合系に添加する連鎖移動剤および重合開始剤等の量を適宜選択することにより制御されうる。なお、本発明において、マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定したポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0082】
(a’−2)成分は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。(a’−2)成分を合成する場合、合成方法に特に制限はなく、例えば、(1)リビングアニオン重合でマクロモノマーを構成するポリマー鎖(リビングポリマーアニオン)を製造し、これにメタクリル酸クロリド等を作用させる方法;(2)メルカプト酢酸のような連鎖移動剤の存在下で、メチルメタクリレート等のラジカル重合性モノマーを重合させ、末端にカルボキシル基を有するオリゴマーを得た後、これをメタクリル酸グリシジル等と反応させる方法;(3)カルボキシル基を含むアゾ系重合開始剤の存在下に、メチルメタクリレート等のラジカル重合性モノマーを重合させ、末端にカルボキシル基を有するオリゴマーを得た後、メタクリル酸グリシジルでマクロモノマー化する方法などの任意の方法を用いることができる。
【0083】
上記のような方法を利用してマクロモノマーを製造することにより、上記の式(4)においてXで示される二価の結合基として、例えば、下記に示すような基が導入される。
【0084】
【化6】
【0085】
(a’−2)成分の市販品としては、例えば、末端がメタクリル基であって、ポリマー鎖部分がポリメチルメタクリレート(PMMA)であるマクロモノマー(製品名:45%AA−6(AA−6S)、AA−6;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖部分がポリスチレンであるマクロモノマー(製品名:AS−6S、AS−6;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖部分がスチレン/アクリルニトリルの共重合体であるマクロモノマー(製品名:AN−6S;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖部分がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB−6;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖部分がポリイソブチルメタクリレートであるマクロモノマー(製品名:AW−6S;東亞合成株式会社製)、ポリマー鎖部分がポリジメチルシロキサンであるマクロモノマー(製品名:AK−5;東亞合成株式会社製)などを用いることができる。なお、これらのマクロモノマーは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0086】
≪(a’−3)その他の重合性モノマー≫
(a−1)成分および(a−2)成分と共重合可能なその他の重合性モノマーの具体的な例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−((メタ)アクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアミノ基を有する(メタ)アクリルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有する(メタ)アクリルモノマー;p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有する(メタ)アクリルビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。これらその他のモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0087】
≪上記(1)の形態における各成分の含有量≫
(a−1)成分の含有量は、硬化後のガラス転移温度を低くするという観点から、主剤(A)の全量に対して、70質量%以上であることが好ましい。(a−1)成分の含有量の上限は、99.9質量%以下であれば、各種耐久性に優れ、また高温での屈曲耐性に優れ、高温での接着力が向上するため好ましい。また、(a−1)成分の含有量は、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度を低くしつつ優れた接着力を確保するという観点から、75質量%以上95質量%以下がより好ましく、75質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
【0088】
(a−2)成分の含有量は、接着性向上および耐久性確保の観点から、主剤(A)の全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
(a’)成分の含有量は、主剤(A)の全量に対して、0質量%以上10質量%以下であることが好ましい。(a−1)成分や(a−2)成分の量を十分に確保するという観点から、(a’)成分の含有量は、より好ましくは0質量%以上5質量%以下である。
【0090】
≪上記(2)の形態≫
本発明に係る一形態として、主剤(A)が(a−1)成分、(a−2)成分および(a−1)成分由来の構成単位(1)と(a−2)成分由来の構成単位(2)とを含む共重合体(a−3)(以下、単に共重合体(a−3)とも称する)を含む形態(硬化性化合物がモノマーおよびポリマーからなる形態)が挙げられる。本形態は、共重合体(a−3)の原料モノマーのうち、未反応の原料モノマーである(a−1)成分、(a−2)成分および必要によって添加される(a’)成分が、共重合体(a−3)を溶解する溶媒となっている、いわゆるポリマーシロップの形態である。
【0091】
(2)の形態における、(a−1)成分、(a−2)成分および(a’)成分の好適な含有量は、≪上記(1)の形態における各成分の含有量≫の項で説明した好適な含有量と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0092】
また、(2)の形態において含まれる共重合体(a−3)の各構成単位の好適な含有量は、≪上記(1)の形態における各成分の含有量≫の項で説明した各成分((a−1)成分、(a−2)成分、(a’)成分)の好適な含有量が、そのまま適用される。
【0093】
すなわち、(2)の形態において含まれる共重合体(a−3)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)由来の構成単位 70質量%以上99.9質量%以下、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)由来の構成単位 0.1質量%以上30質量%以下、ならびに(a−1)成分および(a−2)成分と共重合可能なモノマー(a’)由来の構成単位 0質量%以上10質量%以下(ただし、前記(a−1)成分、(a−2)成分、および(a’)成分由来の構成単位の合計量は100質量%)を含むことが好ましい。(2)の形態において含まれる共重合体(a−3)は、より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)由来の構成単位 75質量%以上95質量%以下、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)由来の構成単位 5質量%以上25質量%以下、ならびに(a−1)成分および(a−2)成分と共重合可能なモノマー(a’)由来の構成単位 0質量%以上5質量%以下(ただし、前記(a−1)成分、(a−2)成分、および(a’)成分由来の構成単位の合計量は100質量%)を含む。
【0094】
(2)の形態において、主剤(A)の全量(総質量)に対する共重合体(a−3)の含有量は、粘着剤組成物の被着体への塗布性が良好であり、耐久性および折りたたみ耐性に優れるという観点から、5質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上20質量%以下である。この共重合体(a−3)の含有量は、例えば、後述の光重合開始剤を用いた塊状重合法において、重合率を制御すること等により制御することができる。
【0095】
≪上記(3)の形態≫
本発明に係る一形態として、主剤(A)が共重合体(a−3)からなる形態(硬化性化合物がポリマーのみからなる形態)が挙げられる。
【0096】
(3)の形態において含まれる共重合体(a−3)の各構成単位の好適な含有量は、≪上記(1)および(2)の形態における各成分の含有量≫の項で説明した各成分((a−1)成分、(a−2)成分、および(a’)成分)の好適な含有量が、そのまま適用される。
【0097】
[共重合体(a−3)の製造]
上記(2)や(3)の形態において、主剤(A)に含まれ得る共重合体(a−3)を製造する方法は、特に限定されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれを用いてもよい。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他にまたはそれに加えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも、熱重合開始剤を用いた溶液重合法または光重合開始剤を用いた塊状重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるため、より好ましい。
【0098】
本発明の粘着剤組成物の一実施形態では、共重合体(a−3)が、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)とを含む反応液の溶液重合により重合されてなる。熱重合開始剤を用いた溶液重合法としては、例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、共重合体(a−3)の原料モノマーの合計量100質量部に対して、熱重合開始剤を好ましくは0.01質量部以上1質量部以下を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度40℃以上90℃以下(あるいは60℃以上90℃以下)で、3時間以上10時間以下反応させる方法が挙げられる。
【0099】
前記熱重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2.4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイト ジハイドレイト、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレイト、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これら熱重合開始剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。この方法によれば、共重合体(a−3)からなる主剤(A)を得ることができる(上記(3)の形態)。また、得られた共重合体(a−3)を、(a−1)成分および(a−2)成分に添加することで、(a−1)成分、(a−2)成分および共重合体(a−3)からなる主剤(A)(ポリマーシロップ)を得ることもできる(上記(2)の形態)。
【0100】
光重合開始剤を用いた塊状重合法としては、特に制限されないが、例えば、共重合体(a−3)の原料モノマーと、光重合開始剤とを添加し、窒素雰囲気下で反応開始温度を20℃以上35℃以下として活性エネルギー線を照射する。反応系内の温度が、反応開始温度から5℃以上15℃以下上昇した段階で、反応系内に空気を導入するなどして反応を停止させ、共重合体(a−3)を得る方法が挙げられる。この際、使用する原料モノマーをすべて反応させる必要はなく、所望の重量平均分子量になった段階で反応を停止させればよい。未反応の原料モノマーである(a−1)成分、(a−2)成分および必要によって添加される(a’)成分は、共重合体(a−3)を溶解する溶媒となるため、この方法によれば、(a−1)成分、(a−2)成分および共重合体(a−3)を含む主剤(A)(ポリマーシロップ)を得ることができる(上記(2)の形態)。
【0101】
塊状重合法で用いられる活性エネルギー線の例としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などが挙げられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。すなわち、本発明の粘着剤組成物の好ましい一実施形態では、共重合体(a−3)が、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a−1)と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー(a−2)とを含む反応液の紫外線照射により重合されてなる。より好ましくは、波長200nm以上400nm以下の紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトなどの光源を用いて照射することができる。照度は3.2mW/cm以上5.6mW/cm以下が好ましい。
【0102】
光重合開始剤の例としては、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンをはじめとするベンゾフェノン類;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類;4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。これら光重合開始剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0103】
光重合開始剤は市販品を用いてもよく、市販品の例としては、例えばイルガキュア(登録商標)184、819、907、651、1700、1800、819、369、261、ダロキュア(登録商標)TPO、ダロキュア(登録商標)1173(以上、BASFジャパン株式会社製)、エザキュア(登録商標)KIP150、TZT(以上、DKSHジャパン株式会社製)、カヤキュア(登録商標)BMS、DMBI(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0104】
光重合開始剤の使用量は、共重合体(a−3)の原料モノマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上1質量部以下、より好ましくは0.002質量部以上0.5質量部以下である。
【0105】
また、共重合体(a−3)の合成に際して、分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することもできる。例えば、メチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2−エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロルエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、α−メチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0106】
本発明においては、共重合体(a−3)の重量平均分子量(Mw)は、100万以上250万以下であることが好ましく、120万以上190万以下であることがより好ましい。重量平均分子量が100万以上であれば、耐久性や剥がれ・浮きの発生を抑制することに優れ、また、接着性が向上する。また、250万以下であれば、共重合体溶液の粘度が適度になり塗工性などの作業性が向上する。
【0107】
[ペンタエリスリトール化合物(B)]
本発明にかかる粘着剤組成物は、100質量部の主剤(A)に対して、0質量部を超えて0.05質量部以下の割合でペンタエリスリトール化合物(B)を含む。これにより、接着力や耐久性が低下することを防止しつつ、折りたたみ耐性を向上させることができる。
【0108】
本発明における「ペンタエリスリトール化合物(B)」(以下、単に「(B)成分」とも称する。)は、ペンタエリスリトール骨格を有し、その分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する基(エチレン性不飽和基)を少なくとも一つ有する化合物である。かようなエチレン性不飽和基としては、具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、およびプロペニル基が例示できる。
【0109】
(B)成分は、典型的には下記の式(5)で示される:
【0110】
【化7】
【0111】
ここで、上記式(5)において、R21、R22、R23およびR24は、それぞれ独立に水素原子またはエチレン性不飽和基を表し;R21、R22、R23およびR24の少なくとも一つはエチレン性不飽和基であり;Y、Y、YおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または繰り返し単位数1以上20以下の炭素数1以上6以下のアルキレンオキサイド基であり;nは1以上6以下の整数を表す。
【0112】
式(5)において、前記エチレン性不飽和基は、好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0113】
耐久性および折りたたみ耐性の観点から、式(5)において、R21、R22、R23およびR24のうち2個以上3個以下の基がエチレン性不飽和基であることが好ましい。
【0114】
炭素数1以上6以下のアルキレンオキサイド基は、より具体的には、メチレンオキサイド基、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、ペンチレンオキアシド基、またはヘキシレンオキサイド基である。好ましくは、Y、Y、YおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または繰り返し単位数1以上12以下の炭素数1以上3以上のアルキレンオキサイド基(すなわち、−(CHO)−、−(CHOCHO)−、または−(CHOCHOCHO)−、ただし、mは1以上12以下の整数)であり、より好ましくは単結合である。
【0115】
入手容易性の観点から、式(5)において、nは1以上3以下の整数であることが好ましく、より好ましくは1または2である。
【0116】
上記(B)成分は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。また、(B)成分は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0117】
(B)成分の具体例としては、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが好適である。中でも、折りたたみ耐性の観点から、(B)成分としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0118】
また、(B)成分の市販品としては、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMM−3LM−N、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH(以上、新中村化学工業株式会社)、PETIA、PETRA、EBECRYL(登録商標)40、EBECRYL(登録商標)180、DPHA(以上、ダイセル・オルネクス株式会社)、ライトアクリレート(登録商標)PE−3A、ライトアクリレート(登録商標)PE−4A、ライトアクリレート(登録商標)DPE−6A(以上、共栄社化学株式会社)、Miramer M340、Miramer M4004、Miramer M600(以上、東洋ケミカルズ株式会社)等が例示できる。
【0119】
上記ペンタエリスリトール化合物(B)の粘着剤組成物中の含有量は、100質量部の主剤(A)に対して、0質量部を超えて0.05質量部以下の割合である。ペンタエリスリトール化合物(B)を含まない粘着剤組成物では、十分な耐久性や折りたたみ耐性を達成することが困難となる。一方、ペンタエリスリトール化合物(B)の組成物中の含有量が0.05質量部を超えると、粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度が−70℃以上−60℃以下であっても、耐久性や低温(例えば、−20℃)での折りたたみ耐性において満足の得られるものとならない。ペンタエリスリトール化合物(B)の粘着剤組成物中の含有量は、100質量部の主剤(A)に対して、好ましくは0.0005質量部以上0.05質量部以下の割合であり、より好ましくは0.005質量部以上0.04質量部以下である。なお、ペンタエリスリトール化合物(B)として2種以上の化合物を用いる場合、上記のペンタエリスリトール化合物(B)の粘着剤組成物中の含有量は、2種以上の化合物の合計量である。
【0120】
[光重合開始剤(C)]
本発明の好ましい他の実施形態では、粘着剤組成物は、主剤(A)100質量部に対して、光重合開始剤(C)を0.1質量部以上5質量部以下さらに含む。これにより、主剤(A)がポリマーシロップの形態の場合、最終的な共重合反応を行って粘着剤層の形成が容易となる。かような光重合開始剤(C)としては、共重合体(a−3)の製造において上記したものが採用できる。これらの重合開始剤を追添する際の添加量は、0.2質量部以上2質量部以下がより好ましい。
【0121】
[シランカップリング剤(D)]
本発明の粘着剤組成物はまた、ケイ素膜との密着性が向上する観点から、シランカップリング剤をさらに含有することができる。
【0122】
シランカップリング剤とは、シロキサン結合を有さず、分子中に2個以上の異なった反応基を持っているものを指す。
【0123】
本発明の粘着剤組成物に用いられるシランカップリング剤(D)は、特に限定されず、例えば、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基とを含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤、ポリイソシアネートなどを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
【0124】
上記シランカップリング剤(D)は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−573、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0125】
上記シランカップリング剤(D)は、単独でもまたは2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0126】
本発明の粘着剤組成物がシランカップリング剤(D)を含有する場合の含有量は、主剤(A)100質量部に対して、0.0001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上3質量部以下であることが特に好ましい。かような範囲であれば、耐久性を向上することができる。
【0127】
[溶剤]
本発明の粘着剤組成物には、溶剤が含まれていてもよい。該溶剤としては、特に限定されないが、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0128】
また、上述のように、共重合体(a−3)を、光重合開始剤を用いた塊状重合法により合成した場合、得られた共重合体(a−3)は、未反応の(a−1)成分、(a−2)成分および(a’)成分のうち少なくとも一つを溶媒として含む形態、いわゆるポリマーシロップとすることができる。このポリマーシロップにおいて用いられる溶媒としては、上記で例示した(a−1)成分、(a−2)成分および(a’)成分が挙げられる。よって、本発明の粘着剤組成物は、組成物中に溶媒として(a−1)成分、(a−2)成分および(a’)成分のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0129】
[その他の添加成分]
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加成分(その他の添加成分)を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有してもよい。
【0130】
[粘着剤組成物の製造方法]
上記粘着剤組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えば、主剤(A)中の硬化性化合物がモノマーのみからなる上記(1)の形態の場合、(a−1)成分、(a−2)成分、(B)成分、および必要に応じて加えられる(a’)成分、光重合開始剤(C)、シランカップリング剤(D)、溶剤、その他の添加成分等を混合して製造する方法が挙げられる。
【0131】
主剤(A)中の硬化性化合物がモノマーおよびポリマーからなる上記(2)の形態の場合、(a−1)成分、(a−2)成分および共重合体(a−3)を含むポリマーシロップ、(B)成分、ならびに必要に応じて加えられる(a’)成分、光重合開始剤(C)、シランカップリング剤(D)、溶剤、その他の添加成分等を混合して製造する方法が挙げられる。
【0132】
主剤(A)中の硬化性化合物がポリマーのみからなる上記(3)の形態の場合、共重合体(a−3)またはその溶液、(B)成分、および必要に応じて加えられる光重合開始剤(C)、シランカップリング剤(D)、溶剤、その他の添加成分等を混合して製造する方法が挙げられる。
【0133】
本発明に係る(B)成分の添加方法は、特に制限されない。例えば、(B)成分は、(a−1)成分および(a−2)成分の少なくとも一方に(B)成分を溶解させて調製した(B)成分溶液を、主剤(A)を構成する硬化性化合物全量に対して所望の含有量となるように調整して添加してもよい。
【0134】
[粘着剤層]
本発明の一形態では、本発明の粘着剤組成物を硬化してなる、粘着剤層を提供する。本発明の粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物の硬化層であり、本発明の粘着剤組成物(溶液)を適当な基材(支持体)に付与(例えば、塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。2種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時にまたは多段階に行うことができる。主剤(A)が(a−1)成分や(a−2)成分のモノマーを含む形態である粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる((a−1)成分、(a−2)成分、および/または共重合体(a−3、ならびに必要に応じて添加される(a’)成分)を共重合反応に供して完全重合物を形成する)。例えば、活性エネルギー線硬化性の粘着剤組成物を用いる場合であれば、活性エネルギー線照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。活性エネルギー線硬化性の粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に活性エネルギー線硬化を行うとよい。主剤(A)が共重合体(a−3)のみからなる形態である粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。
【0135】
粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に1種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0136】
粘着剤層の基材としては、後述するセパレータを用いることができる。
【0137】
塗布方式としては、特に限定されず、各種公知方法が用いられる。例えば、ロールコート、ベーカー式アプリケータ、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0138】
本発明の粘着剤組成物が溶剤を含む場合、溶剤を乾燥させることが好ましい。溶剤の乾燥方法としては、目的に応じて、適切な方法が採用されうる。好ましくは、塗膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃以上200℃以下であり、さらに好ましくは、50℃以上180℃以下であり、特に好ましくは70℃以上170℃以下である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。主剤(A)が共重合体(a−3)からなる上記(3)の形態(硬化性化合物がポリマーのみからなる形態)の場合、上記のような乾燥処理によって粘着剤組成物の硬化を行うことができる。
【0139】
また、乾燥時間は、適宜設定されうる。好ましくは5秒以上30分以下の間であり、さらに好ましくは5秒以上20分以下の間であり、特に好ましくは10秒以上15分以下の間である。加熱乾燥は、条件を変えて、2回以上行うことも可能である。例えば、40℃以上100℃未満で0.1分以上10分以下の間乾燥した後、100℃以上200℃以下で1分以上20分以下の間さらに追加の乾燥処理を行ってもよい。これにより、溶媒が急激に揮発することによる剥がれ、浮き、クラックの発生を予防し得る。
【0140】
本発明の粘着剤組成物が光重合開始剤を含む場合、本発明の粘着剤組成物を、被着体上に直接塗工するか、あるいは、基材、セパレータ等の所定の被塗布体に塗工した後に、または、支持体(基材)上の片面に塗工した後、活性エネルギー線を照射することにより粘着剤層を得ることができる。通常は、波長200nm以上400nm以下における照度が1mW/cm以上200mW/cm以下である紫外線を、積算光量で200mJ/cm以上10000mJ/cm以下程度を照射して光重合させることにより粘着剤層が得られる。
【0141】
本発明の粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、特に限定されず、使用用途によって適宜設定されうる。例えば、接着性および屈曲耐性の観点から、1μm以上200μm以下であることが好ましく、5μm以上150μm以下であることがより好ましく、10μm以上120μm以下であることがさらに好ましい。
【0142】
また、本発明にかかる粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで、剥離処理したシート(セパレータ)などで粘着剤層を保護することができる。
【0143】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。その他にも、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができる。しかしながら、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0144】
セパレータの厚さは、通常5μm以上200μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下程度である。
【0145】
また、セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型処理および防汚処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理を行うことができる。特に、セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0146】
[粘着シート]
本発明の一形態では、本発明の粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤層を備える、粘着シートも提供する。粘着シートは、前記粘着剤層をシート状基材(支持体)の片面または両面に固定的に、すなわち前記基材から粘着剤層を分離する意図なく設けた、いわゆる基材付き粘着シート(片面または両面粘着シート)であってもよく、あるいは前記粘着剤層を剥離フィルム(剥離ライナー)(剥離紙、表面に剥離処理を施した樹脂シート等)のような剥離性を有する基材上に設け、貼付時に粘着剤層を支持する基材が除去される形態である、いわゆる基材レス(両面)粘着シートであってもよい。
【0147】
ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、前記粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されず、例えば、点状、ストライプ状等の規則的またはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0148】
前記基材(支持体)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルフィルムなどのプラスチック基材や、紙、不織布などの多孔質材料、ならびに金属箔などがあげられる。
【0149】
前記プラスチック基材の構成材料としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアクリレート、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネートなどがあげられる。
【0150】
基材の厚みは特に制限されないが、好ましくは4μm以上100μm以下、より好ましくは4μm以上50μm以下である。
【0151】
前記プラスチック基材には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0152】
また、前記剥離フィルム(剥離ライナー)としては、上記で例示したセパレータが挙げられる。
【0153】
[用途]
上述した本発明の粘着剤組成物、粘着剤層、および粘着シートは、様々な用途に適用され、例えば、光学フィルムのような光学部材に用いられる。かような光学フィルムとしては、特に限定されず、液晶表示装置などの画像表示装置の形成に用いられるものが挙げられる。例えば、少なくとも偏光板または位相差板を含み、さらに導電層および保護層の少なくとも一方を含むものや、カバーフィルム、透明導電フィルム、ウィンドフィルム、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム等の光学補償フィルム、ディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものが挙げられる。すなわち、本発明の一実施形態では、本発明にかかる粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤層を備える、光学部材が提供される。
【0154】
本発明の粘着剤組成物は、光学部材の片面あるいは両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいし、剥離フィルム上に粘着剤層を予め形成し、これを光学部材の片面あるいは両面に転写することにより使用されてもよい。本発明の粘着剤組成物は優れた耐久性を有するため、加熱処理や高湿処理による粘着剤層の浮きや剥がれを防止し得る。
【0155】
本発明の粘着剤組成物、粘着剤層、および粘着シートは、画像表示装置に好適に用いられる。画像表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、曲面ディスプレイまたはフレキシブルディスプレイ等が挙げられる。
【0156】
上記のように、本発明は、粘着剤組成物、粘着剤層、粘着シート、および画像表示装置に関するものであり、接着力と、高温条件および低温条件で屈曲を行ってもはがれや浮きが発生することがほとんどない屈曲耐性と、のバランスに優れた粘着剤組成物を提供することができる。また、本発明の粘着剤組成物は、フレキシブルディスプレイのような液晶表示素子およびエレクトロルミネッセンス素子等に使用される各種フィルムまたはシートの製造に好適に使用されるものであり、これら技術分野で商用され得るものである。
【実施例】
【0157】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、各例中の部および%はいずれも質量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃55%RHである。
【0158】
<粘度>
ガラス瓶に入れた主剤(A)を25℃に温調し、B型粘度計により測定した。
【0159】
<共重合体(a−3)の重量平均分子量の測定>
共重合体(a−3)の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン。
【0160】
[製造例1]
<主剤(A−1)の調製>
主剤(A−1)は以下に示すように調製した。
【0161】
外部の紫外線をカットした環境下にUVランプであるブラックライトを4本(三共電気株式会社製 FL20SBL、放出波長315nm以上400nm以下)フラスコの4方に設置した反応ボックス内で反応を実施した。
【0162】
上記ボックス内に攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)64質量部、2−エチルヘキシル−ジグルコールアクリレート(EHDG−AT)20質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)15質量部、ポリメタクリル酸メチル系マクロモノマー(AA−6)1質量部、重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(登録商標)651 BASFジャパン株式会社製)0.005質量部を配合した。その後、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら30℃まで加熱した。ここで重合開始のために、ブラックライトにより4mW/cmの光を照射した。反応開始後、反応系の温度は上昇したが、開始からの反応温度の上昇が10℃になった段階で、ブラックライトの照射を止め、フラスコ内に空気ポンプにて空気を導入することにより反応を強制的に停止させた。これにより、上記モノマー成分の一部が重合した共重合体(a−3−1)(重合率8%)を含む主剤(A−1)得た。上記主剤(A−1)の粘度は1000mPa・s、共重合体(a−3−1)の重量平均分子量(Mw)は180万であった。なお、上記の「重合率」は、仕込みのモノマーが全てポリマーとなった場合を100%として算出された反応率の値である。
【0163】
[製造例2]
<主剤(A−2)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)81.5質量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)15質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5質量部、アクリロイルモルホリン(ACMO)3質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチル100質量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した。その後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って5時間重合反応を行った。重合反応終了後、酢酸エチル300質量部を加えて希釈を行い、共重合体(a−3−2)(重合率90%、固形分18質量%)を含む主剤(A−2)得た。上記主剤(A−2)の粘度は3500mPa・s、共重合体(a−3−2)の重量平均分子量(Mw)は140万であった。
【0164】
[製造例3]
<主剤(A−4)の調製>
製造例2と同様に攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)80質量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)19質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を酢酸エチル100質量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した。その後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って5時間重合反応を行った。続いて、この温度に保ちながら、追加モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)320質量部、メトキシエチルアクリレート(MEA)76質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)4質量部を加えて、酢酸エチルを溜去することにより、共重合体(a−3−3)(重合率90%、固形分18質量%)を含む主剤(A−4)得た。上記主剤(A−4)の粘度は4000mPa・s、共重合体(a−3−3)の重量平均分子量(Mw)は、150万であった。
【0165】
[製造例4〜10]
製造例4〜10において、主剤(A)を調製するモノマーの種類またはその割合を表1に示すように変えた他は製造例1と同様にして、主剤(A−5)〜(A−11)を調製した。主剤(A−5)〜(A−11)に含まれる共重合体(a−3−4)〜(a−3−10)のMw(重量平均分子量)は、表1に示す通りである。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
尚、上記ホモポリマーTg(EHDG−ATおよびNVPを除く)は、各メーカーのカタログ値である。EHDG−ATおよびNVPのホモポリマーTgは、JIS K7121(1987)に準じたDSC法によって求めた値である。
【0169】
なお、共重合体(a−3)のガラス転移温度は、各主剤を構成するモノマー単位とその割合から、下記のFOXの式により算出される値である。
【0170】
【数1】
【0171】
なお、上記FOXの式より求められる理論ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)や動的粘弾性などにより求められる実測ガラス転移温度とよく一致する。
【0172】
[実施例1]
(粘着剤組成物の調製)
製造例1で得られた主剤(A−1)100質量部に対し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(NKエステル(登録商標)A−DPH 新中村化学工業株式会社製、以下「A−DPH」とする、B−1)0.04質量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(登録商標)651 BASFジャパン株式会社製)0.3質量部を添加し、混合・脱泡処理して光重合性の粘着剤組成物を得た。
【0173】
(粘着剤層の形成)
次いで、この光重合性の粘着剤組成物を、剥離フィルム(シリコーン処理を施した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF50)の片面に50μmの塗布厚さになるように塗布した。塗膜上にもう一枚の剥離フィルムを貼着することによって、粘着剤組成物の塗膜の上下に剥離フィルムを配置してサンドイッチ状に密閉した。その後、ブラックライト(三共電気株式会社製 FL20SBL、放出波長315nm以上400nm以下)で照度5mW/cm、積算光量1500mJ/cmを照射して粘着剤組成物を硬化し、無色透明の粘着剤層を形成し、粘着シートを得た。
【0174】
[実施例2]
(粘着剤組成物の調製)
製造例2で得られた主剤(A−2)100質量部に対し、A−DPH0.03質量部を添加し、混合・脱泡処理して粘着剤組成物を得た。
【0175】
(粘着剤層の形成)
次いでこの粘着剤組成物を、剥離フィルム(シリコーン処理を施した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF50)の片面に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥した。その後、120℃で10分間乾燥処理して粘着剤層を形成した。その後、実施例1と同様にしてもう一枚の剥離フィルムを粘着剤層に貼着し、粘着シートを得た。
【0176】
[実施例3]
(粘着剤組成物の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート65質量部、2−エチルヘキシル−ジグルコールアクリレート20質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部からなる主剤(A−3)に対して、A−DPH0.04質量部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(登録商標)651 BASFジャパン株式会社製)0.3質量部を添加し、混合・脱泡処理して光重合性の粘着剤組成物を得た。
【0177】
(粘着剤層の形成)
次いでこの光重合性の粘着剤組成物を、剥離フィルム(シリコーン処理を施した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、三菱化学ポリエステルフィルム社製、MRF50)の片面に50μmの塗布厚さになるように塗布した。この塗布表面上にもう一枚の剥離フィルムを貼着することによって、粘着剤組成物の塗膜の上下に剥離フィルムを配置してサンドイッチ状に密閉した。その後、ブラックライト(三共電気株式会社製 FL20SBL、放出波長315nm以上400nm以下)で照度2mW/cm、積算光量7200mJ/cmを照射して粘着剤組成物を硬化し、無色透明の粘着剤層を形成し、粘着シートを得た。
【0178】
[実施例4〜7および比較例1〜8]
主剤(A)の種類、ペンタエリスリトール化合物(B)の種類と量、光重合開始剤(C)の種類と量、シランカップリング剤(D)、その他添加剤(E)の種類と量を表2に示すように用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着シートを作製した。
【0179】
<ゲル分率>
実施例1〜7、および比較例1〜9で作製した粘着剤組成物のゲル分率を測定した。ゲル分率は、以下の方法により行った。すなわち、粘着剤組成物約0.1gを秤量して、重量W1(g)を測定した。これをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを約30g加えて24時間放置した。所定時間経過後のサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網(膜の重量をW2(g))にてろ別し、金網および残留物を90℃で1時間乾燥させた全体の重量W3(g)を測定した。ゲル分率は、これらの測定値から下記数式2により算出した。
【0180】
【数2】
【0181】
<粘着剤組成物を硬化後のガラス転移温度>
実施例1〜7、および比較例1〜9で作製した粘着剤組成物を用いて、硬化後のガラス転移温度を測定した。すなわち、JIS K7121(1987)に準じたDSC法によって測定を行った。
【0182】
<貯蔵弾性率の測定>
各実施例及び比較例で作製した粘着剤層について、粘弾性測定装置(株式会社アントンパール・ジャパン製:形式:MCR300)を用いて−30℃以上150℃以下の測定範囲の貯蔵弾性率を測定した。より詳細には、作製した粘着剤層を厚さ400μmに積層し、直径8mmのサイズに切断して測定試料とした。その後、測定試料をパラレルプレート治具にセットし、−30℃以上150℃以下の温度域で角周波数 1rad/s、ノーマルフォース 3N、昇温速度5℃/minの条件下で測定した。
【0183】
<薄型偏光板の作製>
厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3質量%のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4質量%のホウ酸、10質量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5質量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、偏光子を得た。当該偏光子の片面に、厚さ20μmのポリカーボネート系フィルムと膜厚50μmの位相差フィルム(1/4波長板、帝人化成社製「WRS」)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて合計厚みが77μmの薄型偏光板を作製した。
【0184】
(導電層、保護層の作製)
銀ナノワイヤー分散溶液(米Cambrios社製、ClearOhm Ink−A AQ)30質量部あたり、超純水(和光純薬工業社製、超純水Ultrapure Watar)を70質量部、防錆剤(米Cambrios社製、ClearOhm SFT−D)を0.12質量部添加し、導電層形成用塗料を調製した。上記薄型偏光版の位相差フィルム面に、導電層形成用塗料をダイコート法で固形分塗布量が1g/mとなるように塗布し、80℃で乾燥して導電層を積層した。
【0185】
アクリル樹脂系塗料(中国塗料社製、フォルシード(登録商標)No.420C 樹脂濃度50重量%)5質量部あたり、酢酸エチルを95質量部加えて保護層形成用塗料を調製した。上記の導電層の上に、保護層形成用塗料を保護層の厚み(硬化後の厚み)が210nmとなるようにダイコート法で塗布し、80℃で乾燥し、紫外線(ヒュージョンUVシステムズジャパン社製、LH10−70UVランプ)を照射して(200mJ/cm)硬化することで保護層を形成した。
【0186】
<粘着剤層付偏光板の作製>
上記の偏光板の粘着剤層を形成する位相差フィルム側に、コロナ放電量80[W・min/m]でコロナ処理を行った。次いで、粘着シートの片面から剥離フィルムを剥離して粘着剤層を露出させ、粘着剤層とWRSとが接触するように転写した。偏光板とは反対面の剥離フィルムを粘着剤層から剥離し、粘着剤層付偏光板を作製した。
【0187】
<耐久性試験>
最表面に窒化ケイ素(SiN)膜(膜厚50nm)を有するポリイミドフィルム(厚さ0.7mm)をフレキシブルパネルの代替品として使用した。
【0188】
粘着剤層付偏光板サンプルを、5インチサイズとし、ラミネーターを用いてポリイミドフィルムに貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全にポリイミドフィルムに密着させた。その後、サンプルを内径(直径)が6mmに保持できるようにガラス板で挟み固定した。かかる処理の施されたサンプルに、(1)85℃で500時間(加熱試験)の処理をそれぞれ施した。(2)また、60℃95%RHの雰囲気下で500時間処理を施した(加湿試験)。(3)また、85℃と−40℃の環境を1サイクル1時間で300サイクル施した後(ヒートショック試験)。それぞれの試験について、偏光板とポリイミドフィルムの外観とを下記基準で目視にて評価した。
○:発泡、剥がれ、浮き、クラックなしなどの外観上の変化が全くなし。
△:端部に剥がれ、発泡、またはクラックがあるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0189】
なお、(1)、(2)および(3)の試験は、それぞれサンプルを用意し、独立して試験を行った。
【0190】
<接着力>
上記耐久性試験で用いたものと同じサンプルを新たに準備し、それぞれ、幅25mm×長さ100mmに裁断した。次いで50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理してサンプルをポリイミドフィルムに密着させた。その後、23℃55%RHの雰囲気下で1時間静置後、接着力を測定した。
【0191】
接着力は、測定試料を、引張り試験機(株式会社オリエンテック製 テンシロン万能材料試験機 STA−1150)にて、23℃、相対湿度55%RHの条件下、剥離角度180°、剥離速度300mm/minでJIS Z0237:2009の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、フィルムを引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定することにより求めた。
【0192】
<オートクレーブ適性>
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤層付偏光板をガラス板に貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。次いで、上記評価用サンプルをオートクレーブに入れ、50℃、0.5MPaの条件で15分間オートクレーブ処理を行った。その後、オートクレーブから取り出した評価用サンプルを目視で観察し、気泡の有無を確認した。オートクレーブ処理後の評価用サンプルに気泡が見られなかった場合を○、オートクレーブ処理後の評価用サンプルに気泡が見られた場合を×として評価を行った。
【0193】
<加湿信頼性試験>
各実施例及び比較例で作製した粘着シートの片面から剥離フィルムを剥離し、PETフィルム(東洋紡株式会社製A4100 厚さ100μm ヘーズ0.6%)に転写した。次いで、粘着シートを転写したPETフィルムを幅50mm×長さ50mmのサイズに切り出し、もう一方の剥離フィルムを剥離し、粘着剤層面をガラス板に貼り付けた。これにより、「ガラス/粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する試験片を作製した。
【0194】
ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製 NDH5000W)を用いて、23℃55%RHにおける該試験片のヘーズを測定した(H)。また、上記の試験片を60℃95%RHの環境下に3日間保存し、23℃55%RHの環境下に取り出した直後、取り出してから2時間後のヘーズ(H)を測定した。{(H−H)/H}×100(%)で算出される値が2%未満なら○、2%以上なら×として評価を行った。
【0195】
<金属腐食抑制・防止性>
実施例、比較例で作製した粘着シートの片面から剥離フィルムを剥離し、PETフィルム(東洋紡株式会社製A4100 厚さ100μm)に転写し、幅20mm×長さ50mmのサイズに切り出したものを試験片(試験片11)とした。
【0196】
図1に示すように、導電性PETフィルム12(日東電工株式会社製、エレクリスタV−150FLC5)(サイズ:長さ70mm×幅25mm)の両端部を導電性テープ122で固定し、その導電面(ITO膜形成面121側)にセパレータを剥離した上記試験片11の粘着剤層面を貼り合わせた。これを23℃の環境下で24時間放置した後、60℃95%RHの環境下で7日間放置し、「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃95%RH7日間放置後の抵抗値」の割合(%)[(60℃95%RH7日間放置後の抵抗値)/(貼付直後の抵抗値)×100(%)]を測定した。なお、上記の抵抗値は、三和電気計器株式会社製「マルチテスターSR−18D」を用いて、両端の導電性テープ122に電極をつけて測定した。また、「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃95%RH7日間放置後の抵抗値」の割合が、120%未満であれば耐腐食性「良好(○)」、120%以上であれば耐腐食性「不良(×)」と判断した。なお、ブランクとして粘着シートを貼付しない導電性PETフィルムのみで同様の試験を行った結果、「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃95%RH7日間放置後の抵抗値」の割合は、120%未満であった。
【0197】
<折りたたみ耐性>
上記耐久性試験で用いたものと同じサンプルを、折り曲げ試験機(テスター産業株式会社製)にて折り曲げた時の内径(直径)が6mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放を1サイクルとして10万サイクル繰り返し行った。試験環境としては、それぞれ、23℃55%RHの雰囲気下、85℃、60℃95%RHの雰囲気下、−20℃で行った。試験後の偏光板とポリイミドフィルムの外観を下記基準で目視にて評価した。
○:発泡、剥がれ、浮き、クラックなしなどの外観上の変化が全くなし。
△:端部に剥がれ、発泡、またはクラックがあるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0198】
【表3】
【0199】
【表4】
【0200】
【表5】
【符号の説明】
【0201】
11 試験片、
111 PETフィルム、
112 粘着シート、
12 導電性PETフィルム、
121 導電性PETフィルム(ITO膜形成面)、
122 導電性テープ。
図1